本発明の第1の発明に係る人体センサーは、人体の少なくとも一部からの圧力を受けることが可能な平面状の第1電極と、第1電極と離隔して対向する平面状の第2電極と、第1電極と第2電極との間に介在する導電部と、第1電極と第2電極との接続抵抗値、第1電極と第2電極との導電電流値、第1電極と第2電極との導電電圧値の少なくとも一つを計測する計測部と、接続抵抗値、導電電流値および導電電圧値の少なくとも一つにおける、大きさ、変化状態、変化量、時間との関係および積分値の少なくとも一つに基づいて、人体の状態を推定する推定部と、を備え、第1電極に付与される人体の圧力によって、第1電極および第2電極は、導電部を介して電気的に接続する。
この構成により、人体センサーは、導電状態のみに基づいて、人体の体位や姿勢などを推定できる。また、第1電極などは、柔軟性を有する平面状であるので、設置することにより人体へ不快感を与えない。
本発明の第2の発明に係る人体センサーでは、第1の発明に加えて、計測部および推定部は、第1電極および第2電極と、有線もしくは無線によって電気的に接続されることで、第1電極、導電部および第2電極と離隔できる。
この構成により、人体に設置される必要のある要素と、推定等に係る要素とを、離隔して設置できる。結果として、設置が容易となり、普及を後押しする。
本発明の第3の発明に係る人体センサーでは、第1又は第2の発明に加えて、人体センサーにおいて、少なくとも第1電極、第2電極および導電部は、人体の下面に配置される。
この構成により、第1電極などは、人体の圧力変化を受けて、接続抵抗値などを変化させる。
本発明の第4の発明に係る人体センサーでは、第1から第3のいずれかの発明に加えて、人体センサーにおいて、少なくとも第1電極、第2電極および導電部は、ベッドの座面に配置される。
この構成により、人体センサー特に第1電極などの設置が容易となる。また、人体センサーは、ベッド上での生活時間の多い患者や介護対象者の状態を推定できる。
本発明の第5の発明に係る人体センサーでは、第1から第4のいずれかの発明に加えて、第1電極、第2電極および導電部は、ベッドの座面において、人体の上半身に対応する位置に配置される。
この構成により、人体センサーは、人体の状態をより高い精度で推定できる。上半身の動きが、人体の姿勢や体位変化を示しやすいからである。
本発明の第6の発明に係る人体センサーでは、第5の発明に加えて、計測部は、接続抵抗値を、「大」、「中」、「小」のいずれかで計測し、推定部は、(1)接続抵抗値が、ある時点で「中」である場合、(2)接続抵抗値が、「小」と「中」を繰り返す場合、(3)所定期間における接続抵抗値の平均値が、「中」である場合、との少なくとも一つである場合に、人体を、寝返り状態であると推定する。
この構成により、推定部は、人体の寝返り状態を高い精度で推定できる。
本発明の第7の発明に係る人体センサーでは、第5の発明に加えて、導電部が、人体の幅方向に分割されるように、複数の区画に分割される場合に、計測部は、複数の区画のそれぞれにおける接続抵抗値を計測し、推定部は、(1)複数の区画において、ある時点で、いずれかの端部の区画における接続抵抗値が、中央部の区画における接続抵抗値よりも小さい場合、(2)所定期間における端部の区画における接続抵抗値の積分値が、所定期間における中央部の区画における接続抵抗値の積分値よりも小さい場合、との少なくとも一つである場合に、人体を、寝返り状態であると推定する。
この構成により、推定部は、人体の寝返り状態を高い精度で推定できる。
本発明の第8の発明に係る人体センサーでは、第5の発明に加えて、計測部は、接続抵抗値を、「大」、「中」、「小」のいずれかで計測し、推定部は、(1)接続抵抗値が、ある時点で「大」である場合、(2)所定期間における接続抵抗値の平均値が、「大」である場合、(3)所定期間以上に渡って、接続抵抗値が、「大」である場合、との少なくとも一つである場合に、人体を、離床状態であると推定する。
この構成により、推定部は、離床状態を高い精度で推定できる。
本発明の第9の発明に係る人体センサーでは、第8の発明に加えて、推定部は、(1)接続抵抗値が、「大」となる前に、「小」、「中」の順序で、変化する場合、(2)接続抵抗値が、「大」となる前に、「中」の状態を示す場合、とのいずれかの場合に、人体は、正常な離床であると推定する。
この構成により、推定部は、離床においても正常な離床であることを推定できる。結果として、管理部門の手間を削減できる。
本発明の第10の発明に係る人体センサーでは、第8の発明に加えて、推定部は、接続抵抗値が「大」であると計測された時点から、所定期間内に接続抵抗値が「小」もしくは「中」となる場合には、人体を、着床状態であると推定する。
この構成により、推定部は、着床としてまとめてよい離床状態を推定できる。この結果、管理部門の手間を削減できる。
本発明の第11の発明に係る人体センサーでは、第8の発明に加えて、推定部は、接続抵抗値が「大」となる前に、「小」の状態を示していた場合に、人体は、転落による離床であると推定する。
この構成により、推定部は、問題ある状態を即座に推定できる。結果として、患者や介護対象者の安全確保が図られる。
本発明の第12の発明に係る人体センサーでは、第5の発明に加えて、計測部は、接続抵抗値を、「大」、「中」、「小」のいずれかで計測し、推定部は、(1)接続抵抗値が、「大」と「小」を、繰り返す場合、(2)所定期間における「大」となる回数が所定数以上である場合、(3)所定期間における「大」となる時間量が、所定数以上である場合、(4)所定期間において、接続抵抗値が、「大」、「中」、「小」同士の変化を、頻発する場合、との少なくとも一つである場合に、人体を、危険状態であると推定する。
この構成により、推定部は、患者や介護対象者の危険性を、早期に推定できる。結果として、患者や介護対象者の安全性が高まり、管理部門の信頼性も高まる。
本発明の第13の発明に係る人体センサーでは、第5の発明に加えて、計測部は、接続抵抗値を、「大」、「中」、「小」のいずれかで計測し、推定部は、(1)接続抵抗値が、所定時間内に、「小」から「大」に変化する場合、(2)接続抵抗値が、所定時間内に、「大」から「小」に変化する場合、の少なくとも一つである場合に、人体を、危険状態であると推定する。
本発明の第14の発明に係る人体センサーでは、第5の発明に加えて、計測部は、接続抵抗値を、「大」、「中」、「小」のいずれかで計測し、推定部は、所定期間以上に渡って、接続抵抗値が「大」である場合には、人体を、危険状態であると推定する。
本発明の第15の発明に係る人体センサーでは、第4の発明に加えて、第1電極、導電部および第2電極は、ベッドの座面であって、人体の上半身および下半身に設置される場合において、計測部は、上半身における上部接続抵抗値と下半身における下部接続抵抗値と、のそれぞれを、「大」、「中」、「小」のいずれかで計測し、(1)上部接続抵抗値が「小」もしくは「中」であって、下部接続抵抗値が「大」である、(2)上部接続抵抗値が「大」であって、下部接続抵抗値が「小」もしくは「中」である、との少なくとも一つである場合に、人体を、危険状態であると推定する。
これらの構成により、推定部は、患者や介護対象者の危険性を、早期に推定できる。結果として、患者や介護対象者の安全性が高まり、管理部門の信頼性も高まる。
本発明の第16の発明に係る人体センサーでは、第1から第15のいずれかの発明に加えて、推定部の推定結果を、管理部門に通知する通知部を更に備える。
この構成により、人体センサーは、管理部門への早期の警告を促すことができる。
本発明の第17の発明に係る人体センサーでは、第16の発明に加えて、通知部は、音、発光、施設内放送および電子メールの少なくとも一つを用いて警告を発する。
この構成により、管理部門は、即座に対応できる。
本発明の第18の発明に係る人体センサーでは、第1から第17のいずれかの発明に加えて、推定部の推定結果に基づいて、照明機器、空調機器、映像機器および音響機器の少なくとも一つを調整する、調整部を更に備える。
この構成により、人体センサーは、患者や介護対象者に、更なる快適性を提供できる。
本発明の第19の発明に係る人体センサーでは、第18の発明に加えて、調整部は、推定結果が寝返り状態である場合に、照明機器の照度を低減する。
この構成により、患者や介護対象者の寝苦しさを解消できる。
本発明の第20の発明に係る人体センサーでは、第18又は第19の発明に加えて、調整部は、推定結果が寝返り状態である場合に、空調機器が暖房であれば、設定温度を低下させ、空調機器が冷房であれば、設定温度を上昇させる。
この構成により、患者や介護対象者の寝苦しさを解消できる。
本発明の第21の発明に係る人体センサーでは、第18の発明に加えて、調整部は、推定結果が離床状態である場合に、照明機器、空調機器、映像機器および音響機器の少なくとも一つを、停止状態とする。
この構成により、エコや省エネが実現される。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
(実施の形態1)
(全体概要)
図1〜図3を用いて本発明の実施の形態1における人体センサーの概要を説明する。最初に、図1を用いて、使用者である患者や介護対象者がベッドに就寝している場合の危険性について説明する。図1は、本発明の実施の形態1におけるベッドに使用者が就寝している状態を示す模式図である。図1は、ベッドを側面から見た状態を示している。
ベッド11の座面12には、人体10が就寝している。ここで、就寝とは、寝ている状態のみを意味するのではなく、意識としては起きているが横たわっていたり、病気療養のために横たわっていたりする状態も意味する。要は、病気や怪我をしている患者や介護対象者が、横たわっている状態である。
病院や介護施設などに設置されているベッド11は、診療や介護の利便性のために、腰高の高さであること多く、図1に示されるように脚部13を備えている。脚部13によって、ベッド11は腰高程度の高さを有することになり、ベッド11の座面12の高さ、すなわち人体10の就寝している高さは、腰高程度の高さとなる。座面12には、シーツ14が敷いてあり、シーツ14の下に人体センサー1の本体部2が設置されている。本体部2には、人体10による人体の少なくとも一部からの圧力が付与される。
患者や介護対象者である人体10であって、実施の形態1の人体センサー1による管理が必要な人体10は、身心に衰えや障害を有していることが多い。このため、このような人体10は、ベッド10から降りたり、ベッド10の上で体位を変えたりなどの動作に不具合を感じる。人体10は、予測できない不測の動作によって、ベッド11から落下したり、徘徊行動をしたりすることもある。ベッド11は、上述の通り、腰高程度の高さを有しているので、落下すると人体10は怪我をする恐れもある。人体10にとってはもちろんのこと、管理責任のある病院や介護施設にとっても、回避すべきリスクである。
あるいは、落下した後で、落下した人体10が長時間放置されると、怪我がひどくなったり、点滴治療が中断されたりすることによる容態の急変が生じる問題もある。このため、ベッド11に就寝している人体10が、落下や徘徊の危険性を有していないか、あるいは落下した後で放置状態になっていないか、といったことが、簡便かつ正確に把握され管理されることが重要である。当然ながら、病院や介護施設などは、人的負担を減らしつつ、管理することを必要とする。
実施の形態1における人体センサー1は、人体10の少なくとも一部からの圧力を受けることが可能なように、その本体部2を人体10の下に設置される。この圧力によって、人体センサー1は、接続抵抗値を変化させて、人体10の状態を推測する。この推測された状態によって、管理者は、人体10の危険性や問題を早期に把握することができる。
図2は、本発明の実施の形態1における人体センサーのブロック図である。図3は、本発明の実施の形態1における人体センサーのブロック図である。図3は、人体センサー1の本体部2を、説明の便宜のために、要素ごとに分離した状態として示している。図3の本体部2は、要素ごとに分離しているが、実際に製造されて使用される人体センサー2の本体部2は、図1、図2のように、一体となっている。
人体センサー2は、大きく本体部2、制御手段3および本体部2と制御手段3とを電気的に接続する導電ケーブル4を備えている。図1〜図3では、本体部2、制御手段3および導電ケーブル4が別体として示されているが、一部もしくは全部が一体で構成されても良い。要は、機能としての要素として、本体部2、制御手段3および導電ケーブル4が把握されれば良く、物理的、視覚的に一体であるか別体であるかの必要性はない。
本体部2は、人体10の圧力を受けることが可能であるように、ベッド11の座面12に設置される。もちろん、ベッド11以外に適用される場合には、そこに設置されれば良い。
本体部2は、人体10の少なくとも一部からの圧力を受けることが可能な平面状の第1電極21と、第1電極21と離隔して対向する平面状の第2電極22と、第1電極21と第2電極22との間に介在する導電部23を備える。また、必要に応じて、第1電極21と導電部23との間に、絶縁部24を備えても良い。絶縁部24は、第2電極22と導電部23との間に備わっても良い。第1電極21に付与される人体10の圧力によって、第1電極21および第2電極22は、その離隔距離を狭めて接触を生じさせ、導電部23を介して電気的に接続する。このため、第1電極21に付与される圧力の変化によって、第1電極21と第2電極22との接触状態が変化して(距離的な変化、点接触する数の変化、面接触する面積の変化などによる)、第1電極21と第2電極22との接続抵抗値が変化する。
制御手段3は、第1電極21および第2電極22と、導電ケーブル4で電気的に接続される。導電ケーブル4は有線であっても無線であってもよい。制御手段3は、第1電極21と第2電極22との接続抵抗値、第1電極21と第2電極22との導電電流値および第1電極21と第2電極22との導電電圧値の少なくとも一つを計測する計測部5と、接続抵抗値、導電電流値および導電電圧値の少なくとも一つにおける、大きさ、変化状態、変化量、時間との関係および積分値の少なくとも一つに基づいて、人体10の状態を推定する推定部6と、を備える。
ここで、第1電極21および第2電極22における「第1」、「第2」は、便宜上の名称であり、第1電極21と第2電極22が厳密に区別されるものではない。すなわち、人体10の圧力を受けるのは第1電極21であるとして記載しているが、本体部2が備える一対の電極の一方が、人体10に対向する位置に配置されて、人体10の圧力を受ければよいものである。すなわち、本体部2がベッド11に配置された際に、人体10側の電極が、第1電極21であるということであり、物理的に特定された第1電極21が、人体10と逆側(ベッド11の座面12側)に配置されたからといって、本発明の範囲外というものではない。また、第2電極22も、第1電極21などを介して、間接的に人体10の圧力を受けてもよい。
また、導電部23は第1電極21および第2電極22と別体であってもよいし、第1電極21および第2電極22のいずれかと一体であっても良い。また、絶縁部24は、導電部23と一体であってもよいし、第1電極21および第2電極22のいずれかと一体であっても良い。すなわち、絶縁部24は、第1電極21、第2電極22および導電部23のいずれかに備わっている状態でも良い。なお、絶縁部24は、第1電極21および第2電極22の少なくとも一方に、圧力が加わっていないときに、第1電極21と第2電極22とが導電しないようにするためのものであるので、第1電極21と第2電極22とが、圧力付与の無い状態で、確実に離隔できる場合などには不要である。
人体センサー1は、このような第1電極21と第2電極22との接続抵抗値を、計測部5を用いて測定する、計測部5は、計測した接続抵抗値を推定部6に出力し、推定部6は、設定された種々のアルゴリズムに基づいて、人体10の状態を推定する。
(動作手順)
次に、人体センサー1の動作手順について説明する。なお、計測部5は、接続抵抗値、導電電流値および導電電圧値の少なくとも一つを計測するが、ここでは、接続抵抗値を例として説明する。接続抵抗値、導電電流値および導電電圧値のそれぞれは、オームの法則によって一義的な関連性を有するので、接続抵抗値に基づいて説明することは、導電電流値もしくは導電電圧値に基づいて説明することと同義だからである。
本体部2は、ベッド11の座面12など、人体10の下に配置される。人体10の不快感を防止するために、シーツ14の下に、本体部2が配置されても良い。本体部2は、図2、図3に示されるように、圧力が何もなければ、離隔した状態で相互に対向する第1電極21と第2電極22を有する。また、上述の通り、第1電極21と第2電極22との間に、導電部23および絶縁部24が介在している。ここで、隔離とは、第1電極21と第2電極22とが、絶縁状態となるように物理的に離隔している状態も、絶縁部24による絶縁状態も含む。
第1電極21と第2電極22は、導電部23によって相互に導電(通電)する素材構成であればよい。このため、第1電極21は、第2電極22と対向する対向面を導電性素材で形成し、第2電極22は、導電部23を、第1電極21との対向面に備える構成でも良い。この場合には、絶縁部24は、図3のように、孔25を備えており、この孔25の部分で、第1電極21の対向面と導電部23とが接触することで、第1電極21と第2電極22とが通電する。このとき、第1電極21に加わる人体10の圧力の大きさや分布によって、第1電極21の対向面と導電部23との接触状態が変化する。この接触状態の変化によって、第1電極21と第2電極22との接続抵抗値が変化する。
本体部2は、人体10の下に設置される。人体10が本体部2の上に存在していない場合には、第1電極21には、人体10の圧力が付与されない。一方、本体部2の上に人体10がある場合には、人体10の体重、体型、動きなどによって第1電極21には、圧力が付与される。第1電極21および第2電極22は、平面状であって柔軟性を有するので、本体部2の上に存在する人体10の圧力によって、変形しつつ圧力を受ける。この変形によって、第1電極21と第2電極22との離隔距離が、部位によって変化する。この離隔距離の変化によって、導電部23や絶縁部24(あるいは孔25)によって、第1電極21と第2電極22とが接触する。
このとき、人体10による圧力の付与は、第1電極21の平面の部位によって様々であるので、第1電極21と第2電極22の対向面全体でみると、接触の度合いもばらつく。この結果、第1電極21と第2電極22との間の接続抵抗値も、人体10の圧力の付与状態によって、異なる。
計測部5は、第1電極21および第2電極22と導電ケーブル4によって電気的に接続しているので、第1電極21と第2電極22の間の接続抵抗値を計測できる。ここで、接続抵抗値は、第1電極21(言い換えれば本体部2)に加わる人体10の圧力によって異なる。更にいえば、接続抵抗値は、人体10による圧力の変化に応じて変化する。
このことを利用して、推定部6は、接続抵抗値の大きさ、変化状態、変化量、微分量、時間との関係および積分値の少なくとも一つに基づいて、人体10の状態を推定する。例えば、接続抵抗値が小さい場合には、平面状の第1電極21と第2電極22とは、広い面積にわたって接触していると考えられる。これは、人体10が、第1電極21の広い領域に渡って乗っている状態なので、推定部6は、人体10を、就寝状態であると推定する。逆に、接続抵抗値が大きい場合には、第1電極21と第2電極22とが、広い面積で離隔している状態であると考えられる。この場合、推定部6は、人体10が離床状態であると推定する。もちろん、離床状態は、正常な離床状態、異常な離床状態(人体10のベッド11からの落下など)のいずれも含む。このため、推定部6は、接続抵抗値の変化を踏まえて、人体10のより細かな状態を推定できる。
このように、推定部6が、接続抵抗値に基づいて、人体10の状態を推定できれば、病院や施設の管理者は、患者や介護対象者の危険性を早期かつ高い精度で検出できる。この結果、患者や介護対象者の安全性も高まり、病院や施設の管理能力も高まる。
次に各部の詳細について説明する。
(本体部)
本体部2は、人体10の圧力を受けて、通電しつつ接続抵抗値を変化させる第1電極21や第2電極22を備える要素である。このため、本体部2は、人体10と直接的もしくは間接的に接触する要素になる。人体センサー1が、入院患者や介護対象者などの、ベッド上で生活を送る使用者を対象とする場合には、本体部2は、ベッド上に設置されて、人体10からの圧力を受ける。あるいは、人体センサー1が、車椅子を使用する使用者を対象とする場合には、車椅子に設置されて、人体10からの圧力を受ける。
本体部2は、第1電極21とこれに対向する第2電極22との接続抵抗値の変化を検出できる構造を有していれば、どのような構成であっても良い。図3のように、第1電極21と第2電極22との通電を実現する導電部23と、圧力が掛からない場合に、誤った導電を生じさせないための絶縁部24を、第1電極21と第2電極22との間に備えることもよい。第1電極21〜絶縁部24のそれぞれの要素が、別体であるか一体であるかについては、上述の通り、製造や使用の容易性に鑑みて決定されればよい。
絶縁部24は、絶縁性の素材の一部に設けられる複数の孔25を備えることも好適である。第1電極21と第2電極22に圧力が加わって、相互の距離が縮まる際に、孔25の部分で第1電極21と第2電極22とが、導電部23を介して通電して、接続抵抗値が下がる。逆に、圧力の付与がないか弱い場合には、孔25があっても、絶縁部24の絶縁素材による絶縁力によって、第1電極21と第2電極22との接続抵抗値が上がる。このように、絶縁部24の絶縁性素材の一部に孔25が備わることで、第1電極21と第2電極22との間の接続抵抗値の変化が、第1電極21に付与される圧力に従いやすくなる。
このような接続抵抗値の変化を実現するために、第1電極21、第2電極22および導電部23は、人体10の下面に配置されることが好ましい。もちろん、シーツやカバーを介して、ベッド11の座面12に配置されて、人体10への不快感を低減することも良い。
第1電極21、第2電極22、導電部23および絶縁部24のそれぞれは、平面状であって、柔軟性を有していることが好ましい。平面状であることで、人体10からの広い範囲での圧力を受けるようになるからである。柔軟性があることで、ベッド11の座面、シーツの湾曲、人体10の曲面にも対応しやすくなるからである。それぞれは、布、不織布などの素材で形成されれば良く、導電部23や絶縁部24は、それぞれ導電および絶縁機能を生じさせる素材で形成されれば良い。
また、後述のように、人体10の状態を推定するに当たっては、人体10の上半身の変化を見ることが好適であるので、ベッド11の座面12において、人体10の上半身に対応する位置に、本体部2(すなわち、第1電極21、第2電極22、導電部23および絶縁部24)が、配置されることが好ましい。
(制御手段)
制御手段3は、第1電極21と第2電極22との接続抵抗値を計測して人体10の状態を推定する。
計測部5は、第1電極21および第2電極22と導電ケーブル4によって電気的に接続している。計測部5は、第1電極21および第2電極22と電気的に接続されていれば良いので、有線の導電ケーブル4だけでなく、無線によって電気的に接続されることでも良い。また、計測部5は、接続抵抗値、導電電流値および導電電圧値の少なくとも一つを計測する。計測した結果を、計測部5は、推定部6に出力する。
推定部6は、計測部5から受けた接続抵抗値、導電電流値および導電電圧値の少なくとも一つに基づいて、人体10の状態を推定する。なお、接続抵抗値、導電電流値および導電電圧値のそれぞれは、オームの法則で一義的に関連するので、推定部6は、いずれか一つに基づいて人体10を推定できる。
接続抵抗値は、人体10が本体部2に圧力を付与している状態によって変化するので、接続抵抗値は、人体10の状態や状態変化を推定する基準となる。
推定部6は、人体10を、「寝返り状態」、「離床状態」、「正常な離床状態」、「転落による離床」、「着床状態」、「危険状態」のいずれかで推定する。ここで、危険状態は、危険の種類や危険に続いて生じうる状態を含むが、推定部6は、まず危険状態を推定する。推定部6は、危険の種類や危険に続いて生じうる状態については、必要に応じて推定する。また、寝返り状態は、人体10に問題が無い場合も含み、人体10の病状等に異変が生じている場合も含む。危険状態と同様に、推定部6は、人体10の異変まで推定しても良いし、寝返りまでを推定して、異変については、管理部門判断やその他の処理にゆだねても良い。
なお、寝返り状態とは、人体10が仰向けや横向きなどにごろごろと転がっている状態を示す。すなわち、寝返り状態の人体10は、横向きになって肩や身体の側面によって本体部2に圧力を付与していたり、仰向けに戻って、背中によって本体部2に圧力を付与していたりする。このため、寝返り状態では、人体10によって付与される圧力は、その大きさが変化したり、付与位置が変化したりする。
病院や介護施設などにおいては、人体10の状態を遠隔的に把握したい。着床状態であれば、管理部門は、人体10への特別な考慮や対応を不要とできる。寝返り状態では、管理部門は、人体10への特別な考慮や対応を不要としても良い。あるいは、寝返り状態を病状の異変などと判断して、管理部門は、人体10への対応を行うように判断しても良い。
離床状態の場合には、管理部門は、人体10が正常に離床しているとして、特別な対応をしなくてもよい。あるいは、管理部門は、人体10が、徘徊などの問題を生じさせているとして、訪問や確認などの対応を行っても良い。転落状態や危険状態であると推定される場合には、管理部門は、人体10に問題が生じているものとして、訪問や確認などの早期対応を行う。
以上のように、推定部6が、「寝返り状態」、「離床状態」、「正常な離床状態」、「転落による離床」、「着床状態」、「危険状態」のいずれかを推定することで、管理部門は、人体10である患者や介護対象者の問題を早期に検出できる。検出が早期であることで、患者や介護対象者に生じるシビアな問題を事前に回避できる。
(人体の状態推定)
次に、制御手段3による、人体10の状態推定の詳細について説明する。
計測部5は、接続抵抗値を、所定の第1閾値、第2閾値で区分される、「大」、「中」、「小」のいずれかで計測する。図4は、本発明の実施の形態1における接続抵抗値の分類を示すグラフである。接続抵抗値は、人体10の体位や状況変化に応じて変化する。第2閾値未満においては、計測部5は、接続抵抗値を「小」として計測する。第2閾値以上第1閾値未満においては、計測部5は、接続抵抗値を「中」として計測する。第1閾値以上においては、計測部5は、接続抵抗値を「大」として計測する。もちろん、計測部5は、アナログ的に接続抵抗値を計測し、その後で、「大」、「中」、「小」に分類しても良い。あるいは、計測部5は、図4のグラフに示される接続抵抗値をアナログ的に計測するだけで、推定部6が、「大」、「中」、「小」に分類しても良い。
ここで、大、中、小は、便宜上の用語であり、人体センサー1の仕様や使用者の設定に応じて、接続抵抗値の値を、第1閾値と第2閾値とによって分類すればよい。第1閾値および第2閾値は、使用者によって、可変的に設定できることも好適である。
接続抵抗値が大である場合には、第1電極21と第2電極22とが接触していないと考えられるので、人体10が本体部2に圧力を付与していない状態である。接続抵抗値が中である場合には、第1電極21と第2電極22とが、部分的に接触していたり、不十分ながら接触していたりする状態であると考えられるので、人体10が本体部2に一定の圧力を加えている状態である。接続抵抗値が小である場合には、第1電極21と第2電極22とが、広い領域で接触していたり、十分な圧力で接触していたりする状態であると考えられるので、人体10は、本体部2の上に寝ている状態と考えられる。
これらの特性を利用して、推定部6は、ある時点での接続抵抗値に基づいて、人体10の状態を推定できる。ある時点での接続抵抗値が「大」である場合には、推定部6は、人体10を離床状態として推定する。ある時点での接続抵抗値が「中」である場合には、推定部6は、人体10を寝返りや横向きであるとして推定できる。あるいは、ある時点での接続抵抗値が「小」である場合には、推定部6は、人体10を着床(就寝)状態であると推定できる。
推定部6は、このようにある時点(瞬間)での接続抵抗値に基づいて、人体10の状態を推定しても良い。しかしながら、ある瞬間だけに着目しても、人体10の状態を正確に推定することは難しい。人体10そのものは、時間に沿って姿勢や体位を変化させるからである。このため、推定部6は、接続抵抗値の時間軸での変化に着目して、人体10の状態を推定する。
(寝返り状態の判定)
まず、寝返り状態の判定について説明する。
推定部6は、
(1)接続抵抗値が、ある時点で「中」である場合、
(2)接続抵抗値が、「小」と「中」を繰り返す場合、
(3)所定期間における接続抵抗値の平均値が、「中」である場合、
の少なくとも一つである場合に、人体10を寝返り状態であるとして推定する。
例えば、接続抵抗値がある時点で「中」である場合には、本体部2に付与される圧力が中程度であるので、人体10は、ベッド11の座面12において横向きであるか斜め向きであることが考えられる。
あるいは、接続抵抗値が、「小」と「中」を繰り返す場合は、本体部2に加わる圧力が、大きくなったり中くらいになったりを繰り返している状態である。これは、人体10が座面12において、横を向いたり、仰向けになったりを繰り返しているものと推定される。このため、推定部6は、人体10を寝返り状態として推定する。図5は、本発明の実施の形態1における寝返り状態を推定する場合の接続抵抗値の変化を示すグラフである。図5では、接続抵抗値の変化を、デジタル的に表している。このように、接続抵抗値が、中と小を繰り返す状態であれば、推定部6は、人体10を寝返り状態であると推定する。
あるいは、所定期間における接続抵抗値の平均値が、「中」である場合は、本体部2に加わる圧力が中程度を中心に推移している状態を示す。これは、人体10が、座面12で斜め方向や横方向に向いている状態を繰り返していると推定される。すなわち、これは人体10が寝返りをしていると考えられる。このため、この場合も、推定部6は、人体10を、寝返り状態であると推定する。
次に、第1電極21、第2電極23および導電部23の少なくとも一つが、人体10の横方向に沿って複数の区画に分割される場合について説明する。第1電極21、第2電極22および導電部23の少なくとも一つ(あるいは全部)が、人体10の横方向に沿って分割されると、複数の区画が形成される。この結果、計測部5は、複数の区画ごとの接続抵抗値を計測できる。
図6Aは、本発明の実施の形態1における複数の区画を有する本体部の模式図である。本体部2において、第1電極21、第2電極22および導電部23の少なくとも一つが、人体10の幅方向を分割するように、分割されている。分割によって、区画26A、区画26B、区画26Cが形成される。
図6Bは、この分割された導電部23の区画26A、区画26B,区画26Cと、人体10との関係を示している。人体の幅方向を分割するようにとは、人体の横方向(身長方向に交差する方向)に沿って、導電部23が、区画26A〜26Cに分割されていることを示す。
区画26A〜26Cのそれぞれは、人体10のいずれかの部位と接触しやすい位置に対応する。例えば、端部の区画である区画26Aと区画26Cには、人体10が斜めや横向きになったときに、人体10からの圧力が掛かりやすい。一方、中央の区画である区画26Bには、人体が仰向けもしくはうつぶせとなっているときに、圧力が掛かりやすい。このように、導電部23などが区画に分割されている場合には、人体10の姿勢によって生じる圧力の変化を、区画毎の接続抵抗値によって推定することができる。
計測部5は、区画26A〜26Cのそれぞれにおける接続抵抗値を計測する。計測部5は、区画26A〜26Cのそれぞれの計測された接続抵抗値を、推定部6に出力する。
推定部6は、
(1)複数の区画26A〜26Cにおいて、ある時点で、いずれかの端部の区画26Aもしくは区画26Cにおける接続抵抗値が、中央部の区画26Bにおける接続抵抗値よりも小さい場合、
(2)所定期間における端部の区画26A、26Cにおける接続抵抗値の積分値が、所定期間における中央部の区画26Bにおける接続抵抗値の積分値よりも小さい場合、
の少なくとも一つである場合に、人体10を、寝返り状態であると推定する。
(1)の場合のように、ある時点で、端部である区画26A,26Cでの接続抵抗値が小さいことは、座面12において人体10は、横向きや斜め向きになって端部の区画26A、26Cに圧力を加えていると考えられ、寝返りをしていると推定できるからである。また、(2)の場合のように、端部の区画26A,26Cでの接続抵抗値の積分値が、中央部の区画26Bの接続抵抗値の積分値よりも小さいことは、座面12において人体10は、横向きや斜め向きになって端部の区画26A、26Cに圧力を加えていると考えられる。すなわち、人体10は寝返りしていると考えられるからである。
推定部6が、人体10を寝返り状態と推定すると、必要に応じて推定結果を管理部門に送信する。この送信結果を受けた管理部門は、患者や介護対象者が寝返りをしているものとして、特別な対応や考慮は不要であると判断できる。あるいは、寝返りをすることが容態の変化を示す場合には、管理部門は、患者や介護対象者を訪問して確認しても良い。
(離床状態の推定)
次に、離床状態の推定について説明する。
計測部5は、上述の通り、接続抵抗値を、「大」、「中」、「小」のいずれかで計測する。この計測結果に基づいて、推定部6は、
(1)接続抵抗値が、ある時点で「大」である場合、
(2)所定期間における接続抵抗値の平均値が、「大」である場合、
(3)所定期間以上に渡って、接続抵抗値が、「大」である場合、
の少なくとも一つである場合に、人体10を、離床状態であると推定する。
まず、(1)の場合には、ある時点での接続抵抗値が「大」であるということは、本体部2に人体10の圧力が何らも付与されていない状態と考えられる。理由は様々であるが、人体10は、ベッド11の座面12からいなくなっている状態である。このため、推定部6は、ある時点で接続抵抗値が「大」である場合には、人体10を、離床状態として推定する。
また、(2)の所定期間にわたって接続抵抗値の平均値が「大」である場合には、推定部6は、人体10が離床しているのに等しいと考えて、離床状態として推定する。ある時点だけでなく、継続的に人体10がベッド11にいないものと考えられるからである。
同様に、(3)の所定期間以上に渡って、接続抵抗値が「大」である場合にも、人体10はベッド11にいないものと考えられるので、推定部6は、離床状態として推定する。平均値で考える場合も、値そのもので考える場合も、人体10がベッド11にいないと考えられるからである。
ここで、離床状態は、正常な離床(患者や介護対象者が自身の意思で、ベッド11を離れていたり、診察や治療などの明確な理由で、ベッド11を離れていたりする状態)である場合と、落下や徘徊などの非正常の場合とを含む。推定部6は、接続抵抗値に基づいて、正常な離床状態であるか非正常であるかを区別して推定できる。
(正常な離床との推定)
推定部6は、
(1)接続抵抗値が、「大」となる前に、「小」、「中」の順序で、変化する場合、
(2)接続抵抗値が、「大」となる前に、「中」の状態を示す場合、
のいずれかの場合に、人体10は、正常な離床であると推定する。
人体10が、就寝状態から徐々に自分の意思で徐々に起き上がって離床する場合には、人体10は、上半身を徐々に起こしながら、ベッド11から降りる。このため、人体10による本体部2へ付与される圧力は、徐々に減少することになる。この圧力の変化によって、接続抵抗値は、「小」、「中」、「大」の順序で変化する。
このため、推定部6は(1)の接続抵抗値が、「大」となる前に、「小」、「中」の順序で、変化する場合には、人体10が自分の意思で徐々に起き上がってベッド11から降りたものであるとして、正常な離床であると推定する。
あるいは、寝返り状態や上半身を横向きにしているなどの状態から、人体10が自分の意思で起き上がってベッド11から降りることもある。この場合には、接続抵抗値が「小」である状態からの変化が生じるのではなく、接続抵抗値が「中」から変化する。すなわち、(2)のように、接続抵抗値が、「大」となる前に、「中」の状態を示す。この場合も、推定部6は、人体10を正常な離床であると判定する。
(着床と同様との判断)
また、人体10の圧力が本体部2に付与されていない場合には、第1電極22と第2電極23との間の接続状態がないので、接続抵抗値は、「大」となる。このため、ある時点での接続抵抗値が「大」である場合には、推定部6は、人体10を離床状態として推定できる。
しかしながら、離床状態であるとしても、人体10である患者や介護対象者が、僅かな時間起き上がったり、ベッド11の脇のテーブルなどから物を取り出そうとしてベッド11から僅かな時間降りたりしただけのこともある。この場合に離床状態として推定されると、管理部門にとっては、余分なケアが必要になってしまう問題が生じる。患者や介護対象者にとっても、迷惑である。
このような問題に対応するため、推定部6は、接続抵抗値が「大」であると計測された時点から所定期間内に、接続抵抗値が「小」もしくは「中」となる場合には、人体10を、着床状態であると推定する。例えば、ある時点で、接続抵抗値が「大」に変化しても、それから数秒程度〜数10秒程度以内に、接続抵抗値が「小」や「中」に変化することは、患者や介護対象者が、すぐにベッド11に戻ってきている状態を示している。このような場合を考慮して、推定部6は、着床状態であるとして推定する。
もちろん、所定期間を仕様や状況に応じて可変的に設定することで、一旦接続抵抗値が大となった後での接続抵抗値の変化が生じる場合を、着床状態であるとして推定することを、可変できる。
(転落の推定)
離床状態が、危険な離床である場合には、転落の場合がある。患者や介護対象者が、ベッド11から転落した場合には、早期に発見して処置をとることが重要である。発見や処置が遅れれば、患者や介護対象者にとって危険な状態となりうるからである。
推定部6は、接続抵抗値がある時点で「大」を示す前に、「小」の状態を示していた場合には、人体10を転落による離床であると推定する。すなわち、接続抵抗値が「小」から「大」に変化する場合(接続抵抗値「中」を経過しない場合)は、就寝状態から急にベッド11から患者や介護対象者がいなくなった状態を示すと考えられる。この原因の一つは、人体10のベッド11からの落下である。
このため、推定部6は、接続抵抗値がある時点で「大」を示す前に、「小」の状態を示していた場合には、人体10を落下による離床状態であると推定する。落下であることが推定されれば、推定結果を受けた管理部門は、即座に落下した患者や介護対象者に対応できる。これは、患者や介護対象者にとっての安心・安全を確保できるだけでなく、管理部門の信頼性向上にも役立つ。
接続抵抗値が、小から大へ変化する変化時間、変化度合いなどに基づいて、推定部6は、人体10を落下による離床状態として推定しても良い。
(危険状態の推定)
人体10は、その動作、体位変化、姿勢変化、行動などによって、本体部2への圧力の付与を変化させる。上述の落下のようにはっきりした危険状態に陥っているわけではないが、危険な状態に近づいていたり、危険性の蓋然性が高い状態であったりする場合もある。
推定部6は、このような危険状態を推定して、管理部門に通知可能にすることも好適である。危険状態の通知を受けた管理部門は、患者や介護対象者への早期の退所を行えるからである。
計測部5は、接続抵抗値を「大」、「中」、「小」のいずれかで計測する。推定部6は、
(1)接続抵抗値が、「大」と「小」を、繰り返す場合、
(2)所定期間における「大」となる回数が所定数以上である場合、
(3)所定期間における「大」となる時間量が、所定数以上である場合、
(4)所定期間において、接続抵抗値が、「大」、「中」、「小」同士の変化を、頻発する場合、
の少なくとも一つである場合に、人体10を、危険状態であると推定する。
(1)の接続抵抗値が大と小を繰り返すということは、例えば、人体10が、ベッド11から降りたりベッドに寝たりを繰り返していたり、人体10が、上半身を座面12から起こしたり座面12に戻したりを繰り返したりしている状態と考えられる。人体10である患者や介護対象者が、体調や具合が悪いことで、このような行動を繰り返している可能性がある。あるいは、患者や介護対象者が、不快を感じて、このような繰り返し行動をしている可能性がある。
このような状態を放置することは、患者や介護対象者の容態の急変をもたらしかねず、非常に危険性が高い蓋然性がある。このため、推定部6は、(1)の接続抵抗値が大と小を繰り返す場合には、危険な状態であるとし、人体10を危険状態として推定する。
また、(2)の所定期間における「大」となる回数が所定数以上であるということは、ある期間において、人体10が、起き上がったり、ベッド11から降りたりする回数が多いことを示している。人体10である患者や介護対象者が、頻繁に起き上がったり、ベッド11から降りたりする状態は、患者や介護対象者が、予測不能な行動を生じさせている可能性がある。例えば、精神疾患の患者であれば、挙動不審の状態であり、放置しておくことは、患者や介護対象者にとって好ましくない。このため、推定部6は、このような接続抵抗値の検出がある場合には、人体10を危険状態であると推定する。
なお、ここでの所定期間は、適宜定められれば良い。患者や介護対象者の容態や病状レベルに応じて、所定期間が増減されればよい。容態の重い患者や介護対象者であれば、所定期間を短くすることが好適である。逆であれば、長くすれば、管理部門の負担軽減にもなる。
また、(3)の所定期間における「大」となる時間量が、所定数以上であるとは、不用意に患者や介護対象者がベッド11から離床している可能性を示唆している。もちろん、正常な離床である場合もあるが、患者や介護対象者の予測不能な行動に基づく場合もある。例えば、徘徊である。あるいは、患者や介護対象者が、禁止されている外出を行っている可能性もある。このような状態を放置することは、患者や介護対象者の容態の急変を生じさせたり、施設におけるモラル低下を引き起こしたりする可能性がある。
このため、この(3)のような場合にも、推定部6は、人体10を危険状態であるとして推定する。管理部門は、問題を未然に防止しやすくなり、患者や介護対象者へのサービス向上および施設の信頼性向上を実現できる。
また、(4)の所定期間において、接続抵抗値が、「大」、「中」、「小」同士の変化を、頻発する場合には、患者や介護対象者が、起き上がったり、寝たり、あるいは横向きになったりなどの、不可解な動作や姿勢変化を繰り返している状態と考えられる。例えば、患者や介護対象者は、寝苦しさを感じていたり、具合が悪くなっていたりする。
このため、推定部6は、このような接続抵抗値の変化の場合にも、人体10を危険状態であるとして推定する。実際には、患者や介護対象者が容態急変ではないかも知れないが、蓋然性の高い状態を早期に推定できることで、管理部門による早期対応が可能となる。
(危険状態の推定その2)
推定部6は、
(1)接続抵抗値が、所定時間内に、「小」から「大」に変化する場合、
(2)接続抵抗値が、所定時間内に、「大」から「小」に変化する場合、
の少なくとも一つである場合に、人体10を、危険状態であると推定する。
(1)の接続抵抗値が、所定時間内に、小から大に変化する場合とは、例えば急激に小から大に変化する場合や、ある一定時間内に(短い時間内に)小から大に変化する。これらは、就寝状態であった患者や介護対象者が、急にベッド11からいなくなってしまったような状態を示していると考えられる。正常な状態で離床したことも考えられるが、不測の事態で離床した可能性も含まれる。
図7は、本発明の実施の形態1における危険状態の推定2の基礎となる接続抵抗値の変化を示すグラフである。グラフの左半分は、上記(1)のように、接続抵抗値が小から大に変化する場合である。グラフの右半分は、上記(2)のように、接続抵抗値が大から小に変化する場合である。いずれも、変化の度合いが急峻であり、離床と就寝状態との相互変化が急である場合を示していると考えられる。つまり、接続抵抗値が大と小との変化をすることも、変化度合いが急峻であることも、危険状態の推定2では、推定部6は、対応する。
このため、推定部6は、所定期間(特に、短い期間内に)に、接続抵抗値が小から大に変化する場合には、人体10を危険状態であると推定する。危険状態となる蓋然性を含んでいると考えられるからである。
また、逆に(2)のように、所定期間内(特に、短い期間内に)に、接続抵抗値が大から小へ変化する場合も、患者や介護対象者が、スムーズな動作をしていないと考えられる。例えば、患者や介護対象者が、離床した後で具合が悪くなり、倒れるようにベッド11に倒れこむ場合が想定される。この場合も、放置することは、患者や介護対象者にとって、危険な状態となりうる。
このため、この(2)の場合にも、推定部6は、人体10を危険状態として推定する。この推定を受けた管理部門は、病床を訪問するなどして、早期に対応できる。
(危険状態の推定3)
推定部6は、所定期間以上に渡って、接続抵抗値が「大」である場合には、人体10を、危険状態であると推定する。接続抵抗値が大であるということは、患者や介護対象者が離床している状態を示していると考えられる。当然ながら、正常な離床状態である場合もあるが、長時間にわたって離床状態であることは、患者や介護対象者が、徘徊している可能性もある。徘徊状態であることは、患者や介護対象者にとって問題を生じさせる可能性がある。
このため、このような場合も、推定部6は、危険状態であると推定する。なお、所定期間以上に渡って接続抵抗値が「大」であることは、徘徊や違反外出などの危険状態であることを含みつつ、正常な離床を含むことがある。このため、患者や介護対象者の特性に合わせて、所定期間を可変的に設定することが好適である。例えば、重病患者であれば、自発的な離床は考えにくい。この場合には、所定期間を短くすることで、危険状態を早期に検出できる。
(危険状態の推定4)
第1電極、導電部および第2電極を含む本体部2が、ベッド11の座面12であって、人体10の上半身および下半身に設置される場合がある。上半身および下半身の両方の圧力に基づいて、より精密に人体10を推定することも好適である。
図8は、本発明の実施の形態における人体センサーを設置した状態を示す模式図である。図1の場合と異なり、座面12の上に、2つの本体部2が設置されている。一つの本体部2は、人体10の上半身に設置され、もう一つの本体部2は、人体10の下半身に設置される。上半身の本体部2は、上部接続抵抗値を生じさせ、下半身の本体部2は、下部接続抵抗値を生じさせる。
計測部5は、上半身における上部接続抵抗値と下半身における下部接続抵抗値と、のそれぞれを、「大」、「中」、「小」のいずれかで計測して推定部6に出力する。
推定部は、
(1)上部接続抵抗値が「小」もしくは「中」であって、下部接続抵抗値が「大」である、
(2)上部接続抵抗値が「大」であって、下部接続抵抗値が「小」もしくは「中」である、
の少なくとも一つである場合に、人体10を、危険状態であると推定する。
(1)の上部接続抵抗値が小もしくは中であって、下部接続抵抗値が、大である場合は、上半身は、ベッド11の座面12に一定の圧力を付与しているが、下半身は、座面12に圧力を付与していないと考えられる。これは、患者や介護対象者の足が、ベッド11からずり落ちている状態の場合を含んでいる。この状態を放置すると、患者や介護対象者が落下するなどの問題が生じる。このため、推定部6は、この(1)の場合には、人体10を危険状態であると推定する。
また、(2)の上部接続抵抗値が「大」であって、下部接続抵抗値が「小」もしくは「中」である場合は、上半身だけが、ベッド11からはみ出ている可能性を示唆している。上半身がベッド11からはみ出ている状態であれば、そのまま落下する可能性もあり、患者や介護対象者にとって危険である。
このため、この場合にも、推定部6は、人体10を危険状態であると推定する。推定されれば、管理部門による早期の対処が可能となり、患者や介護対象者へのリスク管理が図られる。
もちろん、大、中、小の値の設定を変化させることや、本体部2の設置位置を詳細に設定することで、危険状態の推定精度は更に向上する。
以上のように、危険状態であると推定される場合には、この推定結果を受けた管理部門が、適切な対応をとることができる。例えば、病院や介護施設であれば、看護師や医師を、早期に患者や介護対象者の病床に派遣することもできる。この結果、患者や介護対象者にとって、安心感が高まる。当然、管理部門にとっても信頼性の向上や管理の容易性などのメリットが高まる。
なお、ここで説明した接続抵抗値の分類は、仕様に応じた一例であり、適宜定められれば良い。また、大、中、小の定義は、一義的なものではなく、仕様に応じて可変であればよい。
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について説明する。実施の形態2は、危険状態や落下状態などで推定された場合に、管理部門へ警告を発する態様を説明する。
推定部6は、人体10の状態を、危険状態や離床状態などとして推定する。この推定結果に基づいて、管理部門が、適切な処置や対応をとることは、患者および管理部門の双方にとって好ましい。実施の形態2における人体センサー1は、推定部6が推定した推定結果を、管理部門に警告として通知する、通知部を更に備える。
図9は、本発明の実施の形態2における人体センサーのブロック図である。図2などと同じ符号は、同様の機能を有する要素であり、必要に応じて説明を省略する。
人体センサー1は、通知部7を更に備える。通知部7は、推定部6での推定結果を、管理部門100に通知する。通知部7は、本体部2に設けられても良いが、推定部6での推定結果を通知することから、推定部6と同じく制御手段3に設けられてもよい。このため、通知部7は、導電ケーブル4によって、本体部2と間接的に接続される。推定部6と通知部7との電気的な接続によって、電気信号をやり取りして、通知部7は、推定結果を通知できる。
推定部6は、離床状態、着床状態、危険状態、転落による離床状態など、様々な状態を、推定する。これらの推定結果は、逐次管理部門100に通知されることが好ましい。着床状態や問題のない離床状態であれば、これらの推定結果は、即座に管理部門100に通知されなくても問題ない。もちろん、着床状態や問題のない離床状態も、即座に管理部門100に通知されることで、管理部門100は、患者や介護対象者を十分に管理できる。
一方、危険状態や転落による離床状態などの推定結果は、即座に管理部門100に通知されることが好ましい。即座に通知されることで、管理部門100は、患者や介護対象者の問題に早期に対処できるからである。このため、問題のない推定結果が得られる場合には、通知部7は、通知しないかもしくは事後的に通知してもよい。あるいは、通知部7は、通知においては緊急性や警告性を生じさせない通知を行っても良い。一方、問題のある推定結果が得られる場合には、通知部7は、即座かつ警告性をもって通知を行うことが好適である。
後者の場合には、通知部7は、音、発光、施設内放送および電子メールの少なくとも一つを用いて警告を発する。この警告によって、管理部門100は、患者や介護対象者の問題を早期に把握できる。早期に把握した管理部門100は、スタッフを病室に派遣するなど、早期の対応を行える。結果として、患者や介護対象者の安心、および管理部門100の信頼性向上が得られる。
通知手段7は、有線や無線によって、電気信号を管理部門100に送信して、管理部門100に通知しても良い。通知部7は、一つの人体センサー1に一つずつ備わっていても良いし、複数の人体センサー1に対して、一つの通知部7が備わっていても良い。一つの通知部7が、複数の人体センサー1に対応する場合には、複数の推定部6と、無線もしくは有線で、この一つの通知部7が接続されれば良い。
また、通知部7は、管理部門100に備わる放送機器、携帯端末、携帯電話機などと連動して動作するものでも良い。また、通知部7は、管理部門100だけではなく、患者や介護対象者の家族などに通知を行っても良い。
実施の形態2における人体センサー1は、推定結果を確実に管理部門100に通知できるので、患者や介護対象者へのケア対応が更に高まる。
(実施の形態3)
次に、実施の形態3について説明する。実施の形態3は、実施の形態1で説明した推定部6の推定結果に合わせて、患者や介護対象者への利便性を更に高める人体センサー1を説明する。
図10は、本発明の実施の形態3における人体センサーのブロック図である。図10に示される人体センサー1は、その制御手段3において、調整部8を備えている。調整部8は、推定部6の推定結果に基づいて、人体10である患者や介護対象者の快適性や利便性を向上させるために、照明機器、空調機器、映像機器および音響機器を調整する。人体10の推定結果によっては、患者や介護対象者にとっての快適性のレンジが変わるからである。
例えば、照明機器は、照度や明度を変えることができる。患者や介護対象者が正常な就寝や寝返り状態などの変化を生じさせる場合には、照明機器に要求される照度は異なる。同様に、空調機器は、その設定温度を変えることができる。患者や介護対象者が正常な就寝や寝返り状態などの変化を生じさせる場合には、空調機器に要求される設定温度は異なる。
このため、調整部8は、照明機器、空調機器、映像機器および音響機器のそれぞれの設定を調整する。
例えば、推定部6での人体10の推定結果が、寝返り状態である場合がある。この場合には、人体10である患者や介護対象者は、寝苦しさを感じている可能性がある。このため、調整部8は、照明機器の照度を低減することも好適である。照明機器の照度がまぶしくて、患者や介護対象者が寝苦しさを感じている可能性があるからである。部屋の照明機器、手元の電気スタンドなど、種々の照明機器が、施設には設置されている。調整部8は、寝返り状態との推定結果を受けて、これらの照明機器の照度を低減する。照明機器に予め備わっている照度調整を、調整部8は制御しても良いし、強制的に照明機器の照度を低減しても良い。場合によっては、調整部8は、照明機器を消灯する。
また、患者や介護対象者が寝苦しさを感じている場合には、室内の温度や湿度に問題がある可能性もある。このため、調整部8は、空調機器の設定温度を調整することも好適である。具体的には、空調機器が暖房であれば、調整部8は、設定温度を低下させる。暖房が効きすぎている可能性があるからである。一方、空調機器が冷房であれば、調整部8は、設定温度を上昇させる。冷房が効きすぎている可能性があるからである。
もちろん、暖房および冷房の効き目が悪いことで、患者や介護対象者が寝苦しさを感じている可能性もある。この場合には、調整部8は、暖房の設定温度を上昇させたり、冷房の設定温度を低下させたりする。このとき、調整部8は、空調機器に予め備わっている調節機能への働きかけによって、設定温度を変化させれば良い。
また、推定部6での推定結果が、離床状態である場合には、調整部8は、照明機器、空調機器、映像機器および音響機器の少なくとも一つを、停止状態にしても良い。離床状態であれば、これらは必要ないことも多く、エコや省エネの観点からも停止にすることが好ましいからである。もちろん、離床する患者や介護対象者が、自らこれらの機器の停止をすれば良いが、患者や介護対象者はその肉体・精神の衰えから、これを忘れる可能性がある。このため、推定結果に基づいて、調整部8がこれら機器の停止を制御することは好適である。
以上のように、実施の形態3の人体センサーは、推定結果に基づいて機器の調整を行えるので、患者や介護対象者の快適性や利便性を更に向上させることができる。
(実施の形態4)
実施の形態4は、実施の形態1〜3で説明した人体センサー1を用いた安全管理装置について説明する。
図11は、本発明の実施の形態4における安全管理装置の模式図である。安全管理装置は、人体センサー1(制御手段3なども含む)、受信手段201、通知手段202を備えている。受信手段201は、人体センサー1で推定された推定結果を受信する。受信手段201は、無線、有線のいずれかを用いて、推定結果を受信する。受信手段201は、受信結果を通知手段202に出力する。通知手段202は、受信手段201での受信結果を管理部門100に通知する。
受信手段201は、推定部6で推定された推定結果を受信する。例えば、受信手段201は、管理部門100に設置されていても良い。推定部6は、無線もしくは有線で受信手段201に推定結果を出力する。受信手段201は、この推定結果を受ける。管理部門100に設置されていることで、ある施設における受信手段201は、一つにまとめることができるようになる。
通知手段202は、種々の手段で、管理部門100に通知する。このとき、推定結果をそのままの状態で通知しても良い。例えば、寝返り状態や危険状態との情報を、そのままの状態で通知する。あるいは、これらを加工した情報として通知してもよい。例えば、危険状態である場合には、即座に患者や介護対象者を訪問したほうがよいので、通知手段202は、管理部門100に患者や介護対象者を訪問することを促すように通知しても良い。
通知手段202は、管理部門100に統一して設置されても良いし、各部屋に設置されてもよい。これは、受信手段201とあわせられれば良い。また、通知手段202は、音、発光、放送、電子メールなどの種々の手段によって、管理部門100に通知する。いずれにおいても、効果的に管理部門100へ警告が促されれば良い。
このような安全管理装置は、病院や介護施設などの様々な場所で、好適に用いられる。
なお、実施の形態1〜4で説明された人体センサーおよび安全管理装置は、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。