JP5921241B2 - プラズマ生成装置、プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、マイクロ波を利用してプラズマを発生させるプラズマ生成装置並びにこのプラズマ生成装置を利用したプラズマ処理装置及びプラズマ処理方法に関する。
マイクロ波を処理容器内に導入して処理ガスのプラズマを発生させるマイクロ波プラズマ処理装置として、処理容器内を減圧にしてプラズマを生成させる低圧プラズマ方式と、大気圧でプラズマを生成させる大気圧プラズマ方式が知られている。
低圧プラズマ方式の従来技術として、例えば特許文献1では、導波管の長手方向に形成された複数のスロットの配置と配設数を、自由空間波長λ及び管内波長λgとの関係で規定するとともに、マイクロ波電源側からみた導波管内のインピーダンスを、逆向きに電源側をみた導波管内のインピーダンスとほぼ等しくしたプラズマ処理装置が提案されている。特許文献1は、プラスチックフィルム等の大面積の被処理体に対し、均一なプラズマ処理を行うことを可能にした点で優れた提案である。しかし、低圧プラズマ方式を採用する特許文献1では、処理容器内を低圧に保持するために、導波管と処理容器との間に誘電体板を介在させている。この誘電体板は、プラズマの均一性を高める観点では効果的であるが、導波管と処理容器との間に配設された誘電体板によってマイクロ波が吸収され、エネルギー利用効率が低下するという面がある。従って、エネルギー損失を極力少なくして被処理体を高密度プラズマで処理する、という目的においては、改善の余地が残されている。
また、プロセスガスは、処理容器内に導入されるマイクロ波に対して偏りなく供給することが効果的である。しかし、一般的に、導波管と処理容器との間に誘電体板を介在させた構造では、プロセスガスを処理容器内に直接導入しなければならない。しかも、誘電体板の存在によって、処理容器の天井部にシャワーヘッドを設けることができないため、ガス導入部の配置は、導波管から離れた位置(例えば処理容器の側壁など)に制約されてしまう。このようにガス導入部位が制約されることによって、処理容器内でプラズマの均一性や被処理体の面内での処理の均一性を実現することが困難になる場合もある。
低圧プラズマ方式の別の従来例として、特許文献2では、マイクロ波を伝播させる導波管を真空容器内に挿入したプラズマ処理装置が提案されている。この特許文献2では、導波管を真空容器内に設けることにより、真空を保持するための誘電体部材を小さく、かつ薄くすることができ、大面積の被処理体に対して均一な処理ができるとされている。しかし、特許文献2の装置は、気密性が求められる真空容器内に導波管が配置される2重構造になっており、装置構成が複雑で実現可能性の点で疑問がある。また、特許文献2では誘電体板を設けていないが、導波管から離れた処理容器の側壁にガス導入部位が設けられているため、処理容器内でプラズマの均一性や被処理体の面内での処理の均一性が得られにくい、という点で課題を有している。
また、低圧プラズマ方式のさらに別の従来例として、非特許文献1には、大規模マイクロ波ラインプラズマを生成させるプラズマ生成装置が開示されている。このプラズマ生成装置は、底面に長尺な1本のスロットが形成された矩形導波管の終端に、マイクロ波を反射させる目的で、位置を調節可能なプランジャーを配備したものである。しかし、このプラズマ生成装置は、ガラス板で真空シールされたステンレス製チャンバー内において、667Pa(5Torr)程度の低圧力条件でArプラズマを生成させるものである。従って、大気圧プラズマ装置への適用については全く考慮されておらず、検討もされていない。
一方、大気圧プラズマ方式の従来例として、特許文献3では、プラズマ発生部の内部に、スロットアンテナと、このスロットアンテナのスロット形成面に直角に接続してマイクロ波を均一にする均一化線路と、この均一化線路の先端側に設けられてマイクロ波を放射するスリットと、を備えたプラズマ処理装置が提案されている。特許文献3のプラズマ処理装置では、前記スリットの外側に形成される被処理体との隙間にプロセスガスを連続的に供給してプラズマを生成させることにより、大気圧で被処理体をプラズマ処理する構成になっている。この大気圧プラズマ処理装置は、誘電体板が不要であるという利点があるが、導波管のスロットと、均一化線路のスリットとが必要であり、いわば導波路とスロットをそれぞれ2つずつ設けた構造になっている。従って、装置構成が複雑であるとともに、マイクロ波の伝送制御が難しく、反射波の発生によりマイクロ波が途中で減衰する可能性もあり、高効率にプラズマを生成させる、という観点で満足のいくものではなかった。
ところで、先に本発明者らは、長尺な導波管内にマイクロ波を供給し、導波管内の長尺方向に形成されるマイクロ波の定在波の腹の位置にあたる導波管の壁に複数のスロット孔を形成し、該スロット孔内部で高密度大気圧プラズマを生成させるプラズマ生成装置を提案した(特願2010−207774)。この提案のプラズマ生成装置では、原理上、定在波の腹の位置で電界が強く、節の位置で電界が弱くなる傾向がある。そのため、導波管の長尺方向に均一なプラズマが生成されず、被処理体上で導波管の長尺方向に処理結果の分布が生じることがあり、改善の余地があった。
特開2009―224269号公報 特開2004―200390号公報 特開2001―93871号公報
木村康人ら、「大規模マイクロ波ラインプラズマの生成」、第27回プラズマプロセシング研究会(SPP−27) プロシーディングス論文 P1−04
本発明は、長尺な導波管を用いて均一なラインプラズマを生成し、被処理体に対し均一な処理が可能な大気圧方式のプラズマ生成装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、鋭意研究を行った結果、本発明者らは、長尺な導波管内で生成する定在波の位相を変化させる手段を設けることにより、導波管の長尺方向において高密度のラインプラズマを均一に生成できることを見出し、本発明を完成した。
本発明のプラズマ生成装置は、マイクロ波を発生させるマイクロ波発生装置と、
前記マイクロ波発生装置に接続され、マイクロ波の伝送方向に長尺をなすとともに、該伝送方向に直交する方向の断面が矩形をした長尺な中空状の導波管と、
前記導波管に接続されてその内部へ処理ガスを供給するガス供給装置と、
前記導波管の一部分であって、マイクロ波により生成したプラズマを外部に放出するアンテナ部と、
前記アンテナ部の短辺もしくは長辺をなす壁に形成された1又は複数のスロット孔と、
前記導波管内で生成する前記マイクロ波による定在波の位相を周期的にシフトさせる位相シフト手段と、
を備え、大気圧状態の前記導波管内に供給された処理ガスをマイクロ波によって前記スロット孔でプラズマ化し、前記スロット孔から外部へ放出するものである。ここで、前記位相シフト手段が、前記導波管内を進行してくるマイクロ波を透過及び/又は反射する壁部材を有しており、該壁部材によって前記定在波の腹と節の位置を周期的に変化させるものであってもよい。
本発明のプラズマ生成装置は、前記壁部材が、前記導波管の長尺方向に対して交差する方向で、前記導波管内へ進出し、もしくは導波管内から退避する直線運動をするものであってもよい。
また、本発明のプラズマ生成装置は、前記壁部材が、前記導波管の長尺方向に一致する方向を回転軸として回転運動するものであってもよい。この場合、前記壁部材の回転運動が偏心回転であってもよいし、前記壁部材が回転方向に不均一な形状を有していてもよいし、あるいは、前記壁部材が、前記導波管の長尺方向に異なる厚みを有していてもよい。
また、本発明のプラズマ生成装置は、前記壁部材が、前記導波管の長尺方向に対して交差する方向を回転軸として回転運動するものであってもよい。
また、本発明のプラズマ生成装置は、前記壁部材が、前記導波管の終端部に設けられ、該導波管の長尺方向に導波管内に進出し、もしくは導波管内から退避する直線運動をするものであってもよい。
また、本発明のプラズマ生成装置は、前記壁部材の材質が、誘電体又は金属からなるものであってもよい。
また、本発明のプラズマ生成装置は、前記位相シフト手段を覆うカバー部材をさらに備えていてもよい。
また、本発明のプラズマ生成装置は、前記位相シフト手段が、前記アンテナ部を間に挟んでその両側において前記矩形導波管に接続して設けられた一対の移相器であってもよく、該一対の移相器は、互いに逆相で動作するものであってもよい。
また、本発明のプラズマ生成装置において、前記スロット孔は、矩形状に設けられており、その長手方向と前記アンテナ部の長手方向が一致するように配設されていてもよい。この場合、前記アンテナ部に長尺な一つのスロット孔のみが設けられていてもよいし、前記アンテナ部に複数のスロット孔が一列に配設されていてもよいし、あるいは、前記アンテナ部に複数のスロット孔が並列的に複数列配置されていてもよい。
また、本発明のプラズマ生成装置は、前記マイクロ波発生装置と前記アンテナ部との間の前記導波管内に、前記処理ガスの通過を遮る隔壁を備えていてもよい。
また、本発明のプラズマ生成装置において、前記スロット孔の縁面は、前記壁の厚み方向に開口幅が変化するように傾斜して設けられていてもよい。
また、本発明のプラズマ生成装置は、さらに、パルス発生器を備え、マイクロ波をパルス状に発生させてプラズマを生成させるものであってもよい。
また、本発明のプラズマ処理装置は、上記プラズマ生成装置を備え、発生させたプラズマを利用して被処理体に対して所定の処理を行うものである。この場合、前記スロット孔が被処理体に対向するように前記アンテナ部が配置されてもよい。また、被処理体の表裏両面にそれぞれアンテナ部が配置されてもよい。さらに、被処理体がフィルム状をなし、ロール・トゥ・ロール方式で搬送可能に設けられていてもよい。
本発明のプラズマ処理方法は、上記プラズマ処理装置を用いて、被処理体を処理するものである。
本発明のプラズマ生成装置及びプラズマ処理装置は、導波管内で生成する定在波の位相を周期的にシフトさせる位相シフト手段を備えているため、定在波の腹と節の位置を一定の時間周期で移動させることができる。その結果、均一なプラズマを生成することが難しい大気圧プラズマ方式であるにもかかわらず、導波管の長尺方向に時間平均で均一なラインプラズマを生成させることが可能になる。従って、大型の被処理体に対しても、導波管の長尺方向に均質な処理を行うことができる。
また、本発明のプラズマ生成装置及びプラズマ処理装置は、真空容器を必要としない大気圧プラズマ装置であるため、導波管と被処理体との間に誘電体板を設ける必要がなく、誘電体板でのマイクロ波の吸収による損失を防止できる。また、本発明のプラズマ生成装置及びプラズマ処理装置は、導波管内に供給された処理ガスをマイクロ波によってプラズマ化し、スロット孔から外部へ放出するため、高密度プラズマを効率的に生成させることが可能である。また、専用のガス導入器具を必要とせず、装置の大きさも小さくすることができる。従って、本発明のプラズマ生成装置及びプラズマ処理装置を用いて被処理体に対しプラズマ処理を行うことにより、エネルギー損失を極力抑制しながら高密度のプラズマによる均質な処理を行うことが可能になる。
本発明の第1の実施の形態のプラズマ処理装置の概略構成図である。 マイクロ波発生装置の構成例を示す図面である。 図1の要部を拡大した断面図である。 矩形導波管におけるスロット孔とブロックとの位置関係を説明する図面である。 矩形導波管内における定在波の位相がシフトする機構を説明する図面である。 制御部の構成例を示す図面である。 矩形導波管のアンテナ部のスロット孔の説明に供する斜視図である。 図7におけるスロット孔の形成面の平面図である。 図8におけるスロット孔の拡大平面図である。 矩形導波管のアンテナ部のスロット孔の別の形成例の説明に供する平面図である。 矩形導波管のアンテナ部のスロット孔のさらに別の形成例の説明に供する平面図である。 スロット孔の断面形状の一例を説明する図面である。 スロット孔の断面形状の別の例を説明する図面である。 本発明の第2の実施の形態のプラズマ処理装置の概略構成図である。 図14の要部を拡大した断面図である。 矩形導波管におけるスロット孔と回転体との位置関係を説明する図面である。 回転体の構成例として(a)から(d)を説明する図面である。 回転体の別の構成例を説明する図面であり、(a)は正面図、(b)はB−B線矢視の断面図である。 第2の実施の形態の変形例を説明する要部断面図である。 本発明の第3の実施の形態のプラズマ処理装置の概略構成図である。 図20の要部を拡大した断面図である。 回転体の構成例として(a)および(b)を説明する図面である。 本発明の第4の実施の形態のプラズマ処理装置の概略構成図である。 図23の要部を拡大した断面図である。 本発明の第5の実施の形態のプラズマ処理装置の概略構成図である。 移相器の構成を説明する模式図である。 本発明の第6の実施の形態の説明に供する矩形導波管の断面図である。 本発明の第6の実施の形態の説明に供する矩形導波管の別の断面図である。 本発明の第6の実施の形態の説明に供する矩形導波管のさらに別の断面図である。 本発明の第7の実施の形態に係るアンテナ部を複数個並列的に配置したプラズマ処理装置の構成例を示す説明図である。 被処理体をロール・トウ・ロール方式で搬送させるプラズマ処理装置の構成例を示す説明図である。 被処理体をロール・トウ・ロール方式で搬送させるプラズマ処理装置の別の構成例を示す説明図である。 シミュレーション条件の説明に供する図面であり、(a)、(b)はブロックの配置を示し、(c)はブロックの寸法を示している。 シミュレーションによる位相のずれと挿入深さとの関係を示すグラフである。 別のシミュレーションによる位相のずれとブロックの幅との関係を示すグラフである。
次に、本発明の実施の形態について、適宜図面を参照しながら説明する。
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態にかかるプラズマ処理装置100の概略構成図である。図1のプラズマ処理装置100は、処理容器10と、プラズマを発生させて処理容器10内の被処理体Sへ向けて放出するプラズマ生成装置20と、被処理体Sを支持するステージ50と、プラズマ処理装置100を制御する制御部60を備え、被処理体Sに対して常圧で処理を行う大気圧プラズマ処理装置として構成されている。
<処理容器>
処理容器10は、プラズマ処理空間を区画するための容器であって、例えばアルミニウム、ステンレス等の金属により形成することができる。処理容器10の内部は、例えばアルマイト処理のような耐プラズマエロージョン性を高める表面処理を施しておくことが好ましい。処理容器10には、被処理体Sの搬入出を行うための開口が設けられている(図示せず)。なお、大気圧プラズマ方式の本実施の形態のプラズマ処理装置100において、処理容器10は必須ではなく、任意の構成である。
<プラズマ生成装置>
プラズマ生成装置20は、マイクロ波を発生させるマイクロ波発生装置21と、マイクロ波発生装置21に接続され、その一部分としてアンテナ部40が設けられた矩形導波管22と、矩形導波管22に接続されてその内部へ処理ガスを供給するガス供給装置23と、アンテナ部40内のガス及び必要に応じて処理容器10内を排気するための排気装置24と、矩形導波管22内(特に、アンテナ部40内)で定在波の位相を周期的にシフトさせる位相シフト手段としての位相シフト装置25Aと、矩形導波管22の内部で処理ガスの通過を遮るための石英などの誘電体からなる隔壁26と、を備えている。また、矩形導波管22の一つの壁面にはスロット孔41が形成されており、該スロット孔41が形成された領域は、スロット孔41で生成したプラズマを外部の被処理体Sへ向けて放出するアンテナ部40を構成している。
(マイクロ波発生装置)
マイクロ波発生装置21は、例えば2.45GHz〜100GHz、好ましくは2.45GHz〜10GHzの周波数のマイクロ波を発生させる。本実施の形態のマイクロ波発生装置21は、パルス発振機能を備えており、パルス状のマイクロ波を発生させることができる。マイクロ波発生装置21の構成例を図2に示す。マイクロ波発生装置21においては、電源部31から発振部32のマグネトロン(またはクライストロン)33までを結ぶ高電圧ライン34上に、コンデンサ35とパルススイッチ部36が設けられている。また、パルススイッチ部36には、パルス制御部37が接続されており、周波数やデューティー比などを制御する制御信号の入力が行なわれる。このパルス制御部37は、制御部60のコントローラ61(後述)からの指示を受けて制御信号をパルススイッチ部36へ向けて出力する。そして、電源部31から高電圧を供給しつつパルススイッチ部36に制御信号を入力することにより、所定電圧の矩形波が発振部32のマグネトロン(またはクライストロン)33に供給され、パルス状のマイクロ波が出力される。このマイクロ波のパルスは、例えば、パルスオンタイム10〜50μs、パルスオフタイム200〜500μs、デューティー比を5〜70%、好ましくは10〜50%に制御することができる。なお、本実施の形態において、パルス発振機能は、連続に放電させた場合にアンテナ部40に熱が蓄積し、低温非平衡放電からアーク放電に移行することを防止する目的で設けている。従って、アンテナ部40の冷却機構を別途手当てすれば、パルス発振機能は必須ではなく、任意の構成である。
マイクロ波発生装置21で発生したマイクロ波は、図示は省略するが、マイクロ波の進行方向を制御するアイソレーターや導波管のインピーダンス整合をする整合器などを介して矩形導波管22の一部分をなすアンテナ部40へ伝送されるようになっている。
(導波管)
矩形導波管22は、マイクロ波の伝送方向に長尺をなすとともに、マイクロ波の伝送方向に直交する方向の断面が矩形をした中空状をなしている。矩形導波管22は、例えば銅、アルミニウム、鉄、ステンレス等の金属やこれらの合金によって形成されている。
矩形導波管22は、その一部分としてアンテナ部40を含んでいる。本実施の形態では、アンテナ部40は、その断面において短辺をなす壁又は長辺をなす壁に1つのスロット孔41を有している。つまり、矩形導波管22の一部分であって、スロット孔41が形成された領域がアンテナ部40である。図1では、アンテナ部40を一点鎖線で囲んで示している。アンテナ部40の長さは、被処理体Sの大きさによって決めることができるが、例えば0.3〜1.5mとすることが好ましい。スロット孔41は、アンテナ部40の断面において短辺をなす壁又は長辺をなす壁を貫通する開口である。スロット孔41は、被処理体Sへ向けてプラズマを放射するため、被処理体Sに対向して設けられている。なお、スロット孔41の配置や形状については、後述する。
(ガス供給装置)
ガス供給装置(GAS)23は、アンテナ部40と矩形導波管22の終端22Eとの間で矩形導波管22から分岐した分岐管22aに設けられたガス導入部22bに接続している。ガス供給装置23は、図示しないガス供給源、バルブ、流量制御装置等を備えている。ガス供給源は、処理ガスの種類別に備えられている。処理ガスとしては、例えば水素、窒素、酸素、水蒸気、フロン(CF)ガス等を挙げることができる。フロン(CF)ガスの場合は、排気装置24も併用する必要がある。また、例えばアルゴン、ヘリウム、窒素ガス等の不活性ガスの供給源も設けることができる。ガス供給装置23から矩形導波管22内に供給された処理ガスは、マイクロ波によってスロット孔41で放電が生じ、プラズマ化する。
(排気装置)
排気装置24は、図示しないバルブや、ターボ分子ポンプ、ドライポンプなどを備えている。排気装置24は、矩形導波管22内および処理容器10の排気を行うため、矩形導波管22の分岐管22a及び処理容器10の排気口10aに接続されている。例えば、プロセス停止時に矩形導波管22内に残された処理ガスは排気装置24を作動させることによって、処理ガスを速やかに除去することができる。また、放電開始時には、矩形導波管22内及び処理容器10内に存在する大気中のガスを処理ガスに効率よく置換する為に排気装置24を用いる。なお、大気圧プラズマ処理装置である本実施の形態のプラズマ処理装置100において、排気装置24は必須ではなく、任意の構成である。しかし、処理ガスが特にCFガスのように常温では安定であるが、プラズマ化することにより反応性の高いフッ素ラジカル(F)やフロロカーボンラジカル(CxFy)などを生成する可能性がある場合は、排気装置24を設けることが好ましい。
(位相シフト装置)
本実施の形態の位相シフト装置25Aは、矩形導波管22の長尺方向に対して交差する方向(好ましくは直交する方向)で、矩形導波管22内へ進出し、もしくは矩形導波管22内から退避する直線運動をする壁部材を有している。位相シフト装置25Aは、この壁部材を周期的に直線往復運動させる。具体的には、図3及び図4に示したように、位相シフト装置25Aは、「矩形導波管22内へ進出し、もしくは矩形導波管22内から退避する直線運動をする壁部材」としてのブロック111と、このブロック111を直線的に往復運動させる駆動部112と、ブロック111を支持するとともにブロック111と駆動部112を連結し、駆動部112の動力をブロック111に伝達するシャフト113と、を備えている。駆動部112は、ブロック111を矩形導波管22に設けられた挿通口22cを介して矩形導波管22内へ所定のストローク長で進出させたり、退避させたりする。駆動部112は、例えばエアシリンダ、油圧シリンダ等によって構成してもよいし、あるいはモーター等の駆動源にクランク機構、スコッチ・ヨーク機構、ラック&ピニオン機構等を組み合わせて構成してもよい。このように、位相シフト装置25Aは、駆動部112を作動させることにより、ブロック111を上下方向に直線往復運動させて、矩形導波管22内へ挿入し、又は矩形導波管22内から抜き出すことにより、矩形導波管22の長尺方向における定在波の位相を周期的にシフトさせる。
(ブロック)
ブロック111の材質は、例えば石英、アルミナなどの誘電体や、アルミニウム、ステンレスなどの金属を用いることができる。誘電体を用いる場合、比誘電率εが大きく、誘電正接(tanδ)が小さい誘電体材料を用いることが好ましい。なお、ブロック111内で比誘電率εが不均一であってもよく、比誘電率εが異なる2以上の誘電体によってブロック111を形成することができる。ブロック111の形状は、図3,図4に示したような角柱状又は角筒状のほか、板状とすることもできる。ここで、ブロック111が矩形導波管22内に挿入された状態で生じる現象について説明する。
ブロック111が誘電体の場合:
ブロック111が誘電体である場合、ブロック111で矩形導波管22内を進行してきたマイクロ波の透過、吸収、反射が生じる。マイクロ波の透過、吸収、反射がどの程度生じるかは、ブロック111を構成する材質の比誘電率εと損失係数(ε×tanδ)により異なる。
ブロック111が損失係数の小さな材質(例えば、石英や高純度アルミナ)で構成されている場合は、マイクロ波の大部分がブロック111を透過し、相対的に吸収と反射は少なくなる。この場合、ブロック111の壁面111aは、矩形導波管22の断面よりも小さいため、ブロック111に照射されたマイクロ波の一部がブロック111を透過して伝播し、残りのマイクロ波がブロック111を回折して伝播する。そして、誘電体中を透過するマイクロ波の波長λdは、管内波長λgよりも小さくなる[λd=λg/ sqrt(ε);ここで、sqrtは平方根を意味する]。このような波長の違いによって、ブロック111を通過後の合成波は、誘電体であるブロック111側に屈折する。この屈折によって、定在波の位相がシフトし、矩形導波管22内で生成する定在波の腹と節の位置が移動する。また、波長λdを管内波長λgよりも小さくするため、ブロック111には比誘電率εが大きい材料を用いることが望ましい。
また、ブロック111の損失係数が大きな材質で構成される場合は、ブロック111内で吸収されるマイクロ波の量が多くなり、誘電体が加熱されやすくなり、マイクロ波発生装置21から出力供給されたマイクロ波のパワーロスが大きくなってしまう。その結果、プラズマ放電のために使用できるマイクロ波の量が低くなってしまうため、望ましくない。従って、比誘電率εが大きく、損失係数(ε×tanδ)が小さい誘電体材料を用いることが望ましい。損失係数は比誘電率εと誘電正接tanδの積であるから、比誘電率εが大きいことと損失係数が小さいことが両立するためには、誘電正接tanδが小さいことが必要である。つまり、比誘電率εが大きく、誘電正接tanδが小さい誘電材料を用いることが望ましい。
ブロック111が金属の場合:
ブロック111が金属である場合、矩形導波管22内を進行してきたマイクロ波は、ブロック111の壁面111aによってほぼ全反射される。そのため、図5に示すように、矩形導波管22の終端位置が実質的にブロック111の壁面111aの挿入位置まで移動し、矩形導波管22の導波路長が実質的に短くなる。そのため、矩形導波管22内で生成する定在波の腹と節の位置が移動する。なお、図5では、本来の矩形導波管22内における定在波の波形を実線で示し、位相シフト装置25Aのブロック111の挿入によって腹と節の位置が移動した後の定在波の波形を破線で示している。また、マイクロ波発生装置21から矩形導波管22内を伝播してくるマイクロ波の進行方向を白抜き矢印で示し、その反射波の進行方向を黒矢印で示している。
一方、ブロック111が矩形導波管22から抜き出された状態(図3に示したようにブロック111が上位置に引き上げられた状態)では、ブロック111による透過、吸収、反射が生じないため、定在波は本来の位相に戻り、腹と節の位置は元通り復元される。
以上のように、ブロック111を矩形導波管22内へ進出・退避させる動作を周期的に繰返すことにより、定在波の腹と節の位置を一定の周期で移動させることができる。その結果、スロット孔41において、アンテナ部40の長尺方向に時間平均で均一なラインプラズマを生成させることが可能になる。従って、アンテナ部40の長尺方向で被処理体のプロセス内容を均質にすることができる。
ブロック111は、矩形導波管22内を進行してくるマイクロ波に対して向き合う壁面111aを有している。この壁面111aの面積は、小さすぎると透過や反射が生じにくくなり、大きすぎるとブロック111の材料コストが高くなる。
また、挿通口22cから外部へマイクロ波が漏洩することを防止するため、図1及び図3に示したように、位相シフト装置25Aをカバー部材84によって覆うことが好ましい。カバー部材84の材質としては、例えばアルミニウム、ステンレスなどの金属を用いることができる。
位相シフト装置25Aを配設する位置は、特に制限はないが、矩形導波管22の終端22Eの付近が好ましい。特に、位相シフト装置25Aのブロック111の壁面111aの位置を、矩形導波管22内で本来発生する定在波の腹の位置に設定することによって、定在波の腹と節の位置を移動させやすくなる。ここで、矩形導波管22内で本来生成する定在波の節は、固定端である矩形導波管22の終端22Eの内壁面と一致するため、位相シフト装置25Aを配設する位置は、図5に示したように、アンテナ部40の終端40Eと矩形導波管22の終端22Eとの間で、矩形導波管22の終端22Eの内壁面からの距離Lが、定在波の管内波長λgに対して、n×λg/4(ここで、nは正の奇数を意味し、好ましくは1、3、又は5を意味する)になるように設定することが好ましい。
また、矩形導波管22内に挿入するブロック111の挿入量(図31(a),(b)の符号dを参照)は、小さすぎると透過や反射が生じにくくなり、大きすぎると実際の挿入量が設定挿入量からずれて大きくなってしまった場合に、ブロック111が矩形導波管22の内面に接触衝突することで損傷する可能性が考えられる。
また、ブロック111を矩形導波管22内に進出・退避させる動作を1サイクルとする往復運動の周期は、プラズマ処理プロセスの均一性、スループット、駆動機構の簡素化の兼ね合いを考慮して、プラズマ処理プロセス時間の1/1000〜1/2とすることが好ましい。
なお、位相シフト装置25Aは、ブロック111を矩形導波管22の上方から挿入する態様に限らず、矩形導波管22の左右又は下方からブロック111を矩形導波管22内に進出、退避させる構成としてもよい。つまり、位相シフト装置25Aは、矩形導波管22の上下左右のいずれかの外壁面に設置することができる。
(隔壁)
本実施の形態において、プラズマ生成装置20は、マイクロ波発生装置21とアンテナ部40との間の矩形導波管22内に、処理ガスの通過を遮る隔壁26を備えている。隔壁26は、例えば石英、テフロン(登録商標)に代表されるポリテトラフルオロエチレンなどの誘電体で形成されており、マイクロ波の通過を許容しながら、矩形導波管22内の処理ガスがマイクロ波発生装置21へ向けて流れていくことを防止する。
<ステージ>
ステージ50は、処理容器10内で被処理体Sを水平に支持する。ステージ50は、処理容器10の底部に設置された支持部51により支持された状態で設けられている。ステージ50および支持部51を構成する材料としては、例えば、石英や、AlN、Al、BN等のセラミックス材料、Al、ステンレスなどの金属材料を挙げることができる。また、必要に応じて250℃程度まで被処理体Sを加熱できるようにヒーター(図示せず)を埋め込でおいてもよい。なお、本実施の形態のプラズマ処理装置100において、ステージ50は被処理体Sの種類に応じて設ければよく、任意の構成である。
<被処理体>
プラズマ処理装置100は、被処理体Sとして、例えば、LCD(液晶表示ディスプレイ)用ガラス基板に代表されるFPD(フラットパネルディスプレイ)基板や、該FPD基板に接着させる多結晶シリコンフィルム、ポリイミドフィルムなどのフィルム部材を対象にすることができる。また、プラズマ処理装置100は、有機半導体などの能動素子および受動素子を形成する目的で、例えばポリエチレンナフレタート(PEN)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどのフィルム部材を被処理体Sとし、その表面清浄化処理や表面処理などにも使用できる。さらに、プラズマ処理装置100は、例えば、被処理体SとしてのFPD基板上に設けられた薄膜の改質処理や、FPD基板への密着性を改善する目的で行う、被処理体Sとしての上記フィルム部材への表面処理、清浄化処理、改質処理などの用途に使用することができる。位相シフト装置25Aを有するプラズマ処理装置100では、長尺なアンテナ部40の全域に亘って高密度ラインプラズマを均一に形成できるため、上記のような比較的大面積の被処理体Sに対する処理を効率よく、かつ均質に行うことができる。
<制御部>
プラズマ処理装置100を構成する各構成部は、制御部60に接続されて制御される構成となっている。コンピュータ機能を有する制御部60は、図6に例示したように、CPUを備えたコントローラ61と、このコントローラに接続されたユーザーインターフェース62と、記憶部63を備えている。記憶部63には、プラズマ処理装置100で実行される各種処理をコントローラ61の制御にて実現するための制御プログラム(ソフトウェア)や処理条件データ等が記録されたレシピが保存されている。そして、必要に応じて、ユーザーインターフェース62からの指示等にて任意の制御プログラムやレシピを記憶部63から呼び出してコントローラ61に実行させることで、制御部60の制御下で、プラズマ処理装置100の各構成部(例えば、マイクロ波発生装置21、ガス供給装置23、排気装置24、位相シフト装置25A)において所望の処理が行われる。なお、前記制御プログラムや処理条件データ等のレシピは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体64に格納された状態のものを記憶部63にインストールすることによっても利用できる。コンピュータ読み取り可能な記録媒体64としては、特に制限はないが、例えばCD−ROM、ハードディスク、フレキシブルディスク、フラッシュメモリ、DVDなどを使用できる。また、前記レシピは、他の装置から、例えば専用回線を介して随時伝送させてオンラインで利用したりすることも可能である。
<スロット孔の構成>
次に、図7〜図13を参照しながら、アンテナ部40におけるスロット孔41の配置と形状について具体例を挙げて説明する。スロット孔41は、矩形導波管22の壁40a(又は壁40bでもよい)を貫通する開口である。プラズマ処理装置100では、スロット孔41が配設された壁40a(又は壁40b)は、被処理体Sに対向して配置される。スロット孔41の配置と形状は、スロット孔41の開口の大部分(好ましくは、開口の全面)でプラズマが生成するように設計することが好ましい。スロット孔41の開口の大部分でプラズマが生成するようにするためには、スロット孔41の配置と形状との組み合わせが重要になる。このような観点から、以下ではスロット孔41の配置と形状の好ましい態様について説明する。
(単一スロット孔)
図7及び図8は、アンテナ部40を構成する矩形導波管22の短辺をなす一つの壁40aに一本の細長い矩形のスロット孔41を設けた例を示している。図7は、矩形導波管22のアンテナ部40のスロット孔41の形成面(壁40a)を上向きに図示したものである。図8は、図7における壁40aの平面図である。また、図9は、スロット孔41の拡大図である。
アンテナ部40の断面の短辺の長さをL1、長辺の長さをL2とした場合(つまり、L1<L2)、スロット孔41は、アンテナ部40の断面において短辺をなす壁40aと、長辺をなす壁40bのいずれに設けてもよいが、図7,図8に示したように、長さがL1の短辺をなす壁40aに配設することが好ましい。マイクロ波の電波は、矩形導波管22の短辺をなす一対の壁40a間を反射しながら矩形導波管22の終端22Eの内壁面に到達し、そこで反射して矩形導波管22内を進行方向とは逆方向に進み、定在波を形成する。電波に対して直交する磁波は、矩形導波管22の長辺をなす一対の壁40b間を反射しながら進行し、矩形導波管22の終端22Eの内壁面で反射して、進行方向と逆方向に進んで磁界の定在波をつくる。このように、マイクロ波は矩形導波管22の一部分であるアンテナ部40内に進入して、電波と磁界の定在波をそれぞれ形成する。このうち、電波の定在波の腹の部分にスロット孔41を形成すると、強いプラズマを形成することができる。従って、スロット孔41は、矩形導波管22のアンテナ部40の短辺をなす壁40aに設けることが好ましい。図9に示したように、スロット孔41は、その幅L3に対して、長さL4が数倍から数十倍の長尺な矩形とすることができる。
図7及び8に示したように、矩形導波管22の短辺をなす壁40aにスロット孔41を形成する場合、壁40aを流れる表面電流は、導波管長さ方向の中心軸に直交する方向に流れる。このため、スロット孔41はアンテナ部40の長手方向に平行であれば、短辺をなす壁40a内の幅方向のどの位置に設けても表面電流はスロット孔41の長尺方向に対して直交して流れることになり、強いプラズマを得ることができる。設計上の簡便さからスロット孔41は、短辺をなす壁40aの中央付近[壁40aの幅方向の中心を矩形導波管22の長尺方向に結ぶ線(中心線C)の近傍]に設けることが好ましい。なお、スロット孔41は、単一に限らず、アンテナ部40に複数個設けることもできる。また、2本以上の長尺なスロット孔41を並列に設けることもできる。
(複数スロット孔)
図10及び図11に、スロット孔41の別の構成例を示した。図10では、アンテナ部40の短辺をなす壁40aに形成された6つの矩形のスロット孔41を符号41A〜41Aで示している。図10では、最も外側に位置する2つのスロット孔41Aの端部と、スロット孔41Aの端部の間が、アンテナ部40となっている。一列に配列されたスロット孔41A〜41Aの配列間隔は、管内波長に応じて決定することが好ましい。高密度のプラズマを放射する目的では、隣接するスロット孔41どうしが近接しており、両者の間隔が小さいことが好ましい。各スロット孔41A〜41Aの長さや幅は、任意であるが、幅が狭く、細長い形状であることが好ましい。各スロット孔41は、その長手方向とアンテナ部40の長手方向(つまり、矩形導波管22の長手方向)が一致し、互いに平行になるように配設することが好ましい。スロット孔41の長手方向が、アンテナ部40の長手方向に対して平行でなく、角度をもって形成されていると、スロット孔41を電波の腹の部分が斜めに横切るようになるため、電波の腹の部分を有効に利用できず、スロット孔41の開口の全体にプラズマを立てることが困難となる。
スロット孔41は一列に配設してもよいし、複数列に配設してもよい。複数のスロット孔41を2列に配設した例を図11に示した。図11では、アンテナ部40の長辺をなす壁40bに、6つの矩形のスロット孔41が複数(この例では6個)ずつ直線状に配設されて列を作り、合計2列に配設されている。すなわち、図11において、スロット孔41A〜41Aは、一組になって列をなして直線状に配列されており、スロット孔41B〜41Bは、一組になって列をなして直線状に配列されている。図11では、最も外側に位置する2つのスロット孔41Aの端部と、スロット孔41Bの端部の間が、アンテナ部40となっている。
矩形導波管22の長辺をなす壁40bにスロット孔41を形成する場合は、矩形導波管22内に発生する定在波の腹の部分に矩形のスロット孔41を設けることが、強いプラズマを得るために都合がよい。この場合、電磁界は、定在波の腹の部分で最大となり、長辺をなす壁40bを流れる表面電流は定在波の腹の部分から矩形導波管22の短辺をなす壁40aへ向かう方向に流れ、壁40aに近づくほど表面電流は大きくなる。このため、矩形のスロット孔41は、長辺をなす壁40bの壁面の中央付近よりも、むしろ矩形導波管22の短辺をなす壁40aに近い部分(角に近い側)に偏在して設けた方が、強いプラズマをスロット孔41に形成することができる。例えば、図11では、壁40bの幅方向の中心線Cから外れた位置に2列にスロット孔41を配列している。このように、スロット孔41の列を中心線Cから偏心させて設けることによって、壁40bの壁面を流れる表面電流が最大となり、エネルギー損失を低減し、高密度のプラズマを放射できる。
また、図11に示したようにスロット孔41を2列以上並べて配設する場合、エネルギー損失を低減し、高密度のプラズマを放射できるようにする観点から、アンテナ部40において、壁40bの幅方向に少なくとも一つのスロット孔41が存在するように列毎に長手方向の位置をずらして配設することが好ましい。例えば、図11では同じ列に属するスロット孔41Aと41Aとの間には、アンテナ部40の幅方向に隣の列のスロット孔41Bが存在している。また、同じ列に属するスロット孔41Bと41Bとの間には、アンテナ部40の幅方向に隣の列のスロット孔41Aが存在している。このように、アンテナ部40の壁40bの内側を幅方向に横断する表面電流が、必ず1つのスロット孔41と交差するように配置することが好ましい。
なお、図10及び図11の例において、スロット孔41は2列に限らず、3列以上配設することもできるし、一列の個数も6個に限るものではない。
また、以上のスロット孔41の各構成例において、スロット孔41の開口の縁面40cは、図12に示したように、壁40a(又は壁40b)の厚み方向に内側から外側へ開口が広くなるように傾斜して設けることが好ましい。スロット孔41の縁面40cを傾斜面として設けることによって、矩形導波管22の内壁面側のスロット孔41の開口部の幅L3を短くすることができる。これにより、放電開始電力を低減し、エネルギー損失を少なく抑えることができ、高密度プラズマを生成させることができる。一方、図13に示すように、矩形導波管22の内側の開口幅よりも外側の開口幅を狭くする場合(つまり、図12とは逆に傾斜をつけた場合)も放電領域を広げる効果が得られる。なお、図12及び図13において、符号Pは、スロット孔41から放出されるプラズマを模式的に示している。
スロット孔41の具体的形状と配列例は、上記例示のものに限るものではない。導波管アンテナを使用する場合、矩形導波管22内にマイクロ波を導入した際に矩形導波管22内に形成されるマイクロ波の定在波を利用するので、スロット孔41は定在波の腹の部分に設けることが、強いプラズマを発生させる上で都合がよい。定在波の節の部分にスロット孔41を設けても電磁界が弱く、スロット孔41においてプラズマが効率よく生成されない。矩形導波管22内に形成される定在波の節の部分にはプラズマがたたないか、あるいは弱いプラズマしかたたないためである。そこで、本実施の形態のプラズマ生成装置100では、位相シフト装置25Aを設け、定在波の位相をシフトさせ、スロット孔41に対して定在波の腹と節の位置を矩形導波管22の長尺方向に周期的に移動させるようにした。このような観点から、スロット孔41の形状としては、定在波の腹の位置が移動しても常に腹の位置にスロット孔41が存在するようにすることが好ましく、例えば図7及び図8に示したように、アンテナ部40の全長にわたって長尺な単一スロット41を形成することが最も好ましい。つまり、位相シフト装置25Aと長尺な単一のスロット孔41とを組み合わせることにより、該スロット孔41においてその全長にわたり、均一なラインプラズマを効率よく生成させることができる。
なお、プラズマ生成装置100では、図10及び図11に例示したように、複数のスロット孔41からなる1列ないし複数列のスロット孔の形状・配置を採用した場合でも、位相シフト装置25Aによって定在波の腹と節の位置を周期的に変化させることにより、アンテナ部40において時間平均でプラズマを均一化できる。従って、位相シフト手段としての位相シフト装置25Aを設けることによって、矩形導波管22のアンテナ部40のスロット孔41の形状や配置に関わらず、長尺なアンテナ部40の全域において、各スロット孔41で均一なプラズマを生成させる効果が得られる。
次に、プラズマ処理装置100の動作について説明する。まず、被処理体Sを処理容器10内に搬入し、ステージ50上に載置する。そして、ガス供給装置23から、処理ガスを所定の流量で、ガス導入部22b、分岐管22aを介して矩形導波管22内に導入する。矩形導波管22内に処理ガスを導入することによって、矩形導波管22内の圧力が外部の大気圧よりも相対的に高くなる。
次に、マイクロ波発生装置21のパワーをオン(ON)にして、マイクロ波を発生させる。このとき、マイクロ波をパルス状に発生させてもよい。マイクロ波は、図示しないマッチング回路を経て矩形導波管22に導入される。このように導入されたマイクロ波によって、矩形導波管22内で電磁界が形成され、矩形導波管22の内部に供給された処理ガスをアンテナ部40のスロット孔41でプラズマ化させる。このプラズマは、相対的に圧力が高い矩形導波管22のアンテナ部40の内側からスロット孔41を介して外部の被処理体Sへ向けて放射される。また、矩形導波管22へマイクロ波を供給している間、位相シフト装置25Aの駆動部112を駆動させてブロック111を往復運動させ、矩形導波管22内への進出、退避を繰りかえす。これにより、アンテナ部40内の定在波の位相を変化させ、腹と節の位置を周期的に移動させ、アンテナ部40の長尺方向に時間平均で均一なラインプラズマを形成できる。
以上のように、本実施の形態のプラズマ生成装置20及びこれを備えたプラズマ処理装置100は、位相シフト装置25Aを備えていることにより、定在波の腹と節の位置を周期的に移動させ、アンテナ部40の長尺方向に時間平均で均一なラインプラズマを生成させることが可能になる。その結果として、アンテナ部40の長尺方向にわたって被処理体のプロセス内容を均質化できる。
また、プラズマ処理装置100は、真空容器を必要としない大気圧プラズマ装置であるため、矩形導波管22と被処理体Sとの間に誘電体板を設ける必要がなく、誘電体板でのマイクロ波の吸収による損失を防止できる。また、大気圧プラズマ装置であるため、耐圧の真空容器やシール機構なども不要であり、簡易な装置構成でよい。さらに、本実施の形態のプラズマ生成装置20及びこれを備えたプラズマ処理装置100は、矩形導波管22内に供給された処理ガスをマイクロ波によってスロット孔41でプラズマ化し、スロット孔41から外部へ放出するため、シャワーヘッドなどの特殊なガス導入器具を必要とせず、装置の大きさも小さくすることができる。つまり、矩形導波管22がシャワーヘッドの役割を果たすため、別途シャワーヘッドやシャワーリングのようなガス導入器具を設ける必要がなく、装置構成を簡素化できる。
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態にかかるプラズマ処理装置について、図14〜図19を参照しながら説明する。図14は、本発明の第2の実施の形態にかかるプラズマ処理装置101の概略構成図である。図14のプラズマ処理装置101は、処理容器10と、プラズマを発生させて処理容器10内の被処理体Sへ向けて放出するプラズマ生成装置20Aと、被処理体Sを支持するステージ50と、プラズマ処理装置101を制御する制御部60を備え、被処理体Sに対して常圧で処理を行う大気圧プラズマ処理装置として構成されている。ここで、プラズマ生成装置20Aは、マイクロ波を発生させるマイクロ波発生装置21と、マイクロ波発生装置21に接続され、その一部分としてアンテナ部40が設けられた矩形導波管22と、矩形導波管22に接続されてその内部へ処理ガスを供給するガス供給装置23と、アンテナ部40内のガス及び必要に応じて処理容器10内を排気するための排気装置24と、矩形導波管22内(特に、アンテナ部40内)での定在波の位相を周期的にシフトさせる位相シフト手段としての位相シフト装置25Bと、矩形導波管22の内部で処理ガスの通過を遮るための石英などの誘電体からなる隔壁26と、を備えている。また、矩形導波管22の一つの壁面にはスロット孔41が形成されており、該スロット孔41が形成された領域は、スロット孔41で生成したプラズマを外部の被処理体Sへ向けて放出するアンテナ部40を構成している。
本実施の形態に係るプラズマ処理装置101(図14)と、第1の実施の形態に係るプラズマ処理装置100(図1)との相違は、位相シフト装置25Aの代わりに位相シフト装置25Bを設けた点にある。従って、以下では相違点を中心に説明し、同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
<位相シフト装置>
本実施の形態の位相シフト装置25Bは、矩形導波管22の長尺方向に一致する方向を回転軸として回転運動する壁部材を有している。具体的には、図15,図16に示したように、位相シフト装置25Bは、「矩形導波管22の長尺方向に一致する方向を回転軸として回転運動する壁部材」としての回転体121と、この回転体121を回転運動させる駆動部122と、回転体121を支持するとともに回転体121と駆動部122を連結し、駆動部122の動力を回転体121に伝達する軸部材123と、を備えている。駆動部122は、回転体121を回転させ、回転体121の一ないし複数の部位を矩形導波管22に設けられた挿通口22cを介して矩形導波管22内へ周期的に進出させたり、退避させたりする。駆動部122は、例えばモーター等により構成することができる。軸部材123は、矩形導波管22の外側に位置している。
(回転体)
回転体121は、矩形導波管22内を進行してくるマイクロ波に対して向き合う壁面121aを有している。回転体121の形状を図17(a)〜(d)に例示した。図17(a)〜(d)において、符号Oは、軸部材123に連結される回転中心である。図17(a)に例示したように、回転体121を真円に近い形状とする場合、回転体121へ回転運動を伝える軸部材123を、回転体121の中心に対して偏心して連結することができる。これにより、軸部材123の位置を回転中心Oとして回転させれば、回転体121の一部分を周期的に矩形導波管22内へ進出させたり、退避させたりすることができる。なお、回転体121の回転方向は、左右どちらの方向に回転させてもよく、回転方向を変えてもよい。
また、回転体121は、回転方向に不均一な形状とすることも可能であり、例えば図17(b)に示したように円形の一部が欠けた扇状としたり、同図(c)に示したように羽根状(プロペラ状)としたり、あるいは、同図(d)に示したように楕円状としてもよいし、図示は省略するが、長方形状、三角形状、星形等の形状としてもよい。これらのように、回転方向に不均一な形状とすることによって、軸部材123の位置を回転中心Oとして回転させれば、回転体121の一ないし複数の部位を周期的に矩形導波管22内へ進出、退避させることができる。また、回転体121として、図18(a),(b)に例示したように、矩形導波管22の長尺方向に異なる厚みを有するものを用いることもできる。すなわち、図18(a),(b)に示した回転体121は、回転軸方向に厚みが不均一に形成されており、第1の壁面121Aと、この第1の壁面121Aよりもマイクロ波の進行方向に逆向きに突出した第2の壁面121Bと、これら第1、第2の壁面121A,121Bの間に形成された段部121Cとを有している。そして第1、第2の壁面121A,121Bを有する回転体121を、矩形導波管22内の長尺方向に一致する方向を回転軸として回転させる。これによって、第1の壁面121Aの部分と第2の壁面121Bの部分とが交互に矩形導波管22内に進出、退避することで、マイクロ波が透過及び/又は反射される。その結果、矩形導波管22内で生成する定在波の腹と節の位置を周期的に変化させ、該定在波の位相を周期的に変化させることができる。なお、回転体121の厚みは、矩形導波管22の長尺方向の異なる位置において、2つに限らず、3つ以上設けてもよい。あるいは、回転体121の厚みを段階的に変化させるのではなく、傾斜をもたせるようにして変化させてもよい。また、第1の壁面121Aの部分と第2の壁面121Bの部分を、異なる材質(例えば誘電体と金属、異なる誘電率など)で形成してもよい。
また、回転体121は、矩形導波管22内への累積の挿入面積(ここでは、矩形導波管22内に挿入される壁面121a、第1、第2の壁面121A,121Bの時間的積分面積)が小さすぎると透過や反射が生じにくくなり、大きすぎると実際の挿入量が設定挿入量からずれて大きくなってしまった場合に、回転体121が矩形導波管22の内面に接触して擦れることで損傷する可能性が考えられる。
また、回転体121を1回転させる動作を1サイクルとする回転運動の周期は、プラズマ処理プロセスの均一性、スループット、駆動機構の簡素化の兼ね合いを考慮して、プラズマ処理プロセス時間の1/1000〜1/2とすることが好ましい。
このように、位相シフト装置25Bは、駆動部122を作動させることにより、回転体121を矩形導波管22の長尺方向に一致する方向を回転軸として回転運動させて、その一ないし複数の部位を矩形導波管22内へ周期的に挿入し、又は矩形導波管22内から退避させる。これにより、位相シフト装置25Bは、矩形導波管22の長尺方向における定在波の位相を周期的にシフトさせる。すなわち、回転体121が、図17(a)〜(d)に例示した回転方向に不均一な形状である場合は、回転体121の一部分が矩形導波管22内に挿入された状態では、回転体121によってマイクロ波の透過及び/又は反射が生じるため、矩形導波管22内で生成する定在波の腹と節の位置が移動する。一方、回転体121が矩形導波管22から退避した状態では、回転体121による透過及び/又は反射が生じないため、定在波の位相が矩形導波管22の終端22Eで反射波が生成する元の状態に戻り、定在波の腹と節の位置が元通り復元される。また、回転体121が図18(a),(b)に例示した回転軸方向に厚みが不均一な形状である場合には、第1の壁面121Aの部分と第2の壁面121Bの部分とが交互に矩形導波管22内に進出、退避することで、マイクロ波が透過及び/又は反射される。その結果、矩形導波管22内で生成する定在波の腹と節の位置を周期的に変化させ、該定在波の位相を周期的に変化させることができる。従って、回転体121を回転させ、その一部分を矩形導波管22内へ進出・退避させる動作を繰返すことにより、定在波の腹と節の位置を一定の周期で移動させることができる。そして、スロット孔41において、アンテナ部40の長尺方向に時間平均で均一なラインプラズマを生成させることが可能になる。その結果、アンテナ部40の長尺方向で被処理体のプロセス内容を均質にすることができる。
<第2の実施の形態の変形例>
図14〜図16では、回転軸となる軸部材123(つまり、回転中心O)が矩形導波管22の外側に位置する構成例を示したが、軸部材123を矩形導波管22内に配置することもできる。例えば、図19に示したように、位相シフト手段としての位相シフト装置25Cは、回転体121と、この回転体121を回転運動させる駆動部122と、回転体121を支持するとともに、矩形導波管22の内側に配置された軸部材123と、軸部材123と駆動部122とを連結し、挿通口22cを介して駆動部122の動力を軸部材123に伝達する連結部材124と、を備えている。
本変形例では、回転体121として、図18(a),(b)に例示した回転軸方向に厚みが不均一な回転体121を好ましく用いることができる。そして第1、第2の壁面121A,121Bを有する回転体121を、矩形導波管22内でその長尺方向に一致する方向を回転軸として回転させることによって、第1の壁面121Aの部分と第2の壁面121Bの部分とで交互にマイクロ波が透過及び/又は反射される。その結果、矩形導波管22内で生成する定在波の位相を周期的に変化させることができる。
また、本変形例の位相シフト装置25Cでは、図18(a),(b)に示したように回転軸方向に厚みが不均一な回転体121に替えて、例えば回転体121を金属により形成する場合は、矩形導波管22の長尺方向の異なる位置にマイクロ波を反射させる壁面が複数形成されるように、複数の部材(例えば板材)を設置した回転体を用いることも可能である(図示省略)。この場合、回転体を回転させることにより、マイクロ波の反射位置を矩形導波管22の長尺方向に変化させることができるため、矩形導波管22内で生成する定在波の位相を周期的に変化させることができる。また、本変形例の位相シフト装置25Cでは、回転体121として、図17(a)〜(d)に例示したように、回転方向に不均一な形状のものも使用できる。本変形例において図17(a)〜(d)に例示した回転体121を用いる場合、矩形導波管22内で、その長尺方向に一致する方向を回転軸として回転させることによって、回転中心Oの偏心や、回転方向における形状の不均一により、回転体121による透過及び/又は反射が周期的に生じ、定在波の位相を周期的にシフトさせることが可能になる。
なお、第2の実施の形態において、回転体121の形状は、矩形導波管22内を進行してくるマイクロ波に対して向き合う壁面121a(121A,121B)を周期的に変位させ得るものであればよく、図17(a)〜(d)、図18(a),(b)に例示したものに限らない。
また、本実施の形態において、回転体121の材質、位相シフト装置25B,25Cを配設する位置は、第1の実施の形態と同様とすることができる。また、挿通口22cから外部へマイクロ波が漏洩することを防止するため、第1の実施の形態と同様に、位相シフト装置25B,25Cをカバー部材84によって覆うことが好ましい。本実施の形態における他の構成及び効果は、第1の実施の形態と同様である。
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態にかかるプラズマ処理装置について、図20〜図22を参照しながら説明する。図20は、本発明の第3の実施の形態にかかるプラズマ処理装置102の概略構成図である。図20のプラズマ処理装置102は、処理容器10と、プラズマを発生させて処理容器10内の被処理体Sへ向けて放出するプラズマ生成装置20Bと、被処理体Sを支持するステージ50と、プラズマ処理装置102を制御する制御部60を備え、被処理体Sに対して常圧で処理を行う大気圧プラズマ処理装置として構成されている。ここで、プラズマ生成装置20Bは、マイクロ波を発生させるマイクロ波発生装置21と、マイクロ波発生装置21に接続され、その一部分としてアンテナ部40が設けられた矩形導波管22と、矩形導波管22に接続されてその内部へ処理ガスを供給するガス供給装置23と、アンテナ部40内のガス及び必要に応じて処理容器10内を排気するための排気装置24と、矩形導波管22内(特に、アンテナ部40内)での定在波の位相を周期的にシフトさせる位相シフト手段としての位相シフト装置25Dと、矩形導波管22の内部で処理ガスの通過を遮るための石英などの誘電体からなる隔壁26と、を備えている。また、矩形導波管22の一つの壁面にはスロット孔41が形成されており、該スロット孔41が形成された領域は、スロット孔41で生成したプラズマを外部の被処理体Sへ向けて放出するアンテナ部40を構成している。
本実施の形態に係るプラズマ処理装置102(図20)と、第1の実施の形態に係るプラズマ処理装置100(図1)との相違は、位相シフト装置25Aの代わりに位相シフト装置25Dを設けた点にある。従って、以下では相違点を中心に説明し、同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
<位相シフト装置>
本実施の形態の位相シフト装置25Dは、矩形導波管22の長尺方向に対して交差する方向(好ましくは直交する方向)を回転軸として回転運動する壁部材を有している。具体的には、図21に拡大して示したように、位相シフト装置25Dは、「矩形導波管22の長尺方向に対して交差する方向を回転軸として回転運動する壁部材」としての回転体131と、この回転体131を回転運動させる駆動部132と、回転体131を支持するとともに、矩形導波管22に設けられた挿通口22cを介して回転体131と駆動部132を連結し、駆動部132の動力を回転体131に伝達する軸部材133と、を備えている。駆動部132は、矩形導波管22の長尺方向に対して交差する方向を回転軸として回転体131を回転させる。駆動部132は、例えばモーター等により構成することができる。
(回転体)
回転体131は、矩形導波管22内を進行してくるマイクロ波に対して、周期的に向き合う壁面131aを有している。なお、平板状の回転体131の両面を、周期的に向き合う壁面131aとして利用してもよい。回転体131の形状としては、特に限定されず、例えば図22(a)に例示したように厚みの薄い円板状としてもよいし、同図(b)に示したように厚みの薄い角板状としてもよい。回転体131を矩形導波管22内でその長尺方向に対して交差(例えば直交)する方向に回転させることにより、矩形導波管22内で生成するマイクロ波の定在波の位相を周期的にシフトさせることができる。
すなわち、回転体131の壁面131aが矩形導波管22の長尺方向(つまり、マイクロ波の進行方向)に直交する角度では、回転体131によりマイクロ波の透過及び/又は反射が生じるため、矩形導波管22内で生成する定在波の位相がシフトし、腹と節の位置が移動する。一方、回転体131の壁面131aが矩形導波管22の長尺方向と平行になる角度では、回転体131の厚みが薄いため、マイクロ波の透過及び反射がほぼ無視できる程度まで小さくなり、定在波の位相が、矩形導波管22の終端22Eで反射波が生成する元の状態に戻り、腹と節の位置も復元される。従って、回転体131を矩形導波管22内で回転させることにより、定在波の位相を周期的にシフトさせ、腹と節の位置を周期的に移動させ、アンテナ部40の長尺方向に時間平均で均一なラインプラズマを生成させることが可能になる。その結果として、アンテナ部40の長尺方向で被処理体のプロセス内容を均質にすることができる。
なお、本実施の形態において、回転体131の形状は、矩形導波管22内を進行してくるマイクロ波に対して向き合う壁面131aを有していればよいため、図22(a),(b)に例示したものに限らない。また、本実施の形態において、定在波の腹と節の位置を移動させる際の制御性を高めるためには、駆動部132に例えばステッピングモーター等の回転角度を制御可能な機構を採用し、回転体131を矩形導波管22の長尺方向に対して角度90°毎に回転させるようにしてもよい。
また、矩形導波管22内を進行してくるマイクロ波に対して向き合う壁面131aの面積は、小さすぎると透過や反射が生じにくくなり、大きすぎると変形や破損するおそれがある。
また、回転体131を矩形導波管22内で360°回転させる動作を1サイクルとする回転運動の周期は、プラズマ処理プロセスの均一性、スループット、駆動機構の簡素化の兼ね合いを考慮して、プラズマ処理プロセス時間の1/1000〜1/2とすることが好ましい。
本実施の形態において、回転体131の材質、位相シフト装置25Dの配設位置は、第1の実施の形態と同様とすることができる。回転体131の回転軸は、矩形導波管22の長尺方向に対して交差する方向であればよいため、例えば水平方向に長尺な矩形導波管22に対して、回転体131の回転軸を鉛直方向に設けてもよいし、水平方向に設けてもよい。また、挿通口22cから外部へマイクロ波が漏洩することを防止するため、第1の実施の形態と同様に、位相シフト装置25Dをカバー部材84によって覆うことが好ましい。本実施の形態における他の構成及び効果は、第1の実施の形態と同様である。
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態にかかるプラズマ処理装置について、図23及び図24を参照しながら説明する。図23は、本発明の第4の実施の形態にかかるプラズマ処理装置103の概略構成図である。図23のプラズマ処理装置103は、処理容器10と、プラズマを発生させて処理容器10内の被処理体Sへ向けて放出するプラズマ生成装置20Cと、被処理体Sを支持するステージ50と、プラズマ処理装置103を制御する制御部60を備え、被処理体Sに対して常圧で処理を行う大気圧プラズマ処理装置として構成されている。ここで、プラズマ生成装置20Cは、マイクロ波を発生させるマイクロ波発生装置21と、マイクロ波発生装置21に接続され、その一部分としてアンテナ部40が設けられた矩形導波管22と、矩形導波管22に接続されてその内部へ処理ガスを供給するガス供給装置23と、アンテナ部40内のガス及び必要に応じて処理容器10内を排気するための排気装置24と、矩形導波管22内(特に、アンテナ部40内)での定在波の位相を周期的にシフトさせる位相シフト手段としての位相シフト装置25Eと、矩形導波管22の内部で処理ガスの通過を遮るための石英などの誘電体からなる隔壁26と、を備えている。また、矩形導波管22の一つの壁面にはスロット孔41が形成されており、該スロット孔41が形成された領域は、スロット孔41で生成したプラズマを外部の被処理体Sへ向けて放出するアンテナ部40を構成している。
本実施の形態に係るプラズマ処理装置103(図23)と、第1の実施の形態に係るプラズマ処理装置100(図1)との相違は、位相シフト装置25Aの代わりに位相シフト装置25Eを設けた点にある。従って、以下では相違点を中心に説明し、同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
<位相シフト装置>
本実施の形態の位相シフト装置25Eは、矩形導波管22内を進行してくるマイクロ波に対して向き合う壁部材を有している。この壁部材は、矩形導波管22の終端部に設けられ、矩形導波管22の長尺方向に導波管内に進出し、もしくは導波管内から退避する直線運動をする。具体的には、図24に拡大して示したように、位相シフト装置25Eは、「矩形導波管22の長尺方向に導波管内に進出し、もしくは導波管内から退避する直線運動をする壁部材」としてのプランジャー様の可動体141と、この可動体141を直線的に往復運動させる駆動部142と、可動体141を支持するとともに、駆動部142と連結するシャフト143と、を備えている。本実施の形態において、可動体141は金属により構成されており、矩形導波管22の断面とほぼ相似の矩形な壁面141aを有している。この壁面141aは、矩形導波管22内を進行してくるマイクロ波に対して向き合い、反射波を生成させる壁面であり、矩形導波管22の縦横の内径よりもやや小さく形成されている。
駆動部142は、矩形導波管22の長尺方向に可動体141を周期的に往復運動させる。駆動部142は、矩形導波管22の終端22Eに設けられた挿通口22dを介してシャフト143及び可動体141を矩形導波管22内へ所定の距離L5で進出させたり、退避させたりする。退避状態において、可動体141の大部分は挿通口22dから矩形導波管22の外部へ移動し、マイクロ波を反射する壁面141aが矩形導波管22の終端22Eの内壁面に一致する位置まで後退する。駆動部142は、例えばエアシリンダ、油圧シリンダ等によって構成してもよいし、あるいはモーター等の駆動源にクランク機構、スコッチ・ヨーク機構、ラック&ピニオン機構等を組み合わせて構成してもよい。このように、位相シフト装置25Eは、駆動部142を作動させることにより、可動体141を矩形導波管22の長尺方向に直線往復運動させて、マイクロ波を反射する壁面141aの位置を移動させることによって、矩形導波管22内で生成する定在波の位相を周期的にシフトさせる。
すなわち、可動体141が矩形導波管22内に進出した状態では、マイクロ波が、距離L5で進出した可動体141の壁面141aによって反射されるため、矩形導波管22の導波路長が実質的に短くなる。そのため、矩形導波管22内で生成する定在波の腹と節の位置が移動する。一方、可動体141の壁面141aが矩形導波管22の本来の終端22Eまで退避した状態では、導波路長が元の長さになり、定在波の腹と節の位置も元通り復元される。従って、可動体141を矩形導波管22内へ進出・退避させる動作を繰返すことにより、定在波の腹と節の位置を周期的に移動させることができるようになり、アンテナ部40の長尺方向に時間平均で均一なラインプラズマを生成させることが可能になる。その結果として、アンテナ部40の長尺方向で被処理体のプロセス内容を均質にすることができる。
なお、上述の非特許文献1には、位置を可変に調節可能なプランジャーを矩形導波管の終端に設けたプラズマ生成装置が開示されている。しかし、この非特許文献1の装置は、大気圧プラズマ装置ではない点で本発明とは技術的に大きく異なるものである。また、非特許文献1のプランジャーは、安定したプラズマを生成させ得る導波路長を検討するために、矩形導波管の固定端の位置を簡便に変化させる目的で考案されたものに過ぎず、本実施の形態のプラズマ処理装置103のように、プラズマを生成させている間にマイクロ波の反射位置を周期的に移動させて定在波の位相を変化させ、時間平均で均一なラインプラズマを形成する機能は有していない。
本実施の形態において、可動体141は、マイクロ波の反射位置を周期的に移動させて定在波の腹と節の位置を矩形導波管22の長尺方向に沿って変位させ得るものであればよいため、可動体141の形状は、図24に例示したものに限らない。また、矩形導波管22内を進行してくるマイクロ波に対して向き合い、反射波を生成させる壁面141aの面積は、小さすぎると壁面141aでの反射が生じにくくなるため、矩形導波管22の断面積に対して、壁面141aの面積の比率(壁面141aの面積/矩形導波管22の断面積)を限りなく1に近づけることが好ましい。
また、位相シフト装置25Eの可動体141を進出させる距離L5は、特に制限はないが、可動体141が進出した状態で壁面141aの位置を、矩形導波管22内で本来発生する定在波の腹の位置に設定することによって、定在波の腹と節の位置を移動させやすくなる。ここで、矩形導波管22内で生成する本来の定在波の節は固定端である矩形導波管22の終端22Eの内壁面と一致するため、可動体141を進出させる距離L5は、アンテナ部40の終端40Eと矩形導波管22の終端22Eとの間で、定在波の管内波長λgに対して、n×λg/4(ここで、nは正の奇数を意味し、好ましくは1を意味する)になるように設定することが好ましい。
また、可動体141を矩形導波管22内に進出・退避させる動作を1サイクルとする往復運動の周期は、プラズマ処理プロセスの均一性、スループット、駆動機構の簡素化の兼ね合いを考慮して、プラズマ処理プロセス時間の1/1000〜1/2とすることが好ましい。
本実施の形態においても、挿通口22dから外部へマイクロ波が漏洩することを防止するため、位相シフト装置25Eをカバー部材84によって覆うことが好ましい。本実施の形態における他の構成及び効果は、第1の実施の形態と同様である。
[第5の実施の形態]
次に、本発明の第5の実施の形態にかかるプラズマ処理装置について、図25,図26を参照しながら説明する。図25は、本発明の第5の実施の形態にかかるプラズマ処理装置104の概略構成図である。図25のプラズマ処理装置104は、処理容器10と、プラズマを発生させて処理容器10内の被処理体Sへ向けて放出するプラズマ生成装置20Dと、被処理体Sを支持するステージ50と、プラズマ処理装置104を制御する制御部60を備え、被処理体Sに対して常圧で処理を行う大気圧プラズマ処理装置として構成されている。ここで、プラズマ生成装置20Dは、マイクロ波を発生させるマイクロ波発生装置21と、マイクロ波発生装置21に接続され、その一部分としてアンテナ部40が設けられた矩形導波管22と、矩形導波管22に接続されてその内部へ処理ガスを供給するガス供給装置23と、アンテナ部40内のガス及び必要に応じて処理容器10内を排気するための排気装置24と、矩形導波管22内(特に、アンテナ部40内)での定在波の位相を周期的にシフトさせる位相シフト手段としての一対の移相器151A,151Bと、矩形導波管22の内部で処理ガスの通過を遮るための石英などの誘電体からなる一対の隔壁26A,26Bと、を備えている。なお、矩形導波管22の終端22E側の隔壁26Bは省略することも可能である。また、矩形導波管22の一つの壁面にはスロット孔41が形成されており、該スロット孔41が形成された領域は、スロット孔41で生成したプラズマを外部の被処理体Sへ向けて放出するアンテナ部40を構成している。
本実施の形態に係るプラズマ処理装置104(図25)と、第1の実施の形態に係るプラズマ処理装置100(図1)との主な相違は、位相シフト装置25Aの代わりに、位相シフト手段として一対の移相器151A,151Bを設けた点にある。従って、以下では相違点を中心に説明し、同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
<移相器>
本実施の形態において、位相シフト手段である一対の移相器151A,151Bは、アンテナ部40を間に挟み、その両側に設けられている。すなわち、移相器151Aはアンテナ部40よりも矩形導波管22の終端22E側に配設され、移相器151Bはアンテナ部40よりも矩形導波管22のマイクロ波発生装置21側に配設されている。各移相器151A,151Bは、それぞれ矩形導波管22に接続され、導波路の一部分を構成している。
移相器151A,151Bは、共に同じ構成である。図26に移相器151Aの構成例を模式的に示す。移相器151Aは、例えば方向性結合器153と2つの可変短絡板155,155とを備えている。ここで、移相器151Aにおいて、マイクロ波発生装置21側での矩形導波管22との接続部分を入射側のポート1、2つの可変短絡板155,155側をポート2及びポート3、矩形導波管22の終端22E側での矩形導波管22との接続部分を出射側のポート4とする。この場合、Sパラメータで表されるポート1における反射係数S11は、S121とS131との和であり、下式(1)で表すことができる。また、ポート1からポート4への伝送係数S41は、S124とS134との和であり、下式(2)で表すことができる。
Figure 0005921241
このように、移相器151Aを用いることによって、ポート1からポート4へ無損失で電力伝送が可能である。また、矩形導波管22の終端22E側での矩形導波管22との接続部分を入射ポートとし、マイクロ波発生装置21側での矩形導波管22との接続部分を出射ポートとする場合も、無損失で電力伝送が可能である。なお、移相器151Bについても同様である。
また、2つの可変短絡板155,155は、図示しないモータ等の駆動部によって、同期して導波路内への進出もしくは退避が可能に構成されている。可変短絡板155を進退運動させることにより、マイクロ波の位相を可変に調節することができる。移相器151A又は151Bにおいて、2つの可変短絡板155,155を進出・退避させる動作を繰返すことにより、定在波の腹と節の位置を周期的に移動させることができるようになり、アンテナ部40の長尺方向に時間平均で均一なラインプラズマを生成させることが可能になる。その結果として、アンテナ部40の長尺方向で被処理体のプロセス内容を均質にすることができる。そして、本実施の形態のプラズマ処理装置104では、移相器151A,151Bを逆相で動作させる。ここで、「逆相で動作させる」とは、移相器151Aによって生じた位相のずれを、移相器151Bによって打ち消すように、移相器151A,151Bを動作させることを意味する。
本実施の形態では、移相器151Aの可変短絡板155と移相器151Bの可変短絡板155とを同時に、かつ逆相で動作するように駆動制御し、移相器151Aによって生じた位相のずれを、移相器151Bによって打ち消す。つまり、移相器151Aによって、アンテナ部40内の定在波の腹と節の位置を周期的に移動させながら、移相器151Bによって、マイクロ波発生装置21側へ向かう反射波の位相のずれを補正する。移相器151Aだけで矩形導波管22内の定在波の位相を変化させた場合、位相が変化した反射波によって、マイクロ波発生装置21側で複雑なインピーダンス整合動作が必要になる。しかし、移相器151Aに加え、移相器151Bを設け、これら2つを逆相で動作させれば、マイクロ波発生装置21側から見ると、見かけ上、移相器151A,151Bが存在しないかのようになり、インピーダンス整合が簡単になる。このように、本実施の形態では、2つの移相器151A,151Bを逆相で動作させ、定在波の腹と節の位置を周期的に移動させながら、マイクロ波発生装置21の電源部31(図2参照)や、整合器(図示せず)への負荷を軽減し、マイクロ波の電力伝送を最大化して大気圧プラズマによる処理効率を向上させることが可能になる。
本実施の形態における他の構成及び効果は、第1の実施の形態と同様である。
[第6の実施の形態]
上記第1〜第5の実施の形態のプラズマ生成装置20,20A,20B,20C,20Dにおいて、矩形導波管22に温度調節装置を設けることができる。矩形導波管22に温度調節装置を設けた具体例を図27A,27B,27Cに示した。図27Aは、スロット孔41が形成された壁を除くアンテナ部40の3つの壁の周囲を覆うように、温度調節装置161を設けた態様である。図27Bは、スロット孔41の開口部分を除くアンテナ部40の全表面を覆うように、温度調節装置161を設けた態様である。図27Cは、スロット孔41が形成された壁を除くアンテナ部40の3つの壁の周囲と、スロット孔41が形成されたアンテナ部40の壁においてスロット孔41の周囲を除く部分と、を覆うように、温度調節装置161を設けた態様である。なお、温度調節装置161は、矩形導波管22のアンテナ部40以外の部分にも設けることができる。
本実施の形態において、温度調節装置161は、例えば内部に冷却又は加熱のための熱媒体を循環供給できるように構成してもよいし、あるいは、抵抗加熱等によるヒーターによって構成してもよい。温度調節装置161によって、プラズマ放電による矩形導波管22(特にアンテナ部40)の温度変化に対し、アンテナ部40を含む矩形導波管22の温度調節を行うことができるため、プラズマ放電の安全性及び再現性を高めることができる。
本実施の形態における他の構成及び効果は、第1〜第5の実施の形態と同様である。
[第7の実施の形態]
上記第1〜第6の実施の形態のプラズマ生成装置20,20A,20B,20C,20Dを用い、例えば図28に示したように、矩形導波管22のアンテナ部40を複数個(図28では3つ)並列的に配置したプラズマ処理装置105を構成できる。アンテナ部40を含むプラズマ生成装置20,20A,20B,20C,20Dの構成は、第1〜第5の実施の形態と同様であるため、細部についての図示及び説明は省略する。なお、第6の実施の形態のように、アンテナ部40を含む矩形導波管22に温度調節装置161を設けてもよい。プラズマ処理装置105では、図示しない駆動機構によって、アンテナ部40に対して被処理体Sが図28中の矢印で示す方向に相対移動可能に設けられている。アンテナ部40(矩形導波管22)の長手方向と、被処理体Sの移動方向は、互いに直交するように配置されている。アンテナ部40のスロット孔41は、被処理体Sの幅以上の長さで配設されている。
図28に示したように、複数のアンテナ部40を並列的に配置し、かつ被処理体Sを相対移動させることによって、被処理体Sの進行方向に均一なプラズマ処理を行うことができる。また、位相シフト手段としての位相シフト装置25A〜25Eによって、被処理体Sの幅方向(アンテナ部40の長尺方向)においても、時間平均で均一なプラズマ処理を行うことができる。従って、被処理体Sに対して、処理斑がなく、均一なプラズマ処理を連続的に行うことが可能になる。なお、並列的に配置されるアンテナ部40の数は、3つに限らず、2つでも、4つ以上でもよい。
図29は、プラズマ処理装置105において、長尺なシート状(フィルム状)の被処理体Sをロール・トウ・ロール方式で搬送させながら処理する態様を示している。被処理体Sは、第1のロール70Aから送り出され、第2のロール70Bに巻き取られる。このように、プラズマ処理装置105を用いることによって、被処理体Sが巻き取り可能なシート状(フィルム状)である場合に、連続的な処理を容易に行うことができる。
図30は、図29に対する変形例を示している。このプラズマ処理装置105Aでは、並列的に配置された3つアンテナ部40が、被処理体Sを挟むように上下に配置されている。被処理体Sの上方に配置されたアンテナ部40A,40A,40Aは、それらの下面(被処理体Sとの対向面)にスロット孔41(図示省略)が設けられている。被処理体Sの下方に配置されたアンテナ部40B,40B,40Bは、それらの上面(被処理体Sとの対向面)にスロット孔41(図示省略)が設けられている。このように、被処理体Sの上下両方にアンテナ部40を配置することによって、ロール・トウ・ロール方式で被処理体Sを搬送させながら、その両面に対して同時にプラズマ処理を行うことができる。尚、被処理体Sの上方にアンテナ部40Aを1つ配置し、被処理体Sの下方にアンテナ部40Aを1つ配置するようにすることでも、被処理体Sの両面に対して同時にプラズマ処理を行うことができる。
本実施の形態における他の構成及び効果は、第1〜第6の実施の形態と同様である。
<シミュレーション試験>
次に、本発明の効果を確認した実験結果について説明する。図1に示すものと同様の構成のプラズマ処理装置を用い、矩形導波管22の導波路に誘電体からなるブロック111を挿入することが、矩形導波管22の管内で生成する定在波の位相に与える影響をシミュレーションした。
(シミュレーションの条件)
図31(a),(b)に示したように、矩形導波管22の導波路の全長をLy、幅をLx、高さをLz、導波路の始点からその長尺方向にブロック111の挿入位置(ブロック111の中央)までの距離をr、ブロック111の挿入深さをdとした。ブロック111は、図31(c)に示したように、矩形導波管22の長尺方向に平行な辺の長さをly、幅(矩形導波管22の幅方向に平行な辺の長さ)をlxとした。なお、図31(a),(b)では、マイクロ波発生装置から矩形導波管22内を伝播してくるマイクロ波の進行方向を白矢印で示した。
以下に示すパラメータの設定でブロック111の挿入深さdのみを変化させ、位相のずれ量[mm]を計算した。
(設定パラメータ)
矩形導波管22については、Ly:800mm、Lx:108mm、Lz:56mm、r:690mm、管内波長λg:148mmとした。
ブロック111については、比誘電率εr:10、ly:36mm、lx:36mmとし、ブロック111の挿入深さd:0mm(挿入せず)、5mm、10mm、20mm、25mm、28mm、30mm、40mm、45mm、48mm、又は50mmに設定した。
図32にシミュレーションの結果を示した。図32の縦軸は位相のずれ(mm)を示し、横軸は、ブロック111の挿入深さdを示している。上記シミュレーション条件では、ブロック111の挿入深さdが28mmまでの範囲と45mm以上の範囲では、dを大きくするに伴い、定在波の位相のずれも大きくなっていることがわかる。従って、矩形導波管22内にブロック111を挿入することによって、矩形導波管22内の定在波の位相を変化させ、腹と節の位置を移動させ得ることが確認された。
次に、ブロック111の幅(矩形導波管22の幅方向に平行な辺の長さ)lxが定在波の位相のずれに与える影響をシミュレートした。ここでは、ブロック111の挿入深さdを28mm、導波路の始点からブロック111の挿入位置までの距離rを20mmに設定するとともに、上記lxを以下のように変化させた以外は上記と同様の条件でシミュレーションを実施した。
lx:0mm(挿入せず)、5mm、10mm、20mm、30mm、36mm、40mm、50mm、72mm、又は108mm
図33にシミュレーションの結果を示した。図33の縦軸は位相のずれ量(mm)を示し、横軸は、ブロック111の幅lxを示している。上記シミュレーション条件では、lx=20mmから40mmの範囲と、108mm(矩形導波管22の全幅と同じ)を除き、ブロック111の幅lxを大きくすることによって、それに比例して位相のずれも大きくなる傾向が読み取れた。
上記シミュレーションの結果から、矩形導波管22内にブロック111を挿入することによって、矩形導波管22内の定在波の位相を変化させ得ることが確認された。また、矩形導波管22内に挿入するブロック111の幅lxと、挿入深さdによって、位相の変化量を調節できることも確認された。
以上、本発明の実施の形態を例示の目的で詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に制約されることはない。当業者は本発明の思想及び範囲を逸脱することなく多くの改変を成し得、それらも本発明の範囲内に含まれる。例えば、上記実施の形態では、被処理体SとしてFPD基板や該基板に張り合わせるフィルム等を挙げたが、処理対象は特に限定されるものではなく、例えば半導体ウエハ等の基板に対しても適用することができる。
10…処理容器、20…プラズマ生成装置、21…マイクロ波発生装置、22…矩形導波管、23…ガス供給装置、24…排気装置、25A,25B,25C,25D,25E…位相シフト装置(位相シフト手段)、26…隔壁、40…アンテナ部、41…スロット孔、50…ステージ、60…制御部、100…プラズマ処理装置、S…被処理体

Claims (19)

  1. マイクロ波を発生させるマイクロ波発生装置と、
    前記マイクロ波発生装置に接続され、マイクロ波の伝送方向に長尺をなすとともに、該伝送方向に直交する方向の断面が矩形をした長尺な中空状の導波管と、
    前記導波管に接続されてその内部へ処理ガスを供給するガス供給装置と、
    前記導波管の一部分であって、マイクロ波により生成したプラズマを外部に放出するアンテナ部と、
    前記アンテナ部の短辺もしくは長辺をなす壁に形成された1又は複数のスロット孔と、
    前記導波管内で生成する前記マイクロ波による定在波の位相を周期的にシフトさせる位相シフト手段と、
    を備え、
    前記位相シフト手段が、前記導波管の長尺方向に一致する方向を回転軸として回転運動するとともに、前記導波管内を進行してくるマイクロ波を透過及び/又は反射する壁部材を有しており、該壁部材によって前記定在波の腹と節の位置を周期的に変化させるものであり、
    大気圧状態の前記導波管内に供給された処理ガスをマイクロ波によって前記スロット孔でプラズマ化し、前記スロット孔から外部へ放出するプラズマ生成装置。
  2. 前記壁部材の回転運動が偏心回転である請求項1に記載のプラズマ生成装置。
  3. 前記壁部材が、回転方向に不均一な形状を有している請求項1に記載のプラズマ生成装置。
  4. 前記壁部材が、前記導波管の長尺方向に異なる厚みを有している請求項1に記載のプラズマ生成装置。
  5. マイクロ波を発生させるマイクロ波発生装置と、
    前記マイクロ波発生装置に接続され、マイクロ波の伝送方向に長尺をなすとともに、該伝送方向に直交する方向の断面が矩形をした長尺な中空状の導波管と、
    前記導波管に接続されてその内部へ処理ガスを供給するガス供給装置と、
    前記導波管の一部分であって、マイクロ波により生成したプラズマを外部に放出するアンテナ部と、
    前記アンテナ部の短辺もしくは長辺をなす壁に形成された1又は複数のスロット孔と、
    前記導波管内で生成する前記マイクロ波による定在波の位相を周期的にシフトさせる位相シフト手段と、
    を備え、
    前記位相シフト手段が、前記導波管の長尺方向に対して交差する方向を回転軸として回転運動するとともに、前記導波管内を進行してくるマイクロ波を透過及び/又は反射する壁部材を有しており、該壁部材によって前記定在波の腹と節の位置を周期的に変化させるものであり、
    大気圧状態の前記導波管内に供給された処理ガスをマイクロ波によって前記スロット孔でプラズマ化し、前記スロット孔から外部へ放出するプラズマ生成装置。
  6. 前記壁部材の材質が、誘電体又は金属からなる請求項1から5のいずれか1項に記載のプラズマ生成装置。
  7. 前記位相シフト手段を覆うカバー部材をさらに備えた請求項1から6のいずれか1項に記載のプラズマ生成装置。
  8. 前記スロット孔は、矩形状に設けられており、その長手方向と前記アンテナ部の長手方向が一致するように配設されている請求項1から7のいずれか1項に記載のプラズマ生成装置。
  9. 前記アンテナ部に長尺な一つのスロット孔のみが設けられている請求項8に記載のプラズマ生成装置。
  10. 前記アンテナ部に複数のスロット孔が一列に配設されている請求項8に記載のプラズマ生成装置。
  11. 前記アンテナ部に複数のスロット孔が並列的に複数列配置されている請求項8に記載のプラズマ生成装置。
  12. 前記マイクロ波発生装置と前記アンテナ部との間の前記導波管内に、前記処理ガスの通過を遮る隔壁を備えた請求項1から11のいずれか1項に記載のプラズマ生成装置。
  13. 前記スロット孔の縁面は、前記壁の厚み方向に開口幅が変化するように傾斜して設けられている請求項1から12のいずれか1項に記載のプラズマ生成装置。
  14. さらに、パルス発生器を備え、マイクロ波をパルス状に発生させてプラズマを生成させる請求項1から13のいずれか1項に記載のプラズマ生成装置。
  15. 請求項1から14のいずれか1項に記載のプラズマ生成装置を備え、発生させたプラズマを利用して被処理体に対して所定の処理を行うプラズマ処理装置。
  16. 前記スロット孔が被処理体に対向するように前記アンテナ部が配置される請求項15に記載のプラズマ処理装置。
  17. 被処理体の表裏両面にそれぞれアンテナ部が配置される請求項16に記載のプラズマ処理装置。
  18. 請求項15から17のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置を用いて、被処理体を処理するプラズマ処理方法。
  19. 被処理体がロール・トゥ・ロール方式で搬送可能なフィルム状をなしている請求項18に記載のプラズマ処理方法。
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