JP5920767B2 - 通電処理による発酵温度の制御並びに食品微生物の増殖・代謝の促進方法 - Google Patents

通電処理による発酵温度の制御並びに食品微生物の増殖・代謝の促進方法 Download PDF

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Description

本発明は、通電処理による食品の発酵温度の制御及び/又は食品微生物の増殖・代謝の制御方法に関するものであり、更に詳しくは、食品の発酵過程において、バースト波を印加するバースト通電加熱により発酵温度を所定の温度条件に制御すること及び/又は培養液に微弱な交流電圧のバースト波を印加することにより食品微生物の増殖・代謝を促進することを特徴とする、発酵の温度条件の制御並びに食品微生物の増殖・代謝の促進方法に関するものである。本発明は、バースト通電処理による発酵温度の制御並びに食品微生物の増殖・代謝の促進方法に関する新技術を提供するものである。
食品への通電加熱は、食品自体を電気導電体とみなし、食品に交流電流を流すことにより食品自体を直接発熱させる技術であり、例えば、均一迅速加熱が可能なこと、加熱効率が高いことなどの特徴を有している。また、最近、微生物に対する電気的な刺激は微生物の増殖に影響を与えることを示す事例が幾つか報告されているが(非特許文献1及び非特許文献2)、その効果については不明な点がまだ多いのが実情である。
従来、発酵食品の製造過程において、通電しながら製造する方法が幾つか提案されており、先行技術として、例えば、マストに酵母(=酒母)を添加し発酵させるワインの製造方法がある。該方法においては、マストに微弱電流(=3〜50mAの直流電流あるいは10〜120mAの交流電流)を通電しながら発酵させ、香気性成分の含有量の多いワインを製造すること、酵母の香気性成分の生成を高めること、などが記載されている(特許文献1)。しかし、この文献には、微弱電流(交流電流)を通電しながら発酵させるとの記載があるが、成分の生成強化を狙いとしており、周波数の影響、交流波形の影響や、交流通電による酵母自体の増殖促進や、発酵の促進については言及がなく、ワインの香気性成分の生成以外については何も示されていない。
また、他の先行技術として、例えば、醤油醸造用酵母の培養方法において、培養液中に交流電流(=周波数100〜2000Hz、0.05〜0.5アンペア)を通電しながら前記酵母を培養すること、諸味発酵が旺盛で、アルコール含量の高い、優れた品質の醤油を製造すること、酵母生菌数が従来の方法よりも多い酵母培養液を容易に製造すること、などが記載されている(特許文献2)。しかし、この文献には、醤油醸造用酵母について記載されているのみであり、醤油醸造用酵母以外の酵母については何も示されていない。
また、他の先行技術として、例えば、所定の容器に味噌を収納し、味噌への通電加熱による加熱処理後、容器収納状態のまま真空冷却炉内に収容して所定温度まで真空冷却する方法、が提案されている(特許文献3)。しかし、この方法は、加熱処理によって、味噌中の酵母並びに一般細菌数を基準値(再発酵不可能な数値)以下として細菌処理が終了されるようにするものであり、殺菌処理を目的としたものである。
また、他の先行技術として、例えば、甲殻類、魚類、菌類などからの抽出分離工程と、濃縮液を生成する濃縮工程とを備えている鮮度保持剤の製造方法において、前記濃縮液に通電する方法、が提案されている(特許文献4)。しかし、この方法は、濃縮液に通電し陰極還元することを目的とするものである。
更に、他の先行技術として、セルロース系バイオマスとして雑草を使用し、前記雑草を緩衝液に浸漬し、次いで、当該緩衝液に電圧(直流電圧5〜30V)を印加することにより雑草の通電処理物を得て、この通電処理物を酵素により糖化し、該糖化物を原料として発酵を行うこと、が提案されている(特許文献5)。しかし、上記通電処理は、セルロース系バイオマスを糖化するための前処理を簡易化することを目的としたものである。
このように、先行技術として、通電処理による加工技術が幾つか提案されているが、その利用は未だごく一部の基礎的又は応用技術が報告されているだけであり、基本原理の理論的解明を含めて、実用化のレベルに到達していないのが実情であった。そこで、発酵関連分野において、通電処理による効果について更に解明するとともに、通電による新しい通電加工技術を確立することが当技術分野における重要課題として求められていた。
特開平7−170964号公報 特開2001−178401号公報 特開2002−34492号公報 特開2004−105074号公報 特開2005−58055号公報
Nakanishi,K.,Tokuda,H.,Soga,T.,Yoshinaga,T.,Takeda,M.,Effect of electric current on growth and alcohol production by yeast cells;Journal of Fermentation and Bioengineering,85(2),250−253(1997) Loghavi,L.,Sastry,K.S.,& Yousef,E.A.,Effect of moderate electric field frequency on growth kinetics and metabolic activity of lactobacillus acidophilus;Biotechnology Progress,24,148−153(2008)
本発明は、このような状況の中で、上述の従来技術に鑑みて開発されたものであって、バースト波を印加するバースト通電加熱により食品微生物の発酵過程における発酵温度を精密に制御する方法、並びに培養液に微弱な交流電圧のバースト波を印加する通電処理により食品微生物の増殖・代謝を促進する方法を提供すること、を課題とするものである。本発明は、特に、清酒酵母や耐塩性酵母の発酵温度条件の制御及び/又は培養液における清酒酵母や耐塩性酵母の増殖・代謝の促進に有用であり、清酒酵母や耐塩性酵母により清酒製造や食品製造における発酵温度の管理、並びに清酒酵母や耐塩性酵母の増殖・代謝の管理に好適に利用することができる新しい発酵温度及び/又は発酵微生物の増殖・代謝制御方法を提供することを課題とするものである。
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)食品微生物による発酵過程において、交流電圧を印加する通電処理における基本的波形である連続波、バースト波、及び方形波による通電のうち、バースト波を印加するバースト通電加熱により発酵温度を所定の温度範囲に制御し及び/又は前記食品微生物による培養液にバースト波を印加するバースト通電処理により微生物の増殖・代謝を促進することを特徴とする発酵温度及び/又は発酵微生物の増殖・代謝制御方法。
(2)上記食品微生物が、清酒酵母又は耐塩性酵母である、前記(1)に記載の発酵温度及び/又は発酵微生物の増殖・代謝制御方法。
(3)清酒酵母による発酵過程において、バースト波を印加するバースト通電加熱により発酵温度を所定の温度範囲に制御する、前記(1)又は(2)に記載の発酵温度の制御方法。
(4)耐塩性酵母による発酵過程において、バースト波を印加するバースト通電加熱により発酵温度を所定の温度範囲に制御する、前記(1)又は(2)に記載の発酵温度の制御方法。
(5)清酒酵母による発酵過程において、その培養液にバースト波を印加するバースト通電処理により清酒酵母の増殖・代謝を促進する、前記(1)に記載の発酵微生物の増殖・代謝制御方法。
(6)耐塩性酵母による発酵過程において、その培養液にバースト波を印加するバースト通電処理により耐塩性酵母の増殖・代謝を促進する、前記(1)に記載の発酵微生物の増殖・代謝制御方法。
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、食品の発酵温度及び/又は発酵微生物の増殖・代謝制御方法であって、食品微生物による食品の発酵過程において、バースト波を印加するバースト通電加熱により発酵温度を所定の温度範囲に制御し及び/又は前記食品微生物による培養液に交流電圧のバースト波を印加するバースト通電処理により微生物の増殖・代謝を促進することを特徴とするものである。
一般に、通電培養装置(図1参照)による通電処理には、連続波による通電、バースト波による通電、及び方形波による通電の処理がある。このうち、バースト波は、一定時間交流信号が流れて、暫く休みを繰り返す波形であり、その特徴は、温度変化が少ないことであり、また、方形波が複数の周波数成分を含むのに対して、周波数が単一であることである。
本発明では、通電処理における基本的波形である連続波、バースト波、及び方形波による通電のうち、温度変化のないバースト波による通電が用いられる。ここで、バースト正弦波(図2参照)とは、一定時間電流が流れ、暫く休みをとるサイクルを繰り返す波形のことである。このバースト波は、連続波に比べて、通電時間がより少ないので、温度変化が少ないという特徴を有し、また、方形波が複数の周波数成分を含むことに対して、周波数が単一であるので、周波数の影響を調べることが可能である。
本発明では、図3に示すような、バースト通電が可能なバースト通電培養装置を利用して、バースト正弦波の電圧やパルス幅・間隔などを調節することによって、培養液の温度変化が起こらないレベルで培養液へ通電することが好適であり、かつ重要である。
培養液の実際の温度変化を図4に示したように、本発明の通電加熱による温度制御によって、培養液の温度を所定の一定温度に保つことが可能である。このことは、本発明では、バースト通電加熱により、培養液の温度を一定温度に保つことができ、かつその温度が維持されることを示している。
ここで、培養液の温度を一定温度に保つことができるとは、通電加熱の加熱条件を変えるだけで所望の温度に維持できることを意味しており、本発明は、培養液の温度を一定の温度に設定し、かつその温度に持続的に維持するための温度条件の制御方法として有用であることを意味している。
次に、本発明は、通電処理により、清酒酵母の増殖・代謝が促進されることが分かった。すなわち、例えば、清酒酵母増殖への周波数の影響を調べたところ、通電処理により菌数の立ち上がりが速く、最大菌数も増加し、約1.7倍になり、また、周波数が高いほど、その効果が大きくなる傾向が見られる(図5参照)。
しかし、周波数が高いか低いかによる消費電力の影響については、図6に示されるように、有意的な差はほとんど見られない。更に、培養液の成分変化については、通電処理の場合は、例えば、グルコースの消費は速くなり、48時間後には、グルコースがほぼゼロになる(図10参照)。一方、エタノールの生成については、通電処理の場合は、生成速度が速く、最終的にエタノール生成量が促進され、約1.2倍に増加する。
また、バースト通電培養においては、培養液の温度変化がほとんどなく、常に所定の一定温度条件に保つことができる。そして、バースト通電による清酒酵母増殖については、バースト通電により酵母の増殖速度が大きくなり、最大菌数も多くなる。また、それぞれの周波数を比較してみると、周波数が高いほど、その効果が大きくなる傾向が見られる。
更に、バースト通電により10時間目からグルコースの消費が速くなり、48時間後には、グルコースはほぼゼロになる。また、エタノールの生成は、バースト通電により生成速度が大きく、最終的にエタノール生成量が約1.2倍に増加する。
次に、バースト通電による耐塩性酵母への影響については、まず、菌数の変化は、バースト通電により、耐塩性酵母の増殖が速くなり、最大菌数が増加し約2.1倍となり、また、周波数が高いほど、その効果が大きくなる傾向も見られる(図12参照)。
更に、バースト通電により、グルコースの消費速度がかなり大きくなり、100時間後には、グルコースはほぼゼロになる(図13参照)。また、エタノールの生成量が増加し、約1.7倍に促進される。清酒酵母の結果と比較して、その効果はより大きくなる(図14参照)。
本発明により、バースト波を印加するバースト通電加熱による食品微生物の発酵過程の精密温度制御が可能であり、また、培養液に微弱な交流電圧のバースト波を印加するバースト通電処理により、清酒酵母や耐塩性酵母の増殖・代謝が促進され、その効果は周波数依存的に増加する。
本発明は、食品微生物による食品の発酵過程の発酵温度の精密制御や、培養液中に含まれる該微生物の増殖・代謝の促進に有用であり、例えば、清酒酵母によるアルコール醸造過程や耐塩性酵母による塩分の高い醤油や味噌などの食品製造の過程で本発明を適用することにより、その発酵温度の管理、並びに清酒発酵における清酒酵母や耐塩性酵母の増殖・代謝の促進に有用である。
したがって、本発明は、例えば、清酒醸造などの清酒酵母による醸造過程や、耐塩性酵母による各種食品製造の過程において、その発酵温度を所定の温度条件に精密に制御する方法、並びに清酒酵母や耐塩性酵母の増殖・代謝の促進方法として好適に使用することができる。
従来技術として、前述の先行技術の項で説明したように、従来、ワインの製造過程で酒母のような酵母を添加後、微弱な電流を通電しながら発酵させることにより、香気性成分の生成量の多いワインを製造することが知られているが、本発明は、通電加熱により発酵温度を所定の温度に精密に制御、管理し、また、通電処理により、清酒酵母や耐塩性酵母の増殖・代謝を促進することを課題としている点で、上述の従来技術とは発明の課題、その構成及び効果において、本質的に区別されるものである。
本発明により、次のような効果が奏される。
(1)バースト波を印加するバースト通電加熱により清酒酵母や耐塩性酵母の発酵過程における発酵温度条件を精密に制御することができる。
(2)培養液に微弱な交流電圧のバースト波を印加するバースト通電処理により、食品微生物の増殖・代謝を促進することができる。
(3)本発明は、特に、清酒酵母や耐塩性酵母の発酵温度条件の制御及び/又は培養液における清酒酵母や耐塩性酵母の増殖・代謝の促進に有用である。
(4)本発明は、清酒酵母や耐塩性酵母による清酒製造や食品製造における発酵温度の管理、並びに清酒酵母や耐塩性酵母の増殖・代謝の管理に好適に利用することができる。
(5)培養液及び発酵槽の容量の大小に応じた外部加熱システムや、撹拌機構が不要となり、温度管理に要する設備及びランニングコストが軽減する。
(6)培養液自体の発熱が期待できるので、必要に応じて精密で複雑な温度プログラムの設定と実施が可能である。
通電培養装置の概略図を示す。 バースト正弦波を示す。 バースト通電培養装置の概略図を示す。 通電加熱培養における培養液の温度変化を示す。 通電加熱培養における周波数の影響を示す。 通電加熱培養における消費電力の影響を示す。 通電加熱培養における培養液の成分変化を示す。 バースト通電培養における培養液の温度変化を示す。 バースト通電による清酒酵母培養における菌数変化を示す。 バースト通電による清酒酵母培養におけるグルコースの濃度変化を示す。 バースト通電による清酒酵母培養におけるエタノールの生成量を示す。 バースト通電による耐塩性酵母培養における菌数変化を示す。 バースト通電による耐塩性酵母培養におけるグルコースの濃度変化を示す。 バースト通電による耐塩性酵母培養におけるエタノールの生成量を示す。
次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
1.通電加熱による温度制御における清酒酵母増殖への影響
本実施例では、まず、通電加熱による温度制御における清酒酵母増殖への影響を調べるために、図1に示す清酒酵母を培養する通電培養装置を使用し、培養液外側の冷却水の温度を20℃又は28℃に設定し、温度調節器の設定値を30℃にし、清酒酵母K−7(Saccharomyces cerevisiae)の培養液YM10(培地組成:酵母エキス、3g;麦芽エキス、3g;ポリペプトン、5g;グルコース、100g;蒸留水、1L)への通電On/Off制御を温度調節器によって行い、培養液の温度を通電加熱で30℃に維持した。
また、冷却水の温度を調節することによって、電力消費量を変化させた。通電加熱条件は、印加電圧:3.2V/cm;波形:sine;周波数:60Hz又は3KHzに設定した。培養液の温度変化を温度モニターで記録した。一定時間ごとに培養液をサンプリングし、菌数、グルコール濃度及びエタノール濃度を測定した。
2.温度変化のないバースト通電による酵母増殖への影響
次に、温度変化のないバースト通電による酵母増殖への影響を調べた。図2に示すように、バースト正弦波というは、一定時間電流が流れ、暫く休みを繰り返す波形のことであるが、連続波に比べて、通電時間がより少ないので、温度変化が少ない。また、方形波が複数の周波数成分を含むことに対して、周波数が単一であるので、周波数の影響を調べることが可能である。
本実施例では、図3に示すように、バースト通電培養装置を利用して、培養液外側の冷却水の温度を30℃に設定し、バースト正弦波の電圧やパルス幅・間隔などを調節することによって、培養液の温度変化が起こらないレベルで培養液へ通電しながら、清酒酵母k−7(Saccharomyces cerevisiae)及び耐塩性酵母(Zygosaccharomyces rouxii)の増殖への影響を検討した。
耐塩性酵母の場合は、培地YPD10(培地組成:酵母エキス、10g;ポリペプトン、20g;グルコース、100g;NaCl、100g;蒸留水、1L)を用いた。その時、通電条件は、印加電圧:1V/cm(清酒酵母)、0.25V/cm(耐塩性酵母);波形:sine;周波数:0.01〜1MHz;発振モード:burst;パルス幅:0.1s;パルス間隔:0.4sに設定した。一定時間ごとに培養液をサンプリングし、菌数、グルコール濃度及びエタノール濃度を測定した。
3.通電加熱による温度制御における清酒酵母増殖への影響
次に、通電加熱による温度制御における清酒酵母増殖への影響を調べた。培養液の実際温度を図4に示した。この図を見て分かるように、通電加熱により、培養温度を30℃に保つことが可能であることが分かった。そして、清酒酵母増殖への周波数の影響を図5に示した。コントロールに比べ、通電加熱の方が菌数の立ち上がりが速く、最大菌数もコントロールの約1.7倍になった。また、周波数が高いほど、その効果が大きくなる傾向が見られた。
しかし、図6に示すように、消費電力の影響については、有意的な差がなかった。更に、図7に示すように、培養液の成分変化については、コントロールに対して、通電加熱の場合は、10時間目から、グルコースの消費が速くなり、48時間後、コントロールはグルコースがまだ残っているが、通電加熱の方がほぼゼロになった。一方、エタノールの生成については、コントロールと比較して、通電加熱の方は生成速度が速く、最終的にエタノール生成量がコントロールの1.2倍となった。
4.バースト通電による酵母増殖への影響
次に、バースト通電による酵母増殖への影響を調べた。バースト通電による酵母増殖への影響については、図8に、培養液の実際温度変化の一つの例を示した。この図から、バースト通電により、培養液の温度変化がなく、常に30℃に保つことが確認された。そして、図9に示すように、バースト通電による清酒酵母増殖の結果については、コントロールに対して、バースト通電の方は酵母の増殖速度が大きくなり、最大菌数も多くなることが分かった。また、それぞれの周波数での結果を比較してみると、周波数高いほど、その効果が大きくなる傾向が見られた。
更に、図10に示すように、コントロールに対して、バースト通電の方が10時間目からグルコースの消費が速くなり、48時間後、コントロールはグルコースがまだ残っているが、バースト通電の方がほぼゼロになった。また、エタノールの生成は、図11に示すように、バースト通電の方はコントロールより生成速度が大きく、最終的にエタノール生成量がコントロールの1.2倍となることが分かった。
続いて、バースト通電による耐塩性酵母の培養も行った。まず、菌数の変化は、図12に示すように、コントロールと比較して、バースト通電により、耐塩性酵母の増殖が速くなり、最大菌数がコントロールの約2.1倍となることが分かった。また、周波数が高いほど、その効果が大きくなる傾向も見られた。
更に、図13に示すように、コントロールに比べて、バースト通電により、グルコースの消費速度がかなり大きくなり、100時間後、コントロールの方はグルコースがまだ約三分の一残っているが、バースト通電の方がほぼゼロであった。また、図14に示すように、エタノールの生成量がコントロールの約1.7倍になることが明らかとなった。清酒酵母の結果と比較して、その効果はより大きいことが分かった。
上記実施例の結果から、通電加熱による食品微生物の発酵過程の精密温度制御が可能であること、及び、培養液に微弱な交流電圧を印加する通電処理により、清酒酵母や耐塩性酵母の増殖・代謝が促進され、その効果が周波数依存的に増加することが示された。
以上詳述した通り、本発明は、バースト波を印加するバースト通電処理による発酵温度の制御並びに食品微生物の増殖・代謝の促進方法に係るものであり、本発明により、バースト通電加熱により食品の発酵過程における発酵温度条件を精密に制御することができ、更に、培養液に微弱な交流電圧のバースト波を印加するバースト通電処理により、食品微生物の増殖・代謝を促進することができる。本発明は、特に、清酒酵母や耐塩性酵母の発酵温度条件の制御及び/又は培養液における清酒酵母や耐塩性酵母の増殖・代謝の促進に有用であり、清酒酵母や耐塩性酵母により清酒製造や食品製造における発酵温度の管理、並びに清酒酵母や耐塩性酵母の増殖・代謝の管理に好適に利用することができるものとして有用である。

Claims (6)

  1. 食品微生物による発酵過程において、交流電圧を印加する通電処理における基本的波形である連続波、バースト波、及び方形波による通電のうち、バースト波を印加するバースト通電加熱により発酵温度を所定の温度範囲に制御し及び/又は前記食品微生物による培養液にバースト波を印加するバースト通電処理により微生物の増殖・代謝を促進することを特徴とする発酵温度及び/又は発酵微生物の増殖・代謝制御方法。
  2. 上記食品微生物が、清酒酵母又は耐塩性酵母である、請求項1に記載の発酵温度及び/又は発酵微生物の増殖・代謝制御方法。
  3. 清酒酵母による発酵過程において、バースト波を印加するバースト通電加熱により発酵温度を所定の温度範囲に制御する、請求項1又は2に記載の発酵温度の制御方法。
  4. 耐塩性酵母による発酵過程において、バースト波を印加するバースト通電加熱により発酵温度を所定の温度範囲に制御する、請求項1又は2に記載の発酵温度の制御方法。
  5. 清酒酵母による発酵過程において、その培養液にバースト波を印加するバースト通電処理により清酒酵母の増殖・代謝を促進する、請求項1に記載の発酵微生物の増殖・代謝制御方法。
  6. 耐塩性酵母による発酵過程において、その培養液にバースト波を印加するバースト通電処理により耐塩性酵母の増殖・代謝を促進する、請求項1に記載の発酵微生物の増殖・代謝制御方法。
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