以下、本発明の実施の形態について、図に基づいて説明する。なお図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表すものである。また、長さ、幅、厚さ、深さなどの寸法関係は図面の明瞭化と簡略化のために適宜変更されており、実際の寸法関係を表すものではない。また各図において、同一の要素については同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。
[第1の実施の形態]
(給湯装置および羽根車の構成)
本発明の第1の実施の形態について図1〜図9を用いて説明する。
主に図1および図2を参照して、本実施の形態の給湯装置100は、排気吸引燃焼方式の潜熱回収型の給湯装置である。この給湯装置100は、筐体1と、バーナ2と、一次熱交換器3と、二次熱交換器4と、排気ボックス5と、ファン6と、排気管7と、ドレンタンク8と、配管9〜15とを主に有している。
バーナ2は、燃料ガスを燃焼させることにより燃焼ガスを生じさせるためのものである。バーナ2にはガス供給配管10が接続されている。このガス供給配管10はバーナ2に燃料ガスを供給するためのものである。このガス供給配管10には、たとえば電磁弁よりなるガス弁(図示せず)が取り付けられている。
バーナ2の上方には点火プラグ2aが配置されている。この点火プラグ2aは、バーナ2に設けられたターゲット(図示せず)との間で点火スパークを生じさせることにより、バーナ2から噴き出された燃料空気混合気に火炎を生じさせるためのものである。バーナ2は、ガス供給配管10から供給された燃料ガスを燃焼することによって熱量を発生する(これを、燃焼動作という)。
主に図2を参照して、一次熱交換器3は顕熱回収型の熱交換器である。この一次熱交換器3は、複数の板状のフィン3bと、その複数の板状のフィン3bを貫通する伝熱管3aと、フィン3bおよび伝熱管3aを内部に収容するケース3cとを主に有している。一次熱交換器3は、バーナ2で発生する燃焼ガスとの間で熱交換を行なうものであり、具体的にはバーナ2の燃焼動作により発生した熱量によって一次熱交換器3の伝熱管3a内を流れる湯水を加熱するためのものである。
主に図2を参照して、二次熱交換器4は潜熱回収型の熱交換器である。この二次熱交換器4は、一次熱交換器3よりも燃焼ガスの流れの下流側に位置し、一次熱交換器3と互いに直列に接続されている。このように本実施の形態の給湯装置100は潜熱回収型の二次熱交換器4を有しているため潜熱回収型の給湯装置となっている。
二次熱交換器4は、ドレン排水口4aと、伝熱管4bと、側壁4cと、底壁4dと、上壁4gとを主に有している。伝熱管4bは、螺旋状に巻き回されることによって積層されている。側壁4c、底壁4dおよび上壁4gは、伝熱管4bの周囲を取り囲むように配置されている。
二次熱交換器4においては、一次熱交換器3で熱交換された後の燃焼ガスとの熱交換によって伝熱管4b内を流れる湯水が予熱(加熱)される。この過程で燃焼ガスの温度が60℃程度まで下がることで、燃焼ガス中に含まれる水分が凝縮して潜熱を得ることができる。また二次熱交換器4で潜熱が回収されて燃焼ガス中に含まれる水分が凝縮することによりドレンが発生する。
底壁4dは一次熱交換器3と二次熱交換器4との間を区画するためのものであり、一次熱交換器3の上壁でもある。この底壁4dには開口部4eが設けられており、この開口部4eにより一次熱交換器3の伝熱管3aが配置された空間と二次熱交換器4の伝熱管4bが配置された空間とが連通している。
図2の白矢印で示すように、開口部4eを通じて燃焼ガスは一次熱交換器3から二次熱交換器4へ流れることが可能である。この実施の形態では簡単化のために二次熱交換器4の底壁4dと一次熱交換器3の上壁とを共通のものとしたが、一次熱交換器3と二次熱交換器4の間に排気集合部材を接続してもよい。
また上壁4gには開口部4hが設けられており、この開口部4hにより二次熱交換器4の伝熱管4bが配置された空間と排気ボックス5の内部空間とが連通している。図2の白矢印で示すように、開口部4hを通じて燃焼ガスは二次熱交換器4から排気ボックス5の内部空間内へ流れることが可能である。
ドレン排水口4aは側壁4cまたは底壁4dに設けられている。このドレン排水口4aは、側壁4c、底壁4dおよび上壁4gによって取り囲まれた空間の最も低い位置(給湯装置の設置状態において鉛直方向の最も下側の位置)であって伝熱管4bの最下端部よりも下側に開口している。これにより二次熱交換器4で生じたドレンを、図2において黒矢印で示すように底壁4dおよび側壁4cを伝ってドレン排水口4aに導くことが可能である。
主に図2および図3を参照して、排気ボックス5は二次熱交換器4とファン6との間の燃焼ガスの流れの経路を構成している。この排気ボックス5により、二次熱交換器4で熱交換された後の燃焼ガスをファン6へ導くことが可能である。排気ボックス5は、二次熱交換器4に取り付けられており、二次熱交換器4よりも燃焼ガスの流れの下流側に位置している。
排気ボックス5は、ボックス本体5aと、ファン接続部5bとを主に有している。ボックス本体5aの内部空間は、二次熱交換器4の開口部4hを通じて二次熱交換器4の伝熱管4bが配置された内部空間に連通している。ファン接続部5bは、ボックス本体5aの上部から突き出すように設けられている。このファン接続部5bはたとえば筒形状を有しており、その内部空間5baはボックス本体5aの内部空間と連通している。
主に図1および図3を参照して、ファン6は、ファンケース61と、羽根車62と、駆動源63と、回転軸64とを主に有している。ファン6は、二次熱交換器4を経由した(二次熱交換器4で熱交換された)後の燃焼ガスを吸引して給湯装置100の外部へ排出するためのものであり、給湯装置100の外部に突出する排気管7に接続されている。
このファン6は、排気ボックス5および二次熱交換器4よりも燃焼ガスの流れの下流側に位置している。つまり給湯装置100においては、バーナ2で生じた燃焼ガスの流れの上流側から下流側に沿って、バーナ2、一次熱交換器3、二次熱交換器4、排気ボックス5およびファン6の順で並んでいる。この配置において上記のとおりファン6で燃焼ガスを吸引して排気するため、本実施の形態の給湯装置100は排気吸引燃焼方式の給湯装置となっている。
主に図3を参照して、ファンケース61は、貫通孔61cが設けられた背面壁61aと、背面壁61aを囲む周壁61bとを主に有し、その内部空間61dに羽根車62を回転可能に収容する。なお、図3において、背面壁61aと周壁61bとが異なる部材によって構成されるが、背面壁61aおよび周壁61bは一体成形されていてもよい。
主に図3〜図6を参照して、羽根車62は、円盤状の主板620と、複数の第1羽根621と、複数の第2羽根622と、シュラウド623と、ボス部624とを主に有している。
主に図3〜図7を参照して、第1羽根621は、主板の第1面620aの内周側から外周側に延在するとともに第1面620aから突き出すように溶着されている。なお、溶着の方法については後述する。第1羽根621はそれぞれ個別に第1面620a上に設けられており、互いに接することはない。
第1羽根621の突き出し方向の高さは、第1羽根621の内端部側から外端部側に向けて連続的に小さくなる。第1羽根621の突き出し方向の高さは、第1面620aの内周側から外端部側に向けて曲線的に(比較的急に)小さくなる曲線領域Aと、曲線領域Aよりも外周側に位置し、第1面620aの内周側から外周側に向けて直線的に(比較的なだらかに)小さくなる直線領域Bとを有する(図6)。これにより、第1羽根621は高い送風力を発揮することができる。
また第1羽根621は、第1面620aに直交する方向から見た平面視において、第1面620aの内周側から外周側に向けて曲線的に延在する曲線延在領域Cと、曲線延在領域Cよりも外周側に位置し、第1面620aの内周側から外周側に向けて直線的に延在する直線延在領域Dとを有する(図7)。曲線延在領域Cの曲がる方向は、羽根車62の回転方向(図7中の白矢印で示す方向)と同じ方向となる。つまり、隣り合う第1羽根621の間の流路に関し、吸引側(内周側)では主板620の回転方向に曲がるように形成され、排出側(外周側)では直線状の流路が形成される。
上記構成によれば、回転する羽根車62に対し、排気ボックス5側の燃焼ガスの流路の入り口がその回転方向に曲がっているため、より効率的に流路内に燃焼ガスを流入させることができる。また、流路を流れる燃焼ガス対して遠心力が加わり易い排出側では流路の方向と遠心力の方向とをより近似させることができるため、排出側に向かう燃焼ガスは遠心力により効率的に加速される。したがって、結果的にファンの送風能力が向上する。
本明細書において主板620の内周側から外周側に向けて延在する第1羽根621の両端部間の距離(第1羽根621と第1面620aとが当接することにより現れる線に沿った距離)を第1羽根621の「長さ」とする。また、第1面620aから突き出す方向における第1羽根621の距離(第1羽根621の第1面620aと当接する位置から当該位置の鉛直方向において第1面620aから最も離れて位置する第1羽根621との距離)を第1羽根621の「高さ」とする。第2羽根622についても同様である。
主に図4〜図6を参照し、シュラウド623は、第1面620aと離間しており、かつ第1羽根621の突き出し方向の端部を一体的に覆うように設けられており、その中央部分には開口623cが設けられている。
一般的に「シュラウド」の形状は、羽根と羽根との間を通る気体の流れの妨げとならないように、覆う羽根の高さに沿うように形成される。したがって、本実施の形態の給湯装置100において、シュラウド623は、第1羽根621の高さの変化に沿うように、傾斜に絞りの入った円錐台形状を有する。
主に図6および図8を参照し、第2羽根622は、第2面620bの内周側から外周側に向けて延在するとともに第2面620bから突き出すように形成されている。第2羽根622はそれぞれ個別に第2面620b上に設けられており、互いに接することはない。本実施の形態の給湯装置100において、第2羽根622の高さは一定であり、またその延在方向は主板620の半径方向と一致する。
第2羽根622は、スリット622cによって、第2面620bの内周側に位置する内羽根部材622aと、外周側に位置する外羽根部材622bとに分け隔てられている。スリット622cの幅(内羽根部材622aと外羽根部材622bとの互いに向かい合う端部同士の距離)は特に制限されないが、この幅が大きすぎると、羽根自体の長さが短くなり過ぎ、第2羽根622の機能が低下する場合があるため、スリットの幅は小さい方が好ましい。
主に図6を参照し、主板620の第1面620aの中心部には、第1面620aから突出するボス部624が設けられている。ボス部624の中心部には、第1面620a側から第2面620b側に貫通する軸受孔624aが設けられている。この軸受孔624aに回転軸64が貫通することにより、羽根車62、回転軸64および駆動源63とが繋がることができる。
主に図9〜図13を参照し、上記羽根車62において、第1羽根621とシュラウド623とが、繊維状のフィラーを含む樹脂によって一体成形されており、主板620と第2羽根622とボス部624とが、繊維状のフィラーを含む樹脂によって一体成形されている。また第1羽根621のシュラウド623と反対側の端部621aには、位置決め用の突起621aaが設けられており、主板620には、隣り合う第2羽根622の間を貫通するように、位置決め用の孔620bbが設けられている。突起621aaは孔620bbに嵌合されている。さらに第1羽根621の端部621aが主板620に溶着されていることにより、羽根車62は一つの部品として構成される。
上記羽根車62は、第2羽根622がファンケース61の背面壁61aと向かい合い、シュラウド623に設けられた開口623cが内部空間5baと向かい合いうように、ファンケース61内に配置される。またファンケース61の外部(駆動源63と背面壁61aとの隙間65a)とファンケース61の内部(背面壁61aと羽根車62との隙間65c)とは、背面壁61aに設けられた貫通孔61cと回転軸64との間の隙間65bを介して連通する。
主に図1および図3を参照して、駆動源63は、ファンケース61の外部に設けられている。本実施の形態の給湯装置100において、駆動源63と背面壁61aとの間の隙間65aが、貫通孔61cと回転軸64との間の隙間65bと連通する。
回転軸64は、ファンケース61の貫通孔61cを貫通することにより、ファンケース61内に収容される羽根車62と、ファンケース61の外部に設けられる駆動源63とを連結する。これにより、羽根車62は駆動源63から駆動力を与えられることにより回転軸64を中心として回転可能である。
主に図1を参照して、排気管7の端部は給湯装置100の外部に配置されており、かつファンケース61の外周側に接続されている。このため、羽根車62の外周側へ排出された燃焼ガスを、排気管7を通じて給湯装置100の外部へ排出することが可能である。
主に図1を参照して、ドレンタンク8は、二次熱交換器4で生じたドレンを貯留するためのものであり、このドレンタンク8と二次熱交換器4のドレン排水口4aとはドレン排出管9により接続されている。ドレンタンク8に貯留された酸性のドレンは、例えば、ドレンタンク8の内部空間内に一時的に貯留された後に、通常はドレン排出用配管14から給湯装置100の外部に排出される。
なお、ドレンタンク8の下部は、ドレン排出用配管14とは別にドレン抜き用配管15に接続されている。このドレン抜き用配管15(通常は閉じられている)は、メンテナンス時などにドレン抜き用配管15を開くことで、ドレン排出用配管14からは排出できないドレンタンク8内のドレンを排出することができるように設計されている。またドレンタンク8の内部空間内には、酸性のドレンを中和するための中和剤(図示せず)が充填されていてもよい。
主に図1を参照して、ガス供給配管10はバーナ2に接続されている。給水配管11は二次熱交換器4の伝熱管4b(図2参照)に接続されており、出湯配管12は一次熱交換器3の伝熱管3a(図2参照)に接続されている。また、一次熱交換器3の伝熱管3aと二次熱交換器4の伝熱管4bとは接続配管13により相互に接続されている。上記のガス供給配管10、給水配管11および出湯配管12の各々は、たとえば給湯装置100の上部において外部に通じている。
(羽根車の製造)
本発明の第1の実施の形態における羽根車を超音波溶着する製造方法について図10〜図14を用いて説明する。なお、超音波溶着とは、熱可塑性樹脂を微細な超音波振動と加圧力によって瞬時に溶融し、接合を行う加工技術である。
主に図10および図11を参照し、第1羽根621とシュラウド623とからなる一体成形品である第1部品62Aにおいて、第1羽根621のシュラウド623と反対側の端部621aには、突起621aaが設けられている。
主に図12および図13を参照し、主板620と第2羽根622とボス部624とからなる一体成形品である第2部品62Bにおいて、隣り合う第2羽根622の間には、孔620bbが設けられている。また主板620の第1面620aには、複数の位置決め用の凹部(溝)620cが形成されている。主板620を第1面620aに直交する方向から見た平面視において、溝部620cは隣り合う第2羽根622の間に位置する。
第1部品62Aおよび第2部品62Bは、種々公知の一体成形法により作製することができる。本発明では、第1部品62Aおよび第2部品62Bを構成する材料として、繊維状のフィラーを含む樹脂が用いられる。
繊維状のフィラーとしてはガラス繊維を挙げることができる。また樹脂としては、耐酸性を有する熱可塑性樹脂を用いることができる。耐酸性を有する熱可塑性樹脂としては、ポリフェニレンニレンサルファイド(PPS)、シンジオタクティックポリスチレン(SPS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリ四フッ化エチレン等のフッ素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、ポリカーボネート樹脂、メタクリルスチレン(MS)樹脂、メタクリル樹脂、AS樹脂(スチレンアクリロニトリルコポリマー)、ABS樹脂(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン共重合合成樹脂)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)を挙げることができる。
図14を参照し、第1部品62Aと第2部品62Bとの溶着時には、第1羽根621の端部621aが、主板620の第1面620a上の溝部620c内に挟み込まれ、かつ端部621aが溝部620cの底面と当接するように重ねられる。これにより、第1部品62Aと第2部品62Bとの溶着時の位置ずれを防止することができ、溶着強度を高めることができる。
また溶着時に孔620bbに突起621aaを嵌合させることによっても、第1部品62Aと第2部品62Bとの溶着時の位置ずれを防止することができ、溶着強度を高めることができる。なお図14に示すように、第2部品62Bが下側となるように重ねられる。
また、第1面620aに直交する方向からの平面視において、第2羽根622の各々は、隣り合う第1羽根621の間に位置する。これにより、主板620と第1羽根621とを溶着する場合、主板620の溶着部分を第2面620b側の治具67によって面で支持することができるため、超音波振動が溶着部分に十分に伝達されやすくなる。
上記のように両部品62A,62Bを重ねた状態で、シュラウド623の上方から超音波溶着機の治具66を押し当て、主板620の第2面620b側に超音波溶着機の治具67を押し当てる。
治具66に関し、治具66のシュラウド623との当接面66aは、シュラウド623の上面623bに沿う形状を有している。また治具67は、主板620の大きさ以上の大きさの円盤状等の治具であり、第2羽根622に対応する位置にスリット状の切欠部が形成されている。溶着に際して、主板620は、各々の第2羽根622が治具67の切欠部に挿し込まれ、第2面620bが治具67の切欠部以外の主面に当接するように設置される。
上記構成により、治具66によってシュラウド623の上方から両部品62A,62Bを十分に押圧することができ、治具67によって主板620の第2面620b側から両部品62A,62Bを十分に支持することができる。
そして、治具66,67に対して超音波振動を加えることにより、両部品62A,62Bに超音波振動を伝達させる。これにより、第1羽根621の端部621aと主板620の第1面620aとを溶着させることができ、羽根車62が製造される。
(作用効果)
まず、本実施の形態にかかる羽根車62の作用効果について説明する。
羽根車62の構成部品の一つである、円盤状の主板620と複数の第2羽根622とを含む第2部品62Bは、次のようにして作製することができる。
まず、円盤状の第1内部空間(主板の形状に対応)と、第1内部空間から突出する複数の第2内部空間(第2羽根の形状に対応)とを有する金型を準備する。次に、金型の中心側(第1内部空間の中心側)から外側(第1内部空間の外周側)に向かって広がりながら流れるように、繊維状のフィラーを含む樹脂を流し込む。そして、この樹脂を硬化させる。
上記樹脂の硬化時において、樹脂は収縮する傾向がある。特に樹脂を用いて円盤状の形状の部品を作製する場合、半径方向の収縮の程度が大きくなる傾向がある。このため、硬化後の円盤状の主板620の平面性を高めるためには、第1内部空間に流し込まれた樹脂の半径方向の収縮を均一にする必要がある。
ここで、上記金型内に流し込まれた樹脂に関し、円盤状の第1内部空間に流し込まれた樹脂中のフィラーは分散されやすいのに対し、第2内部空間に流し込まれた樹脂中のフィラーは第2内部空間の延在方向に沿って配向しやすい。これは、第1内部空間が、樹脂の流れをランダムに広げるように広がっているのに対し、第2内部空間が、樹脂の流れを一定方向(第2内部空間の延在方向)に留めるように配置されているためである。
仮に、主板620の半径方向に延在する第2羽根622にスリットが設けられていない場合、第2内部空間の形状は、円盤状の第1内部空間の半径方向に一直線状に延びるスリット状となる。つまり第2内部空間内に配向するフィラーは、第1内部空間の半径方向に一直線状に延在することになる。
この場合、第2内部空間内に配向するフィラー(第2羽根622内に配向するフィラー)は、第1内部空間内の樹脂(主板620を構成する樹脂)の半径方向の収縮に対する大きな抵抗となる。これは、第2内部空間内に配向するフィラーが、第1内部空間内の樹脂の半径方向の収縮に対する突っ張り棒のような働きをするためである。
第1内部空間内の樹脂の半径方向の収縮に対して大きな抵抗が生じた場合、主板620を構成する樹脂の半径方向の収縮を第2羽根622のある部分とない部分とで均一にすることが難しくなり、結果的に成形される主板620の平面性が低下してしまう。主板620の平面性が低いと、超音波溶着時において、治具66および治具67を用いた各部品62A,62Bの固定が不安定となる。このため、超音波振動を安定して溶着部分に伝達させることができず、結果的に第1羽根621と主板620の第1面620aとの溶着性が低下する。
第1羽根621と主板620とが十分に溶着されていない場合、第1部品62Aと第2部品62Bとが溶着されてなる羽根車の耐久性が低下する。また、主板の平面性の低い羽根車は、動バランス性能が低く、振動や騒音を発生させるため、安定的な送風性能を発揮することができない。
これに対し、本実施の形態における羽根車62によれば、主板620の半径方向に延在する第2羽根622が、スリット622cによって、第2面620bの内周側に位置する内羽根部材622aと、外周側に位置する外羽根部材622bとに分け隔てられている。
この場合、金型における第2内部空間は、第1内部空間の半径方向において2つに区切られる形状となるため、第2内部空間内に配向するフィラーの突っ張り棒としての働きは上記の場合と比して小さくなる。言い換えれば、第2羽根622内に配向するフィラーによる樹脂の半径方向の収縮に対する抵抗を小さくすることができる。
したがって、本実施の形態の羽根車62によれば、第2羽根622が存在することによる主板620の半径方向の収縮の不均一化を抑制することができる。これにより、主板620の平面性を高めることができるため、主板620と第2羽根622とを含む第2部品62Bと他の部品(第1部品62A)との十分な溶着が可能となり、もって、耐久性および強度に優れ、かつ安定的な送風性能を発揮することができる。
上記羽根車62において、スリット622cの位置を、主板620の半径の1/2の位置から外周側に設定した場合、上述の突っ張り棒としての役割を効果的に低下させることができるため、さらに主板620の平面性を向上させることができる。これは、円盤状の内部空間に流し込まれた樹脂が収縮する場合に、円盤の内周側よりも外周側のほうが収縮の程度が大きく、半径方向に配向するフィラーによる抵抗の影響が大きいためである。
ただし、スリット622cの位置を外周側にしすぎると、内羽根部材622aの長さが大きくなることによって、上述の抵抗がまた大きくなる傾向にあるため、スリット622cの半径方向における位置は、主板620の外端から、半径の1/3以上内側であることが好ましい。
また上記羽根車62において、スリット622cの位置を、主板620の半径の1/2の位置から内周側に設定した場合、第2羽根622の送風能力の低下の程度を小さくすることができる。これは、第2羽根622の内周側よりも外周側のほうがより顕著に第2羽根622の送風能力に関係しているためである。
ただし、スリット622cの位置を内周側にしすぎると、外羽根部材622bの長さが大きくなることによって、上述の抵抗がまた大きくなる傾向にあるため、スリット622cの半径方向における位置は、主板620の中心から、半径の1/3以上外側であることが好ましい。
また上記羽根車62において、第1羽根621およびシュラウド623もまた、繊維状のフィラーを含む樹脂により一体成形されている。このため、第1部品62Aおよび第2部品62Bのいずれにおいても、繊維状のフィラーを含むことによる強度の向上が可能となる。また、第1部品62Aおよび第2部品62Bとを同一の材料を用いて構成することにより、溶着時における超音波振動の伝達をさらに均一にすることができる。
次に、本実施の形態に係る給湯装置100の作用効果について説明する。
本実施の形態の給湯装置100においては、第1羽根621の送風能力により、排気ボックス5のボックス本体5aからファン接続部5bを通じてファンケース61内に燃焼ガスを吸引することが可能である。すなわち本実施の形態の給湯装置100において、羽根車62の回転により、排気ボックス5内の燃焼ガスは羽根車62の第1面620aの内周側に吸引されてその外周側へ排出される(図3の白矢印参照)。これにより、給湯装置100の燃焼ガスを下流側から上流側に流すためのファンの送風能力が発揮される。
さらに、本実施の形態の給湯装置100においては、第2羽根622の送風能力により、ファンケース61の外部の空気をファンケース61の内部に吸引することができる。すなわち、本実施の形態の給湯装置100において、羽根車62の回転により、ファンケース61の外部の空気は、貫通孔61cを介してファンケース61の内部に吸込まれ、さらに第2面620bの内周側から外周側に送り出される(図3の矢印参照)。これにより、駆動源63を冷却することができる。
また第2羽根622の送風能力により、背面壁61aと羽根車62との間の隙間65cには、第2面620bの外周側から内周側に向かう気体の流れに対向する抵抗圧が生じる。すなわち本実施の形態の給湯装置100は、ファンケース61の内部から外部に燃焼ガスが流出しようとする流れ(逆流)に対する抵抗圧を有することができる。したがって、本発明の給湯装置によれば、排気管7が閉塞されるなどの要因によってファンケース61内の圧力が高まった際にも、燃焼ガスの逆流を抑制することができる。
また上述のように、羽根車62の材料には、繊維状のフィラーを含む樹脂が用いられており、かつ羽根車62を構成する部品の溶着も十分であるため、ファンの耐久性および強度に優れ、かつ安定的な送風性能を発揮することができる。
また、本実施の形態では、上記のように排気吸引燃焼方式の給湯装置100が用いられているため排気管7の径が小さくなった場合でも、いわゆる排気押込み方式の給湯装置に対してバーナ2による燃焼動作を安定させることができる。以下、そのことについて説明する。
いわゆる排気押込み方式の給湯装置においては、燃焼ガスの流れの上流側から下流側に向かって、ファン、バーナ、一次熱交換器および二次熱交換器がこの順で配置されている。つまりバーナで生じた燃焼ガスがファンにより一次熱交換器および二次熱交換器を通って給湯装置の外部の排気管に流し込まれる。
ファンから押し出された燃焼ガスは、排気管に到達する前に一次熱交換器および二次熱交換器による流路抵抗を受けるため、排気管直前における燃焼ガスの送風圧はこの流路抵抗分だけ低くなる。このため、径の小さい排気管内に燃焼ガスを押し込むためにはファン
による送風圧を高くする必要がある。しかしファンの送風圧を高くすると、バーナケース内の内圧が高くなる。このため、バーナに供給される燃料ガスの供給圧が低い場合、燃焼動作が安定しなくなる。
これに対して本実施の形態の排気吸引燃焼方式によれば、燃焼ガスの流れの上流側から下流側に向かって、バーナ2、一次熱交換器3、二次熱交換器4およびファン6がこの順で配置されている。この方式ではファン6よりも上流側では、負圧となるため、ファン6の送風圧を高くする必要はない。これにより排気管7の径が小さくなった場合でもバーナケース内の内圧を低く維持できるため、バーナ2に供給される燃料ガスの供給圧が低くても燃焼動作を安定させることができる。
なお、本実施の形態においては、溶着方法として超音波溶着を用いた例について説明したが、超音波溶着以外にも、振動溶着や熱溶着を採用することができる。
[第2の実施の形態]
(給湯装置および羽根車の構成)
本発明の第2の実施の形態について図15および図16を用いて説明する。本実施の形態では、羽根車62の構成が第1の実施の形態と異なるが、それ以外の点は第1の実施の形態と同様である。また羽根車62において、主板620および第2羽根622の形状が第1の実施の形態と異なるが、それ以外の点は第1の実施の形態と同様である。このため、以下では、羽根車62の主板620および第2羽根622の形状について説明する。
主に図15を参照し、第2羽根622は、第2面620bの内周側から外周側に向けて延在するとともに第2面620bから突き出すように形成されている。第2羽根622はそれぞれ個別に第2面620b上に設けられており、互いに接することはない。さらに第2羽根622の高さは一定であり、主板620の半径方向と交差する。
具体的には、第2羽根622は、主板620の第2面620bに直交する方向からの平面視において、第2面620bの内周側に位置し、曲率半径が比較的小さい第1曲り部622dと、第2面の620bの外周側に位置し、第1曲り部622dに連続し、かつ曲率半径が比較的大きい第2曲り部622eとを含む曲線で構成される。また、第1曲り部622dの曲がる方向と第2曲り部622eの曲がる方向とは異なっており、第2羽根622は全体としてS字形状を有している。
主に図15および図16を参照し、主板620の第1面620aの中心部には、第1面620aから突出するボス部624が設けられている。ボス部624の中心部には、第1面620a側から第2面620b側に貫通する軸受孔624aが設けられている。この軸受孔624aに回転軸64が貫通することにより、羽根車62、回転軸64および駆動源63とが繋がることができる。
さらに本実施の形態において、ボス部624は、ボス部の先端部624aaからボス部624の第1面620aからの立ち上がり部624bbに向かって、連続的に寸法が大きくなるように形成されている。またボス部624の第2面620b側には、軸受孔624aの周囲を囲むように複数の肉盗み部624bが、設けられている。
ここで先端部624aaは、ボス部624の第1面620a上から最も離れた高さ位置にある端部を意味する。また立ち上がり部624bbは、主板620の第1面620aの平面の接線(図16中点線)に対し、第1620aの表面の高さ位置が変化する開始位置を意味する。また「ボス部624の寸法が連続的に大きくなる」とは図16に示されるボス部の断面形状の外形が連続的に大きくなることを意味する。
(作用効果)
本実施の形態における羽根車62において、第2羽根622は主板620の半径方向と交差するように延在する。
この場合、第2部品62Bを作製するため金型において、第2羽根622に対応する第2内部空間は、主板620に対応する第1内部空間の半径方向に交差する形状となる。このため、第2内部空間が第1内部空間の半径方向に一直線状に延在している場合と比して、第2内部空間内に配向するフィラーの突っ張り棒としての働きは小さくなる。言い換えれば、第2羽根622内に配向するフィラーによる樹脂の半径方向の収縮に対する抵抗を小さくすることができる。
したがって、本実施の形態の羽根車62によれば、第2羽根622が存在することによる主板620の半径方向の収縮の不均一化を抑制することができる。これにより、主板620の平面性を高めることができるため、主板620と第2羽根622とを含む第2部品62Bと他の部品(第1部品62A)との十分な溶着が可能となり、もって、耐久性および強度に優れ、かつ安定的な送風性能を発揮することができる。
また本実施の形態において、ボス部624は、強度を上げるために、ボス部の先端部624aaからボス部624の第1面620aからの立ち上がり部624bbに向かって、連続的に寸法が大きくなるように形成されている。
ここで、ボス部624の第2面620b側に肉盗みを設けない場合、ボス部624の立ち上がり部624bb近傍を構成する樹脂の厚みは、ボス部624の先端部624aa近傍を構成する樹脂の厚みや、主板620を構成する樹脂の厚みと比して大きくなることになる。
この場合、立ち上がり部624bb近傍の樹脂が完全に硬化するまでに要する時間は、他の部分の樹脂が完全に硬化するまでに要する時間よりも長くなる。ボス部624の各部位において硬化に要する時間が異なってくると、樹脂の収縮の程度に異方性が生じてしまい、結果的にボス部624およびその周辺に歪みが生じてしまう。
これに対し、本実施の形態によれば、ボス部624の第2面620b側には肉盗みが設けられている。これにより、ボス部624の立ち上がり部624bb近傍を構成する樹脂の厚みと、ボス部624の先端部624aa近傍を構成する樹脂の厚みとを、肉盗みを設けないの場合と比して近づけることができるため、上記のような歪みを抑制することができる。
したがって、本実施の形態の羽根車62が有するボス部624によれば、強度を高めることができるとともに、ボス部の歪みを抑制することができる。
以上詳述した本発明の実施の形態は、上記の第1の実施の形態および第2の実施の形態に限られない。たとえば、図15において、第2羽根622の全体を曲線としたが、第2羽根622が直線の形状を有し、かつ主板620の半径方向に交差するように設けられていてもよい。また、第2羽根622の一部が曲線であってもよい。この場合にも、上記と同様の効果を発揮することができる。
ただし、第2羽根622の延在方向が主板620の半径方向から大きくずれると、第2羽根622の送風力は低下する。このため、第2の実施の形態のように、主板620を第2面620bに直交する方向から見た平面視において、第2羽根622がS字形状を有することが好ましい。この場合、第2羽根622の全体を曲線としつつ、かつ主板620の半径方向からのずれを小さくすることができる。
特に第2羽根622のうち、外周側に位置する第2曲り部622eの曲率半径を小さくすることにより、第2羽根622の送風力を高く維持することができる。第2羽根622の外周側の形状が送風力に大きく影響するためである。
第2羽根622がS字形状を有する場合、好ましい曲率半径は、主板620の直径に基づいて決定することができる。たとえば主板620の直径が150mmの場合、第1曲り部622dの曲率半径は16mm程度が好ましく、第2曲り部622eの曲率半径は80mm程度であることが好ましい。
また図17に示すように、S字形状を有する第2羽根622が、スリットによって内羽根部材622aと外羽根部材622bとに分け隔てられていもよい。この場合、主板620の平面性をより向上させることができる。
さらに図17に示すように、外羽根部材622bの間に、第2面620bの内周側から外周側に延在する第3羽根625が設けられていてもよい。この場合、主板620の第2面620b側において、第2羽根622の送風力に加え、第3羽根625の送風力を発揮することができる。よって、駆動源63の冷却効果、および燃焼ガスの逆流防止効果を高めることができる。
なお図17に示すように、第3羽根は外羽根部材622bの間に延在する一方で、内羽根部材622aの間には延在していないことが好ましい。これは、第2面620b側の内周側において、隣り合う羽根が接近し過ぎることによる送風力の低下を防止するためである。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。