以下、本発明の実施の形態に係る熱交換器及びそれを備える熱源機について、添付図面を参照しながら具体的に説明する。
図1に示すように、本実施の形態に係る熱源機は、流入管60から熱交換器1内に流入する水(被加熱流体)を、バーナ31で生成される燃焼排気により加熱し、流出管61を通じてカランやシャワーなどの温水利用先(図示せず)に供給する給湯器である。図示しないが、給湯器は、ケーシング内に組み込まれる。なお、被加熱流体として、他の熱媒体(例えば、不凍液)が用いられてもよい。
この給湯器では、上方から順に、バーナ31の外郭を構成するバーナボディ3、燃焼室2、熱交換器1、及びドレン受け40が配設される。また、バーナボディ3の一方側方(図1では、右側)には、バーナボディ3内に燃料ガスと空気との混合ガスを送り込む燃焼ファンを備えるファンケース4が配設される。また、バーナボディ3の他方側方(図1では、左側)には、ドレン受け40と連通する排気ダクト41が配設される。排気ダクト41は、ドレン受け40に排出される燃焼排気を給湯器の外部に排出する。
なお、本明細書では、ファンケース4及び排気ダクト41がバーナボディ3の側方にそれぞれ配置された状態で給湯器を見たとき、奥行方向が前後方向に対応し、幅方向が左右方向に対応し、高さ方向が上下方向に対応する。
バーナボディ3は、平面視略小判形状を有し、例えば、ステンレス系金属で形成される。図示しないが、バーナボディ3は、下方に開放している。
ファンケース4と連通するガス導入部は、バーナボディ3の中央部から上方に突出している。バーナボディ3は、下向きの燃焼面30を有する平面状のバーナ31を備える。燃焼ファンを作動させることにより、混合ガスがバーナボディ3内に供給される。
バーナ31は、全一次空気燃焼式であり、例えば、下向きに開口する多数の炎孔(図示せず)を有するセラミックス製の燃焼プレート、または金属繊維をネット状に編み込んだ燃焼マットからなる。バーナボディ3内に供給された混合ガスが、燃焼ファンの給気圧によって、下向きの燃焼面30から下方へ向けて噴出される。この混合ガスを着火させることにより、バーナ31の燃焼面30に火炎が形成され、燃焼排気が生成される。従って、バーナ31から噴出される燃焼排気は、燃焼室2を介して熱交換器1に送り込まれる。次いで、熱交換器1を通過した燃焼排気は、ドレン受け40及び排気ダクト41を通って給湯器の外部に排出される。
すなわち、この熱交換器1では、バーナ31が設けられている上方側が燃焼排気のガス流路の上流側に対応し、バーナ31が設けられている側と反対側の下方側が燃焼排気のガス流路の下流側に対応する。
燃焼室2は、平面視略小判形状を有する。燃焼室2は、例えば、ステンレス系金属で形成される。燃焼室2は、上下に開放するように、一枚の略長方形状の金属板を湾曲させて両端部を接合することにより形成される。図示しないが、燃焼室2の下端にはフランジが形成されている。フランジは、熱交換器1の上面周縁と接合される。
熱交換器1は、平面視略小判形状を有する。図2に示すように、熱交換器1は、複数(ここでは、10層)の薄板状の熱交換ユニット10と、最上層の熱交換ユニット10の上熱交換プレート11の上面に接合された上取り付け枠体81と、最下層の熱交換ユニット10の下熱交換プレート12の下面に接合された下取り付け枠体82とが積層されたプレート積層体を有する。なお、熱交換器1は、その周囲を覆う筐体を有してもよい。
各熱交換ユニット10は、上下排気孔の位置やコーナ部の上下貫通孔の有無などの一部の構成が相違する以外は、共通の構成を有する一組の上熱交換プレート11と下熱交換プレート12とを上下方向に重ね合わせて、後述する所定箇所をロウ材等の接合手段で接合することにより形成される。このため、以下では、1つの熱交換ユニット10の構成を主に説明し、他の熱交換ユニット10の構成はそれと異なる部分のみを説明する。なお、各図面は、必ずしも実際の寸法を示したものでなく、実施形態を限定するものではない。
図3及び図4はそれぞれ、下から9層目(上から2層目)の熱交換ユニット10を形成する上下熱交換プレート11,12の上面を示す平面図である。図3及び図4に示すように、上下熱交換プレート11,12は、平面視略小判形状を有する。上下熱交換プレート11,12は、例えば、所定の厚さ(例えば、約0.5mm)を有するステンレス製の金属板から形成される。上下熱交換プレート11,12はそれぞれ、コーナ部を除くプレートの略全面に多数の略円形状の上下排気孔11a,12aと、上下排気孔11a,12aの周縁に形成された上下排気孔フランジ部11c,12cと、上下熱交換プレート11,12が重ね合わされたときに内方に向かって突出する多数の上下凹部11b,12bと、上下熱交換プレート11,12が重ね合わされたときに外方に向かって突出する多数の第1及び第2上下凸部11d,11e,12d,12eとを有する。なお、上下排気孔11a,12aは、略楕円形状などの他の形状を有してもよい。
上下熱交換プレート11,12の周縁にはそれぞれ、上方に向かって突出する上下周縁接合部W1,W2が形成されている。下熱交換プレート12の下周縁接合部W2は、下周縁接合部W2と上熱交換プレート11の下面周縁とを接合させたときに、上下熱交換プレート11,12が所定高さの間隙を存して離間するように設定されている。
また、上熱交換プレート11の上周縁接合部W1は、上周縁接合部W1と上方に隣接する熱交換ユニット10の下熱交換プレート12の下面周縁とを接合させたときに、下方の熱交換ユニット10の上熱交換プレート11と、上方の熱交換ユニット10の下熱交換プレート12とが所定高さの間隙を存して離間するように設定されている。
従って、下熱交換プレート12の下周縁接合部W2と上熱交換プレート11の下面周縁とを接合させることにより、上下排気孔11a,12a、上下排気孔フランジ部11c,12c、上下凹部11b,12b、第1及び第2上下凸部11d,11e,12d,12e、並びに後述する上下傾斜部11f,12fが形成されていない平面領域で所定高さ(例えば、約2mm)の内部空間14が形成される(図7参照)。また、複数の熱交換ユニット10を接合させることにより、上下に隣接する熱交換ユニット10の平面領域の間には、所定高さ(例えば、約3mm)の排気空間15が形成される(図7参照)。
上下排気孔11a,12aはそれぞれ、4つのコーナ部を除いた上下熱交換プレート11,12の略全面にわたって前後及び左右方向に所定の間隔で格子状に開設されている。また、上下排気孔フランジ部11c,12cは、上下排気孔11a,12aの開口縁から前後及び左右方向に水平に広がり、平面視略正八角形状の外形を有するように形成されている。
上下排気孔11a,12a及び上下排気孔フランジ部11c,12cはそれぞれ、上下熱交換プレート11,12が重ね合わされたときに相互に対応する位置に形成されている。また、上下排気孔11a,12a及び上下排気孔フランジ部11c,12cは、絞り加工により、上下熱交換プレート11,12が重ね合わされたときに対向する上下排気孔フランジ部11c,12cが面接触するように、内方に突出する段差部の底面に形成されている。また、下排気孔11bは、バーリング加工により形成されており、下排気孔11bの開口縁の一部には、上方に向かって屈曲させたカシメ部12gが形成されている。また、上下熱交換プレート11,12が重ね合わされたときに各上下排気孔フランジ部11c,12cの外周から斜め外方に広がるように、上下傾斜部11f,12fが形成されている。上下傾斜部11f,12fは、上下排気孔フランジ部11c,12cよりも一回り大きな平面視略正八角形状の外形を有するように形成されている。
従って、上下熱交換プレート11,12が重ね合わされた状態で、上排気孔11aの開口縁が下排気孔12aの開口縁から上方に突出するカシメ部12gでかしめられ、上下排気孔フランジ部11c,12cがロウ材等の接合手段により接合されると、上下排気孔フランジ部11c,12cによって内部空間14を閉塞するフランジ部18が形成される(図7参照)。また、上下排気孔11a,12aによって内部空間14を非連通状態で貫通する排気孔13が形成される。また、上下傾斜部11f,12fによってフランジ部18に向かって内部空間14の高さが減少する傾斜部20が形成される。
上下熱交換プレート11,12の周縁部を除いて、前後及び左右方向で隣接する2つの上下排気孔11a,12aの間には、平面視略円形状の上下凹部11b,12bが形成されている。また、上下熱交換プレート11,12の周縁部において、前後または左右方向で隣接する2つの上下排気孔11a,12aの間には、平面視略楕円形状の上下凹部11b,12bが形成されている。また、これらの上下凹部11b,12bの中央部には、上下凹部11b,12bよりも小径の第1上下凸部11d,12dが形成されている。これらの上下凹部11b,12b及び第1上下凸部11d,12dはそれぞれ、上下熱交換プレート11,12が重ね合わされたときに相互に対応する位置に形成されている。従って、上下凹部11b,12b及び第1上下凸部11d,12dはそれぞれ、4つのコーナ部を除いた上下熱交換プレート11,12の略全面にわたって前後及び左右方向に所定の間隔で格子状に形成されている。また、隣接する上下凹部11b,12bの間隔は、隣接する上下排気孔11a,12aのそれと略同一に設定されている。このため、上下排気孔11a,12aと、上下凹部11b,12bとは、前後及び左右方向に交互に略等間隔で形成されている。また、上下凹部11b,12bはそれぞれ、上下熱交換プレート11,12の周縁部を除いて、前後及び左右方向で隣接する4つの上下排気孔11a,12aで囲まれる領域の略中央部に位置するように形成されている。また、上下凹部11b,12bはそれぞれ、前後及び左右方向で隣接する上下排気孔フランジ部11c,12c間の最短距離よりも小さい直径を有する。
上下凹部11b,12bはそれぞれ、絞り加工により、上下熱交換プレート11,12が重ね合わされたときに内部空間14の内方に向かって所定高さ(例えば、約0.5mm)突出するように形成されている。この上下凹部11b,12bの内方への突出高さは、上下排気孔フランジ部11c,12cのそれよりも低く設定されている。また、第1上下凸部11d,12dはそれぞれ、絞り加工により、上下熱交換プレート11,12が重ね合わされたときに内部空間14の外方に向かって所定高さ(例えば、約1.5mm)突出するように形成されている。この第1上下凸部11d,12dの外方への突出高さは、平面領域よりも若干高く、第2上下凸部11e,12eよりも低く設定されている。従って、上下熱交換プレート11,12が重ね合わされたとき、上下凹部11b,12bによって内部空間14の高さを減少させる内向き段差部16が形成され、上下凹部11b,12b間に所定高さ(例えば、約1mm)の狭い内部空間14が形成される(図7参照)。また、上下凹部11b,12bの中央部に形成された第1上下凸部11d,12dによって内部空間14の高さを増加させる第1外向き段差部17が形成され、第1上下凸部11d,12d間に所定高さ(例えば、約3mm)の広い内部空間14が形成される(図7参照)。また、内向き段差部16と隣接するフランジ部18との間には、水の流体流路が形成される。なお、内向き段差部16は、上下凹部11b,12bのいずれか一方のみにより形成されてもよい。また、第1外向き段差部17は、第1上下凸部11d,12dのいずれか一方のみに形成されてもよい。また、上下凹部11b,12bや第1上下凸部11d,12dは、楕円形状や矩形状などの他の形状を有してもよい。
上下熱交換プレート11,12の前後及び左右方向に対して所定角度、傾斜する方向で、隣接する2つの上下排気孔11a,12aの間には、第2上下凸部11e,12eが形成されている。1組の上下熱交換プレート11,12の第2上下凸部11e,12eは、隣接する他の1組の上下熱交換プレート11,12の第2上下凸部11e,12eと相互に対応する位置に形成されている。また、第2上下凹部11b,12bはそれぞれ、前後及び左右方向に対して所定角度、傾斜する方向で、上下排気孔11a,12aまたは上下凹部11b,12bと交互に配列されている。
第2上下凸部11e,12eはそれぞれ、絞り加工により、上下熱交換プレート11,12が重ね合わされたときに内部空間14の外方に向かって所定高さ(例えば、約1.5mm)突出するように形成されている。また、第2上下凸部11e,12eはそれぞれ、第2上下凸部11e,12eを囲む隣接する上下排気孔フランジ部11c,12c間の最短距離よりも小さい直径を有する。従って、上下熱交換プレート11,12が重ね合わされたとき、第2上下凸部11e,12eによって内部空間14の高さを増加させる第2外向き段差部19が形成され、第2上下凸部11e,12e間に所定高さ(例えば、約6mm)の広い内部空間14が形成される(図7参照)。また、隣接する熱交換ユニット10が重ね合わされると、上方の熱交換ユニット10の下熱交換プレート12の第2下凸部12eと、下方に隣接する熱交換ユニット10の上熱交換プレート11の第2上凸部11eとは、相互に当接し、排気空間15を保持する支持部が形成される。なお、第2外向き段差部19は、第2上下凸部11e,12eのいずれか一方のみにより形成されてもよい。また、第2上下凸部11e,12eは、楕円形状や矩形状などの他の形状を有してもよい。
図示しないが、1つの熱交換ユニット10を形成する上下熱交換プレート11,12のコーナ部に設けられた一部の上下貫通孔111~114,121~124は、上下熱交換プレート11,12が重ね合わされたとき、上下熱交換プレート11,12の間に形成される内部空間14と連通するように開口している。また、上下に隣接する熱交換ユニット10の同軸上に位置する上下貫通孔111~114,121~124の周縁相互を接合させることにより、排気空間15を非連通状態で貫通する連通路が形成されている。また、最下層の熱交換ユニット10の左側後方のコーナ部に設けられている下貫通孔111には、下取り付け枠体82を介して流入管60が接続されている。また、最下層から8層目の熱交換ユニット10の右側前方のコーナ部の上下貫通孔114,124には、これらの熱交換ユニット10の内部空間14及び隣接する熱交換ユニット10間の排気空間15を非連通状態で貫通する導出管33が挿入されている(図2参照)。また、導出管33は、最下層の熱交換ユニット10を形成する下熱交換プレート12の右側前方の下貫通孔114及び下取り付け枠体82を介して下方に延設されている。導出管33の下流端は、流出管61に接続されている。また、5層目の熱交換ユニット10を形成する上熱交換プレート11の左側前後両方のコーナ部、6層目の熱交換ユニット10を形成する下熱交換プレート12の左側前後両方のコーナ部、8層目の熱交換ユニット10を形成する上熱交換プレート11の右側後方のコーナ部、9層目の熱交換ユニット10を形成する下熱交換プレート12の右側後方のコーナ部(図4参照)、及び最上層の熱交換ユニット10を形成する上熱交換プレート11の全てのコーナ部(図2参照)には、貫通孔が形成されていない。
従って、流入管60から最下層の熱交換ユニット10の内部空間14に流入する水は、隣接する熱交換ユニット10間の排気空間15を非連通状態で連通する連通路を介して、順次、上方に隣接する熱交換ユニット10の内部空間14に流入する。このとき、水は、最下層から5層目まで、各熱交換ユニット10の内部空間14内を図2中、左側から右側に向かって流れる。また、水は、6層目から8層目まで、各熱交換ユニット10の内部空間14内を図2中、右側から左側に向かって流れる。さらに、水は、9層目から最上層まで、各熱交換ユニット10の内部空間14内を図2中、左側から右側に向かって流れる。これにより、熱交換器1内を水が下方から上方に向かって流れる間に、各熱交換ユニット10の排気孔13及び隣接する熱交換ユニット10間の排気空間15を流れる燃焼排気によって水が加熱される。そして、最上層及び9層目の熱交換ユニット10の内部空間14に流入した水は、最下層から8層目の熱交換ユニット10の内部空間14及び隣接する熱交換ユニット10間の排気空間15を非連通状態で貫通する導出管33を通って、流出管61に流出する。
図2及び図7に示すように、隣接する熱交換ユニット10の排気孔13は、燃焼排気のガス流路の方向に対して垂直に交差する左右方向で半ピッチずれている。従って、上方から流れてきた燃焼排気は、1つの熱交換ユニット10の排気孔13を通過した後、その熱交換ユニット10と下方に隣接する熱交換ユニット10との間の排気空間15に流れ出る。そして、排気空間15に流れ出た燃焼排気は、下方に隣接する熱交換ユニット10の上熱交換プレート11に衝突し、下方に隣接する熱交換ユニット10の排気孔13からさらに下方に流れる。すなわち、燃焼排気が熱交換器1内を上方から下方に向かって流れるとき、熱交換器1内にはジグザグ状の排気通路が形成される。これにより、熱交換器1内における燃焼排気と上下熱交換プレート11,12との接触時間が増加する。なお、最上層の熱交換ユニット10の上熱交換プレート11の上方及び最下層の熱交換ユニット10の下熱交換プレート12の下方にはそれぞれ、これらの上下熱交換プレート11,12のコーナ部及び周縁部を上下から覆うように上下取り付け枠体81,82が接合されている。これにより、熱交換器1の強度の向上が図られている。
図5は、1つの熱交換ユニット10を上方から見たときの排気孔13の周縁の接合形態を示す部分平面図である。図5では、線の重なりによる煩雑化を避けるため、上凹部11b、第1上凸部11d、上傾斜部11f、第2上凸部11e、カシメ部12gなどは省略されている。
各熱交換ユニット10が製作される場合、上下排気孔フランジ部11c,12cがロウ付け等の接合手段により接合され、排気孔13、内部空間14、及び内部空間14を閉塞するフランジ部18が形成される。そのため、図5に示すように、排気孔13の周縁に形成されるフランジ部18は、平面視略正八角形状の外形を有する。従って、排気孔13の周縁には、平面視略正八角形状の接合線18aを有し、フランジ部18の幅を有する接合部が形成される。また、各フランジ部18は、隣接して対向する略正八角形状の接合線18aの一辺が略平行に位置するように、排気孔13の周縁に前後及び左右方向に略同一角度で形成されている。このため、熱交換ユニット10を上方から見たとき、前後及び左右方向で隣接して対向する接合線18aに接する仮想円C1を描くと、各接合線18aの一辺は仮想円C1と接合線18aとの接点P1の接線L1方向に延在する。
既述したように、内部空間14は、フランジ部18で閉塞されている。従って、水が内部空間14内を流れるとき、前後及び左右方向で隣接して対向する接合線18aに接する仮想円C1の中心点O1で最も上下熱交換プレート11,12の変形量が大きくなる。それゆえ、内部空間14を挟んで対向する接合線18aの上記一辺に、上下熱交換プレート11,12を上下方向に広げる方向に応力が作用する。このとき、接合線18aの上記一辺は、仮想円C1と接合線18aとの接点P1の接線L1方向に延在するから、上下熱交換プレート11,12を上下方向に広げようとする応力は一定の長さの略直線形状の連続線に作用し、応力が分散される。しかも、この熱交換ユニット10では、排気孔13は前後及び左右方向に所定の間隔で形成されているから、4つの排気孔13で囲まれる内部空間14は前後及び左右方向からフランジ部18で囲まれている。すなわち、内部空間14を囲む4つの排気孔13は、仮想円C1が前後及び左右方向で隣接する4本の接合線18aと接するように配列されているから、各接合線18aの一辺に作用する応力をより分散させることができる。これにより、接合線18aの特定箇所への応力集中が回避され、熱交換ユニット10の耐圧性能を向上させることができる。
また、図5に示すように、排気孔13は前後及び左右方向に所定の間隔で格子状に形成されているため、前後及び左右方向に対して所定角度、傾斜する方向において、所定の間隔で排気孔13が配列される。従って、水が内部空間14内を流れるとき、前後及び左右方向に対して傾斜する方向で隣接して対向する接合線18aに接する仮想円C2の中心点O2で最も上下熱交換プレート11,12の変形量が大きくなる。この各接合線18aの一辺は、仮想円C2と接合線18aとの接点P2の接線L2方向に延在するから、上下熱交換プレート11,12を上下方向に広げようとする応力は一定の長さの略直線形状の連続線に作用し、応力が分散される。これにより、接合線18aの特定箇所への応力集中が回避され、熱交換ユニット10の耐圧性能を向上させることができる。
また、熱交換ユニット10には、絞り加工により、内部空間14の高さを減少及び増加させる内向き段差部16並びに第1及び第2外向き段差部17,19が形成されているから、内部空間14を形成する上下熱交換プレート11,12の強度を高めることができる。また、上下で隣接する熱交換ユニット10において、上方の熱交換ユニット10の下熱交換プレート12の第2下凸部12eと、下方に隣接する熱交換ユニット10の上熱交換プレート11の第2上凸部11eとは相互に当接しているから、内部空間14を形成する上下熱交換プレート11,12の変形量を低減することができる。
本発明者等の検討によれば、上記熱交換ユニット10は、上記略正八角形状のフランジ部18と同径の円形状のフランジ部を有する比較熱交換ユニットに比べて、隣接して対向する接合線18aに作用する応力を約10%、低下させることができる。このように、本実施の形態によれば、内部空間14内を水が流れるとき、接合線18aの特定箇所に応力が集中しないから、高い耐久性を有する熱交換器1を提供することができる。
なお、隣接して対向する接合線18aの一部が接線L1,L2方向に延在していれば、フランジ部18は他の多角形状の外形を有してもよい。また、上記熱交換ユニット10におけるフランジ部18の接合線18aの一部は、仮想円C1,C2と接合線18aとの接点P1,P2の接線L1,L2と完全に一致している必要はない。例えば、工業的生産では、接合線18aの一部に凹凸が形成される場合がある。このような場合でも、接合線18aの一部が接線L1,L2方向に延在し、接合線18aの一部が接線L1,L2と複数の交点を有するように形成されれば、接合線18aの特定箇所への応力集中を回避することができる。
図6は、熱交換ユニット10の一部を上方から見たときの内部空間14内の水の流れを示す部分平面図であり、図7は、熱交換ユニット10の一部の内部空間14内の水の流れを示す部分断面図である。これらの図中、破線矢印Fは、水の流れを、太矢印Gは、燃焼排気の流れを示す。なお、図6では、図5と同様に、第1上傾斜部11fは示されてない。
水は、内部空間14内の流路抵抗の低い部分を流れやすい。そのため、隣接するフランジ部18間に内向き段差部16が形成されていない場合、水は内部空間14を閉塞するフランジ部18から離れたフランジ部18間の中央部を流れやすい。従って、フランジ部18近傍を流れる水の温度とフランジ部18間の中央部を流れる水の温度との温度差が大きくなり、内部空間14内を流れる水の温度分布が大きくなる。その結果、フランジ部18で吸熱された熱が水に十分に熱伝達されず、熱効率が低下しやすい。
しかしながら、本実施の形態の熱交換ユニット10では、隣接するフランジ部18間に内部空間14の高さを減少させる内向き段差部16が形成されているから、内向き段差部16は内部空間14の内方に向かって突出する。そのため、図6に示すように、内向き段差部16の周縁に衝突した水は、内部空間14を通過して下流側に向かって直線的に流れる水と、内向き段差部16の周囲を回り込みながら下流側に向かって流れる水とに分流される。従って、内向き段差部16の周囲を回り込む水は、フランジ部18近傍を流れる。これにより、高温に加熱されたフランジ部18の熱を効率的に水に熱伝達させることができる。
また、内部空間14内の上流側から流れてきた水は内向き段差部16に衝突して、水の乱流が発生する。従って、内向き段差部16よりも上流側での水の温度分布を小さくすることができる。これにより、熱交換ユニット10で吸熱された熱が効率的に水に熱伝達される。
また、内部空間14を直線的に通過する水と内向き段差部16の周囲を回り込む水とは、内向き段差部16より下流側で再度、合流し、水の乱流が発生する。従って、内向き段差部16より下流側での温度分布を小さくすることができる。これにより、熱交換ユニット10で吸熱された熱がさらに効率的に水に熱伝達される。
また、図7に示すように、内向き段差部16の略中央部及び隣接する2つの排気孔13と隣接する2つの内向き段差部16とで囲まれる領域の略中央部にはそれぞれ、内部空間14の高さを増加させる第1及び第2外向き段差部17,19が形成されているから、第1及び第2外向き段差部17,19によって形成される広い内部空間14に水が流入するとき、水の乱流が発生する。これにより、熱交換ユニット10で吸熱された熱がさらに効率的に水に熱伝達される。
また、内向き段差部16によって内部空間14の高さが減少するから、熱交換ユニット10の隣接する2つの排気孔13の間の外面には凹凸が形成される。また、上下で隣接する熱交換ユニット10の排気孔13は左右方向に半ピッチずれており、内向き段差部16は隣接するフランジ部18間に位置する。すなわち、上方の熱交換ユニット10の排気孔13の下方に、下方の熱交換ユニット10の内向き段差部16や第1外向き段差部17が位置する。そのため、排気空間15を流れる燃焼排気は、排気孔13に流入する前に上凹部11bや第1上凸部11dによって形成される凹凸に衝突して、燃焼排気の乱流が発生する。従って、排気孔13の周縁部の燃焼排気の温度境界層を薄くすることができる。これにより、燃焼排気の熱がフランジ部18で効率的に吸熱される。
従って、本実施の形態によれば、燃焼排気から熱交換ユニット10が吸熱する熱が、効率的に内部空間14内を流れる水に熱伝達されるから、熱交換が促進される。
図8は、熱交換ユニット10の接合形態の他の一例を示す平面図である。なお、上記熱交換ユニット10と同一の構成については、同一の引用番号を使用して、説明を省略する。
図8に示すように、この熱交換ユニット10を形成する上下熱交換プレート11,12の構成は、フランジ部58が一辺の中央部が内方に凹むように湾曲した平面視変形正八角形状の外形を有する以外、上記の上下熱交換プレート11,12のそれらと同様である。このため、熱交換ユニット10を上方から見たとき、隣接して対向する接合線58aの一部である円弧は、前後及び左右方向で隣接して対向する接合線58aに接する仮想円C3を描くと、仮想円C3の円周方向に延在する。
上記熱交換ユニット10では、水が内部空間14内を流れるとき、前後及び左右方向で隣接して対向する接合線58aに接する仮想円C3の中心点O3で最も上下熱交換プレート11,12の変形量が大きくなる。それゆえ、内部空間14を挟んで対向する接合線58aの上記円弧に、上下熱交換プレート11,12を上下方向に広げる方向に応力が作用する。この各接合線58aの上記円弧は、仮想円C3の円周方向に延在するから、上下熱交換プレート11,12を上下方向に広げようとする応力は一定の長さの略円弧形状の連続線に作用し、応力が分散される。また、この熱交換ユニット10では、仮想円C3は、前後及び左右方向で隣接する4本の円弧形状の接合線58aに接しているから、応力を分散させることができる。さらに、隣接して対向する接合線58aの上記円弧全体が、中心点O3から等距離に位置するから、円弧形状の接合線58aに均等に応力を分散させることができる。これにより、接合線58aの特定箇所への応力集中が回避され、熱交換ユニット10の耐圧性能を向上させることができる。
また、図8に示すように、前後及び左右方向に対して所定角度、傾斜する方向において、所定の間隔で排気孔13が配列される。従って、水が内部空間14内を流れるとき、前後及び左右方向に対して傾斜する方向で隣接して対向する接合線58aに接する仮想円C4の中心点O4で最も上下熱交換プレート11,12の変形量が大きくなる。この各接合線58aの上記円弧は、仮想円C4の円周方向に延在するから、上下熱交換プレート11,12を上下方向に広げようとする応力は一定の長さの略円弧形状の連続線に作用し、応力が分散される。これにより、接合線58aの特定箇所への応力集中が回避され、熱交換ユニット10の耐圧性能を向上させることができる。
なお、上記熱交換ユニット10において、フランジ部58の接合線58aの一部は、仮想円C3,C4の円弧と完全に一致している必要はない。例えば、工業的生産では、接合線58aは、接合線58aの一部が仮想円C3,C4の円周と異なる曲率で形成される場合がある。このような場合でも、接合線58aが仮想円C3,C4の円周と複数の交点を有するように形成されれば、接合線58aの特定箇所への応力集中を回避することができる。
図9は、熱交換ユニット10の接合形態のさらに他の一例を示す平面図である。なお、上記熱交換ユニット10と同一の構成については、同一の引用番号を使用して、説明を省略する。
図9に示すように、この熱交換ユニット10を形成する上下熱交換プレート11,12の構成は、フランジ部68が左右方向に長い一辺を有する平面視変形八角形状の外形を有するように形成され、複数の楕円形状の排気孔63が前後方向に半ピッチずれて配列されている以外、上記の上下熱交換プレート11,12のそれらと同様である。
図9に示すように、上記熱交換ユニット10では、左右方向に対して傾斜する方向で隣接して対向する3つの接合線68aに接する仮想円C6を描くと、各接合線68aの傾斜した一辺は、仮想円C6と接合線68aとの接点P6の接線L6方向に延在する。従って、上記と同様に、上下熱交換プレート11,12を上下方向に広げようとする応力は一定の長さの略直線形状の連続線に作用し、応力が分散される。これにより、接合線68aの特定箇所への応力集中が回避され、熱交換ユニット10の耐圧性能を向上させることができる。なお、接合線68aの一部は、図8と同様に、仮想円C6の円周方向に延在するように形成されてよい。
(その他の実施の形態)
(1)上記実施の形態では、下向きの燃焼面を有するバーナが熱交換器の上方に配設されている。しかしながら、上向きの燃焼面を有するバーナが熱交換器の下方に配設されてもよい。
(2)上記実施の形態では、複数の熱交換ユニットが上下に積層されている。しかしながら、複数の熱交換ユニットは左右に積層されてもよい。
(3)上記実施の形態では、上下に隣接する熱交換ユニットは排気空間を介して積層されている。しかしながら、排気空間を設けることなく、複数の熱交換ユニットが直接、積層されてもよい。
(4)上記実施の形態では、給湯器が用いられているが、ボイラなどの熱源機が用いられてもよい。