JP5919429B1 - 地盤の液状化防止工法 - Google Patents

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Abstract

【課題】既設又は新設の管渠等の線状埋設物の周辺地盤が液状化するおそれがある場合に、既設の線状埋設物を活用状態のまま、又は新設する際に、その周辺地盤を地盤改良壁により拘束して液状化を防止する工法を提供する。【解決手段】線状埋設物10を横断する方向の地盤改良壁1a、1aを、その一部の線状埋設物を横断する部位Wを当該線状埋設物の布設位置よりも下方へ造成することにより、全体として高低の段差部を有する構成で並列に造成し、線状埋設物と略平行する方向の地盤改良壁1b、1bを、線状埋設物と構造物11とを格子目内に納める位置に並列に造成し、かつ地盤9の液状化防止に有効な深さまで到達させた平面視が格子状の地盤改良壁1を連続的に造成する。前記線状埋設物で二分された地盤9のうち、少なくとも広い領域側の地盤に、線状埋設物の布設用溝壁を形成する地盤防護壁部材2を壁状に設ける。【選択図】図2

Description

この発明は、地盤の液状化防止工法の技術分野に属し、さらに云えば、平面視が格子状の地盤改良壁を、既設又は新設の下水管等の線状埋設物を横断して既設又は新設の住宅等の構造物を取り囲む配置に造成する地盤の液状化防止工法に関する。
ここで、前記構造物とは、戸建住宅等の小規模構造物はもとより、道路用盛土等の土木構造物など、液状化する可能性がある地盤上に構築される構造物全般を指す。
液状化する可能性がある地盤(液状化地盤)上に戸建住宅等の構造物が構築されている場合、又は将来構築する予定である場合には、地震による震災時に地盤が液状化して被害を受けないように、又は被害を軽減できるように予め処理する液状化防止工法ないし液状化防止構造を実施することの重要性は既に周知されている。
例えば特許文献1及び特許文献2には、前記構造物の液状化防止工法として、構造物の周辺地盤を地盤改良壁で囲み、構造物と地盤改良壁の上部間を固化材で閉鎖し、構造物の基礎地盤を拘束する技術が開示されている。
ところで、地中に埋設された管渠等(例えば下水管やガス管)のいわゆる線状埋設物は、地盤に液状化防止対策が施されていないものが多く、強い地震を受けると、地盤が液状化して前記線状埋設物が浮き上がり破壊される等の被害の発生が懸念される。よって、地盤改良等の液状化防止対策が施されていない線状埋設物を活用状態のまま、早急に液状化防止対策を施す必要がある。もちろん、液状化地盤に線状埋設物を新設する場合は、線状埋設物の布設作業の際に液状化防止対策を施す必要がある。
特開2004−124493号公報 特開平10−18310号公報
上記特許文献1及び2に開示された液状化防止工法は、橋脚やビル等の既存構造物のように、その周辺地盤を地盤改良壁で囲める場合には好適に実施できる技術である。つまり、本発明が対象とする地中に埋設された管渠等の線状埋設物のように、その周辺地盤を地盤改良壁で囲み拘束することが難しい場合には、実施することができない。また、近年、震災復興事業として、道路と宅地(地盤)とを一体とした液状化対策事業が提案されているが、道路には線状埋設物が布設されている場合が多いので、同様の理由から実施することができない。
本発明は、上述した背景技術の課題に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、既設又は新設の管渠等の線状埋設物の周辺地盤が液状化するおそれがある場合に、既設の線状埋設物を活用状態のまま、又は新設する際に、その周辺地盤を地盤改良壁により拘束して液状化を防止する工法を提供することにある。
上記背景技術の課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係る地盤の液状化防止工法は、平面視が格子状の地盤改良壁を、線状埋設物を横断して構造物を取り囲む配置に造成する地盤の液状化防止工法であって、
前記線状埋設物の布設用溝を前記地盤改良壁で取り囲まれる地盤内の端部に位置させる場合、
前記線状埋設物を横断する方向の地盤改良壁を、その一部の線状埋設物を横断する部位を当該線状埋設物の布設位置よりも下方へ造成することにより、全体として高低の段差部を有する構成で並列に造成し、前記線状埋設物と略平行する方向の地盤改良壁を、前記線状埋設物と前記構造物とを格子目内に納める位置に並列に造成し、かつ地盤の液状化防止に有効な深さまで到達させた前記地盤改良壁を造成すると共に、
前記線状埋設物で二分された前記地盤のうち、広い領域側の地盤に、線状埋設物の一側に沿って当該線状埋設物の布設用溝壁を形成する地盤防護壁部材を壁状に設け、狭い領域側は前記地盤改良壁の一辺をそのまま利用して線状埋設物の布設用溝壁を兼ねる構成とすることを特徴とする。
請求項2に記載した発明に係る地盤の液状化防止工法は、平面視が格子状の地盤改良壁を、線状埋設物を横断して構造物を取り囲む配置に造成する地盤の液状化防止工法であって、
前記線状埋設物の布設用溝を前記地盤改良壁で取り囲まれる地盤内の中間部に位置させる場合、
前記線状埋設物を横断する方向の地盤改良壁を、その一部の線状埋設物を横断する部位を当該線状埋設物の布設位置よりも下方へ造成することにより、全体として高低の段差部を有する構成で並列に造成し、前記線状埋設物と略平行する方向の地盤改良壁を、前記線状埋設物と前記構造物とを格子目内に納める位置に並列に造成し、かつ地盤の液状化防止に有効な深さまで到達させた前記地盤改良壁を造成すると共に、
前記線状埋設物の両側に沿って当該線状埋設物の布設用溝壁を形成する地盤防護壁部材を前記地盤に、前記地盤改良壁よりも浅く、非液状化層には到達しない深さで壁状に設けることを特徴とする。
請求項3に記載した発明に係る地盤の液状化防止工法は、平面視が格子状の地盤改良壁を、線状埋設物を横断して構造物を取り囲む配置に造成する地盤の液状化防止工法であって、
前記線状埋設物の両側に、当該線状埋設物の布設用溝壁として地盤防護壁部材が既に、前記地盤改良壁よりも浅く、非液状化層には到達しない深さで壁状に設けられている場合、
前記線状埋設物を横断する方向の地盤改良壁を、その一部の線状埋設物を横断する部位を当該線状埋設物の布設位置よりも下方へ造成することにより、全体として高低の段差部を有する構成で並列に造成し、前記線状埋設物と略平行する方向の地盤改良壁を、前記線状埋設物の両側の地盤防護壁部材と前記構造物とを格子目内に納める位置に造成し、かつ地盤の液状化防止に有効な深さまで到達させた前記地盤改良壁を造成することを特徴とする。
請求項4に記載した発明に係る地盤の液状化防止工法は、平面視が格子状の地盤改良壁を、線状埋設物を横断して構造物を取り囲む配置に造成する地盤の液状化防止工法であって、
前記線状埋設物の一側に、当該線状埋設物の布設用溝壁として地盤防護壁部材が既に壁状に設けられている場合、
前記線状埋設物を横断する方向の地盤改良壁を、その一部の線状埋設物を横断する部位を当該線状埋設物の布設位置よりも下方へ造成することにより、全体として高低の段差部を有する構成で並列に造成し、前記線状埋設物と略平行する方向の地盤改良壁を、その一辺を前記地盤防護壁部材とで線状埋設物の布設用溝壁を形成するのに適正な位置に造成し、他辺を前記線状埋設物と前記構造物とを格子目内に納める位置に造成し、かつ地盤の液状化防止に有効な深さまで到達させた前記地盤改良壁を造成することを特徴とする。
請求項5に記載した発明は、請求項1〜4のいずれか一に記載した地盤の液状化防止工法において、前記地盤防護壁部材が地盤の液状化防止には不足な深度以内に浅く設けられている場合は、前記地盤防護壁部材の下端部に、当該地盤防護壁部材と一体化させて、地盤の過剰間隙水圧の上昇を抑制するのに適正な深さまで到達させた地盤改良壁を、前記地盤防護壁部材に沿って一連に造成することを特徴とする。
請求項6に記載した発明は、請求項1〜5のいずれか一に記載した地盤の液状化防止工において、前記線状埋設物の布設用溝は、液状化しない材料で埋め戻すなどの非液状化処理を施すことを特徴とする。
請求項1〜6に記載した発明に係る地盤の液状化防止工法によれば、同工法により造成した平面視が格子状の地盤改良壁が、地震時等の震動方向(加振方向)を問わず、段差部(凹部)がない場合と同程度の沈下量しか発生しないので、既設又は新設の線状埋設物の存在に起因する段差部の発生が、地盤改良壁による地盤の液状化防止ないし抑制の作用効果を毀損したり低下させたりしない液状化防止工法を実現することができる。
つまり、地盤上(液状化地盤上)の住宅等の構造物の耐震安全性は高められ、地震時の震災に対する安全性、安定性は高く確保されて、地震による震災被害を確実に防止でき又は軽減化できる。
例えば、既存の住宅が住棟間隔を有して集合する住宅地域、或いは近い将来に建てられる予定の住宅地域で、しかも液状化する虞がある地盤であって、既にその地盤中に下水管等の線状埋設物が線状に長く埋設(布設)されている場合でも、そうした線状埋設物の存在にさして左右されることなく、液状化地盤の地震による震災被害を確実に防止でき、又は軽減化できる。
本発明に係る地盤の液状化防止工法が実施される平面視が格子状の地盤改良壁と住宅(構造物)との配置関係の一例を概略的に示した平面図である。なお、線状埋設物は図示の便宜上省略した。 Aは、実施例1に係る地盤の液状化防止工法の実施例を透視図的に示した概略図であり、Bは、Aを概略的に示した立断面図である。 Aは、実施例2に係る地盤の液状化防止工法の実施例を透視図的に示した概略図であり、Bは、Aを概略的に示した立断面図である。 Aは、実施例3に係る地盤の液状化防止工法の実施例を透視図的に示した概略図であり、Bは、Aを概略的に示した立断面図である。 実施例4に係る地盤の液状化防止工法の実施例を透視図的に示した概略図である。 Aは、実施例5に係る地盤の液状化防止工法の実施例を透視図的に示した概略図であり、Bは、Aを概略的に示した立断面図である。 Aは、実施例5に係る地盤の液状化防止工法の変形例を透視図的に示した概略図であり、Bは、Aを概略的に示した立断面図である。 地盤改良壁(格子壁)に段差部(凹部)を設けた3種の実験ケース(Case14、15、16)について、その計測器配置図を示した表である。なお、図中の計測器配置図は、いわば縮尺図に近い概念図であり、記載した寸法は、計測器配置図の実寸法に則していない。 図8に示した3種の実験ケースにそれぞれ対応する、地盤改良壁の凹部寸法と地盤防護壁部材(矢板)2の建込深度(矢板深度)をパラメータとした遠心模型振動実験モデル図である。 A〜Cは、図8に示した3種の実験ケースにそれぞれ対応する、地盤防護壁部材2の建込深度(矢板深度)と構造物(住宅)11の沈下量の関係を示したグラフである。 図8に示した3種の実験ケースにそれぞれ対応する、過剰間隙水圧比の最大値コンター図である。
本発明は、平面視が格子状の地盤改良壁を、既設又は新設の下水管等の線状埋設物を横断して既設又は新設の住宅等の構造物(戸建住宅等の小規模構造物、道路用盛土等の土木構造物など、液状化する可能性がある地盤上に構築される構造物全般を含む。)を取り囲む配置に造成する地盤の液状化防止工法である。
本発明に係る地盤の液状化防止工法は、平面視が格子状の地盤改良壁を、図1に例示したように、少なくとも1つの構造物11を1つの格子目内に納める構成で、縦方向及び/又は横方向に連続的に造成する施工に適用することを主目的とするが、個別に独立した構成で実施することもできる。
本発明に係る地盤の液状化防止工法は、復旧工事等の際に用いる矢板(地盤防護壁部材)と、平面視が格子状の地盤改良壁とを合成(一体化)した地盤改良壁を造成することを主目的とする。いうなれば本発明は、復旧工事等の際に仮設土留壁として建て込まれた矢板をそのまま有効利用して地盤改良する技術的思想に端を発している。もっとも、前記地盤防護壁部材として、矢板の代わりに、地盤改良壁を造成して実施することもできる。
なお、図1は、代表例を示したに過ぎない。構造物(図示例では住宅)11が既に構築されているか否かの別を問わず、構造物用敷地の境界(境界杭の位置)が予め碁盤の目のように、およそ縦、横方向に整頓されていて、その各敷地境界線の位置に沿って、周辺の道路までも横切って大規模に、格子状(配置)の地盤改良壁1(1a、1b)が造成される場合、しかもその地盤が地震時には液状化することが懸念される場合の理想的な実施例を示しているに過ぎない。実際にはこのような理想的な施工はできない場合があり、施工規模の大小はもとより、構造物11の構築部位に伴い各敷地境界線の位置に沿って大なり小なりの湾曲や屈曲が含まれる等、適宜設計変更可能である。
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
本実施例1に係る地盤の液状化防止工法は、図2A、Bに概略的に示したように、平面視が格子状の地盤改良壁1を、既設又は新設の線状埋設物10を横断して既設又は新設の住宅等の構造物11を取り囲む配置に造成する地盤9の液状化防止工法として実施する。
具体的には、前記線状埋設物10の布設用溝8を、前記地盤改良壁1で取り囲まれる地盤9内の端部に位置させる場合、
前記線状埋設物10を横断する方向の地盤改良壁1a、1aを、その一部の線状埋設物10を横断する部位Wを当該線状埋設物10の布設位置よりも下方へ造成することにより、全体として高低の段差部を有する構成で並列に造成し、前記線状埋設物10と略平行する方向の地盤改良壁1b、1bを、前記線状埋設物10と前記構造物11とを格子目内に納める位置に並列に造成し、かつ地盤の液状化防止に有効な深さまで到達させた前記地盤改良壁1を造成する。
また、前記造成工程と同時並行又は相前後して、前記線状埋設物10で二分された前記地盤9のうち、広い領域側の地盤に、線状埋設物10の一側に沿って当該線状埋設物10の布設用溝壁を形成する地盤防護壁部材2を壁状に設ける。狭い領域側は前記地盤改良壁の一辺の地盤改良壁1bをそのまま利用して線状埋設物10の布設用溝壁を兼ねる構成とする。
本発明に係る前記平面視が格子状の地盤改良壁1の基本的な構造は、端部に前記線状埋設物10の布設用溝8を含む液状化対象地盤である地盤9に対し、従来公知の工法とほぼ同様に、平面視で格子状の地盤改良壁を構築した構成である。
すなわち、地盤9中の液状化層Xを貫通して、その下の非液状化層Y(例えば、地面からの深さ12m程度)へ届く深さまでほぼ垂直な壁状に連続する地盤改良壁1(1a、1b)を平面視で格子状の囲い壁として構築している。
一方、前記地盤防護壁部材2は、主として前記線状埋設物10の復旧工事の際に設けるものであり、本実施例では、その一例として鋼矢板2が好適に用いられている。本実施例に係る鋼矢板2は、一例として、矢板長(長さ寸法)を6mで実施し、矢板深度をGL−1m〜GL−7mの範囲に設定して前記線状埋設物10の布設方向に沿って連続的に建て込み施工している。
前記地盤改良壁1の施工要領について説明すると、その一部の線状埋設物10を横断する部位W以外は、従来公知の液状化防止工法とほぼ同様に造成する。
すなわち、地盤9の液状化層Xに向かって、ほぼ垂直な壁状に連続する地盤改良壁(改良柱)1を、例えば、地盤改良機を用いた深層混同処理工法やソイルミキシングウォール工法等により造成する。具体的には、原位置地盤を地盤改良機により掘削し、その掘削土へセメントミルク等の安定剤を注入し混合・撹拌して、改良柱の一部分がラップして連続する柱列状の地盤改良壁1(1a、1b)を造成する。
本発明の特徴点である前記地盤改良壁1aにおける前記線状埋設物10を横断する部位Wは、線状埋設物10が既に布設されている場合には、例えば小型噴射式地盤改良機による高圧噴射撹拌工法により、前記地盤防護壁部材2又は線状埋設物10を避けた位置にガイド管を設置し、ロッドを鉛直方向に貫入することにより、改良柱を線状埋設物10の布設位置よりも下方へ造成すると共に、隣接する改良柱と一部分をラップさせて連続するように造成する。
また、前記線状埋設物10を布設する前に地盤改良壁1(1a)を造成する場合には、前記部位Wに相当する部分を、例えば、地盤改良機を用いた深層混同処理工法やソイルミキシングウォール工法等により、せいの低い短尺の改良柱を造成しておくと共に、隣接する改良柱と一部分をラップさせて連続するように造成する。また以下において、造成を施工と云う場合がある。
より具体的に、本実施例に係る格子状の地盤改良壁1の基本配置は、一例として1宅地1格子を条件とし、概ね16m×13m程度の間隔ごとに地盤改良壁1を造成している。この寸法は、宅地13m×13m程度と宅地前面の道路(幅員6m程度)の中央部までを含む領域を施工することに基づいている。
本実施例では、地盤改良対象範囲を宅地前面の道路部と住宅のある宅地部とに分けて施工している。これは施工する周辺環境に応じて採用する施工機械が異なることに基づく。ちなみに図中の符号Dは、道路部と宅地部との境界線を示している。
すなわち、道路部は、幅員6m程度と比較的余裕がある施工スペースが確保可能であるため、主に一般的で経済的な機械式地盤改良機で施工する。一方、宅地部は、隣棟間隔が狭い場合が多く境界部の塀や植栽等の障害物も多いことから、主に設置に必要な用地幅の小さい小型噴射式地盤改良機(効率性重視)や超小型噴射式地盤改良機(設置性重視)で施工する。もっとも、道路部・宅地部ともに施工位置直下に線状埋設物10がある場合には機械式地盤改良機は適用できないので、小型噴射式地盤改良機等で高圧噴射撹拌工法により施工する。
よって、前記平面視が格子状の地盤改良壁1のうち、その2辺を構成する前記地盤改良壁1a、1aは、その大部分の領域を、前記小型噴射式地盤改良機等で改良柱を連続的に形成することにより造成する。その際、前記地盤改良壁1aと前記地盤防護壁部材2との交点部は一体化するように造成する。
本実施例に係る地盤改良壁(改良柱)1a、1aは、一例として、1.5m以深から11mの長さで実施される。即ち、改良柱深度をGL−1.5m〜GL−12.5mの範囲に設定して構築される。前記線状埋設物10を布設する場所が事前に把握されている場合には、前記線状埋設物10を横断する部位Wは、前記した要領で、せいの低い(短尺の)改良柱を造成する。
前記短尺の改良柱は、一例として、7.5m程度のせいで、改良柱深度をGL−5.0m〜GL−12.5mの範囲に設定して構築される。なお、短尺の改良柱の天端を前記地盤防護壁部材2の下端とほぼ揃える高さに造成して実施することも勿論できる。
したがって、前記線状埋設物10を横断する方向の地盤改良壁1a、1aは、前記領域Wの部位が、他の領域の地盤改良壁(改良柱)と比し、GL−1.5m〜GL−5.0mの範囲で凹部を備え、全体として高低の段差部(本実施例では−1.5m−(−5.0m)=3.5m程度)を有する構成で並列に造成される。
一方、残る2辺を形成する前記地盤改良壁1b、1bのうち、道路部、すなわち線状埋設物10の布設用溝壁を兼ねるように当該線状埋設物10に沿う位置に造成する地盤改良壁1bは、前記機械式地盤改良機により施工し、宅地部、すなわち隣接する住宅の間に造成する地盤改良壁1bは、小型噴射式地盤改良機等により施工し、もって、地盤の液状化防止に有効な深さまで到達させた平面視が格子状の地盤改良壁1を造成する。
また、前記地盤防護壁部材2と前記道路部側の地盤改良壁1bとで形成する布設用溝壁同士の間に形成された布設用溝8は、液状化しない材料で埋め戻すなどの非液状化処理を施している。例えば、本実施例では、布設用溝8の底面部に捨てコンクリート、又は遮水シート等を敷設して底盤とし、その上に改良土を埋め戻して、当該布設用溝8から液状化層Xへの排水を防止する非液状化処理を施している。以下に説明する実施例についても同様の技術的思想とする。
ちなみに本実施例では、一例として、布設用溝8の溝幅を2〜3m程度に設定し、線状埋設物10の大きさを外径φ200〜φ1000mm程度、布設深度GL−3〜4m程度に設定している。
かくして、本実施例1に係る地盤の液状化防止工法によれば、端部に前記線状埋設物10の布設用溝8を含み、線状埋設物10、前記地盤防護壁部材2、および構造物11を取り囲む配置に造成した平面視が格子状の地盤改良壁1を実現することができる。
なお、図2Aでは、地盤改良壁(改良柱)1および地盤防護壁部材2の天端をほぼ揃えて実施しているが、図2Bに示すように、前記地盤防護壁部材2を、地盤改良壁1よりも若干(50cm程度)上方に突き出した構成で実施してもよいし、地盤改良壁1を上方に突き出した構成で実施してもよい。
地盤改良壁1を構成する改良柱の形態も図示例に限定されず、施工する地盤改良機等に応じて、外径、外形、又は本数等、適宜変更可能である。改良柱の打設順序は、1本又は複数本おきに打設して適時にその間を間詰めする手法で施工してもよいし、片押しで施工してもよい。
また、前記地盤防護壁部材(鋼矢板)2の長さ寸法は勿論6mに限定されず、液状化層Xの範囲等の地盤性状に応じて適宜設計変更される。地盤改良壁1の長さ寸法も勿論11mに限定されず、液状化層Xの範囲等の地盤性状に応じて適宜設計変更される。これに伴い、前記地盤改良壁1aの前記高低の段差の数値も適宜設計変更される。
以下に説明する実施例についても同様の技術的思想とする。
図3A、Bは、実施例2に係る地盤の液状化防止工法の実施例を示している。
この実施例2は、上記実施例1と比し、主として、前記地盤防護壁部材2の長さ寸法(矢板長)がおよそ半分(3m)に短尺化した地盤防護壁部材2’を用いている点が相違する。
この場合、地盤防護壁部材(鋼矢板)2’の建て込み深度が浅く、上記実施例1と比し、液状化層Xの拘束力(拘束領域)が低減化するなど過剰間隙水圧上昇の抑制手段が十分でないことが懸念されるので、上記実施例1の構成に近づける手段を導入する。
すなわち、前記地盤防護壁部材2の下端部に、当該地盤防護壁部材2と一体化させて、地盤の過剰間隙水圧の上昇を抑制するのに適正な深さ(本実施例では高さ3m、GL−4m〜GL−7m)まで到達させた小型の地盤改良壁3を、前記地盤防護壁部材2に沿って一連に造成して実施している。なお、前記地盤改良壁3は、前記地盤防護壁部材2を建て込んだ後に造成してもよいし、建て込む前に造成してもよい。
また、上記実施例1に係る図2A、Bと比し、線状埋設物10の布設位置(布設用溝8)も浅く、前記地盤改良壁1aのうち線状埋設物10を横断する部位Wに造成する地盤改良壁(改良柱)の天端を前記地盤防護壁部材2の下端に揃え、改良柱深度をGL−4.0m〜GL−12.5mの範囲としている点も相違する。
その他の構成要素については上記実施例1と同様なので同一の符号を付してその説明を省略する。
かくして、本実施例2に係る地盤の液状化防止工法によれば、端部に前記線状埋設物10の布設用溝8を含み、前記線状埋設物10、地盤防護壁部材2、小型の地盤改良壁3、および構造物11を取り囲む配置に造成した平面視が格子状の地盤改良壁1を実現することができる。
図4A、Bは、実施例3に係る地盤の液状化防止工法の実施例を示している。
この実施例3は、上記実施例1と比し、主として、前記線状埋設物10の布設用溝8を前記地盤9内の中間部に位置させて実施する点が相違する。その他の構成要素については上記実施例1と同様なので同一の符号を付してその説明を適宜省略する。
すなわち、本実施例3に係る地盤の液状化防止工法は、平面視が格子状の地盤改良壁1を、既設又は新設の下水管等の線状埋設物10を横断して既設又は新設の構造物(例えば、道路用盛土。図示省略)を取り囲む配置に造成する地盤の液状化防止工法であり、前記線状埋設物10の布設用溝8を前記地盤改良壁1で取り囲まれる地盤9内の中間部に位置させる場合である。
この場合には、前記線状埋設物10を横断する方向の地盤改良壁1a、1aを、その一部の線状埋設物10を横断する部位を当該線状埋設物10の布設位置よりも下方へ造成することにより、全体として高低の段差部を有する構成で並列に造成し、前記線状埋設物10と略平行する方向の地盤改良壁1b、1bを、前記線状埋設物10と前記構造物とを格子目内に納める位置に並列に造成し、かつ地盤の液状化防止に有効な深さまで到達させた平面視が格子状の地盤改良壁1を造成すると共に、
前記線状埋設物10の両側に沿って当該線状埋設物10の布設用溝壁を形成する地盤防護壁部材2、2を前記地盤9に、前記地盤改良壁1よりも浅く、非液状化層Yには到達しない深さで壁状に設ける。
要するに、本実施例3は、上記実施例1と比し、図2と図4とを対比して参照すると分かりやすいように、線状埋設物10の布設用溝8の位置を端部から中間部へ設計変更したことに伴い、地盤防護壁部材2を2つ(2箇所)に増設し、線状埋設物10を挟んで対峙させた点が相違する。これは、上記実施例1では、布設用溝壁としても十分に機能していた道路部側の地盤改良壁1bと、線状埋設物10との距離が広がったため、新たに土留め壁としての機能を発揮する地盤防護壁部材2を線状埋設物10の近傍位置に建て込む必要が生じたことによる。
前記地盤改良壁1の施工要領は、構造物の種別が住宅と道路用盛土との違いはあるものの、上記実施例1に倣い、同様に実施することができる(前記段落[0020]参照)。
前記地盤改良壁1および地盤防護壁部材2、2の形態(長さ寸法、建て込み深度等)等も上記実施例1と同様である。
かくして、本実施例3に係る地盤の液状化防止工法によれば、中間部に前記線状埋設物10の布設用溝8を含み、前記線状埋設物10、地盤防護壁部材2、2、および構造物(道路用盛土)を取り囲む配置に造成した平面視が格子状の地盤改良壁を実現することができる。因みに、この実施例3は、道路用盛土の基礎部分に、道路に沿って下水道等の線状埋設物10が設けられる場合に好適に実施される。
なお、前記地盤防護壁部材2、2の長さが、前記図3A、Bに示すように短い場合は上記実施例2に倣い、地盤防護壁部材の下端部に小型の地盤改良壁3を適宜継ぎ足して実施する。
図5は、実施例4に係る地盤の液状化防止工法の実施例を示している。
この実施例4は、上記実施例1と比し、前記地盤防護壁部材2として、鋼矢板の代わりに、地盤改良壁4を造成する点が相違する。
前記地盤改良壁1の施工要領は、上記実施例1と同様に実施することができる(前記段落[0020]参照)。前記地盤改良壁4も同様の施工要領で実施するが、上記実施例1に係る地盤防護壁部材(矢板)2と同様に、長さ寸法を6mで実施し、深度をGL−1m〜GL−7mの範囲に設定して前記線状埋設物10の布設方向に沿って造成している。
その他の構成要素については上記実施例1と同様なので同一の符号を付してその説明を省略する。
かくして、本実施例4に係る地盤の液状化防止工法によれば、端部に前記線状埋設物10の布設用溝8を含み、前記線状埋設物10、地盤改良壁4、および構造物11を取り囲む配置に造成した平面視が格子状の地盤改良壁を実現することができる。
図6と図7は、実施例5に係る地盤の液状化防止工法の実施例を示している。
図6に係る実施例は、上記実施例1(図2)と比し、前記道路部側の地盤改良壁1bの内側に沿って、地盤防護壁部材2を壁状に設ける構成を加えた点が相違する。同様に、図7に係る実施例は、上記実施例2(図3)と比し、前記道路部側の地盤改良壁1bの内側に沿って、地盤防護壁部材2’を壁状に設ける構成を加えた点が相違する。
このような施工は、前記地盤改良壁1の造成に先行して、復旧工事等の際に仮設土留壁として既に建て込まれている矢板(地盤防護壁部材)2をそのまま有効利用する場合に好適に実施される。
すなわち、本実施例5に係る地盤の液状化防止工法は、平面視が格子状の地盤改良壁1を、既設の下水管等の線状埋設物10を横断して当該線状埋設物10と既設又は新設の住宅等の構造物11を取り囲む配置に造成する地盤の液状化防止工法であり、前記線状埋設物10の両側に、当該線状埋設物10の布設用溝壁として矢板等の地盤防護壁部材2、2(2’、2’)が既に、前記地盤改良壁1よりも浅く、非液状化層Yには到達しない深さで壁状に建て込まれている場合、
前記線状埋設物10を横断する方向の地盤改良壁1a、1aを、その一部の線状埋設物10を横断する部位Wを当該線状埋設物10の布設位置よりも下方へ造成することにより、全体として高低の段差部を有する構成で並列に造成し、前記線状埋設物10と略平行する方向の地盤改良壁1b、1bを、前記線状埋設物10の両側の地盤防護壁部材2、2(2’、2’)と前記構造物11とを格子目内に納める位置に造成し、かつ地盤の液状化防止に有効な深さまで到達させた平面視が格子状の地盤改良壁1を造成する。
前記地盤改良壁1の施工要領は、上記実施例1、2と同様に実施することができる(前記段落[0020]参照)。ただし、図示例の場合、前記道路部側(外側)の地盤防護壁部材2の外側面に沿って地盤改良壁1bを造成しているが、当該地盤防護壁部材2の直近位置の地盤中に障害物がある場合等、地盤防護壁部材2との間隔を若干あけて造成する等の工夫は適宜行われるところである。
前記地盤改良壁1および地盤防護壁部材2、2(2’、2’)の形態(長さ寸法、建て込み深度等)等は上記実施例1、2と同様である。
かくして、本実施例5に係る地盤の液状化防止工法によれば、端部に前記線状埋設物10の布設用溝8を含み、前記線状埋設物10、前記地盤防護壁部材2、2(2’、2’)、および構造物11を取り囲む配置に造成した平面視が格子状の地盤改良壁1を実現することができる。
なお、既設の地盤防護壁部材2、(2’)が線状埋設物10の一側のみに既に建て込まれている場合は、上記実施例1、2と同様の手法で実施することができる。
また、既設の地盤防護壁部材2、2(2’、2’)が地盤9内の中間部に既に建て込まれている場合は、上記実施例3と同様の手法で実施することができる。
もちろん、短尺の地盤防護壁部材2’が建て込まれている場合は、その下端部に小型の地盤改良壁3を継ぎ足す工程を導入する。
<遠心模型振動実験による検証>
本出願人らは、上記実施例1等に係る地盤の液状化防止工法により造成した平面視が格子状の地盤改良壁1について、その作用効果を検討するべく、遠心模型振動実験等の種々の実験を行った。
<図8〜図11についての説明>
図8〜図11は、遠心模型振動実験の概要を示している。ちなみに本出願人らは、相当数の遠心模型振動実験を含む種々の実験を行っており、図8〜図11は、その(Case1〜17)中から重要なデータ(Case14〜16)を抽出したものである。
具体的に、図8は、地盤改良壁1(格子壁)に段差部(凹部)を設けた実験ケース(Case14、15、16)と、その計測器配置図を示している。
図9は、図8に示した3種の実験ケース(Case14、15、16)にそれぞれ対応する地盤改良壁1の凹部寸法と地盤防護壁部材(矢板)2の建込深度(矢板深度)をパラメータとした遠心模型振動実験モデルを示している。
図10A〜Cはそれぞれ、縦軸に無対策の沈下量に対する比率を示し、横軸に壁凹部深度(m)を示した、地盤防護壁部材2の建込深度(矢板深度)と構造物(住宅)11の沈下量の関係を示したグラフである。
図11は、前記3種の実験ケース(Case14、15、16)にそれぞれ対応する、過剰間隙水圧比の最大値コンター図である。なお、当該図はカラー表示を白黒表示に変形した。
<実験の概要>
前記凹部が加振直交方向にある場合(Case14、Case15)と、加振平行方向にある場合(Case16)の3種のケースの実験を行った。
前記凹部の幅は3m、深度は、GL−1m〜GL−4mとGL−1m〜GL−7mの2パターンとした。
そして、地盤防護壁部材2の建込深度(矢板深度)を、GL−1m〜GL−4mとGL−1m〜GL−7mとして、液状化抑制効果との関係を検討した。
線状埋設物10は下水管を想定した。また、線状埋設物10を布設する布設用溝8は、その全域を非液状化層として砕石でモデル化し、砕石の下にはシートを敷いて非排水状態を保持できる構成とした。
なお、図10中、●印の無対策とは、地盤改良壁1を一切造成しない地盤(液状化地盤)9そのままの状態を示し、同●印をプロットした比率1.00は、125mmの沈下を意味する。また、▲印の16m×13m(Case6)とは、図示等は省略するが、従来公知の段差部(凹部)のない格子壁(囲い壁)で実施した場合の実験結果であり、当然ながら、無対策の沈下量に対する比率は0.40(沈下量が50mm)と良好な結果が得られている。
<実験結果、および考察>
(その1)Case14に係る矢板6m、壁凹部深度6mの場合
これは、図9のCase14の右側を参照すると分かりやすいように、本実施例1(図2)について、前記短尺の改良柱の天端を前記地盤防護壁部材2の下端とほぼ揃える高さに造成して実施した場合に相当する。
この場合の実験結果は、図10Aの□印から明らかなように、前記Case6の実験結果に匹敵する良好な結果が得られていることが確認できる。すなわち、段差部(凹部)がない場合と同程度の沈下量しか発生していないことが分かる。
また、図11の対応する最大値コンター図(Case14の右側区域を参照)から明らかなように、地盤防護壁部材(矢板)2をGL−1m〜GL−7mに建て込んでいると、深度の浅い部分での過剰間隙水圧の上昇が効果的に抑制されていることが分かる。その効果によって、沈下量が抑制されていると考察される。
以上のことから、本出願人らは、本実施例1に係る地盤の液状化防止工法により造成した平面視が格子状の地盤改良壁1は、段差部(凹部)がない場合と同程度の沈下量しか発生しないので、同段差部(凹部)の発生が、地盤改良壁1による地盤の液状化防止ないし抑制の作用効果を毀損したり低下させたりしない構造を実現できることを確信した。
また、平面視が格子状の地盤改良壁1に段差部(凹部)が発生していても、十分な長さの地盤防護壁部材(矢板)2を確保できれば液状化抑制効果が変わらないことが確認できたので、上記実施例2のように、地盤防護壁部材(矢板)2の長さ寸法(矢板長)が短い場合は、高圧噴射撹拌工法等により地盤改良壁3を継ぎ足すと、十分な長さの地盤防護壁部材(矢板)2を確保した場合と同様の良好な結果が得られると確信した。
(その2)Case14に係る矢板3m、壁凹部深度3mの場合
これは、言わば本実施例2(図3)の地盤改良壁3がない場合に相当する。このケースは、図10Aの■印、および図11のCase14の左側区域の最大値コンター図から明らかなように、良好な結果が得られていない。
このことから、矢板長が短い場合は、本実施例2のように、地盤防護壁部材(矢板)2に地盤改良壁3を継ぎ足す必要があることが分かった。
(その3)Case15に係る矢板6m、壁凹部深度6mの場合
この実験は、実験結果こそ若干異なるものの、前記(その1)と同様のコンセプトで、同様の作用効果を奏するのでその説明を省略する(図10B、図11を参照)。
(その4)Case15に係る矢板6m、壁凹部深度3mの場合
これは、本実施例1(図2)について、前記短尺の改良柱の天端を前記地盤防護壁部材2の下端よりも高く造成して実施した場合に相当する。
この場合の実験結果は、図10Bの□印(壁凹部深度3mを参照)から明らかなように、前記Case6の実験結果に匹敵する良好な結果が得られていることが確認できる。すなわち、段差部(凹部)がない場合と同程度の沈下量しか発生していないことが分かる。
また、図11の対応する最大値コンター図(Case15の左側区域を参照)から明らかなように、地盤防護壁部材(矢板)2をGL−1m〜GL−7mに建て込んでいると、深度の浅い部分での過剰間隙水圧の上昇が効果的に抑制されていることが分かる。その効果によって、沈下量が抑制されていると考察される。
以上のことから、本出願人らは、前記(その1)と同様の作用効果を発揮する平面視が格子状の地盤改良壁1を実現できることを確信した。
(その5)Case16に係る矢板6m、壁凹部深度3mの場合
これは、前記(その4)と同様に、本実施例1(図2)について、前記短尺の改良柱の天端を前記地盤防護壁部材2の下端よりも高く造成して実施した場合に相当し、図10Cの■印(壁凹部深度3mを参照)から明らかなように、前記Case6の実験結果に匹敵する良好な結果が得られていることが確認できる。すなわち、段差部(凹部)がない場合と同程度の沈下量しか発生していないことが分かる。
また、図11の対応する最大値コンター図(Case16の右側区域を参照)から明らかなように、地盤防護壁部材(矢板)2をGL−1m〜GL−7mに建て込んでいると、深度の浅い部分での過剰間隙水圧の上昇が効果的に抑制されていることが分かる。その効果によって、沈下量が抑制されていると考察される。
このことから、本出願人らは、本実施例1(図2)に係る地盤の液状化防止工法により造成した平面視が格子状の地盤改良壁1は、地震等の加振方向を問わず、液状化抑制効果を十分に発揮できると確信した。
(その6)Case16に係る矢板6m、壁凹部深度6mの場合
これは、前記(その1)と同様に、本実施例1(図2)について、前記短尺の改良柱の天端を前記地盤防護壁部材2の下端とほぼ揃える高さに造成して実施した場合に相当し、図10Cの■印(壁凹部深度6mを参照)から明らかなように、前記Case6の実験結果に匹敵する良好な結果が得られていることが確認できる。すなわち、段差部(凹部)がない場合と同程度の沈下量しか発生していないことが分かる。
また、図11の対応する最大値コンター図(Case16の左側区域を参照)から明らかなように、地盤防護壁部材(矢板)2をGL−1m〜GL−7mに建て込んでいると、深度の浅い部分での過剰間隙水圧の上昇が効果的に抑制されていることが分かる。その効果によって、沈下量が抑制されていると考察される。
このことから、本出願人らは、本実施例1(図2)に係る地盤の液状化防止工法により造成した平面視が格子状の地盤改良壁1は、地震等の加振方向を問わず、液状化抑制効果を十分に発揮できると確信した。
<その他の考察>
前記遠心模型振動実験結果により、上記実施例1、2に係る地盤の液状化防止工法により造成した平面視が格子状の地盤改良壁1は、液状化抑制効果を十分に発揮できると確信した。
その他の実施例について検討をすすめると、上記実施例3(図4)に係る平面視が格子状の地盤改良壁1は、2枚の地盤防護壁部材(矢板)2を地中に深くGL−1m〜GL−7mの範囲で建て込み、その両端部は、当該地盤改良壁にしっかり拘束されているので、やはり、深度の浅い部分での過剰間隙水圧の上昇が効果的に抑制されることが容易に推察できる。よって、上記実施例1、2と同様に、段差部(凹部)がない場合と同程度の沈下量しか発生しない地盤改良壁1を実現できると確信した。
上記実施例4(図5)に係る平面視が格子状の地盤改良壁1は、上記実施例1(図1)に係る地盤防護壁部材2に代えて、地盤改良壁をGL−1m〜GL−7mの範囲で造成したに過ぎない構成なので、特に説明するまでもなく、やはり、上記実施例1、2と同様に、段差部(凹部)がない場合と同程度の沈下量しか発生しない地盤改良壁1を実現できると確信した。
上記実施例5(図6、図7)に係る平面視が格子状の地盤改良壁1は、上記実施例1又は実施例2に地盤防護壁部材2を1枚増加したに過ぎず、液状化抑制効果にほとんど影響を与えないので、特に説明するまでもなく、やはり、上記実施例1、2と同様に、段差部(凹部)がない場合と同程度の沈下量しか発生しない地盤改良壁1を実現できると確信した。
以上、本発明を上記実施例1〜5に基づいて説明したが、本発明は、図示例の限りではなく、その技術的思想を逸脱しない範囲において、いわゆる当業者が通常に行う設計変更、応用のバリエーションの範囲を含むことを念のために言及する。
例えば、地盤改良壁1は平面視が格子状として例示したが、造成地の制約から平面視が三角形状であっても、若しくは、縦方向又は横方向の地盤改良壁1(1a、1b)が相互に直交しない矩形の平面形状(例えば、平行四辺形の格子状)であってもよい。また、線状埋設物10を敷設する布設用溝8を、地盤改良壁1で取り囲まれる地盤9内の端部に一方向のみに位置させる場合や前記地盤9内の中間部に一方向のみに位置させる場合を例示したが、地盤改良壁1で取り囲まれる前記地盤9内において、縦方向の端部及び横方向の端部に位置する布設用溝8に対し、地盤防護壁部材2(2’)を平面視で矩形状(略直交)に連続して設けた場合であっても好適に実施できる。要するに、本発明に係る地盤改良壁1は、平面視で格子状のように閉じられた図形となる形状で、さらに地盤改良壁1の下部が地盤9中の液状化層Xを貫通して、その下の非液状化層Yへ届く等、地盤9の液状化防止に有効な深さまでほぼ垂直に造成した囲い壁であればよい。
1(1a、1b) 地盤改良壁
2 地盤防護壁部材
2’ 短尺の地盤防護壁部材
3 小型の地盤改良壁
4 地盤改良壁
8 布設用溝
9 地盤
10 線状埋設物
11 構造物
X 液状化層
Y 非液状化層

Claims (6)

  1. 平面視が格子状の地盤改良壁を、線状埋設物を横断して構造物を取り囲む配置に造成する地盤の液状化防止工法であって、
    前記線状埋設物の布設用溝を前記地盤改良壁で取り囲まれる地盤内の端部に位置させる場合、
    前記線状埋設物を横断する方向の地盤改良壁を、その一部の線状埋設物を横断する部位を当該線状埋設物の布設位置よりも下方へ造成することにより、全体として高低の段差部を有する構成で並列に造成し、前記線状埋設物と略平行する方向の地盤改良壁を、前記線状埋設物と前記構造物とを格子目内に納める位置に並列に造成し、かつ地盤の液状化防止に有効な深さまで到達させた前記地盤改良壁を造成すると共に、
    前記線状埋設物で二分された前記地盤のうち、広い領域側の地盤に、線状埋設物の一側に沿って当該線状埋設物の布設用溝壁を形成する地盤防護壁部材を壁状に設け、狭い領域側は前記地盤改良壁の一辺をそのまま利用して線状埋設物の布設用溝壁を兼ねる構成とすることを特徴とする、地盤の液状化防止工法。
  2. 平面視が格子状の地盤改良壁を、線状埋設物を横断して構造物を取り囲む配置に造成する地盤の液状化防止工法であって、
    前記線状埋設物の布設用溝を前記地盤改良壁で取り囲まれる地盤内の中間部に位置させる場合、
    前記線状埋設物を横断する方向の地盤改良壁を、その一部の線状埋設物を横断する部位を当該線状埋設物の布設位置よりも下方へ造成することにより、全体として高低の段差部を有する構成で並列に造成し、前記線状埋設物と略平行する方向の地盤改良壁を、前記線状埋設物と前記構造物とを格子目内に納める位置に並列に造成し、かつ地盤の液状化防止に有効な深さまで到達させた前記地盤改良壁を造成すると共に、
    前記線状埋設物の両側に沿って当該線状埋設物の布設用溝壁を形成する地盤防護壁部材を前記地盤に、前記地盤改良壁よりも浅く、非液状化層には到達しない深さで壁状に設けることを特徴とする、地盤の液状化防止工法。
  3. 平面視が格子状の地盤改良壁を、線状埋設物を横断して構造物を取り囲む配置に造成する地盤の液状化防止工法であって、
    前記線状埋設物の両側に、当該線状埋設物の布設用溝壁として地盤防護壁部材が既に、前記地盤改良壁よりも浅く、非液状化層には到達しない深さで壁状に設けられている場合、
    前記線状埋設物を横断する方向の地盤改良壁を、その一部の線状埋設物を横断する部位を当該線状埋設物の布設位置よりも下方へ造成することにより、全体として高低の段差部を有する構成で並列に造成し、前記線状埋設物と略平行する方向の地盤改良壁を、前記線状埋設物の両側の地盤防護壁部材と前記構造物とを格子目内に納める位置に造成し、かつ地盤の液状化防止に有効な深さまで到達させた前記地盤改良壁を造成することを特徴とする、地盤の液状化防止工法。
  4. 平面視が格子状の地盤改良壁を、線状埋設物を横断して構造物を取り囲む配置に造成する地盤の液状化防止工法であって、
    前記線状埋設物の一側に、当該線状埋設物の布設用溝壁として地盤防護壁部材が既に壁状に設けられている場合、
    前記線状埋設物を横断する方向の地盤改良壁を、その一部の線状埋設物を横断する部位を当該線状埋設物の布設位置よりも下方へ造成することにより、全体として高低の段差部を有する構成で並列に造成し、前記線状埋設物と略平行する方向の地盤改良壁を、その一辺を前記地盤防護壁部材とで線状埋設物の布設用溝壁を形成するのに適正な位置に造成し、他辺を前記線状埋設物と前記構造物とを格子目内に納める位置に造成し、かつ地盤の液状化防止に有効な深さまで到達させた前記地盤改良壁を造成することを特徴とする、地盤の液状化防止工法。
  5. 前記地盤防護壁部材が地盤の液状化防止には不足な深度以内に浅く設けられている場合は、前記地盤防護壁部材の下端部に、当該地盤防護壁部材と一体化させて、地盤の過剰間隙水圧の上昇を抑制するのに適正な深さまで到達させた地盤改良壁を、前記地盤防護壁部材に沿って一連に造成することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一に記載した地盤の液状化防止工法。
  6. 前記線状埋設物の布設用溝は、液状化しない材料で埋め戻すなどの非液状化処理を施すことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一に記載した地盤の液状化防止工法。
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