JP5915678B2 - 引上式連続鋳造装置及び引上式連続鋳造方法 - Google Patents

引上式連続鋳造装置及び引上式連続鋳造方法 Download PDF

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Description

本発明は、引上式連続鋳造装置及び引上式連続鋳造方法に関する。
特許文献1には、鋳型を要しない画期的な引上式連続鋳造方法として、自由鋳造方法が提案されている。特許文献1に示したように、溶融金属(溶湯)の表面(すなわち湯面)にスタータを浸漬させた後、当該スタータを引き上げると、溶湯の表面膜や表面張力によりスタータに追従して溶湯も導出される。ここで、湯面近傍に設置された形状規定部材を介して、溶湯を導出し、冷却することにより、所望の断面形状を有する鋳物を連続鋳造することができる。
通常の連続鋳造方法では、鋳型によって断面形状とともに長手方向の形状も規定される。とりわけ、連続鋳造方法では、鋳型内を凝固した金属(すなわち鋳物)が通り抜ける必要があるため、鋳造された鋳物は長手方向に直線状に延びた形状となる。
これに対し、自由鋳造方法における形状規定部材は、鋳物の断面形状のみを規定し、長手方向の形状は規定しない。そのため、スタータ(もしくは形状規定部材)を水平方向に移動させながらスタータを引き上げることにより、長手方向の形状が様々な鋳物が得られる。例えば、特許文献1には、長手方向に直線状でなく、ジグザグ状あるいは螺旋状に形成された中空鋳物(すなわちパイプ)が開示されている。
特開2012−61518号公報
発明者は以下の課題を見出した。
特許文献1に記載の自由鋳造方法では、形状規定部材を介して引き上げられた溶湯を冷却ガスによって冷却しているため、凝固界面は形状規定部材よりも上側に位置する。この凝固界面の位置は、鋳物の寸法精度や表面品質に直接影響を及ぼす。そのため、凝固界面を検出し、これを所定の基準範囲内に制御することが重要となる。
ここで、発明者は、引き上げられた溶湯の表面が揺動し(より具体的には、短い変動周期で大きく変動し)、当該溶湯が凝固して形成された鋳物の表面がほとんど揺動しない(より具体的には、長い変動周期で小さく変動する)ことから、揺動の有無に基づいて凝固界面を決定することができることを見い出した。しかしながら、凝固界面の位置が低い場合、引上げられた溶湯の揺動が小さくなって当該揺動を検出しづらくなるため、揺動の有無に基づいて凝固界面を決定することが困難になる。その結果、凝固界面の位置が低い場合、凝固界面を適切な基準範囲内に制御することができないという問題があった。
本発明は、上記を鑑みなされたものであって、凝固界面が低い場合にも凝固界面を適切な基準範囲内に制御することができ、鋳物の寸法精度や表面品質に優れる引上式連続鋳造装置及び引上式連続鋳造方法を提供することを目的とする。
本発明の一態様に係る引上式連続鋳造装置は、
溶湯を保持する保持炉と、
前記保持炉に保持された前記溶湯の湯面上に設置され、かつ、前記溶湯が通過することにより、鋳造する鋳物の断面形状を規定する形状規定部材と、を備えた引上式連続鋳造装置であって、
前記形状規定部材の上面には、模様が付与されており、
前記形状規定部材を通過した前記溶湯、及び、前記溶湯が凝固して形成された前記鋳物、のそれぞれに反射して映る前記模様の画像を撮影する撮像部と、
前記画像から凝固界面を決定する画像解析部と、
前記画像解析部によって決定された前記凝固界面が所定の基準範囲内にない場合、鋳造条件を変更する鋳造制御部と、を備えるものである。
本発明の一態様に係る引上式連続鋳造装置では、形状規定部材の上面に付された模様が、形状規定部材を通過した溶湯に反射して映るため、溶湯がわずかに揺動しただけで溶湯表面の輝度が大きく変化する。そのため、凝固界面が低くて溶湯の揺動が小さい場合でも、凝固界面を決定することができる。その結果、凝固界面が低い場合にも凝固界面を適切な基準範囲内に制御することができる。
本発明の一態様に係る引上式連続鋳造方法は、
保持炉に保持された溶湯の湯面上に、鋳造する鋳物の断面形状を規定する形状規定部材を設置するステップと、
前記形状規定部材を通過させながら前記溶湯を引き上げるステップと、を備えた引上式連続鋳造方法であって、
前記形状規定部材の上面には、模様が付与されており、
前記形状規定部材を通過した前記溶湯、及び、前記溶湯が凝固して形成された前記鋳物、のそれぞれに反射して映る前記模様の画像を撮影するステップと、
前記画像から凝固界面を決定するステップと、
決定された前記凝固界面が所定の基準範囲内にない場合、鋳造条件を変更するステップと、を備えるものである。
本発明の一態様に係る引上式連続鋳造方法は、形状規定部材の上面に付された模様を、形状規定部材を通過した溶湯に反射させて映すため、溶湯がわずかに揺動しただけで溶湯表面の輝度が大きく変化する。そのため、凝固界面が低くて溶湯の揺動が小さい場合でも、凝固界面を決定することができる。その結果、凝固界面が低い場合にも凝固界面を適切な基準範囲内に制御することができる。
本発明により、凝固界面が低い場合にも凝固界面を適切な基準範囲内に制御することができ、鋳物の寸法精度や表面品質に優れる引上式連続鋳造装置及び引上式連続鋳造方法を提供することができる。
実施の形態1に係る自由鋳造装置の模式的断面図である。 実施の形態1に係る形状規定部材102の平面図である。 実施の形態1に係る自由鋳造装置が備える凝固界面制御システムのブロック図である。 凝固界面近傍の3つの画像例である。 実施の形態1に係る凝固界面制御方法について説明するためのフローチャートである。 実施の形態1に係る形状規定部材102の変形例を示す平面図である。 実施の形態1に係る形状規定部材102の変形例を示す平面図である。 実施の形態1に係る形状規定部材102の変形例を示す側面図である。 実験に用いられた形状規定部材102を示す画像である。 形状規定部材102の上面に模様Pが付されていない場合、及び、模様Pが付された場合、のそれぞれの凝固界面近傍の画像例である。 実験方法を説明するための図である。 凝固界面の位置と界面検知率との関係を示す図である。 実施の形態2に係る形状規定部材202の平面図である。 実施の形態2に係る形状規定部材202の側面図である。 実施の形態2に係る凝固界面制御方法について説明するためのフローチャートである。
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、本発明が以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
<実施の形態1>
まず、図1を参照して、実施の形態1に係る自由鋳造装置(引上式連続鋳造装置)について説明する。図1は、実施の形態1に係る自由鋳造装置の模式的断面図である。図1に示すように、実施の形態1に係る自由鋳造装置は、溶湯保持炉101、形状規定部材102、支持ロッド104、アクチュエータ105、冷却ガスノズル106、冷却ガス供給部107、引上機108、及び、撮像部(カメラ)109を備えている。
なお、図1には、構成要素の位置関係を説明するために便宜的に右手系xyz座標が示されている。図1におけるxy平面は水平面を構成し、z軸方向が鉛直方向である。より具体的には、z軸のプラス方向が鉛直上向きとなる。
溶湯保持炉101は、例えばアルミニウムやその合金などの溶湯M1を収容し、溶湯M1が流動性を有する所定の温度に保持する。図1の例では、鋳造中に溶湯保持炉101へ溶湯を補充しないため、鋳造の進行とともに溶湯M1の表面(つまり湯面)は低下する。他方、鋳造中に溶湯保持炉101へ溶湯を随時補充し、湯面を一定に保持するような構成としてもよい。ここで、溶湯保持炉101の設定温度を上げると凝固界面SIFの位置を上げることができ、溶湯保持炉101の設定温度を下げると凝固界面SIFの位置を下げることができる。なお、当然のことながら、溶湯M1は他のアルミニウム以外の金属や合金であってもよい。
形状規定部材102は、例えばセラミックスやステンレスなどからなり、溶湯M1上に配置されている。形状規定部材102は、鋳造する鋳物M3の断面形状を規定する。図1に示した鋳物M3は、水平方向の断面(以下、横断面と称す)の形状が矩形状の中実鋳物(板材)である。なお、当然のことながら、鋳物M3の断面形状は特に限定されない。鋳物M3は、丸パイプや角パイプなどの中空鋳物でもよい。
図1の例では、形状規定部材102の下側の主面(下面)が湯面に接触するように配置されている。そのため、溶湯M1の表面に形成される酸化膜や溶湯M1の表面に浮遊する異物の鋳物M3への混入を防止することができる。
一方、形状規定部材102の下面を湯面から所定の距離だけ離間して配置してもよい。形状規定部材102を湯面から離間して配置した場合、形状規定部材102の熱変形や溶損が抑制され、形状規定部材102の耐久性が向上する。
図2は、実施の形態1に係る形状規定部材102の平面図である。ここで、図1の形状規定部材102の断面図は、図2のI−I断面図に相当する。図2に示すように、形状規定部材102は、例えば矩形状の平面形状を有し、中央部に溶湯が通過するための厚さt1×幅w1の矩形状の開口部(溶湯通過部103)を有している。なお、図2におけるxyz座標は、図1と一致している。
さらに、形状規定部材102の上面(上側の表面)には、模様Pが付与されている。具体的には、形状規定部材102の上面には、複数の色(ここでは黒色及び白色)により構成された縞状の模様Pが付与されている。なお、模様Pは、各色が画像解析部110により識別できる程度の細かさ(密度)となるように、付与されることが好ましい。模様Pは、例えば、耐熱性を有するインクを形状規定部材102の上面に塗布することで付与される。模様Pの具体的効果については、後述する。
図1に示すように、溶湯M1は、浸漬されたスタータSTと結合した後、その表面膜や表面張力により外形を維持したままスタータSTに追従して引き上げられ、形状規定部材102の溶湯通過部103を通過する。溶湯M1が形状規定部材102の溶湯通過部103を通過することにより、溶湯M1に対し形状規定部材102から外力が印加され、鋳物M3の断面形状が規定される。ここで、溶湯M1の表面膜や表面張力によってスタータST(又は、スタータSTに追従して引き上げられた溶湯M1が凝固して形成された鋳物M3)に追従して湯面から引き上げられた溶湯を保持溶湯M2と呼ぶ。また、鋳物M3と保持溶湯M2との境界が凝固界面SIFである。
支持ロッド104は、形状規定部材102を支持する。
アクチュエータ105には、支持ロッド104が連結されている。アクチュエータ105によって、支持ロッド104を介して形状規定部材102が上下方向(鉛直方向;z軸方向)に移動可能となっている。このような構成により、鋳造の進行による湯面の低下とともに、形状規定部材102を下方向に移動させることができる。
冷却ガスノズル(冷却部)106は、冷却ガス供給部107から供給される冷却ガス(例えば空気、窒素、アルゴンなど)を鋳物M3に吹き付け、冷却する冷却手段である。冷却ガスの流量を増やすと凝固界面SIFの位置を下げることができ、冷却ガスの流量を減らすと凝固界面SIFの位置を上げることができる。なお、冷却ガスノズル106も、上下方向(鉛直方向;z軸方向)及び水平方向(x軸方向及びy軸方向)に移動可能となっている。そのため、例えば、鋳造の進行による湯面の低下とともに、形状規定部材102の移動に合わせて、下方向に移動することができる。あるいは、引上機108の水平方向の移動に合わせて、水平方向に移動することができる。
スタータSTに連結された引上機108により鋳物M3を引き上げつつ、冷却ガスによりスタータSTや鋳物M3を冷却することにより、凝固界面SIF近傍の保持溶湯M2が上側(z軸方向プラス側)から下側(z軸方向マイナス側)へ順次凝固し、鋳物M3が形成されていく。引上機108による引上速度を速くすると凝固界面SIFの位置を上げることができ、引上速度を遅くすると凝固界面SIFの位置を下げることができる。また、引上機108を水平方向(x軸方向やy軸方向)に移動させながら引き上げることにより、保持溶湯M2を斜め方向に導出することができる。そのため、鋳物M3の長手方向の形状を自由に変化させることができる。なお、引上機108を水平方向に移動させる代わりに、形状規定部材102を水平方向に移動させることにより、鋳物M3の長手方向の形状を自由に変化させてもよい。
撮像部109は、鋳造している間、鋳物M3と保持溶湯M2との境界である凝固界面SIF近傍を継続的に監視する。ここで、撮像部109は、保持溶湯M2及び鋳物M3のそれぞれの表面(より好ましくは、画像解析に用いられる全範囲)に反射して映る模様Pを捉えられるような位置及び角度に配置される。また、これを満たすような位置及び範囲に模様Pが付与される。それにより、撮像部109は、保持溶湯M2及び鋳物M3のそれぞれの表面だけでなく、それぞれの表面に反射して映る模様Pの画像を連続的に撮影する。図1の例では、撮像部109は、凝固界面SIFよりも上方から当該凝固界面SIFを斜め下向きに見下ろすようにして配置されている。なお、撮像部109は、凝固界面SIFの位置が変化することが予めわかっている場合には、その変化に応じて移動する構成であってもよい。詳細については後述するように、撮像部109によって撮影された画像から凝固界面SIFを決定することができる。
次に、図3を参照して、実施の形態1に係る自由鋳造装置が備える凝固界面制御システムについて説明する。図3は、実施の形態1に係る自由鋳造装置が備える凝固界面制御システムのブロック図である。当該凝固界面制御システムは、凝固界面SIFの位置(高さ)を所定の基準範囲内に保持するためのものである。
図3に示すように、この凝固界面制御システムは、撮像部109、画像解析部110、鋳造制御部111、引上機108、溶湯保持炉101、冷却ガス供給部107を備えている。ここで、撮像部109、引上機108、溶湯保持炉101、冷却ガス供給部107については、図1を参照して説明したため、詳細な説明については省略する。
画像解析部110は、撮像部109によって撮影された画像から凝固界面を決定する。具体的には、画像解析部110は、連続的に撮影された複数の画像を比較して、反射光の輝度値が短い変動周期で大きく変化する箇所を、保持溶湯M2の表面の揺動として検出する。他方、反射光の輝度値が長い変動周期で小さく変化する箇所、つまり、揺動がほとんど生じない箇所を、鋳物M3の表面と判定する。それにより、画像解析部110は、搖動の有無(より詳細には、揺動の変動周期及び変動幅)に基づいて、凝固界面を決定することができる。
ここで、上記したように、形状規定部材102の上面には模様Pが付されている。この模様Pが保持溶湯M2に反射して映るため、保持溶湯M2がわずかに揺動しただけでその表面の輝度が大きく変化する。そのため、凝固界面が低くて溶湯の揺動が小さい場合でも、凝固界面を決定することができる。
図4を参照して、より具体的に説明する。図4は、凝固界面近傍の3つの画像例である。図4の上から順に、凝固界面の位置が上限を超えた場合の画像例、凝固界面の位置が基準範囲内の場合の画像例、凝固界面の位置が下限未満の場合の画像例を示している。図4中央の画像例に示すように、画像解析部110は、例えば、撮像部109によって撮影された画像において、搖動が検出された領域(すなわち溶湯)と、揺動が小さくて検出されない領域(すなわち鋳物)と、の境界部を凝固界面と決定する。
鋳造制御部111は、凝固界面位置の基準範囲(上限及び下限)を記憶する記憶部(不図示)を備えている。そして、画像解析部110が決定した凝固界面が上限を超えている場合、鋳造制御部111は、引上機108の引上速度を遅くするか、溶湯保持炉101の設定温度を下げるか、冷却ガス供給部107から供給される冷却ガスの流量を増やす。一方、画像解析部110が決定した凝固界面が下限未満である場合、鋳造制御部111は、引上機108の引上速度を速くするか、溶湯保持炉101の設定温度を上げるか、冷却ガス供給部107から供給される冷却ガスの流量を減らす。これら3つの条件の制御は、2つ以上の条件を同時に変更してもよいが、1つの条件のみを変更する方が、制御が容易となり好ましい。また、3つの条件の優先順位を予め定めておき、優先順位の高いものから順に変更してもよい。
図4を参照して、凝固界面位置の上限及び下限について説明する。図4上の画像例に示すように、凝固界面の位置が上限を超えた場合、保持溶湯M2に「くびれ」が発生し、「ちぎれ」に発展する。凝固界面位置の上限は、凝固界面の高さを変化させ、保持溶湯M2に「くびれ」が発生するか否かを事前に調査することにより決定することができる。
一方、図4下の画像例に示すように、凝固界面の位置が下限未満の場合、鋳物M3の表面に凹凸が発生し、形状不良となる。凝固界面位置の下限は、凝固界面の高さを変化させ、鋳物M3の表面に凹凸が発生するか否かを事前に調査することにより決定することができる。なお、この凹凸は凝固界面が低過ぎるために形状規定部材102の内部で形成された凝固片であると考えられる。
このように、実施の形態1に係る自由鋳造装置は、形状規定部材102の上面に模様Pが付与されており、凝固界面近傍に反射して映る模様Pの画像を撮影する撮像部と、その画像から凝固界面を決定する画像解析部と、を備える。この模様Pが保持溶湯M2に反射して映るため、保持溶湯M2がわずかに揺動しただけでその表面の輝度が大きく変化する。そのため、凝固界面が低くて溶湯の揺動が小さい場合でも、凝固界面を決定することができる。その結果、凝固界面が低い場合でも、凝固界面を所定の基準範囲内に維持するためのフィードバック制御を行うことができ、鋳物の寸法精度、表面品質を向上させることができる。
続いて、図1を参照して、実施の形態1に係る自由鋳造方法について説明する。
まず、引上機108によりスタータSTを降下させ、形状規定部材102の溶湯通過部103を通して、スタータSTの先端部を溶湯M1に浸漬させる。
次に、所定の速度でスタータSTの引き上げを開始する。ここで、スタータSTが湯面から離間しても、溶湯M1は、表面膜や表面張力によってスタータSTに追従して湯面から引き上げられ(導出され)保持溶湯M2を形成する。図1に示すように、保持溶湯M2は、形状規定部材102の溶湯通過部103に形成される。つまり、形状規定部材102により、保持溶湯M2に形状が付与される。
次に、スタータST(又は、保持溶湯M2が凝固して形成された鋳物M3)は、冷却ガスノズル106から吹き出される冷却ガスにより冷却される。それにより、保持溶湯M2が間接的に冷却されて上側から下側に向かって順に凝固し、鋳物M3が成長していく。このようにして、鋳物M3を連続鋳造することができる。
実施の形態1に係る自由鋳造方法では、凝固界面を所定の基準範囲に保持するように制御している。以下に、図5を参照して、凝固界面制御方法について説明する。図5は、実施の形態1に係る凝固界面制御方法について説明するためのフローチャートである。
まず、撮像部109により、凝固界面近傍の画像を撮影する(ステップST1)。
次に、画像解析部110は、撮像部109によって撮影された画像を解析する(ステップST2)。具体的には、連続的に撮影された複数の画像を比較することにより、反射光の輝度値が短い変動周期で大きく変化する箇所を、保持溶湯M2の表面の揺動として検出し、揺動がほとんど生じない箇所を、鋳物M3の表面と判定する。そして、画像解析部110は、撮像部109によって撮影された画像において、搖動が検出された領域と、揺動が小さくて検出されない領域と、の境界部を凝固界面と決定する。
ここで、形状規定部材102の上面には模様Pが付されている。この模様Pが保持溶湯M2に反射して映るため、保持溶湯M2がわずかに揺動しただけでその表面の輝度が大きく変化する。そのため、凝固界面が低くて溶湯の揺動が小さい場合でも、凝固界面を決定することができる。
次に、鋳造制御部111は、画像解析部110が決定した凝固界面の位置が基準範囲内にあるか否かを判定する(ステップST3)。凝固界面の位置が基準範囲内にない場合(ステップST3NO)、鋳造制御部111は、冷却ガス流量、鋳造速度、保持炉設定温度のうちのいずれかの条件を変更する(ステップST4)。その後、鋳造制御部111は、鋳造が完了したか否かを判断する(ステップST5)
具体的にステップST4では、画像解析部110が決定した凝固界面が上限を超えている場合、鋳造制御部111は、引上機108の引上速度を遅くするか、溶湯保持炉101の設定温度を下げるか、冷却ガス供給部107から供給される冷却ガスの流量を増やす。一方、画像解析部110が決定した凝固界面が下限未満である場合、鋳造制御部111は、引上機108の引上速度を速くするか、溶湯保持炉101の設定温度を上げるか、冷却ガス供給部107から供給される冷却ガスの流量を減らす。
凝固界面の位置が基準範囲内にある場合(ステップST3YES)、鋳造条件を変更することなく、そのままステップST5へ進む。
鋳造が完了していなければ(ステップST5NO)、ステップST1に戻る。一方、鋳造が完了していれば(ステップST5YES)、凝固界面の制御を終了する。
このように、実施の形態1に係る自由鋳造方法では、形状規定部材102の上面に模様Pが付与されおり、凝固界面近傍に反射して映る模様Pの画像を撮影し、その画像から凝固界面を決定する。この模様Pが保持溶湯M2に反射して映るため、保持溶湯M2がわずかに揺動しただけでその表面の輝度が大きく変化する。そのため、凝固界面が低くて溶湯の揺動が小さい場合でも、凝固界面を決定することができる。その結果、凝固界面が低い場合でも、凝固界面を所定の基準範囲内に維持するためのフィードバック制御を行うことができ、鋳物の寸法精度、表面品質を向上させることができる。
本実施の形態では、模様Pが黒色及び白色により構成された場合について説明したがこれに限られない。模様Pは、2色以上の任意の色により構成されることができる。また、本実施の形態では、模様Pが縞状に構成された場合を例に説明したがこれに限られない。模様Pは、任意の形状の模様であって良く、例えば、図6に示すようにメッシュ状に構成されてもよい。
あるいは、図7の平面図及び図8の側面図に示すように、形状規定部材102の上面に凹凸形状を付与することで模様Pが構成されてもよい。それにより、形状規定部材102の上面に異なる輝度を分布させることができるため、複数の色により模様Pが構成された場合と同様に、保持溶湯M2がわずかに揺動しただけでその表面の輝度を大きく変化させることができる。そのため、凝固界面が低くて溶湯の揺動が小さい場合でも、凝固界面を決定することができる。
(実験結果)
続いて、発明者らが、凝固界面の高さを変えて界面検知率を測定したので、その実験結果について説明する。ここで、界面検知率とは、撮像部109による撮影時間に対して、画像解析部110が凝固界面を検出できた時間、の割合である。
本実験では、形状規定部材102の上面に模様Pが付されていない場合、及び、図9に示すようなメッシュ状の模様Pが付された場合、のそれぞれについて界面検知率の測定が行われた。図10は、形状規定部材102の上面に模様Pが付されていない場合、及び、模様Pが付された場合、のそれぞれの凝固界面近傍の画像例である。図10に示すように、模様Pが付された場合、当該模様Pが保持溶湯M2に反射して映っているのがわかる。
図11は、実験方法を説明するための図である。図11におけるxyz座標は、図1と一致している。本実験では、図11に示すように、撮像部109が、x軸方向プラス側からマイナス側を撮影するように設置されている。
まず、時刻t1〜t2では、溶湯M1を鉛直上方向(z軸方向プラス側)に引き上げる。次に、時刻t2〜t3では、溶湯M1を鉛直上方向に対してx軸方向プラス側に傾けて引き上げる。このとき、撮像部109により撮影される側の凝固界面は、時刻t1〜t2での凝固界面よりも低くなる。最後に、時刻t3〜t4では、溶湯M1を鉛直上方向に対してx軸方向マイナス側に傾けて引き上げる。このとき、撮像部109により撮影される側の凝固界面は、時刻t1〜t2での凝固界面より高くなる。
図12は、凝固界面の位置と界面検知率との関係を示す図(実験結果)である。
図12に示すように、模様P無しで界面位置が中程度又は低い場合、界面検知率は30%又は0%と非常に低い。これは、模様P無しで界面位置が比較的低い場合、凝固界面を特定することが困難ということである。それに対し、模様P有りの場合、界面位置に関わらず(即ち、界面位置が低くても)、界面検知率は約100%である。これは、模様P有りの場合、界面位置に関わらず、凝固界面を特定することができるということである。
<実施の形態2>
次に、図13及び図14を参照して、実施の形態2に係る自由鋳造装置について説明する。図13は、実施の形態2に係る形状規定部材202の平面図である。図14は、実施の形態2に係る形状規定部材202の側面図である。なお、図13及び図14におけるxyz座標も、図1と一致している。
図2に示された実施の形態1に係る形状規定部材102は、1枚の板から構成されていたため、溶湯通過部103の厚さt1、幅w1は固定されていた。これに対し、実施の形態2に係る形状規定部材202は、図13に示すように、4枚の矩形状の形状規定板202a、202b、202c、202dを備えている。すなわち、実施の形態2に係る形状規定部材202は、複数に分割されている。このような構成により、溶湯通過部203の厚さt1、幅w1を変化させることができる。また、4枚の矩形状の形状規定板202a、202b、202c、202dは、同調してz軸方向に移動することができる。
さらに、形状規定部材202の上面には、形状規定部材102と同様に、模様Pが付与されている。
図13に示すように、形状規定板202a、202bは、y軸方向に並んで対向配置されている。また、図14に示すように、形状規定板202a、202bは、z軸方向には同じ高さで配置されている。形状規定板202a、202bの間隔が、溶湯通過部203の幅w1を規定している。そして、形状規定板202a、202bが、独立してy軸方向に移動可能であるため、幅w1を変化させることができる。なお、溶湯通過部203の幅w1を測定するために、図13及び図14に示すように、形状規定板202a上にレーザ変位計S1、形状規定板202b上にレーザ反射板S2を設けてもよい。
また、図13に示すように、形状規定板202c、202dは、x軸方向に並んで対向配置されている。また、形状規定板202c、202dは、z軸方向には同じ高さで配置されている。形状規定板202c、202dの間隔が、溶湯通過部203の厚さt1を規定している。そして、形状規定板202c、202dが、独立してx軸方向に移動可能であるため、厚さt1を変化させることができる。
形状規定板202a、202bは、形状規定板202c、202dの上側に接触するように配置されている。
次に、図13及び図14を参照して、形状規定板202aの駆動機構について説明する。図13及び図14に示すように、形状規定板202aの駆動機構は、スライドテーブルT1、T2、リニアガイドG11、G12、G21、G22、アクチュエータA1、A2、ロッドR1、R2を備えている。なお、形状規定板202b、202c、202dも形状規定板202aと同様に駆動機構を備えているが、図13及び図14では省略されている。
図13及び図14に示すように、形状規定板202aは、y軸方向にスライド可能なスライドテーブルT1に載置、固定されている。スライドテーブルT1は、y軸方向に平行して延設された1対のリニアガイドG11、G12上に、摺動自在に載置されている。また、スライドテーブルT1は、アクチュエータA1からy軸方向に延設されたロッドR1に連結されている。以上のような構成により、形状規定板202aは、y軸方向にスライドすることができる。
また、図13及び図14に示すように、リニアガイドG11、G12、及びアクチュエータA1は、z軸方向にスライド可能なスライドテーブルT2上に載置、固定されている。スライドテーブルT2は、z軸方向に平行して延設された1対のリニアガイドG21、G22上に、摺動自在に載置されている。また、スライドテーブルT2は、アクチュエータA2からz軸方向に延設されたロッドR2に連結されている。リニアガイドG21、G22、及びアクチュエータA2は、水平な床面や台座(不図示)などに固定されている。以上のような構成により、形状規定板202aは、z軸方向にスライドすることができる。なお、アクチュエータA1、A2として、油圧シリンダ、エアシリンダ、モータなどを挙げることができる。
次に、図15を参照して、実施の形態2に係る凝固界面制御方法について説明する。図15は、実施の形態2に係る凝固界面制御方法について説明するためのフローチャートである。図15において、ステップST4までは、図5に示した実施の形態1と同様であるため、詳細な説明は省略する。
凝固界面の位置が基準範囲内にある場合(ステップST3YES)、鋳造制御部111は、画像解析部110が決定した凝固界面での寸法(厚さt、幅w)が、鋳物M3の寸法公差内にあるか否かを判定する(ステップST11)。ここで、凝固界面での寸法(厚さt、幅w)は、画像解析部110が凝固界面を決定する際に同時に得られる。画像から得られた寸法が寸法公差内にない場合(ステップST11NO)、溶湯通過部103の厚さt1、幅w1を変更する(ステップST12)。その後、鋳造制御部111は、鋳造が完了したか否かを判断する(ステップST5)。
寸法が寸法公差内にある場合(ステップST11YES)、溶湯通過部103の厚さt1、幅w1を変更することなく、そのままステップST5へ進む。
鋳造が完了していなければ(ステップST5NO)、ステップST1に戻る。一方、鋳造が完了していれば(ステップST5YES)、凝固界面の制御を終了する。
その他の構成は、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
このように、実施の形態2に係る自由鋳造方法では、実施の形態1と同様に、形状規定部材202の上面に模様Pが付与されおり、凝固界面近傍に反射して映る模様Pの画像を撮影し、その画像から凝固界面を決定する。この模様Pが保持溶湯M2に反射して映るため、保持溶湯M2がわずかに揺動しただけでその表面の輝度が大きく変化する。そのため、凝固界面が低くて溶湯の揺動が小さい場合でも、凝固界面を決定することができる。その結果、凝固界面が低い場合でも、凝固界面を所定の基準範囲内に維持するためのフィードバック制御を行うことができ、鋳物の寸法精度、表面品質を向上させることができる。
さらに、実施の形態2に係る自由鋳造方法では、形状規定部材202の溶湯通過部203の厚さt1、幅w1を変更することができる。そのため、画像から凝固界面を決定する際、当該凝固界面における厚さt、幅wを測定し、この測定値が寸法公差内でなければ、溶湯通過部203の厚さt1、幅w1を変更する。すなわち、鋳物の寸法を寸法公差内に維持するためのフィードバック制御を行うことができる。そのため、鋳物の寸法精度をより向上させることができる。
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
101 溶湯保持炉
102、202 形状規定部材
103、203 溶湯通過部
104 支持ロッド
105 アクチュエータ
106 冷却ガスノズル
107 冷却ガス供給部
108 引上機
109 撮像部
110 画像解析部
111 鋳造制御部
202a〜202d 形状規定板
A1、A2 アクチュエータ
G11、G12、G21、G22 リニアガイド
M1 溶湯
M2 保持溶湯
M3 鋳物
P 模様
R1、R2 ロッド
S1 レーザ変位計
S2 レーザ反射板
SIF 凝固界面
ST スタータ
T1、T2 スライドテーブル

Claims (8)

  1. 溶湯を保持する保持炉と、
    前記保持炉に保持された前記溶湯の湯面上に設置され、かつ、前記溶湯が通過することにより、鋳造する鋳物の断面形状を規定する形状規定部材と、を備えた引上式連続鋳造装置であって、
    前記形状規定部材の上面には、模様が付与されており、
    前記形状規定部材を通過した前記溶湯、及び、前記溶湯が凝固して形成された前記鋳物、のそれぞれに反射して映る前記模様の画像を撮影する撮像部と、
    前記画像から凝固界面を決定する画像解析部と、
    前記画像解析部によって決定された前記凝固界面が所定の基準範囲内にない場合、鋳造条件を変更する鋳造制御部と、を備えた引上式連続鋳造装置。
  2. 前記撮像部が前記溶湯及び前記鋳物のそれぞれに反射して映る前記模様を捉えられるような位置に、前記撮像部及び前記模様が配置及び付与される、請求項1に記載の引上式連続鋳造装置。
  3. 前記模様は、複数の色により構成されている、請求項1又は2に記載の引上式連続鋳造装置。
  4. 前記模様は、前記形状規定部材の上面に付与された凹凸形状により構成される、請求項1〜3の何れか一項に記載の引上式連続鋳造装置。
  5. 前記模様は、縞状又はメッシュ状に構成されている、請求項1〜4の何れか一項に記載の引上式連続鋳造装置。
  6. 前記鋳造条件は、
    前記形状規定部材を通過した前記溶湯を冷却するための冷却ガスの流量、
    前記鋳物の引上速度、
    前記保持炉の設定温度、のいずれかである、請求項1〜5の何れか一項に記載の引上式連続鋳造装置。
  7. 前記形状規定部材は、複数に分割され、前記断面形状を変更可能であり、
    前記画像解析部は、前記画像から前記鋳物の寸法を検出し、
    前記鋳造制御部は、前記寸法が寸法公差内にない場合、前記形状規定部材が規定する前記断面形状を変更する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の引上式連続鋳造装置。
  8. 保持炉に保持された溶湯の湯面上に、鋳造する鋳物の断面形状を規定する形状規定部材を設置するステップと、
    前記形状規定部材を通過させながら前記溶湯を引き上げるステップと、を備えた引上式連続鋳造方法であって、
    前記形状規定部材の上面には、模様が付与されており、
    前記形状規定部材を通過した前記溶湯、及び、前記溶湯が凝固して形成された前記鋳物、のそれぞれに反射して映る前記模様の画像を撮影するステップと、
    前記画像から凝固界面を決定するステップと、
    決定された前記凝固界面が所定の基準範囲内にない場合、鋳造条件を変更するステップと、を備えた引上式連続鋳造方法。
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