本発明に係る積層フィルム製造装置は、霧化成膜装置を備えている。そして、当該積層フィルム製造装置では、複数のフィルム(シート)をロール等から引き出し、引き出された少なくとも一つのフィルム(シート)に対して霧化成膜装置を用いて所望の膜を成膜し、他の引き出されたフィルム(シート)と当該所望の膜が成膜されたフィルム(シート)とを貼り合わせ、積層フィルムを製造する。
つまり、本発明では、積層フィルム製造装置を利用することにより、積層フィルム作成工程内において、所望の膜の成膜および当該所望の膜を含む積層フィルムの作成(各フィルム(シート)の積層・接合)が実施される。
以下の実施の形態では、本発明に係る積層フィルム製造装置を用いて、図1を用いて説明したように、熱や圧力に対する耐久性を有する樹脂フィルム(保護フィルム)と機能膜とから成る積層フィルムを製造する場合を例にとり説明する。より具体的には、以下では、太陽電池バックシートとして使用される積層フィルムを製造する場合を例にとり説明する。ほとんどの実施の形態では、バリアフィルムを有する積層フィルムを例にとり、本発明を説明しているが、本発明は、透明導電膜などバリアフィルム以外の種々の膜を有する積層フィルムの製造についても適用できる(実施の形態5について、透明導電膜を有する積層フィルムの製造に関して説明している)。
以下、この発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
<実施の形態1>
図2は、本実施の形態に係る積層フィルム製造装置100の構成を示す図である。
図2に示すように、積層フィルム製造装置100は、複数のロール1〜4と、複数の接着剤塗布装置S1,S2と、複数のローラR1〜R3と、霧化成膜装置8とを備えている。
なお、図2に示すように、ロール1とローラR1との間に、接着剤塗布装置S1が配設されており、ロール2とローラR1との間に、霧化成膜装置8が配設されており、ローラR1とローラR2との間に、接着剤塗布装置S2が配設されている。
また、ロール1から引き出された樹脂フィルム1Aは、ローラR1、ローラR2、ローラ3の順に経由して、ロール4へと向かい、ロール2から引き出された樹脂フィルム2Aは、ローラR1、ローラR2、ローラ3の順に経由して、ロール4へと向かい、ロール3から引き出された樹脂フィルム3Aは、ローラR2、ローラ3の順に経由して、ロール4へと向かう。
ロール(第二のシート収容部と把握できる)1には、樹脂フィルム(第二のシートと把握できる)1Aが巻回されている。ロール(第一のシート収容部と把握できる)2には、樹脂フィルム(第一のシートと把握できる)2Aが巻回されている。ロール(第二のシート収容部と把握できる)3には、樹脂フィルム(第二のシートと把握できる)3Aが巻回されている。
各樹脂フィルム1A,2A,3Aは、熱や圧力に対する耐久性を有する。特に、製造された積層フィルムを食品や電子デバイスの封止材・包装材として用いるとき、封止側となる樹脂フィルム3Aよりも封止側と対面する最外層側となる樹脂フィルム1A方が、熱や温度に対するより高い耐久性を有する。
たとえば、樹脂フィルム1Aとして、高耐久PETなどが採用され、樹脂フィルム2Aとして、耐久PETが採用され、樹脂フィルム3Aとして、耐久PETや耐久EVAなどが採用される。
ここでは、各樹脂フィルム1A,2A,3Aが熱や圧力に対する耐久性を有する場合を例にとり説明する。しかしながら、各樹脂フィルム1A,2A,3Aが、必ずしも、熱や圧力に対する耐久性を有することが必要でない。積層フィルムの製造の製造過程や積層フィルムの用途に応じて、積層フィルムを構成する各フィルムに要求される性能は異なることは言うまでもない。たとえば、霧化成膜装置8により加熱しながら成膜処理を実施する場合には、成膜処理の基体となるフィルム(成膜の下地となるフィルム)は、熱に対する耐久性を有することが望ましい。
なお、上記と異なるが、ロール1に封止側となる樹脂フィルムが巻回され、ロール3に最外層となる樹脂フィルムが巻回されていても当然良い。
接着剤塗布装置S1は、引き出された樹脂フィルム1Aの一方の面に対して、接着剤を塗布する。また、接着剤塗布装置S2は、ローラR1から出力された積層フィルム10Aの一方の面に対して、接着剤を塗布する。
また、ローラR1は、樹脂フィルム1Aと機能膜シート2B(つまり、所望の機能膜が成膜された樹脂フィルム2A)とを貼り合わせる。また、ローラR2は、積層フィルム10A(つまり、所望の機能膜が成膜された樹脂フィルム2Aを含む積層フィルム10A)と樹脂フィルム3Aとを貼り合わせる。
ここで、接着剤塗布装置S1とローラR1とにより、一方のシート接続部が構成される。当該一方のシート接続部では、樹脂フィルム1Aと所望の機能膜が成膜された樹脂フィルム2Aとを積層・接着することにより、積層フィルム10Aを生成する。これに対して、接着剤塗布装置S2とローラR2とにより、他方のシート接続部が構成される。当該他方のシート接続部では、所望の機能膜が成膜された樹脂フィルム2Aを含む積層フィルム10Aと樹脂フィルム3Aとを、積層・接着することにより、積層フィルム10Bを生成する。
霧化成膜装置8は、ロール2から引き出された樹脂フィルム2Aの一の面に対して、ミスト状の溶液を噴出することにより、当該樹脂フィルム2Aの一の面に対して、所望の機能膜を成膜する。ここで、霧化成膜装置8における所望の機能膜の成膜は、大気中にて実施される。当該霧化成膜装置8により所望の機能膜が成膜された樹脂フィルム2A(図2に示す機能膜シート2B)は、ローラR1に対して送り出される。
また、霧化成膜装置8は、成膜される機能膜の種類に応じて、ミスト状の溶液の噴出に加えて、酸化還元材を成膜面に対して供給しても良い。また、成膜時には、成膜される樹脂フィルム2Aを加熱しても良い。
また、機能膜としては、上述したバリアフィルムが一例として考えられる。バリアフィルムは、酸素、水蒸気、紫外線および荷電粒子(イオンを含む)等の少なくとも何れかの透過を抑制・防止し、帯電防止材としても機能することもある。
なお、積層フィルム10Bは、ローラR3により、送り出される方向が変更され、ロール4において順次巻回される。
次に、図2に示した積層フィルム製造装置100を用いた積層フィルム10Bの製造動作について説明する。
ロール1から、最外層となる樹脂フィルム1Aを引き出し、ロール2から、機能膜が成膜される樹脂フィルム2Aを引き出し、ロール3から、封止側となる樹脂フィルム3Aを引き出す。ここで、引き出された樹脂フィルム1Aおよび引き出された樹脂フィルム2Aは、ローラR1側に送り出され、引き出された樹脂フィルム3Aは、ローラR2側に送り出される。
ロール1から引き出し状態となっている樹脂フィルム1Aの一の面に対して、接着剤塗布装置S1において、接着剤が塗布される。そして、接着剤が塗布された樹脂フィルム1Aは、ロール1からの引き出しが継続されながら、ローラR1側に送り出される。
他方、霧化成膜装置8において、ロール2から引き出し状態となっている樹脂フィルム2Aの一の面に対して、大気中におけるミスト溶液の噴出を行う。これにより、ロール2からの引き出しが継続されつつ、樹脂フィルム2Aの一の面に所望の機能膜が成膜される。
太陽電池バックシートとして使用される積層フィルム10Bを製造する場合においては、霧化成膜装置8において、樹脂フィルム2Aの一の主面上には、たとえばSiOx(酸化ケイ素)、AlxOy(酸化アルミニウム)等のバリアフィルムが、機能膜として成膜される。
機能膜が成膜された樹脂フィルム2A(機能膜シート2B)は、樹脂フィルム2Aのロール2からの引き出し状態を維持しながら、霧化成膜装置8からローラR1側に送り出される。
ローラR1では、接着剤が塗布されている樹脂フィルム1Aの面に、機能膜シート2Bが積層され、当該積層状態で圧力が加わり、樹脂フィルム1Aと機能膜シート2Bとが貼り合わせられ、積層フィルム10Aが生成される。
当該積層フィルム10Aは、ロール1からの樹脂フィルム1Aの引き出しの継続を、ロール2からの樹脂フィルム2Aの引き出しの継続を行いつつ、ローラR2側に送り出される。
接着剤塗布装置S2において、積層フィルム10Aの一の面に対して、接着剤が塗布される。そして、接着剤が塗布された積層フィルム10Aは、ローラR2側に送り出される。
ローラR2では、接着剤が塗布されている積層フィルム10Aの面に、樹脂フィルム3Aが積層され、当該積層状態で圧力が加わり、積層フィルム10Aと樹脂フィルム3Aとが貼り合わせられ、積層フィルム10Bが生成される。図3に、製造された積層フィルム10Bの拡大断面構成を示す。
当該積層フィルム10Bは、ロール1からの樹脂フィルム1Aの引き出しの継続を、ロール2からの樹脂フィルム2Aの引き出しの継続を、ロール3から樹脂フィルム3Aの引き出しの継続を行いつつ、ローラR3側に送り出される。
ローラR3において、積層フィルム10Bの送り出し方向を、ロール4配置側に向ける。各ロール1〜3からの各樹脂フィルム1A,2A,3Aの引き出しが行われるに連れて、ロール4では、積層フィルム10Bの巻回が実施される。
なお、図2の構成は、製造された積層フィルム10Bをロール4に収容する形態である(いわゆる、ロール・ツー・ロール工程)。しかし、図4に示すように、製造された積層フィルム10Bを裁断機C1において所定の長さ毎に切断し、図4に示すように、複数の一定形状の積層フィルム10bを製造する形態を採用しても良い。
以上のように、本実施の形態に係る積層フィルム製造装置100は、霧化成膜装置8を備えている。
したがって、積層フィルム作成業者が自前で機能膜を製造することができる。よって、積層フィルム作成業者は、高価な機能膜シートの購入は必要でなくなり、機能膜が形成されていない安価なフィルム(シート)を購入すれば良い。よって、必要機能を有する機能膜を含む積層フィルムを安価に作成することができる。
また、霧化成膜装置8から噴出するミスト状の溶液の原料を変更することにより、成膜する機能膜の種類も容易に変更できる。
また、当該積層フィルム製造装置100では、霧化成膜装置8における成膜処理を実施しながら、成膜されたフィルム(シート)を含む他のフィルム(シート)との積層・接着が実施される、という利点も有する。
ここで、積層フィルム製造装置100では、成膜処理装置は、真空や減圧が必要となるCVD装置等ではなく、大気中での成膜が可能な霧化成膜装置8で実施されている。よって、より安価な成膜装置の導入により、積層フィルム10Bの製造コストをさらに低減できる。
また、当該積層フィルム製造装置100では、大気中での成膜が可能な霧化成膜装置8の導入により、大気圧下における成膜処理→積層処理という連続工程による積層フィルム10Bの製造も可能となる。
<実施の形態2>
実施の形態1では、積層フィルム10Bの製造を行う積層フィルム製造装置100について説明した。ここで、実施の形態1で説明したように、積層フィルム10Bは、最外層側となる樹脂フィルム1Aと封止側となる樹脂フィルム3Aとの間に、機能膜が存在している(図3参照)。
本実施の形態においても、最外層側となる樹脂フィルムと封止側となる樹脂フィルムとの間に機能膜が存在する、積層フィルムを製造する他の積層フィルム製造装置について説明する。
ここで、本実施の形態に係る積層フィルム製造装置で製造された積層フィルム(後述する、積層フィルム10D)の具体的な断面構成は、図3に示した断面構成と異なる。しかしながら、「樹脂フィルム−機能膜−樹脂フィルム」という共通する構成を有するので、本実施の形態で製造される積層フィルム(後述する、積層フィルム10D)の機能・性能と実施の形態1で製造される積層フィルム10Bの機能・性能とは、同等である。
図5は、本実施の形態に係る積層フィルム製造装置200の構成を示す図である。
図5に示すように、積層フィルム製造装置200は、複数のロール1,3,4と、接着剤塗布装置S2と、複数のローラR2,R3と、霧化成膜装置8とを備えている。
図2と図5との比較から分かるように、霧化成膜装置8の設置位置を変更(つまり、ロール1から引き出された樹脂フィルム1Aに対する、所望の機能膜の成膜が可能な構成を採用)することにより、積層フィルム製造装置200では、樹脂フィルム2Aが巻回されたロール2、接着剤塗布装置S1およびローラR1の構成が省略されている。
図5に示すように、ロール1とローラR2との間に、霧化成膜装置8および接着剤塗布装置S2が当該順に配設されている。さらに、ロール1から引き出された樹脂フィルム1Aは、ローラR2、ローラ3の順に経由して、ロール4へと向かい、ロール3から引き出された樹脂フィルム3Aも、ローラR2、ローラ3の順に経由して、ロール4へと向かう。
ロール(第一のシート収容部と把握できる)1には、樹脂フィルム(第一のシートと把握できる)1Aが巻回されている。ロール(第二のシート収容部と把握できる)3には、樹脂フィルム(第二のシートと把握できる)3Aが巻回されている。
実施の形態1で説明したように、各樹脂フィルム1A,3Aは、熱や圧力に対する耐久性を有する。特に、製造された積層フィルムを食品や電子デバイスの封止材・包装材として用いるとき、封止側となる樹脂フィルム3Aよりも封止側と対面する最外層側となる樹脂フィルム1A方が、熱や温度に対するより高い耐久性を有する。
なお、実施の形態1でも述べたように、ロール1に封止側となる樹脂フィルムが巻回され、ロール3に最外層となる樹脂フィルムが巻回されていても当然良い。
接着剤塗布装置S2は、霧化成膜装置8から出力された機能膜シート10Cの一方の面に対して、接着剤を塗布する。また、ローラR2は、所望の機能膜が成膜された樹脂フィルム1A(機能膜シート10C)と樹脂フィルム3Aとを貼り合わせる。
ここで、接着剤塗布装置S2とローラR2とにより、シート接続部が構成される。当該シート接続部では、所望の機能膜が成膜された樹脂フィルム1Aと樹脂フィルム3Aとを積層・接着することにより、積層フィルム10Dを生成する。
本実施の形態では、上記したように、霧化成膜装置8の設置位置が変更されている。よって、本実施の形態に係る霧化成膜装置8では、ロール1から引き出された樹脂フィルム1Aの一の面に対して、ミスト状の溶液を噴出することにより、当該樹脂フィルム1Aの一の面に対して、所望の機能膜を成膜する。ここで、実施の形態1でも説明したように、霧化成膜装置8における所望の機能膜の成膜は、大気中にて実施される。当該霧化成膜装置8により所望の機能膜が成膜された樹脂フィルム1A(図5に示す機能膜シート10C)は、ローラR2に対して送り出される。
また、霧化成膜装置8は、成膜される機能膜の種類に応じて、ミスト状の溶液の噴出に加えて、酸化還元材を成膜面に対して供給しても良い。また、成膜時には、成膜される樹脂フィルム1Aを加熱しても良い。
本実施の形態に係る積層フィルム製造装置200では、霧化成膜装置8は、完成品である積層フィルム10Dにおいて外側に位置し、外部からの熱・圧力に対する耐力を有する樹脂フィルム1Aに直接、機能膜を成膜している。
なお、積層フィルム10Dは、ローラR3により、送り出される方向が変更され、ロール4において順次巻回される。
次に、図5に示した積層フィルム製造装置200を用いた積層フィルム10Dの製造動作について説明する。
ロール1から、最外層となる樹脂フィルム1Aを引き出し、ロール3から、封止側となる樹脂フィルム3Aを引き出す。ここで、引き出された樹脂フィルム1Aおよび引き出された樹脂フィルム2Aは、ローラR2側に送り出される。
霧化成膜装置8において、ロール1から引き出し状態となっている樹脂フィルム1Aの一の面に対して、大気中におけるミスト溶液の噴出を行う。これにより、ロール1からの引き出しが継続されつつ、樹脂フィルム1Aの一の面に所望の機能膜が成膜される。
ここまでの説明から明らかなように、実施の形態1では、機能膜が成膜される樹脂フィルム2Aを用意していた。つまり、実施の形態1では、機能膜成膜のための「基板」となるフィルム(シート)を設けていた。一方、本実施の形態2では、完成品である積層フィルムにおいて、機能膜成膜の基板としての機能以外の他の機能を有するフィルム(シート)に対して、機能膜を成膜している。たとえば、上記例では、樹脂フィルム1Aは、完成品である積層フィルム10Dの最外層として、圧力・温度に対する耐性を有する保護フィルムとしての機能を有するのみならず、機能膜が成膜されるための「基板」としても機能している。
機能膜が成膜された樹脂フィルム1A(積層フィルム10C)は、樹脂フィルム1Aのロール1からの引き出し状態を維持しながら、霧化成膜装置8からローラR2側に送り出される。
接着剤塗布装置S2において、積層フィルム10Cの一の面に対して、接着剤が塗布される。そして、接着剤が塗布された積層フィルム10Cは、ローラR2側に送り出される。
ローラR2では、接着剤が塗布されている積層フィルム10Cの面に、樹脂フィルム3Aが積層され、当該積層状態で圧力が加わり、積層フィルム10Cと樹脂フィルム3Aとが貼り合わせられ、積層フィルム10Dが生成される。図6に、製造された積層フィルム10Dの拡大断面構成を示す。
図3と図6との比較から分かるように、積層フィルム10Dは、実施の形態1で作成された積層フィルム10Bと比較して、機能膜シート2Bの構成要素である樹脂フィルム2Aが省略されている。さらに、積層フィルム10Dでは、機能膜シート2Bと樹脂フィルム1Aとは接着剤で接合されているのに対して、積層フィルム10Dでは、樹脂フィルム1Aに直接、機能膜が成膜されている。
積層フィルム10Bと積層フィルム10Dとの間における上記構成の相違に起因して、積層フィルム10Dは、積層フィルム10Bと比べて、薄膜化が可能となっており、軽重量となっている。また、接着剤や樹脂フィルム2Aの削減により、積層フィルム10Dは、積層フィルム10Bと比べて、コストダウンが可能となる。
さらに、図2と図5との比較から分かるように、本実施の形態2に係る積層フィルム製造装置200の方が、実施の形態1に係る積層フィルム製造装置100よりも、構成が単純化されているので、積層フィルム製造装置200は、積層フィルム製造装置100よりも、製造装置のコスト低下、工程の省略も可能となっている。
さて、上記積層フィルム10Dは、ロール1からの樹脂フィルム1Aの引き出しの継続を、ロール3から樹脂フィルム3Aの引き出しの継続を行いつつ、ローラR3側に送り出される。
ローラR3において、積層フィルム10Dの送り出し方向を、ロール4配置側に向ける。各ロール1,3からの各樹脂フィルム1A,3Aの引き出しが行われるに連れて、ロール4では、積層フィルム10Dの巻回が実施される。
なお、図5の構成は、製造された積層フィルム10Dをロール4に収容する形態である(いわゆる、ロール・ツー・ロール工程)。しかし、実施の形態1において図4を用いて説明したように、製造された積層フィルム10Dを裁断機C1において所定の長さ毎に切断し、複数の一定形状の積層フィルムを製造する形態を採用しても良い。
以上の構成・動作により、本実施の形態に係る積層フィルム製造装置200は、実施の形態1で説明した効果と同様の効果を有する。
さらに、機能膜成膜の「基板」として機能するためだけのためのフィルム(シート)を設けず(つまり、実施の形態1で説明した樹脂フィルム2Aを設けず)、完成品である積層フィルムにおいて前記以外(成膜基板としての機能以外)の機能を有しているフィルム(シート)に直接(上記では、外部からの熱・圧力に対する耐力機能を有する樹脂フィルム1Aに直接)、所望の機能膜を成膜するように、積層フィルム製造装置200では、樹脂フィルム1Aに対する成膜処理が可能なように、霧化成膜装置8の配設場所を設定されている。
このような積層フィルム製造装置200の構成を採用することにより、完成品である積層フィルム10Dにおける、薄膜化、軽重量、コストダウンが可能となる。また、積層フィルム製造装置200のコスト低下も可能であり、当該積層フィルム製造装置200における工程の削減も可能となる。
<実施の形態3>
本実施の形態では、上記積層フィルム製造装置100,200内に配設されている霧化成膜装置8の構成について、説明する。
図7は、本実施の形態に係る霧化成膜装置8の全体構成を示す図である。
図7に示すように、霧化成膜装置8は、噴射用ノズル機能を有する反応容器13、各種容器9,11、各種配管L10,L11,L13、超音波霧化器18および加熱器15を備えている。ここで、図7に示した霧化成膜装置8全体が、大気中に配置されており、反応容器13内も大気圧であり、減圧、真空ではない。
容器11内に、有機金属や錯体等の原料溶液を供給し、容器11内に供給された原料溶液を、超音波噴霧機18によりミスト化する。当該ミスト化された原料溶液は、キャリアガスにより、配管L11経由で反応容器13に送気される。一方、酸化還元材料発生装置機能を有する容器9から、酸化還元材は、配管L10を経由して反応容器13に送気される。
ここで、容器9は酸化還元材料発生装置機能を有する必要はなく、外部からの容器9内に所望の酸化還元材を収容しても良い。また、容器9に超音波噴霧機を設け、容器9内で酸化還元材をミスト化し、ミスト状の酸化還元材を反応容器13に送気しても良い。
反応容器13では、ミスト状の原料溶液と酸化還元材とが反応し、さらに、反応容器13は、噴射用ノズル機能を利用して、原料溶液および酸化還元材を樹脂フィルム1A(または2A)の成膜面に噴出する。
ここで、上記で説明したように、樹脂フィルム1A(または2A)は大気中に配置されており、大気下での成膜処理が実施される。また、図7に示すように、樹脂フィルム1A(または2A)の非成膜面側には、加熱器15が配置されており、成膜処理の際には、加熱器15による樹脂フィルム1A(または2A)の加熱が行われている。
ミスト状の原料溶液と酸化還元材との反応により、加熱状況下にある樹脂フィルム1A(または2A)の成膜面において、反応生成物は、生成・堆積・結晶成長を起こし、当該成膜面に所望の機能膜が成膜される。
ここで、反応容器13内に残留した不要成分(未反応成分)は、配管L13を経由して、外部に排気される。
<実施の形態4>
本実施の形態に係る霧化成膜装置8では、大気中に配置されたフィルム(シート)に対して、酸化膜の原料ミストを噴射することにより、大気中において当該フィルム(シート)上に酸化膜を成膜する。ここで、本実施の形態では、原料ミストは、反応性が高いアルキル化合物を溶媒で溶解させた原料溶液を、超音波霧化器によりミスト化させたものである。つまり、原料ミストは、ミスト状の当該原料溶液であると把握できる。
また、本発明では、気化されたアルキル化合物ガスをフィルム(シート)に対して晒すことにより、当該フィルム(シート)上に酸化膜を成膜するものでなく、前記原料溶液の「ミスト」をフィルム(シート)に対して吹き付けることにより、当該フィルム(シート)上に酸化膜を成膜するものである。
なお、ここでの「ミスト」とは、上記原料溶液を超音波霧化器により霧化したものであり、液滴の粒径が10μm以下のものである。液滴の上限を当該10μmに設定することにより、熱容量を有する液滴による基板の温度低下を防止することができる。
また、気体でなく、上記原料溶液の液状であれば「ミスト」の粒径の下限は、特に限定される必要はない。しかしながら、たとえば一例を挙げるなら、当該「ミスト」の下限は0.1μm程度である。
ミスト法を利用して酸化膜を成膜する場合においては、酸化膜の成膜を確実に成立させ、酸化膜の成膜速度(成膜効率)を向上させ、さらには例えば高い導電性を有する酸化膜を作製するためには、次のことが必要であることを見出した。つまり、発明者らは、噴出されたミスト原料に対して、大気雰囲気中に含まれる酸化剤だけでなく、積極的に酸化剤を供給すること(換言すれば、相対湿度90%程度の大気雰囲気に含まれる水分量(酸化剤と考えられる)では、原料ミストと反応させて酸化膜を成膜するには不十分であること)、当該酸化剤の供給量は調整されたものであることが好ましいことを、見出した。
以下、本実施の形態に係る霧化成膜装置8について、上述した図7の構成を参照して具体的に説明する。
本実施の形態では、容器11には、アルキル化合物を含む原料溶液が収納されている。容器11内において、原料溶液は、超音波霧化器18を用いてミスト状にされる(原料ミストの生成)。
ここで、原料溶液の溶質となるアルキル化合物とは、ジエチル亜鉛、ジメチル亜鉛、ジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、ビスシクロペンタジエニルマグネシウム、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリメチルガリウム、トリエチルガリウム、トリメチルインジウム、トリエチルインジウム、テトラメチルシラン、テトラエチルシラン、トリメチルシラン、トリエチルシラン、ジメチルシラン、およびジエチルシランの何れかである。
また、原料溶液の溶媒としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリフェニルアミン等のアミン系溶媒、および、ジエチルエーテル、ジn−プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、グライム、ジグライム、トリグライム等のエーテル系溶媒などが、採用できる。または、原料溶液の溶媒として、炭化水素やアルコールなども採用できる。
容器11で生成された原料ミストは、キャリアガスに乗って、配管L11に出力される。そして、当該原料ミストは、配管L11を通って、反応容器13へ供給される。ここで、上記キャリアガスとして、窒素や希ガスなどを採用できる。
実施の形態3でも説明したように、噴射用ノズル機能を有する反応容器13を、樹脂フィルム1A(または2A)の成膜面上方に配置させる。噴射用ノズル機能を利用して、反応容器13は、樹脂フィルム1A(または2A)の成膜面に対して、成膜の原料となる原料ミストを噴射する。ここで、噴射の際における樹脂フィルム1A(または2A)の成膜面と噴出口との距離は、たとえば数mm程度である。
一方、本実施の形態では、容器9には、原料溶液に含まれるアルキル化合物に対して酸化作用を有する酸化剤が、収納されている。
ここで、アルキル化合物に対して酸化作用を有する酸化剤としては、水、酸素、過酸化水素、オゾン、一酸化窒素、亜酸化窒素、および二酸化窒素の何れかを、採用することができる。なお、当該酸化剤は、液体であっても気体であっても良い。
容器9内の酸化剤は、配管L10に出力される。そして、当該酸化剤は、配管L10を通って、反応容器13の混合領域へと積極的(つまり、大気雰囲気中に含まれる酸化剤以外に、酸化剤を供給すること)かつスポット的に出力される。つまり、反応容器13において、噴出されている原料ミストに対して、積極的に、酸化剤が混合・供給される。そして、噴射用ノズル機能を利用して、酸化剤は、原料ミストと共に、樹脂フィルム1A(または2A)の成膜面に向かう。
樹脂フィルム1A(または2A)の成膜面近傍では、原料ミストと酸化剤とが酸化作用を起こし、樹脂フィルム1A(または2A)の成膜面において、アルキル化合物の種類に応じて、所定の酸化膜(導電性を有する酸化膜または絶縁性を有する酸化膜)が、機能膜として成膜される。
以上のように、本実施の形態に係る霧化成膜装置8では、大気中において樹脂フィルム1A(または2A)に対して、アルキル化合物を含む原料ミストを噴出させている。さらに、アルキル化合物に対して酸化作用を有する酸化剤を、樹脂フィルム1A(または2A)に対して噴出された原料ミストに対して、積極的にスポット的に供給している。
したがって、本実施の形態に係る霧化成膜装置8では、大気に含まれる水分等以外に、積極的にかつ十分な量の酸化剤を、原料ミストに晒すことができる。よって、ミスト法を利用して酸化膜である機能膜を成膜する場合においては、酸化膜の成膜を確実に成立させ、酸化膜の成膜速度(成膜効率)を向上させ、さらには所望の性能を有する酸化膜を再現性良く安定的に成膜することができる。
また、上記のように、本実施の形態に係る霧化成膜装置8では、大気に含まれる水分等以外に積極的にかつ十分に酸化剤を原料ミストに供給できる。したがって、たとえば温度や湿度の影響により大気に含まれる水分の量が変化したとしても、当該水分の変化の影響をほとんど受けることなく、樹脂フィルム1A(または2A)面に酸化膜を成膜することができる(つまり、大気中において常に、正常に酸化膜の成膜ができる)。
また、本実施の形態においても、超音波霧化器18を用いて、原料溶液から原料ミストを生成している。超音波霧化器18により原料溶液を霧化することにより、ミストの液滴の大きさを小さく設定でき、噴出された原料ミストの基板に至る沈降速度を十分に遅くすることができる。また、ミストの液滴の大きさが小さいので、基板における酸化膜反応が速やかに発生する。なお、原料ミストの噴出速度は、キャリアガスの流量を変更するだけで、調整することができる。
<実施の形態5>
本実施の形態では、霧化成膜装置8において、機能膜として、金属酸化膜(たとえば、透明導電膜である亜鉛酸化膜)を、フィルム(シート)上に機能膜を成膜する。そして、当該機能膜に対して紫外線を照射する。
以下、本実施の形態を、上述した図7および後述する図8を参照して具体的に説明する。ここで、上述したように、本実施の形態に係る霧化成膜装置8においても、大気圧下での成膜処理が実施される。
本実施の形態では、少なくとも亜鉛を含む溶液を作製する。ここで、当該溶液の溶媒として、エーテルやアルコールなどの有機溶媒を採用する。当該作製した溶液は、図7に示した容器11に充填される。
一方、酸化剤として水を採用し、当該酸化剤を図7に示した容器9に充填する。なお、酸化剤としては、水以外に、酸素、オゾン、過酸化水素、N2OやNO2なども採用できる。ここで、金属酸化膜の成膜において、大気中の酸素、水分等を利用し、当該酸化剤を省略しても良いが、実施の形態4で説明したように、積極的酸化剤を供給することが望ましい。
なお、ドーパント含有の金属酸化膜を成膜する場合には、ドーパントの溶解性および反応性に依存して、当該酸化剤である水にドーパントを添加したり、または亜鉛を含む溶液にドーパント添加したりする。また、別の容器(図7に図示せず)を設け、別系統により、フィルム(シート)にドーパントを供給しても良い。
次に、超音波霧化器18を用いて、上記溶液をミスト化する。ここで、酸化剤もミスト化しても良い。そして、ミスト化された溶液は配管L11を通って噴射用ノズル機能を有する反応容器13に供給され、酸化剤は配管L10を通って当該反応容器13に供給される。
一方、図7に示すように、樹脂フィルム1A(または2A)は、加熱器15により加熱されており、大気圧下に配置されている。当該樹脂フィルム1A(または2A)に対して、反応容器13は、噴射用ノズル機能を利用して、ミスト化した溶液および酸化剤を夫々噴出する。
以上により、霧化成膜装置8において、大気圧下に載置されている樹脂フィルム1A(または2A)に対して、機能膜として、所定の膜厚の金属酸化膜(透明導電膜である亜鉛酸化膜)が成膜される。
ところで、大気圧下において成膜された金属酸化膜は、スパッタ法などの真空下において成膜された金属酸化膜よりも、抵抗が高くなる。
ここで、大気圧下において成膜された金属酸化膜に対して、紫外線を照射すると、当該金属酸化膜の抵抗が低下することを見出した。さらに、当該金属酸化膜の加熱処理が実施されると、前記で低下した抵抗は高くなるが、再度紫外線を照射すると、前記で抵抗が高くなった金属酸化膜の抵抗が再び低下することも見出した。
そこで、本実施の形態に係る積層フィルム製造装置では、紫外線ランプをさらに備え、成膜後の機能膜に対して紫外線を照射する。
つまり、本実施の形態では、図8に示すように、上記説明により樹脂フィルム1A(または2A)上に成膜された金属酸化膜M1の主面全面に対して、紫外線ランプU1などを用いて紫外線UVを照射する。当該紫外線UVの照射により、金属酸化膜M1の抵抗(抵抗率)を低下させることができる。
さらに、本実施の形態では、当該紫外線照射処理に際して、上記説明により成膜された金属酸化膜M1の膜厚に応じて、照射する紫外線UVの波長を決定する。そして、当該決定した波長を有する紫外線UVを、金属酸化膜M1の主面全面に対して照射する。
照射する当該紫外線UVの波長の決定方法は、たとえば下記の通りである。
たとえば、金属酸化膜M1の膜厚が厚くなるに従い、紫外線UVの波長として大きい値のものを選択する。これは、金属酸化膜に対する紫外線の侵入深さが当該紫外線の波長に比例する、という関係に依拠しているからである。
つまり、光の進入深さdは、d=1/α、と表される。ここで、αは吸収係数であり、α=4πk/λである(k:消衰係数、λ:波長)。つまり、金属酸化膜への紫外線の侵入深さは、当該紫外線の波長に比例する(紫外線の波長が大きいほど、金属酸化膜のより深い位置まで、当該紫外線が侵入できる)。
したがって、膜厚の厚い金属酸化膜ほど、より波長の大きい紫外線を用いないと、当該膜厚の厚い金属酸化膜の膜厚方向全体に、紫外線が照射されず、結果として金属酸化膜の低抵抗化の効率が低下する。したがって、効率的な低抵抗化(短時間に抵抗率をより減少させる)という観点から、金属酸化膜の膜厚が厚くなるに従い、決定される紫外線の波長を比例して大きくすることが望ましい。
特に、実験により、金属酸化膜M1の膜厚が590nmより小さい場合には、少なくとも254nmを含む波長を選択・決定し、金属酸化膜の膜厚が590nmより大きい場合には、少なくとも365nmを含む波長を選択・決定する、ことが好ましいことが分かった。
波長が254nmである紫外線光源および波長が365nmである紫外線光源は、安価である。そして、金属酸化膜M1の膜厚に応じて、高効率での低抵抗化が可能な紫外線UVを選択している。したがって、上記波長の選択・決定を採用することにより、金属酸化膜M1の低抵抗高効率化および製造コストの低減を達成できる。
なお、紫外線UVの波長が380nmより大きくなると、金属酸化膜(亜鉛酸化膜)M1は当該紫外線UVを吸収しなくなる。よって、亜鉛酸化膜に対しては、照射する紫外線UVの波長は380nm以下であることを要する。
ここで、金属酸化膜M1に対して複数回の加熱処理を施す必要がある場合には、各加熱処理後に紫外線照射処理を毎回実施しても良く、複数の加熱処理を実施し最後の加熱処理後に紫外線処理を1度施しても良い。
なお、上記各説明内容(成膜後の金属酸化膜および加熱処理後の金属酸化膜に対して紫外線を照射することにより、金属酸化膜の抵抗を下げることができること、効率の良い低抵抗化の観点から、金属酸化膜の膜厚に応じて照射する紫外線の波長を選択・決定すること)は、金属酸化膜にドーパントが含有されている場合、および金属酸化膜にドーパントが含有されていない場合の両方について確認されている。また、金属酸化膜にドーパントが含有されている場合においても、ボロンやインジウムなどドーパントの種類に依存することなく、上記各説明内容が当てはまることが確認された。
以上のように、本実施の形態に係る積層フィルム製造装置では、霧化成膜装置8は、亜鉛を含む溶液をミスト化し、当該ミスト化した溶液を大気下において樹脂フィルム1A(または2A)に対して噴射することにより、樹脂フィルム1A(または2A)上に金属酸化膜M1を成膜している(図7)。そして、当該金属酸化膜M1に対して、紫外線UVを照射している(図8)。
したがって、霧化成膜装置8において、大気下で、樹脂フィルム1A(または2A)上に金属酸化膜M1を成膜し、当該成膜した金属酸化膜M1の抵抗が高抵抗となったとしても、その後の紫外線照射により、当該金属酸化膜M1の低抵抗化が可能となる(真空下で成膜された金属酸化膜の抵抗と同程度まで、大気下で成膜された金属酸化膜M1の抵抗を低減することができる)。
また、本実施の形態では、金属酸化膜M1の膜厚に応じて、照射する紫外線UVの波長を決定している。たとえば、金属酸化膜M1の膜厚が厚くなるに従い、紫外線UVの波長として大きい値のものを選択する。
したがって、金属酸化膜M1の膜厚に応じて、低抵抗の高効率化(短時間に抵抗率をより減少させる)が可能な波長を有する紫外線UVを、当該金属酸化膜M1に対して照射することができる。
<実施の形態6>
図9は、本実施の形態に係る霧化成膜装置8の構成を示す図である。
本実施の形態に係る積層フィルム製造装置では、図9に示すように、霧化成膜装置8内に、光学系センサー16が、さらに配設されている。当該光学系センサー16は、光を用いて非接触にて、計測対象物の諸物理量を計測する。
図9に示すように、霧化成膜装置8により樹脂フィルム1A(または2A)上に成膜された機能膜に対する計測が可能なように、当該霧化成膜装置8に配設された反応容器13の後段側に、光学系センサー16が配設されている。ここで、図9に例示した霧化成膜装置8は、図7で示した霧化成膜装置8に光学系センサー16が追加された構成となっている。
当該光学系センサー16として、たとえば、霧化成膜装置8により成膜された機能膜に対して所定の光を照射することにより、当該機能膜の膜厚を計測する膜厚測定センサーおよび/または当該機能膜の光透過率を計測する光透過率測定センサーとして機能する。
ここで、樹脂フィルム1A(または2A)上に成膜された機能膜の膜厚等を計測する光学系センサー16として、変更解析法、分光干渉方式、吸収強度方式、およびエネルギー分散型蛍光X線方式などを利用したものが採用できる。なお、光学系を利用しないセンサーを用いて、樹脂フィルム1A(または2A)上に成膜された機能膜の膜厚を測定する方式として、たとえば重量計測方式や超音波計測方式などがある。
以上のように、本実施の形態に係る霧化成膜装置8では、成膜された機能膜の膜厚や光透過率等を計測する光学系センサー16が配設されている。したがって、ユーザは、当該光学系センサー16の計測結果を取得することにより、成膜された機能膜の品質を即座に確認できる。よって、当該計測結果を受けて、機能膜の品質が予め定められた品質に達していないと判断された場合には、ユーザは、霧化成膜装置8の成膜条件などを即座に修正できる。
また、当該光学系センサー16を用いることにより、成膜された機能膜の膜厚が計測できるので、当該計測結果に応じて、実施の形態5で説明した紫外線UVの波長も決定することもできる。
<実施の形態7>
図10は、本実施の形態に係る霧化成膜装置8の構成を示す図である。
本実施の形態に係る積層フィルム製造装置では、図10に示すように、霧化成膜装置8内に、冷却機能を有する冷却部17が、さらに配設されている。
図10の構成では、実施の形態6で説明した光学系センサー16が配設されている(つまり、図10に例示した霧化成膜装置8は、図8で示した霧化成膜装置8に冷却部17が追加された構成となっている)。しかしながら、成膜された機能膜の膜厚等を計測する必要が無い場合には、図10において当該光学系センサー16の配設を省略することもできる。
霧化成膜装置8において、樹脂フィルム1A(または2A)上に機能膜が成膜される。ここで、当該成膜処理において、加熱器15により樹脂フィルム1A(または2A)が所定の成膜温度まで加熱されている。図10に示すように、成膜処理により温度が高い状態となっている、機能膜が生成された樹脂フィルム1A(または2A)を、当該冷却部17により、冷却する。したがって、冷却部17は、霧化成膜装置8に配設された反応容器13よりも後段側に、配設される。
以上のように、本実施の形態に係る霧化成膜装置8では、機能膜が成膜された樹脂フィルム1A(または2A)を冷却する冷却部17が配設されている。したがって、成膜処理の際に加熱器15による加熱温度をより高温に設定することが可能となる。つまり、加熱温度をより高温に設定したとしても、冷却部17により、機能膜が生成された樹脂フィルム1A(または2A)は直ぐに冷却されるので、高温加熱よる樹脂フィルム1A(または2A)へのダメージを抑制することができる。なお、成膜時の加熱温度を高温にすることにより、機能膜の成膜速度は向上することができ、より質の良い機能膜の生成も可能となる。
<実施の形態8>
図11は、本実施の形態に係る積層フィルム製造装置の構成を示す図である。ここで、当該図11には、本実施の形態において要部構成となる、霧化成膜装置8と制御部20とが図示されている。
本実施の形態に係る積層フィルム製造装置は、図10に示した霧化成膜装置8に加えて、制御部20がさらに配設されている。当該制御部20は、光学系センサー16の計測結果を受信し、当該計測結果に応じて、樹脂フィルム1A(または2A)に対する機能膜の成膜に関係する成膜条件(樹脂フィルム1A(または2A)の引き出し速度、各容器9,11から反応容器13への各材料の供給量・供給速度、加熱器15の加熱温度、および冷却部17の冷却温度など)を制御する。
つまり、制御部20には、要求される機能膜の品質を規定する規定値(膜厚範囲や光透過率範囲など)が予め設定されている。そして、制御部20は、光学系センサー16からの計測結果と、予め設定されている前記規定値とを比較する。そして、制御部20は、成膜される機能膜の品質(つまり、上記計測結果)が前記規定値の範囲となるように、上述した成膜条件を制御する。
図11に示すように、制御部20は、容器9,11、ロール1(または2)、加熱器15、光学系センサー16および冷却部17の各々に接続されている。ここで、容器9,11は、反応容器13への材料の供給量・供給速度を調整する機能を有している。ロール1(または2)は、樹脂フィルム1A(または2A)の引き出し速度を調整する機能を有している。加熱器15は、加熱温度を調整する機能を有している。そして、冷却部17は、冷却温度を調整する機能を有している。
制御部20は、光学系センサー16から計測結果信号を受信する。そして、当該受信した計測結果信号を用いて、制御部20は、容器9、容器11、ロール1(または2)、加熱器15および冷却部17の少なくとも何れかを制御する制御信号を生成し、当該制御信号を制御対象に送信する。
具体的に、制御部20は、容器9に対して制御信号を送信することにより、容器9から反応容器13に供給される原料溶液の流量を制御する。また、制御部20は、容器11に対して制御信号を送信することにより、容器11から反応容器13に供給される酸化還元材の流量を制御する。また、制御部20は、ロール1(または2)に対して制御信号を送信することにより、ロール1から引き出される樹脂フィルム1Aの引き出し速度(または、ロール2から引き出される樹脂フィルム2Aの引き出し速度)を制御する(つまり、制御部20は、霧化成膜装置8内を通過する成膜対象の通過速度を制御する)。
また、制御部20は、加熱器15に対して制御信号を送信することにより、加熱器15による樹脂フィルム1A(または2A)の加熱温度を制御する。また、制御部20は、冷却部17に対して制御信号を送信することにより、冷却部17による機能膜が成膜された樹脂フィルム1A(または2A)の冷却温度を制御する。
具体例として、たとえば、次のような制御が考えられる。
制御部20には、予め、要求される機能膜の膜厚の範囲(規定膜厚範囲と称することとする)が設定されている。制御部20が、光学系センサー16から受信した計測結果(機能膜の膜厚であり、計測膜厚と称することとする)と規定膜厚範囲とを比較する。もし、計測膜厚が、規定膜厚範囲より小さい場合には、成膜される機能膜の膜厚を増加させることが必要となる(機能膜の成膜速度を向上させる必要がある)。
そこで、制御部20は、加熱器15による加熱温度を上げる、冷却部17による冷却温度を緩める(つまり、冷却を促進させない方向に調整する)、樹脂フィルム1A(または2A)の反応容器13下方を通過する速度を遅くする、容器9,11からの各材料の出力量を増加する等の各制御を実施する。ここで、制御部20は、前記列挙した各制御の全てを実施しても良く、何れか1以上の制御を実施しても良い。
以上のように、本実施の形態に係る積層フィルム製造装置では、光学系センサー16からの測定結果に応じて機能膜の成膜条件を変更することができる、制御部20が配設されている(フィードバック制御)。したがって、当該積層フィルム製造装置は、要求される品質を有する機能膜を、常にかつ自動的に、樹脂フィルム1A(または2A)上に成膜することができる。
なお、上記各実施の形態では、樹脂フィルムの片面に所望の機能膜(たとえばバリアフィルム)を成膜する場合に言及した。しかし、本発明に係る積層フィルム製造装置は、以下の積層フィルムの生成に適用できる。つまり、複数のフィルム(シート)から構成され、何れか1以上のフィルム(シート)に所望の膜を成膜されている積層フィルムの生成に適用できる。
よって、積層フィルムを構成する各フィルム(シート)の数も上記の例に限定される必要はない。また、フィルム(シート)は、樹脂製に限定される必要はない。また、2以上のフィルム(シート)に対して所定の膜が成膜できるように、複数の霧化成膜装置8が配設されていても良い。また、フィルム(シート)の片面のみに所定の膜を成膜するのみならず、フィルム(シート)の両面に対して異なる(または同種)の所定の膜を成膜できるように、霧化成膜装置8を配設することもできる。
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。