JP6442874B2 - 積層体の製造方法、及び積層体製造装置 - Google Patents
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Description
PVD法としては、例えば、真空蒸着法やスパッタリング法等がある。スパッタリング法は、膜質及び厚さの均一性に優れた高品質な薄膜の成膜が行えるため、液晶ディスプレイ等の表示デバイスに広く適用されている。
このとき、成膜時の反応を促進させたり、反応温度を下げたりするために、プラズマや触媒(Catalyst)反応を併用するものがある。
このうち、プラズマ反応を用いるCVD法を、PECVD(Plasma Enhanced CVD)法という。また、触媒反応を利用するCVD法を、Cat−CVD法という。
このようなCVD法を用いると、成膜欠陥が少なくなるため、例えば、半導体デバイスの製造工程(例えば、ゲート絶縁膜の成膜工程)等に適用されている。
近年、成膜方法として、原子層堆積法(ALD(Atomic Layer Deposition)法。以下、「ALD法」という。)が注目されている。
いわゆるCVD法(一般的なCVD法)は、単一のガスまたは複数のガスを同時に用いて基坂上で反応させて薄膜を成長させるものである。それに対して、ALD法は、前駆体(以下、「第1の前駆体」という。例えば、TMA(Tri-Methyl Aluminum))、またはプリカーサともいわれる活性に富んだガスと、反応性ガス(ALD法では、前駆体と呼ばれる。以下、該前駆体を「第2の前駆体」という。)と、を交互に用いることで、基板表面における吸着と、これに続く化学反応と、によって原子レベルで一層ずつ薄膜を成長させていく特殊な成膜方法である。
始めに、いわゆるセルフ・リミッティング効果(基板上の表面吸着において、表面がある種のガスで覆われると、それ以上、該ガスの吸着が生じない現象のことをいう。)を利用し、基板上に前駆体が一層のみ吸着したところで未反応の前駆体を排気する(第1のステップ)。
次いで、チャンバ内に反応性ガスを導入して、先の前駆体を酸化または還元させて所望の組成を有する薄膜を一層のみ形成した後に反応性ガスを排気する(第2のステップ)。
ALD法では、上記第1及び第2のステップを1サイクルとし、そのサイクルを繰り返し行うことで、基板上に薄膜を成長させる。
このため、食品及び医薬品等の包装分野や電子部品分野等の幅広い分野への応用が期待されている。
ALD法の1つとして、第2の前駆体を分解し、基板上に吸着している第1の前駆体と反応させる工程において、反応を活性化させるためにプラズマを用いる方法がある。この方法は、プラズマ活性化ALD(PEALD(Plasma Enhanced ALD))法、または、単に、プラズマALD法と呼ばれている。
ALD法は、他の成膜法と比較して斜影効果(スパッタリング粒子が基板表面に斜めに入射して成膜バラツキが生じる現象)が無いという特徴があるため、ガスが入り込める隙間があれば成膜が可能である。
そのため、ALD法は、深さと幅との比が大きい高アスペクト比を有する基板上のラインやホールの被膜や、3次元構造物の被膜用途であるMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)関連技術への応用が期待されている。
上記説明したALD法を用いて薄膜が形成される基板としては、例えば、ウェハやフォトマスク等の小さな板状の基板、大面積でフレキシブル性がない基板(例えば、ガラス基板)、フィルム等のように大面積でフレキシブル性がある基板等がある。
例えば、ウェハに薄膜を成膜する場合の成膜装置としては、1枚のウェハを成膜装置のチャンバ内に搬送して成膜した後、成膜されたウェハと未処理のウェハとを入れ替えて、再び成膜処理を行う枚葉式成膜装置や、チャンバ内に複数のウェハをまとめてセットし、その後、全てのウェハに同一の成膜処理を行うバッチ式成膜装置等がある。
さらに、フレシキブル基板に薄膜を成膜する場合の成膜装置としては、ローラからフレシキブル基板を巻き出しながら成膜を行い、別のローラでフレシキブル基板を巻き取る、いわゆるロールツーロールを採用したコーティング成膜装置がある。
いずれの成膜装置による成膜方法や基板取り扱い方法についても、品質面や取り扱いの容易さ等から判断して、成膜速度が最速となるような成膜装置の組み合わせが採用されている。
また、特許文献1には、上記手法を用いることで、コーティング欠陥を減らすことが可能になると共に、数十ナノメートルの厚さにおいて、気体透過を桁違いに低減させることが可能であることが開示されている。
また、特許文献2には、原子層堆積膜が形成された基板を再巻き取りドラムに巻き取ることが開示されている。
このような傷が生じると、該傷を通じて原子層堆積膜と基材との間にガスが出入りしてしまうため、ガスバリア性が低下してしまう。
特許文献2に開示された原子層堆積装置の構成を参照するに、特許文献2では、再巻き取りドラムのローラ面と原子層堆積膜の表面全体とが接触するように、原子層堆積膜が形成された基板を再巻き取りドラムに巻き取るものと推測される。
特許文献3に開示された積層体では、原子層堆積膜の表面を覆うオーバーコート層が配置されているため、上記特許文献2の問題点を解決することが可能である。
しかしながら、特許文献3では、オーバーコート成膜部が原子層堆積膜成膜部のように、チャンバ(或いは、筐体)で区画されていないため、オーバーコート成膜部と原子層堆積膜成膜部との間でガス(オーバーコート成膜部で使用するガス、及び原子層堆積膜成膜部で使用するガス)がミキシング(混合)されやすい環境で、原子層堆積膜及びオーバーコート層を形成していた。このため、原子層堆積膜及びオーバーコート層の性能が低下してしまう可能性が考えられる。
そこで、本発明は、基材の一方の面側にガスバリア性の高い原子層堆積膜を形成することの可能な積層体の製造方法、及び該積層体を製造する積層体製造装置を提供することを目的とする。
なお、以下の説明で用いる図面は、本発明の実施形態の構成を説明するためのものであり、図示される各部の大きさや厚さや寸法等は、実際の積層体、及び積層体製造装置の寸法関係とは異なる場合がある。
<第1の実施形態に係る積層体>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る積層体の製造方法により製造される積層体を模式的に示す断面図である。
ここでは、第1の実施形態の積層体の製造方法について説明する前に、第1の実施形態の積層体の製造方法により製造される積層体10の構成について説明する。
図1を参照するに、積層体10は、フィルム状とされた積層体であり、基材11と、原子層堆積膜12と、オーバーコート層14と、を有する。
基材11は、所定の方向に延在する帯状かつフィルム状とされた基材である。基材11は、原子層堆積膜12が形成される一方の面11aと、一方の面11aとは反対側に配置された他方の面11bと、を有する。
なお、基材11の材料は、上記材料に限定されず、耐熱性、強度物性、及び電気絶縁性等を考慮して適宜選択することができる。
原子層堆積膜12は、基材11の一方の面11aを覆うように配置されている。原子層堆積膜12は、例えば、ALD(Atomic Layer Deposition)法により形成される膜であり、ガスバリア層(バリア層)として機能する膜である。
原子層堆積膜12の厚さは、例えば、2nm〜500nmの範囲内で適宜設定することができる。
これにより、巻き取りローラ82との接触に起因する原子層堆積膜の損傷を抑制することができる。
このように、原子層堆積膜12の機械的強度と同等以上の機械的強度を有するオーバーコート層14を用いることで、巻き取りローラ82との接触に起因する原子層堆積膜12の損傷をさらに抑制することができる。
また、原子層堆積膜12と同等の機械的強度を有するオーバーコート層14を用いる場合には、オーバーコート層14の厚さが原子層堆積膜12の厚さよりも厚くなるようにするとよい。
これにより、積層体10をローラ状に巻き取る際に、原子層堆積膜12が損傷することを抑制する効果をさらに向上できる。
有機金属化合物である金属アルコキシドは、一般式として、R1(M−OR2)で表される。但し、上記R1,R2は、炭素数1〜8の有機基であり、Mは、金属原子(以下、「金属原子M」という)である。
金属原子MがSiのR1(Si−OR2)としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラプトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等を例示することができる。
金属原子MがTiのR1(Si−OR2)としては、例えば、テトラメトキシチタニウム、テトラエトキシチタニウム、テトライソプロポキシチタニウム、テトラプトキシチタニウム等を例示することができる。
また、オーバーコート層14に無機物質からなる無機粒子を添加する場合、該無機物質としては、例えば、粘土鉱物の一種であるカオリナイトより粒径の大きい体質顔料を用いることが好ましい。
また、オーバーコート層14に無機物質を層状化合物として添加する場合、該無機物質としては、例えば、人口粘土、フッ素金雲母、フッ素四ケイ素雲母、テニオライト、フッ素バーミキュライト、フッ素ヘクトライト、ヘクトライト、サポライト、スチブンサイト、モンモリロナイト、バイデライト、カオリナイト、フライボンタイト等を用いることができる。
図2は、本発明の第1の実施形態に係る積層体製造装置の概略構成を示す正面図である。図2において、図1に示す積層体10、及び積層体10を構成する構成要素と同一構成部分には、同一符号を付す。
また、図2において、Aは基材巻回用ローラ36の回転方向(以下、「A方向」という)、Bは支持部材21の回転方向(以下、「B方向」という)、Cはダンサーローラ81の回転方向(以下、「C方向」という)をそれぞれ示している。
また、図2において、基材11または積層体10の近傍に付した矢印(上記符号A〜Cが付されていない矢印)は、基材11の搬送方向(設定の搬送方向)を示している。
さらに、紙面の都合上、実際には数十個(例えば、70個)存在する膜形成部43を図示することが困難なため、図2では、3つの膜形成部43のみを図示する。
第1の実施形態の積層体製造装置20は、所定の方向(一方向)に延在する帯状の基材11をインラインでロールツーロール方式により、基材11の一方の面11aに、原子層堆積膜12と、オーバーコート層14と、を順次形成する装置である。
図3は、図2に示す領域Dで囲まれた基材及び支持部材を拡大した図である。図3において、図1及び図2に示す構造体と同一構成部分には、同一符号を付す。
基材搬送部23は、プラズマ前処理部24の前段において、支持部材21の外面21aと対向するように配置されている。基材搬送部23は、基材巻回用ローラ36と、基材繰り出し用ローラ37と、を有する。
基材巻回用ローラ36は、そのローラ面が支持部材21の外面21aと対向するように、支持部材21から離間した位置に配置されている。基材巻回用ローラ36のローラ面には、所定の方向(一方向)に延在する帯状の基材11が巻回される。
基材繰り出し用ローラ37は、そのローラ面37aが支持部材21の外面21a及び基材巻回用ローラ36のローラ面と対向するように、支持部材21と基材巻回用ローラ36との間に配置されている。
支持部材21の外面21aに供給された基材11は、支持部材21の外面21aに沿って、プラズマ前処理部24に搬送される。
プラズマ前処理部24は、基材11の一方の面11aに対してプラズマ前処理を実施する処理チャンバ41を有する。処理チャンバ41は、処理チャンバ41内に基材搬送部23により供給された基材11を導入する導入口(図示せず)と、プラズマ前処理された基材11を処理チャンバ41の外に導出する導出口(図示せず)と、を有する。
プラズマ前処理された基材11は、支持部材21の外面21aに沿って、原子層堆積膜形成部26に搬送される。
なお、上記プラズマ前処理の条件は、基材11の材料の特性に応じて、適宜選択することができる。
原子層堆積膜形成部26は、複数(図2の場合、紙面の都合上、3つのみ図示)の膜形成部43を有する。
複数の膜形成部43は、プラズマ前処理部24とガイドローラ27との間に基材11の一方の面11aと対向するように配置されている。
膜形成部43は、パージ用チャンバ45と、前駆体吸着用チャンバ46と、第2の前駆体供給用ノズル47と、を有する。
なお、第1の実施形態において、「第1の処理室」とは、パージ用チャンバ45、前駆体吸着用チャンバ46、及び第2の前駆体供給用ノズル47よりなる室のことをいう。
パージ用チャンバ45は、基材11の搬送方向に配置された前駆体吸着用チャンバ46及び第2の前駆体供給用ノズル47を収容している。パージ用チャンバ45は、前駆体吸着用チャンバ46の前後に位置する基材11の一方の面11a、及び第2の前駆体供給用ノズル47の前後に位置する基材11の一方の面11aを露出している。
パージ用チャンバ45内は、パージガス(例えば、O2ガスとN2ガスとを混合させた混合ガス)で充填されている。
パージ用チャンバ45内では、前駆体吸着用チャンバ46を通過させることで基材11の一方の面11aに吸着する余分(過剰)な第1の前駆体(例えば、トリメチルアルミニウム(TMA)及び副生成物の除去を行うと共に、第2の前駆体供給用ノズル47を通過させることで基材11の一方の面11aに吸着する余分(過剰)な第2の前駆体(例えば、H2O)及び副生成物の除去を行う。
前駆体吸着用チャンバ46は、パージ用チャンバ45内に収容されており、第2の前駆体供給用ノズル47の前段に配置されている。
前駆体吸着用チャンバ46は、前駆体吸着用チャンバ46内に基材11を導入するための導入口(図示せず)と、パージ用チャンバ45内(言い換えれば、前駆体吸着用チャンバ46外)に基材11を導出するための導出口(図示せず)と、を有する。
この場合、前駆体吸着用チャンバ46内の圧力は、例えば、10〜50Pa、前駆体吸着用チャンバ46の内壁の温度は、例えば、70℃に保持することができる。
第2の前駆体供給用ノズル47は、基材11と対向するように配置されている。第2の前駆体供給用ノズル47は、基材11の一方の面11aに水を供給するためのノズルである。
この場合、第2の前駆体供給用ノズル47内の圧力は、例えば、10〜50Pa、第2の前駆体供給用ノズル47の内壁の温度は、例えば、70℃に保持することができる。
この場合、第2の前駆体供給用ノズル47と対向する基材11では、基材11の一方の面11aに吸着したトリメチルアルミニウム(TMA)と水とが反応することで、原子層堆積膜12である酸化アルミニウム(Al2O3)膜の一部を構成する一原子層レベルの酸化アルミニウム(Al2O3)層が形成される。
そして、該酸化アルミニウム(Al2O3)層が形成された基材11は、パージ用チャンバ45の外に導出される。
したがって、原子層堆積膜形成部26を構成する膜形成部43の数は、原子層堆積膜12である酸化アルミニウム(Al2O3)膜の所望の厚さに応じて決定される。
したがって、この場合、原子層堆積膜形成部26を構成する膜形成部43の数は、70個必要となる。
なお、原子層堆積膜形成部26において、原子層堆積膜12を成膜する幅を規定することができる。
図5は、図2に示すガイドローラの斜視図である。図5では、図2及び図4に示す構造体と同一構成部分には、同一符号を付す。
図6は、ガイドローラ、一対の押さえローラ、及びガイドローラと一対の押さえローラとの間に位置する原子層堆積膜が形成された基材の断面図である。図6において、図1、図2、図4、及び図5に示す構造体と同一構成部分には、同一符号を付す。
ガイドローラ27は、一対(2つ)のガイドローラ本体51と、回転軸52と、を有する。一対のガイドローラ本体51は、円柱形状とされている。一対のガイドローラ本体51は、それぞれローラ面51aを有する。
原子層堆積膜12の一方の面12aと接触するローラ面51aの幅W2は、例えば、基材11の幅W1の5〜10%程度の値にすることができる。
このように、原子層堆積膜12の一方の面12aの外周部のみと接触し、原子層堆積膜12が形成された基材11を第2の処理室であるオーバーコート層形成室61(以下、オーバーコート層形成室61を「第2の処理室」ということもある。)内に案内するガイドローラ27を有することで、原子層堆積膜12の一方の面12a全体と接触する従来のガイドローラを用いた場合と比較して、原子層堆積膜12にガイドローラ27に起因する傷の発生を抑制することができる。
図2及び図6を参照するに、一対(2つ)の押さえローラ28は、押さえローラ本体54と、回転軸55と、をそれぞれ有する。
押さえローラ本体54は、基材11の他方の面11bの外周部と接触するローラ面54aを有する。押さえローラ本体54は、ローラ面54aがガイドローラ本体51のローラ面51aと対向する位置に配置されている。回転軸55は、その一端が押さえローラ本体54と接続されている。
このように、ガイドローラ本体51のローラ面51aに対して、ガイドローラ本体51と接触する原子層堆積膜12が形成された基材11を押し付ける押さえローラ54を有することで、ガイドローラ本体51のローラ面51aに対して、原子層堆積膜12が形成された基材11をしっかりと押し当てて、ローラ面51aから原子層堆積膜12が形成された基材11が外れることを抑制可能となるので、基材11の搬送方向を安定して変更させることができる。
第1の導入口29−1は、中間室29の外から中間室29内に、原子層堆積膜12が形成された基材11を導入させるための導入口である。第2の導入口29−2は、中間室29内からオーバーコート層形成部31内に、原子層堆積膜12が形成された基材11を導入させるための導入口である。
具体的には、第1の処理室(具体的には、パージ用チャンバ45内)の真空度が100Pa、第2の処理室(オーバーコート層形成室61内)の真空度が0.01Paの場合、中間室29内の真空度は、例えば、1Paとすることができる。
オーバーコート層形成部31は、図1に示すオーバーコート層14が形成される部分であり、オーバーコート層形成室61(第2の処理室)と、第1のローラ62と、第2のローラ63と、原料タンク65と、原料供給配管66と、原料供給用ポンプ68と、噴霧器69と、気化器72と、気体供給配管74と、コーティングノズル76と、光照射部78と、を有する。
オーバーコート層形成室61は、第1のローラ62、第2のローラ63、原料タンク65、原料供給配管66、原料供給用ポンプ68、噴霧器69、気化器72、気体供給配管74、コーティングノズル76、及び光照射部78を収容している。
このように、原子層堆積膜12が形成される第1の処理室の外側で第1の処理室から離間した位置に配置され、かつ原子層堆積膜12の一方の面12aにオーバーコート層14(図1参照)を形成するオーバーコート層形成室61(第2の処理室)を有することで、第2の処理室内で使用するガスが第1の処理室内に移動することを抑制可能になる共に、第1の処理室内で使用するガスが第2の処理室内に移動することを抑制可能となる。
第2のローラ63は、第1のローラ62により搬送され、かつ原子層堆積膜12の一方の面12aにオーバーコート層14が形成された14a(図1参照)と接触することで、基材11の搬送方向を変更させて、オーバーコート層形成室61内に配置された、積層体巻き取り部33(具体的には、積層体巻き取り部33を構成するダンサーローラ81)に搬送される。
原料供給配管66は、その一端が原料タンク65と接続されており、他端が噴霧器69と接続されている。
噴霧器69は、原料供給配管66の他端、及び気化器72と接続されている。噴霧器69は、原料供給配管66を介して供給されたコート材料を気化器72に対して噴霧する。噴霧器69としては、例えば、アトマイザーを用いることができる。
気体供給配管74は、その一端が気化器72と接続されており、他端がコーティングノズル76と接続されている。気体供給配管74は、気体状態とされたコート材料をコーティングノズル76に供給する。気体供給配管74は、高温に保たれた配管である。
原子層堆積膜12の一方の面12aに、噴射された気体状態とされたコート材料は、被膜層(オーバーコート層14の母材)となる。
光照射部78は、コーティングノズル76と第2のローラ63との間に搬送される上記被膜層に光(例えば、電子線や紫外線等)を照射可能な位置に配置されている。
上記被膜層は、光(例えば、電子線や紫外線等)を照射されることで、架橋し、硬化されたオーバーコート層14が形成される。これにより、図1に示す積層体10が形成される。
図1及び図2を参照するに、積層体巻き取り部33は、ダンサーローラ81と、巻き取りローラ82と、を有する。
ダンサーローラ81は、ローラ63の後段に設けられている。ダンサーローラ81は、積層体10を構成する基材11一方の面11bと接触するローラ面を有する。
巻き取りローラ82は、ダンサーローラ81の外径よりも大きな外径とされたローラである。巻き取りローラ82は、ダンサーローラ81の後段に配置されている。巻き取りローラ82は、シート状とされた積層体10をロール状に巻き取るためのローラである。巻き取りローラ82のローラ面は、積層体10を構成するオーバーコート層14の一方の面14aと接触する。
第1の実施形態の積層体製造装置によれば、原子層堆積膜12が形成される第1の処理室の外側で第1の処理室から離間した位置に配置され、かつ原子層堆積膜12の一方の面12aにオーバーコート層14(図1参照)を形成するオーバーコート層形成室61(第2の処理室)を有することで、第2の処理室内で使用するガスが第1の処理室内に移動することを抑制可能になる共に、第1の処理室内で使用するガスが第2の処理室内に移動することを抑制可能となる。
さらに、積層体10を構成するオーバーコート層14の一方の面14aと接触することで、積層体10をロール状に巻き取る積層体巻き取り部33を有することで、層体巻き取り部33を構成する巻き取りローラ82のローラ面が原子層堆積膜12の一方の面12aと直接接触することがなくなるため、原子層堆積膜12に巻き取りローラ82に起因する傷が発生することを抑制できる。
図7は、本発明の第1の実施形態に係る積層体の製造方法を説明するためのフローチャートである。
次に、図2〜図4、及び図7を参照して、第1の実施形態に係る積層体の製造方法について説明する。
図7に示すフローチャートの処理が開始されると、基材搬送部23により、基材巻回用ローラ36に巻回された基材11(例えば、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)よりなるフィルム)が円筒状の支持部材21の外面21aに沿って、プラズマ前処理部24に向かう方向に搬送される。このとき、基材11は、他方の面11bが支持部材21の外面21aと接触するように搬送される。
その後、一方の面11aが改質された基材は、支持部材21の外面21aに沿って、原子層堆積膜形成部26に搬送され、処理は、STEP2へと進む。
なお、プラズマ前処理の条件は、基材11の材料の特性に応じて、適宜選択することができる。
具体的には、STEP2では、以下の処理が行われる。始めに、搬送された基材11が1つ目の膜形成部43に到達すると、基材11は、不活性ガス雰囲気(例えば、窒素雰囲気)とされたパージ用チャンバ45内に導入される。
パージ用チャンバ45内では、余分(過剰)な第1の前駆体(例えば、トリメチルアルミニウム(TMA))の除去、及びSTEP1で処理された基材11の一方の面11aに吸着した副生成物の除去が行われる。
その後、一方の面に前駆体を吸着した基材11は、前駆体吸着用チャンバ46から導出され、前駆体吸着用チャンバ46と第2の前駆体供給用ノズル47との間に位置するパージ用チャンバ45内において、余分(過剰)な前駆体(トリメチルアルミニウム(TMA))が除去される。
第2の前駆体供給用ノズル47内の雰囲気を、例えば、窒素ガスと水とが混在する雰囲気とする場合、第2の前駆体供給用ノズル47内の圧力は、例えば、10〜50Paにすることができる。この場合、第2の前駆体供給用ノズル47の内壁の温度は、例えば、70℃に保持することができる。
その後、トリメチルアルミニウムと水とが反応した基材11は、第2の前駆体供給用ノズル47から導出され、パージ用チャンバ45内に搬送される。そして、パージ用チャンバ45内で余分(過剰)な第2の前駆体(この場合、H2O)及び副生成物が除去される。
次いで、一方の面11aに一原子層レベルの酸化アルミニウム(Al2O3)層が形成された基材11は、パージ用チャンバ45の外に導出される。
上記説明したSTEP2に示す原子層堆積膜形成工程が終わると、処理は、STEP3へと進む。
具体的には、ガイドローラ27を構成するガイドローラ本体51のローラ面51a(図4〜図6参照)、及び一対の押さえローラ本体54(押さえローラ28の構成要素の1つ)のローラ面54a(図2及び図4参照)により、一方の面11aに原子層堆積膜12が形成された基材11は、支持部材21の外面21aからオーバーコート層形成室61内に配置された第1のローラ62に向かう方向(言い換えれば、中間室29及びオーバーコート層形成部31に向かう方向)に搬送される。
このように、原子層堆積膜12の一方の面12aの外周部のみと接触するガイドローラ27により、原子層堆積膜12が形成された基材11をオーバーコート層形成室61(第2の処理室)内に案内することで、原子層堆積膜12の一方の面12a全体と接触する従来のガイドローラを用いた場合と比較して、原子層堆積膜12にガイドローラ27に起因する傷の発生を抑制することができる。
また、中間室29を経由して、原子層堆積膜12が形成された基材11を第1の処理室から第2の処理室内に案内することで、第1の処理室で使用するガスと第2の処理室で使用するガスとが混合されることがほとんどなくなるため、良好な膜質とされた原子層堆積膜12及びオーバーコート層14を形成することが可能となる。これにより、原子層堆積膜12のガスバリア性が低下することを抑制できる。
例えば、第1の処理室と第2の処理室との間の真空度が大きく異なる場合、第1の処理室の真空度と第2の処理室の真空度との間の真空度にすることで、段階的に真空度を変化させることができる。
その後、オーバーコート層形成室61内に搬送された基材11は、第1のローラ62により搬送方向を変更され、第2のローラ63に向かう方向に搬送される。
上記STEP3の基材案内工程が終わると、処理は、STEP4へと進む。
これにより、基材11、原子層堆積膜12、及びオーバーコート層14が積層された積層体10が製造される。
このように、原子層堆積膜12が形成される第1の処理室の外側で、かつ第1の処理室から離間した位置に配置されたオーバーコート層形成室61(第2の処理室)内で、原子層堆積膜12の一方の面12aに、オーバーコート層14を形成することで、第1の処理室内で使用するガスと第2の処理室内で使用するガスとが混合することなく、オーバーコート層14及び原子層堆積膜12を形成することが可能となる。
上記オーバーコート層形成工程では、オーバーコート層14は、フラッシュ蒸着法により形成する。具体的には、以下の方法により、オーバーコート層14を形成する。
次いで、光照射部78により、被膜層に光(例えば、電子線光や紫外線光)を照射することで、架橋及び硬化させることで、オーバーコート層14を形成する。
オーバーコート層14の厚さの調節は、以下の方法を用いて行う。オーバーコート層14の厚さを厚くしたい場合には、気化器72へのコート材料の滴下量を多くし、オーバーコート層14の厚さを薄くしたい場合には、気化器72へのコート材料の滴下量を少なくする。
また、オーバーコート層14の厚さの均一性の確保は、単位時間当たりのコート材料の滴下量を一定に保つことで行う。
このように、原子層堆積膜12よりも機械的強度の高いオーバーコート層14を形成することで、オーバーコート層14の一方の面14aと巻き取りローラ82のローラ面とを接触させ、巻き取りローラ82により、積層体10をローラ状に巻き取る際に、原子層堆積膜12が損傷することをさらに抑制することができる。
また、上記オーバーコート層形成工程では、厚さが原子層堆積膜12の厚さよりも厚くなるように、原子層堆積膜12と同等の機械的強度を有するオーバーコート層14を形成してもよい。
上記STEP4のオーバーコート層形成工程が終わると、処理は、STEP5へと進む。
STEP5では、オーバーコート層14の一方の面14aと巻き取りローラ82のローラ面とを接触させ、巻き取りローラ82により、積層体10をローラ状に巻き取る(巻き取り工程)。
これにより、巻き取り時に巻き込まれるパーティクルの削減を行うことができ、巻き取り時のバリア劣化を低減することが可能となる。
また、オーバーコート層14を形成後、オーバーコート層14の一方の面14aがローラ面と接触する回数も低減できるため、ローラ起因の傷の発生リスクも低減させることが出来る。
上記STEP5の巻き取り工程が終わると、図7に示す処理は、終了する。
これにより、オーバーコート層14及び原子層堆積膜12及びオーバーコート層14の性能(膜質や膜特性等)を向上させることができる。つまり、ガスバリア性に優れた原子層堆積膜12を形成することができる。
さらに、積層体10を構成するオーバーコート層14の一方の面14aと接触することで、積層体10をロール状に巻き取る積層体巻き取り部33を有することで、層体巻き取り部33を構成する巻き取りローラ82のローラ面が原子層堆積膜12の一方の面12aと直接接触することがなくなるため、原子層堆積膜12に巻き取りローラ82に起因する傷が発生することを抑制できる。
図8は、第1の実施形態の変形例に係る積層体製造装置の概略構成を模式的に示す正面図である。図8において、図2に示す第1の実施形態の積層体製造装置20と同一構成部分には、同一符号を付す。
図1に示す積層体10は、図2に示す第1の実施形態の積層体製造装置20に替えて、図8に示す第1の実施形態の変形例に係る積層体製造装置80を用いて製造することが可能である。
積層体製造装置80は、第1の実施形態の積層体製造装置20を構成するオーバーコート層形成部31(フラッシュ蒸着法によりオーバーコート層14を形成するオーバーコート層形成部)に替えて、オーバーコート層形成部91(真空蒸着法によりオーバーコート層14を形成するオーバーコート層形成部)を有すること以外は、積層体製造装置20と同様に構成される。
オーバーコート層形成部91は、図2で説明したオーバーコート層形成部31を構成する原料タンク65、原料供給配管66、原料供給用ポンプ68、噴霧器69、気化器72、気体供給配管74、コーティングノズル76、及び光照射部78に替えて、メインローラ83、ガイドローラ85,86、ローラ87,88、蒸発源89、及び加熱装置(図示せず)を有すること以外は、オーバーコート層形成部31と同様に構成されている。
メインローラ83の下部に位置するローラ面83aに搬送される際、原子層堆積膜12の一方の面12aにオーバーコート層14(図1参照)が形成される。
ガイドローラ85は、ガイドローラ27と同様な構成とされている。ガイドローラ85を構成するガイドローラ本体51のローラ面51aは、原子層堆積膜12の一方の面12aの外周部と接触する。
ガイドローラ86は、メインローラ83のローラ面83aに近接して配置されている。ガイドローラ86は、メインローラ83を介して、ガイドローラ85と対向するように配置されている。
ガイドローラ86は、通常のローラであり、オーバーコート層14の一方の面14a(図1参照)の外周部と接触する。
ローラ87は、ガイドローラ86の上方に配置されている。ローラ87は、基材11の他方の面11bと接触することで、積層体10の搬送方向を変更し、第2のローラ63に積層体10を搬送する。
上記加熱装置としては、例えば、電子ビームを用いて蒸発源89を加熱する装置や、蒸発源89(この場合、抵抗体として機能)として高融点金属を用いて、蒸発源89に通電させて、コート材料を加熱する装置等を例示することができる。
また、上記積層体製造装置80を用いて積層体10を製造する場合、真空蒸着法により、オーバーコート層14を形成すること以外は、第1の実施形態の積層体の製造方法と同様な手法により製造することができる。
オーバーコート層形成室61内の圧力は、例えば、0.01〜0.1Paにすることができる。
このように、真空蒸着法により、オーバーコート層14を形成することで、高速でオーバーコート層14を形成することができると共に、厚膜のオーバーコート層14を形成することができる。
<第2の実施形態に係る積層体>
図9は、本発明の第2の実施形態に係る積層体の製造方法により製造される積層体を模式的に示す断面図である。図9において、図1に示す第1の実施形態の積層体10と同一構成部分には、同一符号を付す。
図9を参照するに、積層体100は、第1の実施形態で説明した積層体10の構成に、さらに、アンダーコート層101を有すること以外は、積層体10と同様に構成される。
アンダーコート層101は、基材11の一方の面11aに配置されている。アンダーコート層101は、基材11と原子層堆積膜12との間に配置されている。アンダーコート層101の一方の面101a(基材11と接触するアンダーコート層101の他方の面の反対側に位置する面)は、原子層堆積膜12と接触している。
具体的には、アンダーコート層101としては、例えば、アクリルコート層、ウレタンコート層、無機物質を含有したアクリルコート層等を用いることができる。
このように、アンダーコート層101が、基材11と原子層堆積膜12との間に配置され、且つ基材11の一方の面11a及び原子層堆積膜12と接触し、そのアンダーコート層101が無機物質及び/または有機高分子を含有する。これによって、例えば、アンダーコート層101が無機物質を含有する場合、原子層堆積膜12の前駆体(例えば、トリメチルアルミニウム(TMA))が、アンダーコート層101の一方の面101aから露出する無機物質と結合するため、アンダーコート層101の一方の面方向に成長する二次元状の原子層堆積膜12が形成される。
また、アンダーコート層101が有機高分子を含有する場合、有機高分子が原子層堆積膜12の前駆体(例えば、トリメチルアルミニウム(TMA))と結合しやすい官能基を有するため、有機高分子の各官能基に結合した前駆体同士が互いに結合する。これによって、アンダーコート層101の一方の面101a方向に成長する二次元状の原子層堆積膜12が形成される。
さらに、アンダーコート層101が有機高分子及び無機物質を含有する場合、アンダーコート層101に無機物質が添加されていることで、有機高分子と無機物質とが相俟って、原子層堆積膜12の前駆体の吸着密度をさらに向上させることができる。
図10は、本発明の第2の実施形態に係る積層体製造装置の概略構成を示す正面図である。図10において、図2に示す第1の実施形態の積層体製造装置20と同一構成部分には、同一符号を付す。
次に、図10を参照して、図9に示す積層体100を製造する際に使用する第2の実施形態に係る積層体製造装置110について説明する。
第2の実施形態の積層体製造装置110は、第1の実施形態の積層体製造装置20の構成に、さらに、アンダーコート層形成部111を有すること以外は、積層体製造装置20と同様に構成される。
アンダーコート層形成部111は、プラズマ前処理部24と原子層堆積膜形成部26との間に搬送される基材11の一方の面11aと対向するように配置されている。
また、アンダーコート層形成部111は、基材繰り出し用ローラ37と原子層堆積膜形成部26との間を通過する基材11の一方の面11aと対向するように配置されるほか、オーバーコート層形成室61のような処理室を別途設けて、配置されてもよい。
第2の実施形態の積層体製造装置によれば、基材11及び原子層堆積膜12と接触するように、基材11の一方の面11aと原子層堆積膜12との間に、無機物質及び/または有機高分子を含んだアンダーコート層101を形成するアンダーコート層形成部111を有することにより、無機物質及び/または有機高分子を含むアンダーコート層101を形成した場合、積層体100の厚さ方向において、ガスが通過するような隙間が形成されにくくなり、積層体100のガスバリア性を向上させることができる。
図11は、本発明の第2の実施形態に係る積層体の製造方法を説明するためのフローチャートである。
次に、図9〜図11を参照して、第2の実施形態に係る積層体の製造方法について説明する。
図11に示すフローチャートの処理が開始されると、基材搬送部23により、基材巻回用ローラ36に巻回された基材11(例えば、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)よりなるフィルム)が支持部材21の外面21aに沿って、プラズマ前処理部24に向かう方向に搬送される。このとき、基材11は、他方の面11bが支持部材21の外面21aと接触するように搬送される。
その後、一方の面11aが改質された基材は、支持部材21の外面21aに沿って、原子層堆積膜形成部26に搬送され、処理は、STEP12へと進む。
STEP12では、改質された基材11の一方の面11aに、アンダーコート層101を形成する(アンダーコート層形成工程)。
具体的には、例えば、フラッシュ蒸着法により、アンダーコート層101として、厚さ0.1μmとされたアクリル層を形成する。
STEP13では、図7で説明したSTEP2と同様な手法により、複数の膜形成部43を有する原子層堆積膜形成部26により、アンダーコート層101の一方の面101aに、所望の厚さとされた原子層堆積膜12を形成する(原子層堆積膜形成工程)。
例えば、原子層堆積膜12として、厚さ10nmの酸化アルミニウム(Al2O3)膜を形成する。
STEP14では、図7で説明したSTEP3と同様な手法により、原子層堆積膜12の一方の面12aの外周部のみと接触するガイドローラ27により、中間室29を経由して、最も後段に配置された膜形成部43からオーバーコート層形成室61(第2の処理室)内に、アンダーコート層101及び原子層堆積膜12が形成された基材11を案内する(基材案内工程)。
オーバーコート層形成室61内に搬送された基材11は、第1のローラ62により搬送方向を変更され、ガイドローラ85を介して、メインローラ83のローラ面83aに搬送される。
STEP15では、不活性ガス雰囲気に保たれたオーバーコート層形成室61(第2の処理室)内で、原子層堆積膜12の一方の面12aに、オーバーコート層14を形成する(オーバーコート層形成工程)。
これにより、基材11、アンダーコート層101、原子層堆積膜12、及びオーバーコート層14が順次積層された積層体100が製造される。
上記STEP15のオーバーコート層形成工程が終わると、処理は、STEP16へと進む。
STEP16では、オーバーコート層14の一方の面14aと巻き取りローラ82のローラ面とを接触させ、巻き取りローラ82により、積層体100をローラ状に巻き取る(巻き取り工程)。
STEP16では、図7で説明したSTEP5と同様な手法により、積層体100をローラ状に巻き取る。上記STEP16の巻き取り工程が終わると、図11に示す処理は、終了する。
一方、有機高分子を含有するアンダーコート層101を形成する場合、有機高分子が原子層堆積膜12の前駆体と結合しやすい官能基を有するため、有機高分子の各官能基に結合した前駆体同士が互いに結合する。これによって、アンダーコート層101の一方の面101a方向に成長する二次元状の原子層堆積膜12が形成されることになる。
また、有機高分子及び無機物質を含有するアンダーコート層101を形成した場合、アンダーコート層101に無機物質が添加されていることで、有機高分子と無機物質とが相俟って、原子層堆積膜12の前駆体の吸着密度をさらに向上させることができる。
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
図12に示すように、第1の実施形態の変形例に係る積層体製造装置80の構成に、図10に示すアンダーコート層形成部111を設けることで、積層体製造装置120を構成してもよい。
また、第1及び第2の実施形態では、フラッシュ蒸着法または真空蒸着法により、オーバーコート層14を形成する場合を例に挙げて説明したが、化学蒸着法(例えば、CVD法)により、オーバーコート層14を形成してもよい。
また、オーバーコート層14を形成する領域とその外部との差圧を大きく取る必要がなくなる。
本発明は、エレクトロルミネッセンス素子(EL素子)、液晶ディスプレイ、半導体ウェハ等の電子部品、医薬品や食料等の包装用フィルム、精密部品の包装用フィルム等に使用される積層体の製造方法、及び該積層体を製造する積層体製造装置に適用できる。
Claims (14)
- 帯状の基材の一方の面側に、少なくとも原子層堆積膜とオーバーコート層とがこの順で積層する積層体の製造のうち、前記原子層堆積膜及び前記オーバーコート層がインラインで形成される積層体の製造方法であって、
第1の処理室内で、前記基材の一方の面に前記原子層堆積膜を形成する原子層堆積膜形成工程と、
前記原子層堆積膜の前記基材とは反対側の一方の面の外周部のみと接触するガイドローラにより、前記原子層堆積膜が形成された前記基材を、前記第1の処理室から第2の処理室内に案内する基材案内工程と、
前記第2の処理室内に案内された前記原子層堆積膜の一方の面に、オーバーコート層を形成するオーバーコート層形成工程と、
前記オーバーコート層を形成後、前記第2の処理室内で、前記オーバーコート層の前記原子層堆積膜とは反対側の一方の面に巻き取りローラのローラ面とを接触させて該巻き取りローラにより前記積層体をロール状に巻き取る巻き取り工程と、
を含み、
前記基材案内工程では、前記原子層堆積膜の前記基材とは反対側の一方の面の外周部のみと接触するガイドローラと、前記原子層堆積膜が形成された前記基材を前記ガイドローラに押し付ける押さえローラとにより、前記原子層堆積膜が形成された前記基材を、前記第1の処理室から第2の処理室内に案内し、前記押さえローラの前記基材を前記ガイドローラに押し付けるローラ面は、前記基材の案内方向からみて、前記基材側に向けて凸形状となっていることを特徴とする積層体の製造方法。 - 前記オーバーコート層形成工程では、前記原子層堆積膜よりも機械的強度の高い前記オーバーコート層を形成することを特徴とする請求項1に記載の積層体の製造方法。
- 前記オーバーコート層形成工程では、前記原子層堆積膜と同等の機械的強度を有する前記オーバーコート層を、前記オーバーコート層の厚さが前記原子層堆積膜の厚さよりも厚くなるように形成することを特徴とする請求項1に記載の積層体の製造方法。
- 前記原子層堆積膜形成工程の前に、前記基材の一方の面に、無機物質及び有機高分子の少なくとも一方を含有するアンダーコート層を形成するアンダーコート層形成工程を有し、
前記原子層堆積膜形成工程では、前記アンダーコート層の前記基材とは反対側の一方の面に対し、該アンダーコート層の一方の面から露出する前記無機物質及び前記有機高分子の一方と結合するように、前記原子層堆積膜を形成することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。 - 前記基材案内工程では、前記第1の処理室内の圧力と、前記第2の処理室内の圧力との間の圧力とされた中間室を経由して、前記基材を前記第1の処理室から前記第2の処理室に案内することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
- 前記オーバーコート層形成工程では、フラッシュ蒸着法により、前記オーバーコート層を形成することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
- 前記オーバーコート層形成工程では、真空蒸着法により、前記オーバーコート層を形成することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
- 前記オーバーコート層形成工程では、化学蒸着法により、前記オーバーコート層を形成することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
- 前記巻き取り工程は、前記オーバーコート層を形成後、前記第2の処理室内で、前記基材の一方の面とは反対側の他方の面をダンサーローラのローラ面に接触させた後、前記ダンサーローラの外径よりも大きな外径であり、前記オーバーコート層の前記原子層堆積膜とは反対側の一方の面に巻き取りローラのローラ面を接触させて該巻き取りローラにより前記積層体をロール状に巻き取ることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
- 帯状の基材をインラインでロールツーロール方式により、該基材、及び該基材の一方の面側に形成される原子層堆積膜を含む積層体を形成する積層体製造装置であって、
円筒面からなる外面によって、前記基材の一方の面とは反対側の他方の面を支持する支持部材と、
前記支持部材の外面に沿って、前記基材を設定した搬送方向に搬送する搬送部と、
前記基材を第1の処理室に導入及び導出可能な状態で前記支持部材の外面に配置され、前記第1の処理室内で前記基材の一方の面に前記原子層堆積膜を形成する原子層堆積膜形成部と、
前記搬送方向において前記原子層堆積膜形成部の後段に配置された第2の処理室内で、前記原子層堆積膜の一方の面にオーバーコート層を形成するオーバーコート層形成部と、
前記原子層堆積膜の一方の面の外周部のみと接触し、前記原子層堆積膜が形成された前記基材を前記第2の処理室内に案内する第1のガイドローラと、
前記オーバーコート層形成部の後段に配置され、第2の処理室内で、前記積層体を構成する前記オーバーコート層の一方の面と接触することで該積層体をロール状に巻き取る積層体巻き取り部と、
前記原子層堆積膜が形成された前記基材を、前記第1のガイドローラのローラ面に押し付ける押さえローラと、
を有し、
前記押さえローラは、前記基材の一方の面とは反対側の他方の面に接触する押さえローラ本体を備え、
前記押さえローラ本体の前記基材に接触するローラ面は、前記基材の搬送方向からみて、前記基材側に向けて凸形状となっていることを特徴とする積層体製造装置。 - 前記積層体巻き取り部は、前記基材の一方の面とは反対側の他方の面に接触するローラ面を有するダンサーローラと、前記ダンサーローラの後段に配置され、前記ダンサーローラの外径よりも大きな外径であり、前記オーバーコート層の一方の面に接触するローラ面を有する巻き取りローラと、を備えることを特徴とする請求項10に記載の積層体製造装置。
- 前記オーバーコート層形成部は、前記原子層堆積膜の一方の面の外周部のみと接触する第2のガイドローラを含むことを特徴とする請求項10または請求項11に記載の積層体製造装置。
- 前記第1の処理室から前記第2の処理室に前記基材を搬送する際、及び前記第2の処理室から前記基材を搬出させる際に通過する中間室を有することを特徴とする請求項10〜請求項12のいずれか1項に記載の積層体製造装置。
- 前記搬送方向において前記原子層堆積膜形成部の前段に配置され、前記基材の一方の面に、無機物質及び有機高分子の少なくとも一方を含有するアンダーコート層を形成するアンダーコート層形成部を有することを特徴とする請求項10〜請求項13のいずれか1項に記載の積層体製造装置。
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