以下、本発明に係るアキシャルピストン式液圧ポンプの実施の形態を、油液の代表例として作動油を圧送する可変容量型斜板式油圧ポンプに適用した場合を例に挙げ、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1ないし図7は本発明の第1の実施の形態を示している。図中、1は本実施の形態で採用したアキシャルピストン式液圧ポンプとしての可変容量型斜板式油圧ポンプ(以下、油圧ポンプ1という)を示している。2は油圧ポンプ1の外殻を構成する中空なケーシングで、該ケーシング2は、一端側(図1の右端側)がフロント底部3Aとなった段付筒状のケーシング本体3と、該ケーシング本体3の他端側を閉塞するようにケーシング本体3に設けられたリアケーシング4とにより構成されている。
また、ケーシング2のケーシング本体3には、図1に示すようにフロント底部3Aから軸方向に離間した位置にアクチュエータ取付部3Bが設けられ、該アクチュエータ取付部3Bは、ケーシング本体3の径方向外側へと突出している。そして、アクチュエータ取付部3B内には、後述の傾転アクチュエータ26等が設けられている。一方、ケーシング2のリアケーシング4には、後述の吸入通路23、吐出通路24,25等が形成され、これらの通路23,24,25は、後述の弁板18を介してシリンダ7,8内との間で作動油(油液)を給排(吸入、吐出)するものである。
5はケーシング2内を軸方向に伸長して回転可能に設けられた回転軸で、該回転軸5は、軸方向の一側がケーシング本体3のフロント底部3A内に軸受等を介して回転可能に取付けられ、他側はリアケーシング4に軸受等を介して回転可能に取付けられている。そして、ケーシング本体3のフロント底部3Aから軸方向に突出する回転軸5の一側(突出端側で図1の右端側)には、例えば油圧ショベルの原動機が動力伝達機構(図示せず)等を介して連結され、この原動機により回転軸5は回転駆動される。
6はケーシング2内に回転軸5を介して回転可能に設けられたシリンダブロックで、該シリンダブロック6は、回転軸5の外周側にスプライン結合して取付けられ、回転軸5と一体に回転駆動される。ここで、シリンダブロック6には、後述する複数のシリンダ7,8がシリンダポート9,10と共に形成(穿設)され、シリンダブロック6の後側端面(図1の左側端面)は、後述の弁板18と摺接する凹球面状の摺接面6Aとなっている。即ち、シリンダブロック6には、周方向に離間して軸方向に伸長する複数のシリンダ7,8と、該各シリンダ7,8に対応した位置で摺接面6Aに開口したシリンダポート9,10とが形成されている。
7はシリンダブロック6に周方向に離間して同心円上に例えば72°の間隔をもって5個形成(穿設)された第1シリンダを示している。この第1シリンダ7は、シリンダブロック6内を軸方向に伸長して設けられている。そして、第1シリンダ7は、一端側となる前端側(図1および図3の右端側)がシリンダブロック6の前側端面(図1の右側端面)に開口した筒部7Aと、該筒部7Aの他端側となる後端側(図1および図3の左端側)を閉塞する底部7Bとにより構成されている。また、第1シリンダ7の底部7B側には、後述の第1シリンダポート9が開口している。
8はシリンダブロック6に周方向に離間して同心円上に例えば72°の間隔をもって5個形成(穿設)された第2シリンダを示している。この第2シリンダ8は、シリンダブロック6の周方向に関して第1シリンダ7と交互に(互い違いに)配置され、シリンダブロック6内を軸方向に伸長して設けられている。そして、第2シリンダ8は、第1シリンダ7と同様に、一端側となる前端側がシリンダブロック6の前側端面に開口した筒部8Aと、該筒部8Aの他端側となる後端側を閉塞する底部8Bとにより構成されている。また、第2シリンダ8の底部8B側には、後述の第2シリンダポート10が開口している。
9はシリンダブロック6のうち後述の弁板18と摺接する摺接面6Aに開口する複数(第1シリンダ7と同数)の第1シリンダポートを示している。これら各第1シリンダポート9は、弁板18の吸入ポート19と吐出ポート20の内側ポート部21とに間欠的に連通され、第1シリンダ7内に作動油(油液)を流入,流出させるものである。
ここで、各第1シリンダポート9は、一端側となる前端側(図1および図3の右端側)が各第1シリンダ7の底部7Bに連通(接続)すると共に、他端側となる後端側(図1および図3の左端側)がシリンダブロック6の摺接面6Aに開口する内径側開口9Aとなっている。そして、内径側開口9Aは、シリンダブロック6の摺接面6Aのうち後述する吐出ポート20の内側ポート部21に対応する位置に配置され、各第1シリンダポート9は、内径側開口9Aを介して内側ポート部21に連通可能となっている。
10はシリンダブロック6のうち後述の弁板18と摺接する摺接面6Aに開口する複数(第2シリンダ8と同数)の第2シリンダポートを示している。これら各第2シリンダポート10は、弁板18の吸入ポート19と吐出ポート20の外側ポート部22とに間欠的に連通され、第2シリンダ8内に作動油(油液)を流入,流出させるものである。
ここで、各第2シリンダポート10は、一端側となる前端側(図1および図3の右端側)が各第2シリンダ8の底部8Bに連通(接続)すると共に、他端側となる後端側(図1および図3の左端側)は、シリンダブロック6の摺接面6Aに開口する外径側開口10Aとなっている。そして、外径側開口10Aは、シリンダブロック6の摺接面6Aのうち後述する吐出ポート20の外側ポート部22に対応する位置に配置され、各第2シリンダポート10は、外径側開口10Aを介して外側ポート部22に連通可能となっている。
そして、本実施の形態の場合は、図4に示すように、各シリンダポート9,10の開口9A,10Aは、シリンダブロック6の内径側に配置される複数(5個)の内径側開口9Aと、該内径側開口9Aより径方向外側に配置される複数(5個)の外径側開口10Aとの、2組の配列として構成している。換言すれば、各シリンダポート9,10の開口9A,10Aは、シリンダブロック6の内径側に位置して周方向に間隔をもって配置された複数の内径側開口9Aと、該各内径側開口9Aよりも径方向外側に位置して周方向に間隔をもって配置された複数の外径側開口10Aとを、周方向に交互に千鳥状に配列する構成となっている。
この場合、図3に示すように、各第1シリンダポート9は、各第1シリンダ7の底部7B側から内径側開口9Aに向かうほど回転軸5に近付く方向に傾斜し、各第2シリンダポート10は、各第2シリンダ8の底部8B側から外径側開口10Aに向かうほど回転軸5に近付く方向に傾斜している。これにより、内径側開口9Aおよび外径側開口10Aを、シリンダブロック6の摺接面6Aのうち回転軸5の近傍(回転中心側)に配置している。即ち、本実施の形態の場合は、内径側開口9Aおよび外径側開口10Aを回転軸5の近傍(シリンダブロック6の内径側)に配置することにより、内径側開口9Aおよび外径側開口10Aの周速を小さくし、油圧ポンプ1の自吸性能を向上できるようにしている。
次に、11はシリンダブロック6の端面となる摺接面6Aに設けられた内径側液溜りとしての内径側油溜りで、該内径側油溜り11は、周方向に隣合う各内径側開口9Aの間に位置して有底状の凹溝からなるものである。ここで、各内径側油溜り11は、周方向に隣合う各内径側開口9Aの間で周方向に延びる1本の長溝によりそれぞれ形成され、シリンダブロック6の回転中心軸を中心とした同一円周上に配置されている。具体的には、各内径側油溜り11は、図3および図7に示すように、略四角形状の断面(径方向断面)を有し、その開口は、図4および図6に示すように、シリンダブロック6の回転中心軸を中心とした略扇状となっている。
この場合、各内径側油溜り11は、第1シリンダポート9の各内径側開口9Aと同一円周上に配置すると共に、その幅寸法W11は、後述の弁板18の内側ポート部21の幅寸法W21以下に(より好ましくは、内側ポート部21の幅寸法W21よりも小さくなるように)設定している。また、内径側油溜り11は、例えば、シリンダブロック6の周方向に関し、中間部が最深となる平坦面状の底部となり、両端部が中間部から離れるに従って漸次浅くなる傾斜面状の傾斜部となっている。このような内径側油溜り11は、例えばカッタを用いた切削加工により、シリンダブロック6の端面となる摺接面6Aに形成することができる。
内径側油溜り11には、運転時に、シリンダブロック6の回転に伴って、各シリンダポート9,10を通じて給排される高圧の作動油の一部が貯留されると共に、その貯溜された高圧の作動油は、内径側油溜り11からシリンダブロック6の摺接面6Aと後述する弁板18の摺接面18Aとの間に潤滑油として供給される(行き渡る)。これにより、後述する外径側油溜り12による作動油の供給と相まって、運転状況(負荷状況)に拘わらず、シリンダブロック6の摺接面6Aと弁板18の摺接面18Aとの間に作動油による油膜を保持することができ、これら両摺動面6A,18Aの潤滑性、摺動性を向上することができる。
12はシリンダブロック6の端面となる摺接面6Aに設けられた外径側液溜りとしての外径側油溜りで、該外径側油溜り12は、周方向に隣合う各外径側開口10Aの間に位置して有底状の凹溝からなるものである。ここで、各外径側油溜り12は、周方向に隣合う各外径側開口10Aの間で周方向に延びる1本の長溝によりそれぞれ形成され、シリンダブロック6の回転中心軸を中心とした同一円周上に配置されている。具体的には、外径側油溜り12は、図3に示すように、略四角形状の断面(径方向断面)を有し、その開口は、図4および図6に示すように、シリンダブロック6の回転中心軸を中心とした略扇状となっている。
この場合、各外径側油溜り12は、第2シリンダポート10の各外径側開口10Aと同一円周上に配置すると共に、その幅寸法W12は、後述の弁板18の外側ポート部22の幅寸法W22以下に(より好ましくは、外側ポート部22の幅寸法W22よりも小さくなるように)設定している。また、外径側油溜り12は、例えば、シリンダブロック6の周方向に関し、中間部が最深となる平坦面状の底部となり、両端部が中間部から離れるに従って漸次浅くなる傾斜面状の傾斜部となっている。このような外径側油溜り12も、内径側油溜り11と同様に、例えばカッタを用いた切削加工により、シリンダブロック6の端面となる摺接面6Aに形成することができる。
外径側油溜り12には、内径側油溜り11と同様に、運転時に、シリンダブロック6の回転に伴って、各シリンダポート9,10を通じて給排される高圧の作動油の一部が貯留されると共に、その貯溜された高圧の作動油は、外径側油溜り12からシリンダブロック6の摺接面6Aと弁板18の摺接面18Aとの間に潤滑油として供給される(行き渡る)。これにより、内径側油溜り11による作動油の供給と相まって、運転状況(負荷状況)に拘わらず、シリンダブロック6の摺接面6Aと弁板18の摺接面18Aとの間に作動油による油膜を保持することができ、これら両摺動面6A,18Aの潤滑性、摺動性を向上することができる。
次に、13はシリンダブロック6の各シリンダ7,8内にそれぞれ往復動可能に挿嵌された複数(合計10本)のピストンで、該各ピストン13は、シリンダブロック6の回転に伴って第1,第2シリンダ7,8内を軸方向に摺動し、このときに、後述の吸入通路23側から第1,第2シリンダ7,8内に作動油を吸入しつつ、吸入した作動油を高圧の圧油として後述の吐出通路24,25側に吐出させるものである。
即ち、シリンダブロック6が1回転する間に、各ピストン13は、シリンダ7,8内を上死点から下死点に向けて摺動変位する吸入行程と、下死点から上死点に向けて摺動変位する吐出行程とを繰返す。そして、シリンダブロック6の半回転分に相当するピストン13の吸入行程では、後述の吸入通路23側からシリンダ7,8内に作動油を吸込み、シリンダブロック6の残りの半回転分に相当するピストン13の吐出行程では、ピストン13が各シリンダ7,8内の作動油を高圧の圧油として後述の吐出通路24,25側から外部の吐出配管へと吐出させるものである。
14は各ピストン13の軸方向一側(突出側)の端部に揺動可能に設けられたシューで、該各シュー14は、ピストン13からの押付力(油圧力)で後述する斜板16の平滑面16Bに押圧される。そして、各シュー14は、この状態で回転軸5、シリンダブロック6およびピストン13と一緒に回転することにより、リング状軌跡を描くように平滑面16B上を摺動するものである。
15はケーシング本体3のフロント底部3Aに設けられた斜板支持体で、該斜板支持体15は、図1に示す如く回転軸5の周囲に位置して斜板16の裏面側に配置され、ケーシング本体3のフロント底部3Aに固定されている。そして、斜板支持体15には、斜板16を傾転可能に支持する一対の傾転摺動面15Aが凹湾曲面として形成され、該各傾転摺動面15Aは回転軸5を挟んで左,右(または、上,下)に離間している。
16はケーシング2内に傾転可能に設けられた斜板で、該斜板16は、ケーシング本体3のフロント底部3A側に斜板支持体15を介して取付けられている。ここで、斜板16は、斜板本体16Aと、該斜板本体16Aの表面側に固定して設けられ摺動面としての平滑面16Bが形成された平滑板16Cとにより構成されている。また、斜板16(斜板本体16A、平滑板16C)の中央部には、回転軸5が隙間をもって挿通される挿通穴16A1,16C1が穿設されている。そして、斜板16は油圧ポンプ1の容量可変部を構成し、斜板16(斜板本体16A)の背面側は、斜板支持体15の各傾転摺動面15A上に傾転可能に当接されている。そして、斜板16は、後述の傾転アクチュエータ26により傾転駆動されるものである。
17は斜板16の側部に一体に形成された傾転レバーを示している。この傾転レバー17は、斜板16(斜板本体16A)の側部から後述の傾転アクチュエータ26側に向けて延設され、その先端側は傾転アクチュエータ26に回動可能に連結されている。これにより、斜板16は、傾転レバー17を介して傾転アクチュエータ26により傾転されるものである。
18はシリンダブロック6の摺接面6Aとリアケーシング4との間に位置して該リアケーシング4側に固定して設けられた弁板で、該弁板18は、全体として円板状に形成されている。そして、弁板18の一側面(図1の右側面)側は、凸球面状の摺接面18Aとなり、該摺接面18Aには、動圧パッド18B(図2参照)を介してシリンダブロック6の端面である摺接面6Aが摺接する構成となっている。
また、弁板18には、各シリンダ7,8と各シリンダポート9,10を介して間欠的に連通する吸入ポート19、吐出ポート20が設けられている。具体的には、図2に示すように、弁板18には、周方向に沿って円弧状に延びる単一の吸入ポート19と、後述する吐出ポート20とが穿設され、吸入ポート19はシリンダポート9,10に同時に連通するものである。
20は吸入ポート19と径方向で対向して弁板18に穿設された吐出ポートで、該吐出ポート20は、内側ポート部21と外側ポート部22とにより構成されている。ここで、内側ポート部21と外側ポート部22は、弁板18の径方向に互いに離間して周方向に延びる眉形状の長穴として形成されている。また、内側ポート部21は、第1シリンダ7に連通する第1シリンダポート9の内径側開口9Aと対応して径方向内側に配置されると共に、外側ポート部22は、第2シリンダ8に連通する第2シリンダポート10の外径側開口10Aと対応して径方向外側に配置されている。
そして、各ピストン13が第1,第2シリンダ7,8内を上死点位置から下死点位置へとストロークする吸入行程では、両方のシリンダポート9,10が吸入ポート19と連通し、吸入ポート19から第1,第2シリンダ7,8内に作動油が吸込まれる。
また、各ピストン13が第1,第2シリンダ7,8内を下死点位置から上死点位置へとストロークする吐出行程では、第1シリンダポート9と第2シリンダポート10とがそれぞれ吐出ポート20の内側ポート部21と外側ポート部22と個別に連通し、これにより第1,第2シリンダ7,8内の作動油はそれぞれ内側ポート部21と外側ポート部22とに向けて別々に吐出される。
23はリアケーシング4に設けられた1個の吸入通路で、該吸入通路23は、一端側が吸入ポート19と連通し、他端側は外部のタンクに配管(いずれも図示せず)を介して接続されるものである。
24はリアケーシング4に設けられた第1吐出通路で、該第1吐出通路24は、一端側が吐出ポート20の内側ポート部21と連通し、他端側は油圧機器(油圧アクチュエータ)に配管(いずれも図示せず)等を介して接続されている。
25はリアケーシング4に設けられた第2吐出通路で、該第2吐出通路25は、一端側が吐出ポート20の外側ポート部22と連通し、他端側は他の油圧機器(油圧アクチュエータ)に配管(いずれも図示せず)等を介して接続されている。
26はケーシング本体3のアクチュエータ取付部3B内に設けられた傾転アクチュエータで、該傾転アクチュエータ26は、図示しないレギュレータからの傾転制御圧が給排されることにより、傾転レバー17と一緒に斜板16を傾転駆動するものである。
27は各シュー14と各ピストン13の突出端部との間に位置して回転軸5に挿通されたリテーナで、該リテーナ27は、各シュー14を斜板16の平滑面16Bに当接させるものである。ここで、リテーナ27は、全体として環状な板体からなり、その中心部には軸挿通孔27Aが形成され、該軸挿通孔27Aの内周面には後述するリテーナガイド28の外周面が当接する構成となっている。また、リテーナ27のうち軸挿通孔27Aの周囲には、一定の角度間隔をもって複数個のシュー保持孔27Bが設けられ、該各シュー保持孔27Bによって、各シュー14を斜板16の平滑面16Bに当接した状態に保持する構成となっている。
28はリテーナ27とシリンダブロック6との間に位置して回転軸5に挿嵌されたリテーナガイドで、該リテーナガイド28は、リテーナ27の内周面に当接する外周面を有し、この外周面によってリテーナ27を斜板16に向けて押圧するものである。ここで、リテーナガイド28の内周側は、回転軸5に軸方向の移動を可能にスプライン結合され、リテーナガイド28とシリンダブロック6との間には、ばね(図示せず)が設けられている。そして、リテーナガイド28は、シリンダブロック6と一体に回転しつつ、ばねのばね力によりリテーナ27を斜板16に向けて常時押圧し、シリンダブロック6は、ばねのばね力により弁板18に向けて常時押圧される構成となっている。
本実施の形態による油圧ポンプ1は上述の如き構成を有するもので、次にその作動について説明する。
原動機によって回転軸5を回転駆動すると、シリンダブロック6が回転軸5と共に回転し、ピストン13の先端に設けたシュー14が斜板16の平滑面16B上を摺動する。そして、このときに各ピストン13は、第1,第2シリンダ7,8内を上死点位置から下死点位置へとストロークする吸入行程と、第1,第2シリンダ7,8内を下死点位置から上死点位置へとストロークする吐出行程とを繰返す。
この結果、タンク内の作動油(油液)を、吸入通路23、吸入ポート19を通じてシリンダポート9,10から第1,第2シリンダ7,8内に吸入しつつ、この吸入した油液を、圧油として第1,第2シリンダ7,8内から吐出ポート20(内側ポート部21、外側ポート部22)を通じて別々の吐出通路24,25に吐出させ(2組の油圧系統に分岐して吐出させ)、複数の油圧アクチュエータ(油圧機器)を独立して作動させる。
また、油圧ポンプ1のポンプ容量(圧油の吐出量)を調整する場合には、傾転アクチュエータ26によって斜板16の傾転角を変更し、各ピストン13のストローク量を増,減させることにより、ポンプ容量を可変に制御する。
ところで、別々の吐出通路24,25を通じて圧油を2系統に供給する、所謂1シリンダブロック多連ポンプと呼ばれる油圧ポンプ1の場合、内径側開口9Aを有する第1シリンダポート9内の圧力と外径側開口10Aを有する第2シリンダポート10内の圧力は、それぞれの油圧系統の油圧機器の運転状況(負荷状況)に応じて独立して変化する。このため、運転状況によっては、シリンダブロック6と弁板18との間に作用する力のバランスが崩れる虞がある。これにより、例えばシリンダブロック6の摺接面6Aと弁板18の摺接面18Aとの間で局所的な油膜切れが生じ易くなり、シリンダブロック6の摺接面6Aと弁板18の摺接面18Aの潤滑条件、摺動条件が厳しくなるという問題がある。より具体的には、例えば、局所的な油膜切れに伴って、摺接面6A,18Aの摩耗が増大する等、耐久性を確保しにくくなる虞がある。
これに対し、本実施の形態によれば、シリンダブロック6の摺接面6Aのうち各内径側開口9Aの間に内径側油溜り11を設け、各外径側開口10Aの間に外径側油溜り12を設ける構成としている。このため、運転時に、内径側油溜り11と外径側油溜り12に高圧の状態で貯溜される作動油を、これら内径側油溜り11と外径側油溜り12からシリンダブロック6の摺接面6Aと弁板18の摺接面18Aとの間に潤滑油として供給することができる。これにより、運転状況(負荷状況)に拘わらず、シリンダブロック6の摺接面6Aと弁板18の摺接面18Aとの間に作動油による油膜を保持することができ、摺接面6A,18Aの潤滑性、摺動性を向上することができる。この結果、局所的な油膜切れやこれに伴う摩耗の増大等を抑制することができ、耐久性、信頼性を高い次元で確保することができる。
さらに、本実施の形態によれば、内径側油溜り11と外径側油溜り12とを周方向に延びる1本の長溝により形成しているので、内径側油溜り11と外径側油溜り12とに多量の作動油を貯留することができ、該作動油をシリンダブロック6の摺接面6Aと弁板18の摺接面18Aとの間に安定して供給することができる。
この場合、各内径側油溜り11の幅寸法W11を弁板18の内側ポート部21の幅寸法W21以下に(より好ましくは、内側ポート部21の幅寸法W21よりも小さくなるように)設定すると共に、各外径側油溜り12の幅寸法W12を弁板18の外側ポート部22の幅寸法W22以下に(より好ましくは、外側ポート部22の幅寸法W22よりも小さくなるように)設定している。これにより、内径側油溜り11や外径側油溜り12を設けても、吐出ポート20(内側ポート部21、外側ポート部22)から吐出する圧油のシール性を損なうことを抑制することができる。
次に、図8は本発明の第2の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、内径側液溜りと外径側液溜りを短溝により形成したことにある。なお、本実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
図中、31はシリンダブロック6の端面となる摺接面6Aに設けられた内径側液溜りとしての内径側油溜りで、該内径側油溜り31は、周方向に隣合う各内径側開口9Aの間に位置して有底状の凹溝からなるものである。ここで、各内径側油溜り31は、周方向に隣合う各内径側開口9Aの間で周方向に離間してそれぞれ複数(本例の場合は3個)配置された内径側短溝31Aにより形成され、各内径側短溝31Aは、シリンダブロック6の回転中心軸を中心とした同一円周上に配置されている。各内径側短溝31Aは、略四角形状の断面(径方向断面)を有し、その開口は、シリンダブロック6の回転中心軸を中心とした略扇状、または、略四角形状となっている。
この場合、各内径側短溝31Aは、第1シリンダポート9の各内径側開口9Aと同一円周上に配置すると共に、その幅寸法W31は、弁板18の内側ポート部21の幅寸法W21以下に(より好ましくは、内側ポート部21の幅寸法W21よりも小さくなるように)設定している。また、各内径側短溝31Aは、例えば、シリンダブロック6の周方向に関し、中間部が最深となる平坦面状ないし谷状の底部となり、両端部が中間部から離れるに従って漸次浅くなる傾斜面状の傾斜部となっている。このような各内径側短溝31Aは、例えばカッタを用いた切削加工により、シリンダブロック6の端面となる摺接面6Aに形成することができる。
32はシリンダブロック6の端面となる摺接面6Aに設けられた外径側液溜りとしての外径側油溜りで、該外径側油溜り32は、周方向に隣合う各外径側開口10Aの間に位置して有底状の凹溝からなるものである。ここで、各外径側油溜り32は、周方向に隣合う各外径側開口10Aの間で周方向に離間してそれぞれ複数(本例の場合は3個)配置された外径側短溝32Aにより形成され、各外径側短溝32Aは、シリンダブロック6の回転中心軸を中心とした同一円周上に配置されている。各外径側短溝32Aは、各内径側短溝31Aと同様に、略四角形状の断面(径方向断面)を有し、その開口は、シリンダブロック6の回転中心軸を中心とした略扇状、または、略四角形状となっている。
この場合、各外径側短溝32Aは、第2シリンダポート10の各外径側開口10Aと同一円周上に配置すると共に、その幅寸法W32は、弁板18の外側ポート部22の幅寸法W22以下に(より好ましくは、外側ポート部22の幅寸法W22よりも小さくなるように)設定している。また、各外径側短溝32Aは、例えば、シリンダブロック6の周方向に関し、中間部が最深となる平坦面状ないし谷状の底部となり、両端部が中間部から離れるに従って漸次浅くなる傾斜面状の傾斜部となっている。このような各外径側短溝32Aも、各内径側短溝31Aと同様に、例えばカッタを用いた切削加工により、シリンダブロック6の端面となる摺接面6Aに形成することができる。
本実施の形態は、上述の如き内径側油溜り31と外径側油溜り32を用いてシリンダブロック6の摺接面6Aと弁板18の摺接面18Aとの間に潤滑油となる作動油を供給するもので、その基本的作用については、上述した第1の実施の形態によるものと格別差異はない。
特に、本実施の形態の場合は、内径側油溜り31と外径側油溜り32とを、周方向に離間して複数配置された内径側短溝31Aと外径側短溝32Aにより形成しているので、内径側短溝31Aや外径側短溝32Aが吸入ポート19や吐出ポート20(内側ポート部21、外側ポート部22)に接続したときに、これら内径側短溝31Aや外径側短溝32Aに高圧の油液が急激に流入することによる油圧バランスの変動を抑制(低減)することができる。
次に、図9は本発明の第3の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、内径側液溜りと外径側液溜りを短溝により形成すると共に、該短溝の開口形状を円形にしたことにある。なお、本実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
図中、41はシリンダブロック6の端面となる摺接面6Aに設けられた内径側液溜りとしての内径側油溜りで、該内径側油溜り41は、周方向に隣合う各内径側開口9Aの間に位置して有底状の凹溝からなるものである。ここで、各内径側油溜り41は、周方向に隣合う各内径側開口9Aの間で周方向に離間してそれぞれ複数(本例の場合は3個)配置された内径側短溝41Aにより形成され、各内径側短溝41Aは、シリンダブロック6の回転中心軸を中心とした同一円周上に配置されている。
これら各内径側短溝41Aの開口は、円形状となっている。この場合、各内径側短溝41Aは、第1シリンダポート9の各内径側開口9Aと同一円周上に配置すると共に、その幅寸法(直径)W41は、弁板18の内側ポート部21の幅寸法W21以下に(より好ましくは、内側ポート部21の幅寸法W21よりも小さくなるように)設定している。
42はシリンダブロック6の端面となる摺接面6Aに設けられた外径側液溜りとしての外径側油溜りで、該外径側油溜り42は、周方向に隣合う各外径側開口10Aの間に位置して有底状の凹溝からなるものである。ここで、各外径側油溜り42は、周方向に隣合う各外径側開口10Aの間で周方向に離間してそれぞれ複数(本例の場合は3個)配置された外径側短溝42Aにより形成され、各外径側短溝42Aは、シリンダブロック6の回転中心軸を中心とした同一円周上に配置されている。
これら各外径側短溝42Aの開口は、内径側短溝41Aの開口と同様に、円形状となっている。この場合、各外径側短溝42Aは、第2シリンダポート10の各外径側開口10Aと同一円周上に配置すると共に、その幅寸法(直径)W42は、弁板18の外側ポート部22の幅寸法W22以下に(より好ましくは、外側ポート部22の幅寸法W22よりも小さくなるように)設定している。
本実施の形態は、上述の如き内径側油溜り41と外径側油溜り42を用いてシリンダブロック6の摺接面6Aと弁板18の摺接面18Aとの間に潤滑油となる作動油を供給するもので、その基本的作用については、上述した第1の実施の形態によるものと格別差異はない。
特に、本実施の形態の場合は、上述した第2の実施の形態と同様に、内径側油溜り41と外径側油溜り42とを、周方向に離間して複数配置された内径側短溝41Aと外径側短溝42Aにより形成しているので、内径側短溝41Aや外径側短溝42Aが吸入ポート19や吐出ポート20(内側ポート部21、外側ポート部22)に接続したときに、これら内径側短溝41Aや外径側短溝42Aに高圧の油液が急激に流入することによる油圧バランスの変動を抑制(低減)することができる。
次に、図10は本発明の第4の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、シリンダポートの開口を各内径側開口と各中間側開口と各外径側開口との3組の配列として構成したことにある。なお、本実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
図中、51は第1シリンダポートを示し、52は第2シリンダポートを示し、53は第3シリンダポートを示している。これら各シリンダポート51,52,53の開口51A,52A,53Aは、シリンダブロック6の内径側に配置される複数の内径側開口51Aと、該各内径側開口51Aよりも径方向外側に配置される複数の中間側開口52Aと、該各中間側開口52Aよりも径方向外側に配置される複数の外径側開口53Aとの、3組の配列として構成している。換言すれば、各シリンダポート51,52,53の開口51A,52A,53Aは、シリンダブロック6の内径側に位置して周方向に間隔をもって配置された複数の内径側開口51Aと、該各内径側開口51Aよりも径方向外側に位置して周方向に間隔をもって配置された複数の中間側開口52Aと、該各中間側開口52Aよりも径方向外側に位置して周方向に間隔をもって配置された複数の外径側開口53Aとを、周方向に交互に千鳥状に配列する構成となっている。
54はシリンダブロック6の端面となる摺接面6Aに設けられた内径側液溜りとしての内径側油溜りで、該内径側油溜り54は、周方向に隣合う各内径側開口51Aの間に位置して有底状の凹溝からなるものである。ここで、各内径側油溜り54は、上述した第1の実施の形態の内径側油溜り11と同様のもので、周方向に隣合う各内径側開口51Aの間で周方向に延びる1本の長溝により形成され、シリンダブロック6の回転中心軸を中心とした同一円周上に配置されている。
55はシリンダブロック6の端面となる摺接面6Aに設けられた中間側液溜りとしての中間側油溜りで、該中間側油溜り55は、周方向に隣合う各中間側開口52Aの間に位置して有底状の凹溝からなるものである。ここで、各中間側油溜り55は、内径側油溜り54と同様のもので、周方向に隣合う各中間側開口52Aの間で周方向に延びる1本の長溝により形成され、シリンダブロック6の回転中心軸を中心とした同一円周上に配置されている。
56はシリンダブロック6の端面となる摺接面6Aに設けられた外径側液溜りとしての外径側油溜りで、該外径側油溜り56は、周方向に隣合う各外径側開口53Aの間に位置して有底状の凹溝からなるものである。ここで、各外径側油溜り56は、内径側油溜り54、中間側油溜り55と同様のもので、周方向に隣合う各外径側開口53Aの間で周方向に延びる1本の長溝により形成され、シリンダブロック6の回転中心軸を中心とした同一円周上に配置されている。
本実施の形態は、上述の如き内径側開口51A、中間側開口52Aおよび外径側開口53Aを通じて作動油の吸込みと吐出とを行うと共に、上述の如き内径側油溜り54、中間側油溜り55および外径側油溜り56を用いてシリンダブロック6の摺接面6Aと弁板18の摺接面18Aとの間に潤滑油となる作動油を供給するもので、その基本的作用については、上述した第1の実施の形態によるものと格別差異はない。
特に、本実施の形態によれば、各内径側開口51Aの間に内径側油溜り54を設けると共に各中間側開口52Aの間に中間側油溜り55を設け、さらに、各外径側開口53Aの間に外径側油溜り56を設ける構成としている。このため、運転時に、内径側油溜り54と中間側油溜り55と外径側油溜り56に高圧の状態で貯溜される作動油を、これら内径側油溜り54と中間側油溜り55と外径側油溜り56からシリンダブロック6の摺接面6Aと弁板18の摺接面18Aとの間に潤滑油として供給することができる。これにより、運転状況(負荷状況)に拘わらず、シリンダブロック6の摺接面6Aと弁板18の摺接面18Aとの間に作動油による油膜を保持することができ、摺接面6A,18Aの潤滑性、摺動性を向上することができる。この結果、局所的な油膜切れやこれに伴う摩耗の増大等を抑制することができ、耐久性、信頼性を高い次元で確保することができる。
なお、上述した各実施の形態では、シリンダブロック6に第1,第2シリンダ7,8を同心円上に配置した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば、第1シリンダに対して第2シリンダをシリンダブロックの径方向外側または内側にずらして配置してもよい。
さらに、上述した各実施の形態では、アキシャルピストン式液圧ポンプとして、作動油を油液とした可変容量型の斜板式油圧ポンプを例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば、容量固定型の斜板式油圧ポンプ、斜軸式油圧ポンプ等の他の形式の油圧ポンプに適用してもよい。また、油液として作動油以外の液体、例えば各種油、水、液状薬品等の油液を用いることもできる。