JP5913086B2 - ポリカーボネート系複合材料 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリカーボネート系複合材料に関し、より詳しくは、ポリカーボネートと層状珪酸塩との複合材料に関する。
ポリカーボネートは、透明性、耐熱性、耐衝撃性に優れた樹脂であり、電気・電子部品材料、自動車部品材料、光学部品材料などとして広く使用されている。また、このようなポリカーボネートの機械特性や耐熱性を向上させるために様々な充填材が配合されている。
このようなポリカーボネートに充填材を配合した例として、特開2011−63723号公報(特許文献1)には、イソソルビド骨格を含む繰り返し単位とビスフェノール骨格を含む繰り返し単位とを含有するポリカーボネートおよび前記ポリカーボネート中に分散している有機化層状珪酸塩を含有するポリカーボネート系複合材料が開示されている。さらに、前記特許文献1には、有機化層状珪酸塩が、スメクタイトなどの層状珪酸塩を、有機アンモニウム塩、有機ホスホニウム塩、有機ピリジニウム塩、有機スルホニウム塩といった有機オニウム塩などで処理したものであることが記載されている。
また、特開2011−1454号公報(特許文献2)には、イソソルビド骨格を含有する繰り返し単位を含むポリカーボネートおよび有機オニウムイオンの塩により有機化処理された層状珪酸塩を含有するポリカーボネート組成物が開示されている。さらに、前記特許文献2には、有機オニウムイオンとして、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、スルホニウムイオン、ピリジニウムイオン、キノリニウムイオン、イミダゾリウムイオンなどが開示されている。
特開2011−63723号公報 特開2011−1454号公報
しかしながら、本発明者らは、有機アンモニウム塩や有機ホスホニウム塩により有機化された層状珪酸塩をイソソルビド系ポリカーボネートに添加すると、有機化されていない層状珪酸塩を添加した場合に比べて、得られるポリカーボネート系複合材料の耐熱性が低くなることを見出し、また、有機イミダゾリウム塩により有機化された層状珪酸塩を添加した場合においても、有機イミダゾリウム塩の種類によっては、得られるポリカーボネート系複合材料の耐熱性が低くなることを見出した。さらに、本発明者らは、有機ピリジニウム塩や有機イミダゾリウム塩により有機化された層状珪酸塩をイソソルビド系ポリカーボネートに添加すると、イソソルビド系ポリカーボネートのみの場合に比べて、得られるポリカーボネート系複合材料の弾性率は向上するが、有機ピリジニウム塩や有機イミダゾリウム塩の種類によっては、透明性が低下することを見出した。
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、有機化された層状珪酸塩による耐熱性の低下が抑制され、また、イソソルビド系ポリカーボネートの透明性が維持され且つ高い弾性率を有するポリカーボネート系複合材料を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の有機イミダゾリウム塩や特定の有機ピリジニウム塩を用いて有機化された層状珪酸塩をイソソルビド系ポリカーボネートに添加することによって、有機化された層状珪酸塩による耐熱性の低下が抑制され、また、イソソルビド系ポリカーボネートの透明性が維持され且つ高い弾性率を有するポリカーボネート系複合材料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のポリカーボネート系複合材料は、下記式(1):
Figure 0005913086
(式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基およびアリール基のうちのいずれか1つを表し、また、RとR、および/または、RとRは、互いに結合して環を形成してもよい。*は隣接する繰り返し単位との結合部位を表す。)
で表される繰り返し単位を有するポリカーボネート、ならびに下記式(2):
Figure 0005913086
(式(2)中、R〜Rはそれぞれ独立に主鎖の炭素数が1〜25のアルキル基およびアリール基のうちのいずれか1種の基を表し、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、主鎖の炭素数が1〜25のアルキル基、アリール基、水酸基、チオール基、エステル基およびカルボニル基のうちのいずれか1種の基を表し、R〜Rのうちの少なくとも1つが主鎖の炭素数が10〜25のアルキル基である。)
で表されるイミダゾリウムイオンおよび下記式(3):
Figure 0005913086
(式(3)中、R10は主鎖の炭素数が1〜25のアルキル基およびアリール基のうちのいずれか1種の基を表し、R11〜R15はそれぞれ独立に水素原子、主鎖の炭素数が1〜25のアルキル基、アリール基、水酸基、チオール基、エステル基およびカルボニル基のうちのいずれか1種の基を表し、R10〜R15のうちの少なくとも1つが主鎖の炭素数が8〜25のアルキル基である。)
で表されるピリジニウムイオンからなる群から選択される少なくとも1種の有機オニウムイオンを含有する有機化剤により有機化された、前記ポリカーボネート中に分散している有機化層状珪酸塩を、
含有することを特徴とするものである。
また、前記式(2)においては、RおよびRのうちの少なくとも一方が主鎖の炭素数が10〜25のアルキル基であり、RおよびRのうちの残りおよびRがそれぞれ独立に主鎖の炭素数が1〜9のアルキル基およびアリール基のうちのいずれか1種の基であり、R〜Rがそれぞれ独立に水素原子、主鎖の炭素数が1〜9のアルキル基、アリール基、水酸基、チオール基、エステル基およびカルボニル基のうちのいずれか1種の基であることが好ましく、RおよびRのうちの一方が主鎖の炭素数が10〜25のアルキル基であり、RおよびRのうちの他方およびRがそれぞれ独立に主鎖の炭素数が1〜9のアルキル基であり、RおよびRが水素原子であることがより好ましい。
一方、前記式(3)においては、R10が主鎖の炭素数が8〜25のアルキル基であり、R11〜R15はそれぞれ独立に水素原子、主鎖の炭素数が1〜7のアルキル基、アリール基、水酸基、チオール基、エステル基およびカルボニル基のうちのいずれか1種の基であることが好ましく、R10が主鎖の炭素数が8〜25のアルキル基であり、R11〜R15はそれぞれ独立に水素原子および水酸基のうちのいずれか1種の基であることがより好ましい。
なお、本発明にかかる有機化剤を用いて有機化された層状珪酸塩をイソソルビド系ポリカーボネートに添加することによって、得られるポリカーボネート系複合材料において、耐熱性の低下が抑制される理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、有機アンモニウム塩や有機ホスホニウム塩など本発明にかかる有機化剤以外の有機化剤の存在下において、イソソルビド系ポリカーボネートが250℃以上の高温下に曝されると、熱により高分子鎖が切断されて低分子量化するため、ポリカーボネート系複合材料の耐熱性が低下すると推察される。一方、本発明にかかる有機化剤の存在下では、このような熱による高分子鎖の切断が起こりにくく、イソソルビド系ポリカーボネートの耐熱性が維持されると推察される。
また、本発明にかかるイミダゾリウムイオンやピリジニウムイオンを含有する有機化剤を用いて有機化された層状珪酸塩をイソソルビド系ポリカーボネートに添加することによって、得られるポリカーボネート系複合材料において、イソソルビド系ポリカーボネートの透明性が維持され且つ高い弾性率が得られる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、主鎖が長いアルキル基を有するイミダゾリウムイオンやピリジニウムイオンを含有する有機化剤を用いて層状珪酸塩を有機化すると、珪酸塩層の層間距離が長くなる。このような有機化層状珪酸塩をイソソルビド系ポリカーボネートに添加すると、イソソルビド系ポリカーボネート分子が珪酸塩層の層間に取り込まれるため、珪酸塩層の層間距離がさらに長くなり、イソソルビド系ポリカーボネート分子が珪酸塩層の層間に拘束される。また、イソソルビド系ポリカーボネート分子が珪酸塩層の層間に取り込まれることにより、珪酸塩の分散性も向上する。その結果、得られるポリカーボネート系複合材料においては、珪酸塩層がイソソルビド系ポリカーボネート中に高度に分散しているため、イソソルビド系ポリカーボネートと同等の透明性が得られ、また、弾性率が高くなると推察される。
一方、主鎖が長いアルキル基を有していないイミダゾリウムイオンやピリジニウムイオンを含有する有機化剤を用いて層状珪酸塩を有機化しても、珪酸塩層の層間はほとんど拡大しない。このような有機化層状珪酸塩をイソソルビド系ポリカーボネートに添加しても、イソソルビド系ポリカーボネート分子は珪酸塩層の層間に取り込まれにくい。その結果、得られるポリカーボネート系複合材料においては、珪酸塩層が凝集した状態でイソソルビド系ポリカーボネート中に存在しているため、透明性が低下し、弾性率の向上効果が得られないと推察される。
本発明によれば、有機化された層状珪酸塩による耐熱性の低下が抑制され、また、イソソルビド系ポリカーボネートの透明性が維持され且つ高い弾性率を有するポリカーボネート系複合材料を得ることが可能となる。
各種有機化剤により有機化された層状珪酸塩を含有するポリカーボネート系複合材料中の加熱後のイソソルビド系ポリカーボネートの重量平均分子量を示すグラフである。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
本発明のポリカーボネート系複合材料は、下記式(1):
Figure 0005913086
で表される繰り返し単位を有するポリカーボネート、ならびに
下記式(2):
Figure 0005913086
で表されるイミダゾリウムイオンおよび下記式(3):
Figure 0005913086
で表されるピリジニウムイオンからなる群から選択される少なくとも1種の有機オニウムイオンを含有する有機化剤により有機化された、前記ポリカーボネート中に分散している有機化層状珪酸塩を、
含有するものである。
<ポリカーボネート>
先ず、本発明に用いられるポリカーボネートについて説明する。本発明にかかるポリカーボネートは、前記式(1)で表される繰り返し単位有するイソソルビド系ポリカーボネートである。
前記式(1)で表される繰り返し単位において、R〜Rは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基およびアリール基のうちのいずれか1つを表す。前記アルキル基の炭素数は通常1〜18であり、好ましくは1〜6である。前記シクロアルキル基の炭素数は通常3〜8であり、好ましくは3〜6である。前記アルケニル基の炭素数は通常2〜12であり、好ましくは2〜6である。前記アリール基の炭素数は通常6〜18であり、好ましくは6〜12である。なお、前記式(1)中の*は隣接する繰り返し単位との結合部位を表す。
このような繰り返し単位のうち、剛直な構造と剛性に優れるという観点から、後述するイソソルビドまたはその誘導体と炭酸ジエステルとを反応させることによって形成される下記式(1a):
Figure 0005913086
で表される繰り返し単位が好ましい。なお、前記式(1a)中の*は前記式(1)中の*と同義である。
また、前記式(1)において、「RとR」および/または「RとR」は互いに結合して環を形成してもよい。このような環としては、シクロアルキル基、シクロアルケニル基が挙げられる。これらのシクロアルキル基およびシクロアルケニル基の炭素数は通常3〜12であり、好ましくは3〜6である。
前記イソソルビド系ポリカーボネートにおいて、前記式(1)で表される繰り返し単位の含有率としては、全繰り返し単位100mol%に対して、55mol%以上が好ましく、70mol%以上がより好ましく、80mol%以上が特に好ましい。前記式(1)で表される繰り返し単位の含有率が前記下限未満になるとガラス転移温度や貯蔵弾性率が低下する傾向にあり、また、剛性が低下しすぎる傾向にある。
前記式(1)で表される繰り返し単位の含有率の上限としては特に制限はなく、本発明にかかるイソソルビド系ポリカーボネートは、前記式(1)で表される繰り返し単位のみからなるもの(前記式(1)で表される繰り返し単位の含有率が100mol%のもの)であってもよい。なお、「前記式(1)で表される繰り返し単位のみからなるイソソルビド系ポリカーボネート」には、前記式(1)で表される繰り返し単位1種のみからなる重合体の他、前記式(1)で表される繰り返し単位2種以上からなる共重合体も包含される。
また、本発明にかかるイソソルビド系ポリカーボネートは、前記式(1)で表される繰り返し単位以外の繰り返し単位(以下、「他の繰り返し単位」という。)を含むもの(前記式(1)で表される繰り返し単位の含有率が100mol%未満のもの)であってもよい。このような他の繰り返し単位としては、脂肪族ジオールや芳香族ジオールなどの共重合ジオールから誘導される繰り返し単位が挙げられる。
他の繰り返し単位を誘導する脂肪族ジオールは、直鎖状のものであっても、分岐状のものであっても、環状のものであってもよい。直鎖状ジオールとしては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ぺンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールなどが挙げられる。環状ジオール(脂環式ジオール)としては、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、1,2−ビスヒドロキシメチル−3,4−ジメチル−6−(2−メチルプロピル)シクロヘキサン、1,2−ビスヒドロキシメチル−4−(2−メチルペンチル)シクロヘキサン、1,1−ビスヒドロキシメチルシクロプロパンなどが挙げられる。また、一部にポリオルガノシロキサン単位を含む脂肪族ジオールも、他の繰り返し単位を誘導する脂肪族ジオールとして挙げられる。
芳香族ジオールから誘導される繰り返し単位としては、下記式(4):
Figure 0005913086
で表される、ビスフェノール系化合物から誘導される繰り返し単位、下記式(5):
Figure 0005913086
で表される、ビフェノール系化合物から誘導される繰り返し単位、特開2011−1454号公報に記載のポリオルガノシロキサン単位を含む芳香族ジオールから誘導される繰り返し単位などが挙げられる。
前記式(4)で表される繰り返し単位において、R16およびR17は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基およびアリール基のうちのいずれか1つを表す。前記アルキル基の炭素数は通常1〜18であり、好ましくは1〜6である。前記シクロアルキル基の炭素数は通常3〜8であり、好ましくは3〜6である。前記アルケニル基の炭素数は通常2〜12であり、好ましくは2〜6である。前記アリール基の炭素数は通常6〜18であり、好ましくは6〜12である。
また、前記式(4)において、R16とR17は互いに結合して環を形成してもよい。このような環としては、シクロアルキル基、シクロアルケニル基が挙げられる。これらのシクロアルキル基およびシクロアルケニル基の炭素数は通常3〜12であり、好ましくは3〜6である。
前記式(4)中のR18およびR19は、それぞれ独立にアルキル基、アルケニル基およびアリール基のうちのいずれか1つを表す。前記アルキル基の炭素数は通常1〜18であり、好ましくは1〜12である。前記アルケニル基の炭素数は通常2〜12であり、好ましくは2〜6である。前記アリール基の炭素数は通常6〜18であり、好ましくは6〜12である。
前記式(4)において、mおよびnはそれぞれ独立に0〜4の整数であり、好ましくは0〜2の整数である。また、前記式(4)中の*は隣接する繰り返し単位との結合部位を表す。
前記式(5)中のR20およびR21は、それぞれ独立にアルキル基、アルケニル基およびアリール基のうちのいずれか1つを表す。前記アルキル基の炭素数は通常1〜18であり、好ましくは1〜12である。前記アルケニル基の炭素数は通常2〜12であり、好ましくは2〜6である。前記アリール基の炭素数は通常6〜18であり、好ましくは6〜12である。
前記式(5)において、pおよびqはそれぞれ独立に0〜4の整数であり、好ましくは0〜2の整数である。また、前記式(5)中の*は隣接する繰り返し単位との結合部位を表す。
このような芳香族ジオールから誘導される繰り返し単位のうち、熱分解温度が上昇し、耐熱性が向上するという観点から、前記式(4)で表される繰り返し単位が好ましく、後述するビスフェノールまたはその誘導体と炭酸ジエステルとを反応させることによって形成される下記式(4a)〜(4b):
Figure 0005913086
で表される繰り返し単位が好ましい。なお、前記(4a)〜(4b)中のR16〜R19および*は前記式(4)中のR16〜R19および*と同義である。
このような他の繰り返し単位の含有率としては、全繰り返し単位100mol%に対して、45mol%以下が好ましく、30mol%以下がより好ましく、20mol%以下が特に好ましい。例えば、前記式(4)で表される繰り返し単位の含有率が前記上限を超えるとガラス転移温度や貯蔵弾性率が低下する傾向にあり、また、剛性が低下しすぎる傾向にある。
本発明にかかるイソソルビド系ポリカーボネートが前記式(1)で表される繰り返し単位と他の繰り返し単位とを有する共重合体である場合においては、前記式(1)で表される繰り返し単位と他の繰り返し単位が、ポリマー鎖中にランダムに配置されていることが好ましい。例えば、他の繰り返し単位が前記式(4)で表される繰り返し単位である場合には、ランダム配置によって、ビスフェノール骨格またはその誘導体骨格による靱性とイソソルビド骨格またはその誘導体骨格による剛性とがバランスよく高水準で発現される。
また、本発明にかかるイソソルビド系ポリカーボネートの数平均分子量(Mn)としては、1.5万以上が好ましく、2万以上がより好ましく、2.5万以上が特に好ましい。また、重量平均分子量(Mw)としては、3万以上が好ましく、4万以上がより好ましく、5万以上が特に好ましい。なお、前記数平均分子量および前記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィにより測定した標準ポリスチレン換算値である。
次に、本発明に用いられるイソソルビド系ポリカーボネートの製造方法について説明する。本発明にかかるイソソルビド系ポリカーボネートは、重合触媒の存在下で、下記式(6):
Figure 0005913086
で表されるイソソルビドおよびその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種のイソソルビド系化合物と、炭酸ジエステルと、必要に応じて前記他の繰り返し単位を誘導する共重合ジオールとを、溶融して重合(好ましくは、ランダム重合)せしめることによって製造することが可能である。
前記式(6)で表されるイソソルビド系化合物において、R〜Rは前記式(1)中のR〜Rと同義である。このようなイソソルビド系化合物としては、前記式(6)中のR〜Rが全て水素原子であるイソソルビド系化合物が好ましく、例えば、1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−ソルビトール〔イソソルビド〕、1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−マンニトール〔イソマンニド〕、1,4:3,6−ジアンヒドロ−L−ソルビトール〔イソイディド〕などが挙げられる。このようなイソソルビド系化合物は、1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
前記イソソルビド系ポリカーボネートの製造方法において、前記イソソルビド系化合物の割合としては、全ジオール100mol%に対して、55mol%以上が好ましく、70mol%以上がより好ましく、80mol%以上が特に好ましい。前記イソソルビド系化合物の割合が前記下限未満になると、得られるイソソルビド系ポリカーボネートのガラス転移温度や貯蔵弾性率が低下する傾向にあり、また、剛性が低下しすぎる傾向にある。
前記イソソルビド系化合物の割合の上限としては特に制限はなく、ジオールとして前記イソソルビド系化合物のみを使用(前記イソソルビド系化合物を100mol%で使用)してもよいし、前記イソソルビド系化合物と共重合ジオールとを使用(前記イソソルビド系化合物を100mol%未満で使用)してもよい。なお、「ジオールとして前記イソソルビド系化合物のみを使用する場合」には、前記式(6)で表されるイソソルビド系化合物を1種のみ使用する場合の他、前記式(6)で表されるイソソルビド系化合物を2種以上使用する場合も包含される。
前記イソソルビド系ポリカーボネートの製造方法において、必要に応じて用いられる共重合ジオールとしては、脂肪族ジオールや芳香族ジオールなどが挙げられる。脂肪族ジオールとしては、前述した直鎖状ジオール、環状ジオール(脂環式ジオール)などが挙げられる。
芳香族ジオールとしては、下記式(7):
Figure 0005913086
で表されるビスフェノール系化合物、下記式(8):
Figure 0005913086
で表されるビフェノール系化合物、特開2011−1454号公報に記載のポリオルガノシロキサン単位を含む芳香族ジオールなどが挙げられる。
前記式(7)で表されるビスフェノール系化合物において、R16〜R19、mおよびnは前記式(4)中のR16〜R19、mおよびnと同義である。また、前記式(8)で表されるビフェノール系化合物において、R20〜R21、pおよびqは前記式(5)中のR20〜R21、pおよびqと同義である。
このような芳香族ジオールのうち、熱分解温度が上昇し、耐熱性が向上するという観点から、前記式(7)で表されるビスフェノール系化合物が好ましく、下記式(7a)〜(7b):
Figure 0005913086
(式(7a)〜(7b)中のR16〜R19は前記式(4)中のR16〜R19と同義である。)
で表されるビスフェノール系化合物がより好ましく、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールA〕、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン〔ビスフェノールF〕、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン〔ビスフェノールC〕、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン〔ビスフェノールAD〕が特に好ましい。
このような共重合ジオールの割合としては、全ジオール100mol%に対して、45mol%以下が好ましく、30mol%以下がより好ましく、20mol%以下が特に好ましい。例えば、前記ビスフェノール系化合物の割合が前記上限を超えるとガラス転移温度や貯蔵弾性率が低下する傾向にあり、また、剛性が低下しすぎる傾向にある。
また、前記炭酸ジエステルとしては、下記式(9):
Figure 0005913086
(式(9)中、R22およびR23は、それぞれ独立にアルキル基またはアリール基を表す。)
で表される炭酸ジエステルが好ましい。前記アルキル基の炭素数は通常1〜12であり、好ましくは2〜4である。また、前記アリール基の炭素数は通常6〜18であり、好ましくは6〜12である。このような炭酸ジエステルのうち、前記イソソルビド系化合物およびビスフェノール系化合物との反応性の観点から、アルキル基の炭素数が2〜4の炭酸ジアルキルおよび炭酸ジフェニルが好ましく、炭酸ジフェニルがより好ましい。
前記イソソルビド系ポリカーボネートの製造方法において、炭酸ジエステルの割合は、全ジオール1molに対して1〜2molであることが好ましく、1〜1.5molであることがより好ましい。炭酸ジエステルの割合が前記下限未満になると未反応のジオールが残存する傾向にあり、他方、前記上限を超えると未反応の炭酸ジエステルが残存する傾向にあり、いずれの場合も経済的に好ましくない。
前記イソソルビド系ポリカーボネートの製造方法において、前記イソソルビド系化合物2種以上を共重合させる場合や前記イソソルビド系化合物と前記共重合ジオールとを共重合させる場合には、前記イソソルビド系化合物と前記炭酸ジエステルと、必要に応じて前記共重合ジオールとを溶融してランダム重合させることが好ましい。このようにランダム重合させることによってイソソルビド系ポリカーボネートの剛性を低下させることなく、靱性を十分に向上させることができる。また、溶融重合させることによって溶剤の回収が不要であり、生成した樹脂が溶融状態で得られるため直接ペレット化することでき、また、高分子量化が可能となる。他方、溶液重合させると溶剤を回収する工程が必要となり、また、重合時間が長くなる傾向にある。
前記重合反応は、重合触媒の存在下で実施する。前記重合触媒としては、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物などの無機系重合触媒、4−ジメチルアミノピリジン、1,2,4−トリアゾール、イミダゾール、2−ジメチルアミノピリジン、1,2,3−トリアゾール、ピロール、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、テトラゾール、2−ピコリン、3−ピコリン、4−ピコリン、ピペリジンなどの有機系重合触媒が挙げられる。
前記イソソルビド系ポリカーボネートの製造方法において、重合反応温度は180〜260℃であることが好ましく、200〜250℃であることがより好ましい。重合反応温度が前記下限未満になると高分子量のイソソルビド系ポリカーボネートが生成しにくい傾向にあり、他方、前記上限を超えると劣化が起こり、透明なイソソルビド系ポリカーボネートが生成しにくい傾向にある。また、前記重合反応温度まで原料を加熱する際、反応容器内の温度は徐々に上昇させることが好ましい。反応容器内の温度を急激に上昇させると得られたイソソルビド系ポリカーボネートの分子量分布が広くなり、また、低分子量のイソソルビド系ポリカーボネートが生成しやすい傾向にある。
また、前記重合反応時間は2〜6時間であることが好ましい。重合反応時間が前記下限未満になると低分子量のイソソルビド系ポリカーボネートが生成しやすい傾向にあり、他方、前記上限を超えると得られたイソソルビド系ポリカーボネートの分子量分布が広くなり、また、劣化する傾向にある。
このようにして製造されるイソソルビド系ポリカーボネートの末端基は、通常、水酸基または炭酸ジエステル由来の残基であるが、本発明においては、イソソルビド系ポリカーボネートの特性を損なわない範囲において、末端水酸基をアルコキシ基やフェノキシ基といった他の末端基に変更してもよい。このような末端基は、対応するモノヒドロキシ化合物を重合時に添加することによって導入することができる。
<有機化層状珪酸塩>
次に、本発明に用いられる有機化珪酸塩について説明する。本発明にかかる有機化珪酸塩は、スメクタイト、カオリナイト、バーミキュライト、マイカなどの公知の層状珪酸塩を特定の有機化剤を用いて有機化したものである。なお、「層状珪酸塩の有機化」とは、層状珪酸塩の層間および/または表面に有機物を物理的および/または化学的方法(好ましくは化学的方法)により吸着および/または結合させることを意味する。
前記スメクタイトとしては、例えば、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライトなどが挙げられる。前記カオリナイトとしては、例えば、カオリナイト、ハロサイトなどが挙げられる。前記バーミキュライトとしては、例えば、ジオクタヘドラルバーミキュライト、トリオクタヘドラルバーミキュライトなどが挙げられる。前記マイカとしては、例えば、マスコバイト、イライト、セリサイト、フロゴバイト、バイオタイトなどが挙げられる。これらの層状珪酸塩は天然物であっても、水熱合成、溶融法、固相法などによる合成物であってもよい。また、前記層状珪酸塩は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。さらに、層状珪酸塩の陽イオン交換容量は30〜300meq/100gであることが好ましい。
本発明に用いられる有機化剤は、下記式(2):
Figure 0005913086
で表されるイミダゾリウムイオンおよび下記式(3):
Figure 0005913086
で表されるピリジニウムイオンのうちの少なくとも1種の有機オニウムイオンを含有するものである。
前記式(2)中のR〜Rおよび前記式(3)中のR10は、それぞれ独立に主鎖の炭素数が1〜25のアルキル基およびアリール基のうちのいずれか1種の基を表す。また、前記式(2)中のR〜Rおよび前記式(3)中のR11〜R15はそれぞれ独立に水素原子、主鎖の炭素数が1〜25のアルキル基、アリール基、水酸基、チオール基、エステル基およびカルボニル基のうちのいずれか1種の基を表す。なお、本発明において「アルキル基の主鎖」とは、アルキル基中の最も長い炭素鎖を意味する。
さらに、イソソルビド系ポリカーボネートとの相溶性が向上するという観点から、R〜R15を構成するアルキル基およびアリール基には、水酸基、チオール基、エステル基、カルボニル基などの置換基が含まれていてもよく、イソソルビド系ポリカーボネートとの親和性がさらに向上するという観点から、水酸基が含まれていることが好ましい。
本発明にかかるイミダゾリウムイオンにおいては、イミダゾール環の1位および3位の窒素原子および2位の炭素原子のいずれにもアルキル基およびアリール基のうちのいずれか1種の基が結合しているため、本発明にかかるイミダゾリウムイオンの存在下でイソソルビド系ポリカーボネートが高温に曝されても、高分子鎖の切断が起こりにくく、本発明のポリカーボネート系複合材料においては、イソソルビド系ポリカーボネートの高い耐熱性が維持される。一方、イミダゾール環の1位および3位の窒素原子および2位の炭素原子の少なくとも1つ(特に、2位の炭素原子)に水素原子が結合しているイミダゾリウムイオンの存在下では、熱によりイソソルビド系ポリカーボネートの分子鎖が切断されるため、ポリカーボネート系複合材料の耐熱性が低下する。
また、本発明に用いられるイミダゾリウムイオンにおいては、前記式(2)中のR〜Rのうちの少なくとも1つが主鎖の炭素数が10〜25(好ましくは10〜20、より好ましくは10〜14)のアルキル基(以下、「長鎖アルキル基」という。)であり、前記長鎖アルキル基以外のR〜Rは、主鎖の炭素数が1〜9(好ましくは1〜4)のアルキル基およびアリール基(好ましくはフェニル基またはベンジル基)のうちのいずれか1種の基であり、前記長鎖アルキル基以外のR〜Rは、水素原子、主鎖の炭素数が1〜9(好ましくは1〜4)のアルキル基、アリール基(好ましくはフェニル基またはベンジル基)、水酸基、チオール基、エステル基およびカルボニル基のうちのいずれか1種の基である。前記長鎖アルキル基を有するイミダゾリウムイオンを含有する有機化剤を用いて有機化した層状珪酸塩を用いることによって、得られるポリカーボネート系複合材料においては、珪酸塩層がイソソルビド系ポリカーボネート中に高度に分散し、イソソルビド系ポリカーボネートの透明性が維持され且つ高い弾性率が得られる。
一方、前記長鎖アルキル基を有していないイミダゾリウムイオンを含有する有機化剤を用いて有機化した層状珪酸塩を用いると、得られるポリカーボネート系複合材料においては、珪酸塩層が凝集した状態でイソソルビド系ポリカーボネート中に存在し、透明性が低下し、弾性率も十分に向上しない。また、主鎖の炭素数が26以上のアルキル基を有するイミダゾリウムイオンを含有する有機化剤を用いて有機化した層状珪酸塩を用いると、得られるポリカーボネート系複合材料においては、イミダゾリウムイオンが可塑剤として作用するため、弾性率が低下する。
さらに、本発明にかかるイミダゾリウムイオンにおいては、得られるポリカーボネート系複合材料の弾性率がさらに向上するという観点から、前記式(2)中のR〜Rのうちの1つまたは2つ(より好ましくはR〜Rのうちの1つまたは2つ、さらに好ましくはRおよびRのうちの少なくとも一方、特に好ましくはRおよびRのうちの一方)が前記長鎖アルキル基であることが好ましい。また、R〜Rが前記長鎖アルキル基以外の場合には、R〜Rはそれぞれ独立に主鎖の炭素数が1〜9(より好ましくは1〜4)のアルキル基であることがより好ましく、メチル基であることが特に好ましく、R〜Rが前記長鎖アルキル基以外の場合には、R〜Rは水素原子であることが特に好ましい。
また、イミダゾリウムイオンが前記長鎖アルキル基を2つ含有するものである場合、これら2つの長鎖アルキル基の主鎖の炭素数の合計は、得られるポリカーボネート系複合材料の弾性率の観点から、25以下であることが好ましく、20以下であることがより好ましい。
このようなイミダゾリウムイオンのうち、前記式(2)中のRおよびRのうちの少なくとも一方が前記長鎖アルキル基(側鎖に水酸基を有していてもよい。)であり、残りがメチル基であり、Rがメチル基であり、RおよびRが水素原子であるイミダゾリウムイオンが特に好ましく、RおよびRのうちの一方が前記長鎖アルキル基(側鎖に水酸基を有していてもよい。)であり、他方がメチル基であり、Rがメチル基であり、RおよびRが水素原子であるイミダゾリウムイオンが最も好ましい。
このようなイミダゾリウムイオンのカウンターアニオンとしては、Cl、Br、BF 、PF 、AlCl 、AlCl 、NO 、CHCOO、(CFSO、(CFSO、CFCO 、CFSO などが挙げられる。
また、本発明に用いられるピリジニウムイオンにおいては、前記式(3)中のR10〜R15のうちの少なくとも1つが主鎖の炭素数が8〜25(好ましくは10〜20、より好ましくは12〜16)のアルキル基(以下、「長鎖アルキル基」という。)であり、前記長鎖アルキル基以外のR10は、主鎖の炭素数が1〜7(前記長鎖アルキル基の主鎖の炭素数の下限が8の場合)、1〜9(前記長鎖アルキル基の主鎖の炭素数の下限が10の場合)、1〜11(前記長鎖アルキル基の主鎖の炭素数の下限が12の場合)のアルキル基(好ましくは、主鎖の炭素数が1〜4のアルキル基)およびアリール基(好ましくはフェニル基またはベンジル基)のうちのいずれか1種の基であり、前記長鎖アルキル基以外のR11〜R15は、水素原子、主鎖の炭素数が1〜7(前記長鎖アルキル基の主鎖の炭素数の下限が8の場合)、1〜9(前記長鎖アルキル基の主鎖の炭素数の下限が10の場合)、1〜11(前記長鎖アルキル基の主鎖の炭素数の下限が12の場合)のアルキル基(好ましくは、主鎖の炭素数が1〜4のアルキル基)、アリール基(好ましくはフェニル基またはベンジル基)、水酸基、チオール基、エステル基およびカルボニル基のうちのいずれか1種の基である。前記長鎖アルキル基を有するピリジニウムイオンを含有する有機化剤を用いて有機化した層状珪酸塩を用いることによって、得られるポリカーボネート系複合材料においては、珪酸塩層がイソソルビド系ポリカーボネート中に高度に分散し、イソソルビド系ポリカーボネートの透明性が維持され且つ高い弾性率が得られる。
一方、前記長鎖アルキル基を有していないピリジニウムイオンを含有する有機化剤を用いて有機化した層状珪酸塩を用いると、得られるポリカーボネート系複合材料においては、珪酸塩層が凝集した状態でイソソルビド系ポリカーボネート中に存在し、透明性が低下し、弾性率も十分に向上しない。また、主鎖の炭素数が26以上のアルキル基を有するピリジニウムイオンを含有する有機化剤を用いて有機化した層状珪酸塩を用いると、得られるポリカーボネート系複合材料においては、ピリジニウムイオンが可塑剤として作用するため、弾性率が低下する。
さらに、本発明にかかるピリジニウムイオンにおいては、得られるポリカーボネート系複合材料の弾性率がさらに向上するという観点から、前記式(3)中のR10〜R15のうちの少なくともR10を含む1つまたは2つ(特に好ましくはR10のみ)が前記長鎖アルキル基であることが好ましい。
また、ピリジニウムイオンが前記長鎖アルキル基を2つ含有するものである場合、これら2つの長鎖アルキル基の主鎖の炭素数の合計は、得られるポリカーボネート系複合材料の弾性率の観点から、25以下であることが好ましく、20以下であることがより好ましい。
このようなピリジニウムイオンのうち、前記式(3)中のR10が前記長鎖アルキル基(側鎖に水酸基を有していてもよい。)であり、R11〜R15がそれぞれ独立に水素原子および水酸基のいずれかであるピリジニウムイオンが最も好ましい。
このようなピリジニウムイオンのカウンターアニオンとしては、Cl、Br、BF 、PF 、AlCl 、AlCl 、NO 、CHCOO、(CFSO、(CFSO、CFCO 、CFSO などが挙げられる。
本発明に用いられる有機化層状珪酸塩において、層状珪酸塩の含有量(無機成分量)としては、有機化層状珪酸塩全体に対して、50〜90質量%が好ましく、60〜90質量%がより好ましい。層状珪酸塩の含有量が前記下限未満になると導入される有機化剤の量が増加してポリカーボネート系複合材料の物性(例えば、ガラス転移温度)が損なわれる傾向にある。他方、前記上限を超えると有機化層状珪酸塩の層間距離が十分に広がらず、イソソルビド系ポリカーボネート中に有機化層状珪酸塩を均一に分散することが困難となる傾向にある。なお、有機化層状珪酸塩中の層状珪酸塩の含有量(無機成分量)は、熱重量分析法(TGA)や灼熱法などによって求めることができる。
このような有機化層状珪酸塩は公知の方法により調製することができる。また、本発明においては、市販の有機化層状珪酸塩を使用することもできる。
<ポリカーボネート系複合材料>
本発明のポリカーボネート系複合材料は、前記イソソルビド系ポリカーボネートと、このポリカーボネート中に分散している前記有機化層状珪酸塩とを含有するものである。このようなポリカーボネート系複合材料において、有機化層状珪酸塩の含有量としては、ポリカーボネート100質量部に対して、有機化層状珪酸塩中の無機成分量で0.1〜20質量部が好ましく、1.0〜10質量部がより好ましい。有機化層状珪酸塩の含有量が前記下限未満になるとポリカーボネート系複合材料の貯蔵弾性率が十分に向上しない傾向にある。他方、前記上限を超えるとポリカーボネート系複合材料の靭性が低下する傾向にある。
また、本発明のポリカーボネート系複合材料においては、有機化層状珪酸塩の層間距離が有機化層状珪酸塩のもともとの層間距離よりも長くなっていることが好ましい。具体的には1.0Å以上長くなっていることが好ましく、1.2Å以上長くなっていることがより好ましく、1.5Å以上長くなっていることが特に好ましい。また、ポリカーボネート系複合材料中の有機化層状珪酸塩の層間距離としては20Å以上が好ましい。このような層間距離を有するポリカーボネート系複合材料においては、イソソルビド系ポリカーボネートの透明性が維持され、また、高い弾性率が得られる。なお、有機化層状珪酸塩の層間距離は、X線回折装置を用いて測定することができる。
本発明のポリカーボネート系複合材料には、前記有機化層状珪酸塩に加えて、その特性を損なわない範囲において、各種添加剤が含まれていてもよい。このような添加剤としては特に制限はなく、公知の添加剤を使用することができ、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、リン系安定剤、ヒンダードフェノール系安定剤、ヒンダードフェノールとリンを同時に含む安定剤(例えば、特開2012−131858号公報に記載されたフェノール骨格を有する亜リン酸エステル)、着色剤、改質用ポリマー(例えば、耐衝撃改質材、ゴム・エラストマー成分)、離型剤、難燃剤、加水分解改良剤、帯電防止剤、シリカ粒子、ガラス繊維などが挙げられる。
次に、本発明のポリカーボネート系複合材料の製造方法について説明する。本発明のポリカーボネート系複合材料は、下記(i)または(ii)の方法により製造することが好ましい。これにより、本発明のポリカーボネート系複合材料を安定して製造することができる。
(i)前記イソソルビド系ポリカーボネートを溶媒に溶解させ、次いで、この溶液と前記有機化層状珪酸塩とを混合し、その後、前記溶媒を除去する方法。
(ii)前記イソソルビド系ポリカーボネートを溶融しながら前記有機化層状珪酸塩と混合する方法。
先ず、前記(i)の方法について説明する。この方法では、先ず、本発明にかかるイソソルビド系ポリカーボネートを溶媒に溶解する。このような溶媒としては、イソソルビド系ポリカーボネートが溶解するものであれば特に制限はなく、例えば、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルフォキシド、クロロホルム、ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。中でも、有機化層状珪酸塩がイソソルビド系ポリカーボネートとの相互作用に加えて溶媒との相互作用によってより分散するという観点から、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンが好ましい。
次に、このようにして調製した溶液に前記有機化層状珪酸塩を混合する。有機化層状珪酸塩の混合方法としては、有機化層状珪酸塩をそのまま、イソソルビド系ポリカーボネートが溶解した溶液に添加して混合してもよいし、有機化層状珪酸塩を前記溶媒に分散させた後、この分散液と、イソソルビド系ポリカーボネートが溶解した溶液とを混合してもよい。混合時の温度および時間としては、イソソルビド系ポリカーボネートが熱分解しない温度および時間であれば特に制限はないが、50〜150℃が好ましく、1〜5時間が好ましい。
このようにして得られたイソソルビド系ポリカーボネートと有機化層状珪酸塩を含有する混合分散液から前記溶媒を除去することによって本発明のポリカーボネート系複合材料を得ることができる。溶媒の除去方法としては特に制限はなく、例えば、前記混合分散液を常圧下または真空下で加熱して溶媒を蒸発させる方法が挙げられる。溶媒を除去する際の加熱温度としては、イソソルビド系ポリカーボネートが熱分解しない温度であれば特に制限はないが、180℃以下が好ましい。また、ポリカーボネート系複合材料に付着した溶媒を除去するために、溶媒を蒸発させた後のポリカーボネート系複合材料に真空乾燥を施すことが好ましい。
次に、前記(ii)の方法について説明する。この方法では、前記イソソルビド系ポリカーボネートを加熱して溶融させ、この溶融状態のイソソルビド系ポリカーボネートと前記有機化層状珪酸塩を混合する。また、予め、前記イソソルビド系ポリカーボネートと前記有機化層状珪酸塩を混合し、この混合物を加熱しながら溶融混合してもよい。前記イソソルビド系ポリカーボネートまたは前記混合物を加熱する際の温度としては、イソソルビド系ポリカーボネートが溶融し且つ熱分解しない温度であれば特に制限はないが、例えば、イソソルビド系ポリカーボネートの軟化点以上且つ熱分解温度未満、具体的には160〜280℃が好ましい。この加熱温度が前記下限未満になるとイソソルビド系ポリカーボネートが十分に溶融せず、有機化層状珪酸塩をイソソルビド系ポリカーボネート中に均一に分散させることが困難となる傾向にある。他方、前記上限を超えるとイソソルビド系ポリカーボネートが着色(劣化)する傾向にある。混合時間としては特に制限はないが、例えば、1〜120分間が好ましい。溶融混合の方法としては特に制限はなく、ロール、押出機、混練機などを用いて溶融混練する方法が挙げられる。
前記(i)および(ii)の製造方法のうち、容易に有機化層状珪酸塩をイソソルビド系ポリカーボネート中に均一に分散させることができるという観点から、前記(ii)の製造方法(溶融混練法)が好ましい。特に、本発明にかかる有機化層状珪酸塩を用いることによって、従来の有機化層状珪酸塩によるイソソルビド系ポリカーボネートの熱分解が抑制されるため、溶融混練法のように高温(例えば、250℃以上)での加熱が必要な方法でも、本発明のポリカーボネート系複合材料を製造することが可能となる。すなわち、本発明にかかる有機化層状珪酸塩は、溶融混練法など高温(例えば、250℃以上)での樹脂の複合化に適している。
<成形体>
本発明のポリカーボネート系複合材料は、イソソルビド系ポリカーボネートの熱分解が抑制されたものであるため、250℃以上の高温で加熱することが可能である。従って、本発明のポリカーボネート系複合材料を溶融させて各種成形体を製造することが可能である。
このような成形体を製造するに際し、本発明のポリカーボネート系複合材料を溶融する際の温度としては、使用するイソソルビド系ポリカーボネートが溶融し且つ熱分解しない温度であれば特に制限はないが、180〜280℃が好ましい。この温度が前記下限未満になるとポリカーボネート系複合材料が十分に溶融せず、成形が困難となる傾向にある。他方、前記上限を超えるとイソソルビド系ポリカーボネートが着色(劣化)する傾向にある。
このような成形体を製造する方法としては特に制限されず、射出成形、押出成形、インサート成形、ブロー成形、インフレーション成形、異形押出成形、プレス成形、カレンダー成形、射出ブロー成形、真空圧空成形、紡糸、二色成形、などのいずれの方法であってもよい。また、成形体の形状、厚みなどは特に制限されず、具体的な成形体として、射出成形品、押出成形品、圧縮成形品、ブロー成形品、シート、フィルム、糸、ファブリックなどが挙げられる。
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、合成例で得られたポリカーボネートならびに実施例および比較例で得られたポリカーボネート系複合材料の物性は以下の方法により測定した。
<分子量測定(1)>
イソソルビド系ポリカーボネートの数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ((株)昭和通商製「Shodex GPC−101」)を用いて下記条件で測定した。
カラム:昭和電工(株)製「K−805L」。
溶離液:クロロホルム。
流量:1.0ml/分。
標準物質:標準ポリスチレン。
<無機成分量測定>
有機化層状珪酸塩を約5mg秤量し、熱分析装置((株)リガク製「THERMO PLUS」)を用いて下記条件で熱重量変化を測定し、測定終了時の残存量から有機化層状珪酸塩中の無機成分量(質量%)を算出した。
温度:30℃から500℃まで10℃/minで昇温した後、500℃で60分間保持。
測定雰囲気:窒素中。
<分子量測定(2)>
有機化層状珪酸塩/イソソルビド系ポリカーボネート複合材料20mgをクロロホルム4mlに添加して180分間攪拌し、得られた分散液をメンブレンフィルター(孔径:0.5μm)を用いて有機化層状珪酸塩を濾別し、イソソルビド系ポリカーボネートが溶解したクロロホルム溶液を得た。このクロロホルム溶液中のイソソルビド系ポリカーボネートの重量平均分子量(Mw)を前記分子量測定(1)に記載の方法に従って測定し、これを複合材料中のイソソルビド系ポリカーボネートの重量平均分子量(Mw)とした。
<層間距離測定(1)>
X線回折装置((株)リガク製「RINT−2200」)を用いて有機化層状珪酸塩中の珪酸塩層のd(001)面の面間隔を測定(CuKα線を使用)し、これを層間距離とした。
<層間距離測定(2)>
有機化層状珪酸塩/イソソルビド系ポリカーボネート複合材料を真空下、220℃で溶融させ、プレス成形により厚さ0.5mmのフィルムを作製した後、X線試料ホルダーに合わせた形状の試料を切り出した。この試料をX線試料ホルダーに装着し、X線回折装置((株)リガク製「RINT−2200」)を用いて前記複合材料中の珪酸塩層のd(001)面の面間隔を測定(CuKα線を使用)し、これを層間距離とした。
<貯蔵弾性率測定>
前記層間距離測定(2)で作製した厚さ0.5mmのフィルムから、長さ35mm×幅5mmの試験片を切り出し、粘弾性スペクトルメーター(アイティー計測制御(株)製「DVA−220」)を用いて下記条件で有機化層状珪酸塩/イソソルビド系ポリカーボネート複合材料の貯蔵弾性率を測定した。
周波数:10Hz。
温度範囲:−100〜250℃。
昇温速度:5℃/分。
変形モード:引張。
<透明性評価>
前記層間距離測定(2)で作製した厚さ0.5mmのフィルムを目視により観察し、下記基準で有機化層状珪酸塩/イソソルビド系ポリカーボネート複合材料の透明性を判定した。
(判定基準)
A:濁りがなく、フィルムの向こう側の文字等を鮮明に確認することができる。
B:濁りがあり、フィルムの向こう側の文字等をはっきりと確認することができない。
また、実施例および比較例において使用したイソソルビド系ポリカーボネートは以下の方法により合成した。
(合成例)
減圧装置と攪拌装置とを備えるガラス容器に、イソソルビド(Aldrich社製)60.0g(410.57mmol)、ビスフェノールA(和光純薬工業(株)製)4.69g(20.53mmol)および炭酸ジフェニル(東京化成工業(株)製)92.54g(432.0mmol)を仕込んだ。これに、触媒として4−ジメチルアミノピリジン7.0mgを添加した。
窒素ガスをガラス容器内に供給し、攪拌しながらオイルバスを用いてガラス容器内の温度を120℃まで上昇させた後、5分間保持した。その後、ガラス容器内の温度を160℃まで上昇させた後、5分間保持した。さらに、ガラス容器内の温度を180℃まで上昇させたところ、フェノールが発生したため、ガラス容器内を減圧して前記フェノールを溜去しながら、この状態を30分間保持した。次いで、ガラス容器内の温度を200℃まで上昇させ、窒素ガスの供給を停止した後、20分間保持した。その後、ガラス容器内の温度を230℃まで徐々に上昇させた後、230℃〜240℃で5時間保持して溶融重合を実施し、ポリカーボネートを合成した。反応終了後、ガラス容器内を常圧に戻し、室温まで冷却した。
次に、得られた粗ポリカーボネートをクロロホルムに溶解し、この溶液をメタノールに添加してポリカーボネートを沈殿させた。得られたポリカーボネートを110℃で12時間真空乾燥し、イソソルビド骨格含有繰り返し単位の含有率が95mol%のイソソルビド系ポリカーボネート(以下、「ISPC」と略す。)を得た。
このISPCの数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を前記分子量測定(1)に記載の方法に従って測定したところ、Mn=24000、Mw=49600であった。
(調製例1)
有機化剤である1−デシル−2,3−ジメチルイミダゾリウムブロミド(IoLiTec社製、オニウムイオンの化学式:下記式(10)(Rはn−デシル基)。以下、「ImiMe2−C10」と略す。)31.6mmolを80℃の温水(600ml)に溶解し、ImiMe2−C10水溶液を調製した。また、層状珪酸塩であるNa型モンモリロナイト(クニミネ工業(株)製「クニピアF」、イオン交換容量:115mmol/100g。以下、「クレイ」という。)25gを80℃の温水(1700ml)に、ホモジナイザーを用いて10分間撹拌して分散させた。
Figure 0005913086
作製したクレイ分散液に前記ImiMe2−C10水溶液を、ホモジナイザーを用いて撹拌しながら徐々に添加した。ホモジナイザーによる撹拌を10分間継続した後、生成した有機化クレイをろ過により回収し、水で洗浄した。得られた有機化クレイの無機成分量を前記無機成分量測定に記載の方法により測定したところ、78.6質量%であった。
(調製例2)
有機化剤として1−ドデシル−2,3−ジメチルイミダゾリウムクロリド(IoLiTec社製、オニウムイオンの化学式:前記式(10)(Rはn−ドデシル基)。以下、「ImiMe2−C12」と略す。)31.6mmolを用いた以外は調製例1と同様にして有機化クレイを調製した。この有機化クレイの無機成分量を前記無機成分量測定に記載の方法により測定したところ、73.9質量%であった。
(調製例3)
有機化剤として1−テトラデシル−2,3−ジメチルイミダゾリウムクロリド(IoLiTec社製、オニウムイオンの化学式:前記式(10)(Rはn−テトラデシル基)。以下、「ImiMe2−C14」と略す。)31.6mmolを用いた以外は調製例1と同様にして有機化クレイを調製した。この有機化クレイの無機成分量を前記無機成分量測定に記載の方法により測定したところ、71.7質量%であった。
(調製例4)
有機化剤として1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムクロリド(東京化成工業(株)製、オニウムイオンの化学式:前記式(10)(Rはn−ブチル基)。以下、「ImiMe2−C4」と略す。)31.6mmolを用いた以外は調製例1と同様にして有機化クレイを調製した。この有機化クレイの無機成分量を前記無機成分量測定に記載の方法により測定したところ、85.9質量%であった。
(調製例5)
有機化剤として1−ヘキシル−2,3−ジメチルイミダゾリウムクロリド(関東化学(株)製、オニウムイオンの化学式:前記式(10)(Rはn−ヘキシル基)。以下、「ImiMe2−C6」と略す。)31.6mmolを用いた以外は調製例1と同様にして有機化クレイを調製した。この有機化クレイの無機成分量を前記無機成分量測定に記載の方法により測定したところ、85.4質量%であった。
(調製例6)
有機化剤として1−オクチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムクロリド(関東化学(株)製、オニウムイオンの化学式:前記式(10)(Rはn−オクチル基)。以下、「ImiMe2−C8」と略す。)31.6mmolを用いた以外は調製例1と同様にして有機化クレイを調製した。この有機化クレイの無機成分量を前記無機成分量測定に記載の方法により測定したところ、80.2質量%であった。
(調製例7)
有機化剤として1,3−ジデシル−2−メチルイミダゾリウムクロリド(IoLiTec社製、オニウムイオンの化学式:前記式(11)(Rはn−デシル基)。以下、「ImiMe−(C10)2」と略す。)31.6mmolを用いた以外は調製例1と同様にして有機化クレイを調製した。この有機化クレイの無機成分量を前記無機成分量測定に記載の方法により測定したところ、65.2質量%であった。
Figure 0005913086
(調製例8)
有機化剤として1−ドデシルピリジニウムクロリド(東京化成工業(株)製、オニウムイオンの化学式:下記式(12)(Rはn−ドデシル基)。以下、「Py−C12」と略す。)31.6mmolを用いた以外は調製例1と同様にして有機化クレイを調製した。この有機化クレイの無機成分量を前記無機成分量測定に記載の方法により測定したところ、75.5質量%であった。
Figure 0005913086
(調製例9)
有機化剤として1−ヘキサデシルピリジニウムクロリド(東京化成工業(株)製、オニウムイオンの化学式:前記式(12)(Rはn−ヘキサデシル基)。以下、「Py−C16」と略す。)31.6mmolを用いた以外は調製例1と同様にして有機化クレイを調製した。この有機化クレイの無機成分量を前記無機成分量測定に記載の方法により測定したところ、68.1質量%であった。
(調製例10)
有機化剤として1−ヘキシルピリジニウムクロリド(関東化学(株)製、オニウムイオンの化学式:前記式(12)(Rはn−ヘキシル基)。以下、「Py−C6」と略す。)31.6mmolを用いた以外は調製例1と同様にして有機化クレイを調製した。この有機化クレイの無機成分量を前記無機成分量測定に記載の方法により測定したところ、85.1質量%であった。
(調製例11)
有機化剤として1−ドデシル−3−ヒドロキシピリジニウムブロミド(IoLiTec社製、オニウムイオンの化学式:前記式(13)(Rはn−ドデシル基)。以下、「PyOH−C12」と略す。)31.6mmolを用いた以外は調製例1と同様にして有機化クレイを調製した。この有機化クレイの無機成分量を前記無機成分量測定に記載の方法により測定したところ、70.5質量%であった。
Figure 0005913086
(調製例12)
有機化剤としてトリブチルドデシルホスホニウムブロミド(東京化成工業(株)製、オニウムイオンの化学式:下記式(14)。以下、「B3P−C12」と略す。)31.6mmolを用いた以外は調製例1と同様にして有機化クレイを調製した。この有機化クレイの無機成分量を前記無機成分量測定に記載の方法により測定したところ、65.4質量%であった。
Figure 0005913086
(調製例13)
有機化剤としてドデシルトリフェニルホスホニウムブロミド(和光純薬工業(株)製、オニウムイオンの化学式:下記式(15)。以下、「P3P−C12」と略す。)31.6mmolを用いた以外は調製例1と同様にして有機化クレイを調製した。この有機化クレイの無機成分量を前記無機成分量測定に記載の方法により測定したところ、59.7質量%であった。
Figure 0005913086
(調製例14)
有機化剤として1−デシル−3−メチルイミダゾリウムクロリド(関東化学(株)製、オニウムイオンの化学式:下記式(16)。以下、「ImiMe−C10」と略す。)31.6mmolを用いた以外は調製例1と同様にして有機化クレイを調製した。この有機化クレイの無機成分量を前記無機成分量測定に記載の方法により測定したところ、79.0質量%であった。
Figure 0005913086
(調製例15)
有機化剤として1−テトラデシル−3−メチルイミダゾリウムクロリド(IoLiTec社製、オニウムイオンの化学式:下記式(17)。以下、「ImiMe−C14」と略す。)31.6mmolを用いた以外は調製例1と同様にして有機化クレイを調製した。この有機化クレイの無機成分量を前記無機成分量測定に記載の方法により測定したところ、74.8質量%であった。
Figure 0005913086
(実施例1)
前記合成例で合成したISPC(3g)と調製例1で調製した有機化クレイ(有機化剤:ImiMe2−C10)(ISPCに対して無機成分量で5質量%)とを30mlのジメチルアセトアミド(以下、「DMAC」と略す。)に添加し、1時間の超音波処理を施し、さらに、100℃のホットプレート上で3時間撹拌した。得られた分散液をシャーレ(直径:85mm)にキャストし、真空下、60℃で加熱してDMACを蒸発させ、有機化クレイ/ISPC複合材料フィルムを得た。この複合材料を窒素雰囲気下、250℃または270℃で5分間加熱した。加熱後の複合材料中のISPCの重量平均分子量(Mw)を前記分子量測定(2)に記載の方法に従って測定した。その結果を図1に示す。
(実施例2)
有機化クレイとして調製例8で調製した有機化クレイ(有機化剤:Py−C12)をISPCに対して無機成分量で5質量%用いた以外は実施例1と同様にして有機化クレイ/ISPC複合材料フィルムを作製した。このフィルムを窒素雰囲気下、250℃または270℃で5分間加熱した後、加熱後の複合材料中のISPCの重量平均分子量(Mw)を前記分子量測定(2)に記載の方法に従って測定した。その結果を図1に示す。
(比較例1)
有機化クレイの代わりに有機化していないクレイ(Na型モンモリロナイト、クニミネ工業(株)製「クニピアF」、イオン交換容量:115mmol/100g。)をISPCに対して5質量%用いた以外は実施例1と同様にしてクレイ/ISPC複合材料フィルムを作製した。このフィルムを窒素雰囲気下、250℃または270℃で5分間加熱した後、加熱後の複合材料中のISPCの重量平均分子量(Mw)を前記分子量測定(2)に記載の方法に従って測定した。その結果を図1に示す。
(比較例2)
有機化クレイとして4級アンモニウム塩(methyl tallow bis−2−hydroxyethyl ammonium)で有機化したモンモリロナイト(Southern Clay Products社製「Cloisite 30B」)をISPCに対して無機成分量で5質量%用いた以外は実施例1と同様にして有機化クレイ/ISPC複合材料フィルムを作製した。なお、前記無機成分量測定に記載の方法により測定した有機化モンモリロナイトの無機成分量は71.4質量%であった。
このフィルムを窒素雰囲気下、250℃または270℃で5分間加熱した後、加熱後の複合材料中のISPCの重量平均分子量(Mw)を前記分子量測定(2)に記載の方法に従って測定した。その結果を図1に示す。
(比較例3)
有機化クレイとして調製例12で調製した有機化クレイ(有機化剤:B3P−C12)をISPCに対して無機成分量で5質量%用いた以外は実施例1と同様にして有機化クレイ/ISPC複合材料フィルムを作製した。このフィルムを窒素雰囲気下、250℃または270℃で5分間加熱した後、加熱後の複合材料中のISPCの重量平均分子量(Mw)を前記分子量測定(2)に記載の方法に従って測定した。その結果を図1に示す。
(比較例4)
有機化クレイとして調製例13で調製した有機化クレイ(有機化剤:P3P−C12)をISPCに対して無機成分量で5質量%用いた以外は実施例1と同様にして有機化クレイ/ISPC複合材料フィルムを作製した。このフィルムを窒素雰囲気下、250℃または270℃で5分間加熱した後、加熱後の複合材料中のISPCの重量平均分子量(Mw)を前記分子量測定(2)に記載の方法に従って測定した。その結果を図1に示す。
(比較例5)
有機化クレイとして調製例14で調製した有機化クレイ(有機化剤:ImiMe−C10)をISPCに対して無機成分量で5質量%用いた以外は実施例1と同様にして有機化クレイ/ISPC複合材料フィルムを作製した。このフィルムを窒素雰囲気下、250℃または270℃で5分間加熱した後、加熱後の複合材料中のISPCの重量平均分子量(Mw)を前記分子量測定(2)に記載の方法に従って測定した。その結果を図1に示す。
(比較例6)
有機化クレイとして調製例15で調製した有機化クレイ(有機化剤:ImiMe−C14)をISPCに対して無機成分量で5質量%用いた以外は実施例1と同様にして有機化クレイ/ISPC複合材料フィルムを作製した。このフィルムを窒素雰囲気下、250℃または270℃で5分間加熱した後、加熱後の複合材料中のISPCの重量平均分子量(Mw)を前記分子量測定(2)に記載の方法に従って測定した。その結果を図1に示す。
図1に示した結果から明らかなように、有機化剤として、本発明にかかるイミダゾリウム塩を用いた場合(実施例1)および本発明にかかるビリジニウム塩を用いた場合(実施例2)には、加熱後の複合材料中のISPCの重量平均分子量は、有機化していないクレイを用いた場合(比較例1)と同等であった。この結果から、本発明のポリカーボネート系複合材料においては、有機化剤によるポリカーボネートの分子量低下が起こっていないことが確認された。一方、有機化剤として、4級アンモニウム塩を用いた場合(比較例2)、ホスホニウム塩を用いた場合(比較例3〜4)、およびイミダゾール環の2位の炭素原子に水素原子が結合しているイミダゾリウム塩を用いた場合(比較例5〜6)には、加熱後の複合材料中のISPCの重量平均分子量は、有機化していないクレイを用いた場合(比較例1)に比べて減少した。また、有機化剤として4級アンモニウム塩を用いた場合(比較例2)には特に顕著に減少した。
以上の結果から、イミダゾール環の1位と3位の窒素原子だけでなく、2位の炭素原子にもアルキル基を有するイミダゾリウム塩、およびビリジニウム塩がISPCの分子量低下を抑制するために有効な有機化剤であることがわかった。
(実施例3)
前記合成例で合成したISPCと調製例1で調製した有機化クレイ(有機化剤:ImiMe2−C10)とを、これらの合計量が10g、ISPCに対する有機化クレイの量が無機成分量で5質量%となるように混合し、得られた混合物を、循環式小型2軸溶融混練機(ハーケ社製「ミニラボ」)を用いて窒素雰囲気下、265℃、100rpmで5分間溶融混練した。得られた溶融混練物を押出して有機化クレイ/ISPC複合材料ストランドを作製した。
使用した有機化クレイ中の珪酸塩層および得られた複合材料中の珪酸塩層の層間距離をそれぞれ前記層間距離測定(1)および(2)に記載の方法に従って測定した。また、得られた複合材料について、25℃における貯蔵弾性率を前記貯蔵弾性率測定に記載の方法により測定し、透明性を前記透明性評価に記載の方法により評価した。これらの結果を表1に示す。
(実施例4)
有機化クレイとして調製例2で調製した有機化クレイ(有機化剤:ImiMe2−C12)を、ISPCとの合計量が10g、ISPCに対して無機成分量で5質量%となるように混合した以外は実施例3と同様にして有機化クレイ/ISPC複合材料ストランドを作製した。
使用した有機化クレイ中の珪酸塩層および得られた複合材料中の珪酸塩層の層間距離をそれぞれ前記層間距離測定(1)および(2)に記載の方法に従って測定した。また、得られた複合材料について、25℃における貯蔵弾性率を前記貯蔵弾性率測定に記載の方法により測定し、透明性を前記透明性評価に記載の方法により評価した。これらの結果を表1に示す。
(実施例5)
有機化クレイとして調製例3で調製した有機化クレイ(有機化剤:ImiMe2−C14)を、ISPCとの合計量が10g、ISPCに対して無機成分量で5質量%となるように混合した以外は実施例3と同様にして有機化クレイ/ISPC複合材料ストランドを作製した。
使用した有機化クレイ中の珪酸塩層および得られた複合材料中の珪酸塩層の層間距離をそれぞれ前記層間距離測定(1)および(2)に記載の方法に従って測定した。また、得られた複合材料について、25℃における貯蔵弾性率を前記貯蔵弾性率測定に記載の方法により測定し、透明性を前記透明性評価に記載の方法により評価した。これらの結果を表1に示す。
(実施例6)
有機化クレイとして調製例7で調製した有機化クレイ(有機化剤:ImiMe−(C10)2)を、ISPCとの合計量が10g、ISPCに対して無機成分量で5質量%となるように混合した以外は実施例3と同様にして有機化クレイ/ISPC複合材料ストランドを作製した。
使用した有機化クレイ中の珪酸塩層および得られた複合材料中の珪酸塩層の層間距離をそれぞれ前記層間距離測定(1)および(2)に記載の方法に従って測定した。また、得られた複合材料について、25℃における貯蔵弾性率を前記貯蔵弾性率測定に記載の方法により測定し、透明性を前記透明性評価に記載の方法により評価した。これらの結果を表1に示す。
(比較例7)
有機化クレイとして調製例4で調製した有機化クレイ(有機化剤:ImiMe2−C4)を、ISPCとの合計量が10g、ISPCに対して無機成分量で5質量%となるように混合した以外は実施例3と同様にして有機化クレイ/ISPC複合材料ストランドを作製した。
使用した有機化クレイ中の珪酸塩層および得られた複合材料中の珪酸塩層の層間距離をそれぞれ前記層間距離測定(1)および(2)に記載の方法に従って測定した。また、得られた複合材料について、25℃における貯蔵弾性率を前記貯蔵弾性率測定に記載の方法により測定し、透明性を前記透明性評価に記載の方法により評価した。これらの結果を表1に示す。
(比較例8)
有機化クレイとして調製例5で調製した有機化クレイ(有機化剤:ImiMe2−C6)を、ISPCとの合計量が10g、ISPCに対して無機成分量で5質量%となるように混合した以外は実施例3と同様にして有機化クレイ/ISPC複合材料ストランドを作製した。
使用した有機化クレイ中の珪酸塩層および得られた複合材料中の珪酸塩層の層間距離をそれぞれ前記層間距離測定(1)および(2)に記載の方法に従って測定した。また、得られた複合材料について、25℃における貯蔵弾性率を前記貯蔵弾性率測定に記載の方法により測定し、透明性を前記透明性評価に記載の方法により評価した。これらの結果を表1に示す。
(比較例9)
有機化クレイとして調製例6で調製した有機化クレイ(有機化剤:ImiMe2−C8)を、ISPCとの合計量が10g、ISPCに対して無機成分量で5質量%となるように混合した以外は実施例3と同様にして有機化クレイ/ISPC複合材料ストランドを作製した。
使用した有機化クレイ中の珪酸塩層および得られた複合材料中の珪酸塩層の層間距離をそれぞれ前記層間距離測定(1)および(2)に記載の方法に従って測定した。また、得られた複合材料について、25℃における貯蔵弾性率を前記貯蔵弾性率測定に記載の方法により測定し、透明性を前記透明性評価に記載の方法により評価した。これらの結果を表1に示す。
(実施例7)
有機化クレイとして調製例8で調製した有機化クレイ(有機化剤:Py−C12)を、ISPCとの合計量が10g、ISPCに対して無機成分量で5質量%となるように混合した以外は実施例3と同様にして有機化クレイ/ISPC複合材料ストランドを作製した。
使用した有機化クレイ中の珪酸塩層および得られた複合材料中の珪酸塩層の層間距離をそれぞれ前記層間距離測定(1)および(2)に記載の方法に従って測定した。また、得られた複合材料について、25℃における貯蔵弾性率を前記貯蔵弾性率測定に記載の方法により測定し、透明性を前記透明性評価に記載の方法により評価した。これらの結果を表2に示す。
(実施例8)
有機化クレイとして調製例9で調製した有機化クレイ(有機化剤:Py−C16)を、ISPCとの合計量が10g、ISPCに対して無機成分量で5質量%となるように混合した以外は実施例3と同様にして有機化クレイ/ISPC複合材料ストランドを作製した。
使用した有機化クレイ中の珪酸塩層および得られた複合材料中の珪酸塩層の層間距離をそれぞれ前記層間距離測定(1)および(2)に記載の方法に従って測定した。また、得られた複合材料について、25℃における貯蔵弾性率を前記貯蔵弾性率測定に記載の方法により測定し、透明性を前記透明性評価に記載の方法により評価した。これらの結果を表2に示す。
(実施例9)
有機化クレイとして調製例11で調製した有機化クレイ(有機化剤:PyOH−C12)を、ISPCとの合計量が10g、ISPCに対して無機成分量で5質量%となるように混合した以外は実施例3と同様にして有機化クレイ/ISPC複合材料ストランドを作製した。
使用した有機化クレイ中の珪酸塩層および得られた複合材料中の珪酸塩層の層間距離をそれぞれ前記層間距離測定(1)および(2)に記載の方法に従って測定した。また、得られた複合材料について、25℃における貯蔵弾性率を前記貯蔵弾性率測定に記載の方法により測定し、透明性を前記透明性評価に記載の方法により評価した。これらの結果を表2に示す。
(比較例10)
有機化クレイとして調製例10で調製した有機化クレイ(有機化剤:Py−C6)を、ISPCとの合計量が10g、ISPCに対して無機成分量で5質量%となるように混合した以外は実施例3と同様にして有機化クレイ/ISPC複合材料ストランドを作製した。
使用した有機化クレイ中の珪酸塩層および得られた複合材料中の珪酸塩層の層間距離をそれぞれ前記層間距離測定(1)および(2)に記載の方法に従って測定した。また、得られた複合材料について、25℃における貯蔵弾性率を前記貯蔵弾性率測定に記載の方法により測定し、透明性を前記透明性評価に記載の方法により評価した。これらの結果を表2に示す。
(比較例11)
ISPCのみを用いた以外は実施例3と同様にしてISPCストランドを作製した。得られたISPCストランドについて、25℃における貯蔵弾性率を前記貯蔵弾性率測定に記載の方法により測定し、透明性を前記透明性評価に記載の方法により評価した。これらの結果を表1および表2に示す。
(比較例12)
有機化クレイの代わりに有機化していないクレイ(Na型モンモリロナイト、クニミネ工業(株)製「クニピアF」、イオン交換容量:115mmol/100g。)を、ISPCとの合計量が10g、ISPCに対して5質量%となるように混合した以外は実施例3と同様にして有機化クレイ/ISPC複合材料ストランドを作製した。
使用したクレイ中の珪酸塩層および得られた複合材料中の珪酸塩層の層間距離をそれぞれ前記層間距離測定(1)および(2)に記載の方法に従って測定した。また、得られた複合材料について、25℃における貯蔵弾性率を前記貯蔵弾性率測定に記載の方法により測定し、透明性を前記透明性評価に記載の方法により評価した。これらの結果を表1および表2に示す。
Figure 0005913086
Figure 0005913086
表1〜2に示した結果から明らかなように、有機化剤として本発明にかかるイミダゾリウム塩を用いた場合(実施例3〜6)および本発明にかかるビリジニウム塩を用いた場合(実施例7〜9)には、有機化クレイをISPCと複合化することによって、有機化クレイ中の珪酸塩層の層間距離が拡大した。この結果から、本発明のポリカーボネート系複合材料は、クレイの層間にイソソルビド系ポリカーボネート分子が挿入している層間挿入型ナノコンポジットであることがわかった。
また、イミダゾール環の1位の窒素原子に結合しているアルキル基の主鎖の炭素数が8以上のイミダゾリウム塩を用いて有機化したクレイを添加した場合(実施例3〜6および比較例9)には、前記炭素数が6以下のイミダゾリウム塩を用いて有機化したクレイを添加した場合(比較例7〜8)に比べて貯蔵弾性率が高くなり、高い弾性率向上効果が得られた。同様に、ピリジン環の1位の窒素原子に結合しているアルキル基の主鎖の炭素数が12以上のビリジニウム塩を用いて有機化したクレイを添加した場合(実施例7〜9)にも、前記炭素数が6のビリジニウム塩を用いて有機化したクレイを添加した場合(比較例10)に比べて貯蔵弾性率が高くなり、高い弾性率向上効果が得られた。
さらに、有機化剤として前記炭素数が10以上のイミダゾリウム塩を用いた場合(実施例3〜6)および前記炭素数が12以上のビリジニウム塩を用いた場合(実施例7〜9)には、得られた複合材料フィルムにおいては、イソソルビド系ポリカーボネートのみからなるフィルム(比較例11)の透明性が維持されていた。この結果から、本発明にかかる有機化クレイはイソソルビド系ポリカーボネート中に高度に分散していることがわかった。一方、有機化剤として前記炭素数が8以下のイミダゾリウム塩を用いた場合(比較例7〜9)および前記炭素数が6であるビリジニウム塩を用いた場合(比較例10)には、得られた複合材料フィルムは、実施例3〜9で得られた本発明のポリカーボネート系複合材料に比べて透明性に劣るものであり、有機化していないクレイを含有するイソソルビド系ポリカーボネート複合材料フィルム(比較例12)と同様に透明性に劣るものであった。
以上の結果から、有機化層状珪酸塩/イソソルビド系ポリカーボネート複合材料において、イミダゾール環に結合しているアルキル基の主鎖の炭素数が10以上のイミダゾリウム塩あるいはピリジン環に結合しているアルキル基の主鎖の炭素数が12以上のビリジニウム塩を用いて有機化した層状珪酸塩を添加することによって、イソソルビド系ポリカーボネートの透明性を維持しながら、弾性率を向上させることが可能であることが確認された。
以上説明したように、本発明によれば、高い貯蔵弾性率を有する透明なポリカーボネート系複合材料を得ることが可能となる。
したがって、本発明のポリカーボネート系複合材料は、透明性が要求される用途だけでなく、顔料などを添加することによって不透明性が要求される用途に使用することができ、例えば、自動車用部品(樹脂ガラス、ランプカバーなどの透明部品、インストルメントパネル、カーペット、天井用材料などの内装用部品、バンパ、外板などの外装部品)、樹脂ガラス、飲料用容器、電化製品の筐体、光導波路用材料、光ケーブル、光通信用ケーブル、カーペット、洋服などのための繊維、樹脂ネジ、樹脂ナット、電子基盤、各種フィルムなどに使用できる。

Claims (5)

  1. 下記式(1):
    Figure 0005913086
    (式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基およびアリール基のうちのいずれか1つを表し、また、RとR、および/または、RとRは、互いに結合して環を形成してもよい。*は隣接する繰り返し単位との結合部位を表す。)
    で表される繰り返し単位を有するポリカーボネート、ならびに
    下記式(2):
    Figure 0005913086
    (式(2)中、R〜Rはそれぞれ独立に主鎖の炭素数が1〜25のアルキル基およびアリール基のうちのいずれか1種の基を表し、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、主鎖の炭素数が1〜25のアルキル基、アリール基、水酸基、チオール基、エステル基およびカルボニル基のうちのいずれか1種の基を表し、R〜Rのうちの少なくとも1つが主鎖の炭素数が10〜25のアルキル基である。)
    で表されるイミダゾリウムイオンおよび下記式(3):
    Figure 0005913086
    (式(3)中、R10は主鎖の炭素数が1〜25のアルキル基およびアリール基のうちのいずれか1種の基を表し、R11〜R15はそれぞれ独立に水素原子、主鎖の炭素数が1〜25のアルキル基、アリール基、水酸基、チオール基、エステル基およびカルボニル基のうちのいずれか1種の基を表し、R10〜R15のうちの少なくとも1つが主鎖の炭素数が8〜25のアルキル基である。)
    で表されるピリジニウムイオンからなる群から選択される少なくとも1種の有機オニウムイオンを含有する有機化剤により有機化された、前記ポリカーボネート中に分散している有機化層状珪酸塩を、
    含有することを特徴とするポリカーボネート系複合材料。
  2. 前記式(2)中、RおよびRのうちの少なくとも一方が主鎖の炭素数が10〜25のアルキル基であり、RおよびRのうちの残りおよびRがそれぞれ独立に主鎖の炭素数が1〜9のアルキル基およびアリール基のうちのいずれか1種の基であり、R〜Rがそれぞれ独立に水素原子、主鎖の炭素数が1〜9のアルキル基、アリール基、水酸基、チオール基、エステル基およびカルボニル基のうちのいずれか1種の基であることを特徴とする請求項1に記載のポリカーボネート系複合材料。
  3. 前記式(2)中、RおよびRのうちの一方が主鎖の炭素数が10〜25のアルキル基であり、RおよびRのうちの他方およびRがそれぞれ独立に主鎖の炭素数が1〜9のアルキル基であり、RおよびRが水素原子であることを特徴とする請求項2に記載のポリカーボネート系複合材料。
  4. 前記式(3)中、R10が主鎖の炭素数が8〜25のアルキル基であり、R11〜R15はそれぞれ独立に水素原子、主鎖の炭素数が1〜7のアルキル基、アリール基、水酸基、チオール基、エステル基およびカルボニル基のうちのいずれか1種の基であることを特徴とする請求項1に記載のポリカーボネート系複合材料。
  5. 前記式(3)中、R10が主鎖の炭素数が8〜25のアルキル基であり、R11〜R15はそれぞれ独立に水素原子および水酸基のうちのいずれか1種の基であることを特徴とする請求項4に記載のポリカーボネート系複合材料。
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