JP3810446B2 - 芳香族ポリカーボネート樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、特定の層間化合物を含有する芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、芳香族ポリカーボネート樹脂の強度や剛性あるいは寸法精度を向上する目的で、様々な充填材、例えばガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウムウィスカー等の無機繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ、タルク、マイカ、カオリン、ウォラストナイト等の無機粉体の配合が行われてきた。しかし、これらの手法は強度や剛性を高めるものの、靱性を損なう、比重が増す、表面外観が低下するといった欠点があった。こうした充填材あるいは無機粉体の混合における欠点は、一般に充填材の分散不良あるいは分散物のサイズが大き過ぎること、及びマトリックス樹脂との界面の接着不良に起因するものと考えられており、こうした点から芳香族ポリカーボネート樹脂においても充填材の表面処理や微粉化、形状の工夫等様々な試みがなされてきているが必らずしも満足できるものではなかった。
【0003】
また充填材の使用により一般に樹脂材料と同様芳香族ポリカーボネート樹脂においても溶融流動性が低下するという問題があった。更に、ガラス繊維等の無機繊維を充填した場合には繊維の配向方向の成形収縮率が低下するものの、これと垂直方向ではその効果がほとんど見られないという寸法精度の異方性の問題もあった。
【0004】
以上のように、芳香族ポリカーボネート樹脂の強度や剛性等を改良する目的で様々な無機充填材の使用が提案されてきたが、材料の靱性の低下や比重の増加の問題を必ずしも解決できておらず、また、溶融流動性改良の要請は依然としてあり、寸法精度の改良の点においても問題が残されていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、強度や剛性に優れると同時に靱性、特に延性を大きく損なわず、かつ比重の増加が少なく成形表面外観や溶融流動性に優れ、しかも寸法精度が等方的に改良された芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は上述の問題を解決するためになされたものであり、その要旨は、陽イオン交換容量が30ミリ当量/100g以上の層状珪酸塩をホストとし炭素数12以上のアルキル基を有する有機オニウムイオンをゲストとし、且つ有機オニウムイオンの量が原料の層状珪酸塩の陽イオン交換容量に対し0.8〜2.0当量の範囲である層間化合物を、無機灰分量として0.3〜4重量%含むことを特徴とする芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に存する。
【0007】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明で用いられる芳香族ポリカーボネート樹脂は、多価フェノール類を共重合成分として含有しても良い、1種以上のビスフェノール類と、ビスアルキルカーボネート、ビスアリールカーボネート、ホスゲン等の炭酸エステル類との反応により製造される。
【0008】
ビスフェノール類としては、具体的にはビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンすなわちビスフェノールA、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−sec−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−sec−ブチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルプロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジベンジルメタン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4′−ジヒドロキシベンゾフェノン、フェノールフタレイン等が挙げられる。この中で代表的なものは、ビスフェノールA、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン等であり、最も一般的にはビスフェノールAが用いられる。
【0009】
多価フェノール類は、芳香族ポリカーボネート樹脂のレオロジー的性質を変化させたり表面摩耗特性を改良する目的で共重合成分として用いられ、例えば1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等のトリスフェノール類等が挙げられる。
本発明に使用される芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法に制限はないが、ビスフェノール類のアルカリ金属塩と求核攻撃に活性な炭酸エステル誘導体とを原料とし生成ポリマーを溶解する有機溶剤とアルカリ水との界面にて重縮合反応させる界面重合法、ビスフェノール類と求核攻撃に活性な炭酸エステル誘導体とを原料としピリジン等の有機塩基中で重縮合反応させるピリジン法、ビスフェノール類とビスアルキルカーボネートやビスアリールカーボネート等の炭酸エステルとを原料とし溶融重縮合させる溶融重合法が一般に知られている。ここで界面重合法とピリジン法で用いられる求核攻撃に活性な炭酸エステル誘導体としては、ホスゲン、カルボジイミダゾール等が挙げられ、中でもホスゲンが入手容易性から最も一般的である。溶融重合法に用いられる炭酸エステルの具体例については、(a)ビスアルキルカーボネートとしてジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−n−プロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、ジ−n−ブチルカーボネート等が、(b)ビスアリールカーボネートとしてジフェニルカーボネート、ビス(2,4−ジクロロフェニル)カーボネート、ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)カーボネート、ビス(2−ニトロフェニル)カーボネート、ビス(2−シアノフェニル)カーボネート、ビス(4−メチルフェニル)カーボネート、ビス(3−メチルフェニル)カーボネート、ジナフチルカーボネート等が挙げられる。この中で、原料入手容易性においてジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のビスアルキルカーボネート、ジフェニルカーボネート、ビス(4−メチルフェニル)カーボネート、ビス(3−メチルフェニル)カーボネート等のジアリールカーボネートが好ましく用いられ、中でも反応容易性からジフェニルカーボネートが最も好ましく用いられる。
【0010】
本発明で用いられる芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量には特に制限はないが、通常は40℃のテトラヒドロフラン(THF)溶媒によるゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)において、単分子量分散ポリスチレンを対照としての重量平均分子量Mwが15000以上、靱性や成形容易性から好ましくは20000〜80000程度、最も好ましくは35000〜65000程度が適当である。
【0011】
本発明に用いられる層状珪酸塩としては、Al、Mg、Li等を含む八面体シート構造を2枚のSiO4 四面体シート構造がはさんだ形の2:1型が好適であり、その単位構造である1層の厚みは通常9.5Å程度である。具体的には、モンモリロナイト、ヘクトライト、フッ素ヘクトライト、サポナイト、バイデライト、スチブンサイト等のスメクタイト系粘土鉱物、Li型フッ素テニオライト、Na型フッ素テニオライト、Na型四珪素フッ素雲母、Li型四珪素フッ素雲母等の膨潤性合成雲母、バーミキュライト、フッ素バーミキュライト、ハロイサイト等が挙げられ、天然のものでも合成されたものでも良い。
【0012】
本発明においては、これらの層状珪酸塩の陽イオン交換容量(CEC)は30ミリ当量/100g以上である必要があるが、好適には50ミリ当量/100g以上、さらに好適には70ミリ当量/100g以上であるのが望ましい。陽イオン交換容量は、メチレンブルーの吸着量測定により求めることで測定される。陽イオン交換容量が30ミリ当量/100g未満では、層間への有機オニウムイオンの挿入(インターカレーション)量が不十分となり芳香族ポリカーボネート樹脂への分散性が悪くなるため、組成物の強度や剛性の上昇が十分でなく成形表面外観も悪くなる。陽イオン交換容量や入手容易性からこれらの層状珪酸塩の中でも、モンモリロナイト、ヘクトライト等のスメクタイト系粘土鉱物、Li型フッ素テニオライト、Na型フッ素テニオライト、Na型四珪素フッ素雲母等の膨潤性合成雲母が好適に用いられ、特に入手容易性からはベントナイトを精製して得られるモンモリロナイトが、純度の点ではLi型フッ素テニオライト(下記式A)、Na型フッ素テニオライト(下記式B)、Na型四珪素雲母(下記式C)等の膨潤性フッ素雲母が本発明には最適である。なお、式A,B,Cは理想的な組成を示したものであり、厳密に一致している必要はない。
【0013】
【化1】
LiMg2 Li(Si4 O10)F2 (A)
NaMg2 Li(Si4 O10)F2 (B)
NaMg2.5 (Si4 O10)F2 (C)
本発明に用いられる有機オニウムイオンとは、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、スルホニウムイオン、複素芳香環由来のオニウムイオンに代表されるものである。本発明における該オニウムイオン構造を存在させることにより、負に帯電した珪酸塩層の層間に分子間力の小さい炭化水素構造を導入することができるのであって、有機オニウムイオンの種類に特に制限はされない。これらのうち、入手容易性、安定性の点からは、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、複素芳香環由来のオニウムイオンが好適である。
【0014】
アンモニウムイオンとしては、ドデシルアンモニウム、ヘキサデシルアンモニウム、オクタデシルアンモニウム等の1級アンモニウム、メチルドデシルアンモニウム、ブチルドデシルアンモニウム、メチルオクタデシルアンモニウム等の2級アンモニウム、ジメチルドデシルアンモニウム、ジメチルヘキサデシルアンモニウム、ジメチルオクタデシルアンモニウム、ジフェニルドデシルアンモニウム、ジフェニルオクタデシルアンモニウム等の3級アンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、テトラオクチルアンモニウム等の同一のアルキル基を有する4級アンモニウム、トリメチルオクチルアンモニウム、トリメチルデシルアンモニウム、トリメチルドデシルアンモニウム、トリメチルテトラデシルアンモニウム、トリメチルヘキサデシルアンモニウム、トリメチルオクタデシルアンモニウム、トリメチルエイコサニルアンモニウム、トリメチルオクタデセニルアンモニウム、トリメチルオクタデカジエニルアンモニウム等のトリメチルアルキルアンモニウム、トリエチルドデシルアンモニウム、トリエチルテトラデシルアンモニウム、トリエチルヘキサデシルアンモニウム、トリエチルオクタデシルアンモニウム等のトリエチルアルキルアンモニウム、トリブチルドデシルアンモニウム、トリブチルテトラデシルアンモニウム、トリブチルヘキサデシルアンモニウム、トリブチルオクタデシルアンモニウム等のトリブチルアルキルアンモニウム、ジメチルジオクチルアンモニウム、ジメチルジデシルアンモニウム、ジメチルジテトラデシルアンモニウム、ジメチルジヘキサデシルアンモニウム、ジメチルジオクタデシルアンモニウム、ジメチルジオクタデセニルアンモニウム、ジメチルジオクタデカジエニルアンモニウム等のジメチルジアルキルアンモニウム、ジエチルジドデシルアンモニウム、ジエチルジテトラデシルアンモニウム、ジエチルジヘキサデシルアンモニウム、ジエチルジオクタデシルアンモニウム等のジエチルジアルキルアンモニウム、ジブチルジドデシルアンモニウム、ジブチルジテトラデシルアンモニウム、ジブチルジヘキサデシルアンモニウム、ジブチルジオクタデシルアンモニウム等のジブチルジアルキルアンモニウム、メチルベンジルジヘキサデシルアンモニウム等のメチルベンジルジアルキルアンモニウム、ジベンジルジヘキサデシルアンモニウム等のジベンジルジアルキルアンモニウム、トリオクチルメチルアンモニウム、トリドデシルメチルアンモニウム、トリテトラデシルメチルアンモニウム等のトリアルキルメチルアンモニウム、トリオクチルエチルアンモニウム、トリドデシルエチルアンモニウム等のトリアルキルエチルアンモニウム、トリオクチルブチルアンモニウム、トリドデシルブチルアンモニウム等のトリアルキルブチルアンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウム等の芳香環を有する4級アンモニウム、トリメチルフェニルアンモニウム等の芳香族アミン由来の4級アンモニウム等のイオンが挙げられ、ホスホニウムイオンとしては、テトラブチルホスホニウム、テトラオクチルホスホニウム、トリメチルデシルホスホニウム、トリメチルドデシルホスホニウム、トリメチルヘキサデシルホスホニウム、トリメチルオクタデシルホスホニウム、トリブチルドデシルホスホニウム、トリブチルヘキサデシルホスホニウム、トリブチルオクタデシルホスホニウム等の4級ホスホニウムイオンが挙げられ、複素芳香環由来のオニウムイオンとしては、ピリジニウム、キノリニウム等のイオンが挙げられる。
【0015】
これらの有機オニウムイオンのうち珪酸塩層間の疎水化に寄与する炭化水素構造の有効性の点から、トリメチルドデシルアンモニウム、トリメチルテトラデシルアンモニウム、トリメチルヘキサデシルアンモニウム、トリメチルオクタデシルアンモニウム、トリエチルドデシルアンモニウム、トリエチルテトラデシルアンモニウム、トリエチルヘキサデシルアンモニウム、トリエチルオクタデシルアンモニウム等の炭素数12以上のアルキル基を1分子中に1つ有する4級アンモニウム、ジメチルジドデシルアンモニウム、ジメチルジテトラデシルアンモニウム、ジメチルジヘキサデシルアンモニウム、ジメチルジオクタデシルアンモニウム、ジエチルジドデシルアンモニウム、ジエチルジテトラデシルアンモニウム、ジエチルジヘキサデシルアンモニウム、ジエチルジオクタデシルアンモニウム等の炭素数12以上のアルキル基を1分子中に2つ有する4級アンモニウム、トリメチルドデシルホスホニウム、トリメチルヘキサデシルホスホニウム、トリメチルオクタデシルホスホニウム、トリブチルドデシルホスホニウム、トリブチルヘキサデシルホスホニウム、トリブチルオクタデシルホスホニウム等の炭素数12以上のアルキル基を有する4級ホスホニウム等の4級オニウムイオンが好適に用いられる。中でも、トリメチルヘキサデシルアンモニウム、トリメチルオクタデシルアンモニウム等の炭素数16以上のアルキル基を1分子中に1つ有する4級アンモニウム、ジメチルジテトラデシルアンモニウム、ジメチルジヘキサデシルアンモニウム、ジメチルジオクタデシルアンモニウム等の炭素数14以上のアルキル基を1分子中に2つ有する4級アンモニウム、トリメチルヘキサデシルホスホニウム、トリメチルオクタデシルホスホニウム、トリブチルヘキサデシルホスホニウム、トリブチルオクタデシルホスホニウム等の炭素数14以上のアルキル基を有する4級ホスホニウム等の4級オニウムイオンが樹脂組成物の靱性保持と入手容易性の点から更に好適に用いられ、最も好適にはトリメチルオクタデシルアンモニウムイオン、ジメチルジヘキサデシルアンモニウムイオン、ジメチルジオクタデシルアンモニウムイオン、トリブチルヘキサデシルホスホニウムイオン、トリブチルオクタデシルホスホニウムイオンが用いられる。なおこれらの有機オニウムイオンは、単独でも複数種類の混合物としても使用できる。
【0016】
炭素数14以上のアルキル基を有するオニウムイオンを用いると、副次的な好ましい効果として組成物の溶融流動性の大きな向上が見られ、成形性、成形歪み、高複屈折等が改善され得る。これは、比較的長鎖のアルキル基の存在がマトリックス樹脂の分子易動性を向上させるためと考えられる。
本発明の樹脂組成物の原料として好適に用いられる、陽イオン交換容量が30ミリ当量/100g以上の層状珪酸塩をホストとし有機オニウムイオンをゲストとする層間化合物とは、有機オニウムイオンを、負の層格子および交換可能なカチオンを含有する粘土と反応させる公知の技術(例えば特公昭61−5492号公報、特開昭60−42451号公報等に記載)により製造される、層間に該オニウムイオンが挿入(インターカレーション)された化合物を意味する。該層間化合物の調製は、例えば特願平5−245199号、特願平5−245200号等に記載された4級アンモニウムイオンの挿入の場合の反応及び精製方法等により行われる。
【0017】
層間化合物中の有機オニウムイオンの量は、原料の層状珪酸塩の陽イオン交換容量に対し0.8〜2.0当量の範囲であれば特に制限はないが、通常の反応条件では1.0〜1.3当量程度のものとなる。この量が0.8当量よりも少ないと、芳香族ポリカーボネート樹脂への分散性が低下し、2.0当量より多いと該オニウムイオン由来の遊離化合物が顕著となり、成形時の熱安定性低下、発煙、金型汚染、臭気等の原因となる場合がある。
【0018】
層間化合物の水分量は、芳香族ポリカーボネート樹脂との混合時の加水分解等の望ましくない副反応を低減するために、7wt%以下、好ましくは5wt%以下、最も好ましくは3wt%以下に制御することが望ましい。該水分量が7wt%を超えると芳香族ポリカーボネートの加水分解による分子量低下が顕著となり、組成物の靱性が大きく低下する。本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物においては、層状珪酸塩を無機灰分量として0.1〜10重量%、靱性保持と補強効果発現の点から好適には0.3〜8重量%、さらに好適には0.3〜5重量%、延性発現の点で最も好適には0.3〜4重量%含む。ここで無機灰分量とは、芳香族ポリカーボネート組成物の有機成分を650℃の電気炉内で完全に焼失せしめた残渣の重量分率のことである。該無機灰分量が0.1重量%未満の場合は弾性率の向上が顕著でなく、一方10重量%を超えると靱性低下が大きく、いずれの場合も好ましくない。なお、層間化合物を添加する場合は各々単独で用いてもよく併用してもよい。
【0019】
本発明における特定の陽イオン交換容量の層状珪酸塩に有機オニウムイオンをインターカレーションした層間化合物は、芳香族ポリカーボネート樹脂マトリックスに対し極めて優れた劈開分散性を有し、樹脂マトリックス中に微分散され、芳香族ポリカーボネート樹脂の延性を維持しながら極めて効率的に強度や剛性を向上させ、射出成形品において等方的に低い成形収縮率を発現し、しかも溶融粘度を大きく低減させる。
【0020】
本発明においては、陽イオン交換能を持つ層状珪酸塩の層間陽イオンの有機オニウムイオンによる交換において、有機オニウムイオンの構造制御により層間の疎水性を変化させ、構造が制御された有機オニウムイオンのインターカレーションによる層間引力の低減と層間距離の増大の相乗効果により、溶融した芳香族ポリカーボネート樹脂中での機械的剪断力のような簡便な手段でも劈開分散が容易と達成される。
【0021】
本発明において、層状珪酸塩と芳香族ポリカーボネート樹脂との混合方法には特に制限はないが、層間化合物を用いる場合には芳香族ポリカーボネート樹脂の溶融状態で機械的剪断下行われることが肝要であり、この範囲において任意の段階で添加できる。例えば、重合前の芳香族ポリカーボネート原料に添加し芳香族ポリカーボネートの溶融重合とともに撹拌混合する方法、芳香族ポリカーボネートの溶融重合途中ないしは溶融重合後チップ化前に添加し撹拌混合する方法、あるいはチップ化後の芳香族ポリカーボネート樹脂に添加し押出機等の混練機にて溶融混合する方法等任意の方法で混合可能であるが、生産性、簡便性、汎用性から混練機を用いた方法が好ましい。中でも、剪断効率の高い二軸押出機の使用が好ましく、該層間化合物に含まれる水分を効率的に除去できるベント付き二軸押出機の使用が最適である。本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない限りにおいて必要に応じ常用の各種添加成分、例えばガラス繊維、炭素繊維等の無機繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ、雲母等の無機粉体、各種可塑剤、安定剤、着色剤、難燃剤等を添加できる。
【0022】
更に、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない限りにおいて必要に応じ通常の芳香族ポリカーボネート樹脂にブレンドされる熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマー、例えばポリアミド樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ABS樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリアリーレンスルフィド樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、無水マレイン酸変性ポリスチレン樹脂、エポキシ基を有する化合物で変性されたポリスチレン樹脂、芳香族ポリカーボネートポリシロキサン共重合体、ポリエステルエラストマー、酸無水物基またはエポキシ基を有する化合物で変性されたスチレン系熱可塑性エラストマー、アクリルゴム、コアーシェル型アクリルゴム、MBSゴム等を加えてもよい。
【0023】
【実施例】
以下本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0024】
〔評価項目と測定方法〕
〔引張試験〕
ASTM D−638によった。降伏強度(YSと略記,単位kg/cm2 )、弾性率(TMと略記,単位kg/cm2 )、破断伸び(UEと略記,単位%)を測定した。
【0025】
〔表面外観観察〕
目視評価により射出成形品の表面の平滑性を比較した。
〔溶融ストランド透明性〕
分散状態の簡易評価として目視により行った。
〔成形収縮率〕
2mm厚、8cm角フィルムゲートの金型により平板を射出成形し、流動方向(MD)とMDと垂直方向(TD)の2方向の寸法を測定して求めた。
【0026】
〔溶融流動性〕
射出成形時の最低充填射出圧(kg/cm2 )により評価した。
〔分子量〕
テトラヒドロフラン溶媒によるゲルパーミエーションクロマトグラフィ(東ソー(株)製HLC−8020,カラム:GMHXL,温度:40℃)により単分子量分散ポリスチレンを対照とした重量平均分子量Mwを測定した。
【0027】
〔使用した層状珪酸塩〕
表1に使用した層状珪酸塩の名称、鉱物名、種類、メチレンブルー吸着法により測定した陽イオン交換容量(CECと略記)、メーカーを記載した。また、層間化合物として市販の有機ベントナイトであるエスベン74 (豊順工業(株)製,モンモリロナイトとジメチルジオクタデシルアンモニウムイオンを主体とする層間化合物)も使用した。
【0028】
【表1】
【0029】
〔層間化合物の調製法〕
層状珪酸塩約100gを精秤しこれを室温の水10リットルに撹拌分散し、ここに層状珪酸塩のCECの1.2倍当量のオニウムイオンの塩酸塩を添加して6時間撹拌した。精製した沈降性の固体を濾別し、次いで25リットルの脱塩水中で撹拌洗浄後再び濾別した。この洗浄と濾別の操作を少なくとも3回行い、洗液の硝酸銀試験で塩化物イオンが検出されなくなるのを確認した。得られた固体は3〜7日の風乾後乳鉢で粉砕し、更に50℃の温風乾燥を3〜10時間行い再度乳鉢で粉砕した。乾燥条件はゲストのオニウムイオンの種類により変動するが、最大粒径が100μm程度となる粉砕性の確保と、窒素気流下120℃で1時間保持した場合の熱重量減少で評価した残留水分量が2〜3wt%となることを指標とした。層間化合物の灰分量は、窒素気流下500℃で3時間保持した場合の残渣の重量分率を採用し、実施例と比較例の理論灰分量の計算に供した。
【0030】
〔実施例1〜10〕
ビスフェノールAポリカーボネート(ノバレックス7025PJ、重量平均分子量Mw=45000、三菱化成(株)製、ノバレックスは登録商標)のフレークと表−2に示した層間化合物とを配合し、東芝機械(株)製の二軸押出機TEM35Bによりバレル温度設定280℃、スクリュ回転数150rpmの条件でベントを使用しながら溶融押出しチップ化した。得られたチップは日本製鋼所(株)製の射出成形機J28SAにより、バレル温度280℃、金型表面実測温度80℃、射出/冷却=10/10秒、射出速度最大の条件で成形し、引張試験片、曲げ試験片、平板をそれぞれ得た。組成物の灰分量は、成形片約1.5gを精秤し、650℃の電気炉内で完全に有機物を焼失せしめた残渣の重量分率を採用した。
【0031】
〔比較例1〕
層間化合物を加えずに実施例1〜10と同様の溶融押出実験を行った。
〔比較例2〜4〕
層間化合物の有機オニウムイオンとして、表−2に記載した炭素数12以上のアルキル基を持たないものを用いて実施例1〜10と同様の溶融押出実験を行った。
【0032】
〔比較例5〕
層間化合物の代わりに表−2に記載した天然モンモリロナイトを用いて実施例1〜10と同様の溶融押出実験を行った。
〔比較例6〕
表−2に記載した陽イオン交換容量(CEC)が30ミリ当量/100g未満の層状珪酸塩を用いて実施例7と同様の溶融押出実験を行った。
【0033】
〔比較例7〕
表−2に記載した汎用層状フィラーである天然雲母を用いて実施例1〜10と同様の溶融押出実験を行った。
〔比較例8〜11〕
表−2に記載したように実施例8〜10と同様の溶融押出実験を、灰分量がそれぞれ0.3重量%未満、及び4重量%を超えるように配合して行った。
【0034】
実施例と比較例の評価結果は、灰分量、引張試験、表面外観、溶融ストランド透明性を表−2に、分子量、溶融流動性、成形収縮率を表−3にそれぞれ示した。表−2から、本発明の実施例の組成物は、雲母の添加(比較例7)等に比べ少量の無機物の添加での強度や弾性率の向上が顕著であり、しかも引張破断伸び(UE)に示される靱性の低下が少なく射出成形品の表面外観も良好なものであり、炭素数12以上のアルキル基を持たない有機オニウムイオンによる層間化合物を用いた場合(比較例2〜4)や、層状珪酸塩の陽イオン交換容量が小さい場合(比較例6)に比べても優れていることがわかる。
更に、表−3から本発明の実施例の組成物は、溶融流動性が大幅に改善され、また、成形収縮率も等方的に改善されることもわかる。
【0035】
【表2】
【0036】
【表3】
【0037】
【発明の効果】
本発明によって得られた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、強度や剛性に優れると同時に靱性、特に延性を大きく損なわず、かつ比重の増加が少なく成形表面外観や溶融流動性に優れ、しかも寸法精度が等方的に改良されるという結果を与える。又、本発明により得られる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、低比重、良好な表面外観、高強度、高剛性、高靱性、低成形収縮率、良好な溶融流動性等の性能に基づき、様々な機械部品、自動車部品、電気電子部品、シート、フィルム、包材等に適用できる。
【産業上の利用分野】
本発明は、特定の層間化合物を含有する芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、芳香族ポリカーボネート樹脂の強度や剛性あるいは寸法精度を向上する目的で、様々な充填材、例えばガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウムウィスカー等の無機繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ、タルク、マイカ、カオリン、ウォラストナイト等の無機粉体の配合が行われてきた。しかし、これらの手法は強度や剛性を高めるものの、靱性を損なう、比重が増す、表面外観が低下するといった欠点があった。こうした充填材あるいは無機粉体の混合における欠点は、一般に充填材の分散不良あるいは分散物のサイズが大き過ぎること、及びマトリックス樹脂との界面の接着不良に起因するものと考えられており、こうした点から芳香族ポリカーボネート樹脂においても充填材の表面処理や微粉化、形状の工夫等様々な試みがなされてきているが必らずしも満足できるものではなかった。
【0003】
また充填材の使用により一般に樹脂材料と同様芳香族ポリカーボネート樹脂においても溶融流動性が低下するという問題があった。更に、ガラス繊維等の無機繊維を充填した場合には繊維の配向方向の成形収縮率が低下するものの、これと垂直方向ではその効果がほとんど見られないという寸法精度の異方性の問題もあった。
【0004】
以上のように、芳香族ポリカーボネート樹脂の強度や剛性等を改良する目的で様々な無機充填材の使用が提案されてきたが、材料の靱性の低下や比重の増加の問題を必ずしも解決できておらず、また、溶融流動性改良の要請は依然としてあり、寸法精度の改良の点においても問題が残されていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、強度や剛性に優れると同時に靱性、特に延性を大きく損なわず、かつ比重の増加が少なく成形表面外観や溶融流動性に優れ、しかも寸法精度が等方的に改良された芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は上述の問題を解決するためになされたものであり、その要旨は、陽イオン交換容量が30ミリ当量/100g以上の層状珪酸塩をホストとし炭素数12以上のアルキル基を有する有機オニウムイオンをゲストとし、且つ有機オニウムイオンの量が原料の層状珪酸塩の陽イオン交換容量に対し0.8〜2.0当量の範囲である層間化合物を、無機灰分量として0.3〜4重量%含むことを特徴とする芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に存する。
【0007】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明で用いられる芳香族ポリカーボネート樹脂は、多価フェノール類を共重合成分として含有しても良い、1種以上のビスフェノール類と、ビスアルキルカーボネート、ビスアリールカーボネート、ホスゲン等の炭酸エステル類との反応により製造される。
【0008】
ビスフェノール類としては、具体的にはビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンすなわちビスフェノールA、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−sec−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−sec−ブチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルプロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジベンジルメタン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4′−ジヒドロキシベンゾフェノン、フェノールフタレイン等が挙げられる。この中で代表的なものは、ビスフェノールA、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン等であり、最も一般的にはビスフェノールAが用いられる。
【0009】
多価フェノール類は、芳香族ポリカーボネート樹脂のレオロジー的性質を変化させたり表面摩耗特性を改良する目的で共重合成分として用いられ、例えば1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等のトリスフェノール類等が挙げられる。
本発明に使用される芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法に制限はないが、ビスフェノール類のアルカリ金属塩と求核攻撃に活性な炭酸エステル誘導体とを原料とし生成ポリマーを溶解する有機溶剤とアルカリ水との界面にて重縮合反応させる界面重合法、ビスフェノール類と求核攻撃に活性な炭酸エステル誘導体とを原料としピリジン等の有機塩基中で重縮合反応させるピリジン法、ビスフェノール類とビスアルキルカーボネートやビスアリールカーボネート等の炭酸エステルとを原料とし溶融重縮合させる溶融重合法が一般に知られている。ここで界面重合法とピリジン法で用いられる求核攻撃に活性な炭酸エステル誘導体としては、ホスゲン、カルボジイミダゾール等が挙げられ、中でもホスゲンが入手容易性から最も一般的である。溶融重合法に用いられる炭酸エステルの具体例については、(a)ビスアルキルカーボネートとしてジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−n−プロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、ジ−n−ブチルカーボネート等が、(b)ビスアリールカーボネートとしてジフェニルカーボネート、ビス(2,4−ジクロロフェニル)カーボネート、ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)カーボネート、ビス(2−ニトロフェニル)カーボネート、ビス(2−シアノフェニル)カーボネート、ビス(4−メチルフェニル)カーボネート、ビス(3−メチルフェニル)カーボネート、ジナフチルカーボネート等が挙げられる。この中で、原料入手容易性においてジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のビスアルキルカーボネート、ジフェニルカーボネート、ビス(4−メチルフェニル)カーボネート、ビス(3−メチルフェニル)カーボネート等のジアリールカーボネートが好ましく用いられ、中でも反応容易性からジフェニルカーボネートが最も好ましく用いられる。
【0010】
本発明で用いられる芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量には特に制限はないが、通常は40℃のテトラヒドロフラン(THF)溶媒によるゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)において、単分子量分散ポリスチレンを対照としての重量平均分子量Mwが15000以上、靱性や成形容易性から好ましくは20000〜80000程度、最も好ましくは35000〜65000程度が適当である。
【0011】
本発明に用いられる層状珪酸塩としては、Al、Mg、Li等を含む八面体シート構造を2枚のSiO4 四面体シート構造がはさんだ形の2:1型が好適であり、その単位構造である1層の厚みは通常9.5Å程度である。具体的には、モンモリロナイト、ヘクトライト、フッ素ヘクトライト、サポナイト、バイデライト、スチブンサイト等のスメクタイト系粘土鉱物、Li型フッ素テニオライト、Na型フッ素テニオライト、Na型四珪素フッ素雲母、Li型四珪素フッ素雲母等の膨潤性合成雲母、バーミキュライト、フッ素バーミキュライト、ハロイサイト等が挙げられ、天然のものでも合成されたものでも良い。
【0012】
本発明においては、これらの層状珪酸塩の陽イオン交換容量(CEC)は30ミリ当量/100g以上である必要があるが、好適には50ミリ当量/100g以上、さらに好適には70ミリ当量/100g以上であるのが望ましい。陽イオン交換容量は、メチレンブルーの吸着量測定により求めることで測定される。陽イオン交換容量が30ミリ当量/100g未満では、層間への有機オニウムイオンの挿入(インターカレーション)量が不十分となり芳香族ポリカーボネート樹脂への分散性が悪くなるため、組成物の強度や剛性の上昇が十分でなく成形表面外観も悪くなる。陽イオン交換容量や入手容易性からこれらの層状珪酸塩の中でも、モンモリロナイト、ヘクトライト等のスメクタイト系粘土鉱物、Li型フッ素テニオライト、Na型フッ素テニオライト、Na型四珪素フッ素雲母等の膨潤性合成雲母が好適に用いられ、特に入手容易性からはベントナイトを精製して得られるモンモリロナイトが、純度の点ではLi型フッ素テニオライト(下記式A)、Na型フッ素テニオライト(下記式B)、Na型四珪素雲母(下記式C)等の膨潤性フッ素雲母が本発明には最適である。なお、式A,B,Cは理想的な組成を示したものであり、厳密に一致している必要はない。
【0013】
【化1】
LiMg2 Li(Si4 O10)F2 (A)
NaMg2 Li(Si4 O10)F2 (B)
NaMg2.5 (Si4 O10)F2 (C)
本発明に用いられる有機オニウムイオンとは、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、スルホニウムイオン、複素芳香環由来のオニウムイオンに代表されるものである。本発明における該オニウムイオン構造を存在させることにより、負に帯電した珪酸塩層の層間に分子間力の小さい炭化水素構造を導入することができるのであって、有機オニウムイオンの種類に特に制限はされない。これらのうち、入手容易性、安定性の点からは、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、複素芳香環由来のオニウムイオンが好適である。
【0014】
アンモニウムイオンとしては、ドデシルアンモニウム、ヘキサデシルアンモニウム、オクタデシルアンモニウム等の1級アンモニウム、メチルドデシルアンモニウム、ブチルドデシルアンモニウム、メチルオクタデシルアンモニウム等の2級アンモニウム、ジメチルドデシルアンモニウム、ジメチルヘキサデシルアンモニウム、ジメチルオクタデシルアンモニウム、ジフェニルドデシルアンモニウム、ジフェニルオクタデシルアンモニウム等の3級アンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、テトラオクチルアンモニウム等の同一のアルキル基を有する4級アンモニウム、トリメチルオクチルアンモニウム、トリメチルデシルアンモニウム、トリメチルドデシルアンモニウム、トリメチルテトラデシルアンモニウム、トリメチルヘキサデシルアンモニウム、トリメチルオクタデシルアンモニウム、トリメチルエイコサニルアンモニウム、トリメチルオクタデセニルアンモニウム、トリメチルオクタデカジエニルアンモニウム等のトリメチルアルキルアンモニウム、トリエチルドデシルアンモニウム、トリエチルテトラデシルアンモニウム、トリエチルヘキサデシルアンモニウム、トリエチルオクタデシルアンモニウム等のトリエチルアルキルアンモニウム、トリブチルドデシルアンモニウム、トリブチルテトラデシルアンモニウム、トリブチルヘキサデシルアンモニウム、トリブチルオクタデシルアンモニウム等のトリブチルアルキルアンモニウム、ジメチルジオクチルアンモニウム、ジメチルジデシルアンモニウム、ジメチルジテトラデシルアンモニウム、ジメチルジヘキサデシルアンモニウム、ジメチルジオクタデシルアンモニウム、ジメチルジオクタデセニルアンモニウム、ジメチルジオクタデカジエニルアンモニウム等のジメチルジアルキルアンモニウム、ジエチルジドデシルアンモニウム、ジエチルジテトラデシルアンモニウム、ジエチルジヘキサデシルアンモニウム、ジエチルジオクタデシルアンモニウム等のジエチルジアルキルアンモニウム、ジブチルジドデシルアンモニウム、ジブチルジテトラデシルアンモニウム、ジブチルジヘキサデシルアンモニウム、ジブチルジオクタデシルアンモニウム等のジブチルジアルキルアンモニウム、メチルベンジルジヘキサデシルアンモニウム等のメチルベンジルジアルキルアンモニウム、ジベンジルジヘキサデシルアンモニウム等のジベンジルジアルキルアンモニウム、トリオクチルメチルアンモニウム、トリドデシルメチルアンモニウム、トリテトラデシルメチルアンモニウム等のトリアルキルメチルアンモニウム、トリオクチルエチルアンモニウム、トリドデシルエチルアンモニウム等のトリアルキルエチルアンモニウム、トリオクチルブチルアンモニウム、トリドデシルブチルアンモニウム等のトリアルキルブチルアンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウム等の芳香環を有する4級アンモニウム、トリメチルフェニルアンモニウム等の芳香族アミン由来の4級アンモニウム等のイオンが挙げられ、ホスホニウムイオンとしては、テトラブチルホスホニウム、テトラオクチルホスホニウム、トリメチルデシルホスホニウム、トリメチルドデシルホスホニウム、トリメチルヘキサデシルホスホニウム、トリメチルオクタデシルホスホニウム、トリブチルドデシルホスホニウム、トリブチルヘキサデシルホスホニウム、トリブチルオクタデシルホスホニウム等の4級ホスホニウムイオンが挙げられ、複素芳香環由来のオニウムイオンとしては、ピリジニウム、キノリニウム等のイオンが挙げられる。
【0015】
これらの有機オニウムイオンのうち珪酸塩層間の疎水化に寄与する炭化水素構造の有効性の点から、トリメチルドデシルアンモニウム、トリメチルテトラデシルアンモニウム、トリメチルヘキサデシルアンモニウム、トリメチルオクタデシルアンモニウム、トリエチルドデシルアンモニウム、トリエチルテトラデシルアンモニウム、トリエチルヘキサデシルアンモニウム、トリエチルオクタデシルアンモニウム等の炭素数12以上のアルキル基を1分子中に1つ有する4級アンモニウム、ジメチルジドデシルアンモニウム、ジメチルジテトラデシルアンモニウム、ジメチルジヘキサデシルアンモニウム、ジメチルジオクタデシルアンモニウム、ジエチルジドデシルアンモニウム、ジエチルジテトラデシルアンモニウム、ジエチルジヘキサデシルアンモニウム、ジエチルジオクタデシルアンモニウム等の炭素数12以上のアルキル基を1分子中に2つ有する4級アンモニウム、トリメチルドデシルホスホニウム、トリメチルヘキサデシルホスホニウム、トリメチルオクタデシルホスホニウム、トリブチルドデシルホスホニウム、トリブチルヘキサデシルホスホニウム、トリブチルオクタデシルホスホニウム等の炭素数12以上のアルキル基を有する4級ホスホニウム等の4級オニウムイオンが好適に用いられる。中でも、トリメチルヘキサデシルアンモニウム、トリメチルオクタデシルアンモニウム等の炭素数16以上のアルキル基を1分子中に1つ有する4級アンモニウム、ジメチルジテトラデシルアンモニウム、ジメチルジヘキサデシルアンモニウム、ジメチルジオクタデシルアンモニウム等の炭素数14以上のアルキル基を1分子中に2つ有する4級アンモニウム、トリメチルヘキサデシルホスホニウム、トリメチルオクタデシルホスホニウム、トリブチルヘキサデシルホスホニウム、トリブチルオクタデシルホスホニウム等の炭素数14以上のアルキル基を有する4級ホスホニウム等の4級オニウムイオンが樹脂組成物の靱性保持と入手容易性の点から更に好適に用いられ、最も好適にはトリメチルオクタデシルアンモニウムイオン、ジメチルジヘキサデシルアンモニウムイオン、ジメチルジオクタデシルアンモニウムイオン、トリブチルヘキサデシルホスホニウムイオン、トリブチルオクタデシルホスホニウムイオンが用いられる。なおこれらの有機オニウムイオンは、単独でも複数種類の混合物としても使用できる。
【0016】
炭素数14以上のアルキル基を有するオニウムイオンを用いると、副次的な好ましい効果として組成物の溶融流動性の大きな向上が見られ、成形性、成形歪み、高複屈折等が改善され得る。これは、比較的長鎖のアルキル基の存在がマトリックス樹脂の分子易動性を向上させるためと考えられる。
本発明の樹脂組成物の原料として好適に用いられる、陽イオン交換容量が30ミリ当量/100g以上の層状珪酸塩をホストとし有機オニウムイオンをゲストとする層間化合物とは、有機オニウムイオンを、負の層格子および交換可能なカチオンを含有する粘土と反応させる公知の技術(例えば特公昭61−5492号公報、特開昭60−42451号公報等に記載)により製造される、層間に該オニウムイオンが挿入(インターカレーション)された化合物を意味する。該層間化合物の調製は、例えば特願平5−245199号、特願平5−245200号等に記載された4級アンモニウムイオンの挿入の場合の反応及び精製方法等により行われる。
【0017】
層間化合物中の有機オニウムイオンの量は、原料の層状珪酸塩の陽イオン交換容量に対し0.8〜2.0当量の範囲であれば特に制限はないが、通常の反応条件では1.0〜1.3当量程度のものとなる。この量が0.8当量よりも少ないと、芳香族ポリカーボネート樹脂への分散性が低下し、2.0当量より多いと該オニウムイオン由来の遊離化合物が顕著となり、成形時の熱安定性低下、発煙、金型汚染、臭気等の原因となる場合がある。
【0018】
層間化合物の水分量は、芳香族ポリカーボネート樹脂との混合時の加水分解等の望ましくない副反応を低減するために、7wt%以下、好ましくは5wt%以下、最も好ましくは3wt%以下に制御することが望ましい。該水分量が7wt%を超えると芳香族ポリカーボネートの加水分解による分子量低下が顕著となり、組成物の靱性が大きく低下する。本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物においては、層状珪酸塩を無機灰分量として0.1〜10重量%、靱性保持と補強効果発現の点から好適には0.3〜8重量%、さらに好適には0.3〜5重量%、延性発現の点で最も好適には0.3〜4重量%含む。ここで無機灰分量とは、芳香族ポリカーボネート組成物の有機成分を650℃の電気炉内で完全に焼失せしめた残渣の重量分率のことである。該無機灰分量が0.1重量%未満の場合は弾性率の向上が顕著でなく、一方10重量%を超えると靱性低下が大きく、いずれの場合も好ましくない。なお、層間化合物を添加する場合は各々単独で用いてもよく併用してもよい。
【0019】
本発明における特定の陽イオン交換容量の層状珪酸塩に有機オニウムイオンをインターカレーションした層間化合物は、芳香族ポリカーボネート樹脂マトリックスに対し極めて優れた劈開分散性を有し、樹脂マトリックス中に微分散され、芳香族ポリカーボネート樹脂の延性を維持しながら極めて効率的に強度や剛性を向上させ、射出成形品において等方的に低い成形収縮率を発現し、しかも溶融粘度を大きく低減させる。
【0020】
本発明においては、陽イオン交換能を持つ層状珪酸塩の層間陽イオンの有機オニウムイオンによる交換において、有機オニウムイオンの構造制御により層間の疎水性を変化させ、構造が制御された有機オニウムイオンのインターカレーションによる層間引力の低減と層間距離の増大の相乗効果により、溶融した芳香族ポリカーボネート樹脂中での機械的剪断力のような簡便な手段でも劈開分散が容易と達成される。
【0021】
本発明において、層状珪酸塩と芳香族ポリカーボネート樹脂との混合方法には特に制限はないが、層間化合物を用いる場合には芳香族ポリカーボネート樹脂の溶融状態で機械的剪断下行われることが肝要であり、この範囲において任意の段階で添加できる。例えば、重合前の芳香族ポリカーボネート原料に添加し芳香族ポリカーボネートの溶融重合とともに撹拌混合する方法、芳香族ポリカーボネートの溶融重合途中ないしは溶融重合後チップ化前に添加し撹拌混合する方法、あるいはチップ化後の芳香族ポリカーボネート樹脂に添加し押出機等の混練機にて溶融混合する方法等任意の方法で混合可能であるが、生産性、簡便性、汎用性から混練機を用いた方法が好ましい。中でも、剪断効率の高い二軸押出機の使用が好ましく、該層間化合物に含まれる水分を効率的に除去できるベント付き二軸押出機の使用が最適である。本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない限りにおいて必要に応じ常用の各種添加成分、例えばガラス繊維、炭素繊維等の無機繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ、雲母等の無機粉体、各種可塑剤、安定剤、着色剤、難燃剤等を添加できる。
【0022】
更に、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない限りにおいて必要に応じ通常の芳香族ポリカーボネート樹脂にブレンドされる熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマー、例えばポリアミド樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ABS樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリアリーレンスルフィド樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、無水マレイン酸変性ポリスチレン樹脂、エポキシ基を有する化合物で変性されたポリスチレン樹脂、芳香族ポリカーボネートポリシロキサン共重合体、ポリエステルエラストマー、酸無水物基またはエポキシ基を有する化合物で変性されたスチレン系熱可塑性エラストマー、アクリルゴム、コアーシェル型アクリルゴム、MBSゴム等を加えてもよい。
【0023】
【実施例】
以下本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0024】
〔評価項目と測定方法〕
〔引張試験〕
ASTM D−638によった。降伏強度(YSと略記,単位kg/cm2 )、弾性率(TMと略記,単位kg/cm2 )、破断伸び(UEと略記,単位%)を測定した。
【0025】
〔表面外観観察〕
目視評価により射出成形品の表面の平滑性を比較した。
〔溶融ストランド透明性〕
分散状態の簡易評価として目視により行った。
〔成形収縮率〕
2mm厚、8cm角フィルムゲートの金型により平板を射出成形し、流動方向(MD)とMDと垂直方向(TD)の2方向の寸法を測定して求めた。
【0026】
〔溶融流動性〕
射出成形時の最低充填射出圧(kg/cm2 )により評価した。
〔分子量〕
テトラヒドロフラン溶媒によるゲルパーミエーションクロマトグラフィ(東ソー(株)製HLC−8020,カラム:GMHXL,温度:40℃)により単分子量分散ポリスチレンを対照とした重量平均分子量Mwを測定した。
【0027】
〔使用した層状珪酸塩〕
表1に使用した層状珪酸塩の名称、鉱物名、種類、メチレンブルー吸着法により測定した陽イオン交換容量(CECと略記)、メーカーを記載した。また、層間化合物として市販の有機ベントナイトであるエスベン74 (豊順工業(株)製,モンモリロナイトとジメチルジオクタデシルアンモニウムイオンを主体とする層間化合物)も使用した。
【0028】
【表1】
【0029】
〔層間化合物の調製法〕
層状珪酸塩約100gを精秤しこれを室温の水10リットルに撹拌分散し、ここに層状珪酸塩のCECの1.2倍当量のオニウムイオンの塩酸塩を添加して6時間撹拌した。精製した沈降性の固体を濾別し、次いで25リットルの脱塩水中で撹拌洗浄後再び濾別した。この洗浄と濾別の操作を少なくとも3回行い、洗液の硝酸銀試験で塩化物イオンが検出されなくなるのを確認した。得られた固体は3〜7日の風乾後乳鉢で粉砕し、更に50℃の温風乾燥を3〜10時間行い再度乳鉢で粉砕した。乾燥条件はゲストのオニウムイオンの種類により変動するが、最大粒径が100μm程度となる粉砕性の確保と、窒素気流下120℃で1時間保持した場合の熱重量減少で評価した残留水分量が2〜3wt%となることを指標とした。層間化合物の灰分量は、窒素気流下500℃で3時間保持した場合の残渣の重量分率を採用し、実施例と比較例の理論灰分量の計算に供した。
【0030】
〔実施例1〜10〕
ビスフェノールAポリカーボネート(ノバレックス7025PJ、重量平均分子量Mw=45000、三菱化成(株)製、ノバレックスは登録商標)のフレークと表−2に示した層間化合物とを配合し、東芝機械(株)製の二軸押出機TEM35Bによりバレル温度設定280℃、スクリュ回転数150rpmの条件でベントを使用しながら溶融押出しチップ化した。得られたチップは日本製鋼所(株)製の射出成形機J28SAにより、バレル温度280℃、金型表面実測温度80℃、射出/冷却=10/10秒、射出速度最大の条件で成形し、引張試験片、曲げ試験片、平板をそれぞれ得た。組成物の灰分量は、成形片約1.5gを精秤し、650℃の電気炉内で完全に有機物を焼失せしめた残渣の重量分率を採用した。
【0031】
〔比較例1〕
層間化合物を加えずに実施例1〜10と同様の溶融押出実験を行った。
〔比較例2〜4〕
層間化合物の有機オニウムイオンとして、表−2に記載した炭素数12以上のアルキル基を持たないものを用いて実施例1〜10と同様の溶融押出実験を行った。
【0032】
〔比較例5〕
層間化合物の代わりに表−2に記載した天然モンモリロナイトを用いて実施例1〜10と同様の溶融押出実験を行った。
〔比較例6〕
表−2に記載した陽イオン交換容量(CEC)が30ミリ当量/100g未満の層状珪酸塩を用いて実施例7と同様の溶融押出実験を行った。
【0033】
〔比較例7〕
表−2に記載した汎用層状フィラーである天然雲母を用いて実施例1〜10と同様の溶融押出実験を行った。
〔比較例8〜11〕
表−2に記載したように実施例8〜10と同様の溶融押出実験を、灰分量がそれぞれ0.3重量%未満、及び4重量%を超えるように配合して行った。
【0034】
実施例と比較例の評価結果は、灰分量、引張試験、表面外観、溶融ストランド透明性を表−2に、分子量、溶融流動性、成形収縮率を表−3にそれぞれ示した。表−2から、本発明の実施例の組成物は、雲母の添加(比較例7)等に比べ少量の無機物の添加での強度や弾性率の向上が顕著であり、しかも引張破断伸び(UE)に示される靱性の低下が少なく射出成形品の表面外観も良好なものであり、炭素数12以上のアルキル基を持たない有機オニウムイオンによる層間化合物を用いた場合(比較例2〜4)や、層状珪酸塩の陽イオン交換容量が小さい場合(比較例6)に比べても優れていることがわかる。
更に、表−3から本発明の実施例の組成物は、溶融流動性が大幅に改善され、また、成形収縮率も等方的に改善されることもわかる。
【0035】
【表2】
【0036】
【表3】
【0037】
【発明の効果】
本発明によって得られた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、強度や剛性に優れると同時に靱性、特に延性を大きく損なわず、かつ比重の増加が少なく成形表面外観や溶融流動性に優れ、しかも寸法精度が等方的に改良されるという結果を与える。又、本発明により得られる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、低比重、良好な表面外観、高強度、高剛性、高靱性、低成形収縮率、良好な溶融流動性等の性能に基づき、様々な機械部品、自動車部品、電気電子部品、シート、フィルム、包材等に適用できる。
Claims (2)
- 陽イオン交換容量が30ミリ当量/100g以上の層状珪酸塩をホストとし炭素数12以上のアルキル基を有する有機オニウムイオンをゲストとし、且つ有機オニウムイオンの量が原料の層状珪酸塩の陽イオン交換容量に対し0.8〜2.0当量の範囲である層間化合物を、無機灰分量として0.3〜4重量%含むことを特徴とする芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- 前記炭素数12以上のアルキル基を有する有機オニウムイオンが炭素数12以上のアルキル基を有する4級オニウムイオンであることを特徴とする請求項1に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
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