JP5912133B2 - 複合ポリアミド膜 - Google Patents

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Description

分野:
本発明は、複合ポリアミド膜と共にその製造方法及び使用方法に広く向けられる。
序論:
複合ポリアミド膜は様々な液体の分離に使用される。膜の一般的なクラスの1つには、「薄フィルム」ポリアミド層でコートされた多孔質支持体が挙げられる。薄フィルム層は、不混和溶液から支持体上に連続してコートされる多官能性アミン(例えば、m−フェニレンジアミン)と多官能性ハロゲン化アシル(例えば、塩化トリメソイル)モノマー間の界面重縮合反応によって形成され得る、例えば、Cadotteに対する米国特許第4277344号を参照のこと。膜性能を改善するために、様々な構成要素がコーティング溶液の一方又は両方に加えられてもよい。例えば、Cadotteに対する米国特許第4259183号では、二官能性と三官能性ハロゲン化アシルモノマーの組合せ、例えば、塩化イソフタロイル又は塩化テレフタロイルと、塩化トリメソイルの使用について記載している。Mickolsに対する米国特許第6878278号では、ハロゲン化アシルコーティング溶液への、様々なリン含有種を含めた様々な錯化剤の添加について記載している。米国出願公開第2011/0049055号では、スルホニル、スルフィニル、スルフェニル、スルフリル、ホスホリル、ホスホニル、ホスフィニル、チオホスホリル、チオホスホニル、及びカルボニルハライドから得られた基の添加について記載している。米国特許第6521130号では、重合前の、一方若しくは両方のモノマーコーティング溶液へのカルボン酸(例えば、脂肪族若しくは芳香族カルボン酸)又はカルボン酸エステルの添加が記載されている。同様に、米国特許第6024873号、同第5989426号、同第5843351号、及び同第5576057号では、一方のコーティング溶液への、8〜14(cal/cm31/2の溶解度パラメータを有する選択されたアルコール、エーテル、ケトン、エステル、ハロゲン化炭化水素、窒素含有化合物、及び硫黄含有化合物の添加について記載している。米国出願公開第2009/0107922号では、一方又は両方のコーティング溶液への様々な「鎖キャッピング試薬」、例えば1,3−プロパンスルトン、塩化ベンゾイル、1,2−ビス(ブロモアセトキシ)エタンなどの添加について記載している。米国特許第4606943号及び同第6406626号では、多官能性アミン及び多官能性ハロゲン化アシルと共に多官能性酸無水ハライド(例えば、塩化トリメリト酸無水物)を使用した薄フィルムポリアミドの形成について記載している。米国出願公開第2009/0272692号、同第2010/0062156号、同第2011/0005997号、国際公開第2009/129354号、同第2010/120326号、及び同第2010/120327号では、様々な多官能性ハロゲン化アシルとそれらの対応する部分的加水分解対応物の使用について記載している。Cadotteに対する米国特許第4812270号では、リン酸を用いた膜の後処理について記載している。米国特許第5582725号では、例えば、塩化ベンゾイルなどのハロゲン化アシルを用いた同様の後処置について記載している。
概要:
本発明は、多孔質支持体の表面に多官能性アミンとハロゲン化アシルモノマーを適用し、そして、係るモノマーを界面で重合させて、薄フィルムポリアミド層を形成させるステップを包含する複合ポリアミド膜の製造方法を包含する。前記方法は、以下のステップ:i)少なくとも1のカルボン酸官能基又はその塩、及び1つのアミン反応性官能基を含むC2−C20脂肪族モノマーの存在下で界面重合をおこなう、及び/又はii)薄フィルムポリアミド層に係る脂肪族モノマーを適用する、のうちの少なくとも1つをさらに含む。本発明は、多くの追加実施形態を含む。
詳細な説明:
本発明は、複合膜の特定のタイプ、構造もしくは形状、又は用途に特に限定するものではない。例えば、本発明は、正浸透(FO)、逆浸透(RO)、ナノろ過(NF)、限外ろ過(UF)及びマイクロろ過(MF)流体分離を含む多様な用途において使用される平坦シート(flat sheet)、管及び中空繊維ポリアミド膜に適用できる。しかしながら、本発明は、すでに背景技術の項で説明したもののようなRO及びNF分離のために設計された膜に特に有用である。RO複合膜は、ほとんどすべての溶解塩に対して比較的不浸透性なので、例えば、塩化ナトリウムなどの一価イオンを持っている塩の約95%超が通常透過しない。RO複合膜はまた、無機分子、並びに約100ダルトン超の分子量を有する有機分子も約95%超を通常透過しない。NF複合膜は、RO複合膜より浸透性があり、一価イオンを持っている塩の約95%未満を透過しない一方で、二価イオンの種によって−二価イオンを持っている塩の約50%超(多くの場合、90%超)を通常透過しない。NF複合膜はまた、ナノメートルの範囲の粒子、並びに約200〜500ダルトン超の分子量を有する有機分子も通常透過しない。
複合ポリアミド膜の例としては、FilmTec Corporation製のFT−30(商標)膜、すなわち、不織布裏打繊維(例えばPETスクリム)の最下層(裏側)、約25〜125μmの典型的な厚さを有する多孔質支持体(porous support)の中間層及び約1ミクロン(μm)未満、例えば0.01〜1ミクロン(μm)であるがより一般的には約0.01〜0.1ミクロン(μm)の典型的な厚さを有する薄いフィルムポリアミド層を含む最上層(表側)を含む平坦シート複合膜である。多孔質支持体は、典型的には、実質的に制限されることのない浸透移行を可能にするのには充分であるが、その上に形成される薄フィルムの橋かけを妨げるに足りるほどの大きさではない孔径を含む高分子材料である。例えば支持体の孔径は、約0.001〜0.5μmの範囲であることが好ましい。制限されることのない多孔質支持体の例は、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリアクリロニトリル、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリフッ化ビニリデン等の多様なハロゲン化ポリマーから製造されるものが挙げられる。RO及びNF適用のために、多孔質支持体は、強度を提供するが、その比較的高い多孔度により流体流への抵抗性をほとんど示さない。
その相対的な薄さのために、ポリアミド層は、コーティング被覆率又は多孔質支持体に対する充填(loading)の観点から、例えば、多孔質支持体の表面積1平方メートル当たり約2〜5000mg、より好適には約50〜500mg/m2のポリアミドと説明されることも多い。ポリアミド層は、好適には、米国特許第4277344号及び米国特許第6878278号に記載のような多孔質支持体の表面における、多官能性アミンモノマー及び多官能性ハロゲン化アシルモノマー間の界面重縮合反応によって製造される。より詳細には、ポリアミド膜層は、少なくとも1つの多孔質支持体の表面上で、多官能性アミンモノマーを多官能性ハロゲン化アシルと界面重合させることによって製造される(ここでのそれぞれの用語は、一種類又は多種類の使用に対して両方を参照することが意図する)。本明細書において使用される用語「ポリアミド」は、ポリマーを指し、ここでのアミド結合(−C(O)NH−)は分子鎖に沿って生じる。多官能性アミンモノマー及び多官能性ハロゲン化アシルモノマーは、最も一般的には、多官能性アミンモノマーが典型的には水系溶液又は極性溶液からコーティングされ、且つ、多官能性ハロゲン化アシルが有機系溶液又は非極性溶液からコーティングされる場合に、溶液からのコーティング工程の方法によって多孔質支持体に送達される。コーティング工程は特定の順序に従う必要はないが、多官能性アミンモノマーは、好適には多孔質支持体上に最初にコーティングし、次に多官能性ハロゲン化アシルをコーティングする。コーティングは、吹き付け、フィルムコーティング、ローリングによって、又は他のコーティング技術に共通した浸漬タンクの使用を介して達成することができる。過剰の溶液は、エアーナイフ、ドラーヤー、オーブンなどによって支持体から除去することができる。
多官能性アミンモノマーは、少なくとも2つの第1級又は第2級アミノ基を持ち、且つ、芳香族(例えばm−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、1,3,5−トリアミノベンゼン、1,3,4−トリアミノベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸、2,4−ジアミノトルエン、2,4−ジアミノアニソール及びキシリレンジアミン)又は脂肪族(例えばエチレンジアミン、プロピレンジアミン及びトリス(2−ジアミノエチル)アミン)とすることができる。好ましい多官能性アミンモノマーの例としては、2又は3個のアミノ基を有する第1級アミン、例えば、m−フェニレンジアミン及びピペラジン等の2個のアミノ基を有する第2級脂肪族アミンが挙げられる。好ましい多官能性アミンの一つが、m−フェニレンジアミン(mPD)である。多官能性アミンモノマーは、極性溶液として多孔質支持体に適用されることができる。極性溶液は、約0.1〜約20重量%、そしてより好適には、約0.5〜約6重量%の多官能性アミンモノマーを含み得る。多孔質支持体上にコートしたと同時に、過剰な溶液は、任意的に除去されることができる。
多官能性ハロゲン化アシルモノマーは、少なくとも2つのハロゲン化アシル基を含み、そして、好適には有機系又は非極性溶媒からコートされるか、あるいは、多官能性ハロゲン化アシルは、(例えば、充分な蒸気圧を有する多官能性ハロゲン化アシル種の)蒸気相からデリバリーされてもよい。多官能性ハロゲン化アシルは、特に制限されることはないので、芳香族又は脂環式多官能性ハロゲン化アシルが、その組合せと共に使用できる。芳香族多官能性ハロゲン化アシルの制限されることのない例としては:トリメシン酸塩化物、テレフタル酸塩化物、イソフタル酸塩化物、ビフェニルジカルボン酸塩化物、及びナフタレンジカルボン酸二塩化物が挙げられる。脂環式多官能性ハロゲン化アシルの制限されることのない例としては:シクロプロパントリカルボン酸塩化物、シクロブタンテトラカルボン酸塩化物、シクロペンタントリカルボン酸塩化物、シクロペンタンテトラカルボン酸塩化物、シクロヘキサントリカルボン酸塩化物、テトラヒドロフランテトラカルボン酸塩化物、シクロペンタンジカルボン酸塩化物、シクロブタンジカルボン酸塩化物、シクロヘキサンジカルボン酸塩化物、及びテトラヒドロフランジカルボン酸塩化物が挙げられる。好ましい多官能性ハロゲン化アシルの一つが、塩化トリメソイル(TMC)である。多官能性ハロゲン化アシルは約0.01〜10重量%、好適には0.05〜3重量%の範囲内で非極性溶媒中に溶解し、且つ、連続的なコーティング操作の一部として搬送することができる。適切な溶媒は、多官能性ハロゲン化アシルを溶解することができ、且つ水に非混和性であるもの、例えばヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン及びFREONシリーズなどのハロゲン化炭化水素である。好ましい溶媒は、オゾン層に対して危険な兆候をわずかしか示さず、且つ、所定の処理を受けるのに特別な予防策を講じず、それらの引火点及び可燃性に関して十分に安全であるものを包含する。好ましい溶媒は、Exxon Chemical Companyから入手可能なISOPAR(商標)である。
非極性溶液は、共溶媒、相間移動剤、可溶化剤、及び錯化剤を含めた追加材料を含んでもよく、ここで、個々の添加剤は複数の機能を果たし得る。代表的な共溶媒としては:ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、シクロヘキサノン、酢酸エチル、ブチルカルビトール(商標)アセタート、メチルラウレート、及びアセトンが挙げられる。米国特許第6878278号、同第6723241号、同第6562266号、及び同第6337018号では、界面重合をおこなう前に非極性溶液と混合することができる広範囲な代表的な錯化剤の添加を記載している。そのような錯化剤のクラスは、式(I)によって表される。
式(I):
α(Lxβ)y
{式中、αは在来のIUPAC周期律表の(a)IIIA−VIB族(すなわち、IIIA、IVA、VA、VIA、VIIA、VIIIA、IB、IIB、IIIB、IVB、VB、VIB族)及び(b)3−6族(すなわち、Na、K、Rb、そしてCsで始まる元素群)に属する元素から選ばれる硫黄を含まない結合性コアである}。在来のIUPAC周期律表のIIIAからVIB族はIUPAC周期律表の“新版”の3−16族に対応しそして周期律表のCASバージョンのIIIB−VIAに対応する。混乱を避けるためにここでの更なる参照は在来のIUPAC周期律表を使用し、例えばIIIA族はSc、Y、La、等で始まる欄に対応し、そしてVIB族はO、S、Se、Te、Poから始まる欄に対応する。特定の例は(1)次の金属:アルミニウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ヒ素、イットリウム、ジルコン、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、インジウム、スズ、アンチモン、テルル、ランタン、セリウム、プラシオジウム、ネオジウム、プロメシウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホロミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、水銀、タリウム、鉛、ビスマス(ビスマスは典型的には好ましくない)、及びポロニウム;(2)次の半導体:ケイ素、セレニウム、及びゲルマニウム及び(3)リンを含む。特に好ましい結合性コアはAl、Si、P、As、Sb、Se及びTeそしてFe、Cr、Co、Ni、Cu、及びZnのような金属を含む。Lは炭素含有基、例えば芳香族基、アルカン、アルケン、−O−、−S−、−N−、−H−、−P−、−O−P−、及び−O−P−O−、(それぞれは置換していても置換していなくても良い)から選ばれる同じか又は異なった所望による化学連結基である。βは同じか又は異なったそして1から12の炭素原子を含む可溶化基で、置換していても置換していなくてもよくそしてLによって定義される内部結合基を含んでいてもよい。例としては脂肪族及び1から6の炭素原子を持つアレーン基、芳香族基、ヘテロ環基、及びアルキル基が包含される。xは0から1の整数そしてyは1から5の整数で、2から4が好ましい。使用される特定の溶媒及びアシルハライド種にもよるが、次の錯化剤が一般的に主題の発明に有用である:リンのトリ−フェニル誘導体(例えば、ホスフィン、ホスフェート)、ビスマス、ヒ素及びアンチモン;リン含有トリブチル及びジブチルホスファイトのアルカンオキシエステル;フェロセンや四エチル鉛のような有機金属錯体、及び鉄(II)、鉄(III)、コバルト(III)およびCr(III)のアセチルアセトナート錯体。このような錯化剤の好ましい分類は式(II)で表される。
式(II):
Figure 0005912133
{式中、「P」はリンであり、「O」は酸素であり、そして、R1、R2、及びR3は、炭素含有基から独立に選択される}。用語“炭素含有基”は分岐した及び分岐していないアシル基、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、2−ペンチル、3−ペンチル、t−ブチル、等でそれらは未置換でも置換されていてもよく(例えば、アミド基、エーテル基、エステル基、スルホン基、カルボニル基、無水物、シアニド、ニトリル、イソシネート、ウレタン、ベータ−ヒドロキシエステル、二重及び三重結合等で置換されている)、及び環状基、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル、芳香族(例えば、フェニル)、ヘテロ環(例えばピリジン)、等であり、それらは未置換でも置換されていてもよく(例えば、メチル、エチル、プロピル、ヒドロキシル、アミド、エーテル、スルホン、カルボニル、エステル、等で置換されている)を意味する。環部分は脂肪族連結基、例えば、メチル、エチル、等によってリン原子に結合していてもよい。好ましい炭素含有基は置換していない、分岐の又は分岐していないC1−C12基、そしてより好ましくはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、2−エチルブチル、ペンチル、ヘキシル、等のようなC1−C8脂肪族基を含む。さらに、基としては、フェニル基が挙げられる。使用されるときには、前述の錯化剤は、約1:5〜5:1の範囲であり、1:1〜3:1が好ましい多官能性ハロゲン化アシルモノマーの比で多官能性ハロゲン化アシルを含む有機系又は非極性コーティング溶液に好ましくは添加される。別の好ましい実施形態において、コーティング溶液中の錯化剤の濃度は、約0.001〜2重量パーセントである。
互いに接触した時点で、多官能性ハロゲン化アシル及び多官能性アミンモノマーは、それらの表面接合部で反応して、ポリアミド層又はフィルムを形成する。この層は、ポリアミド「識別層(discriminating layer)」又は「薄フィルム層」と称されることが多く、溶媒(例えば、水性供給物)から溶質(例えば、塩)を分離する主要な手段を複合膜に提供する。
多官能性ハロゲン化アシル及び多官能性アミンモノマーの反応時間は、1秒未満であり得るが、接触時間は、典型的には約1〜60秒の範囲にあり、その後、エアーナイフ、1つ又は複数の水槽、乾燥機等の方法により、過剰な液体を任意的に除去する。過剰な溶媒の除去は、周囲温度での空気乾燥が使用することができるが、上昇した温度、例えば約40℃〜約120℃で乾燥させることによって達成することができる。
一実施形態において、対象の方法は、多官能性アミンモノマーと多官能性ハロゲン化アシルモノマーを多孔質支持体の表面に適用し、そしてそのモノマーを界面で重合させて、薄フィルムポリアミド層を形成するステップを包含する。対象の方法は、以下のステップ:i)少なくとも1のカルボン酸官能基又はその塩と、単独のアミン反応性官能基を含むC2−C20脂肪族モノマーの存在下で界面重合をおこない;そしてii)界面重合が実質的に完了した後に、少なくとも1つのカルボン酸官能基又はその塩と、単独のアミン反応性官能基を含むC2−C20脂肪族モノマーを適用して、薄フィルムポリアミド層を形成する、のうちの少なくとも1つを包含することを特徴とする。用語「アミン反応性」官能基は、界面重合中、すなわち、薄フィルムポリアミド層の形成中に存在している期間及び条件中に、多官能性アミンモノマーのアミン官能基と反応している官能基を指す。これには、通常、標準気圧下、室温にて数秒以内の接触から成る実質的な反応を必要とする。アミン反応性官能基の代表的な例としては:ハロゲン化アシル、無水物、イソシアネート、及びエポキシが挙げられる。好ましい実施形態において、アミン反応性官能基は、ハロゲン化アシルであり、そして好ましくは酸塩化物である。
界面重合中に存在しているとき、対象の脂肪族モノマー(以下、対象モノマー又は追加モノマーということもある。)は、得られたポリアミド構造内に組み込まれると考えられる(すなわち、対象の脂肪族モノマー、多官能性アミン、及びハロゲン化アシルモノマーが、反応生成物を形成する)。ポリアミドが形成された後に適用されるとき、対象の脂肪族モノマーは、薄フィルムポリアミド内に存在している残留アミン基と反応すると考えられる。
脂肪族モノマーは、前述の多官能性ハロゲン化アシルや多官能性アミンモノマーと異なり、好ましくは2〜20個の炭素原子を含んでおり、そして、脂環式であっても非環式であってもよく、且つ、飽和であっても不飽和であってもよい。少なくとも1つのカルボン酸官能基とアミン反応性官能基を含むことに加えて、脂肪族モノマーは、非置換であっても、非アミン反応性官能基、例えば、ハロ、ヒドロキシル、エーテル、ニトリル、ニトロ及びビニル(エテニル)などで置換されていてもよい。脂環式であれば、その化合物は、直鎖であっても分岐であってもよい。1つの好ましい実施形態において、脂肪族モノマーは、非環式、且つ、不飽和である。別の実施形態において、脂肪族モノマーは、単独のカルボン酸官能基を含む。好ましい脂肪族モノマーのクラスは、式(III)により以下に表される。
式(III):
Figure 0005912133
{式中、Xはハロゲン(好ましくは、塩素)であり、そして、nは1〜10の整数である}。代表的な種としては:4−(クロロカルボニル)ブタン酸;5−(クロロカルボニル)ペンタン酸;6−(クロロカルボニル)ヘキサン酸;7−(クロロカルボニル)ヘプタン酸;8−(クロロカルボニル)オクタン酸;9−(クロロカルボニル)ノナン酸及び10−(クロロカルボニル)デカン酸が挙げられる。ハロゲン化アシルとカルボン酸基が末端の位置に示されるてはいるが、一方又は両方が脂肪族鎖に沿って別の位置に配置されてもよい。式(III)に示されていないものの、脂肪族モノマーは、先に記載したように、追加のカルボン酸官能基を任意の非アミン反応性官能基と共に含んでいてもよい。
脂肪族モノマーの別の好ましいクラスは、非環式化合物を含む。そのような化合物の例としては、5及び6員非環式化合物が縮環構造と共に挙げられる。一組の実施形態において、非環式化合物は、単独のカルボン酸官能基を含む。好ましい実施形態のクラスは、式(IV及びV)で以下に表される。
式(IV):
Figure 0005912133
式(V):
Figure 0005912133
{式中、Xは、ハロゲン(好ましくは、塩素)である}。環上のカルボン酸及びハロゲン化アシル官能基の位置は、特に制限されない(例えば、メタ、パラ、及びオルソ)。示されてはないが、環は、飽和炭素を含み得るが、好ましくは芳香族ではない。環はまた、非置換であっても、例えば、ヒドロキシル、ニトリル及びエーテルなどの基で置換されていてもよい1〜12個の炭素原子を持つ非アミン反応性官能基、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキル、及びアルケニル基を含んでいてもよい。
先に記載したように、多孔質支持体の表面に多官能性モノマーを適用するステップは、多官能性アミンモノマーを含む極性溶液と多官能性ハロゲン化アシルモノマーを含む非極性溶液を適用することを好ましくは伴う。溶液を適用するステップは、スプレー、フィルムコーティング、ローリング、又は浸漬タンクの使用によるコーティングを好ましくは伴う。一実施形態において、対象の脂肪族モノマーは、適用ステップの前、例えば、多孔質支持体上に非極性溶液をコーティングする前に、非極性溶液に加えられる。そのような実施形態において、非極性溶液は、少なくとも0.001重量/体積の脂肪族モノマーを好ましくは含む。別の実施形態において、非極性溶液は、約0.001〜0.1重量/体積の脂肪族モノマーを含む。さらに別の実施形態において、非極性溶液は、約0.0001:1〜1:1、好ましくは、0.001:1〜0.1:1、そしてより好ましくは、0.001:1〜0.01:1のモル比で脂肪族モノマー及び多官能性ハロゲン化アシルを含む。非極性溶液は、先に記載した錯化剤を含めた追加の構成要素を少量の水(例えば、50〜500ppm、そしていくつかの実施形態において、少なくとも100ppm)と共に含み得る。
別の実施形態において、対象の脂肪族モノマーは、界面重合の実質的な完了前、その最中、又は完了後のいずれかに多孔質支持体の表面に(例えば、別々の溶液から)別々に適用される。この実施形態において、コーティング溶液は、好ましくは以前に記載したように非極性溶液であり、且つ、好ましくは約0.5〜5%重量/体積、又はより好ましくは約1〜3%重量/体積の濃度の脂肪族モノマーを含む。溶液は、先に記載した錯化剤を含めた追加の構成要素を少量の水(例えば、50〜500ppm、そしていくつかの実施形態において、少なくとも100ppm)と共に含み得る。
対象の脂肪族モノマーは、例えば、ハロゲン化アシル官能基の加水分解反応によって、コーティング溶液中のその場で形成されても、あらかじめ形成され、そしてコーティング溶液に加えられてもよい。
対象の脂肪族モノマーを用いてによって調製された膜は、それなしに調製された実質的に同様の膜と比較して、低い溶質透過しか示さない。驚いたことに、対象の脂肪族モノマーを用いて調製された膜は、1つではなく2つのアミンの反応官能基を含む同様の脂肪族モノマーによって調製される実質的に同様の膜と比較して、より高いフラックスを示す。
特定のタイプのポリアミド膜に制限されないが、対象の発明は、一般的にROやNF適用に使用されるものなど、より特にROやNF適用に使用される平坦シート複合ポリアミド膜への適用に特に好適である。薄フィルムポリアミド層は、任意にその表面の少なくとも一部に吸湿性重合体を含んでもよい。そのような重合体としては、高分子界面活性剤、ポリアクリル酸、酢酸ポリビニル、ポリアルキレンオキシド化合物、ポリ(オキサゾリン)化合物、ポリアクリルアミド、並びに米国特許第6280853号;同第7815987号;Mickols及びNiuに対する米国出願公開第2009/0220690号及び同第2008/0185332号に広く記載されている関連反応産物が挙げられる。いくつかの実施形態において、そのような重合体は、混ぜ合わせられても、及び/又は反応させられてもよく、且つ、共通の溶液からポリアミド膜にコート又は他の方法で適用されても、あるいは連続して適用されてもよい。本発明の多くの実施形態が、説明され、そして、場合によっては、特定の実施形態、選択、範囲、構成要素、又は他の特徴が、「好ましい」と特徴づけられた。「好ましい」特徴の特徴づけは、かかる特徴が本発明に必要とされるか、不可欠であるか又は重要であると見なすように解釈されることは決してあってはならない。それぞれの前述の米国特許文献の全体の内容を、参照により本明細書中に援用する。
別段の表示がなされない限り、すべてのサンプル薄フィルムを、パイロット規模の膜製造ラインを使用して製造した。ポリスルホン支持体を、ジメチルホルムアミド(DMF)中の16.5重量%の溶液から鋳造し、それに続いてメタ−フェニレンジアミン(mPD)の3.5重量%水溶液中に浸した。次に、非極性溶液の薄く一定の層を適用しながら、得られた支持体を一定速度にて反応テーブルに通した。非極性溶液は、イソパラフィン(ISOPAR L)、トリメソイル酸塩化物(TMC)、及び以下に特定した追加モノマーを含んでいた。非極性溶液はまた、(比が1:1.1である実施例3及びTBPが全く含まれていなかった実施例7を除いて)TMCに対して1:1.4の化学量論比にてTBP(トリブチルホスファート)を含んでいた。余分な非極性溶液を取り除き、そして、得られた複合膜を、水すすぎタンクと乾燥オーブンに通した。次に、サンプル薄フィルムのサンプル片を、150psi、pH8、及び室温にて水性塩溶液(2000ppmのNaCl)を使用した標準試験に供した。試験結果を、以下に提供した表中にまとめる。
実施例1:
サンプル複合ポリアミド膜を、「対象モノマー」として4−(クロロカルボニル)ブタン酸を使用して調製した。各サンプルを調製するのに使用した非極性溶液中の総酸塩化物量を、0.24% w/vで一定に保った。残りの酸塩化物量を唯一TMCによって提供した一方で、対象モノマーの濃度を0〜0.03% w/vに変化させた。表1に示すように、4−(クロロカルボニル)ブタン酸の濃度が増大するに従って、塩透過率は0.99%から0.52%まで減少した。
Figure 0005912133
実施例2:
サンプル複合ポリアミド膜を、対象モノマーとして2−(クロロカルボニル)酢酸を使用して調製した。各サンプルを調製するのに使用した非極性溶液中の総酸塩化物量を、0.24% w/vで一定に保った。残りの酸塩化物量を唯一TMCによって提供した一方で、対象モノマーの濃度を0〜0.03% w/vに変化させた。表2に示すように、2−(クロロカルボニル)酢酸の濃度が増大するに従って、塩透過率は1.46%から0.73%まで減少した。
Figure 0005912133
実施例3:
サンプル複合ポリアミド膜を、対象モノマーとして5−クロロカルボニルペンタン酸(サンプル10及び12)を使用して調製した。比較のために、膜を、1,4−ジクロロカルボニルブタン及びTMC(比較サンプル9及び11)を用いて同様に調製した。各サンプルを調製するのに使用した非極性溶液中の総酸塩化物量を、0.175% w/vで一定に保った。残りの酸塩化物量を唯一TMCによって提供した一方で、対象モノマーの濃度を0〜0.02% w/vに変化させた。表3に示すように、対象モノマーである5−クロロカルボニルペンタン酸(サンプル10及び12)用いて調製した膜が、構造的に類似した1,4−ジクロロカルボニルブタン添加剤を用いて調製したサンプルと比べて、塩透過率の30%の改善を実証した。
Figure 0005912133
実施例4:
サンプル複合ポリアミド膜を、対象モノマーとして9−クロロカルボニルノナン酸を使用して調製した。比較のために、対照膜を対象モノマーなしで同様に作製した。各サンプルを調製するのに使用した非極性溶液中の総酸塩化物量を、0.21% w/vで一定に保った。残りの酸塩化物量を唯一TMCによって提供した一方で、対象モノマーの濃度を0.011% w/vとした。表4に示すように、が越える、9−クロロカルボニルノナン酸を用いて調製した膜は、対照膜を上回る塩透過率の26%の改善を示した。
Figure 0005912133
実施例5:
サンプル複合ポリアミド膜を、対象モノマーとして2,4−ジオキソ−3−オキサビシクロ[3.3.1]ノナン−7−カルボン酸を使用して作製した。比較のために、対照膜を、対象モノマーなしで同様に調製した。各サンプルを調製するのに使用した非極性溶液中の総酸塩化物量を、0.24% w/vで一定に保った。残りの酸塩化物量を唯一TMCによって提供した一方で、対象モノマーの濃度を0.03% w/vとした。表6に示すように、TMCだけを用いて作製した膜と比較して、対象モノマーは、塩透過率の改善を示した。
Figure 0005912133
実施例6:(比較)
サンプル複合ポリアミド膜を、1,8−ジクロロカルボニルオクタンを使用して調製した。比較のために、対照膜を、1,8−ジクロロカルボニルオクタンなしで同様に調製した。各サンプルを調製するのに使用した非極性溶液中の総酸塩化物量を、0.21% w/vで一定に保った。残りの酸塩化物量を唯一TMCによって提供した一方で、比較モノマーの濃度を0.011% w/vとした。表6に示すように、比較モノマーは、塩透過率の実質的な改善を示さなかった。
Figure 0005912133
実施例7:
サンプル複合ポリアミド膜を、3.5重量%の水性mPD溶液、並びにTMCを含む非極性溶液と対象モノマーとしてのイソパラフィン溶媒(ISOPAR L)中の4−(クロロカルボニル)ブタン酸を使用して作製した。各サンプルを調製するのに使用した非極性溶液のTMC含量を、0.11% w/vで一定に保った。TBPを含むサンプルはなかった。対象モノマーの濃度は、サンプル16で約0.01% w/vであり、そして対照で0%であった。非極性溶液はまた、共溶媒として4%のメシチレンも含んていた。塩透過率は、4−(クロロカルボニル)ブタン酸を用いて調製したサンプルにおいて低下した。
Figure 0005912133
本開示は以下も含む。
[1] 多孔質支持体と薄フィルムポリアミド層を含む複合ポリアミド膜の製造方法であって、多官能性アミンモノマーと多官能性ハロゲン化アシルモノマーを該多孔質支持体の表面に適用し、そしてそれらのモノマーを界面で重合させて、薄フィルムポリアミド層を形成するステップを含み、以下のステップ:
i)少なくとも1つのカルボン酸官能基又はその塩と単独のアミン反応性官能基を含むC 2 −C 20 脂肪族モノマーの存在下で界面重合をおこなうこと;及び
ii)少なくとも1つのカルボン酸官能基又はその塩と単独のアミン反応性官能基を含むC 2 −C 20 脂肪族モノマーを薄フィルムポリアミド層に適用すること、
のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする方法。
[2] 前記アミン反応性官能基が:ハロゲン化アシル、無水物、イソシアネート、及びエポキシから選択される、上記[1]に記載の方法。
[3] 前記脂肪族モノマーが、単独のカルボン酸官能基を含む、上記[1]に記載の方法。
[4] 前記脂肪族モノマーが、脂環式化合物である、上記[1]に記載の方法。
[5] 前記脂肪族モノマーが、非環式化合物である、上記[1]に記載の方法。
[6] 前記脂肪族モノマーが、以下の式(III):
式(III):
Figure 0005912133
{式中、Xはハロゲンであり、そして、nは1〜10の整数である。}によって表される、上記[1]に記載の方法。
[7] 前記脂肪族モノマーが:4−(クロロカルボニル)ブタン酸;5−(クロロカルボニル)ペンタン酸;6−(クロロカルボニル)ヘキサン酸;7−(クロロカルボニル)ヘプタン酸;8−(クロロカルボニル)オクタン酸;9−(クロロカルボニル)ノナン酸及び10−(クロロカルボニル)デカン酸から選択される、上記[1]に記載の方法。
[8] 前記脂肪族モノマーが、以下の式(IV及びV):
式(IV)
Figure 0005912133
式(V)
Figure 0005912133
{式中、Xはハロゲンである。}のうちの少なくとも1つによって表される、上記[1]に記載の方法。
[9] 前記の多孔質支持体の表面に多官能性モノマーを適用するステップが、多官能性アミンモノマーを含む極性溶液と、多官能性ハロゲン化アシルモノマーを含む非極性溶液を適用することを含み;そして、該非極性溶液が脂肪族モノマーをさらに含む、上記[1]に記載の方法。
[10] 脂肪族モノマーを含む溶液を、薄フィルムポリアミド層に適用するステップを含む、上記[1]に記載の方法。

Claims (6)

  1. 多孔質支持体と薄フィルムポリアミド層を含む複合ポリアミド膜の製造方法であって、多官能性アミンモノマーと多官能性ハロゲン化アシルモノマーを該多孔質支持体の表面に適用し、そしてそれらのモノマーを界面で重合させて、薄フィルムポリアミド層を形成するステップを含み、以下のステップ:
    i)加モノマーの存在下で界面重合をおこない、該追加モノマーと該多官能性ハロゲン化アシルモノマーとをモル比0.0001:1〜1:1で共通の非極性溶媒中溶液から適用すること;及び
    ii)加モノマーを薄フィルムポリアミド層に適用し、該追加モノマーを濃度0.5〜5%重量/体積で非極性溶媒中溶液から適用すること、
    のうちの少なくとも1つを含み、
    該追加モノマーが、以下の式(III)又はその塩:
    式(III):
    Figure 0005912133
    {式中、Xはハロゲンであり、そして、nは1〜10の整数である。}によって表される、方法。
  2. 前記追加モノマーが、脂環式化合物である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記追加モノマーが、非環式化合物である、請求項1に記載の方法。
  4. 前記追加モノマーが:4−(クロロカルボニル)ブタン酸;5−(クロロカルボニル)ペンタン酸;6−(クロロカルボニル)ヘキサン酸;7−(クロロカルボニル)ヘプタン酸;8−(クロロカルボニル)オクタン酸;9−(クロロカルボニル)ノナン酸及び10−(クロロカルボニル)デカン酸から選択される、請求項1に記載の方法。
  5. 前記追加モノマーが、以下の式(IV及びV):
    式(IV)
    Figure 0005912133
    式(V)
    Figure 0005912133
    {式中、Xはハロゲンである。}のうちの少なくとも1つによって表される、請求項1に記載の方法。
  6. 前記の多孔質支持体の表面に多官能性モノマーを適用するステップが、多官能性アミンモノマーを含む極性溶媒中溶液と、多官能性ハロゲン化アシルモノマーを含む非極性溶媒中溶液を適用することを含み;そして、該非極性溶媒中溶液が前記追加モノマーをさらに含む、請求項1に記載の方法。
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