次に、図面を参照しながら本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明によるデファレンシャルギヤ組立装置(以下、単に「組立装置」という)10を用いて組み立てられるデファレンシャルギヤ1の分解斜視図である。同図に示すデファレンシャルギヤ1は、車両に搭載されたエンジン等の動力発生源から変速機を介して伝達される動力を左右の駆動輪に伝達するのに用いられるものである。図1に示すように、本実施形態のデファレンシャルギヤ1は、それぞれ図示しないドライブシャフトに固定される一対のサイドギヤ2と、それぞれ一対のサイドギヤ2に噛合する一対のピニオンギヤ3と、いわゆる二面幅構造を有すると共に一対のピニオンギヤ3を支持するピニオンシャフト4と、一対のサイドギヤ2および一対のピニオンギヤ3を収容すると共に図示しないリングギヤが固定されるデフケース5と、それぞれサイドギヤ2とデフケース5との間に配置される2つの押圧部材6とを含む。
各押圧部材6は、コニカルスプリング(皿バネ)として構成されており、対応するサイドギヤ2を一対のピニオンギヤ3に向けて押圧する。これにより、一対のサイドギヤ2間に回転差が生じると、サイドギヤ2とピニオンギヤ3との噛み合い反力によって各サイドギヤ2にドライブシャフトの軸方向かつ駆動輪側へのスラスト力が発生する。そして、当該スラスト力が押圧部材の押圧力より小さい場合、各サイドギヤ2は、ピニオンギヤ3に対してバックラッシュがゼロとなるように押し付けられ、ピニオンギヤ3と噛み合う歯が入れ替わるたびにドライブシャフトの軸方向に振動する。これにより、このデファレンシャルギヤによれば、駆動輪に対してその幅方向に微小振動を与えることが可能となり、駆動輪に対して幅方向に微小振動を与えることで当該駆動輪(タイヤ)の回転方向の摩擦係数を増加させることができる。
また、各ピニオンギヤ3とデフケース5との間には、二面幅構造をもったピニオンシャフト4の断面形状に合致した形状の軸孔を有するピニオンワッシャ7が配置される。本実施形態では、各ピニオンギヤ3の背面が球面状に形成されると共に、各ピニオンワッシャ7は、対応するピニオンギヤ3の背面の曲率と概ね同一の曲率を有する凹球面と、球面状に形成された背面とを含む。また、ピニオンシャフト4の一端には、ピン挿入孔4aが形成されており、デフケース5には、一対のピニオンシャフト挿通孔5pの一方の近傍(上方)にピン挿入孔5aが形成されている。そして、一対のピニオンギヤ3およびピニオンワッシャ7並びに一対のピニオンシャフト挿通孔5pに挿通されたピニオンシャフト4は、ピン挿入孔4aとデフケース5のピン挿入孔5aとにピン8を嵌挿することによりデフケース5に対して固定される。なお、各押圧部材6とデフケース5との間に図示しないサイドワッシャが配置されてもよい。
デフケース5には、図1に示すように、当該デフケース5の軸心上で互いに対向すると共にそれぞれドライブシャフトが挿通される一対のドライブシャフト挿通孔5dと、デフケース5の軸心と直交する軸上で互いに対向すると共にピニオンシャフト4が挿通される一対のピニオンシャフト挿通孔5pと、ドライブシャフト挿通孔5dの軸心とピニオンシャフト挿通孔5pの軸心との双方と直交する軸上で互いに対向する一対の開口5oとが形成されている。デファレンシャルギヤ1の組立に際して、サイドギヤ2やピニオンギヤ3、押圧部材6、ピニオンワッシャ7等は、各開口5oからデフケース5の内部に配置される。更に、デフケース5内の各ピニオンシャフト挿通孔5pの周囲には、ピニオンワッシャ7の背面の曲率と概ね同一の曲率を有する凹球面5sが形成されている。
図2から図4は、組立装置10を示す概略構成図である。これらの図面に示すように、組立装置10は、デフケース5を支持する支持テーブル11と、一対のサイドギヤ2に噛合するピニオンギヤ3をデフケース5の内部に向けて押し込むピニオンギヤ押圧機構12と、一対のピニオンギヤ3の軸孔3aにピニオンシャフト4を挿入可能なピニオンシャフト挿入機構14と、組立装置10全体を制御する制御装置15(図2参照)とを含む。
支持テーブル11は、図2に示すように、組立装置10のベースプレート10aの略中央に配置される。また、支持テーブル11は、デフケース5の底面に形成されたインローと係合する係合ブロック11aと、ピニオンギヤ押圧機構12やピニオンシャフト挿入機構14に対するデフケース5の向き(位相)を規制する位相決めブロック11b(何れも図3参照)とを有する。これにより、支持テーブル11(係合ブロック11aおよび位相決めブロック11b)に対してデフケース5を上から載置するだけで、当該デフケース5を一対のドライブシャフト挿通孔5dの軸心が鉛直に延在すると共にピニオンギヤ押圧機構12やピニオンシャフト挿入機構14に対するデフケース5の位相位置決めがなされた状態で支持テーブル11上に安定に支持することができる。なお、支持テーブル11には、デフケース5を固定するためのクランプが設けられてもよい。
ピニオンギヤ押圧機構12は、支持テーブル11を介して互いに対向する第1ピニオン押圧部材121および第2ピニオン押圧部材122と、制御装置15により制御されて第1ピニオン押圧部材121を支持テーブル11に対して接近離間させる第1駆動ユニット123と、制御装置15により制御されて第2ピニオン押圧部材122を支持テーブル11に対して接近離間させる第2駆動ユニット124とを含む。第1ピニオン押圧部材121は、ピニオンワッシャ7の背面に対応した凹球面を有し、ベースプレート10aに固定された第1ガイドレール125により移動自在に支持される。また、第2ピニオン押圧部材122もピニオンワッシャ7の背面に対応した凹球面を有し、第1ガイドレール125と同軸に延在するようにベースプレート10aに固定された第2ガイドレール126により移動自在に支持される。本実施形態において、第1および第2駆動ユニット123,124は、例えばエアシリンダといった流体圧ユニットを含むものとされるが、電動モータや当該電動モータの回転を直線運動に変換する変換機構等を含むものとされてもよい。
ピニオンシャフト挿入機構14は、それぞれピニオンシャフト4またはダミーシャフト9(図8参照)を摺動自在に支持(ガイド)可能であると共に支持テーブル11を介して互いに対向する第1シャフトガイド部材141および第2シャフトガイド部材142と、第1シャフトガイド部材141により支持されたピニオンシャフト4を押圧して一対のピニオンギヤ3の軸孔3aに挿入するための第1シャフト押圧ロッド143と、第2シャフトガイド部材142により支持されたダミーシャフト9を押圧するための第2シャフト押圧ロッド144と、制御装置15により制御されて第1シャフト押圧ロッド143を支持テーブル11に対して接近離間させる第1駆動ユニット145と、制御装置15により制御されて第2シャフト押圧ロッド144を支持テーブル11に対して接近離間させる第2駆動ユニット146とを含む。
本実施形態において、ピニオンシャフト挿入機構14は、図2に示すように、ピニオンシャフト4の挿入方向(およびダミーシャフト9の抜き出し方向)すなわち第1および第2シャフトガイド部材141,142や第1および第2シャフト押圧ロッド143,144の延在方向がピニオンギヤ押圧機構12によるピニオンギヤ3の押圧方向に対して90°をなすようにベースプレート10a上に配置される。また、本実施形態のピニオンシャフト挿入機構14には、デフケース5のピン挿入孔5aとピニオンシャフト4のピン挿入孔4aとにピン8を嵌挿可能な図示しないピン嵌挿機構が付設されている。ピン嵌挿機構は、複数のピン8を収容する図示しないピン収容部を有し、当該ピン収容部からのピン8をデフケース5の上方からピン挿入孔5a,4aに嵌挿するように構成されており、上述の制御装置15により制御される。
第1駆動ユニット145は、例えばエアシリンダといった流体圧ユニットを含むものとされるが、電動モータや当該電動モータの回転を直線運動に変換する変換機構等を含むものとされてもよい。同様に、第2駆動ユニット146も、例えばエアシリンダといった流体圧ユニットを含むものとされるが、電動モータや当該電動モータの回転を直線運動に変換する変換機構等を含むものとされてもよい。そして、本実施形態の第2駆動ユニット146は、一対のピニオンギヤ3の軸孔3aに対するピニオンシャフト4の挿入に伴って当該軸孔3aから排出されるダミーシャフト9を第2シャフト押圧ロッド144によりピニオンシャフト4に向けて押圧しつつ、当該ダミーシャフト9がデフケース5の内部から外部に向けて移動するのを許容するように構成される。
更に、組立装置10は、図2から図4に示すように、上述の支持テーブル11やピニオンギヤ押圧機構12、ピニオンシャフト挿入機構14に加えて、支持テーブル11の下方に配置されると共に当該支持テーブル11に対して昇降可能なダミーシャフト旋回部材20と、支持テーブル11の下方に配置されると共に当該支持テーブル11に対して昇降可能な2本の下側サイドギヤ移動部材30と、支持テーブル11の上方に配置されると共に当該支持テーブル11に対して昇降可能な2本の上側サイドギヤ移動部材40と、支持テーブル11の上方に配置されると共に当該支持テーブル11に対して昇降可能な2本の調心部材50とを含む。
ダミーシャフト旋回部材20は、上記サイドギヤ2の軸孔2aに挿通可能な棒状に形成されており、図5および図6に示すように、軸方向と直交する方向に延在してダミーシャフト9と係合可能な係合凹部20aを先端(上端)に有すると共に、軸心を貫通する貫通孔20cを有する。そして、ダミーシャフト旋回部材20は、組立装置10のベースプレート10aの下方に配置された下側可動支持部材21により支持テーブル11の中心軸周りに回転自在に支持される。下側可動支持部材21には、図3および図4に示すように、電動モータやベルト式伝動機構等を含むと共に上述の制御装置15により制御される回転駆動ユニット22が固定されており、ダミーシャフト旋回部材20は、当該回転駆動ユニット22によって支持テーブル11の中心軸周りに回転させられる。また、下側可動支持部材21は、ベースプレート10aおよび当該下側可動支持部材21の下方に固定されると共に上述の制御装置15により制御される下側昇降ユニット23と連結されており、当該下側昇降ユニット23により支持テーブル11に対して昇降させられる。本実施形態において、下側昇降ユニット23は、例えばエアシリンダといった流体圧ユニットを含むものとされるが、電動モータや当該電動モータの回転を直線運動に変換する変換機構等を含むものとされてもよい。
2つの下側サイドギヤ移動部材30は、ダミーシャフト旋回部材20の貫通孔20c内に回転自在に配置される棒状のロッド部31と、ロッド部31の先端(上端)に設けられた爪部32とをそれぞれ有する。本実施形態において、各下側サイドギヤ移動部材30は、ダミーシャフト旋回部材20が回転駆動ユニット22により回転させられた際に、当該ダミーシャフト旋回部材20と一体に回動するように構成される。また、下側昇降ユニット23により下側可動支持部材21を支持テーブル11に対して昇降させれば、各下側サイドギヤ移動部材30は、ダミーシャフト旋回部材20と共に支持テーブル11に対して昇降する。更に、各ロッド部31には、例えば電動モータやラックアンドピニオン機構等を含むと共に上述の下側可動支持部材21に固定された下側ロッド回転駆動ユニット33が連結されている。下側ロッド回転駆動ユニット33は、上述の制御装置15により制御されて各下側サイドギヤ移動部材30のロッド部31を軸心周りかつ図6における反時計回りに回転させるものである。なお、下側ロッド回転駆動ユニット33は、手動操作により各ロッド部31を軸心周りに回転させるものとして構成されてもよい。
また、本実施形態において、各下側サイドギヤ移動部材30の爪部32は、図6に示すように、円盤状に形成されると共に、その中心がロッド部31の軸心から所定量だけ離間するように当該ロッド部31に固定される。そして、2つの下側サイドギヤ移動部材30は、各ロッド部31がダミーシャフト旋回部材20の直径上で間隔をおいて隣り合うと共に貫通孔20cの内周面に近接し、かつ各爪部32が係合凹部20a内に位置するように下側可動支持部材21により支持される。これにより、図6において実線で示すように、各下側サイドギヤ移動部材30の爪部32をダミーシャフト旋回部材20の貫通孔20cに収容することが可能となり、各ロッド部31を図中反時計回りに90°だけ回転させた際には、同図において二点鎖線で示すように、各爪部32をダミーシャフト旋回部材20の係合凹部20aが形成される部分の外周よりも外方に張り出させることができる。
2つの上側サイドギヤ移動部材40は、ベースプレート10aの上方に配置された上側可動支持部材43により回転自在に支持される筒状部材44の貫通孔44c(図7参照)内に回転自在に配置される棒状のロッド部41と、ロッド部41の先端(下端)に設けられた爪部42とをそれぞれ有する。また、各ロッド部41には、例えば電動モータやラックアンドピニオン機構等を含むと共に筒状部材44を介して上側可動支持部材43により支持された上側ロッド回転駆動ユニット45が連結されている。上側ロッド回転駆動ユニット45は、上述の制御装置15により制御されて各上側サイドギヤ移動部材40のロッド部41を軸心周りかつ図7における反時計回りに回転させるものである。なお、上側ロッド回転駆動ユニット45も、手動操作により各ロッド部41を軸心周りに回転させるものとして構成されてもよい。
本実施形態において、各上側サイドギヤ移動部材40の爪部42は、図7に示すように、円盤状に形成されると共に、その中心がロッド部41の軸心から所定量だけ離間するように当該ロッド部41に固定される。そして、2つの上側サイドギヤ移動部材40は、各ロッド部41が筒状部材44の直径上で間隔をおいて隣り合うと共に貫通孔44cの内周面に近接し、かつ各爪部42が筒状部材44の先端(下端)から突出するように上側可動支持部材43により支持される。これにより、図7において実線で示すように、各上側サイドギヤ移動部材40の爪部42を上記筒状部材44の先端部の外周から張り出さないようにすることが可能となり、各ロッド部41を図中反時計回りに180°だけ回転させた際には、同図において二点鎖線で示すように、各爪部42を筒状部材44の先端部の外周よりも外方に張り出させることができる。なお、筒状部材44の先端部は、上記サイドギヤ2の軸孔2aに挿通可能な寸法を有するように形成される。
また、上側可動支持部材43は、ベースプレート10aの上方に固定されると共に上述の制御装置15により制御される上側昇降ユニット46と連結されており、当該上側昇降ユニット46により支持テーブル11に対して昇降させられる。これにより、上側昇降ユニット46により上側可動支持部材43を支持テーブル11に対して昇降させれば、各上側サイドギヤ移動部材40は、筒状部材44と共に支持テーブル11に対して昇降する。本実施形態において、上側昇降ユニット46は、例えばエアシリンダといった流体圧ユニットを含むものとされるが、電動モータや当該電動モータの回転を直線運動に変換する変換機構等を含むものとされてもよい。
各調心部材50は、円錐状に形成された先端部(上端部)を有する棒状の部材であり、上記筒状部材44内に昇降自在に配置される。本実施形態において、2つの調心部材50は、図7に示すように、上側サイドギヤ移動部材40の並設方向と直交する方向に沿って並設される。これにより、上側サイドギヤ移動部材40の爪部42の張出量をより大きくすると共に、2つの上側サイドギヤ移動部材40および2つの調心部材50を比較的狭いスペースに配置して装置全体をコンパクト化することが可能となる。
更に、各調心部材50には、図3および図4に示すように、筒状部材44を介して上側可動支持部材43により支持された調心用昇降ユニット51が連結されている。調心用昇降ユニット51は、上述の制御装置15により制御されて各調心部材50を上側可動支持部材43(および支持テーブル11)に対して昇降させるものである。本実施形態において、調心用昇降ユニット51は、例えばエアシリンダといった流体圧ユニットを含むものとされるが、電動モータや当該電動モータの回転を直線運動に変換する変換機構等を含むものとされてもよい。また、2つの上側サイドギヤ移動部材40、筒状部材44、上側ロッド回転駆動ユニット45、2つの調心部材50および調心用昇降ユニット51は、ダミーシャフト旋回部材20が支持テーブル11の中心軸周りに回転した際に当該ダミーシャフト旋回部材20と同期回転するように、回転駆動ユニット22と図示しない連動機構を介して連結されてもよい。
次に、本発明によるデファレンシャルギヤ1の組立方法、すなわち上述の組立装置10を用いたデファレンシャルギヤ1の組立手順について説明する。
組立装置10を用いたデファレンシャルギヤ1の組立に際しては、支持テーブル11へのデフケース5の載置に先立って、予めピニオンギヤ押圧機構12の第1ピニオン押圧部材121および第2ピニオン押圧部材122を支持テーブル11から離間させ、下側昇降ユニット23により下側可動支持部材21を最下位置まで下降させると共に、上側昇降ユニット46により上側可動支持部材43を最上位置まで上昇させておく。また、回転駆動ユニット22によりダミーシャフト旋回部材20を係合凹部20aがピニオンギヤ押圧機構12によるピニオンギヤ3の押圧方向に延在するように旋回させておく。更に、下側ロッド回転駆動ユニット33により各下側サイドギヤ移動部材30の爪部32がダミーシャフト旋回部材20の貫通孔20cに収容されるように各ロッド部31を回転させておくと共に、上側ロッド回転駆動ユニット45により各上側サイドギヤ移動部材40の爪部42が筒状部材44の先端部の外周から張り出さないように各ロッド部41を回転させておく。以下、このような支持テーブル11へのデフケース5の載置前の状態を組立装置10の「初期状態」という。加えて、ピニオンシャフト挿入機構14の第1シャフトガイド部材141には、支持テーブル11へのデフケース5の載置前あるいは載置後にピニオンシャフト4が載置される。
そして、図8および図9に示すように、予め一対のサイドギヤ2、一対のピニオンギヤ3、2つのピニオンワッシャ7、ダミーシャフト9および2つの押圧部材6が仮組付けされたデフケース5を支持テーブル11上に載置するか、あるいは、支持テーブル11上に載置されたデフケース5に対して一対のサイドギヤ2、一対のピニオンギヤ3、2つのピニオンワッシャ7、ダミーシャフト9および2つの押圧部材6を仮組付けする。デフケース5に対するサイドギヤ2、ピニオンギヤ3、ピニオンワッシャ7、ダミーシャフト9および押圧部材6の仮組付けは、図示しないロボットにより行われてもよく、手作業により行われてもよい。
組立装置10と共に用いられるダミーシャフト9は、図8に示すように、ダミーシャフト旋回部材20の係合凹部20aと係合する中央部90と、当該中央部90の一端に第1スプリング(弾性体)S1を介して連結された第1端部91と、中央部90の他端に第2スプリング(弾性体)S2を介して連結された第2端部92とを有するものである。本実施形態において、ダミーシャフト9の中央部90には、当該ダミーシャフト9の軸方向に間隔をおいて逆円錐状の2つの調心凹部90aが形成されている。ダミーシャフト9は、中央部90がデフケース5の内部の中央部に位置するように各ピニオンギヤ3の軸孔3aや各ピニオンワッシャ7の軸孔に挿通され、第1および第2端部91,92は、それぞれ対応するピニオンワッシャ7から外方に突出する。
デフケース5は、各開口5oがピニオンギヤ押圧機構12の第1または第2ピニオン押圧部材121,122と正対すると共に、各ピニオンシャフト挿通孔5pがピニオンシャフト挿入機構14の第1シャフトガイド部材141上のピニオンシャフト4または第2シャフトガイド部材142と正対するように支持テーブル11の係合ブロック11a上に載置される。本実施形態の組立装置10では、支持テーブル11にデフケース5が載置されると、図9に示すように、制御装置15により制御されるピニオンシャフト挿入機構14の第1駆動ユニット145によって第1シャフト押圧ロッド143がデフケース5に接近させられ、それにより第1シャフトガイド部材141上のピニオンシャフト4の先端がデフケース5の内部に突出しないように対応するピニオンシャフト挿通孔5pに挿入される。また、制御装置15により制御されるピニオンシャフト挿入機構14の第2駆動ユニット146によって第2シャフト押圧ロッド144の先端がデフケース5の内部に突出しないように対応するピニオンシャフト挿通孔5pに挿入される。これにより、デフケース5を支持テーブル11上に精度よく位置決めすることが可能となる。
ここで、デファレンシャルギヤ1に含まれる押圧部材6は、対応するサイドギヤ2とデフケース5との間で圧縮されることで当該サイドギヤ2を一対のピニオンギヤ3に向けて押圧するものである。従って、サイドギヤ2、ピニオンギヤ3、ピニオンワッシャ7、ダミーシャフト9および押圧部材6がデフケース5に対して仮組付された際には、各押圧部材6が対応するサイドギヤ2とデフケース5との間で自然状態に維持される(圧縮されない)ことから、各ピニオンギヤ3は、一対のサイドギヤ2に本来(組立完了時)の噛合位置よりもデフケース5の外側で噛合し、図8に示すようにデフケース5の開口5oから若干外側にはみ出すことになる。
上述のようにして、支持テーブル11によりデフケース5が支持された後、制御装置15に組付開始指令を与えると、以後、制御装置15により制御される組立装置10が以下に説明するように動作し、それによりデファレンシャルギヤ1が組み立てられていくことになる。組付開始指令を入力した制御装置15は、まず、下側可動支持部材21が支持テーブル11上のデフケース5に向けて上昇するように下側昇降ユニット23を制御すると共に、上側可動支持部材43が支持テーブル11上のデフケース5に向けて下降するように上側昇降ユニット46を制御する。
支持テーブル11に対する下側可動支持部材21の上昇に伴って、ダミーシャフト旋回部材20および各下側サイドギヤ移動部材30は、図10および図11に示すように、デフケース5内の図中下側のサイドギヤ2の軸孔2a内へと挿通され、各下側サイドギヤ移動部材30の爪部32が図中下側のサイドギヤ2の軸孔2aを囲む図中上側の端面2bよりも僅かに上側に位置した段階で下側可動支持部材21の移動が停止される。この際、ダミーシャフト旋回部材20の先端(上端)は、図中下側のサイドギヤ2の軸孔2aから上方に突出し、係合凹部20aは、図10および図11に示すように、ダミーシャフト9の中央部90と係合する。また、支持テーブル11に対する上側可動支持部材43の下降に伴って、筒状部材44、各上側サイドギヤ移動部材40および各調心部材50は、図10および図11に示すように、デフケース5内の図中上側のサイドギヤ2の軸孔2a内へと挿通され、各上側サイドギヤ移動部材40の爪部42が図中上側のサイドギヤ2の軸孔2aを囲む図中下側の端面2bよりも僅かに下側に位置した段階で上側可動支持部材43の移動が停止される。
次いで、制御装置15は、ピニオンギヤ押圧機構12の第1および第2ピニオン押圧部材121,122がそれぞれ支持テーブル11上のデフケース5に向けて接近するように第1および第2駆動ユニット123,124を制御する。第1および第2ピニオン押圧部材121,122は、ダミーシャフト9の第1および第2端部91,92の対応する一方を押圧し、図12に示すように、それぞれの凹球面が対応するピニオンワッシャ7と当接した段階で、第1および第2ピニオン押圧部材121,122の移動が停止される。
続いて、制御装置15は、各下側サイドギヤ移動部材30のロッド部31が図6における反時計回りに180°だけ回転するように下側ロッド回転駆動ユニット33を制御すると共に、各上側サイドギヤ移動部材40のロッド部41が図7における反時計回りに180°だけ回転するように上側ロッド回転駆動ユニット45を制御する。これにより、図13に示すように、各下側サイドギヤ移動部材30の爪部32がダミーシャフト旋回部材20の係合凹部20aが形成される部分の外周すなわち図中下側のサイドギヤ2の軸孔2aよりも外方に張り出し、図中下側のサイドギヤ2の端面2bと係合(当接)可能となる。また、図14に示すように、各上側サイドギヤ移動部材40の爪部42が筒状部材44の先端部の外周すなわち図中上側のサイドギヤ2の軸孔2aよりも外方に張り出し、図中上側のサイドギヤ2の端面2bと係合(当接)可能となる。更に、制御装置15は、2つの調心部材50が所定量だけデフケース5の内部へと下降するように調心用昇降ユニット51を制御する。これにより、図14に示すように、各調心部材50の先端部がダミーシャフト9の中央部90に形成された対応する調心凹部90aと係合することで、ダミーシャフト9をデフケース5に対して調心することが可能となり、ピニオンワッシャ7の向きをデフケース5に対して正確に定めると共にピニオンシャフト4をピニオンワッシャ7の軸孔にスムースに挿入することができる。
こうして各調心部材50によりダミーシャフト9がデフケース5に対して調心された後、制御装置15は、ピニオンギヤ押圧機構12の第1および第2ピニオン押圧部材121,122がそれぞれピニオンワッシャ7を介して対応するピニオンギヤ3をデフケース5内へと徐々に押圧するように第1および第2駆動ユニット123,124を制御する。制御装置15は、これと同時に、下側可動支持部材21が支持テーブル11上のデフケース5に対して所定量だけ下降するように下側昇降ユニット23を制御すると共に、上側可動支持部材43が支持テーブル11上のデフケース5に対して所定量だけ上昇するように上側昇降ユニット46を制御する。
これにより、デフケース5に対する下側可動支持部材21の下降に伴ってダミーシャフト旋回部材20および各下側サイドギヤ移動部材30がデフケース5に対して下降することで、2つの爪部32と係合したデフケース5内の下側のサイドギヤ2は、各下側サイドギヤ移動部材30により引っ張られて下方へと移動する。この結果、図15および図16に示すように、当該下側のサイドギヤ2とデフケース5との間の押圧部材6が圧縮され(押し潰され)、概ね平坦な状態となる。また、デフケース5に対する上側可動支持部材43の上昇に伴って各上側サイドギヤ移動部材40がデフケース5に対して上昇することで、2つの爪部42と係合したデフケース5内の上側のサイドギヤ2は、各上側サイドギヤ移動部材40により引っ張られて上方へと移動する。この結果、図15および図16に示すように、当該上側のサイドギヤ2とデフケース5との間の押圧部材6が圧縮され(押し潰され)、概ね平坦な状態となる。
そして、このようにデフケース5に対して下側可動支持部材21を下降させると共に上側可動支持部材43を上昇させつつ、すなわち2つの押圧部材6を圧縮しつつ、ピニオンギヤ押圧機構12の第1および第2ピニオン押圧部材121,122により各ピニオンギヤ3をデフケース5内へと徐々に押圧することで、各ピニオンギヤ3をデフケース5の内部に押し込んで本来(組立完了時)の噛合位置で一対のサイドギヤ2と噛合させることが可能となる。なお、デフケース5に対して上側可動支持部材43が上昇すると、上側可動支持部材43の上昇に伴って各調心部材50もデフケース5に対して上昇することから、本実施形態では、上側可動支持部材43が上昇する際、各調心部材50とダミーシャフト9の調心凹部90aとの係合を維持すべく、各調心部材50が上側可動支持部材43に対して下降するように調心用昇降ユニット51が制御される。
本実施形態では、デフケース5に対して下側可動支持部材21を下降させると共に上側可動支持部材43を上昇させる際に、各下側サイドギヤ移動部材30から下側のサイドギヤ2に付与される引張荷重が各上側サイドギヤ移動部材40から上側のサイドギヤ2に付与される引張荷重よりも大きくなるように下側昇降ユニット23および上側昇降ユニット46が制御される。これにより、支持テーブル11にクランプが設けられていなくても当該支持テーブル11上にデフケース5を安定に保持することが可能となり、支持テーブル11にクランプが設けられている場合には、当該クランプに要求されるクランプ力を低下させることができる。また、各下側サイドギヤ移動部材30および各上側サイドギヤ移動部材40の移動が停止した後にも、各上側サイドギヤ移動部材40から上側のサイドギヤ2に引張荷重が付与されると共に、各下側サイドギヤ移動部材30から下側のサイドギヤ2に上側のサイドギヤ2への引張荷重よりも大きい引張荷重が付与されるように下側昇降ユニット23および上側昇降ユニット46が制御される。
上述のような各押圧部材6の圧縮および各ピニオンギヤ3のデフケース5内への押し込みが完了した後、制御装置15は、ダミーシャフト旋回部材20(および各下側サイドギヤ移動部材30)が図2中反時計回りに90°だけ軸心周りに回転するように回転駆動ユニット22を制御する。また、本実施形態では、ダミーシャフト旋回部材20を回転させると各サイドギヤ2も回転し、2つの爪部42と上側のサイドギヤ2の端面2bとの摩擦力により、筒状部材44、上側ロッド回転駆動ユニット45、2つの調心部材50および調心用昇降ユニット51もダミーシャフト旋回部材20と同期回転する。これにより、各調心部材50によりダミーシャフト9をデフケース5に対して調心すると共に、第1および第2ピニオン押圧部材121,122の凹球面やデフケース5の凹球面5sによりピニオンギヤ3およびピニオンワッシャ7をガイドしながら、ダミーシャフト9と一対のピニオンギヤ3およびピニオンワッシャ7とを一体に回転させて、図17および図18に示すように、ピニオンワッシャ7を回転させずに所定の向きに維持しつつ、ピニオンギヤ3の軸孔3aおよびピニオンワッシャ7の軸孔とデフケース5のピニオンシャフト挿通孔5pとを同軸に整列させることができる。
ダミーシャフト9と一対のピニオンギヤ3およびピニオンワッシャ7とを一体に回転させた後、制御装置15は、各調心部材50が上側可動支持部材43に対して上昇して各調心部材50とダミーシャフト9の調心凹部90aとの係合が解除されるように調心用昇降ユニット51を制御する。そして、制御装置15は、デフケース5の一方のピニオンシャフト挿通孔5pを介して一対のピニオンギヤ3の軸孔3aおよびピニオンワッシャ7の軸孔にピニオンシャフト4が挿入されると共に、デフケース5の他方のピニオンシャフト挿通孔5pを介して一対のピニオンギヤ3およびピニオンワッシャ7からダミーシャフト9が排出されるようにピニオンシャフト挿入機構14の第1および第2駆動ユニット145,146を制御する。
本実施形態において、一対のピニオンギヤ3およびピニオンワッシャ7へのピニオンシャフト4の挿入に際し、ピニオンシャフト挿入機構14は、第1シャフト押圧ロッド143によりピニオンシャフト4を介してダミーシャフト9の第1端部(一端)91を押圧すると共に、第2シャフト押圧ロッド144によりダミーシャフト9の第2端部(他端)92を第1端部91に印加される押圧力よりも小さい押圧力でピニオンシャフト4側に押圧するように制御される。これにより、ピニオンシャフト4の挿入およびダミーシャフト9の抜き出しに際して、ダミーシャフト9の中央部90と第1および第2端部91,92との間に大きな間隙が形成されないようにすることができる。従って、本実施形態の組立装置10では、デフケース5と各ピニオンギヤ3との間に配置されるピニオンワッシャ7がダミーシャフト9の中央部90と第1端部91や第2端部92との間の間隙に落ち込んでデファレンシャルギヤ1の円滑な組立を妨げるのを良好に抑制することが可能となる。
こうしてデフケース5に対するピニオンシャフト4の挿入が完了すると、図19に示すようにピニオンシャフト4のピン挿入孔4aとデフケース5のピン挿入孔5aとが正対し、制御装置15は、デフケース5のピン挿入孔5aとピニオンシャフト4のピン挿入孔4aとにピン8を挿入するように図示しないピン嵌挿機構を制御する。そして、ピン挿入孔5aとピニオンシャフト4のピン挿入孔4aとにピン8が挿入されることで、1体のデフケース5に対する組立装置10による部材の組み付けが完了し、制御装置15は、ピニオンギヤ押圧機構12、ピニオンシャフト挿入機構14、ダミーシャフト旋回部材20、下側サイドギヤ移動部材30、上側サイドギヤ移動部材40、調心部材50等が初期状態に戻されるように各駆動ユニット等を制御する。各部材の組み付けが完了したデフケース5は、支持テーブル11の上方から取り外された後、保管場所に一旦保管されるか、あるいは次工程の施工場所へと搬送される。
以上説明したように、組立装置10により組み立てられるデファレンシャルギヤ1は、デフケース5とサイドギヤ2との間に配置されて当該サイドギヤ2をピニオンギヤ3に向けて押圧する例えばコニカルスプリング(皿バネ)といった押圧部材6を含むものである。かかるデファレンシャルギヤ1の組立に際しては、ロボットあるいは手作業により一対のサイドギヤ2、一対のピニオンギヤ3、2つのピニオンワッシャ7、ダミーシャフト9および2つの押圧部材6が仮組付けされたデフケース5を支持テーブル11に支持させるか、あるいは、支持テーブル11上のデフケース5内にロボットあるいは手作業により一対のサイドギヤ2、一対のピニオンギヤ3、2つのピニオンワッシャ7、ダミーシャフト9および2つの押圧部材6を仮組付けする。
次いで、一対のサイドギヤ2に噛合するピニオンギヤ3をピニオンギヤ押圧機構12によってデフケース5の内部に向けて押し込みながら、各サイドギヤ2を下側サイドギヤ移動部材30および上側サイドギヤ移動部材40によってデフケース5に向けて移動させる。これにより、その圧縮(押し潰し)に例えば50〜100kgf程度の荷重を要して手作業では圧縮させ得ない押圧部材6を下側サイドギヤ移動部材30および上側サイドギヤ移動部材40により圧縮すると共に、一対のサイドギヤ2と一対のピニオンギヤ3とをデフケース5の内部で噛合させて当該デフケース5の内部で両者を一体に回転させることが可能となる。
そして、ダミーシャフト旋回部材20によって一対のピニオンギヤ3の軸孔3a等に挿入されたダミーシャフト9を旋回させ、ピニオンギヤ3の軸孔3a等をデフケース5に形成されたピニオンシャフト挿通孔5pと対向させる。更に、ピニオンシャフト挿入機構14によってデフケース5に形成された一方のピニオンシャフト挿通孔5pを介して一対のピニオンギヤ3の軸孔3a等にピニオンシャフト4を挿入すると共に、デフケース5の他方のピニオンシャフト挿通孔5pを介して一対のピニオンギヤ3の軸孔3a等からダミーシャフト9を抜き出す。これにより、組立装置10によれば、デフケース5とサイドギヤ2との間に配置されて当該サイドギヤ2をピニオンギヤ3に向けて押圧する押圧部材6を含むデファレンシャルギヤ1を容易かつ効率よく組み立てることが可能となる。なお、上述のように各押圧部材6の圧縮および各ピニオンギヤ3のデフケース5内への押し込み前にダミーシャフト9をデフケース5に組み付ける代わりに、例えばピニオンギヤ押圧機構12にダミーシャフト挿入機構を付設して、各押圧部材6の圧縮および各ピニオンギヤ3のデフケース5内への押し込み完了後にダミーシャフト9をデフケース5に組み付けてもよい。
また、組立装置10の下側および上側サイドギヤ移動部材30,40は、支持テーブル11上のデフケース5に対して昇降すると共にサイドギヤ2の軸孔2aを通過可能に構成されたロッド部31,41と、ロッド部31,41の先端に設けられると共にロッド部31,41の軸心周りの回転に伴ってサイドギヤ2の軸孔2aよりも外方に張り出し可能な爪部32,42とを有する。これにより、上側および下側サイドギヤ移動部材30,40のロッド部31,41を爪部32,42がサイドギヤ2の軸孔2a内に納まるように回転させておけば、爪部32,42をサイドギヤ2すなわち軸孔2aの内周面と干渉させることなく当該軸孔2aを通過させることができる。そして、爪部32,42がサイドギヤ2の軸孔2aを通過した後にロッド部31,41を回転させることで、爪部32,42によりサイドギヤ2を支持することが可能となり、この状態でロッド部31,41をデフケース5に対して移動させることで、サイドギヤ2をデフケース5に向けて移動させ、サイドギヤ2とデフケース5との間の押圧部材6を圧縮することができる。ただし、ロッド部31,41を回転させて爪部32,42を外方に張り出させる代わりに、ロッド部31,41の上下動に連動するカムにより爪部32,42を外方に張り出させたり、アクチュエータ等を用いて爪部32,42を外方に張り出させたりしてもよい。
更に、上記実施形態において、下側サイドギヤ移動部材30の爪部32および上側サイドギヤ移動部材40の爪部42は、それぞれサイドギヤ2の軸孔2aを囲む端面2bと当接するように形成される。これにより、爪部32,42によりサイドギヤ2をより確実に支持すると共に、サイドギヤ2にダメージを与えることなく下側サイドギヤ移動部材30や上側サイドギヤ移動部材40からサイドギヤ2に比較的大きな力を印加しながら押圧部材6を圧縮することが可能となる。なお、上記実施形態の組立装置10は、2つのサイドギヤのそれぞれをデフケース5に対して移動させるために、下側サイドギヤ移動部材30と上側サイドギヤ移動部材40とを含むが、押圧部材6の剛性(バネ定数)やデフケースのサイズ等によっては、下側サイドギヤ移動部材30と上側サイドギヤ移動部材40とのうちの何れか一方を省略してもよい。
また、上記組立装置10は、支持テーブル11上のデフケース5に対して昇降可能であると共に、それぞれダミーシャフト9に形成された調心凹部90aと係合可能な2つの調心部材50を含む。そして、下側サイドギヤ移動部材30および上側サイドギヤ移動部材40は、1つのサイドギヤ2に対して2つずつ設けられ、2つの調心部材50は、一対のサイドギヤ2の一方に対応した2つの上側サイドギヤ移動部材40の並設方向と直交する方向に沿って並設される。これにより、上側サイドギヤ移動部材40の爪部42の張出量をより大きくすると共に、サイドギヤ2をより確実に支持可能な2つの上側サイドギヤ移動部材40と、ダミーシャフト9を調心するための2つの調心部材50とを比較的狭いスペースに配置して装置全体をコンパクト化することが可能となる。そして、ダミーシャフト9の回転中にも、調芯部材50がダミーシャフト9に形成された調心凹部90aと係合していることから、ダミーシャフト9がその軸心周りに回転することはなく、それによりピニオンワッシャ7が回転することもない。これにより、ピニオンシャフト4の2面幅(平坦部)と、ピニオンワッシャ7の二面幅とを正確に合わせることができるので、ピニオンシャフト4をピニオンワッシャ7にスムースに挿入することが可能となる。
更に、組立装置10のダミーシャフト旋回部材20は、軸方向と直交する方向に延在してダミーシャフト9と係合可能な係合凹部20aを先端に有し、ダミーシャフト9は、係合凹部20aと係合する中央部90と、中央部90の一端に第1スプリングS1を介して連結された第1端部91と、中央部90の他端に第2スプリングS2を介して連結された第2端部92とを有する。このように、係合凹部20aと係合する中央部90の両側にそれぞれ第1または第2スプリングS1,S2を介して第1および第2端部91,92を連結すると共に当該中央部90とダミーシャフト旋回部材20とを係合させることで、旋回に際してデフケース5の凹球面(内面)5sと摺接する伸縮式のダミーシャフト9をダミーシャフト旋回部材20の係合凹部20aによって良好に保持することが可能となる。
また、組立装置10のピニオンシャフト挿入機構14は、ピニオンシャフト4を介してダミーシャフト9の一端すなわち第1端部91を押圧すると共にダミーシャフト9の他端すなわち第2端部92をピニオンシャフト4側に押圧しながら、一対のピニオンギヤ3の軸孔3a等にピニオンシャフト4を挿入すると共に一対のピニオンギヤ3の軸孔3a等からダミーシャフト9を抜き出すものである。これにより、ピニオンシャフト4の挿入およびダミーシャフト9の抜き出しに際して、ダミーシャフト9の中央部90と第1および第2端部91,92との間に大きな間隙が形成されないようにすることができる。従って、かかる構成によれば、デフケース5と各ピニオンギヤ3との間に配置されるピニオンワッシャがダミーシャフト9の中央部90と第1端部91や第2端部92との間の間隙に落ち込んでデファレンシャルギヤ1の円滑な組立を妨げるのを良好に抑制することが可能となる。
なお、上記実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載された発明の主要な要素との対応関係は、上記実施形態が課題を解決するための手段の欄に記載された発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。すなわち、上記実施形態はあくまで課題を解決するための手段の欄に記載された発明の具体的な一例に過ぎず、課題を解決するための手段の欄に記載された発明の解釈は、その欄の記載に基づいて行なわれるべきものである。
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。