JP5910275B2 - 排気ガス浄化用触媒 - Google Patents

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本発明は、排気ガス浄化用触媒に関する。
次世代のエンジン燃焼技術としてHCCI(Homogeneous Charge Compression Ignition)燃焼が注目されている。このHCCI燃焼は、予混合圧縮自己着火燃焼とも呼ばれ、エンジンの運転状態に応じて燃焼室内のガソリンをリーン雰囲気で圧縮自己着火させて燃焼させる。しかし、HCCI燃焼にはノッキングの制約があることから、その運転領域が限られる。そのため、エンジンの低負荷側をHCCI運転領域とし、高負荷側を点火プラグによるアシストで燃料を燃焼させるSI(Spark Ignition)運転領域として燃焼モードを切り換えるエンジンの開発が進められている。
このようなHCCI・SI切換型のエンジンに関し、例えば、特許文献1には、着火性や燃費性能を十分に確保しながら、HCCI運転時の排気ガス温度を上昇させるために、燃料を気筒内に分割噴射することが記載されている。すなわち、部分負荷領域でのHCCI燃焼ではNOxを殆ど排出しないという利点を有することが知られているが、低温燃焼であるがゆえに、排気ガス温度がかなり低い。特許文献1に記載された発明は、この排気ガス温度が低い点を問題として、HCCI燃焼時に燃料の分割噴射によって排気ガス温度を上昇させ、触媒による排気ガスの浄化を促進する。
また、特許文献2には、HCCI燃焼についての記述はないが、排気ガス浄化用触媒のHC、CO、NOxの浄化性能をバランス良く向上させるとともに、高温下における耐久性を向上させるために、三種の貴金属Pt、Pd及びRhを組み合わせることが記載されている。具体的には、モノリス担体の表面にAlを含む第1ウオッシュコート層及び第2ウオッシュコート層を順次積層し、第1ウオッシュコート層にCe、Zr及びPdを担持させるとともに、第2ウオッシュコート層にPt、Rh、Ba及びCeを担持させることが記載されている。
特許文献3には、HCCI燃焼についての記述はないが、異種の触媒貴金属のシンタリング及び合金化を回避すると共に、各触媒貴金属の分散度合いを高めるために、ハニカム担体上に上下2層の触媒層を設け、上層にPtを担持したアルミナ、Rhを担持したアルミナ及びRhを担持した酸素吸蔵材を配置し、下層にPdを担持したアルミナ及びPdを担持した酸素吸蔵材を配置することが記載されている。
特開2011−214479号公報 特開平07−060117号公報 特開2006−297372号公報
ところで、上述のHCCI燃焼時における排気ガスの組成に関する具体的な報告は未だない。本発明者がHCCI燃焼の排気ガス組成を調べたところ、炭素数5の飽和炭化水素(n-ペンタン、i-ペンタン)やCOが大量に排出されることが判明した。これは、燃料がガソリンであり、これを低温燃焼させることが原因になっていると考えられる。
そうして、本発明者がさらに実験・研究を進めた結果、従来の三元触媒では、貴金属としてPt、Pd及びRhの三種を採用する所謂トリメタル触媒としても、飽和HC(炭化水素)及びCOの浄化に関しては満足し得る結果が得られなかった。
すなわち、従来の三元触媒は、ストイキでの燃料の燃焼によって生成する排気ガスの浄化を目的として開発されている。そのような燃焼によって排出される炭化水素にはCや芳香族炭化水素などの不飽和炭化水素種が多く含まれる場合が多く、酸化浄化し易い。これに対して、HCCI燃焼の排気ガスには、SI燃焼の排気ガスとは違って、上述の如く、酸化され難い飽和炭化水素(ペンタン類)が多く含まれ、且つ排気ガス温度が低い。そのため、従来のトリメタル触媒でもHCCI燃焼の排気ガスの浄化が難しいという問題がある。
そこで、本発明は、エンジンの排気ガスを効率良く浄化する触媒を提供する。特に、HCCI燃焼によってペンタン類及びCOを多く含む排気ガスがエンジンから排出される場合であっても、これを効率良く浄化できるようにする。
本発明は、エンジンの排気ガスの浄化のために、トリメタル触媒において基材上の触媒層を二層構造とし、その上層及び下層の両層にPtを配置するとともに、上層のPtと下層のPtとの質量比を排気ガスの浄化に適した比率にした。
すなわち、ここに提示する排気ガス浄化用触媒は、エンジンの排気ガス通路に設けられ、基材上に設けられた上下二層の触媒層を有する。
上記上層は、触媒金属としてPt及びRhを含有するとともに、該触媒金属を担持する酸化物担体を含有し、上記下層は、触媒金属としてPt及びPdを含有するとともに、該触媒金属を担持する酸化物担体を含有する。
上記上下二層のPt総量と上記下層のPd量との割合Pt/Pdが質量比で10/45以上25/45以下であり、且つ上記上下二層のPt総量と上記上層のRh量との割合Pt/Rhが質量比で2/1以上5/1以下である。そして、上記上層のPt量と上記下層のPt量との割合(上層Pt/下層Pt)が質量比で75/25以上95/5以下である。
このような排気ガス浄化用触媒によれば、HCCI燃焼によって生ずるペンタン等の飽和HCを多量に含む排気ガスであってもこれを効率良く浄化することができる。その理由の一つは、Ptが上層及び下層の両層に配置されていることにあると考えられる。
すなわち、Ptは、PdやRhに比べて酸化しにくく、表面が還元状態にあるため、ペンタン等の飽和HC及びその他のHCの解離吸着を促進し、HCの浄化に有利である。そして、上記触媒においては、排気ガス中のHCは上層においてPt成分に接触するだけでなく、排気ガスが上層から下層に拡散移動したときに、この下層においてもHCがPt成分と接触する。つまり、HCとPt成分との接触機会が多い。そのため、本発明に係る触媒はHC浄化性能が良くなっていると推測される。実験によれば、上層のPt量と下層のPt量との割合(上層Pt/下層Pt)が質量比で75/25以上95/5以下であるときに高いHC浄化率を実現することができると認められた。
また、本発明の触媒のHC浄化性能が高い別の理由は、上記Pt/Rh質量比から明らかなように、当該触媒がPt成分を比較的多く含有することにあると推測される。すなわち、このPt成分がHCの解離吸着を促進し、その結果、HCの反応性が高まっているものと考えられる。
一方、HCCI燃焼等によってエンジンから排出されるCOの浄化反応には貴金属活性種であるPdやRhが有効である。すなわち、Pd及びRhは、表面が酸化しやすく、COに酸素を供給しても直ぐに再酸化されるため、COの酸化浄化に有利である。特に、COの浄化に関して、Pdは低温活性と高温浄化性能のバランスが良い。また、RhはCOの浄化における低温活性に優れている。
そうして、本発明の触媒においては、上層がPtと共にRhを含有するから、排気ガス温度が低い場合でも、Rhによる触媒反応によってCOが酸化浄化される。そして、このCOの酸化反応に伴って発生する燃焼熱によって、Ptによるペンタン等の酸化反応が促進されると考えられる。
さらに、上記Pt/Pd質量比から明らかなように、当該触媒はPdをPtよりも多く含有する。そのため、下層のPdが排気ガス低温時においてもCOの酸化浄化に有効に働き、その燃焼熱によって上層及び下層のPtによるペンタン等の酸化反応が促進されると考えられる。また、触媒温度が上昇した後においても、下層のPdがCOの酸化浄化に有効に働く。その結果、HC及びCOの浄化効率が高くなると考えられる。
ここに、上記上層は、触媒金属としてPt及びRhを含有し且つPdを含有しない構成とし、上記下層は、触媒金属としてPt及びPdを含有し且つRhを含有しない構成とすることが好ましい。これにより、触媒が高温の排気ガスに晒されたときにPdとRhとが合金化して劣化することが避けられる。
後述の実施例及び比較例により明らかになるが、Pt/Pd質量比が10/45未満であるときは、ペンタンの低温での浄化性が悪くなり、Pt/Pd質量比が25/45を越えると、ペンタン及びCOの低温での浄化が十分に図れない。一方、Pt/Rh質量比が2/1未満であるときは、ペンタンの低温での浄化性が悪くなり、Pt/Rh質量比が5/1を越えると、低温でのCOの浄化が十分に図れない。
本発明の好ましい態様の一つでは、上記上層及び下層各々の上記触媒金属を担持する酸化物担体は、希土類金属を含有する複合酸化物であり、耐熱性が高い。しかも、その複合酸化物は一種類の金属イオンしか含まない酸化物に比べて比表面積も大きいことから、触媒金属の分散性が高まり、排気ガスの浄化にも有利になる。
この場合、好ましいのは、上層が、上記酸化物担体として、Ceを含有するZr系複合酸化物(以下、「CeZr系複合酸化物」という。)と、Laを含有するアルミナ複合酸化物(以下、「Laアルミナ複合酸化物」という。)と、Laを含有するZr系複合酸化物(以下、「LaZr系複合酸化物」という。)とを有し、PtはLaアルミナ複合酸化物に担持され、RhはCeZr系複合酸化物とLaアルミナ複合酸化物とLaZr系複合酸化物の各々に担持されていることである。
すなわち、上層のPtは、比表面積が大きく且つ耐熱性が高いLaアルミナ複合酸化物に担持されているから、Ptの分散性が高まり、上述のペンタン等の飽和HCの酸化浄化に有利になる。また、例えば、エンジン高負荷時のSI運転によって高温の排気ガスに晒された場合であっても、HCの浄化に関する触媒活性の低下が少ない。
一方、上記CeZr系複合酸化物に担持されたRhはCOの酸化浄化に優れている。また、RhをLaアルミナ複合酸化物に担持すると、該Laアルミナ複合酸化物は比表面積が大きいことから、Rhの高分散担持が図れ、COの酸化浄化に有利になる。
また、RhをLaZr複合酸化物に担持すると、そのRhは、雰囲気のA/Fがリーンからリッチに変わっても、それほど還元されずに適度に酸化された状態を保ち易い。すなわち、RhとLaZr複合酸化物との間にLa−O−Rhの結合が形成され易くなる。そのため、雰囲気の変化に対してRhの酸化状態が影響され難くなる。つまり、当該RhはLaの働きによって酸化状態をとり易くなると考えられる。その結果、雰囲気がリッチになっても、LaZr複合酸化物上のRhが適度に酸化された状態を保つから、CO酸化能の低下が少なくなる。
このようなRh担持CeZr系複合酸化物、Rh担持Laアルミナ複合酸化物及びRh担持LaZr系複合酸化物を上層に配置することで、主要な浄化反応の中でも発生する反応熱の高いCOの酸化反応を促進し、触媒層温度を効率的に上昇することができる。よって、触媒の早期活性化に有利になり、上記Ptによるペンタン等のHCの酸化浄化が促進される。また、上層のRh担持CeZr系複合酸化物でCOが浄化されることにより、下層へ到達するCO量が減少する。その結果、下層では、COの酸化反応に対するPdの寄与率が下がって、HC(主として飽和HC以外のHC種)の酸化浄化に対するPdの寄与率が上がり、HCの浄化に有利になる。
ここに、好ましいのは、酸化物担体として、Laアルミナ複合酸化物の表面にLaZr系複合酸化物を担持してなるLaZr/Laアルミナ複合酸化物を採用し、これにRhを担持することである。このケースでは、Laアルミナ複合酸化物の比表面積が大きいことから、LaZr複合酸化物の分散性が高まる。その結果、Rhの高分散化が図れ、HC及びCOの酸化浄化に有利になる。また、触媒が高温の排気ガスに晒されたときにRhがアルミナに固溶して失活することが少なくなる。
一方、上記下層は、上記酸化物担体として、CeZr系複合酸化物と、Laアルミナ複合酸化物とを有し、PdはCeZr系複合酸化物とLaアルミナ複合酸化物の各々に担持されていることが好ましい。
すなわち、比表面積が大きく且つ耐熱性が高いLaアルミナ複合酸化物にPdが担持されていることにより、Pdの分散性が高まり、HC及びCOの浄化に有利になるとともに、エンジン高負荷時のSI運転によって高温の排気ガスに晒されたときの、HC及びCOの浄化に関する触媒活性の低下が少ない。また、CeZr複合酸化物に担持されたPdは、該CeZr複合酸化物から供給される活性な酸素により、良好な酸化状態にコントロールされ、HC及びCOの酸化浄化に有利になる。
本発明の別の好ましい態様では、上記下層は、Ceを含有し且つ触媒金属が担持されていないZr系複合酸化物を含有する。このCeZr複合酸化物は、酸素吸蔵放出能を有することから、PtやPdに対する酸素の供給が促進され、HC及びCOの酸化浄化に有利になる。
本発明によれば、基材上に設けられた上下二層の触媒層のうちの上層が、触媒金属としてPt及びRhを含有し、下層が、触媒金属としてPt及びPdを含有するとともに、上下二層のPt総量と上記下層のPd量との割合Pt/Pdが質量比で10/45以上25/45以下であり、上下二層のPt総量と上層のRh量との割合Pt/Rhが質量比で2/1以上5/1以下であり、上層のPt量と下層のPt量との割合(上層Pt/下層Pt)が質量比で75/25以上95/5以下であるから、HCCI燃焼によって飽和HCやCOが多量に放出される場合であっても、当該排気ガスを効率良く浄化することができる。
本発明の実施形態に係るエンジンシステムの構成を示す概略図である。 エンジンの燃焼モードマップの一例を示す図である。 エンジン制御ユニットによる制御動作を示すフローチャートである。 排気ガス浄化用触媒の触媒層構成を示す断面図である。 実施形態1に係る触媒のPt/Pd質量比とHC及びCOの浄化に関するライトオフ温度との関係を示すグラフ図である。 実施形態1に係る触媒のPt/Pd質量比とHC及びCOの浄化率との関係を示すグラフ図である。 実施形態1に係る触媒のPt/Rh質量比とHC及びCOの浄化に関するライトオフ温度との関係を示すグラフ図である。 実施形態1に係る触媒のPt/Rh質量比とHC及びCOの浄化率との関係を示すグラフ図である。 実施形態1に係る触媒の上層Pt/下層Ptの質量比とHC及びCOの浄化に関するライトオフ温度との関係を示すグラフ図である。 実施形態1に係る触媒の上層Pt/下層Ptの質量比とHC及びCOの浄化率との関係を示すグラフ図である。 実施形態2に係る触媒のPt/Pd質量比とHC及びCOの浄化に関するライトオフ温度との関係を示すグラフ図である。 実施形態2に係る触媒のPt/Pd質量比とHC及びCOの浄化率との関係を示すグラフ図である。 実施形態2に係る触媒のPt/Rh質量比とHC及びCOの浄化に関するライトオフ温度との関係を示すグラフ図である。 実施形態2に係る触媒のPt/Rh質量比とHC及びCOの浄化率との関係を示すグラフ図である。
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
<エンジン>
図1に示す実施形態に係るエンジン1は、運転状態に応じて燃焼モードがHCCI燃焼とSI燃焼とで切り換えられる多気筒のガソリンエンジンであり、自動車に搭載される。同図において、3は複数の気筒2を有するシリンダブロック、4はシリンダヘッド、5は各気筒2に設けられたピストンである。ピストン5の上面とシリンダヘッド4の下面との間に燃焼室6が形成される。ピストン5は、コネクティングロッド8を介して、クランク軸7と連結されている。
シリンダヘッド4には、気筒2毎に吸気ポート9と排気ポート10とがそれぞれ形成されている。吸気ポート9及び排気ポート10各々に吸気弁11及び排気弁12が設けられている。吸気弁11及び排気弁12各々は、シリンダヘッド4に配設された一対のカムシャフト(図示せず)等を含む動弁機構13により、クランク軸7の回転に同期して駆動される。
吸気弁11及び排気弁12の各動弁機構13には、可変バルブリフト機構(以下、「VVL」という)14と、可変バルブタイミング機構(以下、「VVT」という)15とが組み込まれている。VVL14及びVVT15各々は、エンジン制御ユニット30からの指令に基づいて作動し、前者は吸気弁11及び排気弁12のリフト量(開弁量)を変更し、後者は、吸気弁11及び排気弁12の開閉タイミング(位相角度)を変更する。このVVL14及びVVT15によって、吸気弁11及び排気弁12のリフト特性がエンジン運転状態に応じて変更される。その結果、各気筒2への吸入空気量や残留既燃ガス(内部EGR)量が変わる。なお、VVL14及びVVT15は、一般に用いられているものであって当業者には公知であるので、その詳しい説明は省略する。
シリンダヘッド4には、各気筒2の燃焼室6に臨むように点火プラグ16が設けられている。点火プラグ16は、点火回路17からの給電に応じて、所定のタイミングで放電(火花点火)を行なう。さらに、シリンダヘッド4には、吸気側の側方から各気筒2の燃焼室6に臨むように燃料噴射弁18が設けられている。燃料噴射弁18には、燃料タンクからの燃料が高圧燃料ポンプ19によって燃料通路を介して供給される。なお、高圧燃料ポンプ19は、例えばスピール弁によって駆動され、燃料噴射弁18への燃料の供給圧すなわち燃圧を低圧から高圧までの広い範囲で自在に変化させることができる。そして、燃料噴射弁18は、所定の噴射タイミング(吸気行程等)で燃焼室6に対して燃料を直接噴射し、燃焼室6内に所定の空燃比の混合気を生成する。
エンジン1の吸気側には吸気通路20が配設され、該吸気通路20の途中にサージタンク21が設けられている。サージタンク21よりも上流側の吸気通路20に電子制御式のスロットル弁22が配設されている。吸気通路20はサージタンク21よりも下流側で気筒2毎に分岐し各々の下流端が各気筒2の吸気ポート9に接続されている。
エンジン1の排気側には排気ガス通路25が配設されている。排気ガス通路25は、その上流端側が分岐して各気筒2の排気ポート10に接続されている。排気ガス通路25には排気ガス中の有害成分を浄化する排気ガス浄化用触媒27が設けられている。
上記エンジン制御ユニット30は、中央算出処理装置(CPU)、各種メモリ等を有するコンピュータで構成されている。この制御ユニット30は、各種センサによって検出される制御情報に基いて、上記VVL14、VVT15、点火回路17、燃料噴射弁18、高圧燃料ポンプ19、スロットル弁22等の作動をエンジン1の運転状態に応じて制御する。例えば、エンジン1の運転状態に応じて、VVL14及びVVT15を制御して吸気弁11及び排気弁12のリフト特性を変更することにより、エンジン1の吸排気に関する動作を制御し、また、燃料噴射弁18の燃料噴射量、燃料圧力(燃料噴射圧力)、噴射パルス幅及び燃料噴射時期、高圧燃料ポンプ19の駆動状態及び吐出圧等を制御する。
上記センサとしては、クランク軸7の回転角(クランク角度)を検出するクランク角センサ31、エンジン1に供給される空気量を検出するエアフローセンサ32、アクセル開度(アクセルペダル(図示せず)操作量)を検出するアクセル開度センサ33、各気筒2の筒内圧力(燃焼室6内の圧力)を検出する筒内圧センサ34、自動車の速度を検出する車速センサ35、吸気温度(サージタンク21内の空気の温度)を検出する吸気温度センサ36、並びに高圧燃料ポンプ19から燃料噴射弁18に供給される燃料の圧力を検出する燃圧センサ37がある。これらセンサ31〜37は制御ユニット30と電気的に接続されている。筒内圧34センサは、点火プラグ16と一体形成されたものであって、点火プラグ16内に内蔵されている。なお、筒内圧センサ34を、燃料噴射弁18と一体形成してもよい。
ここに、上記制御ユニット30は、上記制御情報に基づいて、点火プラグ16を用いることなく吸気行程中に生成された混合気を圧縮上死点付近で圧縮自己着火させて燃焼させるHCCI燃焼モードと、点火プラグ16を用いて火花点火により混合気を強制的に着火させて燃焼させるSI燃焼モードとの間で、エンジン運転の燃焼モードを切り替える。
図2に燃焼モードマップを示すように、本実施形態では、所定の低回転・低負荷のエンジン運転領域をHCCI領域とし、該HCCI領域を越える高回転又は高負荷のエンジン運転領域をSI領域として設定している。この燃焼モードマップは、エンジン回転速度とエンジン負荷とに対応する最適な燃焼モードを予め実験的に求めて設定されたものであり、制御ユニット30のメモリに電子的に格納されている。
また、制御ユニット30のメモリには、アクセル開度とエンジン回転速度の変化に対して目標トルク(エンジン負荷)の最適値を実験的に決定して記録した目標トルクマップ、並びにこの目標トルク、吸入空気量及び回転数の変化に応じて実験的に決定した最適な燃料噴射量Qmを記録した燃料噴射量マップが、電子的に格納して備えられている。目標トルクマップでは、アクセル開度が大きいほど、またエンジン回転速度が高いほど、目標トルクが大きくなっている。
以下、制御ユニット30による燃焼モードの切換制御を図3のフローチャートに基づいて説明する。
最初のステップS1で上記センサ31〜37の検出信号を含むエンジン制御用の各種信号を読み込む。次のステップS2で、アクセル開度センサ33からのアクセル開度と、クランク角センサ31からのクランク角度から求まるエンジン回転速度とに基づき、エンジン負荷(目標トルク)を算出する。次のステップS3で、そのエンジン回転速度及びエンジン負荷に基づいて、エンジン1の運転状態が、図2に示す燃焼モードマップにおいて、HCCI領域及びSI領域のうちいずれの運転領域に該当するかを判定する。
次のステップS4で、エンジン1の運転状態がHCCI領域にあるか否かを判定する。その運転状態がHCCI領域にあるときには、ステップS5に進んで、燃焼モードをHCCI燃焼モードに設定するとともに、エンジン回転速度、エンジン負荷等に基づいて、HCCI燃焼モードに対応した、エンジン1の各種制御パラメータを算出する。ステップS5の後はリターンする。
HCCI燃焼モードでの運転時には、排気弁12の開弁期間と吸気弁11の開弁期間とが、排気上死点(排気行程と吸気行程の間の上死点)付近で両弁11,12が共に閉弁されるネガティブバルブオーバーラップ期間(NVO期間)が存在するように設定される。そして、排気上死点後においてNVO期間が終了して吸気弁11が開弁された後に、燃料噴射弁18による燃料の噴射が行われる。この噴射された燃料は、燃焼室6内において混合気を形成し、その混合気が圧縮上死点付近においてそれ自体で(すなわち、他の点火手段又は着火手段を介することなく)圧縮自己着火する。
ステップS4の判定がNOであるとき、つまりエンジン1の運転状態がSI領域にあるときには、ステップS6に進んで、燃焼モードをSI燃焼モードに設定するとともに、エンジン回転速度、エンジン負荷等に基づいて、SI燃焼モードに対応した、エンジン1の各種制御パラメータを算出する。ステップS6の後はリターンする。
SIモードでの運転時には、各気筒サイクルにおいて、排気弁12の開弁期間と吸気弁11の開弁期間とが、排気上死点付近で両弁11,12の開弁期間が若干オーバーラップするように設定される。そして、吸気弁11が開弁された後に燃料噴射弁18によって1回だけ通常の燃料噴射が行われる。この後、圧縮上死点(圧縮行程と膨張行程との間の上死点)付近で点火プラグ16により混合気が点火され、混合気ないしは燃料が火炎伝播により燃焼する。
上述のHCCI燃焼モードでは、混合気(燃料)が火炎伝播を生じさせることなく急速に燃焼する。この場合、燃焼温度が火花点火の場合に比べて低いので、NOx発生量が大幅に低減される。そうして、本発明者の研究によれば、このHCCI燃焼モードでは、炭素数5の飽和HC(n-ペンタン、i-ペンタン)やCOが大量に排出されることが判明した。すなわち、SI燃焼モードの排気ガスをみると、n-ペンタンとi-ペンタンとが併せて100〜200ppmC程度であった。これに対して、HCCI燃焼モードの排気ガスをみると、n-ペンタンとi-ペンタンとが併せて1000〜3000ppmC程度排出され、その濃度がSI燃焼モード時の濃度よりも一桁高くなっていた。さらに、HCCI燃焼モードでの排気ガスのCO濃度は2000〜4000ppm程度であった。
<排気ガス浄化用触媒>
排気ガス浄化用触媒27は、上記HCCI燃焼によって上記ペンタン類及びCOを多く含む排気ガスがエンジン1から排出される場合であっても、これを効率良く浄化することができる。
図4は排気ガス浄化用触媒27の触媒層構成を示す。基材(ハニカム担体)41の排気ガス通路壁に触媒層42が形成されている。触媒層42は上層43と下層44とを備え、下層44は担体41の排気ガス通路壁面に形成され、上層43は下層44の上に重ねられている。
<排気ガス浄化用触媒の実施形態1>
上層43は、触媒成分として、Pt担持Laアルミナ複合酸化物、Rh担持CeZrNd複合酸化物及びRh担持Laアルミナ複合酸化物を含有する。下層44は、触媒成分として、Pd担持CeZrNd複合酸化物、Pd担持Laアルミナ複合酸化物及びPt担持Laアルミナ複合酸化物を含有する。上層43及び下層44各々は、バインダとしてジルコニアバインダ(Y安定化ジルコニア)を含有する。
排気ガス浄化用触媒27は次の方法によって調製することができる。すなわち、Pd担持CeZrNd複合酸化物、Pd担持Laアルミナ複合酸化物、Pt担持Laアルミナ複合酸化物及びバインダをイオン交換水と混合してなるスラリーに基材41を浸漬して取り出す。この基材41に付着した余分なスラリーをエアブローで除去する。しかる後、大気中において、基材41に付着したスラリーの乾燥(150℃)及び焼成(500℃の温度に2時間保持)を行なう。これにより、基材41に下層44が形成される。次に、Pt担持Laアルミナ複合酸化物、Rh担持CeZrNd複合酸化物、Rh担持Laアルミナ複合酸化物及びバインダをイオン交換水と混合してなるスラリーに、下層44を有する基材41を浸漬して取り出す。この下層44に付着した余分なスラリーをエアブローで除去する。しかる後、大気中において、下層44に付着したスラリーの乾燥(150℃)及び焼成(500℃の温度に2時間保持)を行なう。これにより、基材41の下層44の上に上層43が形成される。
[触媒成分]
上記触媒成分について具体的に説明する。
Pt担持Laアルミナ複合酸化物、Rh担持Laアルミナ複合酸化物及びPd担持Laアルミナ複合酸化物各々は、酸化物担体としての、Laを4質量%含有する活性アルミナ複合酸化物の粉末に、Pt、Rh及びPd各々を蒸発乾固法によって担持させたものである。Rh担持CeZrNd複合酸化物は、CeO:ZrO:Nd=10:80:10(質量%)のCeZrNd複合酸化物の粉末にRhを蒸発乾固法によって担持させたものである。Pd担持CeZrNd複合酸化物は、CeO:ZrO:Nd=23:67:10(質量%)のCeZrNd複合酸化物の粉末にPdを蒸発乾固法によって担持させたものである。
CeZrNd複合酸化物の粉末は共沈法によって調製することができる。すなわち、硝酸セリウム6水和物とオキシ硝酸ジルコニル溶液と硝酸ネオジム6水和物とイオン交換水とを混合した硝酸溶液に、塩基性溶液として28質量%アンモニア水の8倍希釈液を混合することにより、中和によって共沈物を得る。この共沈物を含む溶液を遠心分離器にかけて上澄み液を除去する(脱水)、そこにさらにイオン交換水を加えて撹拌する(水洗)、という脱水・水洗の操作を必要回数繰り返すことで、余剰な塩基性溶液を除去する。最終的に脱水を行なった後の共沈物について、大気中において150℃で乾燥させ、粉砕後、大気中において500℃で2時間焼成する。これにより、CeZrNd複合酸化物粉末を得ることができる。
実施形態1に係る排気ガス浄化用触媒27は、上層43のPt量と下層44のPt量とを合わせたPt総量と下層44のPd量との割合Pt/Pdが質量比で10/45以上25/45以下であり、上記Pt総量と上層43のRh量との割合Pt/Rhが質量比で2/1以上5/1以下であり、上層43のPt量と下層44のPt量との割合(上層Pt/下層Pt)が質量比で75/25以上95/5以下であり、上記ペンタン類及びCOを多く含む排気ガスを効率良く浄化する。
[排気ガス浄化用触媒の排気ガス浄化性能]
以下、実施例及び比較例に基いて実施形態1に係る排気ガス浄化用触媒の排気ガス浄化特性を説明する。
−実施例1〜9,比較例1〜7−
触媒成分として、Pt担持量が異なる複数種のPt担持Laアルミナ複合酸化物、Rh担持量が異なる複数種のRh担持CeZrNd複合酸化物、Rh担持量が異なる複数種のRh担持Laアルミナ複合酸化物、Pd担持量が異なる複数種のPd担持CeZrNd複合酸化物、並びにPd担持量が異なる複数種のPd担持Laアルミナ複合酸化物を調製した。
これら触媒成分を用いて、先に説明した触媒の調製方法により、表1、表2及び表3に示すPt/Pd質量比(上下二層43,44のPt総量と下層44のPd量との割合)、Pt/Rh質量比(上下二層43,44のPt総量と上層43のRh量との割合)、又は上層Pt/下層Ptの質量比(上層43のPt量と下層44のPt量との割合)が異なる実施例1〜9及び比較例1〜7の各触媒を調製した。
表1に示す各触媒はRh担持量が同じでPt/Pd質量比が互いに異なる。表2に示す各触媒はPd担持量が同じでPt/Rh質量比が互いに異なる。表3に示す各触媒はPt担持量、Rh担持量及びPd担持量が同じで上層Pt/下層Ptの質量比が互いに異なる。基材としては、セル壁厚さ3.5mil(8.89×10−2mm)、1平方インチ(645.16mm)当たりのセル数600のコージェライト製ハニカム担体(容量1L)を用いた。
Figure 0005910275
Figure 0005910275
Figure 0005910275
−比較例8〜14−
酸化物担体として、希土類金属を含有しない活性アルミナ、並びにNdを含有しないCeZr複合酸化物を準備した。これら酸化物担体を用い、触媒成分としての、Pt担持量が異なる複数種のPt担持アルミナ、Rh担持量が異なる複数種のRh担持CeZr複合酸化物、Rh担持量が異なる複数種のRh担持アルミナ、Pd担持量が異なる複数種のPd担持CeZr複合酸化物、並びにPd担持量が異なる複数種のPd担持アルミナを調製した。
但し、Rh担持CeZr複合酸化物は、CeO:ZrO=10:90(質量%)のCeZr複合酸化物の粉末にRhを蒸発乾固法によって担持させたものである。Pd担持CeZr複合酸化物は、CeO:ZrO=25:75(質量%)のCeZr複合酸化物の粉末にPdを蒸発乾固法によって担持させたものである。
上記触媒成分を用いて、先に説明した触媒の調製方法により、表4及び表5に示すPt/Pd質量比又はPt/Rh質量比が異なる比較例8〜14の各触媒を調製した。表4に示す各触媒はRh担持量が同じでPt/Pd質量比が互いに異なる。表5に示す各触媒はPd担持量が同じでPt/Rh質量比が互いに異なる。基材としては、実施形態1と同じハニカム担体(容量1L)を用いた。
Figure 0005910275
Figure 0005910275
−排気ガス浄化性能評価試験−
実施例1〜9及び比較例1〜14の各触媒をベンチエージングした後、各触媒から担体容量約25mLのコアサンプルを切り出した。これをモデルガス流通反応装置に取り付け、HC及びCOの浄化に関する各ライトオフ温度(HC−T50(℃),CO−T50(℃))及びHC及びCOの各浄化率(HC−C300(%),CO−C300(%))を測定した。ベンチエージングでは、触媒をエンジンの排気管に取り付け、触媒入口での排気ガス温度が800℃となるようにエンジン回転数を設定し、その800℃の排気ガスに触媒を50時間晒した。
HC−T50(℃)及びCO−T50(℃)は、触媒に流入させるモデルガスの温度を常温から漸次上昇させていき、HC及びCO各成分の浄化率が50%に達したときの触媒入口ガス温度である。HC−C300(%)及びCO−C300(%)は触媒入口でのモデルガス温度が300℃であるときのHC及びCO各成分の浄化率である。
モデルガスの組成は、i-ペンタン;3000ppmC、CO;1900ppm、O;10.8%、HO;10%、残Nである。ガス流量は26.1L/min(空間速度SV=約63000h−1)、ガスの昇温速度は30℃/minである。
−試験結果−
結果を図5〜図10に示す。図5及び図6は表1及び表4に示すRh量を固定してPt/Pd質量比を変化させた各触媒(実施例1〜4及び比較例1〜3,8〜11)のT50及びC300それぞれを示す。図7及び図8は表2及び表5に示すPd量を固定してPt/Rh質量比を変化させた各触媒(実施例1,5〜7及び比較例4,5,8,12〜14)のT50及びC300それぞれを示す。図9及び図10は表3に示すPt量、Rh量及びPd量を固定して上層Pt/下層Ptの質量比を変化させた各触媒(実施例1,8,9及び比較例6,7)のT50及びC300それぞれを示す。
図5〜図8において、実線グラフは、酸化物担体として、Laアルミナ複合酸化物及びCeZrNd複合酸化物を用いたケースであり、破線グラフは、酸化物担体として、希土類金属を含有しない活性アルミナ及びCeZr複合酸化物を用いたケースである。
図5のPt/Pd質量比とHC−T50との関係をみると、同図の実線グラフでは、Pt/Pd質量比が0/45から10/45に増大することに伴ってT50が大きく低下し、25/45付近で最低となっている。Pt/Pd質量比の増大に伴ってT50が低下しているのは、上層43のPt成分がi-ペンタンの酸化浄化に有効に働くためと認められる。
図5のCO−T50をみると、同図の実線グラフでは、Pt/Pd質量比の増大に伴って低下して10/45で最低となり、その後はその質量比の増大に伴ってT50が増大する傾向を示している。これは、Pt/Pd質量比の増大に伴って下層44のPd成分が減少していくためと認められ、そのPd成分はCOの酸化浄化に有効に働いていることがわかる。
そうして、実施例1〜4は、Pt/Pd質量比が10/45以上25/45以下であり、HC−T50が300℃以下の低い値になり、CO−T50も155℃前後の低い値になっている。また、図6のC300をみると、同図の実線グラフでは、Pt/Pd質量比が10/45以上25/45以下であるときは、HC浄化率及びCO浄化率が高くなっている。
次に図5及び図6の実線グラフ(実施例1〜4)と破線グラフ(酸化物担体として、希土類金属を含有しない活性アルミナ及びCeZr複合酸化物を用いた比較例8〜11)とを比べると、Pt/Pd質量比が10/45以上25/45以下であるときは、実線グラフで示す各触媒(実施例1〜4)の方が比較例8〜11よりも浄化性能が良い。これは、実施例の酸化物担体として用いたLaアルミナ複合酸化物及びCeZrNd複合酸化物の耐熱性が高く、比表面積も大きいためであると考えられる。
また、図5及び図6によれば、i-ペンタンを効率良く酸化浄化する観点からは、Pt/Pd質量比を10/45以上25/45以下とすることが好ましく、15/45以上25/45以下にすること、さらには20/45以上25/45以下にすることがより好ましい。
次に図7のPt/Rh質量比とHC−T50との関係をみると、同図の実線グラフでは、Pt/Rh質量比が1/1から2/1に増大することに伴ってT50が大きく低下し、4/1又は5/1付近で最低になっている。上層43のPt成分がi-ペンタンの酸化浄化に有効に働くためと認められる。
図7のCO−T50をみると、同図の実線グラフでは、Pt/Rh質量比が1/1から5/1の範囲ではT50に大差はないが、Pt/Rh質量比が5/1から6/1になるとT50が急増している。上層43のRh成分が減少するためと認められ、そのRh成分がCOの酸化浄化に有効に働いていることがわかる。
そうして、実施例1〜4は、Pt/Rh質量比が2/1以上5/1以下であり、HC−T50が300℃以下の低い値になり、CO−T50も155℃以下の低い値になっている。また、図8のC300をみると、同図の実線グラフでは、Pt/Rh質量比が2/1以上5/1以下であるときは、HC浄化率及びCO浄化率が高くなっている。
また、図7及び図8の実線グラフ(実施例1,5〜7)と破線グラフ(酸化物担体として、希土類金属を含有しない活性アルミナ及びCeZr複合酸化物を用いた比較例8,12〜14)とを比べると、Pt/Rh質量比が2/1以上5/1以下であるときは、実線グラフで示す各触媒(実施例1,5〜7)の方が比較例8,12〜14よりも浄化性能が良い。
また、図7及び図8によれば、i-ペンタンを効率良く酸化浄化する観点からは、Pt/Rh質量比を2/1以上5/1以下とすることが好ましく、3/1以上5/1以下にすること、さらには4/1以上5/1以下にすることがより好ましい。
次に、図9をみると、HC−T50及びCO−T50が上層Pt/下層Ptの質量比に影響されることがわかる。すなわち、上記触媒構成の場合、i-ペンタンが上層43でPt成分に接触するだけでなく、排気ガスが上層43から下層44に拡散移動したときに、該下層44でもi-ペンタンがPt成分と接触することになり、その接触機会が多くなる。そのことが、HC浄化性能に影響していると考えられる。また、下層44において、Pd成分だけでなく、Pt成分もCOの酸化浄化に働く。そのことが、CO浄化性能に影響していると考えられる。
そうして、図9によれば、上層Pt/下層Ptの質量比が75/25以上95/5以下であるときに、HC−T50及びCO−T50が共に低い値になることがわかる。また、図10によれば、上層Pt/下層Ptの質量比が75/25以上95/5以下であるときには、HC及びCOのC300が高くなっている。
<排気ガス浄化用触媒の実施形態2>
上層43は、触媒成分として、Pt担持Laアルミナ複合酸化物及びRh担持CeZrNd複合酸化物を含有する点は実施形態1と同じであるが、Rh担持Laアルミナ複合酸化物に代えて、Rh担持LaZr/Laアルミナ複合酸化物を含有する点が実施形態1と異なる。下層44は、実施形態1と同じく、触媒成分として、Pd担持CeZrNd複合酸化物、Pd担持Laアルミナ複合酸化物及びPt担持Laアルミナ複合酸化物を含有する。上層43及び下層44各々は、バインダとしてジルコニアバインダ(Y安定化ジルコニア)を含有する。この実施形態2の排気ガス浄化用触媒27も実施形態1と同じ方法によって調製することができる。
Rh担持LaZr/Laアルミナ複合酸化物は次のようにして調製した。まず、硝酸ジルコニウム及び硝酸ランタンの混合溶液にLaを4質量%含有するLaアルミナ複合酸化物の粉末を分散させ、これにアンモニア水を加えて沈殿を生成した。得られた沈殿物を濾過、洗浄し、200℃で2時間保持する乾燥、並びに500℃に2時間保持する焼成を行なうことにより、表面にZrLa複合酸化物が担持されたLaアルミナ複合酸化物粉末を得た。これに硝酸ロジウム水溶液を混合し、蒸発乾固を行なうことにより、Rh担持LaZr/Laアルミナ複合酸化物の粉末を得た。LaZr/Laアルミナ複合酸化物の組成はZrO:La:Laアルミナ=38:2:60(質量比)である。
本実施形態の排気ガス浄化用触媒27も、上層43のPt量と下層44のPt量とを合わせたPt総量と下層44のPd量との割合Pt/Pdが質量比で10/45以上25/45以下であり、上記Pt総量と上層43のRh量との割合Pt/Rhが質量比で2/1以上5/1以下であり、上層43のPt量と下層44のPt量との割合(上層Pt/下層Pt)が質量比で75/25以上95/5以下であり、上記ペンタン類及びCOを多く含む排気ガスを効率良く浄化する。
[排気ガス浄化用触媒の排気ガス浄化性能]
以下、実施例及び比較例に基いて実施形態2に係る排気ガス浄化用触媒の排気ガス浄化特性を説明する。
−実施例10〜17,比較例15〜19−
触媒成分として、Pt担持量が異なる複数種のPt担持Laアルミナ複合酸化物、Rh担持量が異なる複数種のRh担持CeZrNd複合酸化物、Pd担持量が異なる複数種のPd担持CeZrNd複合酸化物、Pd担持量が異なる複数種のPd担持Laアルミナ複合酸化物、並びにRh担持量が異なる複数種のRh担持LaZr/Laアルミナ複合酸化物を調製した。さらに、触媒金属が担持されていないCeZrNd複合酸化物(CeO:ZrO:Nd=23:67:10(質量%))を調製した。
これら触媒成分を用いて、先に説明した触媒の調製方法により、表6及び表7に示すPt/Pd質量比又はPt/Rh質量比が異なる実施例10〜17及び比較例15〜19の各触媒を調製した。表6に示す各触媒はRh担持量が同じでPt/Pd質量比が互いに異なる。表7に示す各触媒はPd担持量が同じでPt/Rh質量比が互いに異なる。基材としては、実施形態1と同じハニカム担体(容量1L)を用いた。
Figure 0005910275
Figure 0005910275
−排気ガス浄化性能評価試験−
実施例10〜17及び比較例15〜19の各触媒について、実施形態1の触媒評価の場合と同様のベンチエージングを行ない、同じ条件及び方法でHC及びCOの浄化に関するライトオフ温度(HC−T50(℃),CO−T50(℃))及びHC及びCOの浄化率(HC−C300(%),CO−C300(%))を測定した。
−試験結果−
結果を図11〜図14に示す。図11及び図12は表6に示すRh量を固定してPt/Pd質量比を変化させた各触媒(実施例10〜13及び比較例15〜17)のT50及びC300それぞれを示す。図13及び図14は表7に示すPd量を固定してPt/Rh質量比を変化させた各触媒(実施例10,14〜16及び比較例18,19)のT50及びC300それぞれを示す。
図11をみると、Pt/Pd質量比の増大に伴うHC−T50及びCO−T50各々の変化が、図5に示す実施形態1のケースと同様の傾向を示している。すなわち、Pt/Pd質量比が10/45以上25/45以下であるときには、HC−T50が低い値になるだけでなく、CO−T50も低い値になっている。また、HC及びCOのいずれにおいても、本実施形態2(図11)の方が実施形態1(図5)よりもT50が10℃前後低くなっている。
図12に示すHC−C300及びCO−C300に関しても、Pt/Pd質量比の増大に伴うHC−C300及びCO−C300各々の変化が、実施形態1(図6)のケースと同様の傾向を示している。また、HC及びCOのいずれにおいても、本実施形態2(図12)の方が実施形態1(図6)よりも高い浄化率を示している。
図13をみると、Pt/Rh質量比の増大に伴うHC−T50及びCO−T50各々の変化が、図7に示す実施形態1のケースと概ね同様の傾向を示している。すなわち、Pt/Rh質量比が2/1以上5/1以下であるときには、HC−T50が低い値になるだけでなく、CO−T50も低い値になっている。また、HC及びCOのいずれも、本実施形態2(図13)の方が実施形態1(図7)よりもT50が10℃前後低くなっている。
図14をみると、Pt/Rh質量比の増大に伴うHC−C300及びCO−C300各々の変化が、実施形態1(図8)のケースと同様の傾向を示している。また、HC及びCOのいずれも、本実施形態2(図12)の方が実施形態1(図8)よりも高い浄化率を示している。
実施形態2のHC及びCOの浄化性能が良い理由の一つは、上層43のRhの一部を、Laアルミナ複合酸化物の表面にLaZr系複合酸化物を担持してなるLaZr/Laアルミナ複合酸化物に担持したことにあると考えられる。すなわち、LaZr/Laアルミナ複合酸化物を酸化物担体とすることにより、Rhの分散性が高くなるとともに、ベンチエージングによるRhの失活が少なくなったためと考えられる。
表8は実施例10と実施例17の排ガス浄化性能を比較したものである。同表によれば、HC及びCOのいずれにおいても、実施例17の方が実施例10よりも浄化性能が良い。これは、下層44の触媒金属が担持されていないCeZrNd複合酸化物の酸素放出能により、PtやPdに対する酸素の供給が促進され、HC及びCOの酸化浄化が効率良く進んだためと認められる。
Figure 0005910275
以上の実施形態1,2の説明から明らかなように、本発明に係る排気ガス浄化用触媒によれば、エンジンから排出される排気ガスを効率良く浄化することができる。特に、運転状態に応じて燃焼モードがHCCI燃焼とSI燃焼とで切り換えられるガソリンエンジンから、HCCI燃焼に伴って排出されるペンタン類及びCOを多く含む排気ガスであっても、これを本発明に係る触媒によって効率良く浄化することができる。
1 エンジン
25 排気ガス通路
27 排気ガス浄化用触媒
41 基材(ハニカム担体)
42 触媒層
43 上層
44 下層

Claims (5)

  1. エンジンの排気ガス通路に設けられる排気ガス浄化用触媒であって、
    基材上に設けられた上下二層の触媒層を有し、
    上記上層は、触媒金属としてPt及びRhを含有するとともに、該触媒金属を担持する酸化物担体含有し、
    上記下層は、触媒金属としてPt及びPdを含有するとともに、該触媒金属を担持する酸化物担体を含有し、
    上記上下二層のPt総量と上記下層のPd量との割合Pt/Pdが質量比で10/45以上25/45以下であり、且つ上記上下二層のPt総量と上記上層のRh量との割合Pt/Rhが質量比で2/1以上5/1以下であり、
    上記上層のPt量と上記下層のPt量との割合(上層Pt/下層Pt)が質量比で75/25以上95/5以下であることを特徴とする排気ガス浄化用触媒。
  2. 請求項1において、
    上記上層及び下層各々の上記触媒金属を担持する酸化物担体は、希土類金属を含有する複合酸化物であることを特徴とする排気ガス浄化用触媒。
  3. 請求項2において、
    上記上層は、上記酸化物担体として、Ceを含有するZr系複合酸化物と、Laを含有するアルミナ複合酸化物と、Laを含有するZr系複合酸化物とを有し、
    上記上層のPtは上記Laを含有するアルミナ複合酸化物に担持され、上記上層のRhは上記Ceを含有するZr系複合酸化物と上記Laを含有するアルミナ複合酸化物と上記Laを含有するZr系複合酸化物の各々に担持され、
    上記下層は、上記酸化物担体として、Ceを含有するZr系複合酸化物と、Laを含有するアルミナ複合酸化物とを有し、
    上記下層のPdは上記Ceを含有するZr系複合酸化物と上記Laを含有するアルミナ複合酸化物の各々に担持されていることを特徴とする排気ガス浄化用触媒。
  4. 請求項1乃至請求項3のいずれか一において、
    上記下層は、Ceを含有し且つ触媒金属が担持されていないZr系複合酸化物を含有することを特徴とする排気ガス浄化用触媒。
  5. 請求項1乃至請求項4のいずれか一において、
    上記エンジンは、運転領域に応じて燃焼モードがペンタンを1000ppmC以上含有する排気ガスを排出する圧縮自己着火燃焼と火花点火燃焼とで切り換えられることを特徴とする排気ガス浄化用触媒。
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