JP5909907B2 - 連続鋳造における鋳片切断方法 - Google Patents

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Description

本発明は、連続鋳造における鋳片切断方法に係り、特に製鋼工場における連続鋳造操業時に鋳型より引抜かれるストランドを、後続のプロセスにて請求(要求)される所要の請求重量に見合う適切な鋳片長さに切断する際に適用して好適な、連続鋳造における鋳片切断方法に関する。
図1に、従来の連続鋳造設備を模式的に示す。この図に示されるように、溶鋼を運搬する取鍋1は、その溶鋼をロングノズル2を介して一時貯留するためのタンディッシュ3上へ移送される。
このタンディッシュ3の底部にはイマージョンノズル4を介して鋳型5が連設され、該鋳型5の底部近傍から垂直部と、これに続く湾曲部が複数のガイドロール6と、これらに沿って配設されたスプレー帯7とから形成され、該湾曲部の下流側に形成された水平部には例えば3つのピンチロール8が連設されている。
これらピンチロール8の下流には鋳込速度に同調して移動しながらストランドSを所定長の鋳片に溶断するトーチカー9が、更にその下流には切断された鋳片Pを計測する重量測定器10が、それぞれ配設されている。
このような鋳造設備においては、取鍋1により運搬された溶鋼11が、該取鍋1の底部のロングノズル2によりタンディッシュ3内に注がれた後、イマージョンノズル4を介して鋳型5に導かれると共に、該鋳型5内で冷却され周囲から順次凝固してシェル12が形成されると、その下端からストランドSとして引抜かれ、スプレー帯7からの冷却水にて冷却されながら湾曲部を経て水平部に案内され、直状のストランドSとなる。
このストランドSはピンチロール8にてトーチカー9へ送られ、ここで所定長の鋳片(スラブ)Pに溶断(切断)された後、重量測定器10に搬送され、切断後の鋳片重量が測定される。これらの一連の操作はプロセスコンピュータ(図中、プロコン)20により制御されている。
このような連続鋳造においては、切断すべきスラブ(鋳片)の目標長さ(以下、スラブ切断長又はスラブ請求長さともいう)は、後続プロセスにおいて要求されている請求重量に応じて、公称単位重量(以下、公称単重ともいう)とこれを補正する補正係数とから求められている(例えば、特許文献1〜3参照)。
ここで公称単位重量とは、鋳型の断面積及び溶鋼の成分より定まる比重を用いて求められるストランドの単位長さ当たりの重量であるが、例えばストランドの断面積は鋳型から引抜かれた直後と冷却された後では変化するため、補正係数を用いて切断直前のストランドの単位重量に補正することが行なわれている。
従来用いられていた補正係数は、以前に切断したスラブの重量を測定し、重量変動に関連する種々の変動要因を考慮して求められており、このようにして求めた補正係数を用いて、次に切断するスラブ切断長を補正して求めていた。
例えば、前記特許文献2では、鋳込速度や鋼種といった鋳込条件情報と、切断された複数の鋳片に関する重量測定結果により、鋳込条件情報の寄与率を求め、更にこの寄与率から鋳片に係る補正係数を求め、該補正係数を用いて求められる所要の重量となる長さに鋳片を切断している。
特開昭56−95456号公報 特開平6−114519号公報 特開2001−47204号公報
しかしながら、前記従来の鋳片切断方法では、鋳込速度や鋼種といった簡単な鋳込条件とスラブ実貫重量(実測重量)の測定結果に基づくフィードバック制御であることから、実鋳造におけるばらつきをスラブ切断長に必ずしも正確に反映できていないという問題があった。
即ち、例えば連続鋳造機のロールの状態など、鋳片冷却に影響する項目を既存のセンサ類では把握することは非常に難しいため、鋳込条件情報だけでは外乱要因の多い連続鋳造操業を完全に網羅することはできず、例えば、前記特許文献2の方法では、実スラブの重量偏差(ばらつき)を小さくすることができない。
又、鋳造中に、溶鋼の代表成分外れや鋳造異常等の異常が発生したことにより、鋳造後にスラブの表面を削る等のスラブ手入れが必要になるために、手入れロスにより重量不足が発生すると分かったとしても、該スラブに対してオンラインで切断長の補正を実施するようにはなっていなかった。そのため、スラブを目標長さに切断した後に、スラブ表面をスカーフマシンやグラインダーにより手入れを行なった場合、該スラブには手入れによる重量ロスが反映できていないために、請求重量に対して不足が発生してしまうことになる。
以上のような問題に起因して、切断後のスラブにおいて請求重量に対して大きな誤差が生じてしまった場合には、該当するスラブは全て、後続プロセスでは使用できない請求無しの余剰材(以下、余材ともいう)となり、長期不活用在庫となるか、若しくは別請求への転用により不要部が屑化されることになって、歩留り低下を招くことになる。
本発明は、前記従来の問題点を解決するべくなされたもので、鋳片を請求重量に見合った請求長さに、従来より更に正確に切断することができる連続鋳造における鋳片切断方法を提供することを課題とする。
請求項1の発明は、連続鋳造時に、鋳型からピンチロールにより引抜かれたストランドを、鋳込条件情報に基づいて算出される補正係数により公称単位重量を補正して得られる、所要の請求重量を有する長さの鋳片に切断装置により切断する連続鋳造における鋳片切断方法において、前記ピンチロールと切断装置の間に、前記ストランドの表面温度を測定する表面温度測定器を設置すると共に、切断された複数の鋳片に関して、前記表面温度測定器により測定された表面温度と、2次冷却水・水温とを含む鋳込条件情報及び各鋳片の実測重量より、毎回重回帰することによって、前記補正係数を算出する式に含まれる各鋳込条件に乗ずる補助係数を求め、求められた各補助係数と、次に切断すべき鋳片に関する鋳込条件情報とから、該鋳片の切断長さの計算に適用する補正係数を求めると共に、該補正係数を用いて所要の請求重量となる鋳片長さを求め、該鋳片長さに前記ストランドを切断することにより、前記課題を解決したものである。
請求項2の発明は、又、連続鋳造時に、鋳型からピンチロールにより引抜かれたストランドを、鋳込条件情報に基づいて算出される補正係数により公称単位重量を補正して得られる、所要の請求重量を有する長さの鋳片に切断装置により切断する連続鋳造における鋳片切断方法において、切断された複数の鋳片に関して、鋳造中に必要と判定された表面手入れを行なうことによって発生した手入れロスと、2次冷却水・水温とを含む鋳込条件情報及び各鋳片の実測重量より、毎回重回帰することによって、前記補正係数を算出する式に含まれる各鋳込条件に乗ずる補助係数を求め、求められた各補助係数と、次に切断すべき鋳片に関する鋳込条件情報とから、該鋳片の切断長さの計算に適用する補正係数を求める際、鋳込中に、対応する鋳片が切断後に表面手入れが必要であると判定された場合、該鋳片に関する前記鋳込条件情報に、該表面手入れに伴う手入れロスを反映させると共に、該補正係数を用いて所要の請求重量となる鋳片長さを求め、該鋳片長さに前記ストランドを切断することにより、同様に前記課題を解決したものである。
請求項3の発明は、更に、連続鋳造時に、鋳型からピンチロールにより引抜かれたストランドを、鋳込条件情報に基づいて算出される補正係数により公称単位重量を補正して得られる、所要の請求重量を有する長さの鋳片に切断装置により切断する連続鋳造における鋳片切断方法において、前記ピンチロールと切断装置の間に、前記ストランドの表面温度を測定する表面温度測定器を設置すると共に、切断された複数の鋳片に関して、前記表面温度測定器により測定された表面温度と、鋳造中に必要と判定された表面手入れを行なうことによって発生した手入れロスと、2次冷却水・水温とを含む鋳込条件情報及び各鋳片の実測重量より、毎回重回帰することによって、前記補正係数を算出する式に含まれる各鋳込条件に乗ずる補助係数を求め、求められた各補助係数と、次に切断すべき鋳片に関する鋳込条件情報とから、該鋳片の切断長さの計算に適用する補正係数を求める際、鋳込中に、対応する鋳片が切断後に表面手入れが必要であると判定された場合、該鋳片に関する前記鋳込条件情報に、該表面手入れに伴う手入れロスを反映させると共に、該補正係数を用いて所要の請求重量となる鋳片長さを求め、該鋳片長さに前記ストランドを切断することにより、同様に前記課題を解決したものである。
請求項4の発明は、前記請求項1、2又は3の発明において、同一のタンディッシュから複数の鋳型に溶鋼を注入しながら複数ストランドを連続鋳造する際、前記タンディッシュに、ストランド毎に請求重量を合計して得られる合計請求重量を全て加算した総請求重量以上の溶鋼を装入し、ストランド毎に前記合計請求重量から予定鋳込長を算出し、各ストランドの予定鋳込長に基づいて、ストランド間で鋳込時間が同一になるように、鋳込速度をそれぞれ制御するようにしたものである。
請求項5の発明は、前記請求項1、3又は4の発明において、前記鋳込条件情報に含まれる前記表面温度が、対象とする鋳片に対応する位置のストランドについて、幅方向の複数箇所の表面を、長さ方向に所定の間隔で測定した温度を平均した平均表面温度であるようにしたものである。
請求項6の発明は、前記請求項1、3又は4の発明において、切断された前記複数の鋳片に関して、前記表面温度測定器により測定された表面温度と実測された凝固収縮率との関係に基づいて、各表面温度についての凝固収縮率を所定の表面温度についての値を基準として指数化し、該指数を前記補正係数に反映させるようにしたものである。このように、前記表面温度測定器により表面温度の実測を鋳片切断直前に行なうようにしたことにより、鋳込条件情報から決まる鋳片切断長さを、直前の表面温度に基づいて最終補正することが可能となる。
請求項7の発明は、前記請求項2、3又は4の発明において、前記鋳込条件情報に含まれる前記手入れロスが、対象とする鋳片に対応する位置のストランドについて、表面を所望の厚さ分削った際の削り重量であるようにしたものである。
請求項1の発明によれば、鋳片(スラブ)に対応する切断直前のストランドの表面温度(以下、スラブ表面温度ともいう)を常時測定することにより、表面温度の変動、例えば低下に伴うスラブの収縮の程度を補正係数に反映することが可能となり、更に、2次冷却水・水温も補正係数に反映することが可能となるため、一段と請求重量に見合った請求長さに精度よく切断することができる。
請求項2の発明によれば、切断後に発生するスラブ手入れロス及び2次冷却水・水温を補正係数として反映させることが可能となるため、同様に請求重量に見合った請求長さに精度良く切断することができる。
請求項3の発明によれば、請求項1、2の発明による効果を同時に発揮させることができる。
従来の連続鋳造設備の概要を示す模式図 本発明に係る一実施形態に適用される連続鋳造設備の概要を示す模式図 表面温度測定器によりスラブ表面温度を測定している状態を模式的に示す斜視図 湯面変動に伴うパウダー巻き込みを説明するための(A)断面図及び(B)要部拡大断面図 スラブを表面手入れしている状態を示す斜視図
以下、図面を参照して、本発明に係る実施の形態について詳細に説明する。
図2は、本発明に係る一実施形態の連続鋳造における鋳片切断方法が適用される垂直−湾曲型連続鋳造設備を概念的に示す模式図である。
本実施形態に適用される連続鋳造設備は、同一のタンディッシュから複数(ここでは2つ)の鋳型に同時に溶鋼が注入され、各鋳型から同時にストランドが鋳造されるようになっている。それ以外の基本的な構成は、前記図1に示したものと同一であるので、同一の部位には同一の符号を使用して説明する。
取鍋1よりロングノズル2を介してタンディッシュ3に注入された溶鋼11はイマージョンノズル4を介して2つの鋳型5にそれぞれ導かれ、各鋳型5で冷却されることにより周囲から凝固してシェル12が形成されると、連続した鋳片(ストランド)Sとなって、鋳型下端近傍より下流の垂直部とこれに続く湾曲部を構成する複数のガイドロール6により、これらに沿って配設されている複数の水冷スプレー(図示せず)からなるスプレー帯7からの冷却水により冷却されながら、円弧状に引抜かれると共に下流側に案内される。
その後、水平部の3つのピンチロール8によりトーチカー9へ搬送され、トーチにより所定重量のスラブ(鋳片)Pに溶融切断される。切断されたスラブ(鋳片)は重量測定器10に搬送され、実重量が測定される。なお、図示されている2本の鋳造ラインは左右対称であるので、左側のラインについては一部省略してある。また、図では2本の鋳造ラインが背中合わせに設けられているが、同じ側に並んで設けられていても良い。
本実施形態の連続鋳造設備は、プロセスコンピュータ20により制御されると共に、このプロセスコンピュータ20には図示しないホストコンピュータから請求重量が送信され、設定されるようになっている。
又、このプロセスコンピュータ20には、タンディッシュ3に付設された温度計21、スプレー帯7に付設された流量計22及び温度計23、最上流のピンチロール8aに付設された回転計及び重量計(図示せず)からそれぞれ測定結果が入力され、更に鋳型5内では湯面レベルセンサ25から湯面高さが入力されるようになっている。
又、この連続鋳造設備では、最下流のピンチロール8cの出側にスラブの表面温度を測定する表面温度測定器24が付設され、該表面温度測定器24による測定結果も同様にプロセスコンピュータ20に入力されるようになっている。
ここに、本実施形態のスラブ切断方法の主たる特徴について説明する。
(1)ストランド毎の請求重量の合計を、転炉における同一ヒートにて、できるだけ過不足なく製造可能なように、ストランド毎に鋳造速度をコントロールする。その際、転炉(又は電気炉)に装入する1ヒート当たりの主原料(溶銑若しくはスクラップ)装入量は、歩留りを考慮して冷却時の請求重量合計に見合った最小値になるように調整することが望ましい。
(2)又、鋳造中、鋳込条件情報によって算出される補正係数により公称単位重量を補正した補正単位重量を用いて、所要の請求重量を有する請求長さのスラブに切断する方法に加え、連鋳機に設置されているピンチロール8の出側に設置されているスラブ表面温度測定器24により、切断直前のスラブ表面温度を測定する。
その測定結果より、例えば表1にイメージを示すようにスラブ凝固収縮率を指数化し、上記補正係数に追加・反映させることができるようにする。なお、指数化については後に詳述する。
上表に示すように、スラブ(鋳片)の表面温度が高い場合(この例では751℃以上)は鋳込条件情報などから算出された予定切断長に対して、補正することなくそのままの長さで切断すれば良いが、スラブ表面温度が低い場合(この例では750℃以下)はスラブの冷却が強いために、凝固収縮が大きくなり、実貫スラブ重量が軽くなることを実験にて確認した。そこで、スラブ表面温度が低い場合は、その測温直後に切断するスラブ切断長さを、請求重量を公称単位重量で割った予定切断長より延長する補正が必要であり、これにより重量不足を回避することができるようになる。
即ち、表面温度が非常に低い場合は、それだけ凝固収縮が大きくなることから、スラブ切断長さを高温の場合の予定切断長より長くすることができるように、指数で補正できるようにすることが有効である。前記表1の指数は、表面温度が低い場合は、表面温度が高い場合の予定切断長より長くして凝固収縮による重量減少分を補填できるようにするために、高温(751℃〜)の場合を基準(1.000)として、750℃以下の50℃間隔の各温度について実験的に求めた凝固収縮率を指数化したものであり、各指数は実験により求めた温度毎の係数である。
なお、ここでは、指数化する際の基準温度が751℃〜である例を示したが、これに限定されない。
具体的には、表面温度測定器24によりスラブ上面の温度を測定し、平均スラブ表面温度を算出する。平均スラブ表面温度とは、図3に矢印を使ってイメージを示すように、幅方向の任意の数箇所(図では幅方向中央と中央から左右数百mmの3箇所)の温度を、長さ方向に500mmピッチで測定して平均した値である。
このように実測した表面温度を使用して、例えば平均スラブ表面温度が640℃であったとすると、前記表1中右欄の該当する予定切断長の補正式を使って、
切断長=(請求重量÷公称単位重量)÷0.985
として算出する。
後述する(2)式における補助係数A4は、補正係数の算出にこの概念を導入している
ことに相当する。
(3)更に、溶鋼の成分外れや鋳型内湯面変動等の異常発生により、鋳造中に切断後のスラブの表面をスカーフやグラインダーにより手入れを行なう表面手入れが必要になると判断された場合は、オペレータはその手入れロスを補正係数に反映させて、請求重量に見合った長さにスラブを切断する。
例えば、図4(A)、(B)にイメージを示すように、モールド内湯面変動が発生した場合、鋳型内溶鋼表面を被覆しているモールドパウダー13を巻き込んで、スラブ表層下にトラップされていることが一般的に知られている。
そのため、通常、連続鋳造ではモールド内湯面(溶鋼面)レベルを連続監視している。スラブ表層下にトラップされたモールドパウダーは圧延工程で表面欠陥となるため、例えば図5に示すようにスカーフマシン14を使ってスラブ表面をスカーフィング(溶削)して除去する必要がある。溶削量はスラブ表面を片面2mm程度で十分除去可能である。溶削の結果、当初予定していたスラブ重量よりも軽くなり、要求製品が採取できなくなってしまう。
そこで、スラブ手入れ(溶削)が必要と判断された場合は、スラブ手入れでロスする重量分をスラブ切断長を延長して補填する。例えば、250mm厚×1,900mm幅×8,000mm長スラブにて、片面2mm手入れが必要となった場合、スラブ手入れ前後での重量変化は、
(0.25×1.90×8.0×7.85)
−(0.246×1.896×8.0×7.85)
=0.53ton
となる。
そこで、次式によりこの重量減少分を切断長延長により補填する。
0.53÷(0.25×1.90×7.85)=0.14
→8,000+140=8,140
よって、切断長を8,000mm→8,140mmへ変更する。
後述する(2)式における補助係数A5は、補正係数の算出にこの概念を導入している
ことに相当する。
次に、本実施形態の作用を説明する。
まず、前記プロセスコンピュータ20に、図示しないホストコンピュータから請求重量が送信され、設定される。
その時、直近の溶鋼歩留り実績と操業条件(異鋼種切替やノズル交換等による屑発生の有無)により求めた鋼種別歩留りより精錬炉(転炉や電気炉)への主原料の装入量を決定する。
続いて、複数ストランドの場合であるため、各ストランドの合計請求重量と予定鋳込長を算出し、ストランド毎の鋳込時間が同じになるように、基準鋳込速度を決定する。
ここでは2ストランドであるため、例えばAストランド、Bストランドとすると、2つを同時に鋳造することになるので、次式(1)により基準鋳込速度を決定する。
Aストランド予定鋳込長÷Aストランド基準鋳込速度
=Bストランド予定鋳込長÷Bストランド基準鋳込速度 …(1)
その際、基準鋳込速度が実操業で調整可能範囲から外れないように計画段階より配慮する。具体的には、遅すぎて溶鋼温度の低下を招いたり、逆に速すぎて凝固が完了せずにブレークアウトを誘発したりしないようにすることを意味する。
連続鋳込をつなげるためには、当然スケジューリングを行なうが、1ヒートの溶鋼をどのくらいの鋳造速度で鋳込み、どのくらいの時間で鋳造するかを予め決めておく必要があり、請求スラブを過不足なく採取するために、予定鋳込速度としてストランド毎の請求スラブ切断長の合計よりストランド毎の鋳込速度を決め、それを基準鋳込速度とする。鋳込速度が途中で変化する場合としては、例えば転炉〜RH〜連続鋳造の各設備を経由してくる際に、RHにて成分調整に時間を要したために、次ヒートの取鍋が予時刻よりも遅れると判断されたために、鋳込速度を減速して次ヒートにつなげる場合がある。
又、鋳込速度を途中で変化させた場合、例えば減速させた場合はスラブの凝固収縮が大きくなることが経験的に知見されたため、基準鋳込速度に対して減速した際は重量不足となるので、それを切断長延長により保証する。
以上のように(1)式で制御することにより、複数のストランドを有するスラブ連鋳機において、ストランド毎に請求スラブ合計重量(合計切断長さ)が異なる場合には、鋳込速度をコントロールしなければ、合計請求重量(合計切断長さ)の少ない方のストランドは請求無しの余剰スラブを製造し、また別のストランドでは請求重量(請求長さ)に対して不足する事態が発生することになるが、この事態の発生を避けることができる。
次に、前記プロセスコンピュータ20に入力される鋳込情報と、前記スラブ表面温度測定器24によるスラブ表面温度測定結果とからスラブ切断長の補正を行なう。
鋳込情報としては、前記回転計によるピンチロール8aの回転速度からも求まる実績鋳込速度Vc、溶鋼成分や用途によって決まる鋼種、鋳型使用回数、鋳造前のダミーバー装入時に測定したガイドロール6等のロール間隔データ、タンディッシュ3内溶鋼温度の温度計21による測定結果である鋳込温度がある。
又、トーチカー9の火口使用回数から求まる切断代、重量計により測定されるピンチロール8の押付重量、2次冷却水配管に設置された温度計23による2次冷却水水温、同様に設置された流量計22により得られる実績冷却水水量から算出される単位時間当たりの比水量、更にピンチロール8cの出側に設置された前記表面温度測定器24によるスラブ表面温度の測定結果、鋳造異常等によるスラブ手入れ有無等が鋳込情報として前記プロセスコンピュータ20に入力される。なお、前記表面温度測定器24は、冷却用のスプレー帯7の2次冷却水や復熱の影響を排除するために、ピンチロール8の出側に設置してある。
この表面温度測定器24による測定結果は、スラブの凝固収縮状態を定量化するために使用されるもので(前記表1参照)、鋳造速度や2次冷却水量の条件だけでは把握できない点を測定することができる。
又、鋳造中の異常発生等により、切断後にスラブをスカーフマシン14やグラインダーによりスラブ手入れすることが必要になると鋳造中に分かった場合には、切断前に必要な手入れ方法の情報をスラブ単位で付与し、手入れに伴う重量ロスを補正係数に反映させる。
以上の測定結果等の鋳込条件を反映させて、スラブ切断長の計算に使用する補正係数を算出し、該補正係数を用いて算出されるスラブ切断長に対応する所定の位置に前記トーチカー9を移動させ、スラブを切断する。更に、切断後は重量測定器10により、実貫(実測)重量を読み込む。
以下、プロセスコンピュータ20によるスラブ切断長の補正計算に使用する補正係数を求める式を以下に示す。
補正係数=A0×(実績鋳込速度)+A1×(鋼種)+
A2×(タンディッシュ内ΔT)+A3×(ピンチロール押付重量)+
A4×(表面温度測定器によるスラブ表面温度測定結果)+
A5×(スラブ手入れによる重量ロス)+A6×(2次冷却水・水温)+
A7×(2次冷却水量(単位時間当たりの比水量))+
A8×(鋳型使用回数)+A9×(ロールギャップデータ)+
A10×(トーチカッタ火口使用回数) …(2)
ここでA1〜A10は各項目(鋳込条件)とスラブ実貫重量の測定結果から、毎回重回帰
することにより求まる補助係数である。各項目とこの補助係数を乗算した値を加算する上記(2)式により切断すべきスラブに係る補正係数を求める。
更に、(2)式で求めた補正係数を用いて、設定された請求重量に対する切断長を以下の(3)式で求める。
切断長=請求重量÷(公称単位重量×補正係数) …(3)
前記(2)式で求められる補正係数については、スラブ切断毎にスラブ実貫重量と鋳込条件等をデータとして保存すると共に、最も古いデータが消去され、新たな重回帰をその都度行なって補正係数の見直しを行なう。
次に、本実施形態について具体例を挙げて更に説明する。
(1)適用材(鋼種、成分、寸法等)
厚板向スラブ、40k汎用中炭素鋼
寸法:Aストランドスラブサイズ=250mm厚×1,904mm幅×請求切断長
Bストランドスラブサイズ=250mm厚×2,304mm幅×請求切断長
請求重量:Aストランド=150ton、Bストランド=165ton
(2)適用設備/適用工程/適用作業
適用設備:製鋼工場における前記図1に示したような垂直−曲げ型スラブ連鋳機(2ストランド)、垂直部はメニスカス位置から約3,000mm
物流フロー:転炉→RH→スラブ連鋳機→厚板工場
(3)操業条件/加工条件
請求重量から求まる転炉全部装入量:(150+165)÷0.95=331.6ton
請求重量から求まる鋳込長:Aストランド=40.0m、Bストランド=36.5m
鋳造速度範囲=0.7m/分〜1.2m/分
鋳造中、ピンチロール出側での表面温度測定器によるスラブ表面温度を測定。
<長さ方向500mmピッチで、幅方向3箇所(図3参照)の温度分布よりスラブ形状に変換する>
(4)結果
(i)A・B両方のストランドにおける鋳造時間を同一にするための鋳造速度調整
(ii)Aストランド=0.95m/分、Bストランド=0.865m/分
鋳込時間=42.2分
下表2に示すように本発明方法の適用により、従来方法と比較して請求重量に対して精度良く切断が行なわれている。
又、請求重量がストランドによって異なる場合も鋳造速度を調整することにより、請求無し余材の発生率を以下のように削減することができた。
本発明によれば、表面温度測定器を用いたオンライン測定と鋳造異常によるスラブ手入れ有無を反映させるようにしたことにより、請求重量に従った(見合った)スラブ長さに精度良く切断することが可能となり、その結果、鋳込歩留り向上を図ることが可能となる。
1…取鍋
2…ロングノズル
3…タンディッシュ
4…イマージョンノズル
5…鋳型
6…ガイドロール
7…スプレー帯
8…ピンチロール
9…トーチカー
10…スラブ重量測定器
11…溶鋼
12…凝固シェル
13…モールドパウダー
20…プロセスコンピュータ
21…温度計
22…流量計
23…温度計
24…表面温度測定器
25…湯面レベルセンサ

Claims (7)

  1. 連続鋳造時に、鋳型からピンチロールにより引抜かれたストランドを、鋳込条件情報に基づいて算出される補正係数により公称単位重量を補正して得られる、所要の請求重量を有する長さの鋳片に切断装置により切断する連続鋳造における鋳片切断方法において、
    前記ピンチロールと切断装置の間に、前記ストランドの表面温度を測定する表面温度測定器を設置すると共に、
    切断された複数の鋳片に関して、前記表面温度測定器により測定された表面温度と、2次冷却水・水温とを含む鋳込条件情報及び各鋳片の実測重量より、毎回重回帰することによって、前記補正係数を算出する式に含まれる各鋳込条件に乗ずる補助係数を求め、
    求められた各補助係数と、次に切断すべき鋳片に関する鋳込条件情報とから、該鋳片の切断長さの計算に適用する補正係数を求めると共に、
    該補正係数を用いて所要の請求重量となる鋳片長さを求め、
    該鋳片長さに前記ストランドを切断することを特徴とする連続鋳造における鋳片切断方法。
  2. 連続鋳造時に、鋳型からピンチロールにより引抜かれたストランドを、鋳込条件情報に基づいて算出される補正係数により公称単位重量を補正して得られる、所要の請求重量を有する長さの鋳片に切断装置により切断する連続鋳造における鋳片切断方法において、
    切断された複数の鋳片に関して、鋳造中に必要と判定された表面手入れを行なうことによって発生した手入れロスと、2次冷却水・水温とを含む鋳込条件情報及び各鋳片の実測重量より、毎回重回帰することによって、前記補正係数を算出する式に含まれる各鋳込条件に乗ずる補助係数を求め、
    求められた各補助係数と、次に切断すべき鋳片に関する鋳込条件情報とから、該鋳片の切断長さの計算に適用する補正係数を求める際、
    鋳込中に、対応する鋳片が切断後に表面手入れが必要であると判定された場合、該鋳片に関する前記鋳込条件情報に、該表面手入れに伴う手入れロスを反映させると共に、
    該補正係数を用いて所要の請求重量となる鋳片長さを求め、
    該鋳片長さに前記ストランドを切断することを特徴とする連続鋳造における鋳片切断方法。
  3. 連続鋳造時に、鋳型からピンチロールにより引抜かれたストランドを、鋳込条件情報に基づいて算出される補正係数により公称単位重量を補正して得られる、所要の請求重量を有する長さの鋳片に切断装置により切断する連続鋳造における鋳片切断方法において、
    前記ピンチロールと切断装置の間に、前記ストランドの表面温度を測定する表面温度測定器を設置すると共に、
    切断された複数の鋳片に関して、前記表面温度測定器により測定された表面温度と、鋳造中に必要と判定された表面手入れを行なうことによって発生した手入れロスと、2次冷却水・水温とを含む鋳込条件情報及び各鋳片の実測重量より、毎回重回帰することによって、前記補正係数を算出する式に含まれる各鋳込条件に乗ずる補助係数を求め、
    求められた各補助係数と、次に切断すべき鋳片に関する鋳込条件情報とから、該鋳片の切断長さの計算に適用する補正係数を求める際、
    鋳込中に、対応する鋳片が切断後に表面手入れが必要であると判定された場合、該鋳片に関する前記鋳込条件情報に、該表面手入れに伴う手入れロスを反映させると共に、
    該補正係数を用いて所要の請求重量となる鋳片長さを求め、
    該鋳片長さに前記ストランドを切断することを特徴とする連続鋳造における鋳片切断方法。
  4. 同一のタンディッシュから複数の鋳型に溶鋼を注入しながら複数ストランドを連続鋳造する際、
    前記タンディッシュに、ストランド毎に請求重量を合計して得られる合計請求重量を全て加算した総請求重量以上の溶鋼を装入し、
    ストランド毎に前記合計請求重量から予定鋳込長を算出し、各ストランドの予定鋳込長に基づいて、ストランド間で鋳込時間が同一になるように、鋳込速度をそれぞれ制御することを特徴とする請求項1、2又は3に記載の連続鋳造における鋳片切断方法。
  5. 前記鋳込条件情報に含まれる前記表面温度が、対象とする鋳片に対応する位置のストランドについて、幅方向の複数箇所の表面を、長さ方向に所定の間隔で測定した温度を平均した平均表面温度であることを特徴とする請求項1、3又は4に記載の連続鋳造における鋳片切断方法。
  6. 切断された前記複数の鋳片に関して、前記表面温度測定器により測定された表面温度と実測された凝固収縮率との関係に基づいて、各表面温度についての凝固収縮率を所定の表面温度についての値を基準として指数化し、該指数を前記補正係数に反映させることを特徴とする請求項1、3又は4に記載の連続鋳造における鋳片切断方法。
  7. 前記鋳込条件情報に含まれる前記手入れロスが、対象とする鋳片に対応する位置のストランドについて、表面を所望の厚さ分削った際の削り重量であることを特徴とする請求項2、3又は4に記載の連続鋳造における鋳片切断方法。
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