JP5907044B2 - 縦型熱処理装置 - Google Patents

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本発明は、基板保持具に棚状に積載された複数枚の基板に対して、縦型の反応管内にて熱処理を行う縦型熱処理装置に関する。
半導体ウエハなどの基板(以下「ウエハ」と言う)に対して熱酸化処理あるいはCVD(Chemical Vapor Deposition)処理などの熱処理を行う装置の一つとして、例えば縦型熱処理装置が知られている。この装置は、複数枚の基板を棚状に積載する基板保持具であるウエハボートと、このウエハボートを気密に収納する縦型の反応管とを備えている。そして、反応管の外側には、当該反応管の放熱を抑制するための断熱材が配置されており、この断熱材の内周面には反応管内を加熱するためのヒータが貼設されている。この断熱材は、反応管の側周面を周方向に亘って囲むように構成された概略筒状の本体断熱材と、この本体断熱材の上方側開口部を塞ぐ上蓋断熱材とを備えており、例えばアルミナ(Al2O3)やシリカ(SiO2)などのセラミックス繊維(クロス)などにより構成されている。従って、断熱材の内部には空隙が含まれている。
このような装置では、複数の処理バッチ(ロット)に対して連続的に熱処理を行う中で、反応管の内部は処理バッチ毎に昇降温が繰り返される。具体的には、例えば300℃程度の比較的低温の搬入出温度に設定された反応管内に、複数枚のウエハを積載したウエハボートを下側から気密に収納し、次いで反応管内を例えば1000℃程度の熱処理温度に昇温する。続いて、この熱処理温度にて基板に対して熱処理を行った後、反応管内を既述の搬入出温度に降温させて、ウエハボートを反応管から搬出する。
このように多数回に亘って連続的に熱処理を行うと、既述の上蓋断熱材の一部あるいは全体が脱落して落下する場合がある。特許文献1、2では、上蓋断熱材(天井断熱体や上部断熱材)における亀裂の発生や落下を防止する手法として、上蓋断熱材の下面に溝を形成したり、上蓋断熱材の位置決め部に応力を緩和する処理を施したりする手法が記載されている。また、特許文献3では、上蓋断熱材(頂部断熱材)の上方側の天板を同心円状に分割する手法や、上蓋断熱材の下面に耐熱性のアルミナクロスを貼り付ける技術について記載されており、特許文献4には縦型熱処理装置について記載されている。そして、特許文献5には、無機質成形体32の内面に、無機繊維製クロス33を備えた無機質被覆層31を配置する技術について記載されている。しかしながら、これら特許文献1〜5では、本体断熱材や上蓋断熱材の密度(硬度)については検討されていない。
特開2009−194297号公報 特開2007−73865号公報 特開2003−22979号公報(段落0025) 特開2004−31846号公報 特開平5−215473号公報
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、基板に対して熱処理を行うための縦型の反応管の外側に、当該反応管の側周面を周方向に亘って筒状に囲む本体断熱材と、この本体断熱材の上方側開口部を塞ぐ上蓋断熱材とを断熱材として設けるにあたって、当該上蓋断熱材の脱落を抑制できる縦型熱処理装置を提供することにある。
本発明の縦型熱処理装置は、
基板保持具に棚状に積載された複数枚の基板に対して、縦型の反応管内にて熱処理を行う縦型熱処理装置において、
前記反応管内の基板を加熱するための加熱部と、
この加熱部により加熱される領域の外側にて前記反応管の側周面を周方向に沿って筒状に囲むように配置され、空隙を含むセラミックスにより構成された本体断熱材と、
この本体断熱材の上方側開口部を塞ぐように配置され、前記本体断熱材と密度が揃うように構成された断熱材からなる上蓋断熱材と、
この上蓋断熱材が熱膨張収縮する時に、当該上蓋断熱材の熱膨張収縮に追随して変形しながら前記上蓋断熱材の損傷を抑えるために、前記上蓋断熱材の下面側周縁部と前記本体断熱材との間に介在して前記上蓋断熱材の周方向に沿って環状に設けられ、前記本体断熱材よりも高い密度であって、当該上蓋断熱材とは別部材である耐火物からなる保護層と、を備え、
この保護層は、無機成分を含む接着剤を用いて当該上蓋断熱材に接着された後、熱処理によって前記上蓋断熱材と一体化していることを特徴とする。
既述の縦型熱処理装置は、以下の態様を採っても良い。即ち、前記保護層は、前記本体断熱材の密度に対して1.5倍〜2倍以上の密度となるように構成されている態様。
前記保護層の厚み寸法は、前記本体断熱材と前記上蓋断熱材との間の領域を介して前記反応容器が放熱することを抑制するために、且つ前記上蓋断熱材が前記本体断熱材と摺動して摩耗することを抑制するために、1mm以上2mm以下に設定されている態様。
前記反応管内にて行われる熱処理は、1000℃以上の熱処理である態様。
前記本体断熱材及び前記上蓋断熱材の外側には外装体が設けられ、
これら本体断熱材及び上蓋断熱材と前記外装体との間には、前記本体断熱材及び前記上蓋断熱材よりも密度の小さい緩衝材と、これら本体断熱材及び上蓋断熱材が熱膨張する時の伸び代となる隙間領域との少なくとも一方が介在している態様。
本発明は、基板に対して熱処理を行う反応管の側周面に沿うように筒状の本体断熱材を設けると共に、この本体断熱材の上方側開口部に上蓋断熱材を配置するにあたり、本体断熱材よりも高い密度の断熱材からなる保護層を上蓋断熱材の下面側周縁部と前記本体断熱材と間に上蓋断熱材の周方向に沿って環状に配置している。そして、この保護層について、上蓋断熱材が熱膨張収縮する時に、当該上蓋断熱材の熱膨張収縮に追随して変形するように構成している。従って、反応管の昇降温を行っても、前記本体断熱材との摺動による上蓋断熱材の損傷を抑えることができる。
本発明の縦型熱処理装置の一例を概略的に示す縦断面図である。 前記縦型熱処理装置の断熱材における上蓋断熱材を示す斜視図である。 前記断熱材を示す縦断面図である。 前記断熱材を示す分解斜視図である。 前記断熱材に保護層を形成しない場合に当該断熱材に生じる損傷を模式的に示す縦断面図である。 前記断熱材に保護層を形成しない場合に当該断熱材に生じる損傷を模式的に示す縦断面図である。 前記断熱材に保護層を形成しない場合に当該断熱材に生じる損傷を模式的に示す縦断面図である。 液体からなる接着剤を用いて断熱材の表面を硬化させる様子を模式的に示す縦断面図である。 前記接着剤を用いて断熱材の表面を硬化させた時の当該表面を模式的に示す縦断面図である。 前記断熱材に保護層に代えて石英板を設けた様子を示す縦断面図である。 前記石英板を設けた時の断熱材の熱膨張収縮を模式的に示す縦断面図である。 前記断熱材に保護層に代えて芯材を配置した例を模式的に示す縦断面図である。 本発明の保護層を形成する手法の一例を模式的に示す縦断面図である。 前記保護層の形成された断熱材を示す縦断面図である。 本発明の断熱材が熱収縮する時の様子を模式的に示す縦断面図である。 本発明の断熱材が熱膨張する時の様子を模式的に示す縦断面図である。 本発明の断熱材を用いた時に当該断熱材に生じる損傷を模式的に示す縦断面図である。 本発明の他の例における断熱材を示す斜視図である。 前記他の例における断熱材を示す縦断面図である。
本発明の実施の形態に係る縦型熱処理装置の一例について、図1〜図4を参照して説明する。始めにこの装置の概要について簡単に説明すると、この装置は、複数枚例えば150枚のウエハWを棚状に積載するウエハボート1と、当該ウエハボート1を気密に収納して熱処理を行うための縦型の反応管2とを備えている。そして、この装置は、ウエハWに対して熱処理を行うにあたって、反応管2内の昇降温を多数回に亘って行っても、当該反応管2を断熱するための断熱材3の天井面(上蓋断熱材22)が破損(脱落)しにくいように構成されている。続いて、この装置の具体的な構成について説明する。
既述の反応管2の下方側には、当該反応管2の下端周縁部を周方向に亘って気密に支持するために概略円筒形状に形成された筒状体4が配置されており、この筒状体4は、円板状の蓋体5によって下端開口部が気密に塞がれている。また、反応管2の内部には、ウエハボート1に隣接するように、当該反応管2の長さ方向に沿って上下方向に伸びるガスノズル6が収納されている。このガスノズル6の下端部は、筒状体4の側壁部を気密に貫通して、バルブV及び流量調整部Mを介して処理ガス源6aに接続されている。この処理ガス源6aとしては、ウエハWに対して行われる熱処理の種別に応じて、例えば窒素(N2)ガスなどの不活性ガスや、シリコン(Si)系ガスあるいはオゾン(O3)ガスなどの貯留源が個別に配置される。図1中6bはガスノズル6の側面に形成されたガス吐出孔である。
筒状体4の側周面におけるガスノズル6に対向する位置には、反応管2内を真空排気するための排気口7が形成されており、この排気口7から伸びる排気管8には、バタフライバルブなどの圧力調整部9を介して真空ポンプなどの真空排気機構10が接続されている。図1中11はウエハボート1を鉛直軸周りに回転自在に支持する回転軸、12はこの回転軸11の下端側に配置されたモータなどの駆動部である。
ここで、反応管2の内部にてウエハWに対して行われる熱処理における一連のシーケンスについて簡単に説明しておく。始めに、例えば300℃程度の搬入出温度に設定された反応管2に対して下方側に離間した位置にて、ウエハボート1に複数枚のウエハWを積載した後、当該ウエハボート1を上昇させて、反応管2に気密に収納する。次いで、反応管2内を例えば1000℃程度の熱処理温度に加熱すると共に、ウエハボート1を鉛直軸周りに回転させながら、当該反応管2内に処理ガスを供給して、例えば真空雰囲気にて各ウエハWに対して熱処理を行う。続いて、反応管2内を既述の搬入出温度に降温させた後、ウエハボート1を下降させてウエハWを取り出す。こうして後続の未処理のウエハWについても、同様に熱処理を順次行う。このような熱処理を行っている間、反応管2の内部では、当該反応管2の外側に設けられた断熱材3により放熱が抑えられて、水平方向及び上下方向における均熱性が確保される。
即ち、以上説明した反応管2の外側には、既述の断熱材3と、反応管2内を前記熱処理温度に加熱するための加熱部をなすヒータ20とが配置されている。具体的には、断熱材3は、反応管2の側周面を周方向に沿って囲むように概略円筒状に形成された本体断熱材21と、この本体断熱材21の上方側開口部を塞ぐように配置された円板状の上蓋断熱材22とを備えている。既述のヒータ20は、この本体断熱材21の内周面に周方向に沿って設けられており、図1では簡略化しているが、高さ方向において複数の領域に区画されて、各領域の温度を個別に調整自在に構成されている。尚、本体断熱材21については、平面で見た時に円弧状をなす複数の部材を周方向に互いに接合して、環状に一体化したものを用いても良い。
上蓋断熱材22の下端面における概略中央部には、図1及び図2に示すように、上方側に向かって窪むように凹部22aが形成されており、この凹部22aの側方側における前記下端面には、当該凹部22aの内部領域と装置の外部とを連通させるための溝部22bが配置されている。従って、ウエハWに対する熱処理が終了した後、反応管2と断熱材3との間に領域に対して図示しない吸気路を介して気体を流入させると共に溝部22bからこの気体を排出することにより、反応管2を強制的に空冷できるように構成されている。図1中22cは、例えば装置の外側から溝部22bに沿うように上蓋断熱材22に貫挿された排気管である。尚、これら凹部22a、溝部22b及び排気管22cについては、図3では描画を省略している。
本体断熱材21及び上蓋断熱材22は、各々アルミナやシリカなどのセラミックスの繊維(クロス)により構成されており、従って各々内部に多数の空隙を備えている。そのため、本体断熱材21と上蓋断熱材22とが互いに摺動すると、これら本体断熱材21や上蓋断熱材22が破断しやすくなっていると言える。また、これら本体断熱材21と上蓋断熱材22とは、密度(嵩密度)が互いに揃うように、即ち強度が互いに揃うように構成されており、密度の一例を挙げるとこの例では各々0.45g/cm3となっている。
ここで、「密度が揃う」とは、上蓋断熱材22の密度が本体断熱材21の密度とほぼ同じ値となることであり、断熱能力で表現すると上蓋断熱材22の断熱能力が本体断熱材21の断熱能力に対して90%〜110%であることを指す。即ち、反応管2をある温度に設定すると共に、この温度に設定された反応管2の外側に上蓋断熱材22や本体断熱材21などの断熱材3を任意の時間配置した時、この断熱材3における反応管2とは反対側の面の温度について、上蓋断熱材22では本体断熱材21の90%〜110%になる。この例では、上蓋断熱材22の断熱能力は、本体断熱材21の断熱能力と同じ値になっている。
図1及び図3における30は、これら本体断熱材21及び上蓋断熱材22の外周面(側面及び上面)に沿うように例えばステンレスなどの金属板により構成された外装体(ケーシング)であり、側周面に設けられた側面部30aと天板30bとが図示しないボルトなどにより互いに固定されている。そして、外装体30と、本体断熱材21及び上蓋断熱材22との間には、本体断熱材21や上蓋断熱材22が熱膨張できるように、これら本体断熱材21や上蓋断熱材22よりも密度(硬度)が小さい補助断熱材3aが緩衝材(ブラケット)として各々介在している。補助断熱材3aは、本体断熱材21や上蓋断熱材22と同様に、セラミックスの繊維などから構成されている。また、補助断熱材3aの側周面と外装体30との間には、当該補助断熱材3aの側周面を周方向に亘って囲むように、補助断熱材3aや断熱材3の熱膨張収縮する時の伸び代として隙間領域3bが介在している。
ここで、上蓋断熱材22の下面側の周縁部における本体断熱材21と接触する部位には、図2〜図4に示すように概略リング状の保護層23が配置されている。この保護層23は、本体断熱材21や上蓋断熱材22と同様にアルミナやシリカなどのセラミックスの繊維により構成された耐火物(断熱材)となっており、従って本体断熱材21及び上蓋断熱材22を構成する材質の少なくとも一つを含んでいる。
また、この保護層23は、本体断熱材21や上蓋断熱材22よりも密度(硬度)が高くなるように、例えば前記繊維が密に充填されている。具体的には、保護層23の密度は、例えば1.0g/cm3〜2.0g/cm3となっており、従って本体断熱材21の密度と比べて1.5倍以上、好ましくは2倍以上となっている。ここで、保護層23を本体断熱材21よりも高密度に構成するにあたり、保護層23がセラミックスの繊維により構成された「耐火物」をなしていることから、保護層23には気孔が含まれている。
このように保護層23を断熱材により構成していることから、当該保護層23(後述の接着層24を含む保護層23)の熱膨張収縮は、上蓋断熱材22の熱膨張収縮率と同程度(同じ値)となるように調整されている。また、保護層23の厚み寸法tは、図4に示すように、1mm以上2mm以下に設定されている。尚、図1では保護層23について描画を省略している。また、図2は、上蓋断熱材22を下方側から見た斜視図を示している。
そして、保護層23は、反応管2の昇降温に伴って上蓋断熱材22が熱膨張収縮する時、当該熱膨張収縮に追随して変形するように、当該上蓋断熱材22と一体的に構成されている。このように保護層23を構成した理由について、当該保護層23の形成方法と共に以下に詳述する。
即ち、上蓋断熱材22は、既述のように概略円板状になっており、平面で見た時に中実(中央部についても上蓋断熱材22を構成する繊維が配置されている)となっている。一方、本体断熱材21は、平面で見た時に中央部にウエハボート1が配置されていて、中空になっている。従って、平面で見た時に、反応管2の昇降温に伴って熱膨張収縮する長さ寸法は、本体断熱材21と上蓋断熱材22とでは互いに異なる寸法になっている。そのため、反応管2が昇降温する時、保護層23を配置していないと、これら本体断熱材21と上蓋断熱材22とが互いに摺動することになる。
そして、本体断熱材21及び上蓋断熱材22は、互いの密度が揃っており、またセラミックスの繊維により各々構成されていて破損しやすい。そのため、製造ばらつきによって生じるこれら本体断熱材21と上蓋断熱材22との間の密度差により、あるいは本体断熱材21と上蓋断熱材22とが接触する部位における極僅かな表面状態の違いなどによって、上蓋断熱材22が優先的に摩耗して脱落するおそれがある。
即ち、上蓋断熱材22及び本体断熱材21はいずれもセラミックスの繊維により構成されているので、互いに同じ物性となるように製造しようとしても、現実的には密度などがばらつきやすい。具体的には、上蓋断熱材22が本体断熱材21と比べて僅かであっても密度が高い場合、これら上蓋断熱材22と本体断熱材21とが摺動すると、図5に示すように、本体断熱材21の上面側内周部が上蓋断熱材22の下端側外縁部により削られる。この場合には、上蓋断熱材22の脱落は起こりにくい。尚、図5では、本体断熱材21が摩耗する様子について誇張して描画している。後述の図6、図7及び図17についても同様である。
一方、本体断熱材21が上蓋断熱材22よりも密度が高い場合、図6に示すように、摺動時に本体断熱材21の上面側内周部によって上蓋断熱材22の下面側外周部が段状に削られていき、段部25が形成される場合がある。この場合には、上蓋断熱材22が熱膨張する時に段部25に応力が集中することにより、当該段部25を基点としてクラック26が生じて、上蓋断熱材22の下面側の一部あるいは全体が反応管2に向かって脱落するおそれがある。このように上蓋断熱材22の脱落が生じると、その後のウエハWに対する熱処理では、反応管2内の均熱性が得られにくくなってしまう。
また、本体断熱材21の一部の部位については上蓋断熱材22よりも密度が高く、一方当該部位とは別の部位では密度が低い場合、即ち本体断熱材21及び上蓋断熱材22の密度が互いに拮抗している場合、図7に示すように、上蓋断熱材22及び本体断熱材21のいずれについても削れてしまう。この場合であっても、段部25やクラック26を基点として上蓋断熱材22の脱落が起こるおそれがある。
ここで、断熱材3(上蓋断熱材22)の表面に例えば硬質の被膜を形成する技術として、断熱材3の表面を無機材料によりコーティングする手法が挙げられる。具体的には、図8に示すように、無機バインダを成分とする接着剤41を断熱材3の表面に塗布して、その後図9に示すように熱処理(焼結)を行う。この手法では、接着剤41に含まれるセラミックスからなる粉末が断熱材3を構成するセラミックスの繊維に付着した後焼結するので、あるいは前記粉末を介して互いに隣接する繊維同士が焼結するので、当該断熱材3の表面には、内部よりも密度(硬度)が向上した高密度層42が形成される。
しかしながら、断熱材3が既に詳述したようにセラミックスの繊維により構成されているので、液体からなる接着剤41を用いると、この接着剤41は断熱材3の内部に浸透していく。言い換えると、液体からなる接着剤41を用いると、断熱材3にいわば含浸させていることになるので、図9の下側に拡大して示すように、断熱材3の表層よりも内側に入り込んだ位置にて高密度層42が形成される場合がある。このように高密度層42が断熱材3の内部に形成されると、当該断熱材3の表層には、依然として高密度層42よりも密度の低い層が露出してしまう。従って、液体からなる接着剤41を用いて多孔質状の断熱材3の表面を硬化させようとしても、当該断熱材3の表面の密度がまちまちになってしまう。即ち、接着剤41を用いて断熱材3の表面に皮膜を形成する手法は、例えば断熱材3を構成する繊維などが当該断熱材3の内部から外側に飛散することを抑制するための技術であり、断熱材3、3同士が互いに摺動することを想定した技術ではないと言える。尚、図8及び図9では、既述の図1などとは断熱材3(上蓋断熱材22)の上下を反転させている。
更に、上蓋断熱材22と本体断熱材21との間における摺動を抑える手法としては、高密度層42に代えて、図10に示すように、例えば石英などからなる固体の板状体43を上蓋断熱材22の下面側に配置する例が挙げられる。このように板状体43を配置した場合には、この板状体43は接着剤41のように断熱材3(上蓋断熱材22)の内部には進入しないので、当該上蓋断熱材22の周方向に亘って本体断熱材21との間に介在することになる。しかしながら、反応管2の昇降温を行う時、上蓋断熱材22と板状体43との間では熱膨張収縮率が互いに異なる。そのため、図11に示すように、上蓋断熱材22と板状体43との間で摺動が起こるので、当該板状体43によって上蓋断熱材22が削れてしまう。即ち、図11における板状体43は、上蓋断熱材22から見ると、当該上蓋断熱材22と一体的に熱膨張収縮しないので、本体断熱材21の一部を構成していると言える。また、このように上蓋断熱材22と本体断熱材21との間の領域に断熱材3以外の部材を配置すると、当該領域を介して反応管2が放熱するので、当該反応管2の内部では良好な均熱性が得られない。
更にまた、上蓋断熱材22自体の密度を本体断熱材21の密度よりも高くした場合には、当該上蓋断熱材22の断熱性能が悪くなってしまう。即ち、これら上蓋断熱材22や本体断熱材21などの断熱材3は、内部に含まれる空隙が大きい程断熱性が高くなり、一方空隙が小さい程断熱性が劣ってしまう。従って、上蓋断熱材22そのものの高密度化を図った場合には、反応管2内では良好な均熱性が得られなくなってしまう。そのため、上蓋断熱材22そのものを高密度化しながら良好な断熱性を得ようとすると、当該上蓋断熱材22の高さ寸法を大きくする必要があるので、装置の大型化やコストアップに繋がってしまう。
また、図12に示すように、例えば水平方向に伸びる概略棒状あるいは板状の芯材45を上蓋断熱材22の内部に埋設した場合であっても、このような芯材45の下方側の部位にクラック26が発生すると、当該部位では上蓋断熱材22の損傷や脱落を抑制し難い。
そこで、本発明では、上蓋断熱材22の下面側における本体断熱材21との接触部に、反応管2の内部の均熱性(断熱性)を確保しながら、当該上蓋断熱材22の摩耗を抑制するために、既述のようにセラミックスの繊維などからなる保護層23を配置している。即ち、この保護層23の形成方法について具体的に説明すると、図13に示すように、始めに上蓋断熱材22と保護層23との間に、例えばアルミナやシリカなどのセラミックスの粒子を含む接着剤からなる接着層24を介在させる。そして、接着層24によって、これら上蓋断熱材22と保護層23とを互いに接着させる。あるいは、保護層23に接着層24を染み込ませて、当該保護層23を上蓋断熱材22に貼り付ける。次いで、例えば1200℃程度の熱処理温度にてこれら上蓋断熱材22、保護層23及び接着層24からなる構成の熱処理を行うと、図14に示すように、上蓋断熱材22と保護層23とが接着層24を構成する既述の粒子などを介して焼結(一体化)する。尚、図13及び図14では、図1などに対して上蓋断熱材22の上下を反転させて描画している。
従って、保護層23が既述のようにセラミックスの繊維により構成されていて自由に変形できることから、また保護層23と上蓋断熱材22との熱膨張率が互いに揃っていることから、保護層23は、上蓋断熱材22の熱膨張収縮に伴って変形(熱膨張収縮)する。具体的には、図15に示すように、高温状態(熱処理温度)の反応管2が既述の搬入出温度まで降温する時、上蓋断熱材22が水平方向に収縮するので、保護層23は、当該収縮に合わせて縮径する。一方、搬入出温度の反応管2が熱処理温度まで昇温する時、上蓋断熱材22が水平方向に膨張するので、保護層23は、この膨張に合わせて拡径する。
そのため、多数回の処理バッチを行うにあたり、図15及び図16に示すように反応管2の昇降温を繰り返すと、保護層23は、本体断熱材21に対して摺動することになるが、既述のように当該保護層23の密度(硬度)は本体断熱材21の密度よりも大きい。従って、このような摺動を繰り返すと、図17に示すように、本体断熱材21の上端部内周縁が保護層23によって削られて摩耗する。そして、既述のように本体断熱材21の密度と保護層23との密度との差を1.5倍以上好ましくは2倍以上もの大きさにしていることから、本体断熱材21の摩耗が選択的に(優先的に)起こる。そのため、上蓋断熱材22については摩耗が抑えられるので、既述の段部25やクラック26が形成されにくくなるか、あるいは形成されない。従って、上蓋断熱材22の脱落が抑制される。
更に、保護層23について、本体断熱材21や上蓋断熱材22と同様にセラミックスの繊維により構成しているので、断熱材3の一部をなしていると言える。更にまた、保護層23の厚み寸法tを既述のように薄く設定しているので、上蓋断熱材22の摩耗を抑制しながら、当該上蓋断熱材22と本体断熱材21との間の領域を介して反応管2の放熱が起こりにくくなっている。従って、保護層23は、上蓋断熱材22の摩耗(脱落)を抑えながら、断熱材3による反応管2の断熱機能を確保していると言える。
上述の実施の形態によれば、本体断熱材21の上方側開口部に上蓋断熱材22を配置するにあたり、本体断熱材21よりも高い密度の断熱材3からなる保護層23を当該上蓋断熱材22とは別部材として上蓋断熱材22の下面側周縁部における本体断熱材21との接触部に配置している。そして、保護層23について、上蓋断熱材22の熱膨張収縮に追随して変形するように、当該保護層23の材質及び密度を構成すると共に、上蓋断熱材22に一体的に設けている。そのため、本体断熱材21との摺動による上蓋断熱材22の損傷や脱落を抑制できる。
そして、保護層23の密度について、本体断熱材21の密度よりも1.5倍以上、好ましくは2倍以上に設定していることから、本体断熱材21を選択的に摩耗させることができる。また、保護層23をセラミックスの繊維により構成して、いわば断熱材3の一部として配置しているので、また保護層23の厚み寸法tを既述の範囲内に抑えているので、反応管2の断熱性を保ちながら、上蓋断熱材22の摩耗を抑制できる。従って、各々セラミックスの繊維からなる上蓋断熱材22、本体断熱材21及び保護層23を断熱材3として用いるにあたり、1000℃以上もの高温で熱処理を行う縦型熱処理装置に好適に適用できる。
また、このように上蓋断熱材22の摩耗を抑制することにより、上蓋断熱材22が突発的に破損しにくくなる。即ち、上蓋断熱材22の劣化(摩耗)は、突発的な現象ではなく、あくまでも経時的な使用に伴う現象として発生する。従って、ある任意の製造ロットの上蓋断熱材22と、当該上蓋断熱材22とは製造ロットが異なる他の上蓋断熱材22との間であっても、各々の上蓋断熱材22が経年摩耗によって劣化する期間(時期)がある程度揃う。そのため、上蓋断熱材22を定期的に交換する周期を設定しやすくなるので、装置のメンテナンスが容易になる。そして、これら上蓋断熱材22及び本体断熱材21からなる断熱材3の外側に、当該断熱材3が熱膨張収縮する時の緩衝材として機能する補助断熱材3aを配置しているので、更には補助断熱材3aと外装体30との間に隙間領域3bを設けているので、いわば断熱材3が熱膨張収縮する伸び代を確保できる。尚、外装体30の内周面には、補助断熱材3aを設けずに、隙間領域3bだけを配置しても良い。即ち、外装体30と断熱材3との間には、補助断熱材3aと隙間領域3bとの少なくとも一方が配置される。
以上の説明では、上蓋断熱材22の下面側周縁部における本体断熱材21との接触部に保護層23を形成したが、図18及び図19に示すように、当該上蓋断熱材22の下面側全体に配置しても良い。また、上蓋断熱材22の下面側に凹部22aや溝部22bを形成して反応管2の強制空冷を行うように構成したが、これら図18及び図19に示すように、上蓋断熱材22を板状に形成しても良い。
更に、反応管2としては、内管と外管とを備えた2重管構造として構成しても良い。この場合には、内管の側壁面に上下方向に伸びるスリット状の排気口を形成しても良いし、あるいは当該内管の上面側を開口させて、これら排気口や上面側の開口部を介してウエハボート1の置かれる雰囲気を排気しても良い。
また、以上述べた上蓋断熱材22、本体断熱材21及び保護層23としては、セラミックスの繊維により構成することに代えて、例えばセラミックスからなる粉末と樹脂などからなるバインダーの粉末とを互いに混合して成型及び焼結した多孔質体を各々用いても良い。更に、保護層23としては、上蓋断熱材22及び本体断熱材21を構成する材質(化合物)の少なくとも一つを含むように構成したが、例えば上蓋断熱材22及び本体断熱材21を夫々アルミナなどからなる繊維により構成すると共に、保護層23をシリカなどの繊維により構成しても良い。
W ウエハ
1 ウエハボート
2 反応管
3 断熱材
20 ヒータ
21 本体断熱材
22 上蓋断熱材
23 保護層

Claims (6)

  1. 基板保持具に棚状に積載された複数枚の基板に対して、縦型の反応管内にて熱処理を行う縦型熱処理装置において、
    前記反応管内の基板を加熱するための加熱部と、
    この加熱部により加熱される領域の外側にて前記反応管の側周面を周方向に沿って筒状に囲むように配置され、空隙を含むセラミックスにより構成された本体断熱材と、
    この本体断熱材の上方側開口部を塞ぐように配置され、前記本体断熱材と密度が揃うように構成された断熱材からなる上蓋断熱材と、
    この上蓋断熱材が熱膨張収縮する時に、当該上蓋断熱材の熱膨張収縮に追随して変形しながら前記上蓋断熱材の損傷を抑えるために、前記上蓋断熱材の下面側周縁部と前記本体断熱材との間に介在して前記上蓋断熱材の周方向に沿って環状に設けられ、前記本体断熱材よりも高い密度であって、当該上蓋断熱材とは別部材である耐火物からなる保護層と、を備え、
    この保護層は、無機成分を含む接着剤を用いて当該上蓋断熱材に接着された後、熱処理によって前記上蓋断熱材と一体化していることを特徴とする縦型熱処理装置。
  2. 前記保護層は、前記本体断熱材の密度に対して1.5倍以上の密度となるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の縦型熱処理装置。
  3. 前記保護層は、前記本体断熱材の密度に対して2倍以上の密度となるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の縦型熱処理装置。
  4. 前記保護層の厚み寸法は、前記本体断熱材と前記上蓋断熱材との間の領域を介して前記反応容器が放熱することを抑制するために、且つ前記上蓋断熱材が前記本体断熱材と摺動して摩耗することを抑制するために、1mm以上2mm以下に設定されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載の縦型熱処理装置。
  5. 前記反応管内にて行われる熱処理は、1000℃以上の熱処理であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載の縦型熱処理装置。
  6. 前記本体断熱材及び前記上蓋断熱材の外側には外装体が設けられ、
    これら本体断熱材及び上蓋断熱材と前記外装体との間には、前記本体断熱材及び前記上蓋断熱材よりも密度の小さい緩衝材と、これら本体断熱材及び上蓋断熱材が熱膨張する時の伸び代となる隙間領域との少なくとも一方が介在していることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一つに記載の縦型熱処理装置。
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