JP5906840B2 - 積層シート - Google Patents

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本発明は、積層シートに関するものであり、熱可塑性樹脂基材(A)層の少なくとも片側に、樹脂(B)層が積層されてなり、25℃における前記熱可塑性樹脂基材(A)層と樹脂(B)層との剥離強度が0.005N/10mm以上2N/10mm以下であり、100℃における前記熱可塑性樹脂基材(A)層と樹脂(B)層との剥離強度が、0.005N/10mm以上2N/10mm以下であることから、熱可塑性樹脂基材(A)層と、樹脂(B)層が、工程中は自然剥離せず、成型後に容易に剥離することができる積層シートに関する。
近年、環境意識の高まりにより、建材、自動車部品や携帯電話、電機製品などで、溶剤レス塗装、メッキ代替などの要望が高まり、フィルムを使用した加飾方法の導入が進んでおり、三次元形状基材を加飾する方法として、熱可塑性樹脂フィルムに、加飾層を積層し、成型と同時に基材に転写させる方法が知られている。この転写による加飾方法は、成型後に熱可塑性樹脂フィルムを剥離するため、熱可塑性樹脂フィルムと加飾層との剥離性が重要である。
例えば、剥離性フィルム層と、硬化性樹脂層との熱成形後の濡れ指数の差の絶対値を特定の範囲に制御することによって成形後の剥離性を制御した積層シートが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、フィルム上に、離型層、保護層、着色層及び接着剤層をこの順に積層し、離型層と保護層との剥離強度を特定の範囲とした転写加飾フィルムが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特開2008−132654号公報 特開2011−88421号公報
特許文献1、2に記載の積層シート、成型用加飾フィルムは、成型後の易剥離性は良好であるが、加熱成型時の自然剥離抑制については不充分であり、成型時に剥離性フィルム層と、硬化性樹脂層とが剥離してしまう場合があり、歩留まりの低下、品位の低下が問題となっていた。
そこで本発明の課題は、上記した問題点を解消することにある。すなわち、工程中の自然剥離抑制と、成型後の易剥離性を両立した、積層シートを提供することにある。
上記課題を解決するための本発明は、以下の構成を有する。
(1) 熱可塑性樹脂基材(A)層の少なくとも片側に、樹脂(B)層を有し、
25℃における前記熱可塑性樹脂基材(A)層と樹脂(B)層との剥離強度が、0.005N/10mm以上2N/10mm以下であり、
100℃における前記熱可塑性樹脂基材(A)層と樹脂(B)層との剥離強度が、0.005N/10mm以上2N/10mm以下であり、
前記熱可塑性樹脂基材(A)層が、環状オレフィン系樹脂を主成分とし、かつa1層とa2層とを有し、
環状オレフィン系樹脂を主成分とする環状オレフィン層(a1層)の少なくとも片面に、環状オレフィン系樹脂を主成分とする環状オレフィン層(a2層)を有する、積層シート。
(2) 下記(I)式を満たす、前記(1)に記載の積層シート
0.5≦{(M−M)−M}/(M−M)×100≦10・・・(I)
ただし、M:熱可塑性樹脂基材(A)層の質量
:積層シートの質量
:積層シートから熱可塑性樹脂基材(A)層を剥離し、140℃で30分保管した後の樹脂(B)層を含むシートの質量
(3) 樹脂(B)層が硬化性樹脂を主成分とする、前記(1)または(2)に記載の積層シート。
(4) 熱可塑性樹脂基材(A)層のガラス転移温度が80℃以上であり、
熱可塑性樹脂基材(A)層のガラス転移温度−20℃における破断伸度が200%以下であり、
熱可塑性樹脂基材(A)層のガラス転移温度+20℃における破断伸度が500%以上である、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の積層シート。
(5) 積層シートから熱可塑性樹脂基材(A)層を剥離した樹脂(B)層を含むシートの、熱可塑性樹脂基材(A)層のガラス転移温度+20℃における、100%伸長時応力(F100値)が、3MPa以下である、前記(1)〜(4)のいずれかに記載の積層シート
) X線光電子分光法によって測定される、前記熱可塑性樹脂基材(A)層の少なくとも片面の酸素原子と炭素原子のモル比(酸素原子/炭素原子)が、0.03以上0.15以下であることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の積層シート
) 前記a1層は、環状オレフィン共重合樹脂(以下、COCという)を主成分とし、
前記a2層は、環状オレフィン樹脂(以下、COPという)を主成分とする、前記(1)〜(6)のいずれかに記載の積層シート。
) a2層、a1層、a2層が、この順に直接積層された、前記(1)〜(7)のいずれかに記載の積層シート。
) 前記a1層は、a1層全体100質量%に対して、ポリエチレン系樹脂及び/又はポリプロピレン系樹脂を1〜40質量%含むことを特徴とする、前記(1)〜(8)のいずれかに記載の積層シート
10) 熱可塑性樹脂基材(A)層の少なくとも片側に、樹脂(B)層、装飾(C)層、接着(D)層を、この順に有する、前記(1)〜()のいずれかに記載の積層シート。
11) 成型用途に用いられる前記(1)〜(10)のいずれかに記載の積層シート。
本発明は、積層シートに関するものであり、熱可塑性樹脂基材(A)層の少なくとも片側に、樹脂(B)層が積層されてなり、25℃における前記熱可塑性樹脂基材(A)層と樹脂(B)層との剥離強度が、0.005N/10mm以上2N/10mm以下であり、100℃における前記熱可塑性樹脂基材(A)層と樹脂(B)層との剥離強度が、0.005N/10mm以上2N/10mm以下であることから、熱可塑性樹脂基材(A)層と樹脂(B)層とが成型時の各工程中は自然剥離せず、成型後に容易に剥離することができる積層シートに関する。
本発明は、熱可塑性樹脂基材(A)層の少なくとも片側に、樹脂(B)層を有する構成である。以下、本発明の積層シートについて具体的に説明する。
(熱可塑性樹脂基材(A)層)
本発明の積層シートは、成型性、自己保持性の観点から熱可塑性樹脂基材(A)層を有することが必要である。熱可塑性樹脂基材(A)層が含有する熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリメタクリル酸メチルなどのアクリル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、クロロトリフルオエチレン・エチレン共重合体といったフッ素系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体)系樹脂、AS(アクリロニトリル・スチレン共重合体)系樹脂などが挙げられる。
成型性、自己保持性の観点からは、熱可塑性樹脂基材(A)層が含有する熱可塑性樹脂として、環状オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体)系樹脂などが好ましく用いられ、成型後の易剥離性の観点から、環状オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂が特に好ましく用いられ、成型温度に合わせてガラス転移温度を調整できる環状オレフィン系樹脂が最も好ましく用いられる。
ここで、環状オレフィン系樹脂とは、モノマーたる環状オレフィンから重合して得られる、ポリマーの主鎖に脂環構造を有する樹脂をいう。
また、本発明における環状オレフィン系樹脂とは、環状オレフィンモノマーなどを重合させることで得られる樹脂であり、該環状オレフィン系樹脂の重合体100質量%中において、環状オレフィンモノマー由来成分の合計が50質量%以上100質量%以下である態様の重合体を意味する。
環状オレフィンモノマーとしては、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエンといった単環式オレフィン、ビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン、5−メチル−ビシクロ〔2,2,1〕ヘプタ−2−エン、5,5−ジメチル−ビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン、5−エチル−ビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン、5−ブチル−ビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン、5−エチリデン−ビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン、5−ヘキシル−ビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン、5−オクチル−ビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン、5−オクタデシル−ビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン、5−メチリデン− ビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン、5−ビニル−ビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン、5−プロペニル−ビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エンといった二環式オレフィン、トリシクロ〔4,3,0,12.5〕デカ−3,7−ジエン、トリシクロ〔4,3,0,12.5〕デカ−3−エン、トリシクロ〔4,3,0,12.5〕ウンデカ−3,7−ジエン若しくはトリシクロ〔4,3,0,12.5〕ウンデカ−3,8−ジエン又はこれらの部分水素添加物(又はシクロペンタジエンとシクロヘキセンの付加物) であるトリシクロ〔4,3,0,12.5〕ウンデカ−3−エン;5−シクロペンチル−ビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン、5−シクロヘキシル−ビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン、5−シクロヘキセニルビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン、5−フェニル−ビシクロ〔2,2,1〕ヘプタ−2−エンといった三環式オレフィン、テトラシクロ〔4,4,0,12.5,17.10〕ドデカ−3−エン、8−メチルテトラシクロ〔4,4,0,12.5,17.10〕ドデカ−3−エン、8−エチルテトラシクロ〔4,4,0,12.5,17.10〕ドデカ−3−エン、8−メチリデンテトラシクロ〔4,4,0,12.5,17.10〕ドデカ−3−エン、8−エチリデンテトラシクロ〔4,4,0,12.5,17.10〕ドデカ−3−エン、8−ビニルテトラシクロ〔4,4,0,12.5,17.10〕ドデカ−3−エン、8−プロペニル−テトラシクロ〔4,4,0,12.5,17.10〕ドデカ−3−エンといった四環式オレフィン、8−シクロペンチル−テトラシクロ〔4,4,0,12.5,17.10〕ドデカ−3−エン、8−シクロヘキシル−テトラシクロ〔4,4,0,12.5,17.10〕ドデカ−3−エン、8−シクロヘキセニル−テトラシクロ〔4,4,0,12.5,17.10〕ドデカ−3−エン、8−フェニル−シクロペンチル−テトラシクロ〔4,4,0,12.5,17.10〕ドデカ−3−エン、テトラシクロ〔7,4,13.6,01.9,02.7〕テトラデカ−4,9,11,13−テトラエン、テトラシクロ〔8,4,14.7,01.10,03.8〕ペンタデカ−5,10,12,14−テトラエン、ペンタシクロ〔6,6,13.6,02.7,09.14〕−4−ヘキサデセン、ペンタシクロ〔6,5,1,13.6,02.7,09.13〕−4−ペンタデセン、ペンタシクロ〔7,4,0,02.7,13.6,110.13〕−4−ペンタデセン、ヘプタシクロ〔8,7,0,12.9,14.7,111.17,03.8,012.16〕−5−エイコセン、ヘプタシクロ〔8,7,0,12.9,03.8,14.7,012.17,113.16〕−14−エイコセン、シクロペンタジエンといった四量体等の多環式オレフィンなどが挙げられる。これらの環状オレフィンモノマーは、それぞれ単独であるいは2種以上組合せて用いることができる。
環状オレフィンモノマーとしては、上記した中でも、生産性、表面性の観点から、ビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン(以下、ノルボルネンとする)、トリシクロ〔4,3,0,12.5〕デカ−3−エンなどの、炭素数10の三環式オレフィン(以下、トリシクロデセンとする)、テトラシクロ〔4,4,0,12.5,17.10〕ドデカ−3−エンなどの、炭素数12の四環式オレフィン(以下、テトラシクロドデセンとする)、シクロペンタジエン、または1,3−シクロヘキサジエンが好ましく用いられる。
環状オレフィン系樹脂は、環状オレフィン系樹脂の重合体100質量%中に、環状オレフィンモノマー由来成分の合計が50質量%以上100質量%以下でありさえすれば、上記環状オレフィンモノマーのみを重合させた樹脂、上記環状オレフィンモノマーと鎖状オレフィンモノマーとを共重合させた樹脂、のいずれの樹脂でも構わない。
環状オレフィンモノマーのみを重合させた樹脂の製造方法としては、環状オレフィンモノマーの付加重合、あるいは開環重合などの公知の方法が挙げられ、例えば、ノルボルネン、トリシクロデセン、テトラシクロデセン、およびその誘導体を開環メタセシス重合させた後に水素化させる方法、ノルボルネンおよびその誘導体を付加重合させる方法、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエンを1,2−、1,4−付加重合させた後に水素化させる方法などが挙げられる。これらの中でも、生産性、表面性、成型性の観点から、ノルボルネン、トリシクロデセン、テトラシクロデセン、およびその誘導体を開環メタセシス重合させた後に水素化させた樹脂が最も好ましい。
環状オレフィンモノマーと鎖状オレフィンモノマーとを共重合させた樹脂の場合、好ましい鎖状オレフィンモノマーとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−へキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−へキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等が挙げられる。これらの中でも、生産性、コストの観点から、エチレンを特に好ましく用いることができる。また、環状オレフィンモノマーと鎖状オレフィンモノマーとを共重合させた樹脂の製造方法としては、環状オレフィンモノマーと鎖状オレフィンモノマーの付加重合などの公知の方法が挙げられ、例えば、ノルボルネンおよびその誘導体とエチレンを付加重合させる方法などが挙げられる。中でも、生産性、表面性、成型性の観点から、ノルボルネンとエチレンの共重合体が最も好ましい。

また、本発明の熱可塑性樹脂基材(A)層が環状オレフィン系樹脂を含有する場合、熱可塑性樹脂基材(A)層において環状オレフィン系樹脂が主成分であることが好ましい。ここで主成分とは、熱可塑性樹脂基材(A)層の全成分の合計を100質量%とした際に、環状オレフィン系樹脂を50質量%以上100質量%以下含有することを意味する。そして熱可塑性樹脂基材(A)層において環状オレフィン系樹脂が主成分の場合には、熱可塑性樹脂基材(A)層は、環状オレフィン系樹脂のみから構成されても、その他のオレフィン系樹脂を含有しても、またオレフィン系樹脂以外の樹脂を含有してもよい。
環状オレフィン系樹脂以外のオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、メタロセン触媒を使用して重合したエチレン−α・オレフィン共重合体といった各種ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体といった各種ポリプロピレン系樹脂、メチルペンテンポリマー等のポリオレフィン系樹脂を用いることができる。また、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1などのα−オレフィンモノマーからなる重合体、該α−オレフィンモノマーからなるランダム共重合体、該α−オレフィンモノマーからなるブロック共重合体なども使用することができる。中でも、環状オレフィン系樹脂との相溶性の観点から、環状オレフィン系樹脂以外のオレフィン系樹脂としては、各種ポリエチレン系樹脂、各種ポリプロピレン系樹脂が好ましく用いられる。
本発明において、環状オレフィン系樹脂を含む熱可塑性樹脂基材(A)層は、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂を含有させることで、押出工程でのせん断応力を低下させることができ、架橋による異物の発生を抑制させることが可能となり、さらに靱性も向上させることができるため好ましい。一方、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂の含有量が多くなると、自己保持性が低下傾向となる。品位、靱性、自己保持性の観点から、ポリエチレン系樹脂及び/又はポリプロピレン系樹脂の含有量は、熱可塑性樹脂基材(A)層の全成分の合計100質量%に対して、1〜40質量%とすることが好ましく、1〜30質量%であればさらに好ましく、1〜20質量%であれば最も好ましい。また、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂の中でも、環状オレフィン系樹脂との相溶性の観点から、ポリエチレン系樹脂が好ましく用いられ、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレンが特に好ましく用いられ、線状低密度ポリエチレンが最も好ましく用いられる。なお、熱可塑性樹脂基材(A)層がポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂を共に含有する場合には、ポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂の合計量が前述の範囲、つまり熱可塑性樹脂基材(A)層の全成分の合計100質量%に対して1〜40質量%とすることが好ましく、1〜30質量%であればさらに好ましく、1〜20質量%であれば最も好ましい。
なお、本発明におけるポリエチレン系樹脂とは、ポリエチレン系樹脂の重合体100質量%中において、エチレン由来成分の合計が50質量%以上100質量%以下である態様の重合体を意味する。
また、本発明におけるポリプロピレン系樹脂とは、ポリプロピレン系樹脂の重合体100質量%中において、プロピレン由来成分の合計が50質量%以上100質量%以下である態様の重合体を意味する。
本発明において、環状オレフィン系樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂基材(A)層は、自己保持性の観点から、全厚みを100%として、ガラス転移温度が80℃以上の層の合計厚みを50%以上とすることが好ましい。ここで、「ガラス転移温度が80℃以上の層の合計厚み」とは、ガラス転移温度が80℃以上の層が1つの場合はその層の厚みのことであり、ガラス転移温度が80℃以上の層が複数ある場合は、それらの層の厚みの合計のことである。各層のガラス転移温度の制御方法は特に限定されないが、例えば、環状オレフィン系樹脂として、ノルボルネンとエチレンの共重合体を使用する場合、層中のノルボルネンの含有量を増加させていくことでガラス転移温度を高めることができる。さらに、ノルボルネンの含有量の異なる2種類の環状オレフィン系樹脂をブレンドさせることによっても層のガラス転移温度を調整することができる。また、例えば、環状オレフィン系樹脂として、ノルボルネンの誘導体を開環メタセシス重合させた後に水素化させた樹脂を使用する場合、ノルボルネンの誘導体の分子量を大きくする(例えば、側鎖の分子量を大きくする、あるいは二環構造にする)ことにより、ガラス転移温度を高くすることができる。さらに、ガラス転移温度の異なる2種類の、ノルボルネンの誘導体を開環メタセシス重合させた後に水素化させた樹脂をブレンドさせることによっても層のガラス転移温度を調整することができる。
全厚みを100%とした際に、ガラス転移温度が85℃以上の層の合計厚みが50%以上であればさらに好ましく、ガラス転移温度が90℃以上の層の合計厚みが50%以上であれば特に好ましい。なお、1つの層の中に複数の樹脂が混合されている場合などのように、ガラス転移温度が複数存在する場合は、高温側のガラス転移温度をその層のガラス転移温度とする。
本発明において、熱可塑性樹脂基材(A)層が、環状オレフィン系樹脂を主成分とする場合、成型時の各工程中の自然剥離抑制の観点から、X線光電子分光法によって測定される、前記熱可塑性樹脂基材(A)層の少なくとも片面の酸素原子と炭素原子のモル比(酸素原子/炭素原子)が、0.03以上0.15以下であることが好ましい。ここで、本発明における酸素原子と炭素原子のモル比(酸素原子/炭素原子)とは、超高真空中においたフィルムの少なくとも片面に軟X線を照射し、該面から放出される光電子をアナライザー(光電子脱出角度:45°)で検出し、得られたデータに対してスペクトルのスムージング(9−point smoothing)、横軸補正(C1sメインピークを284.6eVに合わせる)を行って求めた、酸素原子と炭素原子のモル比を指す。
酸素原子と炭素原子のモル比(酸素原子/炭素原子)は、より好ましくは、0.04以上0.14以下であり、0.05以上0.13以下であれば最も好ましい。環状オレフィン系樹脂は、離型性に非常に優れているため成型後の易剥離性は良好であるが、離型性が優れるがために、工程中に自然剥離を発生してしまう場合がある。工程中の自然剥離を抑制するためには、少なくとも片面の酸素原子と炭素原子のモル比(酸素原子/炭素原子)を0.03以上0.15以下とすることで、成型後の易剥離性を損なうことなく、工程中の自然剥離を抑制することが可能となる。
環状オレフィン系樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂基材(A)層の、X線光電子分光法によって測定される、前記熱可塑性樹脂基材(A)層の少なくとも片面の酸素原子と炭素原子のモル比(酸素原子/炭素原子)を、0.03以上0.15以下にする方法は特に限定されないが、環状オレフィン系樹脂を含有する熱可塑性樹脂基材(A)層表面に改質処理を行う方法、熱可塑性樹脂基材(A)層に極性基を含有する環状オレフィン系樹脂、もしくは極性基を含有する環状オレフィン系樹脂以外のポリオレフィン系樹脂を含有させ、それらの種類、含有量を変える方法などが挙げられる。中でも、コスト、簡便性の観点から、環状オレフィン系樹脂を含有する熱可塑性樹脂基材(A)層表面に改質処理を行う方法が好ましい。
本発明において、熱可塑性樹脂基材(A)層表面に行う改質処理の方法としては、特に限定されないが、例えば、コロナ放電処理、紫外線照射処理、プラズマ処理、レーザー処理、火炎処理、高周波処理、グロー放電処理、オゾン酸化処理などが挙げられ、コスト、簡便性の観点から、コロナ放電処理、紫外線照射処理が好ましく用いられ、特に高精度に熱可塑性樹脂基材(A)層の片面の酸素原子と炭素原子のモル比(酸素原子/炭素原子)を、0.03以上0.15以下に制御できるため、紫外線照射処理が好ましく用いられる。紫外線照射処理、コロナ放電処理は空気、窒素、二酸化炭素、及びそれらの混合物の中で行ってもよい。
熱可塑性樹脂基材(A)層表面の改質処理の方法として紫外線照射処理を用いる場合、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、エキシマランプなど各種光源を使用することができる。熱可塑性樹脂基材(A)層の少なくとも片面の酸素原子と炭素原子のモル比(酸素原子/炭素原子)を、0.03以上0.15以下に制御するための好ましい積算光量は、メタルハライドランプや高圧水銀ランプを用いる場合は、300〜390nmにおける積算光量を1,000mJ/cm以上とすることが好ましい。一方で、積算光量を高くすると発熱が大きくなるため、熱可塑性樹脂基材(A)層へのダメージを考慮すると、20,000mJ/cm以下とすることが好ましい。また、低圧水銀ランプを用いる場合は、230〜280nmにおける積算光量は200mJ/cm以上1,000mJ/cm以下であることが好ましく、400mJ/cm以上800mJ/cm以下であることがより好ましい。また、エキシマランプの場合は、140〜227nmにおける積算光量は、10mJ/cm以上130mJ/cm以下であることが好ましく、20mJ/cm以上65mJ/cm以下であることがより好ましく、30mJ/cm以上50mJ/cm以下であることが特に好ましい。
熱可塑性樹脂基材(A)層表面の改質処理の方法として紫外線照射処理を用いる場合、熱可塑性樹脂基材(A)層の熱変形抑制の観点から、熱可塑性樹脂基材(A)層への照射時間の合計は短いほうが好ましい。具体的には、60秒以下が好ましく、より好ましくは30秒以下、特に好ましくは20秒以下である。また、照射時間の合計は、改質処理を進行させる観点から、2秒以上が好ましい。ここで、照射時間の合計とは、紫外線ランプからの紫外線を受ける空間を通過した時間の合計を指し、連続で照射しても、照射と非照射を交互に繰り返しても、いずれでも構わないが、熱可塑性樹脂基材(A)層の熱変形が大きい場合は照射と非照射を交互に繰り返し、非照射の間に熱可塑性樹脂基材(A)層を冷却することが好ましい。
熱可塑性樹脂基材(A)層の改質処理の方法としてコロナ放電処理を用いる場合、熱可塑性樹脂基材(A)層の酸素原子と炭素原子のモル比(酸素原子/炭素原子)はコロナ放電処理時の強度(E値)を変更することにより制御が可能である。ここで、E値=W/(D×V)で求められ、Wは処理強度(W)、Dは処理幅(m)、Vはフィルム速度(m/分)である。
熱可塑性樹脂基材(A)層の改質処理の方法としてコロナ放電処理を用いる場合、E値を大きくしすぎると、熱可塑性樹脂基材(A)層と樹脂(B)層の剥離が重くなったり、強い力を加えて剥離した際に生じる剥離痕により成型体の外観が低下する場合がある。また、E値を小さくしすぎると、工程中に熱可塑性樹脂基材(A)層と樹脂(B)層との自然剥離が起こり成型後の表面外観が低下する場合がある。そのため、コロナ放電処理を用いた場合のE値は1〜40W・分/mが好ましく、2〜30W・分/mがより好ましく、3〜15W・分/mが特に好ましい。
本発明において、熱可塑性樹脂基材(A)層に、極性基を含有する環状オレフィン系樹脂、もしくは極性基を含有する環状オレフィン系樹脂以外のポリオレフィン系樹脂を含有させる場合、環状オレフィン系樹脂または、環状オレフィン系樹脂以外のポリオレフィン系樹脂に含有される極性基としては、例えば、カルボキシル基、酸無水物基、エポキシ基、アミド基、エステル基、ヒドロキシル基等が上げられる。
環状オレフィン系樹脂に極性基を含有させる方法としては、極性基を有する不飽和化合物をグラフト及び/又は共重合させる方法などが挙げられる。極性基を有する不飽和化合物としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキル(炭素数1〜10)エステル、マレイン酸アルキル(炭素数1〜10)エステル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル等を挙げることができる。
極性基を含有する環状オレフィン系樹脂中の極性基は、コスト、押出時の取扱い性の観点から、該樹脂中の各脂環部分(例えば、環状オレフィン系樹脂がノルボルネンとエチレンの共重合体の場合、ノルボルネンの部分)の個数と同個数〜3倍の個数含まれる状態が好ましく、同個数であることがより好ましい。
極性基を含有する環状オレフィン系樹脂としては、例えば、『ARTON』シリーズ(JSR社)などが挙げられる。
また、熱可塑性樹脂基材(A)層に、環状オレフィン系樹脂以外の極性基を含有するポリオレフィン系樹脂を含有する場合、使用されるポリオレフィン系樹脂としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メチルメタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体などのような極性基を含有するポリオレフィン系共重合樹脂や、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、メタロセン触媒を使用して重合したエチレン−α・オレフィン共重合体、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、その他α−オレフィンモノマーからなるランダム共重合体、ブロック共重合体等のポリオレフィン系樹脂を、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、フマル酸その他の不飽和カルボン酸による変性、もしくは樹脂の酸化分解により変性させたポリオレフィン系樹脂を使用することができる。
なお、α−オレフィンモノマーとしては、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1などが挙げられ、このようなα−オレフィンモノマーからなるランダム共重合体としては、例えば、プロピレン共重合体では、プロピレンと上記α−オレフィンモノマー中からプロピレンを除く、1種以上のα−オレフィンモノマーとのランダムに共重合されたポリマーであって、公知の方法によりプロピレンを除く1種以上のα−オレフィンモノマーを2〜15質量%の範囲で共重合したポリプロピレンである。
中でも、環状オレフィン系樹脂との相溶性の観点から、ポリオレフィン系樹脂を無水マレイン酸で変性したポリオレフィン系樹脂が特に好ましい。
かかる樹脂としては、例えば、三洋化成(株)製“ユーメックス”、三井化学(株)製“アドマー”、三菱化学(株)製“モディック”、東洋化成(株)製“トーヨータック”、デュポン(株)製“フサボンド”などの各種樹脂が挙げられる。また、樹脂の酸化分解により変性されたポリオレフィン樹脂としては、三洋化成(株)製“ビスコール”、“サンワックス”などが挙げられる。
本発明の熱可塑性樹脂基材(A)層の、酸素原子と炭素原子のモル比(酸素原子/炭素原子)が0.03以上0.15以下である面の表面自由エネルギーは、特に易剥離性が要求される用途においては26以上38mN/m以下であることが好ましく、特に工程中、工程後の自然剥離抑制が要求される用途については、38以上42N/m以下であることが好ましい。
なお、本発明は、熱可塑性樹脂基材(A)層の少なくとも片側に樹脂(B)層を有するシートであるが、熱可塑性樹脂基材(A)層が、環状オレフィン系樹脂を含有する場合には、熱可塑性樹脂基材(A)層の酸素原子と炭素原子のモル比(酸素原子/炭素原子)が、0.03以上0.15以下である面に、樹脂(B)層を有することが好ましい。
本発明において、熱可塑性樹脂基材(A)層が、環状オレフィン系樹脂を主成分とする場合、熱可塑性樹脂基材(A)層がa1層とa2層とを有し、環状オレフィン系樹脂を主成分とする環状オレフィン層(a1層)の少なくとも片面に、環状オレフィン系樹脂を主成分とする環状オレフィン層(a2層)を有することが好ましい。
a1層について、環状オレフィン系樹脂を主成分とするとは、a1層の全成分の合計を100質量%として、環状オレフィン系樹脂を50質量%以上100質量%以下含有することを意味する。a1層は、該層の全成分の合計を100質量%として、環状オレフィン系樹脂を70質量%以上100質量%以下含む態様がより好ましく、80質量%以上100質量%以下含む態様であればさらに好ましく、90質量%以上100質量%以下含む態様であれば特に好ましい。
a2層について、環状オレフィン系樹脂を主成分とするとは、a2層の全成分の合計を100質量%として、環状オレフィン系樹脂を50質量%以上100質量%以下含有することを意味する。a2層は、該層の全成分の合計を100質量%として、環状オレフィン系樹脂を70質量%以上100質量%以下含む態様がより好ましく、80質量%以上100質量%以下含む態様であればさらに好ましく、90質量%以上100質量%以下含む態様であれば特に好ましい。なお、a2層が1層の場合には、そのa2層の全成分の合計を100質量%として、環状オレフィン系樹脂を50質量以上100質量%以下含有する場合に主成分となるが、a2層が2層存在する場合には、各層がそれぞれ環状オレフィン系樹脂を主成分としているかについて判断する。つまり、2層存在するa2層の一方について、該a2層の全成分の合計を100質量%とした際に、環状オレフィン系樹脂を50質量以上100質量%以下含有している場合に、該a2層が主成分となり、他方のa2層についても同様に判断する。

環状オレフィン系樹脂は、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂と比較すると、靱性が低いが、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂を含有させることで、靱性を改良することができる。一方で、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂を含有させると表面外観が低下傾向となる。このため、靱性と表面外観を両立するために、熱可塑性樹脂基材(A)層は、環状オレフィン系樹脂を主成分とする環状オレフィン層(a1層)の少なくとも片面に、環状オレフィン系樹脂を主成分とする環状オレフィン層(a2層)を有することが好ましく、前記a1層は、(a1層)全体100質量%に対して、ポリエチレン系樹脂及び/又はポリプロピレン系樹脂を1〜40質量%含むことが好ましい。ここで、a1層がポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂を含む場合には、a1層は、(a1層)全体100質量%に対して、ポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂の合計を1〜40質量%含むことが好ましい。
また、靱性と自己保持性の観点からは、(a1層)中のポリエチレン系樹脂及び/又はポリプロピレン系樹脂は、(a1層)全体を100質量%として、1〜30質量%であれば好ましく、1〜20質量%であれば最も好ましい。
また表面外観の観点から、環状オレフィン系樹脂を主成分とする環状オレフィン層(a2層)中のポリエチレン系樹脂及び/又はポリプロピレン系樹脂の含有量は、(a2層)全体100質量%に対して、0質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0質量%以上5質量%以下であればさらに好ましく、ポリエチレン系樹脂及び/又はポリプロピレン系樹脂が0質量%であることが最も好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂基材(A)層がa1層とa2層とを有する構成とした場合、靱性、自己保持性、表面外観の観点から、積層比(a2層の合計厚み/a1層の厚み)は、0.25〜1であることが好ましい。なお、積層比(a2層の合計厚み/a1層の厚み)は、a2層が2層存在する場合には、2層存在するa2層の厚みの合計/a1層の厚み、であり、積層比(a2層の合計厚み/a1層の厚み)は、a2層が1層の場合には、a2層の厚み/a1層の厚み、である。積層比(a2層の合計厚み/a1層の厚み)は、0.4〜0.8であればさらに好ましい。積層比は、熱可塑性樹脂基材(A)層の断面を走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡、光学顕微鏡などで500倍以上10,000倍以下の倍率で観察することによって、測定することができる。
また、熱可塑性樹脂基材(A)層は、取扱い性の観点から、a2層、a1層、a2層が、この順に直接積層された構成であることが好ましい。ここで、直接積層されたとは、a1層とa2層との間に接着層等の別の層が介在することなく、積層している状態を意味する。
本発明において、前記a1層は、環状オレフィン共重合樹脂(以下、COCという)を主成分とし、前記a2層は、環状オレフィン樹脂(以下、COPという)を主成分とすることが好ましい。該構成とすることで、特に優れた成型性、表面外観、靱性を達成することができる。
本発明において、COPとは、「主鎖に環状オレフィンを含有した繰り返し単位」のみを重合させた態様の樹脂を意味する。また本発明におけるCOCとは、「主鎖に環状オレフィンを含有した繰り返し単位」と「主鎖に環状オレフィンを含有しないオレフィンからなる繰り返し単位」の少なくとも2種類以上の繰り返し単位を重合させた態様の樹脂を意味する(環状オレフィンを含有した繰り返し単位を環状オレフィンモノマーということがある)。
ここで、a1層においてCOCを主成分とするとは、a1層の全成分の合計を100質量%として、a1層がCOCを50質量%以上100質量%以下含有することを意味する。a1層の全成分の合計を100質量%として、COCを70質量%以上100質量%以下含む態様がより好ましく、80質量%以上100質量%以下含む態様であればさらに好ましく、90質量%以上100質量%以下含む態様であれば特に好ましい。
また、a2層においてCOPを主成分とするとは、熱可塑性樹脂基材(A)層のa2層の全成分の合計を100質量%として、COPが50質量以上100質量%以下含有することを意味する。a2層の全成分の合計を100質量%として、COPを70質量%以上100質量%以下含む態様がより好ましく、80質量%以上100質量%以下含む態様であればさらに好ましく、90質量%以上100質量%以下含む態様であれば特に好ましい。なお、a2層が1層の場合には、そのa2層の全成分の合計を100質量%として、COPを50質量以上100質量%以下含有する場合に主成分となるが、a2層が2層存在する場合には、各層がそれぞれCOPを主成分としているかについて判断する。つまり、2層存在するa2層の一方について、該a2層の全成分の合計を100質量%とした際に、COPを50質量以上100質量%以下含有している場合に、該a2層が主成分となり、他方のa2層についても同様に判断する。
本発明において、熱可塑性樹脂基材(A)層が含有する熱可塑性樹脂として好適に用いられるポリエステル系樹脂とは、ジカルボン酸成分とグリコール成分とで基本的に構成される。
かかるジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホンジカルボン酸、フタル酸などの芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸などの脂肪族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、パラオキシ安息香酸などのオキシカルボン酸などを挙げることができる。また、ジカルボン酸エステル誘導体としては上記ジカルボン酸化合物のエステル化物、たとえばテレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル、テレフタル酸2−ヒドロキシエチルメチルエステル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、ダイマー酸ジメチルなどを挙げることができるが、取扱い性の点で、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸が好ましく使用される。
また、グリコール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族ジヒドロキシ化合物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリオキシアルキレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、スピログリコールなどの脂環族ジヒドロキシ化合物、ビスフェノールA、ビスフェノールSなどの芳香族ジヒドロキシ化合物などが挙げられるが、取扱い性の点で、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールが好ましく使用される。
本発明の熱可塑性樹脂基材(A)層として用いられるポリエステル系樹脂は、具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリヘキサメチレンテレフタレート(PHT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリプロピレンナフタレート(PPN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCT)などが挙げられる。また、これらの共重合樹脂も好ましく用いられ、特に、1,4−シクロヘキサンジメタノール共重合PET、スピログリコール共重合PET、ネオペンチルグリコール共重合PET、イソフタル酸共重合PET、2,6−ナフタレンジカルボン酸共重合PETが取り扱い性の点から好ましく用いられる。これらの芳香族ポリエステルは、単独で用いてもよいし、2種類以上の芳香族ポリエステルを混合して用いても構わない。
成型後の易剥離性の観点から、熱可塑性樹脂基材(A)層中にはPTT、PBTを主成分とする層を有していることが好ましく、PBTを主成分とする層を有していることが特に好ましい。ここでポリエステル系樹脂を含む熱可塑性樹脂基材(A)層における主成分とは、該層の全成分の合計を100質量%とした際に、50質量%以上100質量%以下含有する樹脂のことを意味し、以下同様である。
本発明において、熱可塑性樹脂基材(A)層が、ポリエステル系樹脂を含有する場合、成型後の易剥離性と工程中の自然剥離抑制の観点から、少なくとも片面の表面自由エネルギーが25mN/m以上42mN/m以下であることが好ましく、30mN/m以上40mN/m以下であればさらに好ましい。ポリエステル系樹脂を含有する熱可塑性樹脂基材(A)層の少なくとも片面の表面自由エネルギーを25mN/m以上42mN/m以下にする方法は特に限定されないが、ポリエステル系樹脂に添加剤を含有させる方法、コーティング層を積層する方法などが挙げられる。
本発明において、ポリエステル系樹脂を含有する熱可塑性樹脂基材(A)層中に好ましく使用される添加剤としては、シリコーン系樹脂、ワックス化合物、フッ素系樹脂、高級脂肪酸エステル類および高級脂肪酸塩類などである。また、ポリエステル系樹脂を含有する熱可塑性樹脂基材(A)層に好ましく積層されるコーティング層としては、長鎖アルキルアクリレート系樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、フッ素樹脂、セルロース誘導体、尿素樹脂、ポリオレフィン系樹脂、パラフィン系離型剤などである。なお、本発明において、熱可塑性樹脂基材(A)層が、ポリエステル系樹脂を含有する場合、表面自由エネルギーが25mN/m以上42mN/m以下である面に、樹脂(B)層を有することが好ましい。
また、本発明において、ポリエステル系樹脂を含有する熱可塑性樹脂基材(A)層は、成型性の観点から、面配向係数が0.00〜0.05の範囲であることが好ましく、0.00〜0.03の範囲にあることがさらに好ましい。ここで、本発明における面配向係数とは、fn=(Nx+Ny)/2−Nz(Nx、NyおよびNzは、それぞれ長手方向の屈折率、幅方向の屈折率および厚み方向の屈折率を表し、アッベ屈折率計を用いて測定される値である。)
本発明において、熱可塑性樹脂基材(A)層が、ポリエステル系樹脂を含有する場合、ポリエステル系樹脂を主成分とするポリエステル層(a3層)の少なくとも片面に、ポリエステル系樹脂を主成分とするポリエステル層(a4層)を有することが好ましい。
ポリエステル層(a3層)はPETを主成分とし、ポリエステル層(a4)をPTT、又は、PBTを主成分とすることで、優れた成型性と成型後の易剥離性を達成するために好ましい態様である。
なお、a3層について、ポリエステル系樹脂を主成分とするとは、a3層の全成分の合計を100質量%として、ポリエステル系樹脂を50質量%以上100質量%以下含有することを意味する。同様に、a4層について、ポリエステル系樹脂を主成分とするとは、a4層の全成分の合計を100質量%として、ポリエステル系樹脂を50質量%以上100質量%以下含有することを意味する。
熱可塑性樹脂基材(A)層を、a3層の少なくとも片面にa4層を有する構成とした場合、成型性、成型後の易剥離性の観点から積層比(a4層の合計厚み/a3層の厚み)は、0.05〜0.5であることが好ましい。なお、積層比(a4層の合計厚み/a3層の厚み)は、a4層が2層存在する場合には、2層存在するa4層の厚みの合計/a3層の厚み、であり、積層比(a4層の合計厚み/a3層の厚み)は、a4層が1層の場合には、a4層の厚み/a3層の厚み、である。)。積層比(a4層の合計厚み/a3層の厚み)は、0.1〜0.4であればさらに好ましい。積層比は、熱可塑性樹脂基材(A)層の断面を走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡、光学顕微鏡などで500倍以上10000倍以下の倍率で観察することによって、測定することができる。また、取扱い性の観点から、a4層、a3層、a4層が、この順に直接積層された構成であることが好ましい。

(樹脂(B)層)
本発明の積層シートは、成型加飾後の成型体の外観、耐久性の観点から、熱可塑性樹脂基材(A)層の少なくとも片側に樹脂(B)層を有することが必要である。樹脂(B)層が含有する樹脂としては、特に限定されないが、耐候性、耐傷性、耐衝撃性、耐水性といった耐久性の付与するために、硬化性樹脂を主成分とすることが好ましい。ここで、硬化性樹脂とは、熱や電子線を加えることで、三次元架橋して硬化する樹脂のことを指す。樹脂(B)層において、硬化性樹脂を主成分とするとは、樹脂(B)層の全成分100質量%において、50質量%以上100質量%以下の硬化性樹脂を含有していることを指す。
樹脂(B)層が、硬化性樹脂を主成分とする場合、外観、耐久性の観点から、成型後には硬化していることが好ましいが、一方で、成型前に硬化していると成型追従性が低下してしまうため、好ましくない。このため、成型前は、成型性を保持でき、取り扱い性が低下しない程度に半硬化状態であることが好ましい。
硬化性樹脂として好ましく使用される熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、フェノキシ系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などのうちから選択された1種以上を混合したものを用いてもよい。
また、硬化性樹脂として好適な電子線硬化性樹脂としては、例えばウレタンアクリレート系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、シリコーンアクリレート系樹脂、エポキシアクリレート系樹脂などのうちから選択された1種以上である。また電子線硬化性樹脂を用いる際には、必要な場合に、光開始剤などを混合したものを用いてもよい。
これらの熱硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂には、必要に応じて、硬化剤、硬化促進剤、粘結剤、表面調整剤、顔料、可塑剤、紫外線吸収剤、光安定剤などを混合してもよい。
また、前記熱硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂は、共重合体であってもよく、または異種の樹脂の混合体であっても良い。
本発明において、樹脂(B)層の厚みとしては、外観、耐久性の観点から2μm以上100μm以下であることが好ましく、5μm以上80μm以下であることがさらに好ましく、10μm以上70μm以下であることが最も好ましい。
本発明の樹脂(B)層は、熱可塑性樹脂基材(A)層の片側に(つまり、熱可塑性樹脂基材(A)層の片面、若しくは、熱可塑性樹脂基材(A)層と別の層とからなる積層体中の別の層の片面上に)、樹脂(B)層を形成するために用いる原料組成物を塗工することによって得ることができる。本発明の樹脂(B)層を形成するために用いる原料組成物の塗工方法については特に限定されないが、例えば、グラビアコーター、バーコーター、コンマコーター、ダイコーター、ナイフコーターなどを用いて塗工することができる。

(装飾(C)層)
本発明の積層シートは、意匠性の観点から装飾(C)層を有する構成にすることが好ましい。特に、熱可塑性樹脂基材(A)層の少なくとも片側に、樹脂(B)層、装飾(C)層、接着(D)層を、この順に有することが好ましい。
本発明において装飾(C)層とは、熱可塑性樹脂基材(A)層及び、樹脂(B)層とは別の層であり、着色、凹凸、柄模様、木目調、金属調、パール調などの装飾を付加させることを目的とした層であり、例えばバインダー樹脂と着色剤とによって、構成されたり、金属調の場合は、金属薄膜層により構成される。
装飾(C)層が、バインダー樹脂と着色剤を含む構成の場合、前記バインダー樹脂としては、熱可塑性樹脂及び/又は硬化性樹脂を用いることができる。バインダー樹脂として好適な熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂などの樹脂に溶剤を混合撹拌したものを用いることができる。また、バインダー樹脂として好適な硬化性樹脂としては、外観、耐久性の観点から、成型後には硬化していることが好ましいが、一方で、成型前に硬化していると成型追従性が低下してしまうため、好ましくない。このため、成型前は、成型性を保持でき、取り扱い性が低下しない程度に半硬化状態であることが好ましい。なお、バインダー樹脂は、硬化性樹脂を主成分とすることが好ましい。ここで、バインダー樹脂が硬化性樹脂を主成分とするとは、バインダー樹脂の全成分100質量%において、50質量%以上100質量%以下の硬化性樹脂を含有していることを指す。硬化性樹脂としては、前記樹脂(B)層で挙げられた樹脂が好ましく用いられる
また、バインダー樹脂としては、共重合体であってもよく、または異種の樹脂の混合体であっても良い。本発明では、取り扱いが容易で、かつ安価であるため、熱硬化性樹脂を好ましく用いられ、特に、成型性の点から、ウレタン樹脂並びにアクリル樹脂とを含む混合体をバインダー樹脂として使用することが好ましい。

装飾(C)層は、成型後の耐久性、表面光沢性の観点から、成型後には硬化していることが好ましいが、一方で、成型前に硬化していると成型追従性が低下してしまうため、好ましくない。このため、成型前は、成型性を保持でき、取り扱い性が低下しない程度に半硬化状態であることが好ましい。
また、着色剤としては、分散性、外観、隠蔽性の観点から、特に、カーボンブラック、黒色酸化鉄といった黒色顔料、酸化チタン、硫酸バリウム、亜鉛華、硫酸亜鉛といった白色顔料、金属粉顔料、金属箔顔料、金属蒸着箔顔料といった金属調顔料を、装飾(C)層の全成分100質量%において、5質量%以上30質量%以下含有させることが好ましい。
また、装飾(C)層が金属薄膜層の場合、金属簿膜の作製方法としては特に限定されないが、真空蒸着法、EB蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などを用いることができる。使用される金属としては成型追従性、外観の観点から融点が150〜400℃である金属化合物を蒸着して使用することが好ましい。融点が150〜400℃である金属化合物としては特に限定されるものではないが、インジウム(157℃)やスズ(232℃)が好ましく用いることができる。
本発明の装飾(C)層の厚みとしては、装飾(C)層がバインダー樹脂と着色剤を含む構成の場合は、下地隠蔽性、厚みムラの観点から、0.5μm以上50μm以下とすることが好ましく、1μm以上40μm以下であれば、最も好ましい。また、装飾(C)層が金属薄膜層の場合は、成型性、成型後の外観の観点から、装飾(C)層の厚みは0.05μm以上1.5μm以下であれば好ましく、0.1μm以上1μm以下であればさらに好ましい。

(接着(D)層)
本発明の積層シートは、被着体との密着性の観点から、接着(D)層を有することが好ましい。接着(D)層としては、被着体に対して接着性を有する層を意味する。そして接着(D)層は、被着体の素材に合わせて適宜調整することが好ましいが、例えば、フェノール樹脂系接着剤、レゾルシノール樹脂系接着剤、フェノール−レゾルシノール樹脂系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤、ユリア樹脂系接着剤、ポリウレタン系接着剤およびポリアロマチック系接着剤等の熱硬化性樹脂接着剤や、不飽和ポリエステルやアクリレート等のラジカル重合性組成物からなるラジカル反応型の接着剤、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、塩化ビニル、ナイロン及びシアノアクリレート樹脂、ポリオレフィン形樹脂等の熱可塑性樹脂系接着剤やクロロプレン系接着剤、ニトリルゴム系接着剤、SBR系接着剤及び天然ゴム系接着剤等のゴム系接着剤等が挙げられる。
本発明における接着(D)層の厚みとしては、接着性、厚みムラの観点から0.1μm以上50μm以下であることが好ましく、1μm以上40μm以下であることがさらに好ましく、2μm以上30μm以下であれば最も好ましい。
本発明の着色(D)層の形成方法については特に限定されないが、例えば、グラビアコーター、バーコーター、コンマコーター、ダイコーター、ナイフコーターなどを用いて塗工により形成することができる。

(積層シート)
本発明の積層シートは、熱可塑性樹脂基材(A)層の少なくとも片側に、樹脂(B)層が積層されてなる構成である。熱可塑性樹脂基材(A)層の少なくとも片側に、樹脂(B)層を積層していれば特に構成は限定されないため、本発明の積層シートは、熱可塑性樹脂基材(A)層と樹脂(B)層とが直接積層されている態様や、他の層(コーティング層など)を介して積層されている態様のいずれであってもよい。例えば、熱可塑性樹脂基材(A)層、樹脂(B)層、装飾(C)層、接着(D)層をこの順に有する構成(該構成は、熱可塑性樹脂基材(A)層/樹脂(B)層/装飾(C)層/接着(D)層と表現する。以下も同様。)、熱可塑性樹脂基材(A)層/樹脂(B)層/装飾(C)層、熱可塑性樹脂基材(A)層/樹脂(B)層/接着(D)層、熱可塑性樹脂基材(A)層/樹脂(B)層といった構成が考えられる。また、特に上記構成の、熱可塑性樹脂基材(A)層と、樹脂(B)層間にコーティング層を介する構成も好ましく用いられる。本発明の積層シートは、熱可塑性樹脂基材(A)層の少なくとも片側に、樹脂(B)層、装飾(C)層、接着(D)層を、この順に有することが特に好ましい。さらに、それぞれの構成に対して、熱可塑性樹脂基材(A)層と、樹脂(B)層との剥離強度を調整するために、コーティング層を設けてもよい。
本発明の積層シートは、25℃における前記熱可塑性樹脂基材(A)層と樹脂(B)層との剥離強度が、0.005N/10mm以上2N/10mm以下であることが必要である。25℃における剥離強度が、0.005N/10mm未満の場合は、剥離強度が低すぎて、シート搬送、巻取りなどの工程中に自然剥離が発生してしまう。一方、剥離強度が2N/10mmより大きい場合は、成型後の剥離が困難となる。熱可塑性樹脂基材(A)層と樹脂(B)層との25℃における剥離強度は、0.01N/10mm以上1N/10mm以下であればさらに好ましく、0.01N/10mm以上0.5N/10mm以下であれば最も好ましい。
なお、25℃における熱可塑性樹脂基材(A)層と樹脂(B)層との剥離強度に関して、熱可塑性樹脂基材(A)層と樹脂(B)層との間にコーティング層などの別の層を介する場合は、熱可塑性樹脂基材(A)層とその別の層との間で剥離するケース、樹脂(B)層とその別の層との間で剥離するケースがある。さらに、熱可塑性樹脂基材(A)層と樹脂(B)層の間に複数の別の層を介する場合は、その別の層の間で剥離するケースもある。本発明では、上記のいずれのケースにおいても、熱可塑性樹脂基材(A)層と樹脂(B)層との剥離とみなして、25℃における熱可塑性樹脂基材(A)層と樹脂(B)層との剥離強度を求める。
本発明の積層シートにおいて、25℃における前記熱可塑性樹脂基材(A)層と樹脂(B)層との剥離強度を、0.005N/10mm以上2N/10mm以下とする方法は特に限定されないが、例えば、熱可塑性樹脂基材(A)層の樹脂(B)層と接する面の表面自由エネルギーを25mN/m以上42mN/m以下とすることが好ましい。また、熱可塑性樹脂基材(A)層の樹脂(B)層と接する面の、X線光電子分光法によって測定される、前記熱可塑性樹脂基材(A)層の少なくとも片面の酸素原子と炭素原子のモル比(酸素原子/炭素原子)が、0.03以上0.15以下とすることも好ましい。
また、本発明の積層シートは、100℃における前記熱可塑性樹脂基材(A)層と樹脂(B)層との剥離強度が、0.005N/10mm以上2N/10mm以下であることが必要である。100℃における剥離強度が、0.005N/10mm未満の場合は、積層シートを加熱した際の剥離強度が低すぎて、加熱時に自然剥離が発生してしまう。一方、剥離強度が2N/10mmより大きい場合は、成型後の剥離が困難となる。熱可塑性樹脂基材(A)層と樹脂(B)層との100℃における剥離強度は、0.01N/10mm以上1N/10mm以下であればさらに好ましく、0.01N/10mm以上0.5N/10mm以下であれば最も好ましい。
本発明の100℃における剥離強度は、熱可塑性樹脂基材(A)層と樹脂(B)層の間にコーティング層などの別の層を介する場合、25℃における剥離強度同様に解釈する。つまり、熱可塑性樹脂基材(A)層と樹脂(B)層の間に別の層を介する場合は、熱可塑性樹脂基材(A)層とその別の層との間で剥離するケース、樹脂(B)層とその別の層との間で剥離するケース、さらに、熱可塑性樹脂基材(A)層と樹脂(B)層の間に複数の別の層を介する場合は、その別の層の間で剥離するケースがあるが、いずれのケースも熱可塑性樹脂基材(A)層と樹脂(B)層との剥離とみなして、100℃における熱可塑性樹脂基材(A)層と樹脂(B)層との剥離強度を求める。

本発明の積層シートにおいて、100℃における前記熱可塑性樹脂基材(A)層と樹脂(B)層との剥離強度を、0.005N/10mm以上2N/10mm以下とする方法は特に限定されないが、例えば、下記(I)式を満たすことで、100℃における該剥離強度を0.005N/10mm以上2N/10mm以下とすることができるので好ましい。
0.5≦{(M−M)−M}/(M−M)×100≦10・・・(I)
ただし、M:熱可塑性樹脂基材(A)層の質量
:積層シートの質量
:積層シートから熱可塑性樹脂基材(A)層を剥離し、140℃で30分保管した後の樹脂(B)層を含むシートの質量
ここで、積層シートから熱可塑性樹脂基材(A)層を剥離することで得られる、樹脂(B)層を含むシートとは、樹脂(B)層単体の場合も含み、樹脂(B)層/装飾(C)層、樹脂(B)層/装飾(C)層/接着(D)層、樹脂(B)層/接着(D)層などの積層構成も挙げられる。
(I)式は、樹脂(B)層を含むシート中に含有される残留溶媒など揮発成分の量を測定する式を示している。例えば、樹脂(B)層、装飾(C)層、接着(D)層などを熱可塑性樹脂基材(A)層へ塗工して形成させる場合、それぞれの層を形成する組成物を溶媒に分散させて塗工させる方法が好ましく用いられるが、塗工後の乾燥条件によって、残留溶媒の量を調整することができる。使用する溶媒としては、例えば、水、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、炭化水素系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒などが用いられる。これらは、1種、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
樹脂(B)層、装飾(C)層、接着(D)層などを塗工により形成する場合、組成物を溶解させるために用いるアルコール系溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、sec−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノールなどを挙げることができる。同様の目的で用いられるケトン系溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどを挙げることができる。同様の目的で用いられるエーテル系溶媒としては、例えば、ジブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、テトラヒドロフランなどを挙げることができる。同様の目的で用いられるエステル系溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチルなどを挙げることができる。同様の目的で用いられる炭化水素系溶媒としては、ヘキサン、シクロヘキサンなどを挙げることができる。同様の目的で用いられる芳香族炭化水素系溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどを挙げることができる。
好ましく用いられる上記した溶媒は、沸点が140℃以下であり、140℃で30分保管することによって、ほぼ100質量%の残留溶媒を取り除くことができる。このため、(I)式により、樹脂(B)層を含むシートの残留溶媒の評価が可能となる。
本発明において、(I)式を満たす、つまり積層シートから熱可塑性樹脂基材(A)層を剥離することで得られる樹脂(B)層を含むシートの残留溶媒を0.5質量%以上、10質量%以下とすることで、100℃における熱可塑性樹脂基材(A)層と樹脂(B)層との剥離強度を、0.005N/10mm以上2N/10mm以下に達成することができる。{(M−M)−M}/(M−M)×100が、0.5未満であれば、熱可塑性樹脂基材(A)層と樹脂(B)層との剥離強度が高くなる傾向を示し、成形後の易剥離性が低下する場合がある。一方、{(M−M)−M}/(M−M)×100が、10より大きくなると、熱可塑性樹脂基材(A)層と樹脂(B)層との剥離強度が低くなる傾向を示し、0.005N/10mmより小さくなる場合がある。100℃における熱可塑性樹脂基材(A)層と、樹脂(B)層との剥離強度を、0.005N/10mm以上2N/10mm以下に達成するために、より好ましくは(I)’式を満たすことが好ましく、(I)”式を満たせばさらに好ましい。
0.5≦{(M−M)−M}/(M−M)×100≦8・・・(I)’
1≦{(M−M)−M}/(M−M)×100≦5・・・(I)”

本発明の積層シートは、成型性、自己保持性の観点から、熱可塑性樹脂基材(A)層のガラス転移温度が80℃以上であり、熱可塑性樹脂基材(A)層のガラス転移温度−20℃における破断伸度が200%以下であり、熱可塑性樹脂基材(A)層のガラス転移温度+20℃における破断伸度が500%以上であることが好ましい。熱可塑性樹脂基材(A)層のガラス転移温度を80℃以上とし、かつ熱可塑性樹脂基材(A)層のガラス転移温度−20℃における破断伸度を200%以下とすることで、自己保持性が十分に確保でき、取り扱い性が向上する。
熱可塑性樹脂基材(A)層のガラス転移温度は、85℃以上であることが好ましく、90℃以上であることが特に好ましい。また熱可塑性樹脂基材(A)層のガラス転移温度は、160℃以下であることが好ましい。熱可塑性樹脂基材(A)層のガラス転移温度−20℃における破断伸度は、190%以下であればさらに好ましく、自己保持性、耐脆性の観点から、180%以下であれば最も好ましい。熱可塑性樹脂基材(A)層のガラス転移温度−20℃における破断伸度は、3%以上であることが好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、100%以上であることが特に好ましい。また、熱可塑性樹脂基材(A)層のガラス転移温度+20℃における破断伸度を500%以上とすることで、優れた成型性も両立することができる。熱可塑性樹脂基材(A)層のガラス転移温度+20℃における破断伸度は、600%以上であればさらに好ましく、成型性と寸法安定性の観点から、700%以上であれば最も好ましい。熱可塑性樹脂基材(A)層のガラス転移温度+20℃における破断伸度は、2,000%以下であることが好ましく、1,000%以下であることがさらに好ましく、970%以下であることが特に好ましい。
熱可塑性樹脂基材(A)層のガラス転移温度を80℃以上として、熱可塑性樹脂基材(A)層のガラス転移温度−20℃における破断伸度を200%以下として、熱可塑性樹脂基材(A)層のガラス転移温度+20℃における破断伸度を500%以上とするための、好ましい熱可塑性樹脂基材(A)層としては、環状オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体)系樹脂などを好ましく用いることができる。

なお、本発明において、熱可塑性樹脂基材(A)層が、積層フィルムの場合や単層フィルムであっても複数の樹脂が混合されている場合などのように、熱可塑性樹脂基材(A)層のガラス転移温度を測定した際に複数のガラス転移温度が観測される場合は、高温側のガラス転移温度を熱可塑性樹脂基材(A)層のガラス転移温度として採用する。
本発明の積層シートは、加熱成型時の自然剥離を抑制させるために、積層シートから熱可塑性樹脂基材(A)層を剥離した樹脂(B)層を含むシートの、熱可塑性樹脂基材(A)層のガラス転移温度+20℃における、100%伸長時応力(F100値)が、3MPa以下であることが好ましい。熱可塑性樹脂基材(A)層のガラス転移温度+20℃において、樹脂(B)層を含むシートの100%伸長時応力(F100値)が、3MPaより大きいと、積層シートを加熱成型した際に、樹脂(B)層を含むシート部分が、熱可塑性樹脂基材(A)層の成型に追従しにくくなり、熱可塑性樹脂基材(A)層と、樹脂(B)層間で、剥離が発生してしまう場合がある。熱可塑性樹脂基材(A)層への成型追従性をより高くするために、積層シートから熱可塑性樹脂基材(A)層を剥離した樹脂(B)層を含むシートの、熱可塑性樹脂基材(A)層のガラス転移温度+20℃における、100%伸長時応力(F100値)は、2.5MPa以下であることが好ましく、0.01MPa以上2MPa以下であれば最も好ましい。
積層シートから熱可塑性樹脂基材(A)層を剥離した樹脂(B)層を含むシートの、熱可塑性樹脂基材(A)層のガラス転移温度+20℃における、100%伸長時応力(F100値)を3MPa以下とするための方法として、例えば、熱可塑性樹脂基材(A)層を剥離した樹脂(B)層を含むシートが樹脂(B)層、装飾(C)層、接着(D)層とからなるシートの場合には、該樹脂(B)層、装飾(C)層、接着(D)層に使用する樹脂として柔軟なものを選択することが好ましい。また、該樹脂(B)層、装飾(C)層、接着(D)層とからなるシートの各層において、硬化性樹脂を使用する場合は、本発明の積層シートを作製後、できるだけ低温で保存することが好ましく、硬化性樹脂が電子線硬化性樹脂の場合には、電子線があたらない環境下で保存することが好ましい。
本発明の積層シートは、25℃における前記熱可塑性樹脂基材(A)層と樹脂(B)層との剥離強度が、0.005N/10mm以上2N/10mm以下であり、100℃における前記熱可塑性樹脂基材(A)層と樹脂(B)層との剥離強度が、0.005N/10mm以上、2N/10mm以下であるため、成型と同時に樹脂(B)層を含むシートを被着体へ転写させて加飾成型体を得ることができる。樹脂(B)層を含むシートを被着体へ転写させる方法としては、特に限定されないが、例えば、真空成型と同時に被着体へ転写させる方法が挙げられる。この方法では、被着体として、例えば、ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、AS(アクリロニトリル・スチレン共重合体)系樹脂、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体)系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂などといった樹脂および、これらのアロイ樹脂、さらには炭素繊維、ガラス繊維などで強化した樹脂などが挙げられる。さらに、金属部材、ガラス部材なども挙げられる。
また、射出成形と同時に転写させる方法も使用することができる。この場合は、被着体としては、上記した樹脂が好ましく用いられる。
なお、本発明の積層シートは、加熱時の成形性に優れるため、真空成型、圧空成型、プレス成型といった各種成型用途において好適に用いることができる。そして、特に真空成型用途に特に好適に用いられる。
本発明の積層シートは、熱可塑性樹脂基材(A)層の少なくとも片側に、樹脂(B)層が積層されてなり、25℃における前記熱可塑性樹脂基材(A)層と樹脂(B)層との剥離強度が、0.005N/10mm以上2N/10mm以下であり、100℃における前記熱可塑性樹脂基材(A)層と樹脂(B)層との剥離強度が、0.005N/10mm以上、2N/10mm以下であるため、熱可塑性樹脂基材(A)層と、樹脂(B)層が工程中は自然剥離せず、成型後に容易に剥離することができ、例えば、建材、モバイル機器、電機製品、自動車部品、遊技機部品などの成型部材の加飾に好適に用いることができる。
以下の方法で、本発明の積層シートの製造、評価を行った。なお、実施例16〜19は参考例とする。
(1)積層シート全厚み、および各層の厚み
積層シートの全体厚みを測定する際は、ダイヤルゲージを用いて、シートから切り出した試料の任意の場所5ヶ所の厚みを測定し、平均値を求めた。
また、積層シートの各層の層厚みを測定する際は、ライカマイクロシステムズ(株)製金属顕微鏡LeicaDMLMを用いて、シートの断面を倍率100倍の条件で透過光を写真撮影した。そして撮影した写真から、積層シートの各層ごとに任意の5ヶ所の厚みを測定し、その平均値を各層の層厚みとした。
(2)熱可塑性樹脂基材(A)層のガラス転移温度
示差走査熱量計(セイコー電子工業製、RDC220)を用い、JIS K7121−1987、JIS K7122−1987に準拠して測定および解析を行った。
熱可塑性樹脂基材(A)層5mgをサンプルとした。サンプルを25℃から20℃/分で300℃まで昇温した際のガラス状態からゴム状態への転移に基づく比熱変化を読み取った。各ベースラインの延長した直線から縦軸(熱流を示す軸)方向に等距離にある直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線とが交わる点の中間点ガラス転移温度を求め、ガラス転移温度とした。なお、ガラス転移温度が複数存在する場合は、高温側のガラス転移温度を熱可塑性樹脂基材(A)層のガラス転移温度として採用した。
(3)剥離強度
本発明の積層シート中の樹脂(B)層を含むシート側に、日東電工(株)製OPP粘着テープ(ダンプロンエースNo.375)を貼り合わせ、幅10mm、長さ150mmの矩形に切り出しサンプルとした。該サンプルを熱可塑性樹脂基材(A)層と樹脂(B)層間で、強制的に剥離し、引張試験機(オリエンテック製テンシロンUCT−100)を用いて、初期引張チャック間距離100mm、引張速度を20mm/分として、180°剥離試験を行った。剥離長さ130mm(チャック間距離230mm)になるまで測定を行い、剥離長さ25mm〜125mmの荷重の平均値を剥離強度とした。なお、測定は5回行い、その平均値を採用した。
ここで、熱可塑性樹脂基材(A)層と樹脂(B)層の間に別の層を介する場合は、熱可塑性樹脂基材(A)層とその別の層との間で剥離するケース、樹脂(B)層とその別の層との間で剥離するケース、さらに、熱可塑性樹脂基材(A)層と樹脂(B)層の間に複数の別の層を介する場合は、その別の層の間で剥離するケースがあるが、いずれのケースも熱可塑性樹脂基材(A)層と樹脂(B)層間とみなして測定した。
なお、25℃における剥離強度は、25℃に温度調節した室内で測定し、100℃における破断強度は、予め100℃に設定した恒温層中にサンプルをセットし、60秒間予熱後に180°剥離試験を行った。
(4){(M−M)−M}/(M−M)×100
本発明の積層シートを100mm×100mmの大きさに切り出し、サンプルとし、得られたサンプルについて、下記の通り質量を測定した。なお評価は3回行い、その平均値を採用した。
:熱可塑性樹脂基材(A)層の質量
:積層シートの質量
:積層シートから熱可塑性樹脂基材(A)層を剥離し、140℃で30分保管した後の樹脂(B)層を含むシートの質量
(5)破断伸度
本発明の積層シートの任意の一方向および、それに直交する方向に、長さ100mm×幅10mmの矩形に切り出しサンプルとした。引張試験機(オリエンテック製テンシロンUCT−100)を用いて、初期引張チャック間距離20mmとし、引張速度を200mm/分として任意の一方向とそれに直交する方向にそれぞれ引張試験を行った。
測定は予め所定の温度(本発明の場合は、熱可塑性樹脂基材(A)層のガラス転移温度−20℃、および、熱可塑性樹脂基材(A)層のガラス転移温度+20℃)に設定した恒温層中にサンプルをセットし、60秒間の予熱の後で引張試験を行った。サンプルが破断したときの伸度を破断伸度とした。なお、測定は各サンプル、各方向に5回ずつ行い、その平均値(各方向の平均値から得られる平均値)で評価を行った。
(6)積層シートから熱可塑性樹脂基材(A)層を剥離した樹脂(B)層を含むシートの100%伸長時応力(F100値)
本発明の積層シートから熱可塑性樹脂基材(A)層を剥離した樹脂(B)層を含むシートの、任意の一方向および、その方向に直交する方向に長さ100mm×幅10mmの矩形に切り出しサンプルとした。引張試験機(オリエンテック製テンシロンUCT−100)を用いて、初期引張チャック間距離20mmとし、引張速度を200mm/分として任意の一方向とそれに直交する方向にそれぞれ引張試験を行った。測定は予め所定の温度(本発明の場合は、熱可塑性樹脂基材(A)層のガラス転移温度+20℃)に設定した恒温層中にサンプルをセットし、60秒間の予熱の後で引張試験を行った。サンプルが100%伸長したとき(チャック間距離が40mmとなったとき)のシートにかかる荷重を読み取り、試験前の試料の断面積(シート厚み×10mm)で除した値を100%伸長時応力(F100値)とした。なお、測定は各サンプル、各方向に5回ずつ行い、その平均値で評価を行った。
(7)熱可塑性樹脂基材(A)層の片面の(酸素原子/炭素原子)モル比
超高真空中においた熱可塑性樹脂基材(A)層の表面に、下記条件にて、軟X線を照射し、表面から放出される光電子をアナライザーで検出した。なお、評価は、積層シートから熱可塑性樹脂基材(A)層を剥離し、熱可塑性樹脂基材(A)層の樹脂(B)層を積層されていた面について、実施した。
・装置:Quantera SXM(PHI社製)
・励起X線:monochromatic Al Ka 1,2線(1486.6eV)
・X線径:200mm
・光電子脱出角度(試料表面に対する検出器の傾き):45°
また、得られたデータについては、下記のようにして処理して解析を行った。
・スペクトル(ナロースキャン)のスムージング:9−point smoothing
・横軸補正:C1sメインピークを284.6eVに合わせた。
(8)熱可塑性樹脂基材(A)層の表面自由エネルギー
23℃、65%RHの条件下で、該条件で24時間調湿した熱可塑性樹脂基材(A)層について、接触角計(協和界面化学製CA−D型)を使用して、水、エチレングリコ−ル、ホルムアミド、及びヨウ化メチレンの4種類の測定液を用い、協和界面化学(株)製接触角計CA−D型を用いて、各液体の熱可塑性樹脂基材(A)層表面に対する静的接触角を求めた。それぞれの液体について得られた接触角と測定液の表面張力の各成分を下式にそれぞれ代入し、4つの式からなる連立方程式をγL 、γ+ 、γ- について解いた。
L γj L)1/2 +2(γ+ γj - )1/2 +2(γj +γ-)1/2 =(1+cosθ)[γj L +2(γj +γj - )1/2 ]/2
ただし、γ=γL +2(γ+ γ- )1/2γj =γj L+2(γj + γj - )1/2ここで、γ、γL、γ+ 、γ- は、それぞれ、基材表面の表面自由エネルギー、長距離間力項、ルイス酸パラメーター、ルイス塩基パラメーターを、また、γj、γj L 、γj + 、γj -は、それぞれ、用いた測定液の表面自由エネルギー、長距離間力項、ルイス酸パラメーター、ルイス塩基パラメーターをあらわすものとする。
ここで用いた各液体の表面張力は、Oss("Fundamentals ofAdhesion", L.H.Lee(Ed.), p153, Plenum ess, New York(1991))によって提案された表1の値を用いた。
なお、評価は、積層シートから熱可塑性樹脂基材(A)層を剥離し、熱可塑性樹脂基材(A)層の樹脂(B)層を積層していた面について、実施した。
Figure 0005906840
(9)面配向係数(fn)
ナトリウムD線(波長589nm)を光源として、アッベ屈折計を用いて、熱可塑性樹脂基材(A)表面の長手方向屈折率(Nx)、幅方向屈折率(Ny)および厚み方向屈折率(Nz)を測定し、下記式から面配向係数(fn)を算出した。
面配向係数 fn=(Nx+Ny)/2−Nz
(10)巻取性
500mm幅、200m長(6インチ、550mm長コア巻)の本発明の積層シート準備し、下記条件で、3インチ、550mm長コアに巻返しを行い、下記の基準で評価を行った。
巻出:上巻出し、張力200N/m、巻取:上巻取り、張力100N/m
速度:5m/min
A:熱可塑性樹脂基材(A)層/樹脂(B)層間で、全く剥離が発生しなかった。
B:熱可塑性樹脂基材(A)層/樹脂(B)層間で、剥離がみられたが、剥離箇所にエア噛み込みは発生しなかった。
C:熱可塑性樹脂基材(A)層/樹脂(B)層間で、剥離がみられ、剥離箇所にエア噛み込みが若干発生した(エア噛み込み率(積層シートの全面積を100%とした際の、エアが噛み込んだ面積の割合)が5%未満)。
D:熱可塑性樹脂基材(A)層/樹脂(B)層間で、剥離がみられ、剥離箇所にエア噛み込みが発生した(エア噛み込み率(積層シートの全面積を100%とした際の、エアが噛み込んだ面積の割合)が5%以上)、もしくは完全に剥離した。
(11)加熱時自然剥離テスト
本発明の積層シートを真空成型装置(布施真空製、NGF−0406−T)内の上部にあるシートクランプ枠にセットした。続いて、上下ボックス内の真空度を99.0kPaに減圧し、赤外線ヒータを用いて加熱していった際の挙動について、下記の基準で評価を行った。
A:シート温度140℃でも、熱可塑性樹脂基材(A)層/樹脂(B)層間に剥離が発生しなかった。
B:シート温度120℃以上140℃未満で、熱可塑性樹脂基材(A)層/樹脂(B)層間に剥離が発生した。
C:シート温度100℃以上120℃未満で、熱可塑性樹脂基材(A)層/樹脂(B)層間に剥離が発生した。
D:シート温度100℃未満で、熱可塑性樹脂基材(A)層/樹脂(B)層間に剥離が発生した。
(12)成型性
真空成型装置(布施真空製、NGF−0406−T)内の上下昇降テーブル上に、ポリプロピレン製形状体(長さ100mm×幅100mm、高さは20mm、25mm、30mmの3種類)を置き、本発明の積層シート(長さ300mm×幅200mm)を上記装置内の形状体の上部にあるシートクランプ枠にセットした。続いて、上下ボックス内の真空度を99.0kPaに減圧し、赤外線ヒータを用いて積層シート表面温度を、熱可塑性樹脂基材(A)層のガラス転移温度+20℃になるまで加熱し、形状体を上昇させて、形状体と積層シートを密着させ、3秒間保持した。その後、上ボックスのみを大気圧に開放することで、積層シートを賦型させて、加飾成型体を得た。
実施例1〜19、比較例1〜4は、上記のようにして得られた加飾成型体について、下記のような評価を行った。
A:高さ30mmで成型できた。
B:高さ25mmで成型できたが、30mmでは形状を再現できなかった。
C:高さ20mmで成型できたが、25mmでは形状を再現できなかった。
D:高さ20mmで形状を再現できなかった。
(13)成型後易剥離性
(12)のようにして得られた加飾成型体について、熱可塑性樹脂基材(A)層/樹脂(B)層間で剥離を行い、下記の基準で評価を行った。なお、樹脂(B)層が硬化性樹脂の場合は、樹脂(B)層を硬化させた後に剥離を行った。本実施例においては、高圧水銀ランプにて、積算光量1000mJ/cmとなるように、熱可塑性樹脂基材(A)層側から紫外線照射処理を行い、樹脂(B)層を硬化させた。
A:問題なく剥離できた。
B:やや抵抗はあったが、剥離できた。
C:成型機内から取り出す際に、剥がれてしまった。
D:剥がれなかった。
B以上を合格とした。
(14)本発明の熱可塑性樹脂基材(A)層の製造に用いた樹脂。
(環状オレフィン共重合樹脂A)
ポリプラスチックス社製 TOPAS 8007F−04 を用いた。
(環状オレフィン共重合樹脂B)
ポリプラスチックス社製 TOPAS 6013F−04 を用いた。
(環状オレフィン共重合樹脂C)
ポリプラスチックス社製 TOPAS 6015S−04 を用いた。
(環状オレフィン樹脂D)
日本ゼオン社製“ZEONOR 1060R”を用いた。
(環状オレフィン樹脂E)
日本ゼオン社製“ZEONOR 1430R”を用いた。
(ポリエチレン系樹脂)
プライムポリマー社製 エボリュー SP2540 を用いた。
(ポリエチレンテレフタレート樹脂)
ジカルボン酸成分としてテレフタル成分が100モル%、グリコール成分としてエチレングリコール成分が99モル%、ジエチレングリコール成分が1モル%であるポリエチレンテレフタレート樹脂(固有粘度0.65)を用いた。
(ポリブチレンテレフタレート樹脂)
東レ製 トレコン“1200S”を用いた
(酸化防止剤)
チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製の“イルガノックス1010”を用いた。
(15)本発明の樹脂(B)層の製造に用いた樹脂。
KHC−T1(共栄社化学製、紫外線硬化型樹脂、固形分:50%)
(16)本発明の装飾(C)層の製造に用いた樹脂
主剤と硬化剤を以下の配合比で混合したものを装飾層用塗料組成物とした。
・主剤:R2325(日本ビー・ケミカル製、固形成分:36%) 100質量部
・硬化剤:D−178N(三井化学製、固形成分:100%) 2質量部
(17)本発明の接着(D)層の製造に用いた樹脂
以下のポリオレフィン系ホットメルト接着剤と溶剤を以下の配合比で混合したものを接着層用塗料組成物とした。
・ポリオレフィン系ホットメルト接着剤:M−28(東洋紡績製、無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレン) 20質量部
・溶剤:トルエン 80質量部
(18)本発明の離型層の製造に用いた樹脂
(離型樹脂A)
各成分を以下の配合比で混合した。
・主剤: ニカラックMX−706(三和ケミカル製) 20質量部
・硬化触媒: プラスコートDEPクリア(和信化学工業製)4質量部
・メチルエチルケトン 70質量部
・メチルセロソルブ 50質量部。
(離型樹脂B)
各成分を以下の配合比で混合した。
・主剤: RP−50(三羽研究所製) 20質量部
・添加剤: RP−20(日本触媒製) 0.3質量部
・硬化触媒: プラスコートDEPクリア 4質量部
・トルエン 50質量部。
(19)積算光量
熱可塑性樹脂基材(A)層に紫外線照射を行う場合と同じ条件(搬送速度、フィルムとランプの距離)で照度計を搬送し、積算光量を測定した。なお、ランプの種類に応じて下記照度計を使用した。
メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ:岩崎電気社製“PD−365”(測定波長範囲300〜390nm)
低圧水銀ランプ:岩崎電気社製“PD−254”(測定波長範囲230〜280nm)
エキシマランプ:岩崎電気社製“EVUV−200”(測定波長範囲140〜227nm、校正波長172nm)

(実施例1)
熱可塑性樹脂基材(A)層について、3層構成とした。各層の組成を表のようにし、それぞれ単軸押出機(L/D=28)に供給し、供給部温度220℃、それ以降の温度を240℃で溶融し、濾過精度20μmのリーフディスクフィルターを通過させた後、ダイの上部に設置したフィードブロック内にてa2層/a1層/a2層(積層厚み比は表参照)となるように積層した後、Tダイより、75℃に温度制御した金属ロール上にシート状に吐出した。その際、ゴムロールにてニップをし(ニップ圧:0.2MPa)、厚み100μmの熱可塑性樹脂基材(A)層を得た。
得られた熱可塑性樹脂基材(A)層の片面に、エキシマランプにて積算光量25mJ/cmとなるように照射時間10秒で紫外線照射処理を行った後、紫外線照射処理面の上に、樹脂(B)層をスロットダイコーターで塗工を行い、80℃条件下で5分間乾燥を行った。続いて、装飾(C)層を、さらに接着(D)層を樹脂(B)層と同様の条件にて塗工を行い、積層シートを得た。
得られた積層シートについて、(1)〜(13)に記載の方法にて評価を行った。
(実施例2)
樹脂(B)層、装飾(C)層、接着(D)層の塗工後の乾燥を、80℃条件下で8分間行った以外は、実施例1と同様にして、積層シートを得た。
得られた積層シートについて、(1)〜(13)に記載の方法にて評価を行った。
(実施例3)
樹脂(B)層、装飾(C)層、接着(D)層の塗工後の乾燥を、80℃条件下で10分間行った以外は、実施例1と同様にして、積層シートを得た。
得られた積層シートについて、(1)〜(13)に記載の方法にて評価を行った。
(実施例4)
樹脂(B)層、装飾(C)層、接着(D)層の塗工後の乾燥を、80℃条件下で20分間行った以外は、実施例1と同様にして、積層シートを得た。
得られた積層シートについて、(1)〜(13)に記載の方法にて評価を行った。
(実施例5)
樹脂(B)層、装飾(C)層、接着(D)層の塗工後の乾燥を、80℃条件下で30分間行った以外は、実施例1と同様にして、積層シートを得た。
得られた積層シートについて、(1)〜(13)に記載の方法にて評価を行った。
(実施例6)
熱可塑性樹脂基材(A)層の片面の紫外線照射処理を、エキシマランプにて積算光量18mJ/cmとなるように照射時間7秒で行った以外は、実施例1と同様にして、積層シートを得た。
得られた積層シートについて、(1)〜(13)に記載の方法にて評価を行った。
(実施例7)
熱可塑性樹脂基材(A)層の片面の紫外線照射処理を、低圧水銀ランプにて積算光量250mJ/cmとなるように照射時間30秒で行った以外は、実施例1と同様にして、積層シートを得た。
得られた積層シートについて、(1)〜(13)に記載の方法にて評価を行った。
(実施例8)
熱可塑性樹脂基材(A)層の片面の紫外線照射処理を、エキシマランプにて積算光量100mJ/cmとなるように照射時間40秒で行った以外は、実施例1と同様にして、積層シートを得た。
得られた積層シートについて、(1)〜(13)に記載の方法にて評価を行った。
(実施例9)
熱可塑性樹脂基材(A)層の片面の紫外線照射処理を、エキシマランプにて積算光量120mJ/cmとなるように照射時間48秒で行った以外は、実施例1と同様にして、積層シートを得た。
得られた積層シートについて、(1)〜(13)に記載の方法にて評価を行った。
(実施例10)
熱可塑性樹脂基材(A)層の片面の紫外線照射処理を、低圧水銀ランプにて積算光量250mJ/cmとなるように照射時間30秒で行った以外は、実施例1と同様にして、積層シートを得た。得られた積層シートを本実施例においては、メタルハライドランプにて、積算光量200mJ/cmとなるように、熱可塑性樹脂基材(A)層側から照射時間25秒で紫外線照射処理を行った後に、(1)〜(13)に記載の方法にて評価を行った。
(実施例11)
熱可塑性樹脂基材(A)層について、3層構成とした。各層の組成を表のようにし、それぞれ単軸押出機(L/D=28)に供給し、供給部温度220℃、それ以降の温度を230℃で溶融し、濾過精度20μmのリーフディスクフィルターを通過させた後、ダイの上部に設置したフィードブロック内にてa2層/a1層/a2層(積層厚み比は表参照)となるように積層した後、Tダイより、65℃に温度制御した金属ロール上にシート状に吐出した。その際、ゴムロールにてニップをし(ニップ圧:0.2MPa)、厚み100μmの熱可塑性樹脂基材(A)層を得た。
得られた熱可塑性樹脂基材(A)層の片面に、低圧水銀ランプにて積算光量700mJ/cmとなるように照射時間60秒で紫外線照射処理を行った後、紫外線照射処理面の上に、樹脂(B)層をスロットダイコーターで塗工を行い、70℃条件下で30分間乾燥を行った。続いて、装飾(C)層を、さらに接着(D)層を樹脂(B)層と同様の条件にて塗工を行い、積層シートを得た。
得られた積層シートについて、(1)〜(13)に記載の方法にて評価を行った。
(実施例12)
熱可塑性樹脂基材(A)層について、3層構成とした。各層の組成を表のようにし、それぞれ単軸押出機(L/D=28)に供給し、供給部温度240℃、それ以降の温度を255℃で溶融し、濾過精度20μmのリーフディスクフィルターを通過させた後、ダイの上部に設置したフィードブロック内にてa2層/a1層/a2層(積層厚み比は表参照)となるように積層した後、Tダイより、90℃に温度制御した金属ロール上にシート状に吐出した。その際、ゴムロールにてニップをし(ニップ圧:0.2MPa)、厚み100μmの熱可塑性樹脂基材(A)層を得た。
得られた熱可塑性樹脂基材(A)層に、実施例11と同様にして、樹脂(B)層、装飾(C)層を、さらに接着(D)層の塗工、乾燥を行い、積層シートを得た。
得られた積層シートについて、(1)〜(13)に記載の方法にて評価を行った。
(実施例13)
熱可塑性樹脂基材(A)層について、3層構成とした。各層の組成を表のようにし、それぞれ単軸押出機(L/D=28)に供給し、供給部温度260℃、それ以降の温度を280℃で溶融し、濾過精度20μmのリーフディスクフィルターを通過させた後、ダイの上部に設置したフィードブロック内にてa2層/a1層/a2層(積層厚み比は表参照)となるように積層した後、Tダイより、120℃に温度制御した金属ロール上にシート状に吐出した。その際、ゴムロールにてニップをし(ニップ圧:0.2MPa)、厚み100μmの熱可塑性樹脂基材(A)層を得た。
得られた熱可塑性樹脂基材(A)層に、実施例11と同様にして、樹脂(B)層、装飾(C)層を、さらに接着(D)層の塗工、乾燥を行い、積層シートを得た。
得られた積層シートについて、(1)〜(13)に記載の方法にて評価を行った。
(実施例14)
熱可塑性樹脂基材(A)層について、3層構成とした。各層の組成を表のようにし、それぞれ単軸押出機(L/D=28)に供給し、供給部温度265℃、それ以降の温度を290℃で溶融し、濾過精度20μmのリーフディスクフィルターを通過させた後、ダイの上部に設置したフィードブロック内にてa2層/a1層/a2層(積層厚み比は表参照)となるように積層した後、Tダイより、140℃に温度制御した金属ロール上にシート状に吐出した。その際、ゴムロールにてニップをし(ニップ圧:0.2MPa)、厚み100μmの熱可塑性樹脂基材(A)層を得た。
得られた熱可塑性樹脂基材(A)層に、実施例11と同様にして、樹脂(B)層、装飾(C)層を、さらに接着(D)層の塗工、乾燥を行い、積層シートを得た。
得られた積層シートについて、(1)〜(13)に記載の方法にて評価を行った。
(実施例15)
熱可塑性樹脂基材(A)層の厚みを50μmにした以外は、実施例13と同様にして、積層シートを得た。
得られた積層シートについて、(1)〜(13)に記載の方法にて評価を行った。
(実施例16)
熱可塑性樹脂基材(A)層について、3層構成とした。使用する樹脂をそれぞれ真空乾燥機にて150℃で、5時間乾燥し、水分を十分に除去した後、各層の組成を表のようにし、それぞれ単軸押出機(L/D=28)に供給し、a3層は供給部温度265℃、それ以降の温度を280℃で溶融し、a4層は供給部温度230℃、それ以降を250℃で溶融し、a3層とa4層合流後の短管温度を275℃、口金温度275℃で、Tダイより、50℃に温度制御した金属ロール上にシート状に吐出した。その際、ゴムロールにてニップをし(ニップ圧:0.2MPa)、厚み100μmの熱可塑性樹脂基材(A)層を得た。
得られた熱可塑性樹脂基材(A)層の片面に、樹脂(B)層をスロットダイコーターで塗工を行い、70℃条件下で20分間乾燥を行った。続いて、装飾(C)層を、さらに接着(D)層を樹脂(B)層と同様の条件にて塗工を行い、積層シートを得た。
得られた積層シートについて、(1)〜(13)に記載の方法にて評価を行った。
(実施例17)
実施例16と同様にして、厚み100μmの熱可塑性樹脂基材(A)層を得た。
得られた熱可塑性樹脂基材(A)層の片面に、コロナ放電処理を施した後(E値:15)、コロナ放電処理面の上に、(15)に記載の離型樹脂Aをグラビアコーターで塗布し、120℃条件下で15分間乾燥を行った。続いて、離型層の上に樹脂(B)層をスロットダイコーターで塗工を行い、70℃条件下で20分間乾燥を行った。さらに、装飾(C)層を、さらに接着(D)層を樹脂(B)層と同様の条件にて塗工を行い、積層シートを得た。
得られた積層シートについて、(1)〜(13)に記載の方法にて評価を行った。
(実施例18)
離型層として、離型樹脂Bを用いた以外は、実施例17と同様にして、積層シートを得た。
得られた積層シートについて、(1)〜(13)に記載の方法にて評価を行った。
(実施例19)
樹脂(B)層、装飾(C)層、接着(D)層の塗工後の乾燥を、70℃条件下で10分間行った以外は、実施例17と同様にして、積層シートを得た。
得られた積層シートについて、(1)〜(13)に記載の方法にて評価を行った。
(比較例1)
実施例11と同様にして、熱可塑性樹脂基材(A)層を得た。
熱可塑性樹脂基材(A)層の片面の紫外線照射処理を、エキシマランプにて積算光量150mJ/cmとなるように照射時間60秒で行った後、実施例4と同様にして、樹脂(B)層、装飾(C)層を、さらに接着(D)層の塗工、乾燥を行い、積層シートを得た。
得られた積層シートについて、(1)〜(13)に記載の方法にて評価を行った。
(比較例2)
熱可塑性樹脂基材(A)層の片面の紫外線照射処理を、メタルハライドランプにて積算光量900mJ/cmとなるように照射時間20秒で行った以外は、比較例1と同様にして、積層シートを得た。
得られた積層シートについて、(1)〜(13)に記載の方法にて評価を行った。
(比較例3)
実施例11と同様にして、熱可塑性樹脂基材(A)層を得た。
エキシマランプにて積算光量18mJ/cmとなるように照射時間7秒で行った後、紫外線照射処理面の上に、樹脂(B)層をスロットダイコーターで塗工を行い、80℃条件下で3分間乾燥を行った。続いて、装飾(C)層を、さらに接着(D)層を樹脂(B)層と同様の条件にて塗工を行い、積層シートを得た。
得られた積層シートについて、(1)〜(13)に記載の方法にて評価を行った。
(比較例4)
熱可塑性樹脂基材(A)層について、単膜構成とした。使用する樹脂を真空乾燥機にて150℃で、5時間乾燥し、水分を十分に除去した後、組成を表のようにし、単軸押出機(L/D=28)に供給し、供給部温度265℃、それ以降の温度を280℃で溶融し、短管温度を275℃、口金温度275℃で、Tダイより、50℃に温度制御した金属ロール上にシート状に吐出した。その際、ゴムロールにてニップをし(ニップ圧:0.2MPa)、厚み100μmの熱可塑性樹脂基材(A)層を得た。
得られた熱可塑性樹脂基材(A)層の片面に、樹脂(B)層をスロットダイコーターで塗工を行い、70℃条件下で15分間乾燥を行った。続いて、装飾(C)層を、さらに接着(D)層を樹脂(B)層と同様の条件にて塗工を行い、積層シートを得た。
得られた積層シートについて、(1)〜(13)に記載の方法にて評価を行ったが、熱可塑性樹脂基材(A)層と樹脂(B)層間で全く剥離しなかった。
Figure 0005906840
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Claims (11)

  1. 熱可塑性樹脂基材(A)層の少なくとも片側に、樹脂(B)層を有し、
    25℃における前記熱可塑性樹脂基材(A)層と樹脂(B)層との剥離強度が、0.005N/10mm以上2N/10mm以下であり、
    100℃における前記熱可塑性樹脂基材(A)層と樹脂(B)層との剥離強度が、0.005N/10mm以上2N/10mm以下であり、
    前記熱可塑性樹脂基材(A)層が、環状オレフィン系樹脂を主成分とし、かつa1層とa2層とを有し、
    環状オレフィン系樹脂を主成分とする環状オレフィン層(a1層)の少なくとも片面に、環状オレフィン系樹脂を主成分とする環状オレフィン層(a2層)を有する、積層シート。
  2. 下記(I)式を満たす、請求項1に記載の積層シート
    0.5≦{(M−M)−M}/(M−M)×100≦10・・・(I)
    ただし、M:熱可塑性樹脂基材(A)層の質量
    :積層シートの質量
    :積層シートから熱可塑性樹脂基材(A)層を剥離し、140℃で30分保管した後の樹脂(B)層を含むシートの質量
  3. 樹脂(B)層が硬化性樹脂を主成分とする、請求項1または2に記載の積層シート。
  4. 熱可塑性樹脂基材(A)層のガラス転移温度が80℃以上であり、
    熱可塑性樹脂基材(A)層のガラス転移温度−20℃における破断伸度が200%以下であり、
    熱可塑性樹脂基材(A)層のガラス転移温度+20℃における破断伸度が500%以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の積層シート。
  5. 積層シートから熱可塑性樹脂基材(A)層を剥離した樹脂(B)層を含むシートの、熱可塑性樹脂基材(A)層のガラス転移温度+20℃における、100%伸長時応力(F100値)が、3MPa以下である、請求項1〜4のいずれかに記載の積層シート
  6. X線光電子分光法によって測定される、前記熱可塑性樹脂基材(A)層の少なくとも片面の酸素原子と炭素原子のモル比(酸素原子/炭素原子)が、0.03以上0.15以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の積層シート
  7. 前記a1層は、環状オレフィン共重合樹脂(以下、COCという)を主成分とし、
    前記a2層は、環状オレフィン樹脂(以下、COPという)を主成分とする、請求項1〜6のいずれかに記載の積層シート。
  8. a2層、a1層、a2層が、この順に直接積層された、請求項1〜7のいずれかに記載の積層シート。
  9. 前記a1層は、a1層全体100質量%に対して、ポリエチレン系樹脂及び/又はポリプロピレン系樹脂を1〜40質量%含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の積層シート
  10. 熱可塑性樹脂基材(A)層の少なくとも片側に、樹脂(B)層、装飾(C)層、接着(D)層を、この順に有する、請求項1〜のいずれかに記載の積層シート。
  11. 成型用途に用いられる請求項1〜10のいずれかに記載の積層シート。
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