JP2019042943A - ガスバリア積層体 - Google Patents

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悠平 山本
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【課題】耐屈曲性、透明性およびガスバリア性がそれぞれ良好であり、かつガスバリア性の面内ばらつきが小さいガスバリアフィルムを得るためのガスバリア積層体を提供する。【解決手段】環状ポリオレフィンフィルムの一方の面に酸化亜鉛および酸化珪素を含有するガスバリア層を有するガスバリアフィルムと、該ガスバリアフィルムのガスバリア層とは反対面に剥離可能な保護フィルムを有するガスバリア積層体であって、前記保護フィルムの前記ガスバリアフィルムとは反対面の算術平均粗さSaが5〜45nmの範囲である、ガスバリア積層体。【選択図】図1

Description

本発明は、ガスバリア性の面内ばらつきが小さいガスバリアフィルムを得るためのガスバリア積層体に関し、詳細にはガスバリアフィルムに剥離可能な保護フィルムが積層されたガスバリア積層体に関する。
ガスバリアフィルムは、通常、基材フィルム上にガスバリア層が積層された構成となっている。ガスバリア層としては、無機酸化物、例えば、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム等の蒸着膜が一般的に知られている。
基材フィルムとしては、各種プラスチックフィルム、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレン酢酸ビニル共重合体のケン化物、ポリアクリロニトリル、ポリアセタール等の樹脂からなるプラスチックフィルムが知られている。
有機エレクトロルミネッセンス(EL)や液晶等の電子デバイスのガスバリアフィルムとして、低リターデーション(複屈折率が小さい)で透明性が高い環状ポリオレフィンフィルムを基材フィルムとして使用したガスバリアフィルムが知られている(特許文献1〜3)。
一方、ガスバリアフィルムの基材の反対側(基材のガスバリア層を有する面とは反対面)に剥離可能な保護フィルムを積層することが知られている(例えば、特許文献4、5)。
特開2007−83644号公報 特開2013-103373号公報 特開2015−24536号公報 特開2009−28946号公報 特開2015−224373号公報
環状ポリオレフィンフィルムは、表面平滑性が比較的高いことから滑り性が悪く、搬送時に擦れ傷が発生することがあり、これを回避するために、予め剥離可能な保護フィルムを積層することが行われている。しかし、保護フィルムが積層された環状ポリオレフィンフィルムにガスバリア層を製膜すると、ガスバリア性(水蒸気透過率)の面内ばらつきが大きくなるという問題がある。この問題は、ガスバリア性が高いほど、すなわち、水蒸気透過率が小さいほど助長される傾向にある。
また、近年、柔軟性の高い有機エレクトロルミネッセンス(EL)デバイスが開発されており、それに対応させるために、耐屈曲性、透明性およびガスバリア性がそれぞれ良好であるガスバリアフィルムが求められている。
従って、本発明の目的は、上述の課題に鑑み、耐屈曲性、透明性およびガスバリア性がそれぞれ良好であり、かつガスバリア性の面内ばらつきが小さいガスバリアフィルムを得るためのガスバリア積層体を提供することにある。
そこで、発明者らは鋭意検討を重ね、上記課題のうち、特にガスバリア性の面内ばらつきが、ガスバリアフィルムに剥離可能に積層される保護フィルムの前記ガスバリアフィルムとは反対面(以下、「保護フィルムの反対面」ということがある)の算術平均粗さSaを5〜45nmの範囲にすることによって解決することを見出した。
上記課題がかかる手段により解決する理由は以下のように推測される。すなわち、酸化亜鉛や酸化珪素などの無機金属酸化物を含有するガスバリア層は、通常、バックアップロールで支持搬送される基材フィルム(環状ポリオレフィンフィルム)に、気相製膜法、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、CVD法等によって形成される。このとき、環状ポリオレフィンフィルムは、一方の面に予め積層された保護フィルムがバックアップロールに接触しながら搬送される。
バックアップロールは、通常、温度調節機能が併設されている。つまり、バックアップロールは、ガスバリア層の製膜工程における基材フィルム(環状ポリオレフィンフィルム)の温度調節機能を有する。製膜工程における基材フィルムの温度は、基材フィルム上に製膜されるガスバリア層のガスバリア性に影響を与える。
ここで、発明者らは、保護フィルムが積層された環状ポリオレフィンフィルムをバックアップロールで支持搬送させながらガスバリア層を製膜する場合、バックアップロールと接触する保護フィルムの算術平均粗さSaが、ガスバリア性の面内ばらつきに影響することを見出した。つまり、保護フィルムの反対面の算術平均粗さSaが45nmを超えるとガスバリア性の面内ばらつきが大きくなることを見出した。これは、バックアップロールと接触する保護フィルムの反対面の算術平均粗さSaが45nmを超えると、バックアップロールから環状ポリオレフィンフィルムへの熱伝導性が面内でばらつくことが起因していると推測される。
つまり、ガスバリアフィルムと剥離可能な保護フィルムとが積層されたガスバリア積層体において、保護フィルムのガスバリアフィルムとは反対面の算術平均粗さSaが45nm以下であることが重要である。一方、上記算術平均粗さSaが小さくなり過ぎると滑り性が低下するので、5nm以上が必要である。
以上より、本発明の上記目的は、以下の発明によって達成される。
[1]環状ポリオレフィンフィルムの一方の面に酸化亜鉛および酸化珪素を含有するガスバリア層を有するガスバリアフィルムと、該ガスバリアフィルムのガスバリア層とは反対面に剥離可能な保護フィルムを有するガスバリア積層体であって、前記保護フィルムの前記ガスバリアフィルムとは反対面の算術平均粗さSaが5〜45nmの範囲である、ガスバリア積層体。
[2]前記ガスバリア層が、酸化亜鉛、酸化珪素および酸化アルミニウムを含有する、[1]に記載のガスバリア積層体。
[3]前記ガスバリアフィルムの水蒸気透過率が1.0×10−3g/m・day未満である、[1]または[2]に記載のガスバリア積層体。
[4]前記保護フィルムの150℃、30分における寸法変化率が長手方向および幅方向ともに1.0%以下である、[1]〜[3]のいずれかに記載のガスバリア積層体。
本発明のガスバリア積層体によれば、耐屈曲性、透明性およびガスバリア性がそれぞれ良好であり、かつガスバリア性の面内ばらつきが小さいガスバリアフィルムが得られる。
本発明のガスバリア積層体の一態様を示した模式断面図である。 本発明のガスバリア積層体の別の態様を示した模式断面図である。 本発明のガスバリア積層体のさらに別の態様を示した模式断面図である。 本発明のガスバリア積層体の製造に用いられる真空成膜装置の一例を示す概略図である。
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明のガスバリア積層体は、ガスバリアフィルムのガスバリア層とは反対面に剥離可能な保護フィルムを有するものである。ここで、保護フィルムは、例えば、ガスバリアフィルムの生産工程、加工工程、輸送・保管工程等において、ガスバリアフィルムを保護する役目を有し、上記役目を終えた保護フィルムは、ガスバリア積層体から剥離除去される。つまり、本発明における保護フィルムは、最終的には剥離除去される、いわゆる剥離性保護フィルムである。
本発明のガスバリア積層体におけるガスバリアフィルムは、環状ポリオレフィンフィルムの一方の面に酸化亜鉛および酸化珪素を含有するガスバリア層を有する。環状ポリオレフィンフィルムに酸化亜鉛および酸化珪素を含有するガスバリア層を設けることにより、透明性およびガスバリア性が高く、耐屈曲性が良好となる。
図1は、本発明のガスバリア積層体の一態様を示す模式断面図である。ガスバリア積層体1は、ガスバリアフィルム2と保護フィルム3が積層されたものである。ガスバリアフィルム2は、環状ポリオレフィンフィルム21の一方の面にガスバリア層22を有する。保護フィルム3は、ガスバリアフィルム2のガスバリア層22とは反対面に積層されている。
図2および図3は、本発明のガスバリア積層体の別の態様、さらに別の態様を示す模式断面図である。図2の態様は、ガスバリアフィルム2が、環状ポリオレフィンフィルム21とガスバリア層22との間にアンダーコート層23を有する。図3の態様は、ガスバリアフィルム2が、環状ポリオレフィンフィルム21とガスバリア層22との間にアンダーコート層23を有し、環状ポリオレフィンフィルム21のガスバリア層22とは反対面にバックコート層24を有する。
[保護フィルム]
保護フィルムは、基材フィルムと粘着剤層を備えていることが好ましい。保護フィルムは上記粘着剤層を介してガスバリアフィルムに積層されることが好ましい。
前述したように、ガスバリア性の面内ばらつきを小さくし、かつ滑り性を確保するという観点から、保護フィルムの反対面の算術平均粗さSaは5〜45nmの範囲であることが重要である。
保護フィルムの反対面の算術平均粗さSaは、ガスバリア性の面内ばらつきを小さくするという観点から、さらに、40nm以下が好ましく、35nm以下が特に好ましい。一方、ガスバリア積層体の滑り性を確保するという観点から、保護フィルムの反対面の算術平均粗さSaは、さらに、7nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましく、13nm以上が特に好ましい。
保護フィルムの反対面の算術平均粗さSaを調整する方法として、例えば、保護フィルムを構成する基材フィルムに不活性粒子を含有させる方法が挙げられる。具体的には、保護フィルムの基材フィルムとしてポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)を用いる場合、PETフィルムの製膜時に含有させる不活性粒子の種類や数平均粒子径を調整することによって、保護フィルムの算術平均粗さSaを制御することができる。本発明でいう、数平均粒子径は沈殿法あるいは光散乱法で測定する。
不活性粒子としては、(1)耐熱性ポリマー粒子(例えば、架橋シリコーン樹脂、架橋ポリスチレン樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、架橋ポリエステルなどからなる粒子)、(2)金属酸化物(例えば、酸化アルミニウム、二酸化チタン、二酸化ケイ素(シリカ)、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウムなど)、(3)金属の炭酸塩(例えば、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムなど)、(4)金属の硫酸塩(例えば、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなど)、(5)炭素(例えば、カーボンブラック、グラファイト、ダイヤモンドなど)、および(6)粘土鉱物(例えば、カオリン、クレー、ベントナイトなど)などのような無機化合物からなる粒子が挙げられる。これら不活性粒子は1種または2種以上混合して使用しても良い。
不活性粒子の数平均粒子径は0.01〜4.0μmであることが好ましく、0.1〜3.0μmがより好ましい。
保護フィルムは、150℃、30分における寸法変化率が長手方向および幅方向ともに1.0%以下であることが好ましい。具体的には、長手方向の上記寸法変化率は、1.0%以下が好ましく、0.8%以下がより好ましく、0.5%以下が特に好ましい。幅方向の上記寸法変化率は、1.0%以下が好ましく、0.5%以下がより好ましく、0.2%以下が特に好ましい。保護フィルムの長手方向および幅方向における上記寸法変化率が1.0%より大きくなると、ガスバリア積層体にシワやカールが発生し、ガスバリア性の面内ばらつきが大きくなることがある。
保護フィルムの上記寸法変化率を上記範囲に制御する方法としては、例えば、保護フィルムの延伸処理後、熱固定工程における熱固定処理条件を調整する方法や、延熱固定工程後にアニール処理を施し、分子構造のゆがみを取り除く方法が挙げられる。
具体的には、保護フィルムの基材フィルムとして二軸延伸されたPETフィルムを用いる場合、熱固定による構造固定が十分に行われ寸法変化率を小さくしやすくするための熱固定処理の温度は、170〜265℃の範囲が好ましく、200〜255℃の範囲がより好ましく、210〜250℃の範囲が特に好ましい。熱固定処理の時間は、1〜120秒間の範囲が好ましく、10〜50秒の範囲がより好ましい。
また、寸法変化率を低減させるための熱固定工程後のアニール処理温度は150〜200℃が好ましく、170〜190℃がより好ましい。アニール処理時間は、1〜120秒が好ましい。前記アニール処理時間の範囲の下限は、1秒が好ましく、5秒がより好ましく、20秒がさらに好ましい。前記アニール処理時間の範囲の上限は、120秒が好ましく、90秒がより好ましく、60秒がさらに好ましい。
保護フィルムを構成する基材フィルムとしては、耐熱性が高いことが好ましく、この観点から、ガラス転移点(Tg)が50℃以上のものが好ましく、具体的には、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム等が挙げられる。
保護フィルムを構成する粘着剤層は、微粘着性であることが好ましい。粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、エポキシ系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ビニル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤などが挙げられる。
粘着剤層の厚みは、1〜50μmであることが好ましく、2〜30μmであることがより好ましく、3〜25μmであることがさらに好ましい。
保護フィルムの厚みは10〜100μmの範囲が好ましく、20〜75μmの範囲がより好ましい。保護フィルムの厚みが100μmを超えると、ガスバリア性の面内ばらつきが大きくなることがある。
保護フィルムは剥離による静電気の発生、埃の付着を防止するために帯電防止層を有しても良い。帯電防止層は基材フィルムと粘着剤層の間に設けることができる。また、基材フィルムや粘着剤層に帯電防止性を付与することができる。
帯電防止層あるいは基材フィルムや粘着剤層に含有させることができる帯電防止剤としては、導電性金属酸化物、イオン性高分子化合物、共役系高分子化合物が挙げられる。
また、本発明のガスバリア積層体は、ガスバリアフィルムのガスバリア層表面に剥離可能な保護フィルムを設けることができる。かかる保護フィルムとしては、上述した保護フィルムや入手可能な一般的な保護フィルムを使用することができる。
[ガスバリアフィルム]
ガスバリアフィルムは、環状ポリオレフィンフィルムの一方の面に酸化亜鉛および酸化珪素を含有するガスバリア層を有する。環状ポリオレフィンフィルムに酸化亜鉛および酸化珪素を含有するガスバリア層を設けることにより、透明性およびガスバリア性が高く、耐屈曲性が良好となる。
ガスバリアフィルムのヘイズ値は小さいことが好ましい。具体的には、ガスバリアフィルムのヘイズ値が、0.6%未満であることが好ましく、0.5%未満であることがより好ましく、0.4%未満であることが特に好ましい。下限のヘイズ値は小さいほど好ましく、従って特に限定されない。
ガスバリアフィルムは高い透明性を有することが好ましい。ガスバリアフィルムの全光線透過率は88%以上であることが好ましく、90%以上であることが特に好ましい。
ガスバリアフィルムは高いガスバリア性を有することが好ましい。具体的には、ガスバリアフィルムの水蒸気透過率が、1.0×10−3g/m・day未満が好ましく、8.0×10−4g/m・day未満がより好ましく、5.0×10−4g/m・day未満が特に好ましい。上記ガスバリアフィルムの水蒸気透過率は、ガスバリア積層体から保護フィルムが剥離された後のガスバリアフィルムの水蒸気透過率である。
ガスバリアフィルムは、ガスバリア性の面内ばらつきが小さいことが好ましい。すなわち、水蒸気透過率の面内ばらつきが小さいことが好ましい。ここで、水蒸気透過率の面内ばらつきとは、ガスバリア層の製膜工程を経て製造されるガスバリアフィルムの幅方向におけるばらつきを意味し、例えば、幅方向に等間隔、例えば200mm間隔でサンプリングした各サンプルの水蒸気透過率を測定し、下記式1で求めた値を水蒸気透過率の面内ばらつき(Wσ)という。尚、上記の水蒸気透過率は、ガスバリア積層体から保護フィルムが剥離された後のガスバリアフィルムの水蒸気透過率である。
Wσ(%)=(Wmax−Wmin)/Wave×100 ・・・式1
式中、Wσは水蒸気透過率の面内ばらつき、Waveは水蒸気透過率の平均値、Wmaxは水蒸気透過率の最大値、Wminは水蒸気透過率の最小値を表す。
水蒸気透過率の面内ばらつき(Wσ)は、150%以下が好ましく、100%以下がより好ましく、80%以下が特に好ましい。
本発明のガスバリアフィルムは、耐屈曲性が高いことが好ましい。上記耐屈曲性の評価方法として円筒形マンドレル法(JIS K5600−5−1:1999)が挙げられる。
円筒形マンドレル法は、直径2mm〜十数mmの円筒マンドレル(円柱棒)にガスバリアフィルムを巻き付けたときのクラック等の発生状況を観察し評価する方法である。具体的には、円筒形マンドレル法(JIS K5600−5−1:1999)に準拠し、ガスバリアフィルムを、ガスバリア層が外側となるように直径2mmの円筒マンドレルに巻き付けたとき、その巻き付け部分のガスバリア層にクラックが発生しないことが好ましい。
[ガスバリア層]
ガスバリア層は、酸化亜鉛および酸化珪素を含有する。ガスバリア層は、さらに、酸化アルミニウムを含有することが好ましい。このガスバリア層は透明性が高く、耐屈曲性が良好である。
ガスバリア層の組成は、後述するようにX線光電子分光法(XPS法)により測定することができる。ガスバリア層の組成は、X線光電子分光法(XPS法)により測定される亜鉛(Zn)原子濃度は20.0〜40.0atom%、珪素(Si)原子濃度は5.0〜20.0atom%、アルミニウム(Al)原子濃度は0.5〜5.0atom%、酸素(O)原子濃度は35.0〜70.0atom%であることが好ましい。
亜鉛(Zn)原子濃度が40.0atom%より大きくなる、または珪素(Si)原子濃度が5.0atom%より小さくなると、酸化亜鉛の結晶成長を抑制する酸化物が不足するため、空隙部分や欠陥部分が増加し、十分なガスバリア性が得られない場合がある。亜鉛(Zn)原子濃度が20.0atom%より小さくなる、または珪素(Si)原子濃度が20.0atom%より大きくなると、層内部の酸化珪素の非晶質成分が増加して層の柔軟性が低下する場合がある。また、アルミニウム(Al)原子濃度が5.0atom%より大きくなると、酸化亜鉛と酸化珪素の親和性が過剰に高くなるため膜硬度が上昇し、熱や外部からの応力に対してクラックが生じやすくなる場合がある。アルミニウム原子濃度が0.5atom%より小さくなると、酸化亜鉛と酸化珪素の親和性が不十分となり、層を形成する粒子間の結合力が向上できないため、柔軟性が低下する場合がある。また、酸素(O)原子濃度が70.0atom%より大きくなると、層内の欠陥量が増加するため、所定のガスバリア性が得られない場合がある。酸素(O)原子濃度が35atom%より小さくなると、亜鉛、珪素、アルミニウムの酸化状態が不十分となり、結晶成長が抑制できず粒子径が大きくなるため、ガスバリア性が悪化する場合がある。かかる観点から、亜鉛(Zn)原子濃度が25.0〜35.0atom%、珪素(Si)原子濃度が10.0〜15.0atom%、アルミニウム(Al)原子濃度が1.0〜3.0atom%、酸素原子濃度が50.0〜64.0atom%であることがより好ましい。
ガスバリア層は、他の金属、例えば、チタン、錫、銅、インジウム、ガリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブテン、タンタルなどの金属、あるいはこれらの金属の酸化物、窒化物、硫化物を、ガスバリア性、耐屈曲性および透明性を低下させない範囲で含むことができる。
ガスバリア層を形成する方法は特に限定されず、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、CVD法等によって形成することができる。
ガスバリア層の厚みは、0.03μm以上が好ましい。ガスバリア層の厚みが0.03μmより薄くなると、ガスバリア性が十分に確保できにくい箇所が発生し、ガスバリアフィルムの面内でガスバリア性がばらつくなどの問題が生じる場合がある。また、本発明にかかるガスバリア層の厚みは、0.5μm以下が好ましく、0.3μm以下がより好ましい。ガスバリア層の厚みが0.5μmより厚くなると、無機物層の形成後に層内に残留する応力が大きくなるため、曲げや外部からの衝撃によってガスバリア層にクラックが発生しやすくなり、使用に伴いガスバリア性が低下する場合がある。ガスバリア性、耐屈曲性を確保する観点からガスバリア層の厚みは0.05μm〜0.2μmの範囲が最も好ましい。
[環状ポリオレフィンフィルム]
ガスバリアフィルムの基材フィルムとしての環状ポリオレフィンフィルムは、環状ポリオレフィン樹脂(COP)あるいは環状ポリオレフィン共重合樹脂(COC)を主成分とする樹脂フィルムである。ここで、主成分とするとは、樹脂フィルムを構成する樹脂成分のうち、COPあるいはCOCの構成比率が50質量%以上であることを意味するものであり、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上であり、特に好ましくは95質量%以上である。
環状ポリオレフィンフィルムは、低リタデーション(複屈折率が小さい)で、有機ELデバイス等に使用した際、色の視野角依存性が小さいという利点を備えている。
環状ポリオレフィン樹脂(COP)とは、「主鎖に環状オレフィンを含有した繰り返し単位」のみを重合させた樹脂を意味する。環状ポリオレフィン共重合樹脂(COC)とは、少なくとも「主鎖に環状オレフィンを含有した繰り返し単位」と「主鎖に環状オレフィンを含有しないオレフィンからなる繰り返し単位」を共重合させた樹脂を意味する。
COP、COCを構成する環状オレフィンとしては、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、3,4−ジメチルシクロペンテン、3−メチルシクロヘキセン、2−(2−メチルブチル)−1−シクロヘキセン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデンなどの単環式オレフィン、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセン、エチルテトラシクロドデセン、エチリデンテトラシクロドデセン、テトラシクロ〔7.4.0.110,13.02,7〕トリデカ−2,4,6,11−テトラエンなどの多環式オレフィン、などが挙げられる。これらの環状オレフィンは、それぞれ単独であるいは2種以上組合せて用いることができる。
環状ポリオレフィン共重合樹脂(COC)を構成する環状オレフィン以外の他のモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等が挙げられる。
環状ポリオレフィンフィルムは、市販品として入手することもできる。市販品としては、例えば、日本ゼオン(株)製の「ゼオネックス」、「ゼオノア」(登録商標)、積水化学工業(株)の「エッシーナ」、JSR(株)の「アートン」(登録商標)、日立化成(株)の「オプトレッツ」、三井化学(株)の「アペル」(登録商標)などがある。
環状ポリオレフィンフィルムの厚みは特に限定されないが、柔軟性を確保する観点から100μm以下が好ましく、75μm以下がより好ましく、50μm以下が特に好ましい。引張りや衝撃に対する強度を確保する観点から5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましい。
環状ポリオレフィンフィルムの製造方法としては、通常のインフレーション法、T−ダイ法、カレンダー法、切削法、流延法、エマルジョン法、ホットプレス法等の製造法が使用でき、フィルム製膜方法としては、従来公知の溶液流延製膜法、あるいは溶融流延製膜法が選択できる。
[アンダーコート層]
ガスバリアフィルムは、環状ポリオレフィンフィルムとガスバリア層との間にアンダーコート層を配置することができる。アンダーコート層は、環状ポリオレフィンフィルムとガスバリア層の密着性を強化する機能および平滑化機能を有する。前述したように、環状ポリオレフィンフィルムは、平滑性が比較的高いが、アンダーコート層を設けることによりさらに平滑化することができる。このような、アンダーコート層上にガスバリア層を積層することにより、ガスバリア性がさらに向上する。
上記観点から、アンダーコート層の表面の算術平均粗さSaは、1.5nm未満であることが好ましく、1.3nm未満であることがより好ましく、1.0nm未満であることが特に好ましい。下限の算術平均粗さSaは、特に限定されないが、現実的な下限は0.1nm程度である。
アンダーコート層は、樹脂成分として熱硬化性樹脂や活性エネルギー線硬化性樹脂を含むことが好ましく、特に活性エネルギー線硬化性樹脂を含むことが好ましい。
アンダーコート層は、ガスバリアフィルムの耐屈曲性を向上させるという観点から、伸長クラック伸度が7%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましい。また、伸長クラック伸度は200%以下が適当であり、100%以下が好ましい。
伸長クラック伸度とは、環状ポリオレフィンフィルム上にアンダーコート層が積層された状態のフィルムの片側を固定して引張速度50mm/minでフィルムを引っ張ったときに、アンダーコート層にクラックが発生するときの伸び率である。
上記観点から、アンダーコート層は、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーもしくはウレタン(メタ)アクリレートモノマーを含有することが好ましい。特にウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーもしくはウレタン(メタ)アクリレートモノマーとしては、具体的には、共栄化学社製のAT−600、UA−101l、UA−306H、UA−306T、UA−306l、UF−8001、UF−8003等、日本合成化学社製のUV7550B、UV−7600B、UV−1700B、UV−6300B、UV−7605B、UV−7640B、UV−7650B等、新中村化学社製のU−4HA、U−6HA、UA−100H、U−6LPA、U−15HA、UA−32P、U−324A、U−2PPA、UA−NDP等、ダイセルユーシービー社製のEbecryl−270、Ebecryl−284、Ebecryl−264、Ebecryl−9260、Ebecryl−1290、Ebecryl−1290K、Ebecryl−5129等、根上工業社製のUN−3220HA、UN−3220HB、UN−3220HC、UN−3220HS等、三菱レイヨン社製のRQシリーズ、荒川化学工業社製のビームセットシリーズ等が挙げられる。
アンダーコート層の厚みは、0.5〜10.0μmの範囲が好ましく、0.7〜5.0μmの範囲がより好ましく、1.0〜3.0μmの範囲が特に好ましい。
アンダーコート層は、ウェットコーティングされることが好ましい。かかるウェットコーティングに用いられる塗布方法としては、例えばリバースコート法、スプレーコート法、バーコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、ダイコート法、スピンコート法、エクストルージョンコート法等が挙げられる。
[バックコート層]
ガスバリアフィルムは、環状ポリオレフィンフィルムのガスバリア層が設けられた面とは反対面にバックコート層を設けることができる。バックコート層を設けることにより、耐擦傷性が向上し、またガスバリアフィルムのカールの発生が抑制される。
バックコート層の厚みは、ガスバリアフィルムのカールを抑制するという観点から、0.5〜4.0μmの範囲が好ましく、0.7〜3.0μmの範囲がより好ましく、1.0〜2.0μmの範囲が特に好ましい。
バックコート層が積層されたガスバリアフィルムは、良好な耐屈曲性を確保するという観点から、円筒形マンドレル法(JIS K5600−5−1:1999)に準拠し、ガスバリアフィルムを、バックコート層が外側となるように直径2mmの円筒マンドレルに巻き付けたとき、その巻き付け部分のバックコート層にクラックが発生しないことが好ましい。
上記したように、バックコート層に良好な耐屈曲性を付与するという観点から、バックコート層のナノインデンテーション法により測定される押し込み硬さは、200〜600N/mmの範囲が好ましく、250〜550N/mmの範囲がより好ましく、特に300〜500N/mmの範囲が好ましい。
上記観点から、バックコート層の樹脂成分としては、ウレタン系樹脂を用いることが好ましい。つまり、バックコート層は、ウレタン系樹脂(ウレタン(メタ)アクリレートモノマーやオリゴマー)を含有する活性エネルギー線硬化樹脂層であることが好ましい。上記ウレタン系樹脂としては、1〜5官能のウレタン系樹脂が好ましく、1〜4官能のウレタン系樹脂がより好ましく、1〜3官能のウレタン樹脂が特に好ましい。
本発明にかかるバックコート層は剥離による静電気の発生、埃の付着を防止するために帯電防止剤を含有させ帯電防止性機能を持たせることができる。帯電防止剤としては、導電性金属酸化物、イオン性高分子化合物、共役系高分子化合物が挙げられる。本発明における帯電防止剤は、電子導電メカニズムが空気中の水分に依らないため湿度による帯電防止性能の変化量が非常に小さい共役系高分子化合物であることが好ましい。なかでも安定性に優れ、透明性の高いポリチオフェン系導電性高分子がより好ましい。
[ガスバリアフィルムの適用例]
本発明のガスバリア積層体および保護フィルムが剥離された後のガスバリアフィルムは、医薬品などの包装材、有機EL照明、有機ELデバイス、太陽電池などの電子デバイスの素子の表面側あるいは裏面側に用いることができる。特に、有機ELデバイスに好適である。
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明する。ただし、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
[評価方法]
各実施例および比較例における評価方法を説明する。評価n数は、特に断らない限り、n=5とし平均値を求めた。
(1)ガスバリア層の厚み
断面観察用サンプルをマイクロサンプリングシステム(日立製FB−2000A)を使用してFIB法により(具体的には「高分子表面加工学」(岩森暁著)p.118〜119に記載の方法に基づいて)作製した。透過型電子顕微鏡(TEM、日立製H−9000UHRII)により、加速電圧300kVとして、観察用サンプルの断面を観察し、ガスバリア層の厚みを求めた。
(2)ガスバリアフィルムの水蒸気透過率の測定
実施例及び比較例で作られたガスバリア積層体について、全幅方向に対して、200mm間隔でサンプルリングし、5検体を採取した。1つのサンプルのサイズは、50cmである。採取した5検体のサンプルの水蒸気透過率を温度40℃、相対湿度90%、測定面積50cmの条件で、英国テクノロックス(Technolox)社製の水蒸気透過率測定装置“DELTAPERM”を使用して測定した。得られた5点の平均値を水蒸気透過率(g/m・day)とした。測定は、ガスバリア積層体から保護フィルムを剥離した後のガスバリアフィルムで実施した。
また、上記測定で得られた水蒸気透過率の5点の平均値(Wave)、最大値(Wmax)および最小値(Wmin)から下記式1にて水蒸気透過率の面内ばらつき(Wσ)を算出した。
Wσ(%)=(Wmax−Wmin)/Wave×100 ・・・式1
(3)ヘイズ値の測定
JIS K7361(1997)に基づき、濁度計NDH2000(日本電色工業(株)製)を用いて測定した。測定は、縦5cm×横5cmのサイズに切り出したガスバリアフィルム3枚について行った。測定回数は各5回とし、合計15回測定の平均値をヘイズ値とした。
(4)全光線透過率
JIS K7361(1997)に基づき、濁度計NDH2000(日本電色工業(株)製)を用いて測定した。測定は、縦5cm×横5cmのサイズに切り出したガスバリアフィルム3枚について行った。測定回数は各5回とし、合計15回測定の平均値を全光線透過率とした。
(5)算術平均粗さ(Sa)の測定
JIS B0601(2013)に準拠して、光干渉式非接触表面形状測定器として、非接触表面・層断面計測システム(株式会社菱化システム製「VertScan2.0」)を用いて、ガスバリアフィルムの表面観察(観察視野:93.91μm×70.20μm)を実施し、アンダーコート層表面、および保護フィルムの反対面表面について、算術平均粗さ(Sa)を測定した。
(6)滑り性
ガスバリア積層体を切断して2枚のシート片(20cm×15cm)を作製する。
この2枚のシート片の保護フィルムの面とガスバリア層の面とが向き合うように2枚のシート片を僅かにずらして重ね合わせて平滑な台上の置き、下方のシート片を指で台上に固定し、上方のシート片を手で滑らせる方法で滑り性の良否判定を行った。
A:上方のシート片の滑り性が良好である。
B:上方のシート片の滑り性は劣るが比較的良好である。
C:上方のシート片が滑らない。
(7)150℃、30分における長手方向、幅方向の寸法変化率
JIS K 7133(1999)に準拠し、加熱前の寸法をL、150℃、30分の条件で加熱後、30分間室温で放冷し測定した寸法をLとし、下記式2から長手方向、幅方向の寸法変化率(%)を測定した。
(L−L)/L×100・・・式2
(8)ガスバリアフィルムのガスバリア層の耐屈曲性の評価
円筒形マンドレル法(JIS K5600−5−1:1999)に準拠して、直径2mmの円筒形マンドレルに、ガスバリアフィルムのガスバリア層側が外側になるように巻き付け、その巻き付け部分のガスバリア層にクラックが生じるか否かを目視で観察し、以下の基準で評価した。
A:クラックが確認できない。
B:クラックが確認される。
(9)バックコート層のナノインデンテーション法による押し込み硬さの測定
(株)エリオニクス製のナノインデンター「ENT−2100」を用いて測定した。環状ポリオレフィンフィルムにバックコート層が積層されたサンプルについて、バックコート層とは反対面を、接着剤(東亞合成(株)製「“アロンアルファ”(登録商標)」を介して専用のサンプル固定台に固定し、バックコート層の押し込み硬さ(HIT(N/mm))を、稜間角115°の三角錐ダイヤモンド圧子(Berkovich圧子)を用いて下記条件にて測定した。測定データは「ENT−2100」の専用解析ソフト(version 6.18)により処理した。
<測定条件>
・測定モード:負荷−除荷試験
・最大荷重:100mN
・最大荷重に達した時の保持時間:1秒
・荷重速度、除荷速度:10mN/sec
・押し込み深さ:膜厚の1/10
(10)ガスバリア層の組成分析
ガスバリア層の組成分析(ガスバリア層が酸化亜鉛、二酸化ケイ素、酸化アルミニウムを含むかどうか、および各元素の含有比率)は、X線光電子分光法(XPS法)により行った。すなわち、アルゴンイオンを用いたスパッタエッチングにより、最表層を5nm程度エッチングして除去した後、各元素の含有比率を測定した。また、検出されるピークにより酸化亜鉛、二酸化ケイ素、酸化アルミニウムの含有を確認した。
XPS法の測定条件は下記の通りである。
・装置 :ESCA 5800(アルバックファイ社製)
・励起X線 :monochromatic AlKα
・X線出力 :300W
・X線径 :800μm
・光電子脱出角度 :45°
・Arイオンエッチング :2.0kV、10mPa。
[保護フィルムの製造]
<製造例1;保護フィルムaの製造>
下記製造のポリエステルフィルムaの片面に、アクリル系接着剤(綜研化学社製、SKダイン1491H)100質量部、硬化剤(綜研化学社製、硬化剤L−45)0.9質量部、及び希釈溶剤からなる接着剤層塗布液を塗布、乾燥し、厚み4μmの粘着剤層を積層して、保護フィルムaを得た。
<ポリエステルフィルムaの製造>
下記チップaに不活性粒子として数平均粒径1μmのポリスチレン粒子を0.50質量%含有させたポリエステルaを170度で3時間乾燥後、溶解温度280〜300℃にて溶解した。平均目開き1μmの鋼線フィルターで高精度ろ過したのち、溶解押出して、温度25℃のキャスティングドラム上にて急冷して、未延伸フィルムを得た。次にこのようにして得られた未延伸フィルムを予熱し、ロール延伸法にて110℃で3倍に縦延伸した。続いて110℃で幅方向に倍延伸し、230℃で3秒間過熱し熱固定処理した。次に得られたフィルムを温度180℃で30秒間アニール処理し、厚み75μmのポリエステルフィルムaを得た。
<チップaの製造>
テレフタル酸ジメチル100質量部、エチレングリコール70質量部、酢酸カルシウム0.09質量部を反応器に入れて180〜210℃にてエステル交換反応を施し、メタノールを留出させた。エステル交換反応が終了した時点でリン酸0.02質量部および三酸化アンチモン0.03質量部を添加し、引き続いて系内を徐々に減圧し、60分で1mmHg以下とした。それと同時に徐々に昇温し290℃とした。重縮合反応を2時間実施し、その後吐出ノズルより水中に押出しカッターによって直径約5mm、長さ約7mmの円柱状のチップaとした。
<製造例2;保護フィルムbの製造>
製造例1のポリエステルフィルムaの製造において、熱固定処理条件を230℃、6秒間に変更し、かつアニール処理条件を190℃、60秒間に変更する以外は、製造例1と同様にしてポリエステルフィルムbを製造した。このポリエステルフィルムbの片面に製造例1と同様にしてアクリル系粘着剤層を積層して保護フィルムbを得た。
<製造例3;保護フィルムcの製造>
製造例1のポリエステルフィルムaの製造において、チップaに含有させる不活性粒子を数平均粒径0.3μmのポリスチレン粒子に変更する以外は、製造例1と同様にしてポリエステルフィルムcを製造した。このポリエステルフィルムcの片面に製造例1と同様にしてアクリル系粘着剤層を積層して保護フィルムcを得た。
<製造例4;保護フィルムdの製造>
製造例1のポリエステルフィルムaの製造において、チップaに含有させる不活性粒子を数平均粒径0.1μmのポリスチレン粒子に変更する以外は、製造例1と同様にしてポリエステルフィルムdを製造した。このポリエステルフィルムdの片面に製造例1と同様にしてアクリル系粘着剤層を積層して保護フィルムdを得た。
<製造例5;保護フィルムeの製造>
製造例1のポリエステルフィルムaの製造において、チップaに含有させる不活性粒子を数平均粒径2.8μmのシリカ粒子のエチレングリコーススラリーに変更し、かつ添加量を0.05質量%に変更する以外は、製造例1と同様にしてポリエステルフィルムeを製造した。このポリエステルフィルムeの片面に製造例1と同様にしてアクリル系粘着剤層を積層して保護フィルムeを得た。
<製造例6;保護フィルムfの製造>
製造例1のポリエステルフィルムaの製造において、熱固定処理条件を温度190℃、3秒間に変更する以外は、製造例1と同様にしてポリエステルフィルムfを製造した。このポリエステルフィルムfの片面に製造例1と同様にしてアクリル系粘着剤層を積層して保護フィルムfを得た。
<製造例7;保護フィルムgの製造>
<ポリエステルgの製造方法>
製造例1のポリエステルフィルムaの製造において、チップaと下記チップgを質量比1:1で混合し、180℃で6時間減圧乾燥した後、押出機に供給し、280℃で溶解した以外は、製造例1と同様に押出、延伸してポリエステルフィルムgを得た。このポリエステルフィルムgの片面に製造例1と同様にしてアクリル系粘着剤層を積層して保護フィルムgを得た。
<チップgの製造>
チップaに、不活性粒子として粒子中の組成がジビニルベンゼン81質量%であり、数平均粒径0.1μmであるジビニルベンゼン粒子を1質量%含有する水スラリーを添加し、水分をベントで系外に押し出しながら該粒子を練りこみ、チップgを得た。
<製造例8;保護フィルムhの製造>
製造例1のポリエステルフィルムaの製造において、チップaに含有させる不活性粒子を数平均粒径2.8μmのシリカ粒子のエチレングリコールスラリーに変更し、かつ添加量を0.20質量%に変更する以外は、製造例1と同様にしてポリエステルフィルムhを製造した。このポリエステルフィルムhの片面に製造例1と同様にしてアクリル系粘着剤層を積層して保護フィルムhを得た。
(実施例1)
<保護フィルムの貼合>
厚みが50μmの環状ポリオレフィンフィルム(日本ゼオン(株)の「ZeonorFilm」(登録商標)ZF14:片面に既存保護フィルムを有する)の既存保護フィルムを剥がし、その剥がした面に保護フィルムaを該保護フィルムaの粘着剤層を介して積層した。
<ガスバリア層の積層>
環状ポリオレフィンフィルムの保護フィルムaが積層された面の反対面に、図4に示す巻き取り式スパッタリング装置を使用し、酸化亜鉛/酸化珪素/酸化アルミニウムの組成質量比が77/20/3である混合焼結材をスパッタターゲットとして使用し、アルゴンガスおよび酸素ガスによるスパッタリングを実施しガスバリア層を積層して、ガスバリアフィルムを得た。
具体的な操作は以下の通りである。スパッタ電極71および72にスパッタターゲットを設置した、ロール・ツー・ロールの巻き取り式スパッタ装置4中で、巻き出し軸5に、保護フィルムが積層された環状ポリオレフィンフィルム7の保護フィルムが積層されていない面がスパッタ電極71および72に対向するようにセットして巻き出し、ガイドロール80および81を介して、スパッタリング時の環状ポリオレフィンフィルムの表面温度が150℃になるよう温度調整されたバックアップロール6に通した。減圧度2×10−1Paとなるようにアルゴンガスおよび酸素ガス(酸素ガスの比率は10%)を導入し、直流電源により投入電力4000Wを印加することにより、アルゴン・酸素ガスプラズマを発生させ、ガスバリア層を形成した。その後、ガイドロール82、83および84を介して巻き取り軸9に巻き取った。
このガスバリア層の組成は、Zn原子濃度が27.5atom%、Si原子濃度が13.1atom%、Al原子濃度が2.3atom%、O原子濃度が57.1atom%であった。ガスバリア層の厚みは0.15μmであった。
(実施例2)
実施例1において、保護フィルムaを保護フィルムbに変更する以外は、実施例1と同様にしてガスバリアフィルムを得た。
(実施例3)
実施例1において、環状ポリオレフィンフィルムの保護フィルムが積層された面の反対面にガスバリア層積層前にアンダーコート層を積層する以外は実施例1と同様にガスバリアフィルムを得た。
<アンダーコート層の積層>
アンダーコート層形成用の塗工液として、DIC(株)製“ユニディック”(登録商標)RC29−124(ウレタンアクリレート系UV硬化型フィルムコート剤)をメチルエチルケトン(以下、MEKという場合がある)にてNV(固形分濃度)50質量%に調製したものを用いた。この塗工液をバーコーターで塗布、100℃で1分間乾燥後、紫外線を300mJ/cmの強度で照射して硬化させ、厚みが1.0μmのアンダーコート層を設けた。
(実施例4)
実施例3において、環状ポリオレフィンフィルムのアンダーコート層とは反対面に下記のバックコート層を積層し、バックコート層上に保護フィルムaを積層する以外は実施例3と同様にして、ガスバリアフィルムを作成した。
<バックコート層の積層>
下記の塗工液をバーコーターで塗布、100℃で1分間乾燥後、紫外線を300mJ/cmの強度で照射して硬化させ、厚みが1.0μmのバックコート層を設けた。
<塗工液>
3官能のウレタンアクリレートオリゴマーを含有する紫外線硬化性樹脂塗布液(日本合成化学(株)の「UV−7550B」)を有機溶剤(MEK)で希釈して固形分濃度が20質量%の塗布液を調製した。
(実施例5)
実施例1において、保護フィルムaを保護フィルムcに変更する以外は、実施例1と同様にしてガスバリアフィルムを得た。
(実施例6)
実施例1において、保護フィルムaを保護フィルムdに変更する以外は、実施例1と同様にしてガスバリアフィルムを得た。
(実施例7)
実施例1において、保護フィルムaを保護フィルムeに変更する以外は、実施例1と同様にしてガスバリアフィルムを得た。
(実施例8)
実施例1において、保護フィルムaを保護フィルムfに変更する以外は、実施例1と同様にしてガスバリアフィルムを得た。
(比較例1)
実施例1において、保護フィルムaを保護フィルムgに変更する以外は、実施例1と同様にしてガスバリアフィルムを得た。
(比較例2)
実施例1において、保護フィルムaを保護フィルムhに変更する以外は、実施例1と同様にしてガスバリアフィルムを得た。
(比較例3)
バリア層形成時に二酸化珪素を焼結したスパッタターゲットを使用した以外は実施例1と同様にしてガスバリアフィルムを得た。
<ガスバリアフィルムの評価>
上記で作製した実施例および比較例のガスバリア積層体およびガスバリアフィルムを評価した結果を表1、表2に示す。
Figure 2019042943
Figure 2019042943
1 ガスバリア積層体
2 ガスバリアフィルム
21 環状ポリオレフィンフィルム
22 ガスバリア層
23 アンダーコート層
24 バックコート層
3 保護フィルム
4 巻き取り式スパッタ装置
5 巻き出し軸
6 バックアップロール
7 保護フィルムが積層された環状ポリオレフィンフィルム
9 巻き取り軸
71、72 スパッタ電極
80、81、82、83、84 ガイドロール

Claims (4)

  1. 環状ポリオレフィンフィルムの一方の面に酸化亜鉛および酸化珪素を含有するガスバリア層を有するガスバリアフィルムと、該ガスバリアフィルムのガスバリア層とは反対面に剥離可能な保護フィルムを有するガスバリア積層体であって、前記保護フィルムの前記ガスバリアフィルムとは反対面の算術平均粗さSaが5〜45nmの範囲である、ガスバリア積層体。
  2. 前記ガスバリア層が、酸化亜鉛、酸化珪素および酸化アルミニウムを含有する、請求項1に記載のガスバリア積層体。
  3. 前記ガスバリアフィルムの水蒸気透過率が1.0×10−3g/m・day未満である、請求項1または2に記載のガスバリア積層体。
  4. 前記保護フィルムの150℃、30分における寸法変化率が長手方向および幅方向ともに1.0%以下である、請求項1〜3のいずれかに記載のガスバリア積層体。
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