以下、本発明を詳細に説明する。
〔本発明のアミノ基含有共重合体〕
<ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート>
本発明のアミノ基含有共重合体は、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート〔以下、単量体(A)ともいう〕に由来の構造単位(a)を特定の割合で有することを必須としている。
ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートとは、ヒドロキシプロピルアクリレートまたはヒドロキシプロピルメタクリレートをいう。本発明のアミノ基含有共重合体は、アルカリ条件下においても安定して優れた鉄イオン沈着防止能を発現することから、ヒドロキシプロピルメタクリレートに由来する構造単位(a)を有することが好ましい。
前記構造単位(a)は、単量体(A)、すなわちヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートにおいて、不飽和二重結合が単結合になった形態となる。構造単位(a)は、具体的には、以下の一般式(a1)〜(a3)で表すことができる。
一般式(a1)〜(a3)において、R0は、水素原子またはメチル基を表す。
本発明のアミノ基含有共重合体は、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート(単量体A)由来の構造単位(a)を全単量体由来の構造100質量%に対して、1質量%以上90質量%以下の割合で有することを必須としている。本発明において、全単量体とは、単量体(A)、単量体(B)、単量体(C)、単量体(D)(すなわち、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、カルボキシル基含有単量体、アミノ基含有単量体、その他の単量体)をいう。構造単位(a)が上記範囲内であれば、優れた共重合体の鉄イオン沈着防止能や界面活性剤との相溶性の向上効果が得られる。全単量体由来の構造100質量%に対する構造単位(a)の割合は、好ましくは5質量%以上90質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以上90質量%以下であり、特に好ましくは20質量%以上90質量%以下である。本発明のアミノ基含有共重合体が、前記範囲で単量体(A)由来の構造単位(a)を有することにより、鉄イオン沈着防止能や界面活性剤との相溶性が向上する。
構造単位(a)は、界面活性剤との親和性が高いことから、本発明のアミノ基含有共重合体が前記範囲で構造単位(a)を有することにより、界面活性剤との相溶性が向上すると考えられる。また、構造単位(a)は、2個の配位結合を形成することから、水酸化鉄とも相互作用しやすいので、鉄イオン沈着防止能が向上する。
構造単位(a)はエステル基を有するが、エステル基周辺が疎水性雰囲気であるため、耐加水分解性が強く、安定性が高いことから、本発明のアミノ基含有共重合体は、安定して優れた鉄イオン沈着防止能や界面活性剤との相溶性などを発現することができる。また、構造単位(a)のエステル基は、仮に加水分解したとしても、生成するプロピレングリコールは、安全性が高いことから、本発明のアミノ基含有共重合体は、化粧品用途などの安全性を厳しく要求される分野においても、好ましく使用することができる。さらに、単量体(A)は、水溶性を示すことから、水溶液重合が可能であり、有機溶剤などの混入を著しく少なく設計することが可能であるから、有機溶剤などの混入が厳しく管理される用途への適用も可能になる。
<カルボキシル基含有単量体>
本発明のアミノ基含有共重合体は、カルボキシル基含有単量体(B)由来の構造単位(b)を特定の割合で有することを必須としている。
カルボキシル基含有単量体(B)は、1)不飽和二重結合と2)カルボキシル基および/またはその塩を必須として含有する単量体である(但し、単量体(C)に属する単量体は、単量体(B)から除くものとする)。具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、αーヒドロキシアクリル酸、α−ヒドロキシメチルアクリル酸およびその誘導体などの不飽和モノカルボン酸およびこれらの塩など;イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、2−メチレングルタル酸などの不飽和ジカルボン酸およびこれらの塩などが挙げられる。不飽和ジカルボン酸およびこれらの塩としては、分子内に1つの不飽和基と2つのカルボキシル基を有する単量体であればよいが、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フマル酸などや、それらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩、有機アンモニウム塩(有機アミン塩)など、それらの無水物が好適である。カルボキシル基含有単量体(B)は、不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素数1〜22個のアルコールとのハーフエステル、不飽和ジカルボン酸類と炭素数1〜22のアミンとのハーフアミド、不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素数2〜4のグリコールとのハーフエステル、マレアミド酸と炭素数2〜4のグリコールとのハーフアミドなどであってもよい。
不飽和モノカルボン酸の塩および不飽和ジカルボン酸の塩は、金属塩、アンモニウム塩または有機アミン塩である。金属塩としては、ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、セシウム塩などのアルカリ金属の一価の金属の塩;マグネシウム塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩などのアルカリ土類金属の塩;アルミニウム、鉄などの塩などが挙げられる。また、有機アミン塩としては、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩などのアルカノールアミン塩;モノエチルアミン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩などのアルキルアミン塩;エチレンジアミン塩、トリエチレンジアミン塩などのポリアミンなどの有機アミンの塩が挙げられる。これらのうち、得られる共重合体の鉄イオン沈着防止能の向上効果が高いことから、アンモニウム塩、ナトリウム塩およびカリウム塩が好ましく、より好ましくはナトリウム塩である。
カルボキシル基含有単量体(B)の中では、アクリル酸、アクリル酸塩、マレイン酸およびマレイン酸塩は、得られる共重合体の鉄イオン沈着防止能の向上効果が高いことから好ましく、アクリル酸またはアクリル酸塩を必須とすることがより好ましい。
カルボキシル基含有単量体(B)は、1種のみであってもよいが、2種類以上の由来の構造を有してもよい。この場合、本発明のアミノ基含有共重合体は、全種のカルボキシル基含有単量体(B)由来の構造単位(b)の合計を特定の割合で有することになる。
前記構造単位(b)は、単量体(B)の不飽和二重結合が単結合になったときの形態である。
本発明のアミノ基含有共重合体は、カルボキシル基含有単量体(B)由来の構造単位(b)を全単量体由来の構造100質量%〔構造単位(a)、(b)、(c)および(d)の総質量100質量%〕に対して、9質量%以上98質量%以下の割合で有することを必須としている。構造単位(b)が上記範囲内であれば、優れた共重合体の鉄イオン沈着防止能の向上効果が得られる。全単量体由来の構造100質量%に対する構造単位(b)の割合は、好ましくは8質量%以上93質量%以下であり、さらに好ましくは7質量%以上87質量%以下であり、特に好ましくは6質量%以上76質量%以下である。
本発明のアミノ基含有共重合体は、洗剤ビルダーとして使用した場合、構造単位(b)を特定割合で有することにより、重合体の水溶性が良好になり、構造単位(a)により相互作用した汚れ粒子を分散する効果を発揮することが可能となる。
なお、本発明において、カルボキシル基含有単量体(B)由来の構造単位(b)の全単量体由来の構造に対する質量割合(質量%)を計算する場合は、対応する酸換算として計算するものとする。例えば、アクリル酸ナトリウムに由来の構造単位−CH2−CH(COONa)−であれば、対応する酸であるアクリル酸由来の構造単位−CH2−CH(COOH)−として、質量割合(質量%)の計算をする。これと同様に、カルボキシル基含有単量体(B)の全単量体に対する質量割合(質量%)を計算する場合にも、対応する酸換算として計算するものとする。例えば、アクリル酸ナトリウムであれば、対応する酸であるアクリル酸として質量割合(質量%)の計算をする。
さらに、カルボキシル基含有単量体(B)以外の酸基含有単量体由来の構造単位の全単量体由来の構造に対する質量割合(質量%)を計算する場合は、対応する酸換算として計算するものとし、カルボキシル基含有単量体(B)以外の酸基含有単量体の全単量体に対する質量割合(質量%)を計算する場合も、対応する酸換算として計算するものとする。アミノ基含有単量体由来の構造単位およびアミノ基含有単量体についても、対応する未中和アミン由来の構造単位および未中和アミンとして質量計算するものとする。例えば、ビニルアミン塩酸塩の場合、対応する未中和アミンであるビニルアミンとして質量割合(質量%)を計算する。アミノ基含有単量体由来の構造単位およびアミノ基含有単量体におけるアミノ基が4級化されている場合には、質量割合(質量%)を計算する場合には、カウンターアニオンは考慮しないで計算するものとする。
<アミノ基含有単量体>
本発明のアミノ基含有共重合体は、アミノ基含有単量体(C)由来の構造単位(c)を特定の割合で有することを必須としている。
本発明において、アミノ基含有単量体(C)とは、1)不飽和二重結合(炭素炭素二重結合)と2)アミノ基を必須として含有する単量体である(但し、単量体(B)に属する単量体は、単量体(C)から除くものとする)。
本発明において、アミノ基含有共重合体を構成する構造単位(c)は、好ましくはビニルピリジン、ビニルイミダゾールなどの複素環式芳香族炭化水素基を有するビニル芳香族系単量体、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリレート、アミノエチルメタクリレートなどのアミノアルキル(メタ)アクリレート類、ジアリルアミン、ジアリルジメチルアミンなどのアリルアミン類、下記一般式(C1)〜(C2)で表される不飽和単量体(C)など、およびこれらの4級化物や塩が挙げられる。特に好ましくは下記一般式(C1)〜(C2)で表される不飽和単量体(C)およびこれらの単量体を4級化した単量体(C)に由来する構造単位である。本発明において、構造単位(c)は、その1種が単独で存在していてもよく、あるいは2種以上の混合物の形態で存在していてもよい。
一般式(C1)〜(C2)において、R0は、水素原子またはメチル基を表し、R1は、単結合、CH2、CH2CH2であり、R2およびR3は、水素原子または炭素数1〜20の有機基を表わす。R2およびR3は、同一であってもよく、あるいは異なるものであってもよい。また、R2およびR3は、結合して環状構造を形成してもよい。R1が単結合である場合とは、H2C=C(R0)−R1−Oのとき、H2C=C(R0)−Oであることを表す。
R2およびR3が表わす有機基としては、炭素数が1〜20であれば特に制限されないが、置換されたまたは無置換のアルキル基、アリール基、アルケニル基または下記(一般式1)〜(一般式9)で表される基であることが特に好ましい。
(一般式1)〜(一般式9)において、X1〜X9は、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基または有機アミン基を表わす。X1〜X9は、同一であってもよく、あるいは異なるものであってもよい。また、X1〜X9は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基または有機アミン基である場合、(一般式1)〜(一般式9)は、塩を表すこととなる。なお、(一般式6)におけるアミノ基は、4級化していてもよい。(一般式6)におけるR6およびR7は、水素原子、炭素数1〜18の置換されたまたは無置換のアルキル基、アリール基またはアルケニル基である。アルカリ金属原子としては、例えば、ナトリウム、リチウム、カリウム、ルビジウム、セシウムなどが好適に挙げられる。アルカリ土類金属原子としては、例えば、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどが好適に挙げられる。有機アミン基としては、例えば、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミンなどのアルキルアミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミン;エチレンジアミン、トリエチレンジアミンなどのポリアミンなどが好適に挙げられる。
上記一般式(C1)および一般式(C2)における有機基が置換されたまたは無置換のアルキル基、アリール基、アルケニル基である場合の好ましい例示として、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、オクチル基、ラウリル基、ステアリル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基のアルキル基;ブチレン基、オクチレン基、ノニレン基などのアルケニル基;フェニル基、フェネチル基、2,3−若しくは2,4−キシリル基、メシチル基、ナフチル基などのアリール基、またはこれらの水素原子の一部が、アルコキシ基、カルボキシル基、カルボキシエステル基、アミノ基、アミド基、水酸基などで置換された基が挙げられる。
一般式(C1)および一般式(C2)における有機基としては、より好ましくは炭素数1〜12であり、特に好ましくは炭素数1〜8である。一般式(C1)および一般式(C2)において、R2およびR3は、好ましくは両方が炭素数1〜20の有機基である場合であるが、R4およびR5が同時に水素原子であってもよく、R4およびR5のいずれか一方が水素原子であり、他方が有機基であることも好ましい。
一般式(C1)および一般式(C2)において、R2およびR3は、結合して環状構造を形成するとは、具体的には上記一般式(C1)および一般式(C2)それぞれが下記一般式(C3)または一般式(C4)で表されることをいう。
一般式(C3)および一般式(C4)において、R0は一般式(C1)および一般式(C2)とそれぞれ同様であり、一般式(C3)および一般式(C4)において、下記一般式(C5)の構造は、好ましくは全体として窒素原子を含む4員〜8員の複素環を表す。複素環としては、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環など、およびこれらの環構造に結合する水素原子の一部が炭素数1〜4のアルキル基で置換された複素環が例示される。
一般式(C3)および一般式(C4)で表される不飽和単量体は、(メタ)アリルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテルのエポキシ環に、4員〜8員の複素環を有するアミンを反応させることによって製造される単量体であることが好ましい。4員〜8員の複素環を有するアミンとしては、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、およびこれらの有する複素環に結合する水素原子の一部が炭素数1〜4のアルキル基で置換されたアミンが例示される。
一般式(C1)および一般式(C2)で表される不飽和単量体(C)を4級化した単量体とは、具体的には、下記一般式(C6)および一般式(C7)で表される不飽和単量体(C)である。
上記一般式(C6)および一般式(C7)において、R0およびR1は、上記一般式(C1)および一般式(C2)におけるR0およびR1と同じであり、上記一般式(C6)および一般式(C7)において、R2、R3およびR4は、上記一般式(C1)および一般式(C2)におけるR2、R3およびR4と同じである。この際、R2、R3およびR4は、同一であってもあるいは異なるものであってもよい。また、R2、R3およびR4のいずれか2つの基は、結合して環状構造を形成してもよい。
上記一般式(C6)および一般式(C7)において、A-は、カウンターアニオンを表す。A-は、一価のカウンターアニオンであることが好ましく、例えば、Cl-、Br-、I-などのハロゲン原子のイオン;メチル硫酸イオン、エチル硫酸イオンなどの、アルキル硫酸イオンが好ましい。
上記一般式(C1)および一般式(C2)で表されるアミノ基含有単量体は、(メタ)アリルグリシジルエーテル、イソプレニルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテルのエポキシ環に、アミンを反応させることにより得られる単量体が好ましい。
上記一般式(C1)および一般式(C2)で表されるアミノ基含有単量体が4級化した単量体(上記一般式(C6)および一般式(C7)で表されるアミノ基含有単量体)は、上記一般式(C1)および一般式(C2)で表されるアミノ基含有単量体を適切な4級化剤で4級化しても、(メタ)アリルグリシジルエーテル、イソプレニルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテルのエポキシ環に、直接、トリメチルアミン塩酸塩などの3級アミン塩を反応することにより製造してもよい。
なお、上述したように、本発明のアミノ基含有共重合体の製造において、一般式(C1)および一般式(C2)で表されるアミノ基含有単量体は、いずれか1方を単独または2種以上で使用しても、あるいはそれぞれ1種または2種以上を使用してもよい。上記一般式(C1)および一般式(C2)で表されるアミノ基含有単量体の製造に使用するアミンとして、好ましくはジメチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジn−ブチルアミンなどのジアルキルアミン;ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミンなどのアルカノールアミン;イミノジ酢酸、グリシンなどのアミノカルボン酸;モルホリン、ピロールなどの環状アミン類などが例示される。
アミノ基含有単量体(C)の好ましい製造方法は、(メタ)アリルグリシジルエーテルおよび/またはビニルグリシジルエーテルおよび/またはイソプレニルグリシジルエーテルと、アミンをバルクで、または溶剤、特に水などの極性溶媒の存在下で、反応温度50〜80℃で反応させる方法である。例えば酸またはアルカリなどの反応触媒の存在下で反応させてもよい。
本発明のアミノ基含有共重合体は、単量体(C)由来の構造単位(c)を全単量体由来の構造100質量%(すなわち構造単位(a)、(b)、(c)および(d)の総質量100質量%)に対して、1質量%以上50質量%以下の割合で有することを必須としている。構造単位(c)が上記範囲内であれば、優れた共重合体の鉄イオン沈着防止能の向上効果が得られる。全単量体由来の構造100質量%に対する構造単位(c)の割合は、好ましくは2質量%以上45質量%以下であり、さらに好ましくは3質量%以上40質量%以下であり、特に好ましくは4質量%以上35質量%以下である。
上記構造単位(c)は、単量体(C)の不飽和二重結合が単結合になった形態となる。例えば、上記一般式(C1)および一般式(C2)で表されるアミノ基含有単量体に由来する構造単位(c)は、下記一般式(c1)および一般式(c2)で表される。
上記一般式(c1)および一般式(c2)において、R0は、水素原子またはメチル基を表し、R1は、単結合、CH2、CH2CH2であり、R2およびR3は、水素原子または炭素数1〜20の有機基を表わす。この際、R2およびR3は、同一であってもあるいは異なるものであってもよい。また、R2およびR3は、結合して環状構造を形成してもよい。
<その他の単量体>
本発明のアミノ基含有共重合体は、その他の単量体(D)由来の構造単位(d)を有していても構わない。
本発明のアミノ基含有共重合体が他の単量体(D)を含む際の他の単量体(D)としては、上記単量体(A)〜(C)と共重合可能なものであれば特に限定されるものではなく、所望の効果によって適宜選択される。具体的には、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−ヒドロキシ−3−アリルオキシプロパンスルホン酸、2−ヒドロキシ−3−メタアリルオキシスルホン酸、イソプレンスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレートなどのスルホン酸系単量体およびこれらの塩;N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルホルムアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、N−ビニルオキサゾリドンなどのN−ビニル単量体;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミドなどのアミド系単量体;3−(メタ)アリルオキシ−1,2−ジヒドロキシプロパン、3−アリルオキシ−1,2−ジヒドロキシプロパン、3−アリルオキシ−1,2−ジヒドロキシプロパンにエチレンオキサイドを6〜200モル付加させた化合物(3−アリルオキシ−1,2−ジ(ポリ)オキシエチレンエーテルプロパンなど)、(メタ)アリルアルコールなどのアリルエーテル系単量体;イソプレノールなどのイソプレン系単量体;ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、α−ヒドロキシメチルエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシネオペンチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル系単量体;(メタ)アクリル酸アルコキシポリアルキレングリコールエステル、マレイン酸アルコキシポリアルキレングリコールエステル、アルキレングリコールのビニルエーテル、アルコキシアルキレングリコールのビニルエーテル、アルキレングリコールの(メタ)アリルエーテル、アルコキシアルキレングリコールの(メタ)アリルエーテル、アルキレングリコールの(メタ)イソプレニルエーテルアルコキシアルキレングリコールの(メタ)イソプレニルエーテルなどのポリアルキレングリコール鎖含有単量体であって、アルコレングリコール単位を3〜300モル有する単量体(但し、末端にアルコキシ基を有する場合はアルコキシ基は炭素数1〜20である)、スチレン、インデン、ビニルアニリンなどのビニルアリール単量体、イソブチレン、酢酸ビニルなどが挙げられる。
また、上記他の単量体(D)は、1種を単独で使用してもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
本発明のアミノ基含有共重合体が、任意成分であるその他の単量体(D)由来の構造単位(d)を含む場合には、全単量体由来の構造単位100質量%(すなわち構造単位(a)、(b)、(c)および(d)の合計100質量%)に対して、0質量%以上50質量%未満の割合で含むことが好ましい。
<アミノ基含有共重合体のその他の物性>
本発明のアミノ基含有共重合体は、上記構造単位(a)、(b)および(c)、ならびに必要であれば構造単位(d)が、上記したような特定の割合で導入されていればよく、各構造単位は、ブロック状あるいはランダム状のいずれで存在していてもよい。また、本発明のアミノ基含有共重合体の重量平均分子量は、適宜設定することができるものであり、特に限定されない。具体的には、アミノ基含有共重合体の重量平均分子量は、2,000〜200,000であることが好ましく、より好ましくは3,000〜100,000、最も好ましくは4,000〜50,000である。重量平均分子量が上記範囲内であれば、鉄イオン沈着防止能が向上する傾向にある。なお、本明細書において、重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)による測定値であり、具体的な測定方法は実施例に記載される方法に従って算出される。
本発明のアミノ基含有共重合体は、鉄イオン沈着防止能に加えて界面活性剤との相溶性に優れているので、高濃縮タイプの液体洗剤への配合が可能となる。
〔本発明のアミノ基含有共重合体組成物〕
本発明のアミノ基含有共重合体組成物は、本発明のアミノ基含有共重合体を必須として含有し、アミノ基含有共重合体のみを含んでいてもよいが、通常はその他に、重合開始剤残渣、残存モノマー、重合時の副生成物、および水分から選ばれる1以上を含有する。本発明のアミノ基含有共重合体組成物は、本発明のアミノ基含有共重合体組成物100質量%に対し、本発明のアミノ基含有共重合体を1〜100質量%含有することが好ましい。好ましいアミノ基含有共重合体組成物の形態の一つは、アミノ基含有共重合体を40〜60質量%含有し、水を40〜60質量%含有する形態である。
〔本発明のアミノ基含有共重合体の製造方法〕
本発明のアミノ基含有共重合体の製造方法は、全単量体(単量体(A)、(B)、(C)および(D)の合計)使用量100質量%に対して、1質量%以上90質量%以下のヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート(単量体(A))、全単量体の使用量100質量%に対して、9質量%以上98質量%以下のカルボキシル基含有単量体(B)(単量体(B))、全単量体由来の構造100質量%に対して、1質量%以上50質量%以下のアミノ基含有単量体(C)(単量体(C))を必須として共重合することを特徴としている。
本発明のアミノ基含有共重合体の製造方法においては、上記単量体(A)、単量体(B)および単量体(C)は、それぞれ1種を用いても、2種以上を用いても構わない。本発明のアミノ基含有共重合体の製造方法においては、上記単量体(A)、単量体(B)および単量体(C)以外に、必要に応じ、上記その他の単量体(D)をさらに共重合させてもよい。
本発明のアミノ基含有共重合体の製造方法における単量体(D)の使用割合は、全単量体(単量体(A)、(B)、(C)および(D)の合計)100質量%に対して、0質量%以上、30質量%以下とすることが好ましい。上記任意成分である単量体(D)を使用する場合、1種を使用しても2種を使用してもよい。
本発明のアミノ基含有共重合体の製造方法は、得られるアミノ基含有共重合体がより好ましい鉄イオン沈着防止能や界面活性剤との相溶性を発現する観点から、上記アミノ基含有共重合体を製造する際に用いる各単量体の組成比は、全単量体100質量%に対して、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート(単量体(A))が5質量%以上90質量%以下、カルボキシル基含有単量体(B)(単量体(B))が8質量%以上93質量%以下、およびアミノ基含有単量体(C)(単量体(C))が2質量%以上45質量%以下、上記その他の単量体(D)を、0〜10質量%とすることが好ましい。より好ましくは単量体(A)が10質量%以上90質量%以下、単量体(B)が7質量%以上87質量%以下、および単量体(C)が3質量%以上40質量%以下、単量体(D)が、0〜10質量%であり、特に好ましくはヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート(単量体(A))が20質量%以上90質量%以下、カルボキシル基含有単量体(B)が6質量%以上76質量%以下、およびアミノ基含有単量体(C)(単量体(C))が4質量%以上35質量%以下、上記その他の単量体(D)が、0〜10質量%である。なお、上記単量体(A)、(B)、(C)および(D)の合計量は100質量%としている。なお、上記単量体(A)、(B)、(D)および(D)の合計量は100質量%としている。
<重合開始剤>
本発明の共重合体の製造方法は、上記単量体(A)、(B)、(C)、(D)(単量体組成物ということがある。)を重合開始剤の存在下で重合することが好ましい。
上記開始剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、過酸化水素;過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩;ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]n水和物、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二硫酸塩二水和物、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)などのアゾ系化合物;過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酢酸、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイドなどの有機過酸化物などが好適である。これらの重合開始剤のうち、過酸化水素、過硫酸塩が好ましく、過硫酸塩が最も好ましい。これらの重合開始剤は、単独で使用されてあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。例えば、過酸化水素と過硫酸塩の組み合わせは好ましい形態である。
<連鎖移動剤>
本発明のアミノ基含有共重合体の製造方法は、必要に応じ、重合に悪影響を及ぼさない範囲内で、重合体の分子量調整剤として連鎖移動剤を用いてもよい。連鎖移動剤としては、具体的には、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン際、3−メルカプトプロピオン際、チオリンゴ酸、チオグリコール酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチル、2−メルカプトエタンスルホン酸、n−ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ブチルチオグリコレートなどのチオール系連鎖移動剤;四塩化炭素、塩化メチレン、ブロモホルム、ブロモトリクロロエタンなどのハロゲン化物;イソプロパノール、グリセリンなどの第2級アルコール;亜リン酸、次亜リン酸、およびその塩(次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウムなど)や、亜硫酸、亜硫酸水素、亜二チオン酸、メタ重亜硫酸、およびその塩(亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜二チオン酸ナトリウム、亜二チオン酸カリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウムなど)などの低級酸化物およびその塩などが挙げられる。上記連鎖移動剤は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
連鎖移動剤を使用すると、製造されるアミノ基含有共重合体が必要以上に高分子量化することを抑制し、低分子量のアミノ基含有共重合体を効率よく製造することができるという利点がある。これらのうち、本発明に係る共重合反応においては、亜硫酸や亜硫酸塩を用いることが好適である。これにより、得られるアミノ基含有共重合体の主鎖末端に定量的にスルホン酸基を導入することができるととなり、耐ゲル性を向上することが可能となる。また、連鎖移動剤として、亜硫酸や亜硫酸塩を用いることにより、アミンの酸化を押さえ、得られるアミノ基含有共重合体(組成物)の色調を改善することができるので好ましい。
本発明の製造方法において、上述したように、亜硫酸および/または亜硫酸塩(以下、単に「亜硫酸(塩)」と記載する)を連鎖移動剤として使用することは好ましい形態であるが、その場合、亜硫酸(塩)に加えて開始剤を使用する。さらに、反応促進剤として、重金属イオンを併用してもよい。
上記亜硫酸(塩)としては、亜硫酸若しくは亜硫酸水素またはこれらの塩をいい、亜硫酸/亜硫酸水素が塩である形態が好適である。亜硫酸/亜硫酸水素が塩である場合、上記した例に加えて、金属原子、アンモニウムまたは有機アンモニウムの塩が好適である。上記金属原子としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属の一価の金属原子;カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属の二価の金属原子;アルミニウム、鉄などの三価の金属原子などの塩が好ましい。また、有機アンモニウム(有機アミン)としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミンや、トリエチルアミンなどが好適である。更に、アンモニウムであってもよい。ゆえに、本発明で好ましく使用される亜硫酸塩としては、例えば、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜硫酸水素アンモニウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸アンモニウムなどが挙げられ、亜硫酸水素ナトリウムが特に好適である。上記亜硫酸(塩)は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
<反応促進剤>
本発明のアミノ基含有共重合体の製造方法は、開始剤などの使用量を低減するなどの目的で反応促進剤を加えてもよい。反応促進剤としては、重金属イオンが例示される。本発明で重金属イオンとは、比重が4g/cm3以上の金属を意味する。上記金属イオンとしては、例えば、鉄、コバルト、マンガン、クロム、モリブデン、タングステン、銅、銀、金、鉛、白金、イリジウム、オスミウム、パラジウム、ロジウム、ルテニウムなどが好ましい。これらの重金属は1種または2種以上を用いることができる。これらの中でも、鉄がより好ましい。上記重金属イオンのイオン価は特に限定されるものではなく、例えば、重金属として鉄が用いられる場合、開始剤における鉄イオンとしては、Fe2+であっても、Fe3+であってよく、これらが組み合わされていてもよい。
上記重金属イオンは、イオンの形態として含まれるものであれば特に限定されないが、重金属化合物を溶解してなる溶液を用いる方法を用いると、取り扱い性に優れるため好適である。その際に用いる重金属化合物は、開始剤に含有することを所望する重金属イオンを含むものであればよく、用いる開始剤に応じて決定することができる。上記重金属イオンとして鉄を用いる場合、モール塩(Fe(NH4)2(SO4)2・6H2O)、硫酸第一鉄・7水和物、塩化第一鉄、塩化第二鉄などの重金属化合物などを用いることが好ましい。また、重金属イオンとしてマンガンを用いる場合、塩化マンガンなどを好適に用いることができる。これらの重金属化合物を用いる場合においては、いずれも水溶性の化合物であるため、水溶液の形態として用いることができ、取り扱い性に優れることになる。なお、上記重金属化合物を溶解してなる溶液の溶媒としては、水に限定されるものではなく、本発明のアミノ基含有共重合体の製造において、重合反応を妨げるものでなく、かつ、重金属化合物を溶解するものであればよい。
上記重金属イオンの添加方法は特に限定されないが、単量体の滴下終了前までに添加することが好ましく、全量初期仕込することが特に好ましい。また、使用量としては反応液全量に対して100ppm以下であることが好ましいが、より好ましくは70ppm以下、さらに好ましくは50ppm以下、特に好ましくは30ppm以下である。100ppmを越えると添加した効果はもはや見られず、また得られた共重合体の着色が大きく用途によっては使用することができないおそれがあるため好ましくない。
上記重金属イオンの含有量は、また、重合反応完結時における重合反応液の全質量に対して好ましくは0.1〜10ppmであることが好ましい。重金属イオンの含有量が0.1ppm未満であると、重金属イオンによる効果が十分に発現しないおそれがある。一方、重金属イオンの含有量が10ppmを超えると、得られる共重合体の色調の悪化を来たすおそれがある。
なお、上記重合反応完結時とは、重合反応液中において重合反応が実質的に完了し、所望する重合体が得られた時点を意味する。例えば、重合反応液中において重合された重合体がアルカリ成分で中和される場合には、中和した後の重合反応液の全質量を基準に、重金属イオンの含有量を算出する。2種以上の重金属イオンが含まれる場合には、重金属イオンの総量が上述の範囲であればよい。
本発明のアミノ基含有共重合体の製造方法において、重合の際には、上述した化合物などに加えて、重合開始剤の分解触媒や還元性化合物を反応系に添加してもよい。重合開始剤の分解触媒としては、例えば、塩化リチウム、臭化リチウムなどのハロゲン化金属;酸化チタン、二酸化ケイ素などの金属酸化物;塩酸、臭化水素酸、過塩素酸、硫酸、硝酸などの無機酸の金属塩;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、安息香酸などのカルボン酸、そのエステルおよびその金属塩;ピリジン、インドール、イミダゾール、カルバゾールなどの複素環アミンおよびその誘導体などが挙げられる。これらの分解触媒は1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
また、還元性化合物としては、例えば、フェロセンなどの有機金属化合物;ナフテン酸鉄、ナフテン酸銅、ナフテン酸ニッケル、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸マンガンなどの鉄、銅、ニッケル、コバルト、マンガンなどの金属イオンを発生することができる無機化合物;三フッ化ホウ素エーテル付加物、過マンガン酸カリウム、過塩素酸などの無機化合物;二酸化硫黄、亜硫酸塩、硫酸エステル、重亜硫酸塩、チオ硫酸塩、スルホキシ酸塩、ベンゼンスルフィン酸とその置換体、パラトルエンスルフィン酸などの環状スルフィン酸の同族体などの硫黄含有化合物;オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、メルカプトエタノール、α−メルカプトプロピオン酸、チオグリコール酸、チオプロピオン酸、α−チオプロピオン酸ナトリウムスルホプロピルエステル、α−チオプロピオン酸ナトリウムスルホエチルエステルなどのメルカプト化合物;ヒドラジン、β−ヒドロキシエチルヒドラジン、ヒドロキシルアミンなどの窒素含有化合物;ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、イソバレリアンアルデヒドなどのアルデヒド類;L−アスコルビン酸などが挙げられる。これらの還元性化合物もまた、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。メルカプト化合物などの還元性化合物は、連鎖移動剤として添加してもよい。
上記連鎖移動剤、開始剤および反応促進剤の組み合わせは、特に制限されず、上記各例示の中から適宜選択することができる。例えば、連鎖移動剤、開始剤および反応促進剤の組み合わせとしては、亜硫酸水素ナトリウム/過酸化水素、亜硫酸水素ナトリウム/過硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム/Fe、亜硫酸水素ナトリウム/過酸化水素/Fe、亜硫酸水素ナトリウム/過硫酸ナトリウム/Fe、亜硫酸水素ナトリウム/過硫酸ナトリウム/過酸化水素、亜硫酸水素ナトリウム/酸素/Feなどの形態が好ましい。より好ましくは、過硫酸ナトリウム/過酸化水素、過硫酸ナトリウム/過酸化水素/Fe、亜硫酸水素ナトリウム/過硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム/過硫酸ナトリウム/Feであり、最も好ましくは亜硫酸水素ナトリウム/過硫酸ナトリウム/Fe、過硫酸ナトリウム/過酸化水素/Feである。
<重合開始剤などの使用量>
開始剤の使用量は、単量体(A)、(B)および(C)ならびに必要であれば他の単量体(D)の共重合を開始することができる量であれば特に制限されないが、単量体(A)、(B)および(C)ならびに必要であれば他の単量体(D)からなる全単量体成分1モルに対して、15g以下、より好ましくは1〜12gであることが好ましい。
開始剤として、過酸化水素を使用する場合、過酸化水素の添加量は、単量体1molに対して1.0〜10.0gであることが好ましく、2.0〜8.0gであることがより好ましい。過酸化水素の添加量が2.0g未満であると、得られる共重合体の重合平均分子量が高くなる傾向にある。一方、添加量が10.0gを超えると過酸化水素の効果が添加量に伴うほど得られなくなり、さらに残存する過酸化水素量が多くなるなどの悪影響を及ぼす。
開始剤として、過硫酸塩を使用する場合、過硫酸塩の添加量は、単量体1molに対して1.0〜5.0gであることが好ましく、2.0〜4.0gであることがより好ましい。過硫酸塩の添加量がこれより少なすぎると、得られる共重合体の分子量が高くなる傾向がある。一方、添加量が多すぎると、過硫酸塩の効果が添加量に伴うほど得られなくなり、さらに、得られる共重合体の純度が低下するなど悪影響を及ぼすことになる。
開始剤として過酸化水素と過硫酸塩を併用する場合、過酸化水素および過硫酸塩の添加比率は、重量比で過酸化水素の重量が1としたときに、過硫酸塩の重量が0.1〜5.0であることが好ましく、0.2〜2.0であることがより好ましい。過硫酸塩の重量比が0.1未満であると、得られる共重合体の重量平均分子量も高くなる傾向がある。一方、過硫酸塩の重量比が5.0を超えると、過硫酸塩の添加による分子量低下の効果が添加に伴うほど得られない状態で、重合反応系において過硫酸塩が無駄に消費されることになる。
過酸化水素の添加方法としては、全使用量に対し、実質的に連続的に滴下する量が必要所定量の85重量%以上であることが好ましく、特に好ましくは90重量%以上であり、全量を滴下することが最も好ましい。過酸化水素は連続的に滴下するが、その滴下速度は変えてもよい。
過酸化水素の滴下は、後述する重合温度、重合時のpHにおける条件下において、単量体(初期仕込みする単量体を除く)の滴下開始後、遅らせて開始することが好ましい。好ましくはカルボキシル基含有単量体の滴下開始後1分間以上経過後、さらに好ましくは3分間以上経過後、より好ましくは5分間以上経過後、最も好ましくは10分間以上経過後に過酸化水素の滴下を開始することである。過酸化水素の滴下開始時間を遅らすことにより、初期の重合開始をスムーズにし、分子量分布を狭くすることが可能となる。
過酸化水素の滴下開始時間を遅らせる時間は、単量体の滴下開始後60分間以内であることが好ましく、30分間以内であることがより好ましい。
過酸化水素の滴下を単量体の滴下と同時に開始すること、および単量体の滴下前に予め過酸化水素を仕込むことも可能であるが、予め過酸化水素を仕込む場合は、必要所定量の10%以下であることが好ましく、より好ましくは7%以下、さらに好ましくは5%以下、特に好ましくは3%以下である。
単量体の滴下開始時間までに必要所定量の10%を超える過酸化水素を添加すると、例えば過硫酸塩を併用する場合には過硫酸塩に対する過酸化水素の濃度の比率が大きくなり、重合が停止するおそれがある。一方、単量体の滴下開始時間から60分より遅く開始すると、過酸化水素による連鎖移動反応などが起こらなくなるため、重合初期の分子量が高くなる。
過酸化水素の滴下終了時間は、後述する重合温度、重合時のpHにおける条件下において、単量体の滴下終了時間と同時に終了することが好ましく、単量体滴下終了時間よりも10分間以上早く終了することがより好ましく、30分間以上早く終了することが特に好ましい。なお、単量体の滴下終了時間より遅く終了しても、重合系において特に悪影響を及ぼすものではない。ただ、添加した過酸化水素が重合終了時までに完全には分解しないため、過酸化水素としての効果が得られず無駄となり、また、過酸化水素が多量に残存するおそれがあることから、得られた共重合体の熱的安定性に悪影響を及ぼす可能性があるため好ましくはない。
また、過硫酸塩の添加方法としては、その分解性などを鑑み、特に限定はされないが、全使用量に対し、実質的に連続的に滴下する量が必要所定量の50重量%以上であることが好ましく、特に好ましくは80重量%以上であり、全量を滴下することが最も好ましい。過硫酸塩は連続的に滴下するが、その滴下速度は変えてもよい。
滴下時間においても特には限定されないが、後述する重合温度、重合時のpHにおける条件下において、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウムなどの過硫酸塩など、比較的分解の早い開始剤においては、単量体の滴下終了時間まで滴下することが好ましく、単量体滴下終了後から30分間以内に終了することがより好ましく、単量体滴下後5分間〜20分間以内に終了することが特に好ましい。これにより、共重合体における単量体の残量を著しく減じることが出来る効果を見出せる。なお、単量体の滴下終了前に、これら開始剤の滴下を終了しても、重合に特に悪影響を及ぼすものではなく、得られた共重合体中における単量体の残存量に応じて設定すればよい。
これら比較的分解の早い開始剤について、滴下終了時間についてのみ好ましい範囲を述べたが、滴下開始時間は何ら限定されるものではなく、適宜設定すればよい。例えば、場合によっては単量体の滴下開始前に開始剤の滴下を開始してもよく、特に併用系の場合には、1つの開始剤の滴下を開始し、一定の時間が経過してから、あるいは終了してから別の開始剤の滴下を開始してもよい。何れも、開始剤の分解速度、単量体の反応性に応じて適宜設定すればよい。
添加時のラジカル重合開始剤の濃度は、特には限定されないが、好ましくは5〜60重量%、特に好ましくは10〜50重量%である。開始剤の濃度が5重量%未満であると、結果的に重合中の単量体濃度が非常に低くなるので、単量体の重合性が非常に悪くなり得られる共重合体中における単量体の残存量が非常に多くなる。また輸送などの効率や生産性も低くなり経済的な面からも好ましくない。逆に60重量%を超えると、安全性や滴下の簡便性の面で問題となる。
本発明の方法において、連鎖移動剤の添加量は、単量体(A)、(B)および(C)ならびに必要であれば他の単量体(D)が良好に重合する量であれば制限されないが、好ましくは単量体(A)、(B)および(C)、ならびに必要であれば他の単量体(D)からなる全単量体成分1モルに対して、1〜20g、より好ましくは2〜15gである。1g未満であると、分子量の制御をすることができなくなるおそれがあり、逆に、20gを超えると、不純物が多量に生成し、重合体純分が低下するおそれがあり、特に亜硫酸塩を使用する場合には、余剰の亜硫酸塩が反応系中で分解され、亜硫酸ガスが発生するおそれがあり、しかも経済的にも不利となるおそれがある。
上記開始剤と連鎖移動剤との組み合わせとしては、過硫酸塩と亜硫酸塩とをそれぞれ1種以上用いることが最も好ましい。この場合、過硫酸塩と亜硫酸塩との混合比は、特に制限されないが、過硫酸塩1質量部に対して、亜硫酸塩0.5〜5質量部を用いることが好ましい。より好ましくは、過硫酸塩1質量部に対して、亜硫酸塩の下限は、1質量部であり、最も好ましくは2質量部である。また、亜硫酸塩の上限は、過硫酸塩1質量部に対して、より好ましくは4質量部であり、最も好ましくは3質量部である。ここで、亜硫酸塩が0.5質量部未満であると、低分子量化する際に開始剤総量が増加するおそれがあり、逆に5質量部を超えると、副反応が増加し、それによる不純物が増加するおそれがある。
上記連鎖移動剤、開始剤、および反応促進剤の総使用量は、単量体(A)、(B)および(C)、ならびに必要であれば他の単量体(D)からなる全単量体成分1モルに対して、2〜20gであることが好ましい。このような範囲とすることで、本発明のアミノ基含有共重合体を効率よく生産することができ、また、アミノ基含有共重合体の分子量分布を所望のものとすることができる。より好ましくは4〜18gであり、さらに好ましくは6〜15gである。
上記重合開始剤および連鎖移動剤の反応容器への添加方法としては、滴下、分割投入などの連続投入方法を適用することができる。また、連鎖移動剤を単独で反応容器へ導入してもよく、単量体成分を構成する各単量体(A)、(B)および(C)やその他の単量体(D)、溶媒などとあらかじめ混合しておいてもよい。
<重合溶媒>
本発明において、単量体(A)、(B)および(C)、さらに必要であれば他の単量体(D)の共重合は、使用する溶媒の50質量%以上に水を用いる、および/または連鎖移動剤の存在下で行なうことが好ましく、使用する溶媒の50質量%以上に水を用い、かつ連鎖移動剤の存在下で行なうことがより好ましい。この際、使用する溶媒の50質量%以上に水を用いることによって、重合に使用される有機溶剤の量を抑制することができるため、重合終了後の有機溶剤の留去が容易であるという利点がある。
上記態様で使用される溶媒としては、使用する溶媒全量に対して50質量%の割合で水を含むものであれば特に制限されない。重合に使用される単量体の溶媒への溶解性向上という観点から、必要に応じて、有機溶媒を添加してもよい。この場合においても、全混合溶媒中の水の含量は50質量%以上である。この際使用することができる有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどの低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトンなどの低級ケトン類;ジメチルエーテル、ジオキサンなどのエーテル類;ジメチルホルムアルデヒドなどのアミド類が挙げられる。これらの溶媒は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。本発明では、水の量は、使用する溶媒全量に対して、好ましくは80質量%以上であることが好ましく、最も好ましくは水単独(即ち、100質量%)である。上記有機溶媒を添加する場合には、単量体成分および得られる共重合体の溶解性の点から、水および炭素数1〜4の低級アルコールからなる群より選択される1種または2種以上の溶媒を用いることが好ましい。
水などの溶媒の使用量は、単量体成分100質量%に対して40〜200質量%が好まく、より好ましくは45質量%以上であり、さらに好ましくは50質量%以上である。また、溶媒の使用量は、より好ましくは180質量%以下であり、さらに好ましくは150質量%以下である。溶媒の使用量が40質量%未満であると、得られる共重合体の分子量が高くなるおそれがあり、200質量%を超えると、得られる共重合体の濃度が低くなり、溶媒除去が必要となるおそれがある。なお、溶媒は、重合初期に一部または全量を反応容器内に仕込んでおけばよいが、溶媒の一部を重合反応中に反応系内に添加(滴下)してもよいし、単量体成分や開始剤などを予め溶媒に溶解させた形で、これらの成分と共に重合反応中に反応系内に添加(滴下)してもよい。
上記共重合方法において、単量体成分や重合開始剤などの反応容器への添加方法としては、反応容器に単量体成分の全てを仕込み、重合開始剤を反応容器内に添加することによって共重合を行なう方法;反応容器に単量体成分の一部を仕込み、重合開始剤と残りの単量体成分を反応容器内に連続してあるいは段階的に(好ましくは連続して)添加することによって共重合を行なう方法;反応容器に重合溶媒を仕込み、単量体成分と重合開始剤の全量を添加する方法;単量体(A)、(B)および(C)、場合により(D)のうちの一(例えば、単量体(B))の一部を反応容器に仕込み、重合開始剤と残りの単量体成分(単量体(B)の残りおよび単量体(A)および(C)ならびに必要であれば単量体(D)のすべて)を反応容器内に(好ましくは連続して)添加することによって共重合を行なう方法などが好適である。このような方法の中でも、得られる共重合体の分子量分布を狭く(シャープに)することができ、重合体の鉄イオン沈着防止能を向上することができうることから、重合開始剤と単量体成分を反応容器に逐次滴下する方法で共重合を行なうことが好ましい。
上記共重合方法としては、例えば、溶液重合やバルク重合、懸濁重合、乳化重合などの通常用いられる方法で行なうことができ、特に限定されるものではないが、溶液重合が好ましい。この際使用することができる溶媒は、上述したように、全溶媒に対して50質量%が水である混合溶媒または水であることが好ましい。水のみを使用する場合には、脱溶剤工程を省略することができる点で好適である。上記共重合方法は、回分式でも連続式でも行なうことができる。
上記共重合方法において、共重合温度などの共重合条件としては、用いられる共重合方法、溶媒、重合開始剤により適宜定められるが、共重合温度は、通常、0℃以上であることが好ましく、また、150℃以下であることが好ましい。共重合温度は、より好ましくは40℃以上であり、さらに好ましくは60℃以上であり、特に好ましくは80℃以上である。また、共重合温度は、より好ましくは120℃以下であり、さらに好ましくは110℃以下である。特に、亜硫酸(塩)を用いる場合には、共重合温度は、通常、60℃〜95℃、好ましくは70℃〜95℃、さらに好ましくは80℃〜95℃である。この際、共重合温度が60℃未満では、亜硫酸(塩)由来の不純物が多量に生成するおそれがある。共重合温度が95℃を越えると、有毒な亜硫酸ガスが放出されるおそれがある。
上記共重合温度は、重合反応において、常にほぼ一定に保持する必要はなく、例えば、室温から重合を開始し、適当な昇温時間または昇温速度で設定温度まで昇温し、その後、設定温度を保持するようにしてもよいし、単量体成分や開始剤などの滴下方法に応じて、重合反応中に経時的に温度変動(昇温または降温)させてもよい。
<重合時間、重合圧力、重合pH>
重合時間は、特に制限されないが、好ましくは30〜420分間であり、より好ましくは45〜390分間であり、さらに好ましくは60〜360分間であり、最も好ましくは90〜300分間である。なお、本発明において、「重合時間」とは、特に断らない限り、単量体を添加している時間を表す。
上記共重合方法における反応系内の圧力としては、常圧(大気圧)下、減圧下および加圧下の何れであってもよいが、得られる共重合体の分子量の点で、常圧下または反応系内を密閉し、加圧下で行なうことが好ましい。また、加圧装置や減圧装置、耐圧性の反応容器や配管などの設備の点で、常圧(大気圧)下で行なうことが好ましい。反応系内の雰囲気としては、空気雰囲気でもよいが、不活性雰囲気とすることが好ましく、例えば、重合開始前に系内を窒素などの不活性ガスで置換することが好ましい。
上記共重合における重合中のpHは、酸性が好ましい。特に、上記開始剤として、過硫酸塩と重亜硫酸塩とを併用する場合は、酸性条件下で行なうことが好ましい。酸性条件下で行なうことによって、重合反応系の水溶液の粘度の上昇を抑制し、共重合体を良好に製造することができる。また、高濃度の条件下で重合反応を進行させることができるので、製造効率を大幅に上昇することができ、最終固形分濃度が40%以上の高濃度重合とすることができ、含まれる残存モノマーの総濃度が30000ppm以下のものを得ることができる。さらに、アミノ基含有単量体の重合性を向上することができる。
上記酸性条件としては、重合中の反応溶液の25℃でのpHが1〜6であることが好ましい。より好ましくは5以下であり、さらに好ましくは3以下である。上記共重合方法によって得られる共重合体は、そのままでもスケール防止剤の主成分などとして用いることができるが、必要に応じて、さらにアルカリ性物質で中和して用いてもよい。アルカリ性物質としては、一価金属および二価金属の水酸化物、塩化物および炭酸塩などの無機塩;アンモニア;有機アンモニウム(有機アミン)などを用いることが好ましい。
共重合を行なう際の中和率は、開始剤によって適宜変更することができる。例えば、過硫酸塩と重亜硫酸塩とを併用する場合は、カルボキシル基含有単量体などの酸基含有単量体の酸基の合計量に対して、単量体の中和率を0〜60モル%として単量体成分の共重合を行なうことが好ましい。単量体の中和率は、単量体の全モル数を100モル%としたときに、塩を形成している単量体のモル%で表されることになる。単量体の中和率が60モル%を超えると、共重合工程における重合率が上がらず、得られる共重合体の分子量が低下したり、製造効率が低下したりするおそれがある。単量体の中和率は、より好ましくは50モル%以下であり、さらに好ましくは40モル%以下、特に好ましくは30モル%以下であり、より特に好ましくは20モル%以下であり、最も好ましくは10モル%以下である。
また、過硫酸塩と過酸化水素を併用する場合は、中和度は、カルボキシル基含有単量体などの酸基含有単量体の酸基の合計量に対して、99mol%以下、好ましくは50〜95mol%以下である。中和度が50mol%未満であると過酸化水素の分解が十分に起こらず、重量平均分子量が高くなる傾向がある。また、中和度が99mol%を越えると強アルカリ性の腐食性条件となるため、高温では製造設備が腐食するおそれがあり、さらに、アルカリによって過酸化水素が分解してしまうため、添加量が多くなってしまうというおそれもある。重合終了後(即ち単量体滴下終了後)の中和度は、残存する過酸化水素の分解を促進するために、カルボキシル基含有単量体およびアミノ基含有単量体の酸量の合計量に対して、好ましくは80mol%以上、より好ましくは90mol%以上、さらに好ましくは95mol%以上とする。
上記単量体の中和率を0〜60モル%として共重合を行なう方法としては、例えば、単量体が不飽和カルボン酸系単量体である場合、全て酸型である不飽和カルボン酸系単量体を中和せずに共重合に付することにより行なう方法や、不飽和カルボン酸系単量体をアルカリ性物質を用いてナトリウム塩やアンモニウム塩などの塩の形態に中和するときに中和率を0〜60モル%としたものを共重合に付することにより行なう方法などが好適である。
〔本発明のアミノ基含有共重合体、アミノ基含有共重合体組成物の用途〕
[共重合体、重合体組成物の用途]
〔本発明のアミノ基含有共重合体、アミノ基含有共重合体組成物の用途〕
本発明のアミノ基含有共重合体(または重合体組成物)は、水処理剤、繊維処理剤、分散剤、洗剤ビルダー(または洗剤組成物)、スケール防止剤(スケール抑制剤)、金属イオン封止剤、増粘剤、各種バインダー、乳化剤、スキンケア剤、ヘアケア剤などとして用いられうる。洗剤ビルダーとしては、衣料用、食器用、住居用、毛髪用、身体用、歯磨き用、自動車用などの様々な用途の洗剤に添加されて使用されうる。
<水処理剤>
本発明のアミノ基含有共重合体(または重合体組成物)は、水処理剤に用いることができる。該水処理剤には、必要に応じて他の配合剤として、重合リン酸塩、ホスホン酸塩、防食剤、スライムコントロール剤、キレート剤を用いてもよい。
上記水処理剤は、冷却水循環系、ボイラー水循環系、海水淡水化装置、パルプ蒸解釜、黒液濃縮釜などでのスケール防止に有用である。また、性能、効果に影響しない範囲で、任意の適切な水溶性重合体を含んでもよい。
<繊維処理剤>
本発明のアミノ基含有共重合体(または重合体組成物)は、繊維処理剤に用いることができる。該繊維処理剤は、染色剤、過酸化物および界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1つと、本発明のアミノ基含有共重合体(または重合体組成物)を含む。
上記繊維処理剤における本発明のアミノ基含有共重合体の含有量は、繊維処理剤全体に対して、好ましくは1〜100重量%であり、より好ましくは5〜100重量%である。また、性能、効果に影響しない範囲で、任意の適切な水溶性重合体を含んでいてもよい。
以下に、より実施形態に近い、繊維処理剤の配合例を示す。この繊維処理剤は、繊維処理における精錬、染色、漂白、ソーピングの工程で使用することができる。染色剤、過酸化物および界面活性剤としては繊維処理剤に通常使用されるものが挙げられる。
本発明のアミノ基含有共重合体と、染色剤、過酸化物および界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1つとの配合比率は、例えば、繊維の白色度、色むら、染色けんろう度の向上のためには、繊維処理剤純分換算で、本発明のアミノ基含有共重合体1重量部に対して、染色剤、過酸化物および界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1つを0.1〜100重量部の割合で配合された組成物を繊維処理剤として用いることが好ましい。
上記繊維処理剤を使用することができる繊維としては、任意の適切な繊維を採用し得る。例えば、木綿、麻などのセルロース系繊維、ナイロン、ポリエステルなどの化学繊維、羊毛、絹糸などの動物性繊維、人絹などの半合成繊維およびこれらの織物および混紡品が挙げられる。
上記繊維処理剤を精錬工程に適用する場合は、本発明のアミノ基含有共重合体と、アルカリ剤および界面活性剤とを配合することが好ましい。漂白工程に適用する場合では、本発明のアミノ基含有共重合体と、過酸化物と、アルカリ性漂白剤の分解抑制剤としての珪酸ナトリウムなどの珪酸系薬剤とを配合することが好ましい。
<無機顔料分散剤>
本発明のアミノ基含有共重合体(または重合体組成物)は、無機顔料分散剤に用いることができる。該無機顔料分散剤には、必要に応じて、他の配合剤として、縮合リン酸およびその塩、ホスホン酸およびその塩、ポリビニルアルコールを用いてもよい。
上記無機顔料分散剤中における、本発明のアミノ基含有共重合体の含有量は、無機顔料分散剤全体に対して、好ましくは5〜100重量%である。また性能、効果に影響しない範囲で、任意の適切な水溶性重合体を含んでいてもよい。
上記無機顔料分散剤は、紙コーティングに用いられる重質ないしは軽質炭酸カルシウム、クレイの無機顔料の分散剤として良好な性能を発揮し得る。例えば、無機顔料分散剤を無機顔料に少量添加して水中に分散することにより、低粘度でしかも高流動性を有し、かつ、それらの性能の経日安定性が良好な、高濃度炭酸カルシウムスラリーのような高濃度無機顔料スラリーを製造することができる。
上記無機顔料分散剤を無機顔料の分散剤として用いる場合、該無機顔料分散剤の使用量は、無機顔料100重量部に対して、0.05〜2.0重量部が好ましい。該無機顔料分散剤の使用量が上記範囲内にあることによって、十分な分散効果を得ることが可能となり、添加量に見合った効果を得ることが可能となり、経済的にも有利となり得る。
<洗剤ビルダー>
本発明の重合体、重合体組成物は、洗剤ビルダーとして用いられうる。洗剤ビルダーとしては、衣料用、食器用、住居用、毛髪用、身体用、歯磨き用、および自動車用など、様々な用途の洗剤に添加されて使用されうる。
<洗剤組成物>
本発明のアミノ基含有共重合体(または重合体組成物)は、洗剤組成物にも添加しうる。
洗剤組成物における当該アミノ基含有共重合体の含有量は特に制限されない。ただし、優れたビルダー性能を発揮しうるという観点からは、アミノ基含有共重合体の含有量は、洗剤組成物の全量に対して、好ましくは0.1〜15質量%であり、より好ましくは0.3〜10質量%であり、さらに好ましくは0.5〜5質量%である。
洗剤用途で用いられる洗剤組成物には、通常、洗剤に用いられる界面活性剤や添加剤が含まれる。これらの界面活性剤や添加剤の具体的な形態は特に制限されず、洗剤分野において従来公知の知見が適宜参照されうる。また、上記洗剤組成物は、粉末洗剤組成物であってもよいし、液体洗剤組成物であってもよい。
界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤および両性界面活性剤からなる群から選択される1種または2種以上である。2種以上が併用される場合、アニオン性界面活性剤とノニオン性界面活性剤との合計量は、界面活性剤の全量に対して50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは60質量%以上であり、さらに好ましくは70質量%以上であり、特に好ましくは80質量%以上である。
アニオン性界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルケニルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸またはエステル塩、アルカンスルホン酸塩、飽和脂肪酸塩、不飽和脂肪酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルケニルエーテルカルボン酸塩、アミノ酸型界面活性剤、N−アシルアミノ酸型界面活性剤、アルキルリン酸エステルまたはその塩、アルケニルリン酸エステルまたはその塩などが好適である。これらのアニオン性界面活性剤におけるアルキル基、アルケニル基には、メチル基などのアルキル基が分岐していてもよい。
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、高級脂肪酸アルカノールアミドまたはそのアルキレンオキサイド付加物、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグリコキシド、脂肪酸グリセリンモノエステル、アルキルアミンオキサイドなどが好適である。これらのノニオン性界面活性剤におけるアルキル基、アルケニル基には、メチル基などのアルキル基が分岐していてもよい。
カチオン性界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩などが好適である。また、両性界面活性剤としては、カルボキシル型両性界面活性剤、スルホベタイン型両性界面活性剤などが好適である。これらのカチオン性界面活性剤、両性界面活性剤におけるアルキル基、アルケニル基は、メチル基などのアルキル基が分岐していてもよい。
上記界面活性剤の配合割合は、通常、洗剤組成物の全量に対して10〜60質量%であり、好ましくは15〜50質量%であり、さらに好ましくは20〜45質量%であり、特に好ましくは25〜40質量%である。界面活性剤の配合割合が少なすぎると、十分な洗浄力を発揮することができなくなるおそれがあり、界面活性剤の配合割合が多すぎると、経済性が低下するおそれがある。
添加剤としては、アルカリビルダー、キレートビルダー、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどの汚染物質の再沈着を防止するための再付着防止剤、ベンゾトリアゾールやエチレン−チオ尿素などの汚れ抑制剤、ソイルリリース剤、色移り防止剤、柔軟剤、pH調節のためのアルカリ性物質、香料、可溶化剤、蛍光剤、着色剤、起泡剤、泡安定剤、つや出し剤、殺菌剤、漂白剤、漂白助剤、酵素、染料、溶媒などが好適である。また、粉末洗剤組成物の場合にはゼオライトを配合することが好ましい。
上記洗剤組成物は、本発明のアミノ基含有共重合体(または重合体組成物)に加えて、他の洗剤ビルダーを含んでもよい。他の洗剤ビルダーとしては、特に制限されないが、例えば、炭酸塩、炭酸水素塩、珪酸塩などのアルカリビルダーや、トリポリリン酸塩、ピロリン酸塩、ボウ硝、ニトリロトリ酢酸塩、エチレンジアミンテトラ酢酸塩、クエン酸塩、(メタ)アクリル酸の共重合体塩、アクリル酸−マレイン酸共重合体、フマル酸塩、ゼオライトなどのキレートビルダー、カルボキシメチルセルロースなどの多糖類のカルボキシル誘導体などが挙げられる。上記ビルダーに用いられる対塩としては、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、アンモニウム、アミンなどが挙げられる。
上記添加剤と他の洗剤用ビルダーの合計の配合割合は、通常、洗浄剤組成物100質量%に対して0.1〜50質量%が好ましい。より好ましくは0.2〜40質量%であり、さらに好ましくは0.3〜35質量%であり、特に好ましくは0.4〜30質量%であり、最も好ましくは0.5〜20質量%以下である。添加剤/他の洗剤ビルダーの配合割合が0.1質量%未満であると、十分な洗剤性能を発揮することができなくなるおそれがあり、50質量%を超えると経済性が低下するおそれがある。
なお、上記洗剤組成物の概念には、家庭用洗剤の合成洗剤、繊維工業その他の工業用洗剤、硬質表面洗浄剤のほか、その成分の1つの働きを高めた漂白洗剤などの特定の用途にのみ用いられる洗剤も含まれる。
上記洗剤組成物が液体洗剤組成物である場合、液体洗剤組成物に含まれる水分量は、通常、液体洗剤組成物の全量に対して0.1〜75質量%であることが好ましく、より好ましくは0.2〜70質量%であり、さらに好ましくは0.5〜65質量%であり、さらにより好ましくは0.7〜60質量%であり、特に好ましくは1〜55質量%であり、最も好ましくは1.5〜50質量%である。
上記洗剤組成物が液体洗剤組成物である場合、当該洗剤組成物は、カオリン濁度が200mg/L以下であることが好ましく、より好ましくは150mg/L以下であり、さらに好ましくは120mg/L以下であり、特に好ましくは100mg/L以下であり、最も好ましくは50mg/L以下である。
<カオリン濁度の測定方法>
厚さ10mmの50mm角セルに均一に攪拌した試料(液体洗剤)を仕込み、気泡を除いた後、日本電色株式会社製NDH2000(商品名、濁度計)を用いて25℃でのTubidity(カオリン濁度:mg/L)を測定する。
上記洗浄剤組成物に配合することができる酵素としては、プロテアーゼ、リパーゼ、セルラーゼなどが好適である。中でも、アルカリ洗浄液中で活性が高いプロテアーゼ、アルカリリパーゼおよびアルカリセルラーゼが好ましい。
上記酵素の添加量は、洗浄剤組成物100質量%に対して5質量%以下であることが好ましい。5質量%を超えると、洗浄力の向上が見られなくなり、経済性が低下するおそれがある。
上記アルカリビルダーとしては、珪酸塩、炭酸塩、硫酸塩などが好適である。上記キレートビルダーとしては、ジグリコール酸、オキシカルボン酸塩、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)、STPP(トリポリリン酸ナトリウム)、クエン酸などが好適である。本発明における共重合体以外のその他の水溶性ポリカルボン酸系ポリマーを用いてもよい。
上記洗浄剤組成物は、分散能に優れ、さらに長期間保存した場合の性能低下や低温で保持した場合の不純物析出などが生じにくい極めて高品質剤性能で安定性に優れた洗剤とすることができる。
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
また、単量体の定量、共重合体の重量平均分子量の測定および評価は、下記方法に従って行なった。
<ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、アミノ基含有単量体の定量方法>
アミノ基含有単量体などの定量は、以下の条件下で高速クロマトグラフィーにて行なった。
測定装置:東ソー株式会社製 8020シリーズ
カラム:株式会社資生堂製 CAPCELL PAK C1 UG120
温度:40.0℃
溶離液:10mmol/Lリン酸水素二ナトリウム・12水和物水溶液
(リン酸でpH7に調整)/アセトニトリル=45/55(体積比)
流速:1.0ml/min
検出器:RI、UV(検出波長215nm)
<カルボキシル基含有単量体の定量方法>
カルボキシル基含有単量体などの含有量の測定は、以下の条件下で液体クロマトグラフィーを用いて行なった。
装置:株式会社日立製作所製 L−7000シリーズ
検出器:株式会社日立製作所製 UV検出器 L−7400
カラム:昭和電工株式会社製 Shodex RSpak DE−413
流量:1.0ml/min
カラム温度:40℃
移動相:0.1%リン酸水溶液
<重量平均分子量の測定条件>
装置:株式会社日立製作所製 L−7000シリーズ
検出器:RI
カラム:昭和電工株式会社製 SHODEX Asahipak GF−310−HQ, GF−710−HQ, GF−1G 7B
カラム温度:40℃
流速:0.5ml/min
検量線:創和科学株式会社製 POLYACRYLIC ACID STANDARD
溶離液:0.1N酢酸ナトリウム/アセトニトリル=3/1(質量比)
<固形分の測定>
窒素雰囲気下、130℃に加熱したオーブンで本発明の共重合体(本発明の共重合体組成物1.0gに水1.0gを加えたもの)を1時間放置して乾燥処理した。乾燥前後の重量変化から、固形分(%)と、揮発成分(%)を算出した。
<鉄イオン沈着防止能の評価方法>
鉄イオン沈着防止能は以下の手順で測定した。
まず、測定サンプルの水溶液を調整した。即ち、固形分換算で0.03%のサンプル水溶液を150g調製した(A液)。
次に、鉄イオン水溶液を次のように調整した。即ち、塩化鉄(III) 6水和物を1.45gとり、純水を加えて1000gとした(B液)。
さらに、水酸化ナトリウム水溶液を次のように調整した。即ち、ペレット状の水酸化ナトリウムを1.5gとり、純水を加えて1000gとした(C液)。
A液、B液、C液100gずつをこの順に混合し、5分間攪拌した後2時間静置した。5C濾紙(55mm)、ブフナーロートを用いて吸引濾過した後1時間真空デシケータで乾燥させた。
色差計によってろ紙の白度を測定し、下記の式から鉄イオン沈着防止能を算出した。
[鉄イオン沈着防止能]
=[(ポリマー添加時の白度−ポリマー無添加時の白度)/(ろ過前のろ紙の白度−ポリマー無添加時の白度)]×100
<液体洗剤との相溶性(界面活性剤との相溶性)>
試験サンプル(重合体)を含む洗剤組成物を下記の配合で調製した。
SFT−70H(日本触媒(株)製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル):40g
ネオペレックスF−65(花王(株)製、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム):7.7g(有効成分5g)
コータミン86W(花王(株)製、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド):17.9g(有効成分5g)
ジエタノールアミン:5g
エタノール:5g
プロピレングリコール:5g
試験サンプル(固形分換算):1.5g
イオン交換水:バランス(イオン交換水の量は、試験サンプルの量を実際の使用量として、上記全合計が100gとなるように適宜調整する。)
各成分が均一となるように充分に攪拌し、25℃での濁度値を、濁度計(日本電色(株)製「NDH2000」)を用い、Turbidity(カオリン濁度mg/L)で測定した。
<合成例1>
還流冷却器、攪拌機および窒素導入管を備えた容量2000mLのガラス製4つ口フラスコに、ジエタノールアミン315.4gを仕込み、窒素ガスを導入し、攪拌しながら、液温を50℃に調整した。
次に、攪拌しながら、アリルグリシジルエーテル(以下、AGEと略す)349.3gをゆっくりと2時間かけて滴下した。液温は50℃〜60℃を保持した。滴下終了後、さらに2時間、液温60℃で熟成し、単量体(1)を得た。単量体(1)(アリルグリシジルエーテルのエポキシ基にジエタノールアミンが付加した単量体)の生成は、高速液体クロマトグラフィーおよび1H−NMRより確認した。
<合成例2>
還流冷却器、攪拌機および窒素導入管を備えた容量2000mLのガラス製4つ口フラスコに、純水491.0gおよびジn−ブチルアミン258.0gを仕込み、窒素ガスを導入し、攪拌しながら、液温を50℃に調整した。
次に、攪拌しながら、AGE232.8gをゆっくりと2時間かけて滴下した。液温は50℃〜60℃を保持した。滴下終了後、さらに2時間、液温60℃で熟成した。室温まで冷却した後、分液ロートに移し、静置すると2層に分離するので、下層の水層を廃棄した。さらに、上層に純水を加えて洗浄した。これをナスフラスコに移し、ロータリーエバポレーターで水分を完全に除去することにより、単量体(2)を得た。単量体(2)(アリルグリシジルエーテルのエポキシ基にジn−ブチルアミンが付加した単量体)の生成は、高速液体クロマトグラフィーおよび1H−NMRより確認した。
<合成例3>
還流冷却器、マグネチックスターラー、温度計および滴下ロートを備えた1000mLのガラス製4つ口フラスコに、トリメチルアミン塩酸塩239gおよび純水128gを仕込み、混合攪拌しながら、内温50℃に加温した。ここに、内温50℃を維持しながら、AGE285gを3時間かけてゆっくりと滴下し、さらに1時間攪拌した。室温まで放冷した後、反応液をジエチルエーテル30mLで2回洗浄し、さらに残存するジエチルエーテルを留去することにより、単量体(3)を得た。単量体(3)(アリルグリシジルエーテルのエポキシ基にトリメチルアミン塩酸塩が付加した単量体)の生成は、高速液体クロマトグラフィーおよび1H−NMRより確認した。
<実施例1>
還流冷却器、攪拌機を備えた容量200mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水44.9gを仕込み、攪拌しながら90℃まで昇温させた。
次に、90℃に保持された重合反応系中に、攪拌しながら、80%アクリル酸水溶液(以下、80%AAと略す)45.0g、80%単量体(1)水溶液27.0g、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル(以下、HPAと略す)18.0g、15%過硫酸ナトリウム水溶液(以下、15%NaPSと略す)16.7g、35%亜硫酸水素ナトリウム水溶液(以下、35%SBSと略す)5.4gおよび純水10.0gを別々のノズルより、それぞれ滴下した。それぞれの滴下時間は、80%AAについては180分間、80%単量体(1)水溶液については120分間、HPAについては150分間、15%NaPS、35%SBSおよび純水については190分間とした。滴下は,連続的に行ない、滴下を通じて、各成分の滴下速度を一定とした。滴下終了後、さらに30分間、重合反応液を90℃で熟成し、重合を完結させた。その後、重合反応液を放冷し、48%水酸化ナトリウム水溶液(以下、48%NaOHと略す)29.2gを攪拌しながら重合反応液に徐々に滴下し、重合反応液を中和した。このようにして、重合体(1)の水溶液を得た。
<実施例2>
還流冷却器および攪拌機を備えた容量2000mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水298.5gを仕込み、攪拌しながら、90℃まで昇温させた。次に、90℃に保持された重合反応系中に、攪拌しながら80%AA324.0g、単量体(2)86.4g、HPA 86.4g、15%NaPS105.5gおよび35%SBS33.9gを別々のノズルより、それぞれ滴下した。それぞれの滴下時間は、80%AAについては180分間、単量体(2)については120分間、HPAについては150分間、15%NaPSおよび35%SBSについては190分間とした。滴下は、連続的に行ない、滴下を通じて、各成分の滴下速度を一定とした。滴下終了後、さらに30分間、重合反応液を90℃で熟成し、重合を完結させた。その後、重合反応液を放冷し、48%NaOH水溶液210.0gを攪拌しながら重合反応液に徐々に滴下し、重合反応液を中和した。このようにして、重合体(2)の水溶液を得た。
<実施例3>
還流冷却器、攪拌機を備えた容量2000mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水407.8gを仕込み、攪拌しながら90℃まで昇温させた。
次に、90℃に保持された重合反応系中に、攪拌しながら80%AA270.0g、80%単量体(3)水溶液162.0g、HPA86.4g、15%NaPS88.2gおよび35%SBS75.6gを別々のノズルより、それぞれ滴下した。それぞれの滴下時間は、80%AAについては180分間、80%単量体(3)水溶液については120分間、HPAについては150分間、15%NaPS、35%SBSおよび純水については190分間とした。滴下は、連続的に行ない、滴下を通じて、各成分の滴下速度を一定とした。滴下終了後、さらに30分間、重合反応液を90℃で熟成し、重合を完結させた。その後、重合反応液を放冷し、48%NaOH175.0gを攪拌しながら重合反応液に徐々に滴下し、重合反応液を中和した。このようにして、重合体(3)の水溶液を得た。
<実施例4>
還流冷却器および攪拌機を備えた容量2000mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水376.7gおよびモール塩0.0224gを仕込み、攪拌しながら90℃まで昇温させた。
次に、90℃に保持された重合反応系中に、攪拌しながら、80%AA250.0g、48%NaOH11.6g、メタクリル酸2−ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩の80%水溶液(以下、80%4DAMと略す)107.1g、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル(以下、HPMAと略す)57.1g、15%NaPS42.3gおよび35%SBS54.4gを別々のノズルより、それぞれ滴下した。それぞれの滴下時間は、80%AA、48%NaOHについては180分間、4DAM、HPMAについては150分間、15%NaPSおよび35%SBSについては190分間とした。滴下は連続的に行ない、滴下を通じて、各成分の滴下速度を一定とした。滴下終了後、さらに30分間、重合反応液を90℃で熟成して、重合を完結させた。その後、重合反応液を放冷し、48%NaOH213.0gを攪拌しながら重合反応液に徐々に滴下し、重合反応液を中和した。このようにして、重合体(4)の水溶液を得た。
<実施例5>
還流冷却器および攪拌機を備えた容量2000mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水525.9gおよびモール塩0.0254gを仕込み、攪拌しながら90℃まで昇温させた。
次に、90℃に保持された重合反応系中に、攪拌しながら80%AA150.0g、48%NaOH水溶液6.9g、80%4DAM150.0g、HPMA160.0g、15%NaPS37.0gおよび35%SBS47.6gを別々のノズルより、それぞれ滴下した。それぞれの滴下時間は、80%AA、48%NaOHについては180分間、4DAM、HPMAについては150分間、15%NaPSおよび35%SBSについては190分間とした。滴下は連続的に行ない、滴下を通じて、各成分の滴下速度を一定とした。滴下終了後、さらに30分間、重合反応液を90℃で熟成し、重合を完結させた。その後、重合反応液を放冷し、48%NaOH127.8gを攪拌しながら重合反応液に徐々に滴下し、重合反応液を中和した。このようにして、重合体(5)の水溶液を得た。
<実施例6>
還流冷却器および攪拌機を備えた容量2000mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水378.1gおよびモール塩0.0244gを仕込み、攪拌しながら、90℃まで昇温させた。
次に、90℃に保持された重合反応系中に、攪拌しながら80%AA250.0g、48%NaOH水溶液11.6g、メタクリル酸2−ジメチルアミノエチル(以下、DAMと略す)120.0g、HPA80.0g、15%NaPS45.2gおよび35%SBS 58.2gを別々のノズルより、それぞれ滴下した。それぞれの滴下時間は、80%AA、48%NaOHについては180分間、DAM、HPAについては150分間、15%NaPSおよび35%SBSについては190分間とした。滴下は、連続的に行ない、滴下を通じて、各成分の滴下速度を一定とした。滴下終了後、さらに30分間、重合反応液を90℃で熟成し、重合を完結させた。その後、重合反応液を放冷し、48%NaOH水溶液213.0gを攪拌しながら重合反応液に徐々に滴下し、重合反応液を中和した。このようにして、重合体(6)の水溶液を得た。
<実施例7>
還流冷却器および攪拌機を備えた容量2000mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水723.1gおよびモール塩0.0382gを仕込み、攪拌しながら、90℃まで昇温させた。
次に、90℃に保持された重合反応系中に、攪拌しながら80%AA250.0g、48%NaOH水溶液11.6g、DAM200.0g、HPA266.7g、15%NaPS64.4gおよび35%SBS82.8gを別々のノズルより、それぞれ滴下した。それぞれの滴下時間は、80%AA、48%NaOHについては180分間、DAM、HPAについては150分間、15%NaPSおよび35%SBSについては190分間とした。滴下は連続的に行ない、滴下を通じて、各成分の滴下速度を一定とした。滴下終了後、さらに30分間、重合反応液を90℃で熟成し、重合を完結させた。その後、重合反応液を放冷し、48%NaOH水溶液213.0gを攪拌しながら重合反応液に徐々に滴下し、重合反応液を中和した。このようにして、重合体(7)の水溶液を得た。
<実施例8>
還流冷却器および攪拌機を備えた容量2000mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水859.2gおよびモール塩0.0378gを仕込み、攪拌しながら、90℃まで昇温させた。
次に、90℃に保持された重合反応系中に、攪拌しながら80%AA100.0g、48%NaOH水溶液4.6g、DAM120.0g、HPA480.0g、15%NaPS64.0gおよび35%SBS82.3gを別々のノズルよりそれぞれ滴下した。それぞれの滴下時間は、80%AA、48%NaOHについては180分間、DAMおよびHPAについては150分間、15%NaPSおよび35%SBSについては190分間とした。滴下は連続的に行ない、滴下を通じて、各成分の滴下速度を一定とした。滴下終了後、さらに30分間、重合反応液を90℃で熟成し、重合を完結させた。その後、重合反応液を放冷し、48%NaOH水溶液85.2gを攪拌しながら重合反応液に徐々に滴下し、重合反応液を中和した。このようにして、重合体(8)の水溶液を得た。
<比較例1>
還流冷却器および攪拌機を備えた容量1000mLのガラス製セパラブルフラスコに純水118gを仕込み、エチレンジアミン60gを添加した。その後、攪拌下で氷冷により15℃以下に保ちながら、乳鉢にて粉砕した無水マレイン酸98gを徐々に添加した。添加終了後30分間以上反応させた後、48%NaOH水溶液84gを徐々に添加した。この水溶液を80℃で1時間攪拌することにより、固形分濃度が50%の比較重合体を得た。
<実験例>
実験例では、実施例1〜8および比較例1で得られた重合体(1)〜(8)および比較重合体について、前記方法に従って鉄イオン沈着防止能および液体洗剤への相溶性の評価を行なった。その結果を表1にまとめた。
前記表に示された結果から、本発明の重合体は、従来の重合体と比較して良好な鉄イオン沈着防止能と液体洗剤との相溶性(界面活性剤との相溶性)を有することが明らかとなった。