JP5904358B2 - 平行線維性結合組織の製造方法 - Google Patents

平行線維性結合組織の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、平行線維性結合組織の製造方法に関し、詳しくは、PRELPと接触させた状態で間葉系幹細胞を培養することを含む、平行線維性結合組織の製造方法に関する。また、本発明は、平行線維性結合組織の製造に有用な、細胞、組み合わせ物、キットに関する。
靭帯損傷は、関節を支える靭帯へ、スポーツ外傷や交通事故等によって異常な力が加わり、靭帯が裂けたり、切断したりすることにより生じる損傷である。重度の靭帯損傷を治療する場合には、損傷した箇所へ靭帯を移植する必要があるが、靭帯を人工的に再生する技術は未だ開発されていないため、正常な他の靭帯の一部を摘出して移植に供する必要があり、結果として正常な靭帯をも傷めてしまうことになる。そのため、人工的にインビトロで靭帯を再生する技術の開発が望まれている。
一方、Proline/arginine-rich end leucine-rich repeat protein(PRELP)は、結合組織細胞外マトリクスに含まれるタンパク質である。PRELPは、基底膜をその下に下層の結合組織にアンカーする分子として機能することが知られている。PRELPは、I型コラーゲンを基底膜に、II型コラーゲンを軟骨へ結合させることが示されている。PRELPは、基底膜ヘパラン硫酸プロテオグリカンであるパールカンへも結合することが報告されている。PRELPは、Hutchinson-Gilford progeria (HGP)の病態に関与することが示唆されており、この疾患の患者では、基底膜及び軟骨におけるコラーゲンの結合が欠失していることが報告されている。
PRELPは、関節内の間葉系幹細胞において発現が亢進していることが報告されている(非特許文献1)。
Journal of Orthopaedic Research, 27:435-441, 2009
本発明は、靱帯等の平行線維性結合組織をインビトロで製造する技術を提供することを目的とする。
前記課題を解決すべく本発明者らは鋭意検討した結果、ヒト脊柱靭帯骨化組織の二次元電気泳動パターンをヒト骨組織のそれと比較し、靭帯に特異的に発現するタンパク質としてPRELPを見出した。この遺伝子をマウス間葉系幹細胞に導入し、得られたトランスフェクタントを3Dゲル上で培養したところ、驚くべきことにI型コラーゲンを含む、靱帯組織様の平行線維性結合組織が形成されることを見出し、更に検討を進めた結果、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、下記の通りである。
[1]PRELPと接触させた状態で間葉系幹細胞を培養すること、及び培養物から平行線維性結合組織を単離することを含む、平行線維性結合組織の製造方法。
[2]PRELPと接触させた状態での間葉系幹細胞の培養が、PRELP発現ベクターが導入された間葉系幹細胞を培養することにより行われる、[1]記載の製造方法。
[3]間葉系幹細胞の培養が、3次元培養により行われる、[1]又は[2]記載の製造方法。
[4]PRELP発現ベクターが導入された間葉系幹細胞。
[5]PRELP発現ベクターが導入された間葉系幹細胞、及び3次元培養用担体を含む組み合わせ物。
[6](1)PRELP、又はその発現ベクター;及び
(2)間葉系幹細胞
を含む組み合わせ物。
[7]更に、3次元培養用担体を含む、[6]記載の組み合わせ物。
[8][4]記載の間葉系幹細胞、又は[5]〜[7]のいずれかに記載の組み合わせ物を含む、平行線維性結合組織製造用キット。
本発明によれば、インビトロの系で靱帯様の平行線維性結合組織を製造することができる。これにより、人工靱帯の作製が可能となり、スポーツ選手などの靭帯断裂による運動障害などの治療に有用である。
ウェスタンブロッティングによる、PRELP発現ベクターを導入した間葉系幹細胞の培養上清中のPRELPの検出。 PuraMatrix培養開始前のpCAGGS−PRELPトランスフェクションしたC3H/10T1/2−clone8マウス間葉系幹細胞(×4)。 PuraMatrix培養後、1日目のpCAGGS−PRELPトランスフェクションしたC3H/10T1/2−clone8マウス間葉系幹細胞(×4)。 PuraMatrix培養後、2日目のpCAGGS−PRELPトランスフェクションしたC3H/10T1/2−clone8マウス間葉系幹細胞(×4)。 pCAGGS−PRELPトランスフェクションしたC3H/10T1/2−clone8マウス間葉系幹細胞により形成された平行線維性結合組織の電子顕微鏡写真。
以下、本発明を詳細に説明する。
(平行線維性結合組織の製造方法)
本発明は、PRELPと接触させた状態で間葉系幹細胞を培養すること、及び培養物から線維組織を単離することを含む、平行線維性結合組織の製造方法を提供する。
Proline/arginine-rich end leucine-rich repeat protein(PRELP)は、生体内において結合組織細胞外マトリクスに含まれる公知のポリペプチドである。
本明細書中、PRELPは通常、哺乳動物由来のものを意味する。哺乳動物としては、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等のげっ歯類やウサギ等の実験動物、ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ、ミンク等の家畜、イヌ、ネコ等のペット、ヒト、サル、カニクイザル、アカゲザル、マーモセット、オランウータン、チンパンジーなどの霊長類等を挙げることが出来るが、これらに限定されるものではない。PRELPは、好ましくは霊長類(ヒト等)又はげっ歯類(マウス等)由来のものである。
本明細書中、ポリペプチドやポリヌクレオチド等の因子について、「生物X由来」とは、該ポリペプチド又はポリヌクレオチドが、生物Xにおいて天然に発現しているポリペプチド又はポリヌクレオチドと同一又は実質同一のアミノ酸配列又はポリヌクレオチド配列を含むことを意味する。「実質的に同一」とは、着目したアミノ酸配列又は核酸配列が、生物Xにおいて天然に発現している因子のアミノ酸配列又は核酸配列と70%以上(好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上、最も好ましくは99%以上)の同一性を有しており、且つ当該タンパク質の活性が維持されていることを意味する。
PRELPのヌクレオチド配列やアミノ酸配列は公知である。ヒトPRELP及びマウスPRELPの代表的なアミノ酸配列及びそれをコードするポリヌクレオチド配列(cDNA配列)は以下の通りである。尚、かっこ内は、NCBIが提供するGENBANKのアクセッション番号を示す。
[ヒトPRELP アミノ酸配列]
配列番号2(NP_002716):配列番号1(NM_002725 REGION: 201..1349)のポリヌクレオチドによりコード
配列番号4(NP_958505):配列番号3(NM_201348 REGION: 191..1339)のポリヌクレオチドによりコード
配列番号6(配列番号2からシグナル配列(1−20)を削除した(成熟型)):配列番号5(配列番号1からシグナル配列コード領域を削除)のポリヌクレオチドによりコード
配列番号8(配列番号4からシグナル配列(1−20)を削除した(成熟型)):配列番号7(配列番号3からシグナル配列コード領域を削除)のポリヌクレオチドによりコード
[マウスPRELP アミノ酸配列]
配列番号10(NP_473418):配列番号9(NM_054077 REGION: 164..1300)のポリヌクレオチドによりコード
配列番号12(配列番号10からシグナル配列(1−21)を削除した(成熟型)):配列番号11(配列番号9からシグナル配列コード領域を削除)のポリヌクレオチドによりコード
本明細書中、PRELPの活性とは、間葉系幹細胞へ接触させた状態で該細胞を培養することにより、平行線維性結合組織の形成を誘導する活性を意味する。
本明細書中、「間葉系幹細胞」とは、未分化の状態で増殖し、骨細胞、軟骨細胞及び脂肪細胞の全て又はいくつかへの分化が可能な幹細胞又はその前駆細胞の集団を広義に意味する。
本明細書中、間葉系幹細胞は、通常、哺乳動物由来のものを意味する。哺乳動物としては、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等のげっ歯類やウサギ等の実験動物、ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ、ミンク等の家畜、イヌ、ネコ等のペット、ヒト、サル、カニクイザル、アカゲザル、マーモセット、オランウータン、チンパンジーなどの霊長類等を挙げることが出来るが、これらに限定されるものではない。間葉系幹細胞は、好ましくは霊長類(ヒト等)又はげっ歯類(マウス等)由来のものである。
生体においては、間葉系幹細胞は骨髄、末梢血、臍帯血、脂肪組織等の組織中に低頻度で存在する。間葉系幹細胞は、これらの組織から公知の方法で単離することが出来る。例えば、間葉系幹細胞は、パーコールグラディエント法により骨髄液から単離することができる(Hum. Cell, vol.10, p.45-50, 1997)。或いは、骨髄穿刺後の造血幹細胞等の培養、継代により間葉系幹細胞を単離することができる(Journal of Autoimmunity, 30 (2008) 163e171)。ヒト滑膜、半月板、関節内靭帯、筋肉、脂肪組織、及び骨髄からセルソーターで間葉系幹細胞を単離する方法が報告されている(Journal of Orthopaedic Research, 27:435-441, 2009)。また、市販された間葉系幹細胞を用いてもよい。
本発明において用いられる間葉系幹細胞は、好ましくは単離されている。「単離」とは、天然に存在する状態とは異なる状態に人為的に置かれること、例えば、天然に存在する状態から、目的とする成分以外の成分を除去する操作が施されていることを意味する。
単離された間葉系幹細胞の純度(総細胞数に占める間葉系幹細胞の百分率)は、通常70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは実質的に100%である。
間葉系幹細胞を採取するソースとなる個体は特に制限されないが、得られる線維組織が移植医療に使用される場合には、拒絶反応が起こらないという観点から、患畜自身又はMHCの型が同一もしくは実質的に同一の他個体から間葉系幹細胞を採取することが好ましい。ここでMHCの型が「実質的に同一」とは、免疫抑制剤等の使用により、該間葉系幹細胞から得られた線維組織を患畜に移植した場合に移植した線維組織中に含まれる細胞が生着可能な程度にMHCの型が一致していることをいう。
間葉系幹細胞は、その培養に適した自体公知の培地で前培養することができる。そのような培地としては、例えば、約5〜20%の胎仔ウシ血清を含む最小必須培地(MEM)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、Basal Medium Eagle、RPMI1640培地、199培地、F12培地等が挙げられるが、それらに限定されない。
本発明において、PRELPと接触させた状態での間葉系幹細胞の培養方法は、特に限定されることはなく、線維組織の形成を誘導可能であればいかなる方法であってもよい。例えば、(A)PRELP発現ベクターが導入された間葉系幹細胞を培養する方法、(B)線維組織の形成を誘導するのに十分な量のPRELP(好ましくは、単離されたPRELP)を含有する培地中で間葉系幹細胞を培養する方法等を採用することができる。(A)においては、導入された発現ベクターから発現したPRELPが間葉系幹細胞の微小環境中や培地中に放出され、これが間葉系幹細胞へ接触する。好ましくは、PRELP発現ベクターが導入された間葉系幹細胞を培養する。
PRELP発現ベクターは、プロモーター及びPRELPをコードするポリヌクレオチドを含み、当該プロモーターは作動可能に当該ポリヌクレオチドに連結されている。当該プロモーターは、宿主である間葉系幹細胞内で転写を開始可能なものであれば特に限定されない。
発現ベクターとしては、特に限定されないが、例えば、レトロウイルス(レンチウイルスを含む)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、センダイウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、ポリオウイルス、シルビスウイルス、ラブドウイルス、パラミクソウイルス、オルソミクソウイルス等のウイルスベクター;YAC(Yeast artificial chromosome)ベクター、BAC(Bacterial artificial chromosome)ベクター、PAC(P1−derived artificial chromosome)ベクター等の人工染色体ベクター;プラスミドベクター;宿主細胞内で自律複製可能なエピゾーマルベクター等が挙げられる。該ベクターを間葉系幹細胞に導入する場合は、リポフェクション法、マイクロインジェクション法、DEAEデキストラン法、遺伝子銃法、エレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法等の方法を用いることができる。
また、発現ベクターとしてウイルスベクターを用いる場合は、パッケージング細胞を利用することもできる。パッケージング細胞とは、ウイルスの構造タンパク質をコードする遺伝子を導入した細胞であって、この細胞に目的遺伝子を組み込んだ組換えウイルスDNAを導入すると、該組換えウイルス粒子を産生するものをいう。それゆえパッケージング細胞としては、ウイルス粒子の構成に必要なタンパク質を組換えウイルスベクターに対して補給する細胞であればいかなるものも用いることができ、例えば、ヒト腎臓由来のHEK293細胞やマウス線維芽細胞由来のNIH3T3細胞をベースにしたパッケージング細胞;Ecotropic virus由来エンベロープ糖タンパク質を発現するよう設計されているPlat−E細胞、Amphotropic virus由来エンベロープ糖タンパク質を発現するよう設計されているPlat−A細胞、及び水疱性口内炎ウイルス由来エンベロープ糖タンパク質を発現するよう設計されているPlat−GP細胞等を用いることができる(Plat−E細胞、Plat−A細胞及びPlat−GP細胞は、CELL BIOLABS社より購入することができる)。該パッケージング細胞へのウイルスベクターの導入方法としては、特に限定されるものではなく、リポフェクション、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム法等の従来公知の方法を利用することができる。
また、発現ベクターを用いて遺伝子を導入する場合は、該遺伝子の導入を確認するため同時にマーカー遺伝子を利用することもできる。マーカー遺伝子とは、該マーカー遺伝子を細胞に導入することにより、細胞の選別や選択を可能とするような遺伝子全般をいい、例えば、薬剤耐性遺伝子、蛍光タンパク質遺伝子、発光酵素遺伝子、発色酵素遺伝子等が挙げられる。薬剤耐性遺伝子としては、ネオマイシン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、ゼオシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子等が挙げられ、蛍光タンパク質遺伝子としては、緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子、黄色蛍光タンパク質(YFP)遺伝子、赤色蛍光タンパク質(RFP)遺伝子等が挙げられる。また、発光酵素遺伝子としては、ルシフェラーゼ遺伝子等が挙げられ、発色酵素遺伝子としては、βガラクトシターゼ遺伝子、βグルクロニダーゼ遺伝子、アルカリフォスファターゼ遺伝子等が挙げられる。これらのマーカー遺伝子については一種又は二種以上を組み合わせて用いることができ、また、ネオマイシン耐性遺伝子とβガラクトシダーゼ遺伝子との融合遺伝子であるβgeo遺伝子等のような、二種以上のマーカー遺伝子を含む融合遺伝子も用いることができる。
発現ベクターは、所望によりエンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、SV40複製オリジン(以下、SV40oriと略称する場合がある)などを、それぞれ機能可能な態様で含有していてもよい。
本発明は、このようにして得られたPRELP発現ベクターが導入された間葉系幹細胞をも提供する。当該間葉系幹細胞においては、導入された発現ベクターがゲノム内に組み込まれていてもよい。このような間葉系幹細胞は、ゲノム構造において、もとの間葉系幹細胞や、天然の哺乳動物から単離された間葉系幹細胞と明確に区別され得る。また、染色体外で自律複製可能なエピゾーマルベクターを用いた場合、ゲノム上には組み込まれないが、PRELPは遺伝的に安定に間葉系幹細胞内に存在し、発現され得るので、このようなベクターを用いて得られる間葉系幹細胞もまた、本発明の範囲に包含される。
間葉系幹細胞の培養に用いられる培地は、動物細胞の培養に用いられる培地を基礎培地として調製することができる。基礎培地としては、例えば、BME培地、BGJb培地、CMRL 1066培地、Glasgow MEM培地、Improved MEM Zinc Option培地、IMDM培地、Medium 199培地、Eagle MEM培地、αMEM培地、DMEM培地、ハムF12培地、RPMI 1640培地、Fischer’s培地、及びこれらの混合培地等、動物細胞の培養に用いることのできる培地であれば特に限定されない。
また、該培地は、血清含有培地又は無血清培地とすることができる。無血清培地とは、無調整又は未精製の血清を含まない培地を意味し、精製された血液由来成分や動物組織由来成分(例えば、増殖因子)が混入している培地や血清代替試薬(例えば、KSR(Invitrogen社)等)が添加されている培地などは無血清培地に該当するものとする。
該培地は、自体公知の添加物を含むことができる。添加物としては、特に限定されないが、例えば増殖因子(例えばインスリン等)、鉄源(例えばトランスフェリン等)、ミネラル(例えばセレン酸ナトリウム等)、糖類(例えばグルコース等)、有機酸(例えばピルビン酸、乳酸等)、血清蛋白質(例えばアルブミン等)、アミノ酸(例えば、非必須アミノ酸)、還元剤(例えば2−メルカプトエタノール等)、抗酸化剤、ビタミン類(例えばアスコルビン酸、d−ビオチン等)、脂肪酸又は脂質、抗生物質(例えばストレプトマイシン、ペニシリン、ゲンタマイシン等)、緩衝剤(例えばHEPES等)、無機塩類等が挙げられる。当該添加物は、それぞれ自体公知の濃度範囲内で含まれることが好ましい。
一態様において、間葉系幹細胞は、シャーレ、プレート、ボトル等の培養容器中で、接着培養される。
好ましい態様において、間葉系幹細胞の培養は、3次元培養により行われる。3次元培養を行うことにより、平面での接着培養と比較して平行線維性結合組織の形成が促進される。本発明で「3次元培養」とは、ゾル−ゲル転移温度を有し、該転移温度より低い温度で可逆的にゾル状態を示すような高分子化合物を培養用の担体として使用し、必要に応じて、当該培養用担体に、細胞培養用生理活性物質を配合せしめて培養用の組成物として、それを用いて、当該培養用担体又は培養用組成物中の該高分子化合物をゲル状態にした培地中で、該ゲル物質に培養されるべき細胞及び/又は組織が包埋された状態で培養することを意味する。
3次元培養用の担体として使用する高分子化合物としては、例えば、ポリプロピレンオキサイドとポリエチレンオキサイドのブロック共重合体などに代表されるポリアルキレンオキサイドブロック共重合体;メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのエーテル化セルロース;キトサン誘導体(K. R. Holme. et al. Macromolecules, 24, 3828(1991));プルラン誘導体(出口茂ら、Polymer Preprints. Japan. 19, 936(1990))などの変性多糖類;ポリN-置換(メタ)アクリルアミド誘導体、ポリビニルアルコール部分酢化物、ポリビニルメチルエーテルなどに代表される温度感応性高分子と水溶性高分子化合物との結合体(例えば松田武久ら、Polymer Preprints. Japan. 39(8), 2559(1990))、生理的な条件下で自己重合し、微小な線維構造を有するハイドロゲルを形成するペプチドなどがあげられるが、これらに限定されるものではない。PuraMatrix等の市販品を適宜使用することができる。
本発明においては、繊維組織を形成するのに十分な期間(通常1日以上、好ましくは2日以上)、PRELPと接触させた状態で間葉系幹細胞が培養される。
本発明の工程(b)における培養条件は、通常の動物細胞の培養条件に準じ適宜設定することができる。例えば、培養温度は、通常約30〜40℃、好ましくは約37℃である。CO濃度は、通常、約1〜10%、好ましくは約2〜5%である。
培養の結果、培養物中に平行線維性結合組織が形成される。本明細書中、「平行線維性結合組織」とは、膠原線維が一方向に並列配列した密性結合組織をいう。密性結合組織とは、膠原線維が線維束を作って蜜に配列することにより形成された結合組織をいう。膠原線維は、通常I型コラーゲンを含有する。平行線維性結合組織は靭帯組織であり得る。
培養物とは、細胞を培養することにより得られる結果物をいい、細胞、培地、細胞分泌性成分等が含まれる。
肉眼観察や顕微鏡観察等によって、平行線維性結合組織の形成を確認した後、培養物から平行線維性結合組織を単離することにより、平行線維性結合組織を得ることができる。
こうして得られる平行線維性結合組織は、人工靱帯として、スポーツ選手などの靭帯断裂による運動障害などの治療に有用である。
(組み合わせ物、キット)
また、本発明は、PRELP発現ベクターが導入された間葉系幹細胞、及び3次元培養用の担体を含む組み合わせ物(組み合わせ物I)を提供する。
更に、本発明は、
(1)PRELP、又はその発現ベクター;及び
(2)間葉系幹細胞
を含む組み合わせ物(組み合わせ物II)を提供する。
組み合わせ物IIは、更に3次元培養用の担体を含むことができる。
PRELP発現ベクターが導入された間葉系幹細胞、組み合わせ物I及びIIを用いれば、上記本発明の製造方法により容易に平行線維性結合組織を製造することができる。従って、PRELP発現ベクターが導入された間葉系幹細胞、組み合わせ物I及びIIのそれぞれを、平行線維性結合組織製造用キットとすることもできる。
本発明のキットに含まれる各構成要素は、各々別個に(あるいは可能であれば混合した状態で)水もしくは適当な緩衝液(例:TEバッファー、PBSなど)中に適当な濃度となるように溶解又は懸濁し、約−20℃〜4℃で保存することができる。
本発明のキットには、上記本発明の製造方法に用いた種々の試薬(培地、遺伝子導入用試薬等)、培養容器、試験プロトコールを記載した指示書等を含めることができる。
本発明の組み合わせ物及びキットに関する各用語の定義は、上述の「平行線維性結合組織の製造方法」の項における各用語の定義と同一である。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、これらは単なる例示であって、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
ヒトPRELP cDNAをクローニングした。クローニングしたPRELP cDNAをXhol処理し、pCAGGS発現ベクターのXholサイトに挿入した。発現ベクターがデザイン通りに構築されているか確認するために、構築後のベクターを制限酵素で消化し、電気泳動パターンを確認した。その結果、予想されたパターンの泳動図が確認された。また、挿入されたcDNA領域のシーケンス解析を行ったところ、目的とする配列(GENBANKアクセッション番号:EAW91481.1)と一致することを確認した。
C3H/10T1/2−clone8マウス間葉系幹細胞(JCRB0003)を10%FBS含むBasal Medium Eagle(Wako)にて培養後、0.25% Trypsin and 0.02% EDTAにて剥離することを繰り返すことにより、継代増殖培養をおこなった。C3H/10T1/2−clone8マウス間葉系幹細胞を3.5mmシャーレ(BD)に70%コンフルエントとなるまで培養後、培養液を500μLに調整した。20mMTris−HCL(pH7.4)バッファー(DAKO)100μLに、pCAGGS−PRELPベクター2.0μgを加え、Multi Fectam(Promega)50.0μLを添加、混合後、室温にて30分間静置させ、Opti−MEM培養液(invitrogen)50μLを加え、混合後、室温にて5分静置させた。3.5mmウェル1枚に200μLのMulti Fectam、pCAGGS−PRELPプラスミドDNA複合体を加え、均一となるようにプレートを揺らし、37℃、5%COにて4時間培養した。培地を、新しい培養液(10%FBS含むBasal Medium Eagle)に交換し、更に96時間培養後、上清中にPRELPタンパク質が発現していることをウエスタンブロットにて確認した(図1)。2日に1度の頻度で、培養液を交換した。PuraMatrix培養開始前のpCAGGS−PRELPトランスフェクションしたC3H/10T1/2−clone8マウス間葉系幹細胞を図2に示す。
1週間後、シャーレに張り付いたC3H/10T1/2−clone8マウス間葉系幹細胞を0.25% Trypsin and 0.02% EDTAにて剥離し、遠心回収し、細胞ペレットを5.0×10個に調整し、20%スクロース溶液1mLにて洗浄し、超音波処理したPuraMatrix(BD)1mLを加え、素早く混合し、新たなウェル中で培養した。
PuraMatrix中で培養を開始してから1日後において、線維状の形態を示した(図3)。PuraMatrix中で培養を開始してから2日後には、ウェル全体が線維状の形態を示した(図4)。
顕微鏡観察の結果、膠原線維が一方向に並列配列した構造が確認された(図3及び4)。電子顕微鏡下での観察でも同じ構造が確認された(図5)。形成された線維組織をI型コラーゲンに対する抗体を用いて免疫組織染色した結果、I型コラーゲンの発現が確認された。以上の結果から、得られた線維状の組織は、靭帯等の平行線維性結合組織であることが示唆された。
本発明によれば、インビトロの系で靱帯様の平行線維性結合組織を製造することができる。これにより、人工靱帯の作製が可能となり、スポーツ選手などの靭帯断裂による運動障害などの治療に有用である。

Claims (4)

  1. PRELP発現ベクターが導入された間葉系幹細胞を3次元培養に付すこと、及び培養物から平行線維性結合組織を単離することを含む、平行線維性結合組織の製造方法。
  2. PRELP発現ベクターが導入された間葉系幹細胞、及び3次元培養用担体を含む組み合わせ物。
  3. (1)PRELP発現ベクタ
    2)間葉系幹細胞;及び
    (3)3次元培養用担体
    を含む組み合わせ物。
  4. 請求項2又は3に記載の組み合わせ物を含む、平行線維性結合組織製造用キット。
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