JPWO2007094301A1 - 硝子体細胞株 - Google Patents
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Abstract
本発明は外因性不死化遺伝子を発現し得る硝子体細胞株、及びその製造方法を提供する。本発明の硝子体細胞株は、十分な細胞数を得ることができ、また一定の継続した増殖能を有することから、網膜硝子体疾患の病因解明、網膜硝子体疾患の予防または/および治療薬の開発に有利に利用できる。さらに、該細胞株は硝子体の生化学的・生理学的研究、さらに細胞の分化機構の研究に非常に有用なばかりでなく、人工硝子体の生体材料として利用できる可能性がある。
Description
本発明は、硝子体細胞株およびその製造方法等に関する。
硝子体は、網膜、毛様体、水晶体に囲まれた硝子体腔(vitreous cavity)を満たすゲル様組織で、中間透光体を形成するとともに、眼球内圧の維持にも関与している。硝子体は、眼球容積の約4/5を占め、その99%は水である。硝子体のゲル構造は、コラーゲン繊維とボール状になったヒアルロン酸(HA)との二重の網目構造を呈し、これが強力な含水能力の原因である。硝子体の異常は、種々の網膜硝子体疾患(例えば、増殖性網膜硝子体疾患等)の原因となり、視力の低下を引き起こす。硝子体の機能や構造を詳細に解析することは、網膜硝子体疾患の治療薬を開発していく上で重要である。本発明者らは、増殖性網膜硝子体疾患の増殖組織を解析することにより、該疾患の病態にヒアルロン酸産生が関与していることを報告している(Japanese Journal of Ophthalmology, vol.7, p.557-564, 2003:非特許文献1)。
硝子体細胞は、硝子体内に含まれる細胞であり、HA等の多様な硝子体構成成分を産生する。そこで、硝子体細胞をインビトロで培養し、その機能を解析することが、網膜硝子体疾患の病態を解明し、該疾患の治療薬の開発を進める上で重要である。
しかしながら、硝子体細胞は、その増殖能が非常に低く、実質的に長期的な培養が不可能であるか、培養できたとしてもその増殖は極めて困難である。また、新生仔から得られる硝子体細胞は、比較的培養が容易ではあるが、その増殖能には制限があり、また、長期継代では、細胞の巨大化や変性が起こる可能性もある。そこで、硝子体細胞としての本来の機能を維持したまま、長期の継代が可能な硝子体細胞株の開発が望まれる。
一方、不死化遺伝子として知られるシミアン・ウイルス40(SV40)の大型T抗原遺伝子をヒト水晶体上皮細胞に導入することにより、ヒト水晶体上皮細胞株が作製された[特開平10−52272:特許文献1、Andley U.P. ら, Invest. Ophthalmol. Vis. Sci., 35: 3094-3102 (1994):非特許文献2]。しかし、これまでに、硝子体細胞を株化したという報告はない。
特開平10−52272号公報
Japanese Journal of Ophthalmology, 7: 557-564 (2003)
Invest. Ophthalmol. Vis. Sci., 35: 3094-3102 (1994)
したがって、本発明の目的は、硝子体の生理学的・生化学的研究や増殖性網膜硝子体疾患などの網膜硝子体疾患の予防および治療薬の開発のための研究手段として有用であり、また、硝子体再生のため、生体中への移植が可能な硝子体細胞株を提供することである。
本発明者らは、不死化遺伝子を機能的に組み込んだプラスミド発現ベクターでブタ硝子体細胞をトランスフェクトすることによって、硝子体細胞にインビトロでの無限増殖能を付与し、半永久的に継代培養可能なクローナルなブタ硝子体細胞株を樹立することに成功して本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下に関する。
[1]外因性不死化遺伝子を発現し得る硝子体細胞株。
[2]外因性不死化遺伝子がSV40大型T抗原をコードするものである、[1]記載の細胞株。
[3]ブタ由来である、[1]記載の細胞株。
[4]下記(1)〜(3)の性質を有する、[1]記載の細胞株:
(1)増殖速度の低下がみられない;
(2)GFAP及びS100の産生能を有する;及び
(3)TGF−β1及びPDGF−BBの刺激によりヒアルロン酸産生が促進される。
[5]更に、以下の性質を有する、[4]記載の細胞株:
(4)PDGF−BBの刺激によりHAS2の発現が上昇する。
[6]更に、以下の性質を有する、[4]記載の細胞株:
(5)IL−1αの刺激によりVEGFの発現が上昇する。
[7]上記の性質が20継代以上維持される、[4]〜[6]のいずれかに記載の細胞株。
[8]生ウイルスの感染を介さずに樹立される、[1]記載の細胞株。
[9]硝子体細胞に、外因性不死化遺伝子を機能的に担持する発現ベクターをトランスフェクトし、該細胞を培地中で継代培養することによって樹立される、[1]記載の細胞株。
[10]硝子体細胞に、外因性不死化遺伝子を機能的に担持する発現ベクターをトランスフェクトし、該細胞を培地中で継代培養することを含む、硝子体細胞株の製造方法。
[11]外因性不死化遺伝子がSV40大型T抗原をコードするものである、[10]記載の製造方法。
[1]外因性不死化遺伝子を発現し得る硝子体細胞株。
[2]外因性不死化遺伝子がSV40大型T抗原をコードするものである、[1]記載の細胞株。
[3]ブタ由来である、[1]記載の細胞株。
[4]下記(1)〜(3)の性質を有する、[1]記載の細胞株:
(1)増殖速度の低下がみられない;
(2)GFAP及びS100の産生能を有する;及び
(3)TGF−β1及びPDGF−BBの刺激によりヒアルロン酸産生が促進される。
[5]更に、以下の性質を有する、[4]記載の細胞株:
(4)PDGF−BBの刺激によりHAS2の発現が上昇する。
[6]更に、以下の性質を有する、[4]記載の細胞株:
(5)IL−1αの刺激によりVEGFの発現が上昇する。
[7]上記の性質が20継代以上維持される、[4]〜[6]のいずれかに記載の細胞株。
[8]生ウイルスの感染を介さずに樹立される、[1]記載の細胞株。
[9]硝子体細胞に、外因性不死化遺伝子を機能的に担持する発現ベクターをトランスフェクトし、該細胞を培地中で継代培養することによって樹立される、[1]記載の細胞株。
[10]硝子体細胞に、外因性不死化遺伝子を機能的に担持する発現ベクターをトランスフェクトし、該細胞を培地中で継代培養することを含む、硝子体細胞株の製造方法。
[11]外因性不死化遺伝子がSV40大型T抗原をコードするものである、[10]記載の製造方法。
本発明の硝子体細胞株は、十分な細胞数を得ることができ、また一定の継続した増殖能を有することから、網膜硝子体疾患の病因解明、網膜硝子体疾患の予防または/および治療薬の開発に有利に利用できる。さらに、該細胞株は硝子体の生化学的・生理学的研究、さらに細胞の分化機構の研究に非常に有用なばかりでなく、人工硝子体の生体材料として利用できる可能性がある。
本発明の硝子体細胞株は、外因性不死化遺伝子を含有し、該不死化遺伝子の発現の結果として、インビトロでの無限増殖能を獲得した細胞群である。
本発明の硝子体細胞株は、哺乳動物由来である。哺乳動物としては、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等のげっ歯類やウサギ等の実験動物、ブタ、ウシ、ヤギ、ヒツジ等の偶蹄類、ウマ等の奇蹄類、イヌ、ネコ等のペット、ヒト、サル、アカゲザル、マーモセット、オランウータン、チンパンジーなどの霊長類等を挙げることが出来る。本発明の硝子体細胞株は、好ましくは、ブタ由来である。
ここで「不死化遺伝子」とは、細胞を不死化し、無限増殖能を獲得させる遺伝子をいい、例えばc−myc,ras等の癌遺伝子、アデノウイルスE1A、SV40由来の大型T抗原遺伝子(SV40大型T抗原遺伝子)、ポリオーマウイルスの大型T抗原遺伝子、パピローマウイルスのE6及びE7遺伝子などが挙げられる。また、本発明において「外因性不死化遺伝子」とは、本発明の硝子体細胞株の起源となる硝子体細胞が生来有していない、細胞外から新たに導入される不死化遺伝子を意味する。したがって、本発明の細胞株が由来する哺乳動物以外に由来する不死化遺伝子のほか、たとえば、本発明の細胞株が由来する哺乳動物の癌遺伝子であっても、標的細胞内で発現可能な(すなわち、正常の内因性癌遺伝子が受けている発現抑制を受けない)形態に改変されたものも外因性不死化遺伝子に属するものとする。本発明の外因性不死化遺伝子として、好ましくは、ウイルス由来の不死化遺伝子、より好ましくはSV40大型T抗原遺伝子が用いられる。
本発明の硝子体細胞株は、好ましくは、組織より分離された硝子体細胞に、上記の外因性不死化遺伝子を機能的に担持する、すなわち標的細胞内で発現可能な形態で担持する発現ベクターをトランスフェクトし、該細胞を適当な培地中で継代培養することによって樹立することができる。
硝子体細胞は、例えば、摘出された眼組織から硝子体組織を離断し、はさみ等で細かく(約2mm角)に切断し、得られた硝子体断片を、ウシ胎児血清や仔ウシ血清10〜20%を含む適当な液体培地、例えばイーグルMEM培地、ダルベッコの改良イーグルMEM培地、ハム培地F12、勝田培地DM−160等に懸濁し、CO2 インキュベーター中で2日間程度培養することにより、培養容器上に接着した線維芽細胞様の細胞として単離することが出来る。単離された硝子体細胞がトランスフェクションに供される。
本発明で使用される発現ベクターとしては、プラスミドベクターやウイルスベクターが例示される。不死化遺伝子の導入過程において生ウイルスの感染を介さずに細胞株を樹立することが可能であり、細胞内でウイルス粒子の産生の可能性がないので、発現ベクターは好ましくは、プラスミドベクターである。ウイルスゲノムをベクターとして使用する場合は、該ベクターが導入された細胞内で、少なくとも完全なウイルス粒子が産生されないように遺伝子の一部を欠失または変異させておくことがより好ましい。
外因性不死化遺伝子を機能的に担持する発現ベクターの構築方法として、例えば、外因性不死化遺伝子にSV40大型T抗原遺伝子を使用する場合には、以下の方法が例示される。SV40ゲノミックDNAの初期領域に存在する不死化遺伝子(すなわち、大型T抗原遺伝子)を含むDNA断片を適当な制限酵素を用いて切り出し、硝子体細胞中で該遺伝子を発現可能なプロモーターを含有するプラスミドベクターに挿入する。プロモーターとしては、SV40初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、MuMLV LTR等が挙げられる。SV40初期プロモーターを用いる場合、SV40ゲノミックDNAから該プロモーターと大型T抗原コード領域の両方を含むDNA断片を切り出してもよい。
プラスミドベクターとしてはpBR322、pGEM等が挙げられる。また、さらに転写終結シグナル、外因性不死化遺伝子の発現をエンハンスする特異的な配列などを当該ベクターの適当な位置に配することもできる。このようにして構築された外因性不死化遺伝子発現ベクターは、適当な宿主中、例えば、大腸菌、酵母、枯草菌等で大量に合成させ、常法により回収精製した後、常用の遺伝子導入法、例えばリン酸カルシウム共沈法、マイクロインジェクション法、ポリエチレングリコール法、エレクトロポレーション法等により硝子体細胞に導入される。
ウイルスベクターとしては、モロニーマウス白血病ウイルス、レンチウイルス等のレトロウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、アデノ随伴ウイルス、パルボウイルス、セムリキ森林ウイルス、ワクシニアウイルス、センダイウイルス等が挙げられる。レトロウイルスによる遺伝子導入は、遺伝子が染色体へ組み込まれるように導入されるので、好ましい。また、レンチウイルスは分裂及び非分裂細胞の両方に感染し、遺伝子を導入することができる。ウイルス粒子を含む培養液中で硝子体細胞を培養することにより、外因性不死化遺伝子が硝子体細胞内へ導入される。この際、遺伝子導入試薬としてレトロネクチン、ファイブロネクチン、ポリブレン等を用いることにより、導入効率を高めることが出来る。
トランスフェクション後の細胞は、液体培地、例えばイーグルMEM培地、ダルベッコの改良イーグルMEM培地、ハム培地F12、勝田培地DM−160等で培養される。培養温度、培地pH、CO2 濃度等の条件は、動物細胞培養において通常使用される一般的な条件を適宜採用することができる。2〜3日ごとに新鮮な培地に交換し、細胞増殖が飽和点に達した時に継代する。一旦、細胞増殖が止まってからも培養を続け、再増殖を始めた細胞群を単クローンの細胞群として分別する。クローンの分離は以下のようにして行うことができる。トリプシンとEDTA溶液を浸染させた小径の濾紙を目的のクローン細胞群上に静置し、培養容器より細胞を剥離して濾紙に付着させる。濾紙小片に付着したクローン細胞群を、濾紙ごと別の培養容器に移す。また、コロニーをピックアップする方法、限界希釈法や、セルソーターを用いる方法によってもクローンを分離することが出来る。クローナルな細胞株は、個々の細胞の性質が均一であるため、従来不均一な硝子体細胞を用いて行われていた硝子体の生理学的・生化学的研究、網膜硝子体疾患の病因解明および予防・治療薬の開発等のための有用なモデル細胞となり得る。
上記のようにして得られた硝子体細胞株は一般的な動物細胞培養技術により継代培養することができる。細胞の増殖能の指標として、下式により算出される細胞集団倍加数(cell population doubling level;PDL)が用いられる。
PDL=log10(Ni /N0 )/log102
Ni =第i継代培養終了時の細胞数
N0 =第1継代培養開始時の細胞数
本発明の細胞株のPDLは、通常1継代ごとに、通常約1.1〜2.0、好ましくは1.4〜1.5ずつ増加する。
PDL=log10(Ni /N0 )/log102
Ni =第i継代培養終了時の細胞数
N0 =第1継代培養開始時の細胞数
本発明の細胞株のPDLは、通常1継代ごとに、通常約1.1〜2.0、好ましくは1.4〜1.5ずつ増加する。
本発明の細胞株は、下記(1)〜(3)の性質を有し得る:
(1)増殖速度の低下がみられない;
(2)GFAP及びS100の産生能を有する;及び
(3)TGF−β1及び/又はPDGF−BBの刺激によりヒアルロン酸産生が促進される。
(1)増殖速度の低下がみられない;
(2)GFAP及びS100の産生能を有する;及び
(3)TGF−β1及び/又はPDGF−BBの刺激によりヒアルロン酸産生が促進される。
ここで、GFAP及びS100を産生することは、本発明の細胞株が硝子体細胞としての生理学的特徴を有していることの指標である。GFAP(Glial Fibrillary Acidic Protein/グリア線維性酸性タンパク質)は、分子量約50kDaの中間径フィラメントである。S100は、EFハンドと呼ばれるloop-helix-loop構造のカルシウム結合モチーフを2つ有する、分子量約10kDaの酸性タンパク質である。TGF−β1及び/又はPDGF−BBの刺激によりヒアルロン酸産生が促進されることも、本発明の細胞株が硝子体細胞としての生理学的特徴を有していることの指標である。増殖性網膜硝子体疾患等の病態にヒアルロン酸産生が関与することが報告されていることから(Japanese Journal of Ophthalmology, vol.7, p.557-564, 2003)、本発明の細胞株は、特に、サイトカイン刺激による硝子体細胞からのヒアルロン酸産生のこれらの疾患への関与について研究するための強力なツールとなる。
本発明の細胞株は、上記の性質に加えて、更に下記(4)の性質を有していてもよい。
(4)PDGF−BBの刺激によりHAS2の発現が上昇する。
(4)PDGF−BBの刺激によりHAS2の発現が上昇する。
「遺伝子の発現」とは、該遺伝子をコードするmRNA又は該遺伝子産物(タンパク質)の発現を意味する。HAS2(Hyaluronan synthase 2)はヒアルロン酸の合成酵素である。PDGF−BBの刺激によりHAS2の発現が上昇することも、本発明の細胞株が硝子体細胞としての生理学的特徴を有していることの指標である。
本発明の細胞株は、上記の性質に加えて、更に下記(5)の性質を有していてもよい。
(5)IL−1αの刺激によりVEGFの発現が上昇する。
(5)IL−1αの刺激によりVEGFの発現が上昇する。
たとえば、本発明の細胞株をIL−1αで刺激すると、RT−PCR解析等によるVEGF mRNAレベルは、非刺激コントロールのmRNAレベルと比較して、12時間後で2倍以上、48時間後では2.5倍以上となる。IL−1αの刺激によりVEGFの発現が上昇することも、本発明の細胞株が硝子体細胞としての生理学的特徴を有していることの指標である。
また、本発明の細胞株のVEGF発現は、IL−1β、TGFβ、PDGF−AA、PDGF−BB又はTNFα刺激によっては有意な変化を示さない。たとえば、本発明の細胞株をこれらのサイトカインで刺激しても、RT−PCR解析等による48時間後のVEGF mRNAレベルは、非刺激コントロールのmRNAレベルの0.5〜1.5倍の範囲内である。したがって、本発明の細胞株は、特に、IL−1α刺激によるVEGF発現のメカニズムの解析に有用である。
本発明の細胞株は、通常、細胞の巨大化・変性が実質的にみられない。「細胞の巨大化・変性が実質的にみられない」とは、細胞の顕微鏡観察により、一部に伸張した細胞がみられることはあっても、その大多数(例えば約95%以上)は本来の硝子体細胞の形態的特徴を示すことを意味する。本発明の細胞株を長期(例えば約40継代以上)に亘り継代すると、細胞形態が伸張する傾向を示す場合があるが、この伸張した細胞株も本発明の範囲内である。
本発明の硝子体細胞株は、20継代以上、好ましくは35継代以上にわたり上記性質が安定に維持されている。
本発明の細胞株は硝子体の生理学的・生化学的研究、網膜硝子体疾患の病因解明及び予防・治療薬の開発、並びに眼疾患用医薬品の安全性試験等のための有用なモデル細胞となり得る。且つ当該細胞は安定な供給が可能であるから、硝子体再生を目的とした移植や人工硝子体の有用な材料となり得る。また、本発明の細胞株は硝子体特異的蛋白質であるGFAP及びS100の産生能を有し、ヒアルロン酸産生能を有することから、該細胞株の大量培養により該物質を大量に製造することもできる。また、本発明の細胞株をIL-1αにより刺激することによりVEGF発現が促進することから、この発現誘導を抑制する化合物を選択することにより、硝子体細胞から放出されるVEGFが関与する、血管内皮の増殖、血管透過性の亢進、新生血管の増殖等の症状を予防・治療し得る化合物をスクリーニングすることができる。
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下に示す実施例によって何ら限定されるものではない。
(ブタ硝子体組織の単離及びブタ硝子体細胞の調製)
2歳齢のブタの眼組織より硝子体を摘出し、はさみで2mm角に切断した。得られた硝子体断片をDMEM(GIBCO)(10% FBS、100U/ml ペニシリン及び100μg/ml ストレプトマイシン含有)中に懸濁し、10cm培養ディッシュ上で、37℃、5% CO2にて培養した。2日後、ディッシュ上に接着した線維芽細胞様の細胞として、硝子体細胞が得られた。
2歳齢のブタの眼組織より硝子体を摘出し、はさみで2mm角に切断した。得られた硝子体断片をDMEM(GIBCO)(10% FBS、100U/ml ペニシリン及び100μg/ml ストレプトマイシン含有)中に懸濁し、10cm培養ディッシュ上で、37℃、5% CO2にて培養した。2日後、ディッシュ上に接着した線維芽細胞様の細胞として、硝子体細胞が得られた。
(不死化遺伝子SV40大型T抗原の導入及び細胞株の単離)
上記で得られた硝子体細胞に、SV40大型T抗原の配列が組み込まれたベクター(RIKEN Tag-LTR-pUC18 sense #4)をリン酸カルシウム法(BD Calphos Mammalian Transfection Kit)を用いて導入した。
80%コンフルエントのときに、培養ディッシュに0.25% トリプシン/EDTAを4ml加え、37℃、5% CO2にて5分間処理することにより、細胞を剥がし、その後上記DMEMを同量加えることによりトリプシンを失活させた。その後、380×gにて2分間、遠心分離することにより細胞を回収した。細胞を1:10希釈となるように培養ディッシュに播き、37℃、5%CO2にて更に培養した。
4日間培養後、コロニーを形成している細胞を選択し、該細胞をトリプシンで剥がし、コロニー毎に12穴プレート中で培養した。80%コンフルエント程度になったところで、細胞を60mm培養ディッシュに継代し、更に80%コンフルエント程度になったところで、細胞を凍結保存した(5% DMSO/10%FBS/DMEM)。
上記で得られた硝子体細胞に、SV40大型T抗原の配列が組み込まれたベクター(RIKEN Tag-LTR-pUC18 sense #4)をリン酸カルシウム法(BD Calphos Mammalian Transfection Kit)を用いて導入した。
80%コンフルエントのときに、培養ディッシュに0.25% トリプシン/EDTAを4ml加え、37℃、5% CO2にて5分間処理することにより、細胞を剥がし、その後上記DMEMを同量加えることによりトリプシンを失活させた。その後、380×gにて2分間、遠心分離することにより細胞を回収した。細胞を1:10希釈となるように培養ディッシュに播き、37℃、5%CO2にて更に培養した。
4日間培養後、コロニーを形成している細胞を選択し、該細胞をトリプシンで剥がし、コロニー毎に12穴プレート中で培養した。80%コンフルエント程度になったところで、細胞を60mm培養ディッシュに継代し、更に80%コンフルエント程度になったところで、細胞を凍結保存した(5% DMSO/10%FBS/DMEM)。
(細胞の継代)
単離されたコロニーを同様の条件で、第40継代まで引続き培養した。培養を通じて、細胞は一定の比率で継代し続けることが可能であったことから、細胞の増殖速度の低下は認められなかった。5継代ごとにPDLを算出した。得られた細胞株のPDLは、1継代ごとに、約1.4〜1.5ずつ増加した。
顕微鏡下で細胞の形態を観察した。DMIRBE顕微鏡(Leica社製)に接続された冷
却CCDカメラDP−70(オリンパス社製)で細胞の様相を撮影した。撮影条件は以下の通り:対物レンズ 5倍/接眼レンズ 10倍/光量 9.0V。細胞は単層からなり、線維芽細胞様の形態を呈した(図1)。40代継代後の細胞の一部に、伸張した細胞形態を呈する傾向が認められたものの、細胞の巨大化や変性はほとんど認められなかった。
単離されたコロニーを同様の条件で、第40継代まで引続き培養した。培養を通じて、細胞は一定の比率で継代し続けることが可能であったことから、細胞の増殖速度の低下は認められなかった。5継代ごとにPDLを算出した。得られた細胞株のPDLは、1継代ごとに、約1.4〜1.5ずつ増加した。
顕微鏡下で細胞の形態を観察した。DMIRBE顕微鏡(Leica社製)に接続された冷
却CCDカメラDP−70(オリンパス社製)で細胞の様相を撮影した。撮影条件は以下の通り:対物レンズ 5倍/接眼レンズ 10倍/光量 9.0V。細胞は単層からなり、線維芽細胞様の形態を呈した(図1)。40代継代後の細胞の一部に、伸張した細胞形態を呈する傾向が認められたものの、細胞の巨大化や変性はほとんど認められなかった。
(SV40大型T抗原の発現確認)
細胞から全RNAを単離し、cDNAを合成し、RT−PCR法により不死化遺伝子SV40大型T抗原のmRNA発現を確認した。
細胞から全RNAを単離し、cDNAを合成し、RT−PCR法により不死化遺伝子SV40大型T抗原のmRNA発現を確認した。
(硝子体細胞株の表現型の解析)
硝子体細胞株は、GFAP及びS100タンパク質を発現していた。このことから、得られた硝子体細胞株は硝子体細胞としての生理学的特徴を保持していることが示された。
次に、樹立された硝子体細胞株における、ヒアルロン酸シンターゼ(HAS)2の発現及びヒアルロン酸産生に対するPDGF−BB及び/又はTGF−β1の影響を調べた。該発現はRT−PCRにて観察した。
即ち、硝子体細胞株が50〜60%コンフルエントのときに、該細胞の培地をウシ血清を1%を含んだDMEMに交換し、24時間培養後、TGF−β1(10ng/ml)及びPDGF−BB(10ng/ml)により細胞を刺激した。一部の試験においては、培地交換から6時間後に、Smad2、3又は4を細胞株にトランスフェクションした。サイトカイン刺激の3、6、24及び48時間後に、細胞及び培養上清を回収した(図2)。細胞から全RNAを抽出し、cDNA合成を行い、HAS2に特異的なプライマーを用いてRT−PCRを行った。PCRは、Roche FastStart High Fidelity PCR Systemを用い、Gene Amp PCR System 9700 (Applied Biosystems)上で行った。PCRの条件は以下の通り:
95℃ 2分間 → (95℃ 30秒 → X℃ 30秒 → 72℃ 30℃)×Yサイクル → 72℃ 7分
X=50、Y=35・・・HAS2
X=60、Y=25・・・beta−Actin
また、培養上清中のヒアルロン酸濃度をヒアルロン酸測定キット(生化学工業株式会社)を用いて測定した。
硝子体細胞株は、GFAP及びS100タンパク質を発現していた。このことから、得られた硝子体細胞株は硝子体細胞としての生理学的特徴を保持していることが示された。
次に、樹立された硝子体細胞株における、ヒアルロン酸シンターゼ(HAS)2の発現及びヒアルロン酸産生に対するPDGF−BB及び/又はTGF−β1の影響を調べた。該発現はRT−PCRにて観察した。
即ち、硝子体細胞株が50〜60%コンフルエントのときに、該細胞の培地をウシ血清を1%を含んだDMEMに交換し、24時間培養後、TGF−β1(10ng/ml)及びPDGF−BB(10ng/ml)により細胞を刺激した。一部の試験においては、培地交換から6時間後に、Smad2、3又は4を細胞株にトランスフェクションした。サイトカイン刺激の3、6、24及び48時間後に、細胞及び培養上清を回収した(図2)。細胞から全RNAを抽出し、cDNA合成を行い、HAS2に特異的なプライマーを用いてRT−PCRを行った。PCRは、Roche FastStart High Fidelity PCR Systemを用い、Gene Amp PCR System 9700 (Applied Biosystems)上で行った。PCRの条件は以下の通り:
95℃ 2分間 → (95℃ 30秒 → X℃ 30秒 → 72℃ 30℃)×Yサイクル → 72℃ 7分
X=50、Y=35・・・HAS2
X=60、Y=25・・・beta−Actin
また、培養上清中のヒアルロン酸濃度をヒアルロン酸測定キット(生化学工業株式会社)を用いて測定した。
その結果、硝子体細胞株をTGF−β1(10ng/ml)及びPDGF−BB(10ng/ml)により刺激すると、刺激から6時間後にHAS2のmRNA発現量が上昇した(図3)。該刺激により、培養上清中のHA濃度が経時的に上昇したことから、TGF−β1及びPDGF−BBの刺激により硝子体細胞株におけるヒアルロン酸合成が亢進したことが示唆された(図4)。このことから、得られた硝子体細胞株は硝子体細胞としての生理学的特徴を保持していることが示された。
Smad2、3又は4の強制発現により、TGF−β1刺激によるHAS2の発現が認められた(図5)。このことから、TGF−β1の作用はSmad2、3及び4の経路を介するものであることが示唆された。TGF−β1とPDGF−BBとの相乗効果は認められなかった。
Smad2、3又は4の強制発現により、TGF−β1刺激によるHAS2の発現が認められた(図5)。このことから、TGF−β1の作用はSmad2、3及び4の経路を介するものであることが示唆された。TGF−β1とPDGF−BBとの相乗効果は認められなかった。
実施例1において樹立した硝子体細胞株における、サイトカイン刺激に対するVEGF発現の変化を調べた。VEGFのmRNAレベルでの発現はRT-PCRにより、またタンパク質レベルでの発現はELISAにより調べた。
即ち、硝子体細胞株が50〜60%コンフルエントのときに、該細胞の培地をウシ血清1%を含んだDMEMに交換し、24時間培養後、サイトカイン(IL-1α、IL-1β、TNFα、PDGF-AA、PDGF-BB又はTGFβ)(10ng/ml)で48時間刺激した(図6)。刺激した細胞から全RNAを抽出し、cDNA合成を行い、VEGFのプライマーを用いてPCRを施行した。刺激した細胞の培地をELISAに用いた。ブタVEGFに対する適切な抗体が無いため、ヒトVEGFに対する抗体を用いたELISAによりVEGFタンパク質濃度の測定を行い、結果をヒトVEGF標準品から導き出される参考値として算出した。PCRはTOYOBO KOD plusのキットを用い、Gene PCR System 9700(Applied Biosystem)にて行った。PCRの条件は以下の通りである:
95℃ 120秒;
(95℃ 15秒、62℃ 30秒、68℃ 30秒)×30 cycle;
68℃ 90秒。
ELISAは三菱ビーシーエルに依頼した。
即ち、硝子体細胞株が50〜60%コンフルエントのときに、該細胞の培地をウシ血清1%を含んだDMEMに交換し、24時間培養後、サイトカイン(IL-1α、IL-1β、TNFα、PDGF-AA、PDGF-BB又はTGFβ)(10ng/ml)で48時間刺激した(図6)。刺激した細胞から全RNAを抽出し、cDNA合成を行い、VEGFのプライマーを用いてPCRを施行した。刺激した細胞の培地をELISAに用いた。ブタVEGFに対する適切な抗体が無いため、ヒトVEGFに対する抗体を用いたELISAによりVEGFタンパク質濃度の測定を行い、結果をヒトVEGF標準品から導き出される参考値として算出した。PCRはTOYOBO KOD plusのキットを用い、Gene PCR System 9700(Applied Biosystem)にて行った。PCRの条件は以下の通りである:
95℃ 120秒;
(95℃ 15秒、62℃ 30秒、68℃ 30秒)×30 cycle;
68℃ 90秒。
ELISAは三菱ビーシーエルに依頼した。
その結果、硝子体細胞株をIL-1αにより刺激すると、VEGFのmRNA発現量が経時的に上昇した(図7)。該刺激により、培養上清中のVEGFタンパク質濃度も経時的に上昇したことから、IL-1αの刺激により硝子体細胞株におけるVEGFタンパク質の産生が亢進したことが示唆された(図8)。
一方、硝子体細胞株を他のサイトカイン(IL-1β、IL-6、TNFα、PDGF-AA、PDGF-BB又はTGFβ)により刺激しても、VEGFのmRNA発現量の有意な変化は認められなかった(図9)。
このことから、実施例1で得られた硝子体細胞株は、特に、IL-1α刺激によるVEGF発現のメカニズムの解析に有用であることが示唆された。IL-1α刺激によるVEGFの発現を抑制することができれば、血管内皮の増殖抑制、血管透過性の亢進抑制、新生血管の増殖抑制につながると考えられる。
一方、硝子体細胞株を他のサイトカイン(IL-1β、IL-6、TNFα、PDGF-AA、PDGF-BB又はTGFβ)により刺激しても、VEGFのmRNA発現量の有意な変化は認められなかった(図9)。
このことから、実施例1で得られた硝子体細胞株は、特に、IL-1α刺激によるVEGF発現のメカニズムの解析に有用であることが示唆された。IL-1α刺激によるVEGFの発現を抑制することができれば、血管内皮の増殖抑制、血管透過性の亢進抑制、新生血管の増殖抑制につながると考えられる。
本発明の硝子体細胞株は、十分な細胞数を得ることができ、また一定の継続した増殖能を有することから、網膜硝子体疾患の病因解明、網膜硝子体疾患の予防または/および治療薬の開発に有利に利用できる。さらに、該細胞株は硝子体の生化学的・生理学的研究、さらに細胞の分化機構の研究に非常に有用なばかりでなく、人工硝子体の生体材料として利用できる可能性がある。
本出願は日本で出願された特願2006−036953(出願日:2006年2月14日)を基礎としており、その内容は本明細書に全て包含されるものである。
本出願は日本で出願された特願2006−036953(出願日:2006年2月14日)を基礎としており、その内容は本明細書に全て包含されるものである。
Claims (11)
- 外因性不死化遺伝子を発現し得る硝子体細胞株。
- 外因性不死化遺伝子がSV40大型T抗原をコードするものである、請求項1記載の細胞株。
- ブタ由来である、請求項1記載の細胞株。
- 下記(1)〜(3)の性質を有する、請求項1記載の細胞株:
(1)増殖速度の低下がみられない;
(2)GFAP及びS100の産生能を有する;及び
(3)TGF−β1及びPDGF−BBの刺激によりヒアルロン酸産生が促進される。 - 更に、以下の性質を有する、請求項4記載の細胞株:
(4)PDGF−BBの刺激によりHAS2の発現が上昇する。 - 更に、以下の性質を有する、請求項4記載の細胞株:
(5)IL−1αの刺激によりVEGFの発現が上昇する。 - 上記の性質が20継代以上維持される、請求項4〜6のいずれかに記載の細胞株:
- 生ウイルスの感染を介さずに樹立される、請求項1記載の細胞株。
- 硝子体細胞に、外因性不死化遺伝子を機能的に担持する発現ベクターをトランスフェクトし、該細胞を培地中で継代培養することによって樹立される、請求項1記載の細胞株。
- 硝子体細胞に、外因性不死化遺伝子を機能的に担持する発現ベクターをトランスフェクトし、該細胞を培地中で継代培養することを含む、硝子体細胞株の製造方法。
- 外因性不死化遺伝子がSV40大型T抗原をコードするものである、請求項10記載の製造方法。
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JP5702092B2 (ja) * | 2010-09-08 | 2015-04-15 | 学校法人東海大学 | チョウザメ由来の新規な株化細胞 |
JP5770443B2 (ja) * | 2010-09-08 | 2015-08-26 | 株式会社フジキン | ヒアルロン酸の製造方法 |
JP5831646B2 (ja) * | 2013-07-24 | 2015-12-09 | 横浜ゴム株式会社 | スタッドピン及び空気入りタイヤ |
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---|---|---|---|---|
JPH1052272A (ja) * | 1996-03-29 | 1998-02-24 | Senju Pharmaceut Co Ltd | ヒト水晶体上皮細胞株 |
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JP4741189B2 (ja) * | 2002-02-08 | 2011-08-03 | ユニヴァーシティ オブ サウス フロリダ | 増殖した細胞系およびその使用方法 |
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JPN6012035118; FVANS,J.M. et al.: 'Establishment of Adenovirus E1A Immortalized Hyalocytes and Eye Endothelial Cells for the Study of B' Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. Vol.38, No.4, 19970315, pp.S790 * |
JPN6012035121; NODA,Y. et al.: 'Functional properties of hyalocytes under PDGF-rich conditions.' Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. Vol.45, No.7, 200407, pp.2107-14 * |
JPN6012035123; OGAWA,K.: 'Scanning electron microscopic study of hyalocytes in the guinea pig eye.' Arch. Histol. Cytol. Vol.65, No.3, 200208, pp.263-8 * |
JPN6012035124; YANAI,N. et al.: 'A tubule cell line established from transgenic mice harboring temperature-sensitive simian virus 40' Jpn. J. Cancer Res. Vol.82, No.12, 199112, pp.1344-8 * |
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JPN6012035127; NISHITSUKA,K. et al.: 'Hyaluronan production regulation from porcine hyalocyte cell line by cytokines.' Exp. Eye Res. Vol.85, No.4, 200710, pp.539-45 * |
JPN6012054593; MACKENZIE,K.L. et al.: 'Multiple stages of malignant transformation of human endothelial cells modelled by co-expression of' Oncogene Vol.21, No.27, 20020620, pp.4200-11 * |
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