JP5903879B2 - エンジンのクランクピン給油構造およびエンジンの給油装置 - Google Patents

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Description

この発明は、クランク軸のメインジャーナル部からクランクピン部に向かうピン部給油路に対して、外部からオイルを供給し、該ピン部給油路にピン部内油量制御弁を設けたようなエンジンのクランクピン給油構造およびエンジンの給油装置に関する。
一般に、エンジンの構造系の機械抵抗の要因の1つに、クランク軸の回転抵抗があり、低温時や低中負荷運転時に、メインジャーナル部(主軸部)とクランクピン部との潤滑に供されるオイルが多過ぎると、油膜せん断による油膜温度上昇が期待できず、クランク軸の回転抵抗を軽減できないものである。
以下、この点について詳述する。
クランク軸はメインジャーナル部とクランクピン部とを備えており、メインジャーナル部が軸受を介してシリンダブロックに軸支される一方で、クランクピン部は軸受を介してコネクティングロッドに連結されている。
多気筒エンジンの場合、気筒相当数のクランクピン部には当該クランクピン部に隣接するメインジャーナル部からピン部給油路を介してオイルが供給される。
メインジャーナル部およびクランクピン部は何れも油膜を介して回転するもので、油膜に作用するせん断力で摩擦熱が発生し、油膜の温度が上昇し、適当な油膜温度が維持されると、オイルの粘性が適切となって、回転抵抗が軽減できる。
一方、メインジャーナル部およびクランクピン部(コンロッドを取付ける軸部)の潤滑部に余剰なオイルが流入すると、各軸受部からオイルが溢れて横方向に流れ去る所謂サイドフローが多くなる。つまり潤滑部に流入したオイルが早く逃げることになり、油膜温度が有効に上昇せず、オイル粘性が高くなって、クランク軸の回転抵抗が大きくなる。
特に、クランクピン部はメインジャーナル部の軸心(クランク軸の軸心)より偏心した位置にあり、偏心量が比較的大きいので、該クランクピン部の油膜は遠心力の作用を受け、この遠心力はエンジン回転数が高くなる程大きくなり、油圧の増加によりオイル流入量がさらに多くなるので、回転抵抗がより一層増大する問題点があった。
このような問題点を解決するためには、クランク軸に対する給油量を少なく制御することが考えられるが、給油量を少なくしても上述のクランクピン部への給油には、エンジン回転に伴い遠心力が作用するので、流量制御が難しくなるという問題点があった。
ところで、特許文献1には、クランクピン部内の油路(オイル通路)に、クランク軸の高回転時の遠心力による高油圧に伴って流量面積を絞るポペット形状の流量制御弁(流量規制手段20参照)を設けたものが開示されている。
しかしながら、上記流量制御弁は、その弁体を遠心力に応じて変位させ、流路の面積を直接制御するが、流路内の油圧も遠心力の影響を受けており、必ずしも充分な対応とはならず、改善の余地があった。
特開2007−32718号公報
そこで、この発明は、ピン部給油路内の油圧が遠心力の影響を受けて上昇する点に着目し、その上昇油圧と対峙する筒状弁体を設けることで、ピン部給油路に作用する遠心力による油圧上昇分が筒状弁体に作用する遠心力分を打ち消し、遠心力による油圧上昇分を概ねキャンセルすることができて、筒状弁体を遠心力に伴わない油圧に応じて、適正に変位させ、油量調整を正確に行なうことができるエンジンのクランクピン給油構造およびエンジンの給油装置の提供を目的とする。
この発明によるエンジンのクランクピン給油構造は、クランク軸のメインジャーナル部からクランクピン部に向かうピン部給油路に外部からオイルを供給し、該ピン部給油路にピン部内油量制御弁を設けたエンジンのクランクピン給油構造であって、上記ピン部内油量制御弁が、上記ピン部給油路の一部に該ピン部給油路に沿って収容され遠心力を受けてメインジャーナル部軸心から遠ざかる方向に移動可能な筒状弁体を有し、該筒状弁体が、小径部のメインジャーナル部軸心から遠ざかる外端側にフランジ状の大径部を有して、上記小径部のメインジャーナル部軸心に近づく方向の端部と上記大径部の外端側との受圧面に差をもたせて設け、上記大径部の外端側に筒状弁体の中央連通路とつながる有底油室を設けると共に、該筒状弁体をメインジャーナル部軸心から遠ざかる方向に付勢するバネを設け、上記ピン部給油路の油圧の上昇に伴う大径部のメインジャーナル部軸心に近づく方向の位置変化によりクランクピン部周面に連通する交差油路の開口面積を増大させるように構成したものである。
上記構成によれば、エンジン回転数の上昇に伴い遠心力が大きくなると、ピン部給油路に設けたピン部内油量制御弁における筒状弁体の中央連通路から有底油室に入るオイルの圧力(油圧)が高くなり、この油圧が筒状弁体の大径部に作用する。
筒状弁体はメインジャーナル部軸心から遠ざかる側に大径部を有し、メインジャーナル部軸心に近づく側に小径部を有しており、これら小径部と大径部とには受圧面に差をもたせているので、有底油室に作用する油圧力に対応して筒状弁体はメインジャーナル部軸心に近づく方向に変位し、交差油路の開口面積を増大させる。
このように、ピン部給油路に作用する遠心力による油圧上昇分が、筒状弁体に作用する遠心力分を打ち消し、遠心力による油圧上昇分を概ねキャンセルすることができ、筒状弁体を遠心力に影響されない油圧に応じて、適正に変位させ、油量調整を正確に行なうことができる。
換言すれば、筒状弁体に作用する遠心力を、有底油室において大径部の受圧面に作用する油圧で打消し、遠心力の影響を概ねなくすことができ、本来の制御油圧により筒状弁体をコントロールすることができる。
この発明の一実施態様においては、上記ピン部内油量制御弁は、上記筒状弁体と、上記バネとを収容して有底油室を区画するケースを備え、該ケースが上記ピン部給油路の一部に嵌め込まれ、該ケースの周面に、上記交差油路と連通する開口が設けられ、上記大径部の油圧による変位で該開口の面積が調整されるように構成したものである。
上記構成によれば、ピン部内油量制御弁をユニット化(複数部品としての筒状弁体、バネ等が一体的に組付けられた構成単位)することができ、これにより、クランク軸の加工を簡素化することができる。
この発明によるエンジンの給油装置は、一端がクランク軸の複数のメインジャーナル部のうちの特定のメインジャーナル部に連通すると共に、他端がそれぞれのクランクピン部に連通するピン部給油路を設け、各ピン部給油路に上記請求項1または2に記載のピン部内油量制御弁を設け、上記特定のメインジャーナル部を支持する特定軸受部以外の複数の軸受部に連通し、軸受部用流量制御弁を介した主油路を設け、上記特定軸受部には、該主油路の上記軸受部用流量制御弁より上流側で分岐し、途中にクランクピン部用流量制御弁を介在させたピン部用サブ油路が連通されてなるものである。
上述の特定のメインジャーナル部は、直列多気筒エンジンにおいて気筒列方向の中央に位置するメインジャーナル部に設定してもよい。
上記構成によれば、特定軸受部以外の複数の軸受部(メインジャーナル部を支持する複数の軸受部)に対しては主油路から軸受部用流量制御弁を介してオイルが供給され、特定軸受部(メインジャーナル部を支持する特定の軸受部)にはピン部用サブ油路からクランクピン部用流量制御弁を介してオイルが供給される。
また、それぞれのクランクピン部に対しては、ピン部給油路とピン部内油量制御弁とを介してオイルが供給される。
上記主油路の流量は軸受部用流量制御弁でコントロールされ、ピン部用サブ油路の流量はクランクピン部用流量制御弁でコントロールされ、しかも、クランクピン部の潤滑部に供給される油圧はピン部内油量制御弁により遠心力による油圧上昇分を概ねキャンセルすることができる。
よって、メインジャーナル部とクランクピン部との総合的な給油をより一層高精度に行なうことができる。
この発明によれば、ピン部給油路に作用する遠心力による油圧上昇分が、筒状弁体に作用する遠心力分を打ち消し、遠心力による油圧上昇分を概ねキャンセルすることができて、筒状弁体を遠心力に伴わない油圧に応じて、適正に変位させ、油量調整を正確に行なうことができる効果がある。
本発明のエンジンの給油装置を示す全体構成図 クランク軸のメインジャーナル部からクランクピン部に向かうピン部給油路を示すクランク軸の断面図 特定軸受部における縦断面図 特定軸受部以外の軸受部における縦断面図 エンジンのクランクピン給油構造を示す図2の要部拡大断面図 ピン部内油量制御弁の拡大断面図 ピン部内油量制御弁の作動時の説明図 図5のX‐X線矢視断面図 (a)は遠心力により有底油室に作用する油圧変化を示す特性図、(b)はエンジン回転数により筒状弁体に作用する遠心力変化を示す特性図 ピン部内油量制御弁の他の実施例を示す拡大断面図 ピン部内油量制御弁の作動時の説明図 各作動モードにおける開閉弁および第1、第2制御弁の作動状態を示す説明 特定軸受部における潤滑油と流量との関係を示すグラフ 従来のエンジンの給油装置と実施例のエンジンの給油装置との潤滑油量を比較して示すグラフ
ピン部給油路に作用する遠心力による油圧上昇分が、筒状弁体に作用する遠心力分を打ち消し、遠心力による油圧上昇分を概ねキャンセルすることができ、筒状弁体を遠心力に伴わない油圧に応じて適正に変位させ、油量調整を正確に行なうという目的を、クランク軸のメインジャーナル部からクランクピン部に向かうピン部給油路に外部からオイルを供給し、該ピン部給油路にピン部内油量制御弁を設けたエンジンのクランクピン給油構造において、上記ピン部内油量制御弁が、上記ピン部給油路の一部に該ピン部給油路に沿って収容され遠心力を受けてメインジャーナル部軸心から遠ざかる方向に移動可能な筒状弁体を有し、該筒状弁体が、小径部のメインジャーナル部軸心から遠ざかる外端側にフランジ状の大径部を有して、上記小径部のメインジャーナル部軸心に近づく方向の端部と上記大径部の外端側との受圧面に差をもたせて設け、上記大径部の外端側に筒状弁体の中央連通路とつながる有底油室を設けると共に、該筒状弁体をメインジャーナル部軸心から遠ざかる方向に付勢するバネを設け、上記ピン部給油路の油圧の上昇に伴う大径部のメインジャーナル部軸心に近づく方向の位置変化によりクランクピン部周面に連通する交差油路の開口面積を増大させるように構成することで実現した。
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面はエンジンのクランクピン給油構造およびエンジンの給油装置を示すが、まず、図1〜図4を参照してエンジンの給油装置について説明する。
図1はエンジンの給油装置を示す全体構成図、図2はクランク軸のメインジャーナル部からクランクピン部に向かうピン部給油路を示すクランク軸の断面図、図3は特定軸受部における縦断面図、図4は特定軸受部以外の軸受部における縦断面図である。
図1において、エンジンの給油装置1は、自動車の多気筒エンジン、例えば、直列4気筒エンジンEを潤滑するものである。
エンジンEは、シリンダヘッド(図示せず)と、シリンダブロック2と、エンジンEの潤滑油(つまり、オイル)を回収および貯留可能なオイルパン4とが上下方向に連結されている。
シリンダヘッドには、複数の吸気弁と、複数の排気弁と、複数の吸気弁を駆動する吸気側カム軸と、複数の排気弁を駆動する排気側カム軸等が配置されている。シリンダブロック2には、列状に配置された気筒相当数、つまり4つのシリンダボア2aが形成され、各シリンダボア2a内をそれぞれ上下方向に摺動可能な4つのピストン(図示せず)が配置されている。
シリンダブロック2の前後および気筒間の縦壁部3aは、ロアブロック3b(または軸受キャップ)とによりクランク軸10を回転自在に枢支している。
4つのピストンとクランク軸10が4本のコネクティングロッド5を介して連結されている。縦壁部3aおよびロアブロック3bには、中央軸受部21(特定軸受部)と、4つの側部軸受部22(特定軸受部以外の複数の軸受部)とが形成されている。
特定軸受部としての中央軸受部21は、第2気筒#2と第3気筒#3との間にクランク軸10と直交するように形成され、特定軸受部以外の軸受部としての側部軸受部22は、第1気筒#1と第2気筒#2の間と、第3気筒#3と第4気筒#4の間と、第1気筒#1の外壁部と、第4気筒#4の外壁部とにそれぞれクランク軸10と直交するように形成されている。
図2に示すように、クランク軸10は、1つの中央軸部11(特定のメインジャーナル部)と、4つの側部軸部12(特定以外のメインジャーナル部)と、4つのクランクピン部13と、クランク軸内油路14等を備えている。
中央軸部11は、クランク軸10の回転軸心と同軸状に配置され、クランク軸10の軸方向中央位置に形成されている。
中央軸部11は、縦壁部3aおよびロアブロック3bに形成された中央軸受部21に軸受メタル21aを介して回転自在に枢支されている。
中央軸部11の外周には、潤滑油を中央軸部11の内部へ導入可能な1対の開口部11aが形成されている。
4つの側部軸部12は、クランク軸10の回転軸心と同軸状に配置され、クランク軸10の中央軸受部21の前後側方位置にそれぞれ2つづつ形成されている。
各側部軸部12は縦壁部3aおよびロアブロック3bに形成された側部軸受部22に軸受メタル22aを介して回転自在に枢支されている。軸受メタル21a,22aには、該軸受メタル21a,22aの内外を連通可能な連通開口が形成されている。
4つのクランクピン部13は、クランク軸10の回転軸心と同じ円状に配置され、メインジャーナル部としての中央軸部11および各側部軸部12から偏心した位置に形成されている。クランクピン部13は、軸受メタル5aを介して各コネクティングロッド5を回転自在に枢支している。各クランクピン部13の外周には、潤滑油を第1気筒#1〜第4気筒#4に対応したクランクピン部13周面へ供給するために、該クランクピン部13周面に連通する交差油路13a〜13dがそれぞれ形成されている。
クランク軸10の内部には、開口部11aと各交差油路13a〜13dとを連通するクランク軸内油路14が設けられている。クランク軸内油路14は、中央油路14eと、第1〜第4のピン部給油路14a〜14dとにより構成されている。
中央油路14eは、一方の開口部11aから他方の開口部11aに亙って軸心直交方向へ略直線状に形成され、中央軸受部21に供給された潤滑油をクランク軸10内部へ導入可能に構成されている。
第1ピン部給油路14aは、中央油路14eに供給された潤滑油を側部軸部12を経由して第1気筒#1に対応したクランクピン部13の交差油路13aへ流動可能に形成されている。
第2ピン部給油路14bは、中央油路14eに供給された潤滑油を第2気筒#2に対応したクランクピン部13の交差油路13bへ流動可能に形成されている。
第3ピン部給油路14cは、中央油路14eに供給された潤滑油を第3気筒#3に対応したクランクピン部13の交差油路13cへ流動可能に形成されている。
第4ピン部給油路14dは、中央油路14eに供給された潤滑油を側部軸部12を経由して第4気筒#4に対応したクランクピン部13の交差油路13dへ流動可能に形成されている。
これにより、開口部11aからクランク軸10内部へ導入された潤滑油は、各交差油路13a〜13dからそれぞれに対応した軸受メタル5a(図1参照)に給油される。なお、軸受メタル5aには、該軸受メタル5aの内外を連通可能な連通開口が形成されている。
ここで、ピン部給油路14a〜14dと交差油路13a〜13dとの間には、ピン部内油量制御弁60(図5参照)が設けられるが、このピン部内油量制御弁の具体的構造については後述する。
図1に示すように、エンジンの給油装置1は、電動式のオイルポンプ6と、主油路7(図1の太線の油路参照)と、ピン部用サブ油路30と、クランクピン部用流量制御弁としての第2制御弁V2と、軸受部用流量制御弁としての第1制御弁V1と、コントロールユニット50等を備えている。
オイルポンプ6は、吐出圧の下限が150[kPa]に設定された電動式の可変容量型オイルポンプにより構成されている。なお、電動式のオイルポンプ6に代えて機械式の固定容量型オイルポンプを適用することも可能である。
主油路7は、オイルポンプ6の吐出部に接続され昇圧された潤滑油をエンジンEの各摺動部へ給油するための潤滑油路であり、シリンダブロック2に穿設された通路(いわゆる、オイルギャラリ)により構成されている。
主油路7には、分岐主油路7aと、ピン部用サブ油路30と、分岐油路45とがそれぞれ接続されている。
分岐主油路7aは、シリンダブロック2やシリンダヘッド等に穿設された通路により構成されている。分岐主油路7aには、ピストン潤滑用油路8と、ピストン冷却用油路9とが接続されている。
ピストン潤滑用油路8は、分岐主油路7aから分岐し、各気筒#1〜#4のシリンダボア2aの下方位置に設置された1対の潤滑用ノズル(図示せず)に潤滑油を供給可能に形成されている。
ピストン潤滑用油路8には、潤滑用ノズルの上流側位置に運転状態に応じて開閉可能な電磁切換弁V3が設けられている。潤滑油は、各ピストンの背面に噴射され、ピストンに装着されたコンプレッションリングとオイルリングとの間のランド部へ供給される。これにより、ピストンが上昇移動する時、潤滑油がオイルリングの先行域へ給油され、オイルリングのシリンダボア2aに対する摺動抵抗が低減される。
ピストン冷却用油路9は、分岐主油路7aから分岐し、各気筒#1〜#4のシリンダボア2aの下方位置に設置された冷却用ノズル(図示せず)に潤滑油を供給可能に形成されている。潤滑油は、油圧に応じて開閉可能な圧力切換弁を介して各ピストンの冠面裏部に噴射され、ピストン冠面を冷却可能に構成されている。これにより、潤滑油がピストン冠面を冷却し、燃焼を安定化することができる。
図1,図3に示すように、ピン部用サブ油路30は、主油路7の第1制御弁V1よりも上流側で分岐し、途中に第2制御弁V2を介在させた油路であって、このピン部用サブ油路30は、中央軸受部21へ潤滑油を給油するための潤滑油路である。ピン部用サブ油路30は、主油路7と中央軸部11を支承する軸受メタル21aとを連通し、連通路31と第2制御弁V2等を備えている。連通路31は、下流端が第2制御弁V2と軸受メタル21aとの間の位置に接続され、上流端が後述する共通路41に接続されている。
連通路31の途中部には、第2逆止弁33が介装されている。第2逆止弁33は、共通通路41の油圧が所定圧力以上の時、潤滑油を共通路41から軸受メタル21a側のピン部用サブ油路30へ供給する。この第2逆止弁33は、後述する電磁開閉弁V4が開弁した時、それによる油圧の増大に伴い連通し、電磁開閉弁V4が弁した時、遮断するよう形成されている。
また、第2逆止弁33は、その逆止作用により、第2制御弁V2により調圧され中央軸受部11に供給される潤滑油の油圧が、第1制御弁V1により調圧され各側部軸受部22に供給される潤滑油の油圧より大きくても連通路31を介して各側部軸受部22の給油形態に影響を与えることはない。
第2制御弁V2は、例えば、デューティソレノイドにより駆動するスプール弁であり、コントロールユニット50から送信される制御信号によりデューティ制御される。
図1,図2,図4に示すように、主油路7は、各側部軸受部22へ潤滑油を給油するための潤滑油路である。この主油路7は、特定のメインジャーナル部(中央軸部10参照)を支持する特定軸受部以外の複数の軸受部(側部軸受部22参照)に連通しており、共通油路41と、4つの分岐給油路42等を備えている。共通油路41は、上流端が第1制御弁V1に接続されている。
第1制御弁V1は、例えば、デューティソレノイドにより駆動するスプール弁であり、コントロールユニット50から送信される制御信号によりデューティ制御される。
図1に示すように、4つの分岐給油路42,42…は、それぞれ、上流端が第1制御弁V1よりも下流側の共通油路41に並列状に接続され、下流端が側部軸部12を支承する軸受メタル22aへ連通されている。各分岐給油路42は、図2に示すように、並列接続された第1逆止弁43(図4参照)とオリフィス44(絞り通路)を備えている。
第1逆止弁43は、分岐給油路42の油圧が所定圧力以上の時、潤滑油を軸受メタル22aへ供給する。オリフィス44は、上流端が第1逆止弁43の上流側の分岐給油路42に接続され、下流端が軸受メタル22aへ連通されている(図4参照)。
オリフィス44は、軸受メタル22aへ供給される潤滑油量を第1逆止弁43が連通した時の潤滑油の流量よりも少量に制限するように形成されている。よって、この実施例では、軸受メタル22aへ供給される潤滑油量をオリフィス44により制限するため、各軸受部22に形成される潤滑油膜の厚さを軸受特性数が境界摩擦領域に入らない範囲になるように制御している。
図1に示すように、分岐油路45は、主油路7から分岐し、共通油路41へ潤滑油を給油するための潤滑油路である。分岐油路45は、一端(下流端)が第1制御弁V1よりも下流側の共通油路41に接続され、他端(上流端)が主油路7に接続されている。
分岐油路45の中途部には、電磁開閉弁V4が設けられている。電磁開閉弁V4は,ノーマルオープンタイプの電磁方向切換弁であり、コントロールユニット50から送信される制御信号によりオン・オフ制御される。これにより、電磁開閉弁V4がオフ状態の時(図示状態の時)、主油路7の油圧(潤滑油量)が分岐油路45から共通通路41へ供給され、電磁開閉弁V4がオン状態の時、分岐油路45から共通油路41への油圧の供給が遮断される。
主油路7には、流量センサ15が設置されている。流量センサ15は、主油路7を流れる潤滑油量を検出し、その検出値をコントロールユニット50へ送信する。
また、第1気筒#1に対応するオリフィス44の上流側位置には、油温センサ16が設置されている。油温センサ16は、分岐給油路42を流れる潤滑油の温度を検出し、その検出値をコントロールユニット50へ送信する。
コントロールユニット50には、エンジンEの回転数センサ(図示せず)や負荷センサ(図示せず)等からエンジンEの運転状態を示すエンジン回転数や負荷等の検出値が送信されている。
次に図5〜図8を参照してエンジンのクランクピン給油構造について詳述する。
図5は図2の要部拡大断面図で、図示の便宜上、第2気筒#2と第3気筒#3とにおけるクランクピン部13,13への給油構造を示しているが、第1気筒#1と第4気筒#4におけるクランクピン部13,13への給油構造も、これと同様に構成されている。
図6はピン部内油量制御弁の拡大断面図、図7はその作動時の説明図、図8は図5のX‐X線矢視断面図である。
図5に示すように、第2気筒#2のクランクピン部13にオイルを供給するピン部給油路14bの一部には、該ピン部給油路14bに沿うようにピン部内油量制御弁60(いわゆる、オイルコントロールバルブ)を収容している。
同様に、第3気筒#3のクランクピン部13にオイルを供給するピン部給油路14cの一部にも、該ピン部給油路14cに沿うようにピン部内油量制御弁60を収容している。
各気筒#1〜#4のピン部内油量制御弁60(以下単に、油量制御弁と略記する)は同一構造に形成されており、この実施例では、図5に示すように、ピン部給油路14b,14cの延長線上に制御弁配設孔61をクランク軸10外部と連通するように開口形成し、制御弁配設孔61の開口端61aから該制御弁配設孔61に油量制御弁60を捩じ込み固定している。
図6,図7,図8に油量制御弁60を拡大して示すように、この油量制御弁60は、エンジンEの回転に伴う遠心力を受けてメインジャーナル部(中央軸部11、側部軸部12参照)の軸心100(図5参照)から遠ざかる方向、(詳しくは、メインジャーナル部の軸心100に対して接離する方向)に移動可能な筒状弁体62(つまり可動弁体)と、この筒状弁体62の軸心に貫通形成された中央連通路63と、筒状弁体62の小径部62Sと、小径部62Sのメインジャーナル部軸心100(図5参照)から遠ざかる外端側に一体形成されたフランジ状、例えば、円筒状の大径部62Lと、筒状弁体62をメインジャーナル部軸心100から遠ざかる方向に付勢するバネとしてのコイルスプリング64と、このコイルスプリング64のバネ座を兼ねるスプールガイド65と、上述の筒状弁体62、コイルスプリング64およびスプールガイド65を収容して大径部62Lの外端側に筒状弁体62の中央連通路とつながる有底油室66を区画するケース67と、を備えている。
上述のケース67の内部上流側(メインジャーナル部軸心100に近づく方向側)には、オイル中の異物を除去するフィルタ68を取付けており、オイルは該フィルタ68を通って中央連通路63に供給される。
また、ケース67における開口端61aと近接する外周部には環状のOリング溝67aを形成し、このOリング溝67aには、制御弁配設孔61とケース67との間をシールするシール部材としてのOリング69を嵌着している。
さらに、上述のケース67の周面には前述の交差油路13c,13c(図8参照)と連通する開口(いわゆる、アウトレットポート)70,70が形成されており、交差油路13c,13cはクランクピン部13周面に連通するように形成されている。
しかも、図6,図7,図8に示すように、小径部62Sのメインジャーナル部軸心100に近づく方向の端部と、大径部62Lの外端側との受圧面に差を形成し、ピン部給油路14cの油圧の上昇に伴う大径部62Lのメインジャーナル部軸心100に近づく方向の位置変化により、開口70の面積を調整して、クランクピン部13の周面に連通する交差油路13cの開口面積を増大させるように構成している。
図9の(b)は横軸にエンジン回転数をとり、縦軸にクランクピン部13に作用する遠心力(筒状弁体62に作用する遠心力)をとった特性図で、エンジン回転数が高くなる程、筒状弁体62に作用する遠心力が大きくなることを表わしている。
図9の(a)は横軸にエンジン回転数をとり、縦軸に遠心力による油圧変化(有底油室66において図7に点線矢印で示す方向に作用する油圧)をとった特性図で、エンジン回転数が高くなる程、遠心力による油圧(図7の点線矢印方向の油圧)が高くなることを表わしており、この実施例では、上述の油量制御弁60で、図9の(b)の特性と、図9の(a)の特性とを相殺して、遠心力の影響をなくすものである。
すなわち、図9の(b)の特性図で示すように、エンジン回転数の上昇に伴い遠心力が次第に大きくなると、図7に矢印で示すように、ピン部給油路14cに設けた油量制御弁60における筒状弁体62の中央連通路63から有底油室66に入るオイルの圧力(油圧)が、図9の(a)の特性図で示すように高くなり、有底油室66に入ったオイルの圧力が、図7に点線矢印で示すように、筒状弁体62の大径部62Lに作用する。
筒状弁体62の小径部62Sと大径部62Lとには受圧面積の差があるので、図7に示すように、筒状弁体62は油圧力に対応してメインジャーナル部軸心100に近づく方向に変位し、開口70の面積が調整され、これにより交差油路13c(図8参照)の開口面積を増大させる。
換言すれば、筒状弁体62に作用する遠心力(図9の(b)参照)を、有底油室66において大径部62Lの受圧面に作用する油圧(図9の(a)参照)で打消し、遠心力の影響を概ねなくすことができ、本来の制御油圧により筒状弁体62をコントロールすることができる。
このように、ピン部給油路14cに作用する遠心力による油圧上昇分(図9の(a)参照)と、筒状弁体62に作用する遠心力分(図9の(b)参照)とが相殺されるので、遠心力による油圧上昇分を概ねキャンセルすることができ、筒状弁体62を遠心力に影響されない本来の制御油圧に応じて、適正に変位させ、油量調整を正確に行なうことができる。
なお、図6,図7で示した油量制御弁60に代えて、図10,図11に示す油量制御弁60´を用いてもよい。
図6,図7の油量制御弁60においては、ケース67でペントルーフ形状の有底油室66を形成したが、図10,図11に示すこの油量制御弁60´においては、ケース67に固定した別体のプラグ71と該ケース67とにより円柱状の有底油室66を形成している。
また、図10,図11の油量制御弁60´では、図6,図7のスプールガイド65を廃止して、ケース67にコイルスプリング64のバネ座67bと、筒状弁体62のガイド部67cとを一体形成している。
図10,図11に示す油量制御弁60´においても、その他の構成、作用、効果については図6,図7で示した油量制御弁60と同様であるから、図10,図11において、図6,図7と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
次に、図12に基づいて、コントロールユニット50による作動モード毎の電磁開閉弁V4と、第1、第2の各制御弁V1,V2の制御について説明する。
コントロールユニット50は、始動モード、温間モード、高温モード、高回転/高負荷モード、フェールセーフモードの5つのモードにより、電磁開閉弁V4と各制御弁V1,V2を制御している。コントロールユニット50は、第1制御弁V1を制御するための油圧マップと、第2制御弁V2を制御するための油圧マップとをそれぞれメモリ内に格納している。
第2制御弁V2の油圧マップは、予め実験的、または、理論的に求められたマップであり、各クランクピン部13を充分に潤滑可能な油圧と、エンジン回転数と、エンジン負荷との対応関係が設定されている。
第1制御弁V1の油圧マップは、予め実験的、または、理論的に求められたマップであり、各軸受部22の潤滑油膜の厚さを所定の限界厚さ近傍に維持可能な油圧と、エンジン回転数と、エンジン負荷との対応関係が設定されている。各制御弁V1,V2は、これら各制御弁V1,V2がオン(作動)状態の時、それぞれの油圧マップに基づいて制御される。
始動モード、例えば、エンジンEの始動時等潤滑油温度が30℃より低い時は、電磁開閉弁V4がオフ状態、第2制御弁V2がオン状態、第1制御弁V1がオフ状態に制御されている。
中央軸受部21用の潤滑油は、ピン部用サブ油路30の第2制御弁V2を経由する第1のルートと、主油路7、分岐油路45、共通油路41、連通路31、第2逆止弁33を経由する第2のルートとの2つのルートからピン部用サブ油路30へ給油される。
各側部軸受部22用の潤滑油は、主油路7、分岐油路45、共通油路41を経由して各分岐給油路42へ給油される。これにより、各給油路へ潤滑油を早期に充填することができる。
温間モード、例えば、潤滑油温度が30℃以上130℃未満の時は、電磁開閉弁V4がオン状態、第2制御弁V2がオン状態、第1制御弁V1がオン状態に制御されている。
中央軸受部21用の潤滑油は、油圧マップに基づいて主油路7からピン部用サブ油路30により軸受メタル21aへ給油される。
各側部軸受部22用の潤滑油は、油圧マップに基づいて主油路7、共通油路41、各分岐給油路42、各オリフィス44を経由して各軸受メタル22aへ給油される。これにより、各側部軸受部22へ供給する潤滑油量を最小限に抑えることができ、潤滑油のサイドフローを減少し、各側部軸受部22に滞在する潤滑油温度を高めることによりオイルポンプ6の駆動負荷を低減できる。
高温モード、いわゆる潤滑油温度が130℃以上の時は、電磁開閉弁V4がオフ状態、第2制御弁V2がオン状態、第1制御弁V1がオフ状態に制御されている。
中央軸受部21用の潤滑油は、始動モードと同様に、第1、第2の各ルートから軸受メタル21aへ給油される。
各側部軸受部22用の潤滑油は、主油路7、分岐油路45、共通油路41、各分岐給油路42、第1逆止弁43を経由して各軸受メタル22aへ給油される。これにより、中央軸受部21へ供給される潤滑油量を増加し、中央軸受部21と各クランクピン部13の潤滑油膜の厚さを確保できる。また、各側部軸受部22へ供給される潤滑油量を増加し、各側部軸受部22の潤滑油膜の厚さを確保でき、潤滑油粘度の過剰低下を抑制することができる。
高回転/高負荷モードの時は、高温モードと同様に、電磁開閉弁V4がオフ状態、第2制御弁V2がオン状態、第1制御弁V1がオフ状態に制御されている。
フェールセーフモードの時は、電磁開閉弁V4がオフ状態に制御される。これにより、第1、第2の各制御弁V1,V2が故障した場合でも、中央軸受部21と各側部軸受部22と各クランクピン部13の潤滑油膜の厚さを確保できる。
図13に基づいて、メインジャーナル部の軸受部21および軸受部22に供給される潤滑油の流量特性について説明する。なお、図13は、エンジン回転数が2000[rpm]の時の潤滑油の流量特性を示している。
図13に示すように、中央軸受部21には、4つのクランクピン部13の潤滑に必要な流量L3を中央軸受部21の潤滑に必要な流量に付加した流量L1が供給されている。
流量L1は、油圧がP0[kPa]未満の範囲と、油圧がP0[kPa]からP1[kPa]までの微小流量制御範囲Aと、油圧がP1[kPa]以上の範囲に分けて制御されている。
油圧がP0[kPa]未満の時、電磁開閉弁V4がオフ状態(開弁)のため、ピン部用サブ油路30の第2制御弁V2を介して供給される潤滑油と電磁開閉弁V4を介して供給される潤滑油が合流されて軸受メタル21aへ給油される。
微小流量制御範囲Aの時、電磁開閉弁V4がオン状態(閉弁)のため、第2制御弁V2を介して供給される潤滑油が軸受メタル21aへ給油される。
油圧がP1[kPa]以上の時、前述した油圧がP0[kPa]未満の場合と同様である。
以上により、微小流量制御範囲Aでは、中央軸受部21へ供給する潤滑油流量L1を、油圧マップに基づいてデューティ制御し、各クランクピン部13を充分に潤滑しつつ、中央軸受部21の潤滑油膜の厚さを所定の限界厚さ近傍に維持するように制御している。
14に示すように、従来の独立給油方式の給油装置では、全軸受部にクランクピン部の潤滑に必要な潤滑油を付加した潤滑油量を均等に供給する必要があったが、この実施例の給油装置1では、中央軸受部21のみにクランクピン部13の潤滑に必要な潤滑油を付加し、各側部軸受部22の潤滑油量は潤滑油膜の厚さが所定の限界厚さ近傍まで低減できるため、潤滑油の総消費量を低減することができる。
このように、上記実施例のエンジンのクランクピン給油構造は、クランク軸10のメインジャーナル部(中央軸部11、側部軸部12参照)からクランクピン部13に向かうピン部給油路14a〜14dに外部からオイルを供給し、該ピン部給油路14a〜14dに油量制御弁60を設けたエンジンのクランクピン給油構造であって、上記油量制御弁60が、上記ピン部給油路14a〜14dの一部に該ピン部給油路14a〜14dに沿って収容され遠心力を受けてメインジャーナル部(各軸部11,12参照)の軸心100から遠ざかる方向に移動可能な筒状弁体62を有し、該筒状弁体62が、小径部62Sのメインジャーナル部軸心100から遠ざかる外端側にフランジ状の大径部62Lを有して、上記小径部62Sのメインジャーナル部軸心100に近づく方向の端部と上記大径部62Lの外端側との受圧面に差をもたせて設け、上記大径部62Lの外端側に筒状弁体62の中央連通路63とつながる有底油室66を設けると共に、該筒状弁体62をメインジャーナル部軸心100から遠ざかる方向に付勢するバネ(コイルスプリング64参照)を設け、上記ピン部給油路14a〜14dの油圧の上昇に伴う大径部62Lのメインジャーナル部軸心100に近づく方向の位置変化によりクランクピン部13周面に連通する交差油路13a〜13dの開口面積を増大させるように構成したものである(図2,図5〜図8参照)。
この構成によれば、エンジン回転数の上昇に伴い遠心力が大きくなると(図9の(b)参照)、ピン部給油路14a〜14dに設けた油量制御弁60における筒状弁体62の中央連通路63から有底油室66に入るオイルの圧力(油圧)が高くなり(図9の(a)参照)、この油圧が筒状弁体62の大径部62Lに作用する。
筒状弁体62はメインジャーナル部(中央軸部11、側部軸部12参照)の軸心100から遠ざかる側に大径部62Lを有し、メインジャーナル部軸心100に近づく側に小径部62Sを有しており、これら小径部62Sと大径部62Lとには受圧面に差をもたせているので、有底油室66に作用する油圧力に対応して筒状弁体62はメインジャーナル部軸心100に近づく方向に変位し、交差油路13a〜13dの開口面積を増大させる。
このように、ピン部給油路14a〜14dに作用する遠心力による油圧上昇分(図9の(a)参照)が、筒状弁体62に作用する遠心力分(図9の(b)参照)を打ち消し、遠心力による油圧上昇分を概ねキャンセルすることができ、筒状弁体62を遠心力に影響されない油圧に応じて、適正に変位させ、油量調整を正確に行なうことができる。
換言すれば、図9の(b)に示す筒状弁体62に作用する遠心力を、図9の(a)に示す有底油室66において大径部62Lの受圧面に作用する油圧で打消して、相殺し、遠心力の影響を概ねなくすことができ、本来の制御油圧により筒状弁体62をコントロールすることができる。
また、上記油量制御弁60は、上記筒状弁体62と、上記バネ(コイルスプリング64参照)を収容して有底油室66を区画するケース67を備え、該ケース67が上記ピン部給油路14a〜14dの一部に嵌め込まれ、該ケース67の周面に、上記交差油路13a〜13dと連通する開口70が設けられ、上記大径部62Lの油圧による変位で該開口70の面積が調整されるように構成したものである(図6〜図8参照)。
この構成によれば、油量制御弁60をユニット化(複数部品としての筒状弁体62、コイルスプリング64、ケース67等が一体的にアセンブリされた構成単位)することができ、これにより、クランク軸10の加工を簡素化することができる。
さらに、上記実施例のエンジンの給油装置は、一端がクランク軸10の複数のメインジャーナル部(中央軸部11、側部軸部12参照)のうちの特定のメインジャーナル部(中央軸部11参照)に連通すると共に、他端がそれぞれのクランクピン部13に連通するピン部給油路14a〜14dを設け、各ピン部給油路14a〜14dに上記請求項1または2に記載の油量制御弁60を設け、上記特定のメインジャーナル部(中央軸部11参照)を支持する特定軸受部(中央軸受部21)以外の複数の軸受部(側部軸受部22参照)に連通し、軸受部用流量制御弁(第1制御弁V1参照)を介した主油路7を設け、上記特定軸受部(中央軸受部21参照)には、該主油路7の上記軸受部用流量制御弁(第1制御弁V1参照)より上流側で分岐し、途中にクランクピン部用流量制御弁(第2制御弁V2参照)を介在させたピン部用サブ油路30が連通されてなるものである(図1,図2,図5参照)。
この構成によれば、特定軸受部(中央軸受部21)以外の複数の軸受部(メインジャーナル部を支持する側部軸受部22参照)に対しては主油路7から軸受部用流量制御弁(第1制御弁V1参照)を介してオイルが供給され、特定軸受部(メインジャーナル部を支持する中央軸受部21参照)にはピン部用サブ油路30からクランクピン部用流量制御弁(第2制御弁V2参照)を介してオイルが供給される。
また、それぞれのクランクピン部13に対しては、ピン部給油路14a〜14dと油量制御弁60とを介してオイルが供給される。
上記主油路7の流量は軸受部用流量制御弁(第1制御弁V1)でコントロールされ、ピン部用サブ油路30の流量はクランクピン部用流量制御弁(第2制御弁V2)でコントロールされ、しかも、クランクピン部13の潤滑部に供給される油圧は油量制御弁60により遠心力による油圧上昇分を概ねキャンセルすることができる。
よって、メインジャーナル部(中央軸部11、側部軸部12)とクランクピン部13との総合的な給油をより一層高精度に行なうことができる。
さらに、実施例で開示したように、油量制御弁60を外部から制御弁配設孔61に捩じ込み固定して取付けるように構成すると、油量制御弁を圧入固定するものと比較して、取付け時において筒状弁体62に歪みなどの不所望の応力が付加されることがなく、該筒状弁体62による高精度な油圧制御が可能となる。
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明のエンジンは、実施例の直列4気筒エンジンEに対応し、
以下同様に、
ピン部内油量制御弁は、油量制御弁60,60´に対応し、
バネは、コイルスプリング64に対応し、
メインジャーナル部は、中央軸部11および側部軸部12に対応し、
特定のメインジャーナル部は、中央軸部11に対応し、
特定以外のメインジャーナル部は、側部軸部12に対応し、
特定軸受部は、中央軸受部21に対応し、
特定軸受部以外の軸受部は、側部軸受部22に対応し、
軸受部用流量制御弁は、第1制御弁V1に対応し、
クランクピン部用流量制御弁は、第2制御弁V2に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
例えば、エンジンEとしては直列4気筒エンジンの他に、2気筒以上の直列エンジンであってもよく、あるいは、V型エンジンであってもよい。
また、上記実施例においては、クランク軸方向中央位置の中央軸受部にピン部給油路を連通した構造を例示したが、第1気筒と第2気筒との間の側部軸受部や第3気筒と第4気筒との間の側部軸受部に対してピン部給油路を連通させる構造を採用してもよい。
さらに、ピン部給油路を単一の軸受部に連通させた構造を例示したが、これは、2つの軸受部に連通させる構造であってもよく、複数の軸受部に連通させる構造であってもよい。
さらにまた、第1および第2の制御弁V1,V2としてはデューティソレノイド弁を例示したが、これはオイルの流量制御が可能であればよく、機械式の流量制御弁を適用してもよい。
加えて、筒状弁体62および大径部62Lの形状は、必ずしも円筒状でなくてもよく、該筒状弁体62、大径部62Lがメインジャーナル部軸心に対して接離する方向に軸動可能であれば、角筒状であってもよい。
以上説明したように、本発明は、クランク軸のメインジャーナル部からクランクピン部に向かうピン部給油路に外部からオイルを供給し、該ピン部給油路にピン部内油量制御弁を設けたエンジンのクランクピン給油構造について有用である。
E…エンジン
V1…第1制御弁(軸受部用流量制御弁)
V2…第2制御弁(クランクピン部用流量制御部)
7…主油路
10…クランク軸
11,12…軸部(メインジャーナル部)
13…クランクピン部
13a,13b,13c,13d…交差油路
14a,14b,14c,14d…ピン部給油部
21…中央軸受部(特定軸受部)
22…側部軸受部(特定軸受部以外の軸受部)
30…ピン部用サブ油路
60,60´…油量制御弁(ピン部内油量制御弁)
62…筒状弁体
62S…小径部
62L…大径部
63…中央連通路
64…コイルスプリング(バネ)
66…有底油室
67…ケース
70…開口
100…メインジャーナル部軸心

Claims (3)

  1. クランク軸のメインジャーナル部からクランクピン部に向かうピン部給油路に外部からオイルを供給し、
    該ピン部給油路にピン部内油量制御弁を設けた
    エンジンのクランクピン給油構造であって、
    上記ピン部内油量制御弁が、上記ピン部給油路の一部に該ピン部給油路に沿って収容され遠心力を受けてメインジャーナル部軸心から遠ざかる方向に移動可能な筒状弁体を有し、
    該筒状弁体が、小径部のメインジャーナル部軸心から遠ざかる外端側にフランジ状の大径部を有して、
    上記小径部のメインジャーナル部軸心に近づく方向の端部と上記大径部の外端側との受圧面に差をもたせて設け、
    上記大径部の外端側に筒状弁体の中央連通路とつながる有底油室を設けると共に、
    該筒状弁体をメインジャーナル部軸心から遠ざかる方向に付勢するバネを設け、
    上記ピン部給油路の油圧の上昇に伴う大径部のメインジャーナル部軸心に近づく方向の位置変化によりクランクピン部周面に連通する交差油路の開口面積を増大させるように構成した
    エンジンのクランクピン給油構造。
  2. 上記ピン部内油量制御弁は、上記筒状弁体と、上記バネとを収容して有底油室を区画するケースを備え、
    該ケースが上記ピン部給油路の一部に嵌め込まれ、
    該ケースの周面に、上記交差油路と連通する開口が設けられ、
    上記大径部の油圧による変位で該開口の面積が調整されるように構成した
    請求項1記載のエンジンのクランクピン給油構造。
  3. 一端がクランク軸の複数のメインジャーナル部のうちの特定のメインジャーナル部に連通すると共に、他端がそれぞれのクランクピン部に連通するピン部給油路を設け、
    各ピン部給油路に上記請求項1または2に記載のピン部内油量制御弁を設け、
    上記特定のメインジャーナル部を支持する特定軸受部以外の複数の軸受部に連通し、軸受部用流量制御弁を介した主油路を設け、
    上記特定軸受部には、該主油路の上記軸受部用流量制御弁より上流側で分岐し、途中にクランクピン部用流量制御弁を介在させたピン部用サブ油路が連通されてなる
    エンジンの給油装置。
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