JP5900215B2 - 連続鋳造鋳片の凝固完了位置検出方法及び装置、連続鋳造方法及び装置 - Google Patents
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Description
また、熱エネルギー削減を目的として鋳造直後の連続鋳造鋳片を圧延工程に搬送して高温の状態で圧延するため、鋳片温度を可能な限り高くするには、鋳片の凝固完了位置を連続鋳造機出側の最下流の鋳片支持ロールの位置とすることが好ましい。
そのため、凝固完了位置を連続鋳造機の最下流側になるように操業したとしても、上記の種々の要因により凝固完了位置が変動し、凝固完了位置が鋳片支持ロールの範囲を超える場合が発生する。この場合には、鋳片が溶鋼静圧によりバルジングして鋳片品質が劣化するばかりか、鋳片切断時に内部の未凝固層が流出するという設備トラブルの危険性さえある。この危険を回避するため、実際には、凝固完了位置を連続鋳造機出側の最下流の鋳片支持ロールの位置とした条件で鋳造することが一般的である。
このため、連続鋳造の最大鋳造能力が発揮されず、また熱エネルギー削減が十分になされないという問題がある。
例えば、特許文献1には、鋳片支持ロールの軸受部基端に歪ゲージを貼り付けてロール負荷を検出し、凝固完了前と凝固完了後との溶鋼静圧の有無に起因するロール負荷を検出して凝固完了位置を判定する方法が開示されている。
また、特許文献2には、鋳造中の鋳片に送信子から横波超音波を透過させ、透過した横波超音波を受信子にて受信し、横波超音波の透過強度から鋳片の凝固状態を検出する方法が開示されている。
また、特許文献3には、圧下ゾーンの全てのロールに圧力検出装置を取り付けてシリンダに作用する圧力を検出することにより凝固位置を判定する方法が開示されている。
即ち、特許文献1では、軸受部機端に貼り付けした歪ゲージを用いてロールの負荷を検出するようにしているが、連続鋳造設備は本来堅固で丈夫な設備であり、溶鋼静圧の有無に起因して起こる軸受部基端の歪は極めて少なく、また、歪ゲージが貼り付けされる位置は高温雰囲気であり、温度によるロールの歪も発生するので、歪ゲージではロール負荷の変化を正確には測定できない。
また、全てのロールにシリンダと取り付け、かつ圧力検出を行うのでは、膨大な設備費用が発生するという問題もある。
従って、内部に未凝固層が残留している状態の鋳片を圧下した場合には、圧下抵抗となる部分は鋳片の短辺面側から凝固が進行した部分のみであり、圧下抵抗となる範囲は鋳片長辺面全幅よりも小さい。
そのため、鋳片厚み方向の中心部に未凝固層が残留している場合、鋳片におけるその部分は圧下抵抗が低減する。
なお、鋳片長辺面全幅に対して圧下抵抗となる範囲の比率は、鋳片短辺長さ(「鋳片厚み」ともいう)に対する鋳片長辺長さ(「鋳片幅」ともいう)の比率が大きな鋳片ほど小さくなる。
一方、凝固が完了した鋳片を圧下した場合には、鋳片長辺面全幅が圧下抵抗となる。
すなわち、未凝固層が残留する場合には、昇降用ロールのリリーフ圧力は小さくなり、それに伴い昇降用ロールのシリンダの変位量は大きくなる。一方、完全凝固後には、昇降用ロールのリリーフ圧力は大きくなり、それに伴い昇降用ロールのシリンダ変位量は小さくなる。
しかも、セグメントに設置されているピンチロールの昇降用シリンダは圧下ロールとは独立して押し圧力の設定ができ、それ故に特許文献3のようにリリーフ圧力の設定によって圧下に影響を及ぼすこともない。
本発明は以上の知見に基づくものであり、具体的には以下の構成を備えてなるものである。
前記ピンチロールの昇降用シリンダにおけるリリーフ圧力、又はその変動幅、又は前記昇降用シリンダのストロークの変位量、又はその変位幅の少なくとも一つを検出することにより鋳片の凝固完了位置を検出することを特徴とするものである。
リリーフ圧力又はその変動幅と、昇降用シリンダのストロークの変位量又はその変位幅という鋳片凝固判定の指標となる異なる複数の指標を検知することで、より正確な鋳片行判定が可能となる。
前記ピンチロールに押し圧力を付与する昇降用シリンダにおけるリリーフ圧力、又はその変動幅、又は前記昇降用シリンダのストロークの変位量、又はその変位幅の少なくとも一つを検出する検出手段と、
該検出手段の検出値を入力し、該入力値による前記リリーフ圧力、又はその変動幅が予め設定した閾値を超えているとき、または前記昇降用シリンダのストロークの変位量、又はその変位幅が予め設定した閾値を超えていないときに当該ピンチロールが設置されている位置では凝固が完了していると判定する凝固完了位置判定手段とを備えたことを特徴とするものである。
前記凝固完了位置判定手段は、下流側のピンチロールの位置では凝固完了していると判定し、かつ上流側のピンチロールの位置では未凝固層があると判定したときに、前記下流側のピンチロールと前記上流側のピンチロールの間の位置に凝固完了位置があると判定することを特徴とするものである。
前記凝固完了位置判定手段の判定結果に基づいて鋳造速度を変更する鋳造速度制御手段及び/又は2次冷却水量を変更する2次冷却水量制御手段を備えたことを特徴とするものである。
また、ピンチロールの昇降用シリンダの圧下圧力は軽圧下の圧下圧力とは独立して設定することができるので、軽圧下への直接の影響を考慮する必要がなく、軽圧下との両立が可能である。
さらに、この方法を用いて凝固が完了する位置を制御しつつ連続鋳造することにより、連続鋳造機の鋳造能力を最大まで増加させることが実現される。
連続鋳造装置1は、溶鋼を注入して凝固させ、鋳片2の外殻形状を形成するための鋳型3と、この鋳型3の上方に設置されて取鍋から供給される溶鋼を鋳型3に中継供給するためのタンディッシュ5を備えている。
タンディッシュ5の底部には、溶鋼の流量を調整するためのスライディングノズル7が設置され、このスライディングノズル7の下面には、浸漬ノズル9が設置されている。
また、鋳型3の下方には、複数対の鋳片支持ロール11が配置されている。鋳造方向に隣り合う鋳片支持ロール11の間には、水スプレーノズル、或いはエアーミストノズルなどのスプレーノズルが配置された2次冷却帯13が構成され、2次冷却帯13のスプレーノズルから噴霧される冷却水(『2次冷却水』ともいう)によって冷却されながら、鋳片2は引き抜かれるようになっている。
軽圧下帯15は、上フレーム16aと下フレーム16bの間に複数対のロールが組み込まれたロールセグメント17(単に「セグメント」という場合あり)を鋳造方向に複数直列に配置することで構成されている。
軽圧下ロール21は、軸受部を介して上フレーム16a、下フレーム16bに固定して配置されている。一方、ピンチロール19は、下フレーム16b側のピンチロール19は軸受部27を介して下フレーム16bに固定されているが、上フレーム16a側のピンチロール19は、上フレーム16aに設置された昇降用シリンダ23のシリンダロッド25に連結された軸受部27を介して保持されている。
したがって、上フレーム16a側のピンチロール19は、圧下勾配とは関係なく、昇降用シリンダ23によって、押し付け力及び圧下量で鋳片2を圧下できるように構成されている。そして、ピンチロール19は、上面側及び下面側のピンチロール19ともに、電動機(図示せず)によって駆動され、鋳片2を引き抜くように構成されている。
また、昇降用シリンダ23には、ピンチロール19の鋳片2に対する圧下力を所定の圧力に保持するためにリリーフ弁が設置され、このリリーフ弁に作用する油圧(リリーフ圧力)を検知するリリーフ圧力センサ31が設置されている。
リリーフ圧力は、鋳片2の未凝固層2aがある場合、それが無い場合(完全凝固の場合)に比べて、小さく、未凝固層2aが大きくなるにしたがってより小さくなる。これは、未凝固層2aがある場合には、圧下抵抗が小さくピンチロール19に作用する反力が小さいためである。また、リリーフ圧力の変動幅についても同様に、鋳片2の未凝固層2aがある場合の方が完全凝固の場合よりも小さい。
また、凝固完了位置判定手段33は、位置検出センサ29の測定値を入力して、シリンダロッド25のストローク及び/又はストロークの変動幅が予め設定した閾値を超えていない場合、当該ピンチロール19の位置で鋳片2の凝固が完了していると判定する。
なお、リリーフ圧力及びその変動幅、シリンダーストローク及びその変動幅の閾値は連続鋳造される鋳片2の巾や厚みによって変わるので、予め実験等によって適切な値を求めておくようにすればよい。
鋳造速度制御手段35は、凝固完了位置判定手段33の判定結果に基づいてピンチロール19を駆動するピンチロール駆動装置39を制御することで鋳造速度を制御する。
また、2次冷却水量調整手段27は、凝固完了位置判定手段33の判定結果に基づいて例えば水量を調整する調整弁の開度を調整する2次冷却水量調整装置41を制御することで2次冷却水量を調整する。
ピンチロール19における圧下圧力を設定する。具体的には、ピンチロール19に作用する溶鋼静圧を考慮しつつ、内部に未凝固層2aを有する鋳片2の短辺面側の凝固殻を一定量だけ圧下するために必要な力が鋳片2に作用するように、圧下圧力を設定すればよい。
なお、各ピンチロール19の圧下圧力を高くすれば反力やストロークが大きくなり、凝固完了位置の判定は容易になるが、鋳片圧下量を大きくし過ぎると鋳片2に内部割れが発生して好ましくない。そのため、各ピンチロール19における圧下量が最大1mm程度なるように、ピンチロール19の圧下圧力を調整することが好ましい。
鋳造中、位置検出センサ29及びリリーフ圧力センサ31の測定値は、凝固完了位置判定手段33に入力され、凝固完了位置判定手段33は、前述したように、入力値と予め設定された閾値との関に基づいて当該ピンチロール19の位置において鋳片2の凝固が完了しているか否かを判定する。
例えば、当該ピンチロール19の位置で凝固が完了していると判定された場合において、目標とする凝固完了位置が当該ピンチロール19よりも下流側であった場合、鋳造速度を増加させるように制御する。
また、2次冷却水量調整手段27は、凝固完了位置判定手段33の判定結果に基づいて2次冷却水量調整装置41を制御することで2次冷却水量を調整する。
例えば、当該ピンチロール19の位置で凝固が完了していると判定された場合において、目標とする凝固完了位置が当該ピンチロール19よりも下流側であった場合、冷却水量を低減させるように制御する。
このように、凝固完了位置の判定と鋳造速度制御及び/又は2次冷却水量の調整を繰り返すフィードバック制御を行うことで、凝固完了位置を所定範囲内に制御することができる。
また、ピンチロール19の昇降用シリンダ23の圧下圧力は軽圧下の圧下圧力とは独立して設定することができるので、軽圧下への直接の影響を考慮する必要がなく、軽圧下との両立が可能である。
さらに、この方法を用いて凝固が完了する位置を制御しつつ連続鋳造することにより、連続鋳造機の鋳造能力を最大まで増加させることが実現される。
また、上記の実施の形態では、鋳片2の上面側のピンチロール19に昇降用シリンダ23を設置した例を示したが、鋳片2の下面側のピンチロール19に昇降用シリンダ23を設置してもよく、また両方に設置してもよく、設置した昇降用シリンダ23のストロークとリリーフ圧力を検知するようすればよい。
また、上記の実施の形態では、一つのピンチロール19の昇降用シリンダ23におけるストロークとリリーフ圧力の検知について説明したが、鋳造方向に沿って複数設けられている複数のピンチロール19の昇降用シリンダ23におけるストロークとリリーフ圧力を検知するようにしてもよい。このようにすれば、下流側のピンチロール19の位置では凝固が完了しており、その上流側のピンチロール19の位置では未凝固層2aがあると判定されれば、前記下流側のピンチロール19と上流側のピンチロール19の間に凝固完了位置(クレータエンド)があると判定することができ、凝固完了位置判定手段33にこのような機能を付加することができる。
各試験の2次冷却水の比水量は1.20リットル/kg.steelの一定値とし、鋳片2引き抜き速度を1.0〜1.6m/minの5水準とした。圧下ロールの外形は275mmで、圧下80kg/cm2とした。
また、図5には、昇降用シリンダ23のリリーフ圧力の変動幅及びストロークの変位幅と鋳造速度との関係を示す。図5の右縦軸は、リリーフ圧力の変動幅(kgf/cm2)示し、左縦軸は昇降用シリンダ23の変位幅(mm)を示し、横軸は鋳造速度(m/min)ている。
しかし、鋳造速度が1.3m/minを超えると、鋳造速度の増加と共にシリンダの変位量及び変位幅は増加し、リリーフ圧力及びリリーフ圧力の変動幅ともに徐々に低下する。そして、鋳造速度が1.6m/minのときには、シリンダ変位は約0.5mm、変位幅も0.10mmになり、リリーフ圧力はほぼ0kg/cm2、圧力変動幅も0.01kg/cm2となった。
このように、凝固完了位置と、昇降用シリンダ23のリリーフ圧力及び圧力変動幅、ストロークの変位及び変位幅とが相関関係にあり、これらの値を検出することで凝固完了位置の特定ができることが実証された。
なお、上記の例では、鋳造速度が1.3m/minのときに凝固完了位置がメニスカスから25mの位置のピンチロール19の設置位置になることが分かる。
2 鋳片
2a 未凝固層
3 鋳型
5 タンディッシュ
7 スライディングノズル
9 浸漬ノズル
11 鋳片支持ロール
13 2次冷却帯
15 軽圧下帯
16a 上フレーム
16b 下フレーム
17 ロールセグメント
19 ピンチロール
21 軽圧下ロール
23 昇降用シリンダ
25 シリンダロッド
27 軸受部
29 位置検出センサ
31 リリーフ圧力センサ
33 凝固完了位置判定手段
35 鋳造速度制御手段
37 2次冷却水量調整手段
39 ピンチロール駆動装置
41 2次冷却水量調整装置
Claims (6)
- 上フレームと下フレームの間に複数対の軽圧下ロールが組み込まれたロールセグメントと、該ロールセグメントに少なくとも1対設けられて鋳片に一定の押し圧力を付与しながら鋳片の引抜きを行う昇降機能を有するピンチロールとを備え、該ピンチロールで鋳片を支持しながら該鋳片を連続的に引き抜く連続鋳造方法における連続鋳造鋳片の凝固完了位置検出方法であって、
前記ピンチロールの昇降用シリンダにおけるリリーフ弁に作用する油圧であるリリーフ圧力又はその変動幅、及び前記昇降用シリンダのストロークの変位量又はその変位幅を検出し、
前記リリーフ圧力、又はその変動幅が予め設定した閾値を超えており、かつ前記昇降用シリンダのストロークの変位量、又はその変位幅が予め設定した閾値を超えていないときに当該ピンチロールが設置されている位置では凝固が完了していると判定することを特徴とする連続鋳造鋳片の凝固完了位置検出方法。 - 鋳造方向に複数配置されたピンチロールにそれぞれ設けられた昇降用シリンダにおけるリリーフ弁に作用する油圧であるリリーフ圧力又はその変動幅、及び前記昇降用シリンダのストロークの変位量又はその変位幅を検出することにより鋳片の凝固完了位置を検出し、下流側のピンチロールの位置で凝固が完了しており、上流側のピンチロールの位置で未凝固層が有ると判定されたときに、前記下流側のピンチロールと前記上流側のピンチロールの間の位置に凝固完了位置があると判定することを特徴とする請求項1記載の連続鋳造鋳片の凝固完了位置検出方法。
- 請求項1又は2に記載の凝固完了位置検出方法によって鋳片の凝固完了位置を検出し、この検出結果に基づいて鋳片引き抜き速度又は2次冷却用冷却水量を変更して、凝固完了位置を所定範囲内制御することを特徴とする連続鋳造鋳片の鋳造方法。
- 上フレームと下フレームの間に複数対の軽圧下ロールが組み込まれたロールセグメントと、該ロールセグメントに少なくとも1対設けられて鋳片に一定の押し圧力を付与しながら鋳片の引抜きを行う昇降機能を有するピンチロールとを備え、該ピンチロールで鋳片を支持しながら該鋳片を連続的に引き抜く連続鋳造装置における連続鋳造鋳片の凝固完了位置検出装置であって、
前記ピンチロールに押し圧力を付与する昇降用シリンダにおけるリリーフ弁に作用する油圧であるリリーフ圧力又はその変動幅、及び前記昇降用シリンダのストロークの変位量又はその変位幅を検出する検出手段と、
該検出手段の検出値を入力し、該入力値による前記リリーフ圧力、又はその変動幅が予め設定した閾値を超えており、かつ前記昇降用シリンダのストロークの変位量、又はその変位幅が予め設定した閾値を超えていないときに当該ピンチロールが設置されている位置では凝固が完了していると判定する凝固完了位置判定手段とを備えたことを特徴とする連続鋳造鋳片の凝固完了位置検出装置。 - 前記検出手段は、鋳造方向に複数配置されたピンチロールの昇降用シリンダにおけるリリーフ弁に作用する油圧であるリリーフ圧力又はその変動幅、及び前記昇降用シリンダのストロークの変位量又はその変位幅を検出し、
前記凝固完了位置判定手段は、下流側のピンチロールの位置では凝固完了していると判定し、かつ上流側のピンチロールの位置では未凝固層があると判定したときに、前記下流側のピンチロールと前記上流側のピンチロールの間の位置に凝固完了位置があると判定することを特徴とする請求項4記載の連続鋳造鋳片の凝固完了位置検出装置。 - 請求項4又は5に記載の連続鋳造鋳片の凝固完了位置検出装置を備えた連続鋳造装置であって、
前記凝固完了位置判定手段の判定結果に基づいて鋳造速度を変更する鋳造速度制御手段及び/又は2次冷却水量を変更する2次冷却水量制御手段を備えたことを特徴とする連続鋳造装置。
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