JP5779978B2 - 連続鋳造における鋳片の軽圧下方法 - Google Patents

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本発明は、連続鋳造鋳片の厚み中心部に生成される中心偏析の低減を目的として、凝固末期の鋳片を凝固収縮量相当の圧下量で圧下する、連続鋳造における鋳片の軽圧下方法に関する。
鋼の凝固過程では、炭素、燐、硫黄などの溶質元素は、凝固時の再分配によって未凝固の液相側に濃化される。これがデンドライト樹間に形成されるミクロ偏析である。連続鋳造機により鋳造されつつある鋳片の凝固収縮や、連続鋳造機のロール間で発生する凝固シェルのバルジングなどによって、鋳片の厚み中心部に空隙が形成されたり負圧が生じたりすると、この部分に溶鋼が吸引されるが、凝固末期の未凝固相には十分な量の溶鋼が存在しないので、上記のミクロ偏析によって濃縮された溶鋼が流動し、鋳片中心部に集積して凝固する。このようにして形成された偏析スポットは、溶質元素の濃度が溶鋼の初期濃度に比べて格段に高濃度となっている。これを一般にマクロ偏析と呼び、その存在部位から中心偏析と呼んでいる。
この中心偏析は、鋼製品の品質を不均一化するのみならず劣化させるので、中心偏析を改善する技術として、鋼を連続鋳造する際に、鋳片を支持・案内するための鋳片支持ロールのロール間隔を制御して凝固末期の鋳片に凝固収縮量相当の圧下量を付与し、凝固収縮によって起こる中心偏析を改善する、所謂「軽圧下方法」が行われている。
例えば、特許文献1には、鋳片の中心部が固相率0.1ないし0.3に相当する温度となる時点から流動限界固相率に相当する温度となる時点までの領域を単位時間あたり0.5mm/分以上2.5mm/分未満の割合で連続的に圧下し、鋳片中心部が流動限界固相率に相当する温度となる時点から固相線温度となるまでの領域は実質的な圧下を加えない連続鋳造方法が開示されている。尚、特許文献1では、流動限界固相率は鋳片中心部の固相率が0.6ないし0.9の時点としている。
特許文献2には、クレーターエンド近傍のロール軸受毎に位置制御用シリンダーを配設し、ロールを位置制御するための圧下量演算器を設け、前記シリンダーのロッド移動量を各ロール毎に、少なくとも鋳片実圧下量とフレーム変形量とロール変形量の合計にて設定する軽圧下制御方法が開示されている。
特許文献3には、上部セグメントの各ロール軸受部にロードセルを設置し、オフラインで上部セグメントに所定の負荷を作用させ、負荷に対する各ロールの歪みを測定して負荷−歪み量曲線を作成した後、オンラインにて前記ロードセルにより、ロール反力を測定し、この測定したロール反力と前記負荷−歪み量曲線とから歪み量を求め、この歪み量だけ当該ロールを移動させてロール間距離を一定に保持する連続鋳造方法が開示されている。
また、特許文献4には、鋳片に圧下力を付与する技術ではないが、セグメントの負荷荷重から鋳片の凝固完了位置を検出する技術として、連続鋳造機のロールセグメントにおいて、上下フレームを結ぶ支柱のうち少なくとも鋳造上流側と下流側の各1箇所の支柱にかかる荷重を、セグメント上部に設けた荷重測定器によって測定し、上流側と下流側の各支柱にかかる荷重を合計してセグメント荷重とし、連続鋳造中におけるセグメント荷重の値に基づいて鋳片の凝固完了位置を検出する凝固完了位置検出方法が開示されている。
特開昭62−275556号公報 特開平5−8004号公報 特開平5−131253号公報 特開2006−289378号公報
近年、連続鋳造機は、複数本の鋳片支持ロールが配置されたフレームを相対させて構成するロールセグメント方式の連続鋳造機が主流であり、鋳片に圧下力を付与するための軽圧下ロールもロールセグメント方式が主流となっている。尚、複数の軽圧下ロールが鋳造方向に連続して設置された範囲を「軽圧下帯」と呼び、また、軽圧下帯において、鋳造方向下流に向かって順次狭くなるように設定されたロール間隔の状態を「圧下勾配」と称している。
鋳片に作用する圧下力は軽圧下帯での圧下勾配によって決まることから、軽圧下帯がロールセグメント方式の場合には、セグメント単位で軽圧下が行われることになる。つまり、セグメントの最上流のロール間隔値と最下流のロール間隔値との差によって軽圧下量が決まることになる。
中心偏析改善のための軽圧下ロールは、内部に未凝固相を有する鋳片を圧下することを前提としており、この場合の軽圧下ロールへの圧下抵抗は厚み方向の凝固が完了した鋳片短辺部のみであり、軽圧下ロールへの荷重は少なく、軽圧下帯がセグメント構造であっても凝固収縮量に相当する圧下量をそれぞれの軽圧下ロールで鋳片に付加することができる。一方、凝固完了後の鋳片を圧下する場合には、鋳片の幅全体が圧下抵抗となり、セグメント構造の軽圧下ロールでは圧下力が不足して圧下できず、この場合にはセグメントの損傷を防止するために、油圧や皿バネによってフレームが開放するように構成されている。
即ち、軽圧下ロール群つまり軽圧下帯を構成するロールセグメントの範囲内で凝固が完了すると、当該セグメントの下流側ではロール間隔が広くなって、鋳片に所定量の圧下量を付与できなくなり、中心偏析を軽減できなくなる恐れがある。また、この場合には、セグメントへの負荷が高くなり、ロールベアリングの損傷やロールの摩耗などが起こりやすく、軽圧下帯を構成するロールセグメントの寿命が低下するという問題も起こる。
この問題点を解消するという観点から上記従来技術を検証すれば、特許文献1は、軽圧下の時期及び圧下速度を開示するだけで、上記問題点は解決できない。また、流動限界固相率を0.6ないし0.9としており、本発明者らの経験では、鋳片中心部の固相率が0.6の時点で軽圧下を中止すると、中心偏析の改善効果が少なく、逆に、鋳片中心部の固相率が0.9となるまで軽圧下を継続すると、セグメントの寿命が低下することを確認している。即ち、特許文献1は、流動限界固相率の範囲が適切ではない。
特許文献2は、軽圧下帯がロールセグメント方式ではなく、各軽圧下ロールをロール毎に制御する方式の軽圧下帯を用いた軽圧下技術である。この方式の軽圧下帯では上記問題点は発生しないが、軽圧下帯がロールセグメント方式とは異なることから、軽圧下帯がロールセグメント方式の連続鋳造機には特許文献2の技術は適用できず、上記問題点は解決されない。
特許文献3は、鋳片のバルジングに起因して拡大する軽圧下ロールのロール間隔を目標値に修正する技術であり、凝固の完了した鋳片をどのように処置(圧下するのか、しないのか)するのか、或いは、軽圧下帯において凝固完了位置をどの位置に制御するのかは、全く記載しておらず、上記の問題点は解消されない。
特許文献4は、ロールセグメントに作用する未凝固鋳片のバルジング力を測定し、バルジング力の変化から凝固完了位置を検出する技術であり、特許文献4では軽圧下を実施する場合も記載しているが、鋳片の凝固完了位置と鋳片の軽圧下とを関連して説明しておらず、上記の問題点は解消されない。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、連続鋳造鋳片の厚み中心部に生成される中心偏析の低減を目的として、凝固末期の鋳片を凝固収縮量相当の圧下量で圧下する軽圧下方法において、軽圧下帯を構成するセグメントの寿命を低下することなく、確実に凝固末期の鋳片を凝固収縮量相当の圧下量で圧下することのできる、連続鋳造における鋳片の軽圧下方法を提供することである。
上記課題を解決するための本発明の要旨は以下のとおりである。
(1) 複数本の圧下ロールが組み込まれた、少なくとも1基以上のロールセグメントから構成される軽圧下帯を用いて、凝固末期の鋳片を凝固収縮量相当の圧下量で圧下するにあたり、前記ロールセグメントの上流側部位と下流側部位との二箇所の部位で当該ロールセグメントの圧下方向の変位を測定し、測定される変位が予め設定した所定の値の範囲内に制御されるように、鋳造速度または二次冷却水量を調整することを特徴とする、連続鋳造における鋳片の軽圧下方法。
(2) 前記ロールセグメントの圧下方向の変位を、前記軽圧下帯の鋳造方向最下流の軽圧下ロール位置での鋳片中心部固相率が0.7以上0.8以下のときに測定される変位と同等になるように制御することを特徴とする、上記(1)に記載の連続鋳造における鋳片の軽圧下方法。
(3) 基準の鋳造条件下で伝熱凝固計算を行って鋳片中心部固相率が1.0の位置までの鋳型内溶鋼湯面からの距離を求めるとともに、二次冷却帯の或る任意の冷却ゾーンの二次冷却水量を単位%変更したときの鋳片中心部固相率が1.0となる位置までの鋳型内溶鋼湯面からの距離の変化を伝熱凝固計算により求め、これらの結果に基づいて、前記ロールセグメントの上流側部位と下流側部位との二箇所の部位で測定される圧下方向の変位が予め設定した所定の値の範囲内に制御されるように、前記の任意の冷却ゾーンの二次冷却水量を調整することを特徴とする、上記(1)または上記(2)に記載の連続鋳造における鋳片の軽圧下方法。
(4) 基準の鋳造条件下で伝熱凝固計算を行って鋳片中心部固相率が1.0の位置までの鋳型内溶鋼湯面からの距離を求めるとともに、鋳造速度を単位%変更したときの鋳片中心部固相率が1.0となる位置までの鋳型内溶鋼湯面からの距離の変化を伝熱凝固計算により求め、これらの結果に基づいて、前記ロールセグメントの上流側部位と下流側部位との二箇所の部位で測定される圧下方向の変位が予め設定した所定の値の範囲内に制御されるように、鋳造速度を調整することを特徴とする、上記(1)ないし上記(3)の何れか1項に記載の連続鋳造における鋳片の軽圧下方法。
本発明によれば、ロールセグメント方式の軽圧下帯を用いて鋳片を軽圧下する場合に、軽圧下帯を構成するロールセグメントの圧下方向の変位を測定し、測定される変位が予め設定した所定の値の範囲内に制御されるように、鋳造速度または二次冷却水量を調整するので、軽圧下ロールへの負荷は過大にならず、ロールセグメント方式の軽圧下帯であっても、セグメントの寿命を低下させることなく、鋳片に所定量の圧下量を付与することができ、鋳片の中心偏析が軽減される。
軽圧下帯を構成するロールセグメントの例を示す概略断面図である。 軽圧下帯を構成するセグメントの軽圧下時の変位を、鋳片の厚み中心部の固相率の変化とともに模式的に示す図である。 軽圧下帯を構成するセグメントの軽圧下時の変位を、鋳片の厚み中心部の固相率の変化とともに模式的に示す図である。 本発明を実施する際に用いたスラブ連続鋳造機の側面概略図である。 軽圧下に要する荷重と鋳片中心部固相率との関係を模式的に示す図である。 上フレームの上流側の変位と下流側の変位との差(Δd)と凝固完了位置の変更量との関係を模式的に示す図である。
以下、本発明を具体的に説明する。先ず、本発明に至った経緯を説明する。
本発明者らは、ロールセグメント方式の軽圧下帯を用いて凝固末期の鋳片を凝固収縮量相当の圧下量で軽圧下する場合に、凝固末期の鋳片を目標とする圧下量で確実に軽圧下することを目的として、ロールセグメント方式の軽圧下帯における鋳片の軽圧下挙動を調査した。図1は、軽圧下帯を構成するロールセグメントの例を示す概略断面図である。尚、図1は、軽圧下ロールとして5対の鋳片支持ロール6が1つのロールセグメント16に配置された例を示す図である。
図1に示すように、ロールセグメント16は、ロールチョック21を介して5対の鋳片支持ロール6を保持した1対のフレーム17及びフレーム17′からなり、このロールセグメント16においては、フレーム17及びフレーム17′を貫通させて合計4本(上流側の両サイド及び下流側の両サイド)のタイロッド18が配置され、このタイロッド18に設置されているウオームジャッキ19をモーター20にて遠隔駆動させることにより、フレーム17とフレーム17′との間隔の調整、つまり、ロールセグメント16における圧下勾配(鋳造方向下流に向かって順次狭くなるように設定されたロール間隔の状態)の調整が行われるようになっている。鋳造中は、ウオームジャッキ19はセルフロックされ、未凝固相を有する鋳片10のバルジング力に対抗しており、鋳片10が存在しない条件下で、即ち鋳片支持ロール6に鋳片10からの負荷が作用しない条件下で、圧下勾配の調整が行われるように構成されている。図1は、鋳片支持ロール6の設置数が5対の例であるが、ロールセグメント方式の軽圧下帯では、鋳片支持ロール6の設置数に関係することなく、このようにして圧下勾配の調整が行われる。
この構成のロールセグメント16を鋳造方向に複数基並べて軽圧下帯とし、鋳造速度及び二次冷却水量を変更することにより鋳片10の凝固完了位置を変化させて鋳片10を軽圧下し、そのときのフレーム17′の鋳造方向上流側端部及び鋳造方向下流側端部での圧下方向の変位(設定位置からの変化量)を測定した。尚、フレーム17は連続鋳造機の基礎に固定されていて、鋳造中には動かないように構成された連続鋳造機である。
その結果、フレーム17′の圧下方向の変位は、鋳造方向上流側よりも鋳造方向下流側の方が大きくなる傾向があること、特に、凝固完了位置が存在するセグメントでは下流側の変位が大きくなることが分かった。また、鋳片の中心偏析を調査した結果、下流側の変位が大きい条件で鋳造した鋳片では、中心偏析の水準が目標を満たさない場合が多く、これに対して、上流側の変位と下流側の変位とが同等の場合には、中心偏析が軽微であることが分かった。
鋳片の伝熱凝固計算などを用いて更に検討した結果、軽圧下帯の鋳造方向最下流の軽圧下ロール位置での鋳片の厚み中心部の固相率が0.8以下の場合に、フレーム17′の上流側の変位と下流側の変位とが同等になり、且つ、鋳片の中心偏析が軽微になるとの知見を得た。つまり、鋳造中にフレーム17′の上流側の変位と下流側の変位とを測定し、この変位が、軽圧下帯の鋳造方向最下流の軽圧下ロール位置での鋳片の厚み中心部の固相率が0.8以下のときの測定される、予め測定した所定の変位と同等になるように制御することで、鋳片に目標とする軽圧下が付与されて鋳片の中心偏析が軽微になるとの知見を得た。
この理由を模式図を用いて説明する。図2及び図3は、軽圧下帯を構成するセグメントの軽圧下時の変位を、鋳片の厚み中心部の固相率の変化(分布)とともに模式的に示す図である。図2は、セグメントの鋳造方向最下流の軽圧下ロール位置での鋳片の厚み中心部の固相率が0.8となる場合であり、この場合には、鋳造方向上流側の変位と鋳造方向下流側の変位とはほぼ等しくなる。一方、図3は、セグメントの鋳造方向最下流の軽圧下ロール位置での鋳片の厚み中心部の固相率がすでに1.0になっている場合であり、この場合には、鋳造方向上流側の変位に比較して鋳造方向下流側の変位が大きくなる。これらセグメントにおける鋳片の圧下量は、図2では[D1−D2]、図3では[D3−D4]であり、[D1−D2]の方が[D3−D4]よりも大きくなる。
即ち、図3に示すような状態の場合には、軽圧下帯を構成するセグメント内で鋳片10の凝固が完了しており、軽圧下に要する荷重がセグメントの下流側で増大し、セグメントの下流側の変位が上流側の変位に比較して大きくなる。換言すれば、鋳造中に鋳片10の反力を受けてフレーム17′の下流側が設定位置よりも上方側に浮かび上がった状態となる。このために、本来、軽圧下が必要な鋳片の厚み中心部の固相率が0.8以下の領域においても、必要とする圧下勾配を保つことができなくなる。その結果、図3に示すような場合には、所定の軽圧下が行えず、鋳片10の中心偏析が悪化する。
一方、図2ではセグメントの鋳造方向最下流の軽圧下ロール位置での鋳片の厚み中心部の固相率が0.8となっており、セグメントの下流側でも軽圧下に要する荷重は増大せず、所定の軽圧下が可能であり、鋳片10の中心偏析を軽減することができる。
本発明は、この知見に基づくもので、複数本の圧下ロールが組み込まれた、少なくとも1基以上のロールセグメントから構成される軽圧下帯を用いて、凝固末期の鋳片を凝固収縮量相当の圧下量で圧下するにあたり、前記ロールセグメントの上流側部位と下流側部位との二箇所の部位で当該ロールセグメントの圧下方向の変位を測定し、測定される変位が予め設定した所定の値の範囲内に制御されるように、鋳造速度または二次冷却水量を調整することを特徴とする。
以下、本発明の具体的な実施方法を図面を参照して説明する。図4は、本発明を実施する際に用いたスラブ連続鋳造機の側面概略図である。
図4に示すように、スラブ連続鋳造機1には、溶鋼9を注入して凝固させ、鋳片10の外殻形状を形成するための鋳型5が設置され、この鋳型5の上方所定位置には、取鍋(図示せず)から供給される溶鋼9を鋳型5に中継供給するためのタンディッシュ2が設置されている。タンディッシュ2の底部には、溶鋼9の流量を調整するためのスライディングノズル3が設置され、このスライディングノズル3の下面には、浸漬ノズル4が設置されている。一方、鋳型5の下方には、サポートロール、ガイドロール及びピンチロールからなる複数対の鋳片支持ロール6が配置されている。鋳造方向に隣り合う鋳片支持ロール6の間隙には、水スプレーノズル或いはエアーミストスプレーノズルなどのスプレーノズル(図示せず)が配置された二次冷却帯が構成され、二次冷却帯のスプレーノズルから噴霧される冷却水(「二次冷却水」ともいう)によって鋳片10は引抜かれながら冷却されるようになっている。また、鋳造方向最終の鋳片支持ロール6の下流側には、鋳造された鋳片10を搬送するための複数の搬送ロール7が設置されており、この搬送ロール7の上方には、鋳造される鋳片10から所定の長さの鋳片10aを切断するための鋳片切断機8が配置されている。
鋳片10の凝固完了位置13よりも上流側には、鋳片10を挟んで対向する鋳片支持ロール間の間隔(この間隔を「ロール間隔」と呼ぶ)を鋳造方向下流側に向かって順次狭くなるように設定された、つまり圧下勾配が設定された、複数対の鋳片支持ロール群から構成される軽圧下帯14が設置されている。軽圧下帯14では、その全域または一部選択した領域で、鋳片10に軽圧下を行うことが可能である。軽圧下帯14の各鋳片支持ロール間にも鋳片10を冷却するためのスプレーノズルが配置されている。
尚、通常、圧下勾配は、鋳造方向1mあたりのロール間隔絞り込み量、つまり「mm/m」で表示されており、従って、軽圧下帯14における、鋳片10の圧下速度(mm/分)は、この圧下勾配(mm/m)に鋳造速度(m/分)を乗算することで得られる。また、軽圧下帯14の鋳片支持ロール6を、軽圧下を施すためのロールであることから「軽圧下ロール」或いは「圧下ロール」とも称している。
このスラブ連続鋳造機1においては、軽圧下帯14は、3対の軽圧下ロールを1組とするロールセグメントが鋳造方向に2基つながって構成されている。ここで、ロールセグメントの構造は、鋳片支持ロール6が3対であること以外は、図1に示すロールセグメント16と同一構造である。つまり、下フレーム(フレーム17に相当)及び上フレーム(フレーム17′に相当)を貫通するタイロッドに設置されたウオームジャッキによって遠隔でロールセグメントの圧下勾配が調整できるようになっている。また、図示はしないが、軽圧下帯以外の鋳片支持ロール6もロールセグメント構造となっている。
軽圧下帯14は、このようなロールセグメント方式であるので、3対の軽圧下ロールのロール間隔が一括して調整される。この場合、遠隔操作による上フレーム(フレーム17′に相当)の移動量は、ウオームジャッキの回転数により測定・制御されており、それぞれのロールセグメントの圧下勾配が分かるようになっている。尚、図4では、軽圧下帯14が2基のロールセグメントで構成されているが、1基であっても構わず、3基以上であっても構わない。また、1基のロールセグメントに配置する鋳片支持ロールは3対であるが3対とする必要はなく、2対以上であれば幾つであっても構わない。
本発明において、軽圧下帯14における、凝固末期の鋳片10に対する圧下速度は、0.6〜1.5mm/分の範囲内とすることが好ましく、従って、予定する鋳造速度に応じて軽圧下帯14の圧下勾配を予め設定する。圧下速度が0.6mm/分未満では、中心偏析を軽減する効果が少なく、一方、圧下速度が1.5mm/分を超えると、濃化溶鋼が鋳造方向とは逆方向に絞り出され、鋳片中心部には負偏析が生成される恐れがあるからである。また、総圧下量は2〜6mm程度とすれば十分である。
また、軽圧下帯14を構成するロールセグメントの上フレームの鋳造中における変位を測定するためのレーザー距離計15が上フレームの上方に設置されている。レーザー距離計15は合計8基設置されており、それぞれのロールセグメントの鋳造方向上流側(鋳片入り側)の両サイドの変位と鋳造方向下流側(鋳片出側)の両サイドの変位とを測定している。下フレーム(フレーム17に相当)と上フレームとの間隔、つまり、圧下勾配はウオームジャッキによって設定されるが、鋳造中に鋳片10の反力を受けて上フレームが浮かび上がることがあり、レーザー距離計15は、この変位を測定するためのものである。これは、ロールセグメントの方式の軽圧下装置は、設備スペースや設備コストの制限から、一般的に完全凝固した鋳片10を圧下するほどの耐荷重は有しておらず、鋳片短辺以外の鋳片幅方向の一部が完全凝固して圧下荷重が規定荷重以上になった場合には、設備保護のために、皿バネ或いは油圧設定によって軽圧下ロールを逃がす構造となっているからである。この場合、それぞれのレーザー距離計15による変位を管理してもよく、また、鋳造方向上流側の両サイドの変位の平均値を鋳造方向上流側の変位、鋳造方向下流側の両サイドの変位の平均値を鋳造方向下流側の変位として管理してもよい。
このようにして構成されるスラブ連続鋳造機1を用い、以下のようにして本発明を実施する。
取鍋からタンディッシュ2に溶鋼9を注入してタンディッシュ2に所定量の溶鋼9を滞留させ、次いで、タンディッシュ2に滞留した溶鋼9を、浸漬ノズル4を介して鋳型5に注入する。鋳型5に注入された溶鋼9は、鋳型5で冷却されて凝固シェル11を形成し、外殻を凝固シェル11とし、内部に未凝固相12を有する鋳片10として、鋳片支持ロール6に支持されながらピンチロールによって鋳型5の下方に連続的に引抜かれる。鋳片10は、鋳片支持ロール6を通過する間、二次冷却帯の二次冷却水で冷却され、凝固シェル11の厚みを増大し、軽圧下帯14で軽圧下されながら凝固完了位置13で内部までの凝固を完了する。その後、凝固完了した鋳片10は、鋳片切断機8によって切断されて鋳片10aとなる。
この場合、定常鋳造域においては、凝固完了位置13が、軽圧下帯14よりも鋳造方向下流側に位置し、軽圧下帯14に配置される鋳造方向最下流の軽圧下ロール位置での鋳片中心部固相率が0.7以上0.8以下になるように、鋳造速度及び二次冷却水量を調整する。これは、予め伝熱凝固計算などの手法を用いて上記条件を満足する鋳造速度及び二次冷却水量を求めておくことで、実現することができる。
尚、本発明において、鋳造方向最下流の軽圧下ロール位置での鋳片中心部固相率を0.8以下とする理由は、このようにすることで、上フレームの上流側の変位と下流側の変位とが同等になり、鋳片10に目標とする軽圧下が付与されて鋳片10の中心偏析が軽微になるからであり、また、本発明において、鋳造方向最下流の軽圧下ロール位置での鋳片中心部固相率を0.7以上とする理由は、鋳片中心部固相率を0.7未満とする鋳片10が軽圧下帯14を通り抜けると、鋳片中心部固相率が0.7未満の範囲では未凝固相12は容易に移動し、中心偏析が発生する恐れがあるからである。また、鋳片厚み中心部の固相率は、伝熱凝固計算によって求めることができ、鋳片厚み中心部の固相率が1.0となる位置(鋳片厚み中心部の温度が固相線温度となる位置)が凝固完了位置13である。
また、鋳片10の中心偏析を軽減するには、少なくとも、鋳片中心部固相率が0.4となる時点には鋳片10を軽圧下帯14で圧下する必要があり、従って、これを満足するように、軽圧下帯14の鋳造方向長さを設定する必要がある。これは、鋳片中心部の固相率が0.4未満の範囲は未凝固相12が多く溶鋼流動が発生しても中心偏析には至らないが、0.4以上では溶鋼流動が発生すると中心偏析が悪化するからである。この軽圧下帯14の必要長さも、伝熱凝固計算によって求めることができる。
このようにして鋳造しても、何らかの理由で凝固完了位置13の位置が変化し、軽圧下帯14に配置される鋳造方向最下流の軽圧下ロール位置での鋳片中心部固相率が0.7以上0.8以下の範囲を外れることが起こり得る。具体的には、凝固完了位置13が鋳造方向上流側に移動すれば、軽圧下帯14に配置される鋳造方向最下流の軽圧下ロール位置での鋳片中心部固相率は0.8を超えることが発生し、逆に、凝固完了位置13が鋳造方向下流側に移動すれば、軽圧下帯14に配置される鋳造方向最下流の軽圧下ロール位置での鋳片中心部固相率は0.7未満になることが発生する。
図5は、軽圧下に要する荷重と鋳片中心部の固相率との関係を模式的に示す図である。鋳片中心部の固相率の上昇とともに所定の軽圧下に要する荷重は増大し、特に、鋳片中心部の固相率が0.8以上では、荷重の増加割合が大きくなる。つまり、鋳造中に凝固完了位置13が鋳造方向上流側に移動してくれば、軽圧下帯14を構成するロールセグメントの鋳造方向下流側での反力の増加割合が大きくなり、逆に、鋳造中に凝固完了位置13が鋳造方向下流側に移動すれば、ロールセグメントの全体の反力が低下する。
従って、鋳造中にレーザー距離計15により軽圧下帯14を構成するロールセグメントの鋳造方向上流側(鋳片入り側)の変位と鋳造方向下流側(鋳片出側)の変位とを測定し、両者を比較することにより、鋳造方向下流側の変位が大きくなれば、凝固完了位置13が鋳造方向上流側に移動したことが検知でき、鋳造方向上流側及び下流側の双方の変位が小さくなれば、凝固完了位置13が鋳造方向下流側に移動したことが検知できる。
即ち、鋳造方向最下流の軽圧下ロール位置での鋳片中心部固相率が0.7以上0.8以下の範囲内であるときの軽圧下帯14を構成するロールセグメントの変位を予め求めておき、この変位に対して測定される変位が乖離したときは、凝固完了位置13が所定の位置に存在しないことを示すことになり、従って、この場合には、鋳造速度または二次冷却水量の調整により凝固完了位置13を鋳造方向の下流側或いは上流側に移動させ、測定される変位が、予め求めた、鋳造方向最下流の軽圧下ロール位置での鋳片中心部固相率が0.7以上0.8以下の範囲内であるときの変位と同等になるように制御する。この条件下でのロールセグメントの変位は、軽圧下帯14を構成するロールセグメントの剛性によって変化するので、つまり、剛性の高いロールセグメントでは鋳造前に設定した状態とほとんど変わらず変位は少なく、逆に、剛性の低いロールセグメントでは変位が大きくなるので、軽圧下帯14を構成するそれぞれのロールセグメントで予め求めておく必要がある。
このようにして鋳造することで、所定量の圧下が鋳片10に付与される。尚、鋳造方向最下流の軽圧下ロール位置での鋳片中心部固相率が0.7以上0.8以下の範囲内であることを確かめるには、鋳造中の鋳片10の中心部まで鋼製のピンを打ち込み、このピンの溶融状態を調べることで確認することができる。
伝熱凝固計算の手法としては、有限差分法や有限要素法などの数値解析的な計算方法や、数式や回帰式を用いた簡易的な計算方法もある。ここでは、有限差分法を用いて伝熱凝固計算を行い、その結果から、影響係数を算出して鋳造速度や二次冷却水量を調整する方法を説明する。
有限差分法では、鋳片10の厚みと幅とを考慮し、鋳造方向には単位長さとした二次元の差分要素を考える。タンディッシュ2から鋳型5に溶鋼9を注入した時点を解析の出発点として、表面差分要素の境界条件を鋳造に合わせて順次変更していき、表面差分要素の熱伝達と内部差分要素の熱伝導による温度変化とを有限差分法により計算する。
境界条件としては、鋳型5による抜熱、二次冷却による抜熱、鋳片支持ロール6との接触による抜熱及び放射冷却が挙げられる。このうち、二次冷却による抜熱については、冷却の熱伝達係数を冷却水量や水温、鋳片10の表面温度などの関数として与えることができる。
伝熱凝固計算では、鋳片10の温度とともに固相率も計算する必要がある。鋳片10の化学成分(特に炭素濃度)から定まる固相線温度TSと液相線温度TLと有限差分法で計算した温度とを対比することにより、鋳片10の固相率を求めることができる。
この方式による伝熱凝固計算は、実際の鋳造条件に合致させてオンラインでリアルタイムに計算することが理想である。しかしながら、このような伝熱凝固計算システムで制御量(鋳造速度や二次冷却水量の調整量)まで求めようとすると、計算機に負荷が掛かるので、鋳造速度の調整量や二次冷却水量の調整量を求めるときには、以下に示す代替方法を採用することも可能である。
即ち、オフラインで予め基準となる鋳造条件をベースとして種々の条件で、伝熱凝固計算を用いて、鋳片中心部固相率が1.0となる位置までの鋳型内溶鋼湯面からの距離を計算しておき、この結果に基づいて制御量(鋳造速度の調整量や二次冷却水量の調整量)を求めるという方法である。
例えば、或る鋼種の基準となる二次冷却水量及び鋳造速度において鋳片中心部固相率が1.0となる位置までの鋳型内溶鋼湯面からの距離L1を伝熱凝固計算により計算する。次に、鋳造速度を例えば10%変化させて(二次冷却水量は変えない)、鋳片中心部固相率が1.0となる位置までの鋳型内溶鋼湯面からの距離L2を伝熱凝固計算により計算する。この距離の変化割合[(距離L1−距離L2)/10]が鋳造速度だけを単位%変えたときの影響係数EVとなる。
同様に、二次冷却帯の任意に選択した或る特定の冷却ゾーンの二次冷却水量を例えば20%変化させ、そのときの鋳片中心部固相率が1.0となる位置までの鋳型内溶鋼湯面からの距離L3を伝熱凝固計算により計算する。この距離の変化割合[(距離L1−距離L3)/20]が或る特定冷却ゾーンの二次冷却水量だけを単位%変えたときの影響係数ECとなる。尚、連続鋳造機の二次冷却帯は、通常、鋳型5の直下から軽圧下帯14に至るまでに複数の冷却ゾーンに分かれているので、二次冷却水量を調整(制御)する冷却ゾーンを予め決めておき、その冷却ゾーンの水量を変化させたときの影響係数ECを求めておくことになる。任意に選択した或る特定の冷却ゾーンの数は1に限るものではなく、2以上であっても構わない。
具体的な適用例は以下のようになる。
軽圧下帯14を構成するセグメントの上流側及び下流側の二箇所で上フレーム(フレーム17′に相当)の変位を測定し、上流側の変位d1、下流側の変位d2、及び、その差Δd(=変位d2−変位d1)が所定の範囲内に入っているかどうかを判定する。
変位d2や差Δdが所定の値よりも大きい場合には、凝固完了位置13が当該セグメントの範囲内かそれよりも上流側に存在する可能性があるので、凝固完了位置13を下流側に移動させる必要がある。逆に、変位d2や差Δdが所定の値よりも小さ過ぎる場合には、凝固完了位置が13が下流側に伸び過ぎている可能性があるので、凝固完了位置13を上流側に移動させる必要がある。
そこで、例えば、差Δdと凝固完了位置13の変更量との関係を、予め図6に示すように定めておき、測定される差Δdに基づいて凝固完了位置13を上流側或いは下流側に移動させる。尚、図6は、差Δd(=変位d2−変位d1)と凝固完了位置の変更量との関係を模式的に示す図であり、差Δdが大きくなれば凝固完了位置13を下流側に移動させることを示している。また、図6では、セグメント変位の測定誤差も加味して、差Δdに不感帯を設定している。
凝固完了位置13の変更量が定まれば、上記の影響係数ECを用いて修正すべき二次冷却水量を求めることができる。同様に、影響係数EVを用いて修正すべき鋳造速度を求めることができる。
以上説明したように、本発明によれば、ロールセグメント方式の軽圧下帯14であっても、軽圧下帯14において鋳片10に所定の圧下量が付与されるので、鋳片10の中心偏析を安定して軽減することが実現される。
鋳型内溶鋼湯面からの距離が24.5〜26.5mの範囲に設置された、鋳造方向長さが2.0mで8対の鋳片支持ロールからなるロールセグメント方式の軽圧下帯を有するスラブ連続鋳造機で、炭素濃度が0.05質量%、マンガン濃度が1.3質量%の炭素鋼を厚み250mm、幅2100mmのスラブ鋳片に鋳造する際に、本発明を適用した。
鋳造に先立ち、基準の鋳造速度及び二次冷却条件下で伝熱凝固計算を行い、鋳片の凝固完了位置を求めた結果、凝固完了位置は鋳型内溶鋼湯面からの距離が28.0mの位置と算出された。そこで、軽圧下帯の圧下勾配を0.8mm/m(軽圧下ロール1対あたり0.2mm、軽圧下帯全体の軽圧下量=1.6mm)として、基準の鋳造速度及び二次冷却条件で鋳造を開始し、鋳片を軽圧下した。
定常鋳造中に、軽圧下帯を構成するロールセグメントの上流側及び下流側で上フレームの圧下方向の変位をレーザー距離計により測定した。その結果、上流側の変位が0.5mmであるのに対して、下流側の変位が1.3mmと大きかったので、変位差(差Δd=0.8mm)に応じて、予め定めた変位差と二次冷却水量との関係から、二次冷却水量を基準よりも8%減じて鋳造した(本発明例1)。本発明例1において、鋳造速度は基準値(1.4m/分)のままとした。
尚、二次冷却水量を基準値として鋳造したときの凝固完了位置を、そのときの鋳片表面温度の測定値を用いて、二次冷却の熱伝達係数を修正して伝熱凝固計算により求めた結果、鋳片の凝固完了位置は、鋳型内溶鋼湯面からの距離が25.0mの位置、つまり、軽圧下帯の範囲内であった。二次冷却水量を基準よりも8%減じた場合には、軽圧下帯の鋳造方向最下流の軽圧下ロール位置での鋳片厚み中心部の固相率は0.79、凝固完了位置は鋳型内溶鋼湯面から28.0mの位置であった。
一方、比較例1は、基準の鋳造速度及び二次冷却条件のまま鋳造を行った。
この結果、本発明例1では中心偏析の極めて軽微な、内部品質に優れた鋳片が得られた。これに対して、比較例1では、軽圧下量が不足して中心偏析が悪化し、本発明例1に比較して内部品質に劣る鋳片が得られた。
実施例1と同様に、鋳型内溶鋼湯面からの距離が24.5〜26.5mの範囲に設置された、鋳造方向長さが2.0mで8対の鋳片支持ロールからなるロールセグメント方式の軽圧下帯を有するスラブ連続鋳造機で、炭素濃度が0.06質量%、マンガン濃度が1.8質量%の炭素鋼を厚み250mm、幅2100mmのスラブ鋳片に鋳造する際に、本発明を適用した。軽圧下帯の圧下勾配は0.8mm/m(軽圧下ロール1対あたり0.2mm、軽圧下帯全体の軽圧下量=1.6mm)とした。
鋳造に先立ち、基準の鋳造条件(鋳造速度と二次冷却水量)で伝熱凝固計算を行い、鋳片の厚み中心部の固相率が1.0となる位置までの鋳型内溶鋼湯面からの距離L1.0を求めた結果、距離L1.0は27.2mと算出された。
また、二次冷却帯のうちで鋳型内溶鋼湯面からの距離が1.5〜6.0mの範囲の冷却ゾーンについて、その二次冷却水量を±10%増減させたときに伝熱凝固計算によって計算される距離L1.0の変化割合から影響係数ECを算出した結果、影響係数EC=0.015m/%となった。
また、当該セグメントの上流側と下流側との二箇所で上フレームの変位を測定し、測定される変位の差Δd(=下流側変位d2−上流側変位d1)に応じて、図6に例示する差Δdと凝固完了位置の変更量との関係に基づいて、凝固完了位置を移動させた。図6に例示する差Δdと凝固完了位置の変更量との関係において、差Δdの不感帯範囲を0.4〜0.6mmの範囲とし、この範囲を超えたときの調整の勾配を3.0m/mmとした。
鋳造が定常となった時点で、当該セグメントの変位を測定した結果、上流側の変位d1は0.3mm、下流側の変位d2は1.4mmであり、差Δdは1.1mmとなり、凝固完了位置を下流側に移動させる必要があることが判明した。
そこで、、凝固完了位置を下流側に1.5m(=(1.1-0.6)×3.0)移動させるべく、鋳型内溶鋼湯面からの距離が1.5〜6.0mの範囲の冷却ゾーンについて、二次冷却水量を10%減少させた(本発明例2)。一方、比較例2では、鋳造条件を変更せずに、そのまま鋳造を継続した。つまり、軽圧下帯の最下流位置の圧下ロール位置(26.5m)における鋳片厚み中心部の固相率をほぼ1.0のままとした。
この結果、本発明例2では、二次冷却水量の変更後、上流側の変位d1は0.1mm、下流側の変位d2は0.6mm、差Δdは0.5mmとなって安定した。鋳造後の鋳片の中心偏析を調査した結果、中心偏析の極めて軽微な、内部品質に優れた鋳片が得られたことが確認できた。また、鋳造後に軽圧下帯を構成するセグメント及び圧下ロールを点検した結果、特に問題は無いことが分かった。
これに対して、比較例2では、軽圧下量が不足して中心偏析が悪化し、本発明例2に比較して内部品質に劣る鋳片が得られた。また、鋳造後に軽圧下帯を構成するセグメント及び圧下ロールを点検した結果、軽圧下帯の最下流に位置する圧下ロール付近のフレームに破損が発生しており、軽圧下帯を構成するセグメントに過負荷が掛かっていたことが判明した。
以上の結果から、本発明の効果が明らかである。尚、上記本発明例2では、二次冷却水量の調整によって鋳片の凝固完了位置を制御したが、鋳造速度を調整することでも同様の効果が得られることを確認している。また、二次冷却水量と鋳造速度とを同時に調整することも同様の効果が得られることを確認している。また、上記本発明例2では、鋳造が定常状態になった時点で1回の二次冷却水量の調整を行ったが、一定時間周期毎(例えば30秒に1回)にセグメントの変位測定を行い、この結果に基づいて鋳造速度または二次冷却水量を調整することで、より精度の高い軽圧下操業が可能となる。
1 スラブ連続鋳造機
2 タンディッシュ
3 スライディングノズル
4 浸漬ノズル
5 鋳型
6 鋳片支持ロール
7 搬送ロール
8 鋳片切断機
9 溶鋼
10 鋳片
11 凝固シェル
12 未凝固相
13 凝固完了位置
14 軽圧下帯
15 レーザー距離計
16 ロールセグメント
17 フレーム
18 タイロッド
19 ウオームジャッキ
20 モーター
21 ロールチョック

Claims (5)

  1. 複数本の圧下ロールが組み込まれた、少なくとも1基以上のロールセグメントから構成される軽圧下帯を用いて、凝固末期の鋳片を凝固収縮量相当の圧下量で圧下するにあたり、前記ロールセグメントの上流側部位と下流側部位との二箇所の部位で当該ロールセグメントの圧下方向の変位を測定し、測定される変位が予め設定した所定の値の範囲内であり、且つ、前記上流側部位の変位量と前記下流側部位の変位量とが同等になるように、鋳造速度または二次冷却水量を調整することを特徴とする、連続鋳造における鋳片の軽圧下方法。
  2. 複数本の圧下ロールが組み込まれた、少なくとも1基以上のロールセグメントから構成される軽圧下帯を用いて、凝固末期の鋳片を凝固収縮量相当の圧下量で圧下するにあたり、前記ロールセグメントの上流側部位と下流側部位との二箇所の部位で当該ロールセグメントの圧下方向の変位を測定し、測定される変位が予め設定した所定の値の範囲内に制御されるように、鋳造速度または二次冷却水量を調整する、連続鋳造における鋳片の軽圧下方法であって、
    基準の鋳造条件下で伝熱凝固計算を行って鋳片中心部固相率が1.0の位置までの鋳型内溶鋼湯面からの距離を求めるとともに、二次冷却帯の或る任意の冷却ゾーンの二次冷却水量を単位%変更したときの鋳片中心部固相率が1.0となる位置までの鋳型内溶鋼湯面からの距離の変化を伝熱凝固計算により求め、これらの結果に基づいて、前記ロールセグメントの上流側部位と下流側部位との二箇所の部位で測定される圧下方向の変位が予め設定した所定の値の範囲内に制御されるように、前記の任意の冷却ゾーンの二次冷却水量を調整することを特徴とする、連続鋳造における鋳片の軽圧下方法。
  3. 複数本の圧下ロールが組み込まれた、少なくとも1基以上のロールセグメントから構成される軽圧下帯を用いて、凝固末期の鋳片を凝固収縮量相当の圧下量で圧下するにあたり、前記ロールセグメントの上流側部位と下流側部位との二箇所の部位で当該ロールセグメントの圧下方向の変位を測定し、測定される変位が予め設定した所定の値の範囲内に制御されるように、鋳造速度または二次冷却水量を調整する、連続鋳造における鋳片の軽圧下方法であって、
    基準の鋳造条件下で伝熱凝固計算を行って鋳片中心部固相率が1.0の位置までの鋳型内溶鋼湯面からの距離を求めるとともに、鋳造速度を単位%変更したときの鋳片中心部固相率が1.0となる位置までの鋳型内溶鋼湯面からの距離の変化を伝熱凝固計算により求め、これらの結果に基づいて、前記ロールセグメントの上流側部位と下流側部位との二箇所の部位で測定される圧下方向の変位が予め設定した所定の値の範囲内に制御されるように、鋳造速度を調整することを特徴とする、連続鋳造における鋳片の軽圧下方法。
  4. 基準の鋳造条件下で伝熱凝固計算を行って鋳片中心部固相率が1.0の位置までの鋳型内溶鋼湯面からの距離を求めるとともに、鋳造速度を単位%変更したときの鋳片中心部固相率が1.0となる位置までの鋳型内溶鋼湯面からの距離の変化を伝熱凝固計算により求め、これらの結果に基づいて、前記ロールセグメントの上流側部位と下流側部位との二箇所の部位で測定される圧下方向の変位が予め設定した所定の値の範囲内に制御されるように、鋳造速度を調整することを特徴とする、請求項2に記載の連続鋳造における鋳片の軽圧下方法。
  5. 前記ロールセグメントの圧下方向の変位を、前記軽圧下帯の鋳造方向最下流の軽圧下ロール位置での鋳片中心部固相率が0.7以上0.8以下のときに測定される変位と同等になるように制御することを特徴とする、請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の連続鋳造における鋳片の軽圧下方法。
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