JP5896294B2 - かん水淡水化用の逆浸透膜 - Google Patents

かん水淡水化用の逆浸透膜 Download PDF

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Description

本発明は、耐薬品性に優れる素材を使用しながら、塩除去性と透水性を高いレベルで両立した、かん水淡水化に好適な逆浸透膜に関する。
逆浸透膜を長期間安定して運転するためには、被処理水の殺菌や濁質成分除去を始めとする適切な前処理や定期的な膜洗浄が不可欠である。逆浸透膜表面にファウリング成分が沈着したり、微生物の増殖によるスライムが付着すると著しい性能低下を引き起こすためである。前処理としては、pH調整や膜処理等によるスケールおよびファウリング原因物質の除去が挙げられ、膜洗浄にはアルカリ系薬液や塩素系薬液、特に次亜塩素酸ナトリウム等の使用が挙げられる。
これまでに商用化されている逆浸透膜としては、主に三酢酸セルロース(CTA、特許文献1参照)および芳香族ポリアミド(PAm、特許文献2参照)が存在する。CTA系膜は、PAm系膜に比べて耐塩素性に優れ、特に次亜塩素酸ナトリウムによる洗浄および膜性能回復性に優れるが、耐アルカリ性に弱くアルカリ系薬液の使用が限定されるという欠点を有する。逆に、PAm系膜はCTA系膜に比べて耐アルカリ性に優れるが、塩素耐性が非常に低いため塩素系薬液の使用が限定されてしまうという欠点を有する。
これらの欠点を補うべく、特許文献3では、スルホン化ポリアリールエーテルスルホン構造を有するポリマーを用いた分離膜が提案されている。これにより得られた膜は、耐薬品性が向上したが、一方で透水性が悪く実用に向かないという問題を有する。この問題を解決するために、特許文献4では、PAm系複合膜の上に薄くスルホン化ポリアリールエーテルスルホンをコーティングすることによって、透水性能と塩除去性能、および化学耐久性の両立を図った。しかし、この方法ではコーティング層が薄いために長期の耐薬品性保持に不安があること、また製膜工程が複雑化することでコストがかさむといった問題を有する。
このように従来の逆浸透膜は、塩除去性、透水性、および耐薬品性のいずれかに問題があり、これらの特性を全て高いレベルで実現したものは従来存在していないのが現状である。
特許第3591618号公報 特許第2794785号公報 特公平07−67529号公報 特開平10−57783号公報
本発明は、かかる従来技術の現状に鑑み創案されたものであり、その目的は、耐薬品性(耐アルカリ性、耐塩素性)を有する素材を使用しながら、かん水淡水化に求められる塩除去性と透水性を高いレベルで両立したかん水淡水化用の逆浸透膜を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、逆浸透膜の素材として耐薬品性に優れる特定のスルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマーを使用し、この膜の含水状態の束縛水由来のピークトップの位置を特定のケミカルシフト値の領域に制御することによって、膜中のスルホン酸基と束縛水が良好に相互作用して塩除去性と透水性を高いレベルで両立できることを見出し、本発明の完成に至った。
即ち、本発明は、以下の(1)〜(7)の構成を有するものである。
(1)下記一般式[I]で表される構成成分を含むスルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマーからなる逆浸透膜であって、含水状態の前記逆浸透膜を用いて膜中の水分子を測定したプロトン核磁気共鳴スペクトルにおいて、束縛水由来のスペクトルピークトップのケミカルシフトA(ppm)とバルク水由来のスペクトルピークトップのケミカルシフトB(ppm)との関係がB−0.42≦A<B−0.36を満たすことを特徴とするかん水淡水化用の逆浸透膜。
式中、XはHまたは1価のカチオン種であり、nは10以上50以下の整数である。
(2)スルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマーの極限粘度が1.0〜2.3dL/gであることを特徴とする(1)に記載の逆浸透膜。
(3)スルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマーのスルホン酸基含有量が0.5〜2.3meq/gであることを特徴とする(1)または(2)に記載の逆浸透膜。
(4)示差走査熱量分析法による観察において、結晶化ピークが見られないことを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の逆浸透膜。
(5)逆浸透膜が内径30〜60μm、外径120〜150μmの中空糸膜であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の逆浸透膜。
(6)中空糸膜の外周部から1μm以内の膜厚部分において10nm以上の直径の細孔が観察されないことを特徴とする(5)に記載の逆浸透膜。
(7)湿潤状態における降伏強度が7MPa以上15MPa未満であることを特徴とする(5)または(6)に記載の逆浸透膜。
本発明の逆浸透膜は、特定のスルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマーを素材として使用しているため、耐薬品性が高く、膜洗浄に使用するアルカリ系薬液と塩素系薬液の両方に対して強い耐性を有する。また、本発明の逆浸透膜は、含水時の束縛水由来のピークトップの位置を特定のケミカルシフト値の範囲に制御しているので、膜中のスルホン酸基と水分子が効率的に相互作用でき、結果としてかん水淡水化に求められる塩除去性と透水性を高いレベルで達成することができる。
プロトンNMRスペクトルチャートの一例を示す。
従来、逆浸透膜の素材として三酢酸セルロース(CTA)や架橋芳香族ポリアミド(PAm)が用いられてきた。CTAは耐塩素性に優れるが、耐アルカリ性に劣る問題がある。一方、PAmはCTAに比べて耐アルカリ性に優れるが、耐塩素性に劣る。逆浸透膜は、使用とともに有機・無機物の堆積が膜表面に生じ(ファウリング)、透水性能が劣化する問題があった。一般に、ファウリングを取り除く方策として、酸やアルカリ、塩素を含んだ液に膜を浸して洗浄する方法があるが、CTAは耐アルカリ性に、PAmは耐塩素性が強くなく、長期に使用する上で耐薬品性に優れた膜の発明が期待されていた。
一般に、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン系材料は一般的に疎水性を示すため、分子間凝集力が乏しい特徴を有する。このため、非溶媒誘起型相分離(NIPS)法および熱誘起相分離(TIPS)法を利用して膜形成させても、限外ろ過膜(UF、細孔径は数十nm〜数百nm)以上の細孔が生成する。従って、逆浸透膜としての機能を発現できない問題が生じる。そこで、本発明者らは、分子間力を上げるために相互作用力を有する基を共有結合させることに思いが至った。具体的に、共重合を行う基としては負電荷を有するものが良い。例えば、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基等であるが、本発明者らの研究によれば、特にスルホン酸基が高い効果を示すことを見出した。
さらに、塩の浸透を除外する一方で、透水性を確保するという、相反する二つの要件を満たすことが必要である。この際に重要となるのがスルホン酸基の量および配置である。水分子が膜中を浸透するとき、スルホン酸基の化学的受容力に誘引されて順次浸透していく。このとき、スルホン酸基と水分子の距離が重要となる。即ち、スルホン酸基の密度が高くても水分子がスルホン酸基に容易に接近できない場合、スルホン酸基はその受容力を発揮することができず、結果、水の浸透は目標を達せず透水量が小さくなる。つまり、いたずらに分子内にあるスルホン酸基の個数割合を増やすだけでは問題は解決しない。膜構造全体の中で、スルホン酸基の密度・分布を適正化することが必要である。
この課題に対して本発明者らは、膜の凝固条件を調整することにより上述のスルホン酸基の分布を制御できる方法を見出した。さらに、このスルホン酸基の受容力の大小について、核磁気共鳴スペクトル(NMR)を用いて測定できることを見出した。一般的に、プロトンNMRを測定したとき、水分子が別の化学種と相互作用すると、水分子中のプロトンの周囲に存在する電子の密度が変化する。その変化の程度をケミカルシフトで測ることが可能である。
本発明の逆浸透膜は、上記の知見に基づいて、CTAやPAmに比べて高い耐アルカリ性および耐塩素性を有するスルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマーを素材として選択したうえで、このポリマーのスルホン酸基が含水時の水分子を良好に相互作用できるように、含水膜中の水分子をプロトンNMRで測定したとき、束縛水由来のスペクトルピークトップのケミカルシフトA(ppm)とバルク水由来のスペクトルピークトップのケミカルシフトB(ppm)との関係がB−0.42≦A<B−0.36を満たすように制御したことに最大の特徴を有する。このような見地で逆浸透膜の素材ポリマーを設計して、耐薬品性を維持しながら、塩除去性と透水性を両立させたものは従来から存在しない。
本発明の逆浸透膜は、かん水淡水化を目的とした逆浸透膜であり、かん水(塩水濃度が0.5重量%以下の地下水、河川水)に浸透圧以上の圧力をかけて淡水を得る方法に用いられる。かん水は、塩水濃度が低いため浸透圧が低く、かん水淡水化の運転圧力は、一般的に3〜4MPaと海水淡水化より低く設定できる。かん水淡水化に求められる逆浸透膜の塩除去性と透水性としては、一般に塩除去率が93%以上であり、透水量が100L/m/D以上であることが好ましい。
本発明の逆浸透膜としては、中空糸膜または平膜が用いられる。中空糸膜は、一般的にチューブインオリフィス型ノズルやアーク型(三点ブリッジ)ノズルを用いてポリマーを吐出させた後に凝固させて作成する中空状の糸からなる。また、中空糸膜は、一般的に単一素材からなる非対称膜の形態をとる。さらに、中空糸膜は、耐圧容器(モジュール)における単位容積当たりの有効膜面積が平膜より多くとれるため、モジュールのコンパクト化が可能という利点がある。但し、中空糸膜内部が閉塞すると回復困難となるため、外圧式で使用されることが多い。一方、平膜は、フィルム形状の膜であり、支持体層にポリエステルタフタおよびポリスルホン等からなる積層膜を用い、その上に分離機能層としてポリアミドやスルホン化ポリスルホン等を積層させた構造を有するものが一般的である。モジュールは主にスパイラル型が用いられている。本発明の逆浸透膜としては、モジュール容積当りの膜面積が大きく、透過側に異物が混入しにくい中空糸膜を用いることが好ましい。中空糸膜は、用途に応じた所定の塩除去率および透過率を有し、さらに膜の経時変化が小さくなるように設計される。
本発明の逆浸透膜は、下記一般式[I]で表される構成成分を含むスルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマーからなる。
式中、XはHまたは1価のカチオン種であり、nは10以上50以下の整数である。1価のカチオン種としては、特に限定されないが、ナトリウム、カリウム、リチウムや他の金属種や各種アミン類等が挙げられる。
本発明で使用するスルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマーは、電子吸引性の芳香環上にスルホン酸基を導入したモノマー(3,3’−ジスルホ−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン誘導体)を用いてポリアリーレンエーテルを合成することにより、高温でもスルホン酸基が脱離しにくいポリマーであり、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン誘導体とともに2,6−ジクロロベンゾニトリルを併用することで、重合性の低い3,3’−ジスルホ−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン誘導体を使用していても短時間で高重合度のポリアリーレンエーテル化合物が得られる特徴がある。スルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマーは、特に耐薬品性(耐アルカリ性、耐塩素性)に優れ、膜の長期使用に対して経時変化が小さい。
スルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマーは、従来公知の方法で得ることができるが、例えば、上記一般式[I]の左側の化合物と右側の化合物とをモノマーとして含む芳香族求核置換反応により重合することによって得られる。芳香族求核置換反応により重合する場合、上記一般式[I]の左側の化合物と右側の化合物を含む活性化ジフルオロ芳香族化合物および/またはジクロロ芳香族化合物と芳香族ジオール類を塩基性化合物の存在下で反応させることができる。重合は、0〜350℃の温度範囲で行うことができるが、50〜250℃の温度であることが好ましい。0℃より低い場合には、十分に反応が進まない傾向にあり、350℃より高い場合には、ポリマーの分解も起こり始める傾向がある。反応は、無溶媒下で行うこともできるが、溶媒中で行うことが好ましい。使用できる溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホン、スルホランなどを挙げることができるが、これらに限定されることはなく、芳香族求核置換反応において安定な溶媒として使用できるものであればよい。これらの有機溶媒は、単独でも2種以上の混合物として使用されてもよい。塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等が挙げられるが、芳香族ジオール類を活性なフェノキシド構造にしうるものであれば、これらに限定されず使用することができる。芳香族求核置換反応においては、副生物として水が生成する場合がある。この際は、重合溶媒とは関係なく、トルエンなどを反応系に共存させて共沸物として水を系外に除去することもできる。水を系外に除去する方法としては、モレキュラーシーブなどの吸水材を使用することもできる。芳香族求核置換反応を溶媒中で行う場合、得られるポリマー濃度として5〜50重量%となるようにモノマーを仕込むことが好ましい。5重量%よりも少ない場合は、重合度が上がりにくい傾向がある。一方、50重量%よりも多い場合には、反応系の粘性が高くなりすぎ、反応物の後処理が困難になる傾向がある。重合反応終了後は、反応溶液より蒸発によって溶媒を除去し、必要に応じて残留物を洗浄することによって、所望のポリマーが得られる。また、反応溶液を、ポリマーの溶解度が低い溶媒中に加えることによって、ポリマーを固体として沈殿させ、沈殿物の濾取によりポリマーを得ることもできる。
スルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマーの対数粘度は、1.0〜2.3dL/gであることが好ましい。対数粘度が1.0dL/gより小さいと、逆浸透膜に成形したときの膜が脆くなりやすく、また、2.3dL/gより大きいと、ポリマーの溶解が困難になり、加工性に問題が生じるおそれがある。
スルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマーのスルホン酸基含有量は、0.5〜2.3meq/gであることが好ましい。スルホン酸基含有量が0.5meq/gより少ないと、逆浸透膜として十分な塩除去性あるいは透水性を示さないおそれがあり、2.3meq/gより多いと、逆浸透膜が高温高湿時に膨潤して使用に適さなくなるおそれがある。
本発明の上記ポリマー素材を使用した逆浸透膜は、含水状態の該膜を用いて膜中の水分子を測定したプロトン核磁気共鳴(NMR)スペクトルにおいて、束縛水由来のスペクトルピークトップのケミカルシフトA(ppm)とバルク水由来のスペクトルピークトップのケミカルシフトB(ppm)との関係がB−0.42≦A<B−0.36を満たすように制御されていることを特徴とする。ここで、束縛水は、逆浸透膜の微細孔内で、電荷を持った基や極性基と相互作用して溶媒和を形成した水分子であり、回転・並進運動が制限される。一方、バルク水(自由水とも言う)は、通常の液体状態を保ち、回転・並進運動を行う運動性の高い状態をとる。ケミカルシフト(化学シフト)に関しては、プロトンNMRの場合、磁場中にある測定対象物へ外部エネルギー(ラジオ波)を与えると、測定対象物がもつ水素原子の周囲に存在する電子の密度の大小によって、吸収される外部エネルギー量が異なるが、この差がNMRスペクトルピークの出現箇所の差(ケミカルシフト差)として表される。電子密度大なら外部エネルギーに対する遮蔽効果が高く、高磁場側(ppm値の小さい側)にスペクトルピークが出現する。電子密度小なら遮蔽効果が小さく、低磁場側(ppm値の大きい側)にスペクトルピークが出現する。従って、電子密度の大小は、膜中の水分子のプロトンNMRのケミカルシフトが受ける化学的相互作用の大小を表わす。一般式[I]に示すポリマーからなる逆浸透膜はスルホン酸基を有しており、束縛水は特にこの基と強く相互作用すると考えられる。スルホン酸基の電子密度はバルク水と比べて大きく、強い相互作用を形成する束縛水周辺の電子密度はバルク水よりわずかに大きくなると考えられる。したがって、束縛水のケミカルシフトはバルク水よりも高磁場側に出現する。膜中に存在する水分子のプロトンNMR測定法については次の通りである。予め、室温下(25℃)10分間蒸留水に浸漬させておいた中空糸膜試料を長さ5cm程度に切りとり、直径3mmのキャピラリー管に該試料を4本挿入する。この時の試料の水分率は凡そ300〜400重量%とする。該キャピラリー管を直径5mmのNMRチューブに挿入し、BRUKER社製 AVANCE500(共鳴周波数500.13MHz、温度30℃、FT積算16回、待ち時間21秒)でプロトンNMR測定を行う。(予め、重水(DO)でシム調整を行う。)
図1にプロトンNMRスペクトルチャートの一例を示す。この際に観察される2本のスペクトルピークのうち、低磁場側に出現するスペクトルピークをバルク水由来のものとし、このケミカルシフトのピークトップを5.24ppmに合わせて基準とする。そして、高磁場側に現れる束縛水由来のスペクトルピークのピークトップのケミカルシフト、およびそれらの距離を確認する。なお、ピークトップとは、NMR測定の結果、得られるスペクトルピークの最も高い位置のことである。
束縛水由来のケミカルシフトのピークトップA(ppm)が、バルク水由来のケミカルシフトのピークトップB(ppm)に対してA<B−0.42となる場合、膜構造が全体的に著しく緻密になり、塩除去性は概ね93%以上を示すのに対して透水性が低下し、実用的でないという問題がある。また、同様にしてB>A≧B−0.36となる場合、塩除去性が90%を下回るという問題があり、好ましくない。
次に、本発明の逆浸透膜中の水分子と膜分子を構成する高分子鎖との間の化学的相互作用、および膜性能との関係について述べる。一般に、紡糸上がり及び逆浸透膜として使用中の膜は、概して50%〜1000%の水分率の水分を膜中に有する。この範囲の含水状態を保っていれば、水分率に関わらずバルク水と束縛水のプロトンNMRにおけるスペクトルピークトップ間のケミカルシフトはほぼ一定値を示す。このとき、該逆浸透膜中の水分子がすべて膜を構成する高分子鎖と化学的な相互作用をしているわけではない。本発明者らの検討によれば、相互作用の有無は、水分子のプロトンNMRを測定することにより区別でき、膜が、概ね前述の水分率の場合、水分率の大小に依存せず、バルク水のスペクトルピークトップからの距離が安定して決まった位置にスペクトルピークを発現することを見い出した。さらに詳しく述べれば、束縛水由来のスペクトルピークトップのケミカルシフトA(ppm)とバルク水由来のスペクトルピークトップのケミカルシフトB(ppm)との関係がB−0.42≦A<B−0.36を満たす範囲に1本ないし複数本のピークが観測されることが分かった。このことは、膜中の水の存在状態が複数存在することを意味する。このことから、膜中の水は、バルク水に加えて、何らかの化学的な相互作用を受けた水(束縛水)からなることを見出した。
本発明者らの検討によれば、紡糸に供するポリマー溶液の濃度と上述のケミカルシフト、および物性値に強い相関があることを見出した。即ち、逆浸透膜として前述のポリマーを素材として用いた場合、ポリマー濃度25重量%を境にして、それよりも濃度が低い条件で作った中空糸膜(含水状態)を用いてプロトンNMRを測定したところ、膜中の水分子のケミカルシフトはB≧A≧B−0.14(ppm)の範囲に発現する。さらにこのような条件で作製した膜は、NaClで評価した場合に塩除去率を示さないか、または塩除去率が5%以下となる可能性があり、また、中空糸膜の強度が低くなり耐圧性に問題の生じる場合が多く、実用レベルの逆浸透膜としては機能を果たさない。逆に、ポリマー濃度を40重量%以上にすると、出来た膜の物性は、塩除去率は93%以上をキープする。同様にして測定した水分子のスペクトルピークトップのケミカルシフトはA<B−0.42(ppm)となり、透水性能が100L/m/D以下となり好ましくない。
さらに、紡糸時のエアギャップ長についても、膜中でのスルホン酸基の配置、更には束縛水の受けるケミカルシフトの変化にも多大な影響を与える。本発明者らの検討によれば、エアギャップ長と上述のケミカルシフト、および膜性能値に強い相関があることを見出した。即ち、ある一定値を境にして、エアギャップ長が長すぎる、かつ加熱ゾーンを用いて積極的に系中の溶媒を蒸発せしめた条件で作った糸のプロトンNMRを測定したところ、膜中の水分子のケミカルシフトはB≧A≧B−0.14(ppm)の範囲に発現する。このような条件で作製した中空糸膜は、エアギャップ通過の過程で膜中の溶媒が過剰に蒸発する。系中の溶媒が蒸発するとポリマー濃度の上昇を招くが、それと共にスルホン酸基の凝集が加速される。この結果出来た系のスルホン酸基は局在化されている。このような構造の膜を逆浸透膜として利用したとき、膜中を拡散する水分子はスルホン酸基と効率的に相互作用できない。結果として、塩除去率の減少ならびに透水量の減少を招く。更に、膜表面側のポリマー密度が非常に高くなり構造が非常に緻密化する。その結果、膜の最表層にスキン層が形成され、内部は分離能を持たない粗構造が形成される。このような膜の透水性能は10L/m/Dに達することはなく、塩除去率は50%未満であり、実用レベルの逆浸透膜としては機能を果たさない。
詳細なメカニズムについては不詳であるが、本発明者らは、ポリマー濃度と膜性能の間に相関があることを見出した。即ち、ポリマー濃度が低すぎると、膜を形成せしめたときに、膜構造の特徴としてスルホン酸基の凝集が過度にすすむ。このことは、膜中に存在する水分子が、該凝集構造中のスルホン酸基と効率的に相互作用状態を実現できないことを意味する。結果として、逆浸透膜として使用したときに、膜中を拡散する水分子が効率的にスルホン酸基と相互作用できないため、水分子の拡散が抑制され、低い透水性能に留まる。束縛水の受けるケミカルシフトもバルク水に近い位置に留まる。逆に、ポリマー濃度を高くすると、凝集構造のサイズは小さいかもしれないが、スルホン酸基は凝集することなく均一に分散するため、膜中の水分子との化学接触および相互作用できる確率が高まる。結果として、水分子が早く拡散するようにスルホン酸基のチャンネルが配列形成するので、高い透水性能が得られるのである。束縛水のケミカルシフトも自由水とは遠く離れた位置に観測できる。本発明の逆浸透膜は、このような知見に基づいて、かん水淡水化に要求される透水性と塩除去性を持つように、含水時の膜中における束縛水由来のプロトンNMRのピークトップの位置に関して、束縛水由来のスペクトルピークトップのケミカルシフトA(ppm)とバルク水由来のスペクトルピークトップのケミカルシフトB(ppm)との関係がB−0.42≦A<B−0.36を満たすように設定している。
次に、本発明の逆浸透膜の製造方法を、中空糸膜の場合を例にして説明する。本発明の中空糸膜は、従来公知の方法と同様に、製膜原液を紡糸口金から空中走行部を経て凝固浴中に吐出して中空糸膜を作成し、この中空糸膜を水洗した後に熱水処理に供して膜を収縮させることによって製造することができる。
製膜原液としては、膜素材の式[I]で表されるポリマーと溶媒と非溶媒を含むものを使用し、必要により有機酸および/または有機アミンを加えたものを使用する。溶媒は、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルスルホキシドから選ばれる1種以上を使用することが好ましい。より好ましくは、N−メチル−2−ピロリドンである。非溶媒は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールから選ばれる1種以上を使用することが好ましい。より好ましくは、エチレングリコールである。有機酸は、アミノ酸、芳香族カルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸、二塩基酸またはそのヒドロキシモノエステルが好ましい。より好ましくは、フタル酸、酒石酸、ε−アミノ−n−カプロン酸、安息香酸、4−メチルアミノ酪酸、p−オキシ安息香酸、マレイン酸であり、2種以上を混合して使用することができる。有機アミンは、一級、二級、三級ヒドロキシアルキルアミンのいずれでも使用できる。具体的には、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミンが好ましい。
製膜原液中の式[I]のポリマーの濃度は35重量%以上40重量%未満であることが好ましい。ポリマーの濃度が上記範囲より低いと、得られた中空糸がかん水淡水化用途に求められる耐圧性能を満たさないことがあり、上記範囲より高いと、均一な紡糸原液(ドープ)の調製が著しく困難となり、紡糸性の悪化や糸斑による膜の性能低下を引き起こす可能性がある。また、製膜原液中の溶媒/非溶媒の重量比は95/5〜70/30が好ましく、さらに90/10〜75/25の範囲にあることが好ましい。溶媒/非溶媒の重量比が上記範囲より低いと、溶媒蒸発が進行しないため膜表面の構造が緻密化せず、透水性は大きく変化しないが塩除去性能が低いものとなり、上記範囲より高いと、極端な非対称膜化が進行して膜強度が得られない可能性がある。
次に、上記のようにして得られた製膜原液を90〜190℃に加熱して溶解し、得られた製膜原液を150〜180℃に加熱したアーク(3点ブリッジ)型、C型、又はチューブインオリフィス型ノズルより押出す。チューブインオリフィス型ノズルを使用する場合は、中空形成材として空気、窒素、二酸化炭素、アルゴンなどを使用することが好ましいが、紡糸温度よりも高い沸点の有機溶媒を使用することもできる。押出された製膜原液は、0.02〜0.4秒間、空中走行部(気体雰囲気、エアギャップ)を通過した後、続いて水性凝固浴に浸漬して凝固される。
既に述べてきたように、素材ポリマーのスルホン酸基と水分子が良好に相互作用するためには、スルホン酸基を膜中に均一に分布せしめることが必要である。このためには、エアギャップ長の設定も重要である。ここで、エアギャップとは乾湿式紡糸において紡糸ノズルと凝固浴の間に存在する空間を指す。即ち、エアギャップ長が50cmと長いような場合、ノズルから吐出した製膜原液がエアギャップを走行中に溶媒が蒸散するとともに膜中でスルホン酸基の凝集が起こり、好ましくない。このような膜を用いると、塩除去性能が50%未満、透水性も10L/m/D以下となり、実用的ではない。また、エアギャップが0.5cm未満と短すぎる場合、ノズルから吐出後の製膜原液の不安定状態が凝固により固定されてしまうため、好ましくない。このような膜を用いると、透水量は上がるが塩除去性が低下し、実用的ではない。エアギャップを無くし、ノズルを凝固液に浸けて膜を作成すると、強度が不足するために好ましくない。好ましいエアギャップ長は、30cm〜1cm、より好ましくは20cm〜2cmである。
凝固浴は、製膜原液に使用した溶媒、非溶媒と同一組成のものを使用することが好ましい。凝固浴の組成割合は、溶媒:非溶媒:水(重量比)=0〜15:0〜8:100〜77が好ましい。水の比率が低すぎると、膜の相分離が進行し、細孔径が大きくなりすぎることがある。
凝固浴から引き上げた中空糸膜は、残存する溶媒、非溶媒等を水あるいは塩水で洗浄除去する。水洗方式としては、例えば、長尺傾斜樋に水洗水を流下させ、その水洗水中に中空糸膜を通して水洗する多段傾斜樋水洗方式、また2本の長尺ローラーに互いに角度をもたせ、ローラーに中空糸膜を何重にも捲き上げるネルソンローラーにおいて、ネルソンローラー表面を常に水洗水で濡らし、該水洗水と中空糸膜との接触で水洗するネルソンローラー水洗方式、更にネット上に中空糸膜を振り落し、シャワー水によって水洗するネットシャワー水洗方式、また中空糸膜を直接深槽水洗水中に浸漬水洗する浸漬水洗方式等がある。
水洗処理を施した中空糸膜は、無緊張状態で水中に浸漬し、90〜120℃で5〜60分間、熱水もしくは熱塩水処理(アニール処理)を行うことが好ましい。100℃より高い温度条件ではオートクレーブ等を使用することができる。熱水処理を施すことによって、膜構造の固定化や寸法安定性の向上、熱安定性の向上を図ることができる。このような目的のため、通常、アニール処理は、ガラス転移温度よりも高く融点よりも低い温度が採用される。膜の構造、特にスルホン酸基の配置はドープ濃度とエアギャップ長でほぼ決まるが、必ずしも最も安定な位置に配列されている訳ではない。アニール処理は、膜中のスルホン酸基の配列を含めて、膜を構成する分子鎖の位置を最適な場所にもたらす効果を有する。
熱水処理温度が上記範囲より高いと、膜構造の緻密化が進みすぎて塩除去性と透水性のバランスが崩れることがあり、逆に、上記範囲より低いと、膜構造の非対称性が十分でなく、所望の塩除去性能が得られないことがある。熱水処理時間は、通常5〜60分である。処理時間が短すぎると、十分なアニール効果が得られない可能性がある。また、膜構造に不均一が生じることがある。処理時間が長すぎると、製造コストアップに繋がるだけでなく、膜が緻密化しすぎて所望の性能バランスが得られないことがある。
上記のようにして得られた本発明の中空糸膜は、従来公知の方法により中空糸膜モジュールとして組み込まれる。中空糸膜の組み込みは、例えば、中空糸膜を45〜180本集めて1つの中空糸膜集合体とし、さらにこの中空糸膜集合体を複数横に並べて偏平な中空糸膜束として、多数の孔を有する芯管にトラバースさせながら巻き付ける。この時の巻き付け角度は5〜60度とし、巻き上げ体の特定位置の周面上に交差部が形成するように巻き上げる。次に、この巻き上げ体の両端部を接着した後、片側のみ/または両側を切削して中空糸開口部を形成させ中空糸膜エレメントを作成する。得られた中空糸膜エレメントを圧力容器に挿入して中空糸膜モジュールを組立てる。
中空糸膜の内径は、30〜60μmであることが好ましい。内径が上記範囲より小さいと、中空部を流れる流体の圧力損失が一般に大きくなるため、中空糸膜の長さを比較的長くした場合に所望の透過水量が得られない可能性がある。一方、内径が上記範囲より大きいと、中空率とモジュール膜面積の取り合いになり、耐圧性または単位容積あたりの膜面積のいずれかを犠牲にする必要が生じる。
中空糸膜の外径は、120〜150μmであることが好ましい。外径が上記範囲より小さいと、必然的に内径も小さくなるため、上述の内径と同じ問題が生じる。一方、外径が上記範囲より大きいと、モジュールにおける単位容積あたりの膜面積を大きくすることができなくなり、中空糸型モジュールのメリットの一つであるコンパクト性が損なわれる。
中空糸膜の長さは、20〜300cmであることが好ましい。この長さは、中空糸型モジュールで一般に使用される可能性のある範囲である。但し、長さが上記範囲を逸脱すると、低い運転コストで透水性と塩除去性を両立することが困難になる可能性がある。
本発明の逆浸透膜は、示差走査熱量分析法による観察において、結晶化ピークが見られないという特徴を有する。これは、式[I]に示す通りポリマー主鎖にエーテル結合を多数含み、主鎖の熱運動性が高いこと、および分子間凝集力が低い疎水性セグメントを有していることから、結晶化に至るような凝集構造を発現しないためと考えられる。また、本発明の逆浸透膜が中空糸膜の場合、中空糸膜の外周部から1μm以内の膜厚部分において10nm以上の直径の細孔が観察されないという特徴を有する。一般的に、エアギャップを経て凝固液中に浸漬した中空糸状溶液において、中空糸膜の最表面側から脱溶媒が起こり直ちに相分離が生じていくのであるが、最表面側では相分離時間が短いことから微細な構造が形成され、内側(厚み方向)へ行くほど相分離時間が長くなり、内側が表面側よりも粗い構造が形成される傾向にある。特に、式[I]に示すポリマーはスルホン酸基を有しており、スルホン酸基同士や水分子を介して相互作用する。従って、中空糸膜の最表面側の構造がより緻密化する方向に作用し、結果、膜表面側の細孔径が著しく小さくなる。
本発明の逆浸透膜は、湿潤状態における降伏強度が7MPa以上15MPa未満である。一般的に、かん水淡水化のために、かん水の浸透圧(一例として、塩濃度5000ppmの場合は約0.4MPa)以上の外圧を膜にかける必要があり、実用的な透水量を得るためには2.0〜3.0MPaの外圧をかける必要がある。本発明者らの検討の結果、中空糸膜の耐圧性と、中空糸膜の湿潤状態における引っ張り方向の降伏強度に相関があることを見出した。一般的に、中空糸膜をかん水淡水化用逆浸透膜として用いるためには、上記の降伏強度が5MPa以上、好ましくは7MPa以上であることが好ましい。例えば、低圧用に特化したような中空糸膜は降伏強度が低く、かん水淡水化の運転外圧に耐えられない問題が生じる。式[I]のポリマーからなる中空糸膜においては、上述の降伏強度7MPa未満の場合、外圧3.0MPaで糸形状がわずかに変形し、透水性が悪化する傾向にあり好ましくない。また、15MPa以上の耐圧性を持たせるには紡糸原液のポリマー濃度を高める必要があるが、この範囲では中空糸膜の構造が緻密になりすぎ、かん水淡水化の実用的な透水性が低下する可能性があるため、好ましくない。本発明者らの鋭意検討の結果、式[I]のポリマーを用い、実用的な塩除去性および透水性を発現させつつかん水淡水化用の逆浸透膜として運用するためには、湿潤状態における降伏強度が7MPa以上15MPa未満であることが好ましいことが分かった。
また、膜は薬液に暴露した後も降伏強度が維持されることが望ましい。膜を実際に使用する際には、膜性能を維持するために定期的に薬液で洗浄する必要がある。この時、膜が薬液に暴露した後も、耐圧性能や塩除去性能の低下が小さいほうが好ましい。本発明の逆浸透膜は、かん水淡水化用途での使用を想定していることから、膜の塩除去性能の低下がほとんど見られず、膜の強度保持率が80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上であることが好ましい。強度保持率がこれらより小さくなると、中空糸膜がかん水淡水化の運転外圧に耐えられなくなり、糸形状が変化し、透水性や塩除去性が悪化する可能性がある。本発明者らは、式[I]のポリマーからなる中空糸膜を用いて耐塩素性、および耐アルカリ性について調査した。その結果、遊離塩素濃度100ppm、pH7、約20℃に調整した塩素液を用いて膜を浸漬させた場合、および、pH10、40℃に調整したアルカリ液を用いて膜を浸漬させた場合の両方において、12週間を経過しても塩除去性能がほとんど変化せず、降伏強度保持率が98%以上となることが分かった。なお、降伏強度の保持率とは次の通りである。
降伏強度保持率(%)=(浸漬前の中空糸膜の降伏強度[MPa]/浸漬後の中空糸膜の降伏強度[MPa])×100
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例で測定された特性値の測定は、以下の方法に従った。
(1)対数粘度
ポリマー粉末を0.5g/dlの濃度でN−メチル−2−ピロリドンに溶解し、30℃の恒温槽中でウベローデ型粘度計を用いて粘度測定を行い、対数粘度ln[ta/tb]/c)で評価した(taは試料溶液の落下秒数、tbは溶媒のみの落下秒数、cはポリマー濃度)。
(2)スルホン酸基含有量
窒素雰囲気下で一晩乾燥した試料の重量をはかり、水酸化ナトリウム水溶液と攪拌処理した後、塩酸水溶液による逆滴定を行うことでイオン交換容量(IEC)を求めた。
(3)式[I]のn
予め100℃に調整した真空乾燥器で1晩乾燥させたポリマー20mgを、ナカライテスク社の重水素化DMSO(DMSO−D6)1mLに溶解させた高分子溶液を用いて、BRUKER AVANCE500(周波数500.13MHz、温度30℃、FT積算32回)でプロトンNMRを測定した。得られたスペクトルチャートにおいて、下記に示した式[I]の芳香環上のプロトンaおよびbに相当するスペクトルピークは独立しており、これらの積分強度の比は下記式の通りになる。
積分強度a:積分強度b=n:(100−n)
式[I]に、nを評価するための芳香環上のプロトンa、bを示した。
(4)水分率
湿潤状態の中空糸を約1g電子天秤で秤りとり、予め100℃に調整した真空乾燥機で1晩真空乾燥させた。乾燥後の中空糸膜を電子天秤で秤量し、以下の式を用いて水分率を算出した。
水分率(%)=(乾燥後の中空糸膜の重量[wt%]/乾燥前の中空糸膜の重量[wt%])×100
(5)ケミカルシフト
予め、室温下(25℃)10分間蒸留水に浸漬させておいた中空糸膜試料を長さ5cm程度に切りとり、直径3mmのガラス製キャピラリー管に該試料を4本挿入した。この時の試料の水分率は凡そ300〜400重量%であった。該キャピラリー管を直径5mmのNMRチューブに挿入し、BRUKER社製 AVANCE500(共鳴周波数500.13MHz、温度30℃、FT積算16回、待ち時間21秒)でプロトンNMR測定を行った。(予め、重水(DO)でシム調整を行った。)
図1は、プロトンNMRスペクトルチャートの一例を表す。観察される2本のスペクトルピークのうち、低磁場側に出現するスペクトルピークをバルク水由来のものとし、このケミカルシフトのピークトップを5.24ppmに合わせて基準とした。そして、高磁場側に現れる束縛水由来のスペクトルピークのピークトップのケミカルシフト、およびそれらの距離を確認した。なお、ケミカルシフトの値の読みは全てスペクトルピークのピークトップの値を読んだ。
(6)細孔観察
中空糸膜を液体窒素へ浸漬して凍結させ、中空糸膜断面および中空糸膜の表面をSEM観察用試料台に両面テープで固定した。これら試料に白金コーティングを行い、日立製作所製の走査型電子顕微鏡(S−800)を用いて倍率1万倍で観察した。この際、中空糸膜の外周部から1μm以内の膜厚部分において10nm以上の直径の細孔の有無を確認した。
(7)結晶化ピーク
予め60℃の真空乾燥機で乾燥させた中空糸膜試料を用い、TA instruments製 示差走査熱量分析計(DSC Q100)を用いて、窒素下、変調温度条件として周期60秒、振幅±0.796℃、温度範囲20℃から250℃として5℃/分の昇温速度で昇温させた。測定の結果得られた非可逆成分(non reverse heat flow)から、結晶化に由来する発熱ピークの有無を確認した。
(8)中空糸膜の外径・内径
3mmφの孔を空けた2mm厚のSUS小板を用い、孔に適量の湿潤中空糸膜を詰めてカットすることで、中空糸膜の断面を露出させたサンプルホルダーを作成した。これをNikon製顕微鏡(ECLIPSE LV100)のステージに設置した後、Nikon製 画像処理装置(DIGITAL SIGHT DS−U2)およびCCDカメラ(DS−Ri1)を起動させた。画像解析ソフトとしてNIS Element D3.00 SP6を用い、画面に映る中空糸膜断面の外径および内径を、該解析ソフトの計測機能を用いて測定することで中空糸膜の外径および内径を算出した。
(9)降伏強度
島津製作所製 SHIMADZU AGS−J 1kNを用い、湿潤状態の中空糸膜の引張試験を行った。ロードセルは50Nとし、糸の固定および引っ張りには平チャックを用いた。チャックの初期のつかみ間距離は50mm、平チャックへの糸掛け時の糸への加重は0.03Nとしてセットした。糸の引っ張り速度は50mm/分とした。測定データは解析ソフト(TRAPEZIUM X ver.1.0.2.SP)を用いて、応力(MPa)、伸度(%)、および降伏強度(MPa)を算出した。
(10)降伏強度保持率(耐塩素、耐アルカリ)
ナカライテスク社の次亜塩素酸ナトリウム溶液を蒸留水で薄めて遊離塩素濃度100ppmとし、さらに同社の1N塩酸を用いてpH7に調整した塩素液を調製した。また、同社の1N水酸化ナトリウム水溶液を蒸留水で薄めてpH10のアルカリ液を調製した。これらに長さ20cmの20本束とした中空糸膜を浸漬した。塩素水溶液の温度は室温(約20℃)とし、アルカリ液の温度は40℃とした。遊離塩素濃度およびpHを一定に保ちながら12週間浸漬させた後、上述の降伏強度の測定と同じ方法で浸漬糸の降伏強度を測定した。降伏強度の保持率の算出式は次の通りである。
降伏強度保持率(%)=(浸漬前の中空糸膜の降伏強度[MPa]/浸漬後の中空糸膜の降伏強度[MPa])×100
(11)透水量
中空糸膜を束ねて、プラスチック製スリーブに挿入した後、熱硬化性樹脂をスリーブに注入し、硬化させ封止した。熱硬化性樹脂で硬化させた中空糸膜の端部を切断することで中空糸膜の開口面を得て、外径基準の膜面積がおよそ0.025mの評価用モジュールを作製した。この評価用モジュールを供給水タンク、ポンプからなる膜性能試験装置に接続し、性能評価した。
塩化ナトリウム濃度1,500mg/Lの供給水溶液を、25℃、圧力3.0MPaで中空糸膜の外側から内側へ向かって濾過して装置をおよそ1時間運転する。その後、中空糸膜の開口面より膜透過水を採取して、電子天秤(島津製作所 LIBROR EB−3200D)で透過水重量を測定した。透過水重量は、下記式で25℃での透過水量に換算した。
透過水量(L)=透過水重量(kg)/0.99704(kg/L)
透水量(FR)は下記式より算出する。
FR[L/m/日]=透過水量[L]/外径基準膜面積[m]/採取時間[分]×(60[分]×24[時間])
(12)塩除去率
前記透水量測定で採取した膜透過水と、同じく透水量の測定で使用した塩化ナトリウム濃度1,500mg/L供給水溶液から電気伝導率計(東亜ディーケーケー社CM−25R)を用いて塩化ナトリウム濃度を測定した。
塩除去率は下記式より算出する。
塩除去率[%]=(1−膜透過水塩濃度[mg/L]/供給水溶液塩濃度[mg/L])×100
(実施例1)
3,3’−ジスルホ−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン2ナトリウム塩(略号:S−DCDPS)11.5mol%、2,6−ジクロロベンゾニトリル(略号:DCBN)38.5mol%、4,4’−ビフェノール50mol%を重合して得たスルホン化ポリアリールエーテルスルホン系ポリマー(略号:SPN−23)を、予め110℃12時間乾燥させた後で77重量部量りとり、続いてN−メチル−2−ピロリドン(略号:NMP)124.4重量部、エチレングリコール(略号;EG)18.6重量部をセパラブルフラスコに投入し、170℃で3時間撹拌することで均一なポリマー濃度35重量%のポリマー溶液を得た。
このポリマー溶液を紡糸原料(ドープ)とし、プランジャー型押出機能を有する紡糸装置に仕込んだ。ドープを150℃に保ちチューブインオリフィス型ノズルまで送液させ、スリット幅100ミクロン(外径400ミクロン、内径200ミクロン)のドープ吐出孔から0.18g/分の速度で吐出させた。内液はEGを用い、ギアポンプで0.07g/分の速度で送液し、110ミクロンの内液吐出孔から吐出させた。エアギャップ長を20mmとし、濃度3.5重量%の塩水からなる凝固浴に浸漬させた。凝固した中空糸膜を紡糸速度15m/分で引き取り、かせまき機またはワインダーで巻き取った。さらに、得られた中空糸膜サンプルを、濃度9.0重量%の塩水に浸漬させ、温度98℃、時間20分の条件でアニール処理を行った。膜の詳細と評価結果を表1に示す。
(実施例2)
実施例1で得た中空糸膜を、10重量%塩化リチウム水溶液に1晩浸漬させることにより、式[I]のスルホン酸基上のカウンターカチオン(X)をリチウムイオンに変化させた。膜の詳細と評価結果を表1に示す。
(実施例3)
実施例1で得た中空糸膜を、10重量%塩化カリウム水溶液に1晩浸漬させることにより、式[I]のスルホン酸基上のカウンターカチオン(X)をカリウムイオンに変化させた。膜の詳細と評価結果を表1に示す。
(実施例4)
3,3’−ジスルホ−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン2ナトリウム塩(略号:S−DCDPS)11.5mol%、2,6−ジクロロベンゾニトリル(略号:DCBN)38.5mol%、4,4’−ビフェノール50mol%を重合して得たスルホン化ポリアリールエーテルスルホン系ポリマー(略号:SPN−23)を2N−濃硫酸に24時間浸漬し、その後水洗後の水が中性になるまでポリマーを水洗させることにより、スルホン酸基上のカウンターカチオンをプロトンに変換させたSPN−23(X=H型)を用いたこと、および紡糸時の凝固液を7重量%の塩水とし、かつ凝固液通過後すぐに水洗工程を設けたこと、さらに紡糸後のアニール処理に熱水を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で中空糸膜を得た。膜の詳細と評価結果を表1に示す。
(実施例5)
式[I]のnを12とした以外は、実施例1と同じ方法で中空糸膜を得た。膜の詳細と評価結果を表1に示す。
(実施例6)
式[I]のnを45とした以外は、実施例1と同じ方法で中空糸膜を得た。膜の詳細と評価結果を表1に示す。
(実施例7)
ドープの組成において、SPN−23ポリマーを73重量部、NMPを110.5重量部、EGを16.5重量部としたこと以外は、実施例1と同様の方法で中空糸膜を得た。膜の詳細と評価結果を表1に示す。
(実施例8)
ドープの組成において、SPN−23ポリマーを77重量部、NMPを110.7重量部、EGを12.3重量部としたこと以外は、実施例1と同様の方法で中空糸膜を得た。膜の詳細と評価結果を表1に示す。
(実施例9)
エアギャップ長を10mmとしたこと以外は、実施例1と同様の方法で中空糸膜を得た。膜の詳細と評価結果を表1に示す。
(実施例10)
エアギャップ長を400mmとしたこと以外は、実施例1と同様の方法で中空糸膜を得た。膜の詳細と評価結果を表1に示す。
(比較例1)
実施例1で作製したポリマーに濃度が40重量%(内、NMP対EGの重量比で90対10の混合溶媒を含有)になるよう溶媒を仕込んで攪拌し、紡糸に適する均一なポリマー溶液を得た。このポリマー溶液を紡糸原料に用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で中空糸膜を得た。膜の詳細と評価結果を表1に示す。
(比較例2)
ドープのポリマー濃度を32.5重量%(内、NMP対EGの重量比で80対20の混合溶媒を含有)としたこと以外は、実施例1と同様の方法で中空糸膜を得た。膜の詳細と評価結果を表1に示す。
(比較例3)
エアギャップ長を3mmとしたこと以外は、実施例1と同様の方法で中空糸膜を得た。膜の詳細と評価結果を表1に示す。
(比較例4)
エアギャップ長を700mmとし、さらにエアギャップ内の空気を加熱できる管状ヒーターを取り付け、エアギャップの雰囲気温度を100℃としたこと以外は、実施例1と同様の方法で中空糸膜を得た。膜の詳細と評価結果を表1に示す。
(比較例5)
4,4’−ジクロロジフェニルスルホン2ナトリウム塩(略号:DCDPS)11.5mol%、2,6−ジクロロベンゾニトリル(略号:DCBN)38.5mol%、4,4’−ビフェノール50mol%を重合して得たポリアリールエーテルスルホン系ポリマーを、予め80℃、24時間真空乾燥させた後で77重量部量りとり、続いてN−メチル−2−ピロリドン(略号:NMP)124.4重量部、エチレングリコール(略号;EG)18.6重量部をセパラブルフラスコに投入し、100℃で3時間撹拌することで均一な濃度35重量%のポリマー溶液を得た。このポリマー溶液のドープ温度および紡糸温度を60℃に変更した以外は、実施例1と同様の方法で中空糸膜を得た。膜の詳細と評価結果を表1に示す。
(比較例6)
スルホン酸基含有量を下げた(式[I]のn=8.9)ポリマーを使用した以外は、実施例1と同様の方法で中空糸膜を得た。膜の詳細と評価結果を表1に示す。
(比較例7)
スルホン酸基含有量を上げた(式[I]のn=52.3)ポリマーを使用したことと、紡糸時の凝固液として7.0重量%の塩水を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で中空糸膜を得た。膜の詳細と評価結果を表1に示す。
(比較例8)
三酢酸セルロース(CTA、ダイセル化学工業、LT35)41重量部、NMP49.9重量部、EG8.8重量部、安息香酸0.3重量部を180℃で均一に溶解して製膜原液(ドープ)を得た。得られた製膜原液を減圧下で脱泡した後、アーク型ノズルより163℃で外気と遮断された空間(エアギャップ、AG)中に吐出し、AG通過時間約0.03秒を経て、NMP:EG:水=4.25:0.75:95からなる12℃の凝固浴に浸漬した。引続き、多段傾斜桶水洗方式で中空糸膜の洗浄を行い、湿潤状態のまま振り落とした。得られた中空糸膜を60℃の水に浸漬し、40分間アニール処理を行った。膜の詳細と評価結果を表1に示す。
(比較例9)
無水ピペラジン8.062重量部、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン54.23重量部を窒素導入管、温度計、撹拌機を備えた500Lの反応器に窒素気流下で投入した。続いて、反応器中に、酸捕捉剤としてピリジン50重量部、反応溶媒としてN−メチルピロリドン(NMP)470重量部を加え、充分撹拌し均一溶液とした。該溶液を約5℃まで冷却した後、該溶液中にテレフタル酸ジクロリド63.342重量部を投入し、重縮合反応を開始した。冷却下で約30分間、さらに室温下で約30分間撹拌した。反応終了後、反応溶液を1000重量部の水中に投入し、ポリマーを沈澱析出させた。次いで、生成ポリマーの細粉化、純水による純粋物の洗浄を4回繰り返し、ポリマー中の未反応物及び溶媒類の除去をおこなった。最後に、ポリマーの乾燥を約80〜100℃の熱風で約48時間乾燥した。
上記で合成したポリアミド(37重量部)、N,N−ジメチルアセトアミド(57.11量部)、NMP5.79重量部、無水ポリグリセリン(数平均分子量=480,3.7重量部)、塩化カルシウム6水和物(2.75重量部)からなる製膜原液(ドープ)を、アーク(3点ブリッジ)型ノズル(温度:130℃)から吐出し、約10℃の水中に導き、外径約137ミクロン、中空率約16%の中空糸膜を得た。さらに膜中に残留する溶媒およびポリグリセリンの除去を目的として、中空糸膜を水中に一昼夜浸漬させた。膜の詳細と評価結果を表1に示す。
実施例1〜10、比較例1〜9の膜の詳細と評価結果を表1に示す。
表1の結果から明らかなように、実施例1〜10はかん水淡水化処理に適する圧力3.0MPaにおける塩除去性と透水量が十分に実用レベルを満たしている。比較例1では、製膜原液のポリマー濃度が高いため、中空糸膜中のポリマー密度を全体的に上昇させた結果、塩除去性は上昇するが透水性が低下した。比較例2は、製膜原液のポリマー濃度を下げたことで塩除去性が93%未満となり、かん水淡水化処理の用途に向かない。比較例3では、エアギャップを3mmまで短くして紡糸を行ったが、塩除去性能が低下し、望む性能を発現しなかった。比較例4では、エアギャップを700mmとして、かつエアギャップ内の雰囲気温度を100℃としたが、塩除去性能および透水性の著しい低下が見られた。比較例5では、スルホン化をしていないポリアリールエーテルスルホンからなる中空糸膜を用いたが、膜中の細孔径が大きくなり塩除去性が発現しなかった。比較例6および7では、式[I]のnをそれぞれ本発明の範囲の下限外および上限外にしたところ、両者ともに透水性は上昇したが塩除去性が著しく劣る結果となった。比較例8では、三酢酸セルロースを用いて中空糸膜を用いたところ、耐アルカリ性に関する降伏強度保持率が低下しており、耐アルカリ性に劣る結果となった。比較例9は、ポリアミドからなる中空糸膜を用いたが、耐塩素性に関する降伏強度保持率が著しく低下しており、耐塩素性に劣る結果となった。
本発明の逆浸透膜は、耐薬品性に優れる素材を使用しながら、塩除去性と透水性を高いレベルで両立しているので、かん水淡水化の処理に極めて有用である。

Claims (7)

  1. 下記一般式[I]で表される構成成分を含むスルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマーからなる逆浸透膜であって、含水状態の前記逆浸透膜を用いて膜中の水分子を測定したプロトン核磁気共鳴スペクトルにおいて、束縛水由来のスペクトルピークトップのケミカルシフトA(ppm)とバルク水由来のスペクトルピークトップのケミカルシフトB(ppm)との関係がB−0.42≦A<B−0.36を満たすことを特徴とするかん水淡水化用の逆浸透膜。
    式中、XはHまたは1価のカチオン種であり、nは10以上50以下の整数である。
  2. スルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマーの対数粘度が1.0〜2.3dL/gであることを特徴とする請求項1に記載の逆浸透膜。
  3. スルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマーのスルホン酸基含有量が0.5〜2.3meq/gであることを特徴とする請求項1または2に記載の逆浸透膜。
  4. 示差走査熱量分析法による観察において、結晶化ピークが見られないことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の逆浸透膜。
  5. 逆浸透膜が内径30〜60μm、外径120〜150μmの中空糸膜であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の逆浸透膜。
  6. 中空糸膜の外周部から1μm以内の膜厚部分において10nm以上の直径の細孔が観察されないことを特徴とする請求項5に記載の逆浸透膜。
  7. 湿潤状態における降伏強度が7MPa以上15MPa未満であることを特徴とする請求項5または6に記載の逆浸透膜。
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