しかし、上記特許文献1に開示された車両停止装置においては、車両を停止させるにあたり、車両を道路端の路肩などに停止させるように制御を行っている。このため、路肩などが設けられていない道路においては、他車両の通行の妨げとならないように車両を停止させることが難しくなるという問題があった。
さらに、路肩がある道路であっても、路肩を越えて車両が停止しているとしても、停止位置によっては車両が歩行者などの通行の妨げとなることがある。さらには、路肩がない場合でも、道路の外側にガードレールや壁などの物体がある場合には、これらの物体に接近しすぎる場合がある。このため、自車両における道路の外側へのはみ出し量を少なくすることが求められるものであった。
そこで、本発明の課題は、他車両の通行の妨げとならず、道路の外側へのはみ出しが少ない状態で自車両を停止させることができる運転支援装置および緊急退避支援装置を提供することにある。
上記課題を解決した本発明に係る運転支援装置は、自車両が走行路で停止する際の運転支援を行う運転支援装置であって、停止時における自車両の停止状態を取得する停止状態取得手段と、自車両の周辺における区画線を取得する区画線情報取得手段と、自車両の停止状態情報と、区画線との相対関係に基づいて、自車両の第1の停止状態の区画線に対するズレを判定する停止状態判定手段と、停止状態判定手段によって、自車両の第1の停止状態が区画線に対してズレがあると判定された場合に、ズレが解消された第2の停止状態に自車両の第1の停止状態を修正する停止状態修正手段と、を備えることを特徴とする。
本発明に係る運転支援装置は、自車両の停止状態が区画線に対してズレがあると判定された場合に、ズレが解消された第2の停止状態に自車両の第1の停止状態を修正する。このため、他車両の通行の妨げとならず、道路の外側へのはみ出しが少ない状態で自車両を停止させることができる。なお、本明細書における「停止状態」には、「停止位置」および「区画線に対する傾き」が含まれる。
ここで、停止状態修正手段は、区画線と自車両の向きとが略平行となり、かつ自車両の停車位置が区画線を一端とする走行路の中央よりも区画線側となる位置である第2の停止状態に第1の停止状態を修正するようにすることができる。
このように第2の停止状態に第1の停止状態を修正することにより、確実に他車両の通行の妨げとならず、道路の外側へのはみ出しが少ない状態で自車両を停止させることができる。
また、停止状態取得手段は、自車両の停止状態として自車両の向きを取得し、停止状態判定手段は、区画線に対する自車両の傾きが所定の傾きしきい値を超える場合に、ズレがあると判定するようにすることができる。
このように、区画線に対する自車両の傾きが所定の傾きしきい値を超える場合にズレがあると判定することにより、停止状態のズレを一定の基準で判定することができ、したがって停止状態のズレを精度よく判定することができる。
さらに、停止状態取得手段は、自車両の停止状態として区画線から自車両の停止位置までの距離を取得し、停止状態判定手段は、区画線から自車両の停止位置までの距離が所定の距離しきい値を超える場合に、ズレがあると判定するようにすることができる。
このように、区画線から自車両の停止位置までの距離が所定の距離しきい値を超える場合に、ズレがあると判定することにより、停止状態のズレを一定の基準で判定することができ、したがって停止状態のズレを精度よく判定することができる。
また、停止状態取得手段は、自車両の停止状態として自車両の停止位置を取得し、停止状態判定手段は、自車両の停止位置が区画線上であり、自車両が路肩または対向車線にはみ出している場合に、ズレがあると判定するようにすることができる。
このように、自車両の停止位置が区画線上である場合、自車両は路肩または対向車線にはみ出していることとなり、路肩の外側の歩行者や対向車線を走行する他車両の移動の妨げとなることがある。したがって、この場合に停止位置にズレがあると判定することにより、他車両の通行の妨げとならず、道路の外側へのはみ出しが少ない状態で自車両を停止させることができる。
さらに、走行路の両側に区画線が設定されており、停止状態修正手段は、走行路の両側に設定された区画線の間に、自車両の停止位置を修正するようにすることができる。
このように、走行路の両側に設定された区画線の間に、自車両の停止位置を修正することにより、停止する自車両は、対向車線や道路の外側にはみ出さないようにすることができる。したがって、他車両の通行の妨げとならず、道路の外側へのはみ出しが少ない状態で自車両を停止させることができる。
また、停止状態修正手段は、両側の区画線の一方の区画線と、自車両の側方面と、が重なる位置に、自車両の停止位置を修正するようにすることができる。
このように、両側の区画線の一方の区画線と、自車両の側方面と、が重なる位置に、自車両の停止位置を修正することにより、自車両が走行する走行路を走行する後続の他車両に対しても、その走行の妨げとなることを防止することができる。
さらに、停止状態取得手段は、自車両の停止状態として自車両の停止位置を取得し、停止状態判定手段は、自車両の停止位置が、走行路に対する対向車線に侵入しているか否かを判定し、停止状態修正手段は、停止状態判定手段によって自車両が対向車線に侵入していると判断された場合に、自車両の停止位置を走行路内に修正するようにすることができる。
このように、自車両が対向車線に侵入していると判断された場合に、自車両の停止位置を走行路内に修正することにより、対向車線に自車両がはみ出さないようにすることができる。したがって、他車両の通行の妨げとならず、道路の外側へのはみ出しが少ない状態で自車両を停止させることができる。
また、区画線として、走行路の外側に外側区画線が設定されており、停止状態判定手段は、自車両が外側区画線上にあり、かつ区画線に対する自車両の傾きが、所定の外側傾きしきい値を超える場合に、ズレがあると判定するようにすることができる。
このように、走行路の外側に外側区画線が設定されている場合においても、自車両が外側区画線上にあり、かつ区画線に対する自車両の傾きが、所定の外側傾きしきい値を超える場合に、ズレがあると判定することにより、自車両のズレを確実に判定することができる。
さらに、停止状態修正手段は、区画線と自車両の向きとが略平行であり、かつ自車両の停車位置が区画線上となる位置である第2の停止状態に第1の停止状態を修正するようにすることができる。
このように、区画線と自車両の向きとが略平行であり、かつ自車両の停車位置が区画線上となる位置である第2の停止状態に第1の停止状態を修正することにより、自車両の走行路を走行する他車両の妨げとなることを防止できるとともに、道路の外側における路肩やガードレール、壁などに近づきすぎないようにすることができる。
また、自車両の周囲における障害物の位置を検出する障害物位置検出手段をさらに備え、停止状態修正手段は、障害物の位置を避けて、第2の停止状態に修正するようにすることができる。
このように、障害物の位置を避けて、第2の停止状態に修正することにより、道路の外側における障害物に近づきすぎない状態で自車両を停止させることができる。
さらに、自車両を駆動制御する駆動制御手段をさらに備え、駆動制御手段は、停止状態修正手段によって修正された自車両の第2の停止状態となるように自車両を駆動制御するようにすることができる。
このように、停止状態修正手段によって修正された自車両の第2の停止状態となるように自車両を駆動制御することにより、自車両が自発的に所定の位置に移動するので、ドライバにかかる負担を軽減することができる。
また、自車両の移動進路をガイドする移動進路ガイド手段をさらに備え、移動進路ガイド手段は、停止状態修正手段によって修正された自車両の第2の停止状態となるように、自車両の移動進路をガイドするようにすることができる。
このように、停止状態修正手段によって修正された自車両の第2の停止状態となるように、自車両の移動進路をガイドすることにより、ドライバの運転負荷を軽減することができる。
他方、上記課題を解決した本発明に係る緊急退避支援装置は自車両の走行を緊急的に中断し、自車両を自車両が走行する走行路における所定の退避位置に退避させる緊急退避支援装置であって、緊急停止時における自車両の停止状態を取得する停止状態取得手段と、自車両の周辺における区画線を取得する区画線情報取得手段と、自車両の停止状態情報と、区画線との相対関係に基づいて、自車両の第1の停止状態の区画線に対するズレを判定する停止状態判定手段と、停止状態判定手段によって、自車両の第1の停止状態が区画線に対してズレがあると判定された場合に、ズレが解消された第2の停止状態に自車両の第1の停止状態を修正する停止状態修正手段と、を備えることを特徴とする。
本発明に係る緊急退避支援装置においては、走行を緊急的に中断して退避させるにあたり、ズレが解消された第2の停止状態に自車両の第1の停止状態を修正している。このため、緊急退避時において、確実に他車両の通行の妨げとならず、道路の外側へのはみ出しが少ない状態で自車両を停止させることができる。
ここで、停止状態修正手段は、区画線と自車両の向きとが略平行となり、かつ自車両の停車位置が区画線を一端とする走行路の中央よりも区画線側となる位置である第2の停止状態に第1の停止状態を修正するようにすることができる。
このように第2の停止状態に第1の停止状態に修正することにより、確実に他車両の通行の妨げとならず、道路の外側へのはみ出しが少ない状態で自車両を停止させることができる。
本発明に係る運転支援装置および緊急退避支援装置によれば、他車両の通行の妨げとならず、道路の外側へのはみ出しが少ない状態で自車両を停止させることができる。
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図示の便宜上、図面の寸法比率は説明のものと必ずしも一致しない。
図1は、本発明の実施形態に係る緊急退避支援装置の機能構成を示すブロック図である。本実施形態に係る緊急退避支援装置Mは、自車両が走行路で停止する際の運転支援を行う運転支援装置であり、さらには、自車両の走行を緊急的に中断し、自車両を自車両が走行する走行路における所定の退避位置に退避させる緊急退避支援装置である。
図1に示すように、緊急退避支援装置Mは、環境情報検出部1、車両情報検出部2、ドライバ状態認識装置3、および判定処理ECU(Electronic Control Unit)4を備えている。また、緊急退避支援装置Mは、運転支援HMI(Human Machine Interface)5、各種運転支援システム6、および各種走行制御装置7を備えている。緊急退避支援装置Mは、自車両に搭載されている。
緊急退避支援装置Mにおける環境情報検出部1は、GPS(Global Positioning System)11、車載通信機12、および前方センサ・後側方センサ13を備えている。さらに、環境情報検出部1は、ナビゲーションシステム14、および白線認識カメラ15を備えている。
GPS11は、複数のGPS衛星からの信号をGPS受信機で受信し、各受信信号の相違から自車両の位置を測位する。また、GPS11は、測位した自車両の位置に関する自車両位置情報を判定処理ECU4に送信する。車載通信機12は、他車両との車車間通信や、光ビーコン等の路側インフラストラクチャとの路車間通信を行う通信機である。車載通信機12は、他車両や路側インフラストラクチャとの間の通信で得られた通信情報を判定処理ECU4に送信する。
前方センサ・後側方センサ13は、自車両の周辺における歩行者、自転車、二輪車、車両などの移動体の位置や速度および走行路の路側などに設けられる店舗等の施設の位置を検出している。前方センサ・後側方センサ13は、たとえばミリ波レーダ、超音波ソナーによって構成されており、検出した移動体の位置や速度および施設の位置に関する周辺情報を判定処理ECU4に送信する。
ナビゲーションシステム14は、GPS11により取得された自車両の位置情報と、所定の記憶部に記憶された地図情報とを用いて、自車両の経路案内を行う手段である。ナビゲーションシステム14は、経路案内に関するナビゲーション情報を判定処理ECU4に送信する。
白線認識カメラ15は、自車両に搭載された撮像手段によって撮像した自車両の周囲の画像から、本発明の走行路となる自車両が走行する車線(以下「自車両走行車線」という)の白線を認識する。白線は、本発明の区画線となる。また、白線としては、道路の対向車線同士を仕切る中央線および道路端の外側区画線が含まれる。
白線認識カメラ15は、認識した白線に関する白線情報を判定処理ECU4に送信する。なお、環境情報検出部1から判定処理ECU4に送信される自車両位置情報、通信情報、周辺情報、ナビゲーション情報、および白線情報を総称して環境情報ということがある。また、環境情報検出部1は、走行路の周辺環境を取得する走行路周辺環境取得手段を構成する。さらに、環境情報検出部1は、自車両の周辺における区画線を取得する区画線情報取得手段を構成する。
また、環境情報検出部1は、検出した環境情報に基づいて、停止時における自車両の停止状態を取得する。自車両の停止状態としては、周囲の情報、たとえば中央線や外側区画線と自車両の向きとから得られる中央線や外側区画線に対する自車両の傾きやこれらの線と自車両との距離などが含まれる。ここでの停止状態が本発明の第1の停止状態となる。環境情報検出部11は、検出した自車両の停止状態に関する停止状態情報を判定処理ECU4に送信する。環境情報検出部1は、停止状態取得手段を構成する。
さらに、環境情報検出部1は、自車両の周囲における障害物を検出し、検出した障害物に関する障害物情報を判定処理ECU4に送信する。環境情報検出部1は、本発明の障害物位置検出手段を構成する。ここでの障害物としては、自車両の周囲を移動する他車両や歩行者などの移動体を含むとともに、壁や建築物などの構造物、道路標識などの静止物をも含む。
車両情報検出部2は、自車両の走行状態を検出する各種センサとして、舵角センサ21、車速センサ22、および加速度センサ23を備えている。舵角センサ21は、自車両のステアリング角を検出している。舵角センサ21は、検出した自車両のステアリング角に関するステアリング角情報を判定処理ECU4に送信する。
また、車速センサ22は、車軸の回転速度を検出することによって、自車両の車速を検出している。車速センサ22は、検出した自車両の車速に関する車速情報を判定処理ECU4に送信する。さらに、加速度センサ23は、自車両の加速度を検出しており、検出した加速度に関する加速度情報を判定処理ECU4に送信する。なお、ステアリング角情報、車速情報、および加速度情報を総称して車両情報ということがある。
ドライバ状態認識装置3は、自車両のドライバの状態を認識する装置であり、たとえば自車両のドライバが居眠りや発作等による意識低下状態であるか否かを認識している。生理計測装置31、視線・顔向き計測装置32、システム起動/解除スイッチ33、着座センサ34、およびドライバ状態認識部35を備えている。
生理計測装置31は、自車両のドライバの心拍数、脈拍数、呼吸リズム等を計測しており、これらの計測結果に基づいてドライバの生理状態を検出している。生理計測装置31は、検出したドライバの生理状態に関するドライバ生理状態情報をドライバ状態認識部35に出力する。
視線・顔向き計測装置32は、ドライバの頭部をカメラで撮像し、撮像した画像から、眼球、顔の動き等を検出し、その検出結果に基づいてドライバの視線および顔向きを検出している。視線・顔向き計測装置32は、検出したドライバの視線および顔向きに関するドライバ視線情報をドライバ状態認識部35に出力する。
システム起動/解除スイッチ33は、ドライバの手が届く位置に設けられたスイッチであり、緊急退避支援装置Mによる緊急退避制御を開始するためのスイッチである。システム起動/解除スイッチ33は、解除状態のときに、主にドライバの操作によって押下されて起動状態となり、起動状態のときに、主にドライバの操作によって押下されて解除状態となる。システム起動/解除スイッチ33がON状態となると、システム起動/解除スイッチ33は緊急退避制御の開始を示す緊急退避開始信号を判定処理ECU4に送信する。
着座センサ34は、ドライバが着座するシートに設けられており、ドライバがシートに着座しているか否かといった情報や、着座している場合の着座位置などのドライバの着座状態を検出している。着座センサ34は、検出したドライバの着座状態情報をドライバ状態認識部35に出力する。
ドライバ状態認識部35は、生理計測装置31から出力された生理状態情報、視線・顔向き計測装置32から出力されたドライバ視線情報、および着座センサ34から出力された着座状態情報に基づいて、ドライバ状態を認識する。ここでのドライバ状態は、ドライバが正常に運転操作を行うことができるか否かの状態である。たとえば、生理状態における心拍数や脈拍数が所定のしきい値以上となったり、ドライバ視線情報から得られるドライバの視線移動の回数が所定のしきい値以上となったりした場合に、ドライバが意識低下状態となったと認識する。ドライバ状態認識部35は、認識したドライバ状態に関するドライバ状態情報を判定処理ECU4に送信する。
判定処理ECU4は、緊急退避支援装置Mを統括して制御し、緊急退避支援を実行する。判定処理ECU4は、ドライバ状態認識部35から送信されたドライバ状態情報に基づいて、ドライバ状態が意識低下状態であるか否かを判断する。その結果、ドライバ状態が意識低下状態であると判断した場合には、自車両の緊急退避制御を行う。また、システム起動/解除スイッチ33から緊急退避開始信号が送信された場合にも、自車両の緊急退避制御を行う。
判定処理ECU4は、緊急退避制御を行うにあたり、自車両を緊急停止させる。自車両を緊急停止させるときの停止状態は、自車両の走行状態に基づいて決定し、自車両がもっとも早期に停止できる停止状態として緊急停止する。このため、その停止状態は周囲環境によらずに決定される。
また、判定処理ECU4では、環境情報検出部1から送信された停止状態情報に基づいて、緊急停止時における自車両の停止状態を取得する。ここで取得した停止状態と、白線との相対関係に基づいて、停止状態が不適切停止状態である否かを判断する。判定処理ECU4は、自車両の停止状態の区画線に対するズレを判定する停止状態判定手段を構成する。
不適切停止状態とは、自車両の停止状態が、中央線や外側線などの白線(区画線)に対してズレがある停止状態である。不適切停止状態としては、その停止位置が、自車両走行車線の中央近傍となる場合、対向車線に侵入する場合、外側線をはみ出して路肩に侵入する場合が挙げられる。
さらに、判定処理ECU4は、自車両の停止状態が不適切状態であると判断した場合には、自車両の白線に対するズレを解消するために、自車両の停止状態の修正を行う。判定処理ECU4は、自車両の停止状態を修正する停止状態修正手段を構成する。また、ズレが解消された停止状態が本発明の第2の停止状態となる。
停止状態の修正を行うにあたり、判定処理ECU4は、自車両が白線に対して傾いていると判断するための傾きしきい値、外側傾きしきい値、および自車両が白線から離れすぎていると判断するための距離しきい値をあらかじめ記憶している。これらのしきい値を用いて自車両の白線に対する状態を検出し、停止状態の修正を行う。白線に対する自車両の傾きは、白線と自車両の向きがなす角度となる。
さらに、判定処理ECU4は、停止状態を修正するにあたっては、白線と自車両の向きとが略平行となり、かつ自車両の停車位置が白線を一端とする走行路の中央よりも前記区画線側となる位置に停止状態を修正する。判定処理ECU4は、緊急退避制御を行うにあたり、緊急退避を行う態様に関する緊急退避制御情報を運転支援HMI5および各種運転支援システム6に送信する。
運転支援HMI5は、ディスプレイ51、スピーカ52、およびランプ類53を備えている。運転支援HMI5は、判定処理ECU4から送信された緊急退避制御情報に基づいて、ディスプレイ51、スピーカ52、およびランプ類53の各インターフェイスを作動させる。
ディスプレイ51は、たとえば自車両における車室内に設けられており、緊急退避制御情報の内容に応じた各種情報を表示する。スピーカ52は、たとえば自車両における車室内に設けられており、緊急退避制御情報の内容に応じた各種情報を音声で出力する。各種ランプ類53としては、左右ウィンカやハザードランプ等が備えられており、緊急退避制御情報に応じて点灯・点滅状態が制御される。
自車両には、各種運転支援システム6として、ACC(Adaptive Cruise Control)61、PCS(Pre-Crash Safety system)62、LKA(Lane Keeping Assist)63、およびVSC(Vehicle Stability Control)64が設けられている。各種運転支援システム6は、判定処理ECU4から送信された緊急退避制御情報に基づいて、自車両の走行を終了させて極力安全に自車両を停止させるとともに、ドライバの救助を極力容易に行うことができるように自車両の制御態様を決定する。各種運転支援システム6は、自車両の制御態様が決定したら、決定した制御態様に応じた自車両制御情報を各種走行制御装置7に送信する。
自車両には、各種走行制御装置7として、ブレーキ制御部71、アクセル制御部72、ステアリング制御部73、およびパーキングブレーキ制御部74が設けられており、各種運転支援システム6から送信される自車両制御情報に基づいて、自車両の走行制御を行う。ここでの自車両の走行制御としては、インテリジェントパーキングシステム(IPA:intelligent parking assist)による制御が行われる。あるいは、その他には、電子制御ブレーキシステム(ECB:Electric Control Braking system)や電動パーキングブレーキ制御(EPB:Electronic Parking Brake)による制御が行われる。
本実施形態に係る緊急退避支援装置Mでは、自車両を運転するドライバの意識低下が生じた場合に、自車両を緊急停止させる支援を行う。たとえば、図2に示すように、ドライバの意識が徐々に低下している場合、ドライバの意識が所定のしきい値を下回った場合に、緊急退避支援を行う。
緊急退避支援を行う際には、最初に事前説明を行った後、ドライバに主権委譲の判断について、ドライバの同意確認を行う。この時点で、ドライバの運転操作について一部の制限がかけられる。たとえば、ドライバがアクセルペダルを踏んだ場合でも、自車両が所定の速度以上とならないように制御される。
主権委譲についての同意を確認できた場合には、ドライバの運転操作を全面的に受け付けず、自車両を停止させるための減速制御を行う。このとき、ドライバに対して、減速制御を行っている旨の状況説明を行う。一方、緊急退避支援が開始された以後は、適宜自車両の周囲に対して適宜報知、通報が行われる。
その後、自車両が停止したときに停止状態を保持する停止保持を行う。停止保持が行われている間、ドライバに対して事後説明を行う。また、本実施形態では、停止保持が行われている間に、自車両の停止状態を判断し、自車両の停止状態が不適切状態である場合には、自車両の停止状態を修正する。
次に、本発明の実施形態に係る緊急退避支援装置の動作について説明する。図3は、本実施形態に係る緊急退避支援装置の動作手順を示すフローチャートである。図3に示すように、本実施形態に係る緊急退避支援装置Mにおいては、環境情報検出部1において検出した環境情報および車両情報検出部2で検出した車両情報を取得する(S11)。
次に、ドライバ状態認識装置3において、自車両を運転するドライバのドライバ状態を取得する(S12)。ドライバ状態認識装置3は、認識したドライバ状態を判定処理ECU4に送信する。続いて、判定処理ECU4において、ドライバ状態認識装置3から送信されたドライバ状態に基づいて、ドライバが意識低下状態にあるか否かを判断する(S13)。
その結果、ドライバが意識低下状態にないと判断した場合には、ドライバは、通常通り自車両の運転を行うことができると判断できるため、緊急退避支援装置における処理を終了する。一方、ドライバが意識低下状態にあると判断した場合には、このままドライバによる運転が継続されると、自車両に障害物が接触したり、自車両が自車両走行車線から外れて走行したりする可能性が大きくなってくる。このため、緊急退避支援装置においては、自車両を停止させる制御を開始する。
自車両停止させるにあたり、まず、自車両の走行状態に基づいて、自車両が極力早期に停止できる停止状態を算出し、算出した停止状態となるように自車両を移動させて停止させる。ここで、自車両の停止状態がたとえば自車両走行車線を塞ぐような停止状態となったり、中央線や外側線からはみ出すなどの停止状態となったりする場合には、他車両の走行を妨げたり、他車両等の障害物を接触する可能性が高まったりする。自車両の停止状態は、このような不適切状態となっているか否かを判断する(S14)。不適切状態としては、自車両走行車線を塞いでいる状態、自車両が対向車線に侵入している状態、および自車両が路外にはみ出している状態がある。
その結果、自車両の停止状態が不適切状態でないと判断した場合には、算出した停止状態でそのまま自車両を停止させて緊急退避制御を終了する。一方、自車両の停止状態が不適切状態であると判断した場合には、自車両の停止状態を判断し(S15)、停止状態に応じて停止状態の修正を行う。
ここで、自車両が自車両走行車線を塞いでいると判断した場合には、第1停止状態修正処理(S16)を行う。また、対向車線に侵入していると判断した場合には、第2停止状態修正処理を行う(S17)。さらに、路外にはみ出していると判断した場合には、第3停止状態修正処理を行う(S18)。
その後、緊急退避支援装置における処理を終了する。以下、各停止状態修正処理について説明する。図4は、第1停止状態修正処理の手順を示すフローチャート、図5は、第2停止状態修正処理の手順を示すフローチャート、図6は、第3停止状態修正処理の手順を示すフローチャートである。
第1停止状態修正処理は、自車両が自車両走行車線を塞いでいると判断した場合に実行される。図4に示すように、第1停止状態修正処理では、まず、白線に対する自車両の傾きを検出する(S21)。ここでの白線は、道路の対向車線同士を仕切る中央線でもよく、道路端の始外側区画線でもよい。ただし、通常は、中央線と外側区画線とは平行とされているため、自車両の傾きはどちらの白線に対しても共通となる。
次に、白線に対する自車両の傾きが所定の傾きしきい値を超えているか否かを判断する(S22)。その結果、白線に対する自車両の傾きが所定の傾きしきい値を超える場合には、自車両の停止状態を白線に対して略平行に修正し(S23)ステップS24に進む。また、白線に対する自車両の傾きが所定の傾きしきい値を超えていないと判断した場合には、そのままステップS24に進む。
続いて、自車両の停止位置が、自車両と白線との距離が所定の距離しきい値を超える位置となっているか否かを判断する(S24)。その結果、自車両の停止位置が、自車両と白線との距離が所定の距離しきい値を超えていないと判断した場合は、停止状態の修正は不要であるので、第1停止状態修正処理を終了する。
一方、自車両の停止位置が、自車両と白線との距離が所定の距離しきい値を超えていると判断した場合には、自車両から中央線までの距離が自車両から外側線までの距離よりも長いか否かを判断する(S25)。ここで、自車両から中央線までの距離が自車両から外側線までの距離よりも長いと判断した場合には、中央線を一端とする自車両が走行する車線の中央よりも外側線側であり、具体的には外側線の近傍位置であり、外側線に接する位置に自車両の停止位置を修正する(S26)。また、自車両から中央線までの距離が自車両から外側線までの距離よりも長くないと判断した場合には、中央線の近傍位置に自車両の停止位置を修正する(S27)。このように自車両の停止位置を修正することにより、自車両の停止位置に修正量を少なく済ませることができる。
自車両を中央線および外側線のどちらの白線に沿わせるかを判断したら、自車両の前部の向きが停止させる白線側を向いているか否かを判断する(S28)。その結果、自車両前部の向きが停止させる白線側を向いていると判断した場合には、停止位置を自車両の前方に設定する(S29)。一方、自車両前部の向きが停止させる白線側を向いていないと判断した場合には、停止位置を自車両の後方に設定する(S30)。こうして、第1停止状態修正処理を終了する。
たとえば、自車両M1が自車両の自車両走行車線を塞いで停止している状態として、図7(a)に示すように、自車両M1の前部が中央線側を向いている場合と、図7(b)に示すように、自車両M1の前部が外側線側を向いている場合とが考えられる。図7(a)に示す例では、自車両M1から中央線CLまでの距離が自車両から外側線SLまでの距離よりも短いため、自車両M1の停止位置を中央線CLに沿う位置に修正する。
また、自車両M1は、中央線側を向いている。このため、自車両M1の停止位置を中央線CLに略平行となり、かつ自車両の前方である第1修正位置P1に修正する。自車両M1を移動させる際には、たとえば各種走行制御装置7によるインテリジェントパーキングシステム(IPA)を利用した駆動制御を行うことができる。この場合、各種走行制御装置7が本発明の駆動制御手段を構成する。
一方、図7(b)に示す例では、図7(a)と同様車両M1から中央線CLまでの距離が自車両から外側線SLまでの距離よりも短いため、自車両M1の停止位置を中央線CLに略平行となる位置に修正する。このとき、自車両M1は、外側線側を向いている。このため、自車両M1の停止位置を中央線CLに沿い、かつ自車両の後方である第2修正位置P2に修正する。自車両M1を移動させる際には、たとえば各種走行制御装置7によるインテリジェントパーキングシステム(IPA)を利用することができる。
このように、自車両が自車両走行車線を塞いで自車両が停止してしまった場合に、中央線または外側線に略平行となり、中央線または外側線の近傍に自車両の停止位置を修正することにより、自車両走行車線を走行する後続車両が、停止している自車両を避けやすいようにすることができる。
さらに、停止状態を修正された後の自車両は、中央線に略平行となる状態で停止している。このため、たとえば自車両内に自車両のドライバや他の乗員が閉じ込められている場合などでも、ドライバや他の乗員の救助を行うために、自車両の外側から救助者が自車両に対して近寄りやすくすることができる。
また、自車両の停止状態を修正するにあたり、中央線または外側線の近い側の近傍に停止位置を修正するのではなく、常に外側線側の近傍に停止位置を修正することもできる。停止位置を外側線の近傍に修正することにより、停止中の自車両が、対向車線を走行する他車両のドライバの視線に入りにくくすることができる。
次に、第2停止状態修正処理について、図5を参照して説明する。第2停止状態修正処理は、自車両が対向車線に侵入していると判断した場合に行われる。図5に示すように、第2停止状態修正処理では、中央線に対する自車両の傾きを検出する(S31)。続いて、自車両の傾きが所定の傾きしきい値を超えているか否かを判断する(S32)。
その結果、中央線に対する自車両の傾きが所定の傾きしきい値を超えていると判断した場合には、自車両の停止状態を中央線に対して略平行に修正し(S33)、ステップS34に進む。また、中央線に対する自車両の傾きが所定の傾きしきい値を超えていないと判断した場合には、そのままステップS34に進む。
続いて、自車両の停止位置を中央線の近傍位置に設定する(S34)。ここでは、自車両は中央線上に停止して、対向車線にはみ出していると考えられる。このとき、外側線の近傍まで移動させるよりも中央線の近傍まで移動させる方が移動距離を短く済ませることができる。したがって、自車両の停止位置を中央線の近傍に設定する。
その後、対向車線に侵入しているのが自車両の後部側であるか否かを判断する(S35)。その結果、対向車線に侵入しているのが自車両の後部側であると判断した場合には、停止位置を自車両の前方に設定する(S36)。また、対向車線に侵入しているのが自車両の後部側でないと判断した場合には、停止位置を自車両の後方に設定する(S37)。こうして、第2停止状態修正処理を終了する。
たとえば、自車両が対向車線に侵入して停止している状態として、図8(a)に示すように、自車両M1の前部が対向車線に侵入している場合と、図8(b)に示すように、自車両M1の後部が対向車線に侵入している場合とが考えられる。図8(a)に示す例では、自車両M1を後退させた方が、自車両M1を前進させるよりも、自車両走行車線中における中央線CLに略平行となる位置に自車両M1を移動させる際の移動距離が短くなる。
このため、自車両M1の後方位置であって、自車両走行車線における中央線CLの近傍位置に第3修正位置P3を修正する。自車両M1を移動させる際には、第1停止状態修正処理と同様、たとえば各種走行制御装置7によるインテリジェントパーキングシステム(IPA)を利用することができる。
一方、図8(b)に示す例では、自車両M1を前進させた方が、自車両M1を後退させるよりも、自車両走行車線中における中央線CLに略平行となる位置に自車両M1を移動させる際の移動距離が短くなる。このため、自車両M1の後方位置であって、自車両走行車線における中央線CLの近傍位置に第4修正位置P4を修正する。自車両M1を移動させる際には、やはりたとえば各種走行制御装置7によるインテリジェントパーキングシステム(IPA)を利用することができる。
自車両M1が対向車線に侵入した状態で停止している場合、対向車線を走行する対向車両を運転するドライバは、対向車線に侵入した自車両M1を想定していることが少ないと考えられる。このため、対向車両が自車両M1に接触する可能性が高くなってしまう。したがって、自車両走行車線に自車両M1を移動させることにより、対向車両との接触を好適に防止することができる。
また、停止状態を修正された後の自車両M1は、中央線CLに略平行となる状態で停止している。このため、たとえば自車両M1内にドライバや他の乗員が閉じ込められている場合などでも、ドライバや他の乗員の救助を行うために、救助者が自車両M1に対して近寄りやすくすることができる。
続いて、第3停止状態修正処理について図6を参照して説明する。第3停止状態修正処理は、自車両が路外にはみ出していると判断した場合に行われる。図6に示すように、第3停止状態修正処理では、外側線に対する自車両の傾きを検出する(S41)。続いて、自車両の傾きが外側傾きしきい値を超えているか否かを判断する(S42)。
その結果、外側線に対する自車両の傾きが外側傾きしきい値を超えていると判断した場合には、自車両の停止状態を外側線に対して略平行に修正し(S43)、ステップS44に進む。また、外側線に対する自車両の傾きが外側傾きしきい値を超えていないと判断した場合には、そのままステップS44に進む。
続いて、自車両の停止位置を外側線の近傍位置に設定する(S44)。ここでは、自車両は外側線上に停止して、路外にはみ出していると考えられる。このとき、中央線の近傍まで移動させるよりも外側線の近傍まで移動させる方が移動距離を短く済ませることができる。したがって、自車両の停止位置を外側線の近傍に設定する。
その後、路外にはみ出しているのが自車両の後部側であるか否かを判断する(S45)。その結果、対向車線に侵入しているのが自車両の後部側であると判断した場合には、停止位置を自車両の後方に設定する(S46)。また、対向車線に侵入しているのが自車両の後部側であると判断した場合には、停止位置を自車両の後方に設定する(S37)。こうして、第3停止状態修正処理を終了する。
たとえば、自車両が路外にはみ出して停止している状態として、図9(a)に示すように、自車両M1の前部が路外にはみ出している場合と、図9(b)に示すように、自車両M1の後部が路外にはみ出している場合とが考えられる。図9(a)に示す例では、自車両M1を前進させた方が、自車両M1を後退させるよりも、外側線SLに略平行となる位置に自車両M1を移動させる際の移動距離が短くなる。
このため、自車両M1の前方位置であって、中央線CLの近傍位置に第5修正位置P5を修正する。自車両M1を移動させる際には、第1停止状態修正処理と同様、たとえば各種走行制御装置7によるインテリジェントパーキングシステム(IPA)を利用することができる。
一方、図9(b)に示す例では、自車両M1を後退させた方が、自車両M1を前進させるよりも、外側線SLに略平行となる位置に自車両M1を移動させる際の移動距離が短くなる。このため、自車両M1の前方位置であって、自車両走行車線における外側線SLの近傍位置に第6修正位置P6を修正する。自車両M1を移動させる際には、やはりたとえば各種走行制御装置7によるインテリジェントパーキングシステム(IPA)を利用することができる。
一般に、路外における路肩は狭いことが多いため、路肩に寄せすぎることは好ましくない。また、路外には溝などがあることもあり、自車両が転覆する可能性も生じる。その一方、自車両走行車線における中央等では、自車両走行車線を走行する後続車両との接触が懸念される。このため、外側線SLの内側であって、外側線SLの近傍に自車両を移動させることにより、路外へのはみ出しによる弊害や自車両走行車線を走行する後続車両との接触を好適に防止することができる。
また、停止状態を修正された後の自車両は、外側線SLに略平行となる状態で停止している。このため、たとえば自車両M1内に自車両のドライバや他の乗員が閉じ込められている場合などでも、ドライバや他の乗員の救助を行うために、自車両の外側から救助者が自車両に対して近寄りやすくすることができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。たとえば、上記実施形態では、自車両の停止状態を修正する際に、インテリジェントパーキングシステムを利用した駆動制御を行っているが、電子制御ブレーキシステム(ECB)や電動パーキングブレーキ制御(EPB)などの他の駆動制御を行うこともできる。
また、走行制御をすることなく、スピーカやモニタなどを用いて自車両のドライバに呈し状態に至るまでの移動進路をガイドするようにすることもできる。この場合、ディスプレイ51およびスピーカ52を含む運転支援HMI5が、本発明の自車両の移動進路をガイドする移動進路ガイド手段を構成する。さらに、上記実施形態では、白線として中央線および外側線が描かれている道路について説明したが、これらの白線の一部または全部がない場合でも、同様の支援を行うことができる。この場合、道路形状等に基づいて、仮想区画線としての白線を想定するようにすることができる。
さらに、上記実施形態においては、緊急退避支援装置による例を説明したが、緊急退避以外の運転支援において、道路上に車両を停止させる場合の運転支援を行う運転支援装置とすることもできる。また、上記環境情報検出部1で障害物を検出した場合、障害物を避けた位置に停止位置を修正することもできる。