JP5895320B2 - 鉄骨構造物の施工方法、及び、鉄骨構造物の固定部材 - Google Patents
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Description
因みに、この種の鉄骨構造物の施工技術は、例えば、スライド工法や、トラベリング工法と呼ばれることがあり、鉄骨構造物の設置箇所の直近にクレーン等の重機を設置して鉄骨構造物を組み立てることが困難な場合等に実施される。
また、鉄骨構造物Bを基礎部3Aに固定するには、図には示さないが、設置箇所の基礎部に、柱脚プレート固定用のアンカーボルトを埋設しておき、アンカーボルトの上端部を柱脚プレートのボルト挿通孔に挿通させて、上からナットによって固定する方法があるが、この場合は、鉄骨構造物のスライド移動の際に、アンカーボルトの突出部分が柱脚プレートに干渉するから、それを避けるために柱脚プレートを一時的に昇降させる手間がかかる。この問題点を解消できる施工方法として、図6に示すような施工技術が挙げられる。
設置箇所2の基礎部3Aに、アンカーボルトに替えて、固定ボルト11を上方から螺合させることができる雌ネジ部30aを備えたアンカー部材30を埋設しておき、アンカー部材30の直上に、柱脚プレート8の外周部のボルト挿通孔8aが位置するように鉄骨構造物Bをスライド移動させ、ボルト挿通孔8aに上から固定ボルト11を挿通させて、アンカー部材30の雌ネジ部30aに螺合させることで、柱脚プレート8を固定ボルト11で上から押圧する状態で基礎部3Aに固定するものである(例えば、特許文献1参照)。
従って、例えば、地震等の外力が鉄骨構造物Bに作用すれば、柱脚プレート8の曲げ応力が更に増加する虞があり、鉄骨構造物Bの固定強度上、好ましくない問題点がある。
更には、柱脚プレート8の外周エリアは撓み得る状態に支持されているから、地震等の振動を受けた場合に、その振動で柱脚プレート8が撓んで、固定ボルト11が緩む虞もある。
これらの問題を解消するためには、柱脚プレート8と基礎部34との間に、支持モルタルを充填することが必須条件となるが、充填に手間がかかると共に、コストアップにもつながる。更には、例えば、鉄骨構造物の建て替えや解体に伴って、鉄骨構造物を、再度、構築時とは逆方向にスライド移動させるような場合には、支持モルタルの撤去作業に手間がかかり、繁雑な作業が余儀なくされることになる。
従って、迅速に効率よく柱脚プレートの固定を行うことができる。
更には、柱脚プレートは、固定ボルトと当接部材とで上下から挟み込まれた状態で固定されるから、固定ボルトの締付力を強くしても、柱脚プレートへの先行曲げ応力が作用しない状態で、強固に固定することができる。その結果、柱脚プレートと基礎部との間に支持モルタルを充填して支持力の増大を図ることが、必ずしも必要でなくなり、施工コストの低減と共に、工期短縮を図ることが可能となる。
また、上述のような柱脚プレートの固定については、最終的に鉄骨構造物を基礎部に固定する際のみに実施することに限らず、各分割鉄骨構造物の移動工程の前後にそれぞれ仮固定として実施する場合にも有効であり、鉄骨構造物の施工全般にわたって、上述の作用効果を叶えることができる。
また、鉄骨構造物は、組立ヤードまで移動させて解体されるから、もともと鉄骨構造物が設置されていた設置箇所を迅速に開放できることに加えて、設置箇所において粉塵や騒音等が発生するのを回避できる。
また、基礎部と柱脚プレートとの間には、固定ボルトのボルト軸部と、ボルト軸部が螺合するアンカー部材上端部と、アンカー部材の雄ネジ部の外側に螺合する固定ナットとが重なった状態に位置して応力伝達を行うから、固定ボルト単独が位置する従来技術(固定ボルトのボルト軸部単独みの)に比べて、合計の部材有効断面積が大きく、曲げ耐力やセン断耐力、軸方向耐力を大きく見込むことができ、柱脚プレートの固定をより強固に行うことができる。
鉄骨構造物Bは、組立ヤード1において1スパンの分割鉄骨構造物Baを形成し、その分割鉄骨構造物Baを横にスライドさせた後、次のスパンの分割鉄骨構造物Baを継ぎ足して形成した後、再度、同方向にスライドさせ、それらの繰り返しによって、組立ヤード1に隣接する設置箇所2まで各分割鉄骨構造物Baを移動させ、最終形状の鉄骨構造物Bを構成する手順で形成されている。
このような施工方法は、施工環境として、設置箇所2の全周に重機等を配置できる広い施工スペースが確保できない場合に採用されることが多い。
尚、当該実施形態では、鉄骨構造物Bとして仮設構造物の素屋根を例として説明しているが、鉄骨構造物Bとしては、仮設構造物に限るものではなく、本設の構造物であってもよい。
また、柱4の下端の柱脚プレート8には、図2、図3に示すように、その中央エリアの下面に、レール3Cに対する載置部となって、摩擦抵抗の低減を図れる滑り支承材8Aがボルトによって一体に取り付けられている。
滑り支承材8Aは、耐磨耗性や自己潤滑性に優れた材料、例えば、ポリアミド系樹脂等によって形成するのが好ましい。一例としては、MCナイロン(商標名)等が挙げられる。また、柱脚プレート8への滑り支承材8Aの取り付けは、上述のボルトによって行うこと以外にも、接着剤によって実施したり、又は、ボルトと接着剤との併用によって実施することも可能である。
また、柱脚プレート8の外周エリアには、図2に示すように、基礎部3Aへの固定部材9を挿通させることができるボルト挿通孔8aが、周方向に間隔をあけて複数設けてある。
また、雌ネジ部10aには、下方からアンカーボルト10cが螺合させてあり、このアンカーボルト10cとアンカー部材10とで基礎部3Aのコンクリートに対する埋込耐力が確保されている。
尚、基礎部3Aへのアンカー部材10の埋設状況は、図2に示すように、上端の雄ネジ部10bが、基礎部3Aの上面から突出する状態に埋設されている。そして、突出高さ寸法は、柱脚プレート8のスライド移動経路より下方側にアンカー部材10の上端部が位置するように設定してあり、柱脚プレート8のスライド移動時に干渉しないように考慮されている。具体的には、前記突出高さ寸法は、レール3の厚み寸法と滑り支承材8Aの厚み寸法との合計厚み寸法より小さく設定されている。
鉄骨構造物Bの施工の概要は、分割鉄骨構造物Baを組立ヤード1で順次形成する形成工程と、分割鉄骨構造物Baを組立ヤード1から隣接する設置箇所2に向けてレール3C上を横にスライド移動させる移動工程とを繰り返して一体の鉄骨構造物Bを構成するものであり、設置箇所2に形成した基礎部3Aに、鉄骨構造物Bの柱脚プレート8を固定することで前記鉄骨構造物Bの設置施工が完了する。
[1]基礎3を形成すると共に、その上にレール3Cを固定する。また、基礎部3Aには、アンカー部材10と、アンカー部材10に螺合させた固定ナット12とを、柱脚プレート8のスライド移動経路より下方側に位置する状態で設けておく。
スライド移動に関しては、図1に示すように、例えば、分割鉄骨構造物Baにスライド移動用の鋼棒Kを取り付けておき、スライド移動での前方側に反力を確保したスライド用のジャッキJによって鋼棒Kを引き寄せることで、分割鉄骨構造物Baを前方側にスライド移動させることができる。
尚、柱脚プレート8の固定に関しては、全ての分割鉄骨構造物Baをスライドさせた後にのみ実施することに限らず、スパン毎の分割鉄骨構造物Baのスライド移動を終えた度ごとに、実施しておくことが好ましい。
基礎部3Aに対する柱脚プレート8の固定に関しては、図2に示すように、まず、柱脚プレート8が固定位置に達する前に、固定ナット12を、柱脚プレート8のアンカー部材10の雄ネジ部10bに螺合させて、柱脚プレート8のスライド移動経路より下方側に位置させておく。
柱脚プレート8を固定位置までスライド移動させたら、柱脚プレート8にボルト軸部11aを挿通させる状態で固定ボルト11をアンカー部材10の雌ネジ部10aに螺合させると共に、固定ナット12を上方に螺進させて柱脚プレート8に当接させ、固定ボルト11と固定ナット12とで柱脚プレート8を上下から挟み込む状態で柱脚プレート8を基礎部3Aに固定する。
また、固定を解除する場合は、固定ナット12を下方へ螺進させると共に、固定ボルト11を取り外すだけの操作によって実施できる。
柱脚プレート8は、固定状態においては、中央エリアを滑り支承材8Aによって支持されていると共に、外周エリアを固定ボルト11と固定ナット12とを介したアンカー部材10で支持されているから、全体的に安定した支持状態が確保され、柱脚プレート8と基礎部3Aとの間に支持モルタルを充填しなくてもよい。従って、柱脚プレート8の固定解除を行う際にも、手間をかけずに簡単に迅速に実施することができる。
撤去工事の手順は、基礎部3Aに固定された柱脚プレート8から固定ボルト11を取り外すと共に、固定ナット12を柱脚プレート8から下方へ引退させた状態で、鉄骨構造物Bを、設置箇所2から組立ヤード1までレール3C上をスライド移動させた後、鉄骨構造物Bを解体することで実施される。
以下に他の実施の形態を説明する。
〈2〉 前記当接部材Tは、先の実施形態で説明した固定ナット12に限るものではなく、例えば、図4に示すように、アンカー部材10とは別体に構成された埋込ボルト13の上端部に螺合自在な固定ナット14で構成してあってもよい。
また、図5に示すように、アンカー部材10とは別体に構成された埋込袋ナット15に螺合自在な固定ボルト16で構成してあってもよい。
要するに、当接部材Tは、柱脚プレートの下面に当接させる上下移動操作自在な部材であって、アンカー部材の雌ネジ部に螺合させた固定ボルトとで、柱脚プレート8を上下から挟み込む状態で固定できるものであればよく、それらを総称して当接部材という。
〈3〉 前記アンカー部材10は、先の実施形態で説明した雌ネジ部10aに、アンカーボルト10cを螺合させて用いるものに限るものではなく、アンカー部材10に一体のアンカーボルト部を備えたものや、アンカー部材10の外周部に、コンクリートに対する埋込効果を期待できる複数の突状部を備えたものであってもよい。
2 設置箇所
3A 基礎部
3C レール
8 柱脚プレート
10 アンカー部材
10a 雌ネジ部
10b 雄ネジ部
11 固定ボルト
11a ボルト軸部
12 固定ナット(当接部材Tの一例)
B 鉄骨構造物
Ba 分割鉄骨構造物
T 当接部材
Claims (3)
- 鉄骨構造物を複数ブロックに分けた分割鉄骨構造物を組立ヤードで形成する形成工程と、前記分割鉄骨構造物を前記組立ヤードから設置箇所に向けてレール上を横にスライド移動させる移動工程とを繰り返して一体の鉄骨構造物を構成し、
前記設置箇所に形成した基礎部に、前記鉄骨構造物の柱脚プレートを固定することで前記鉄骨構造物を構築する鉄骨構造物の施工方法であって、
前記柱脚プレート用の固定ボルトが上方から螺合する雌ネジ部を備えた前記基礎部側のアンカー部材と、前記柱脚プレートの下面に当接させる上下移動操作自在な当接部材とを、前記柱脚プレートのスライド移動経路より下方側に設けておき、
前記柱脚プレートを固定位置までスライド移動させた後、前記柱脚プレートにボルト軸部を挿通させる状態で前記固定ボルトを前記アンカー部材の前記雌ネジ部に螺合させると共に、前記当接部材を上方に移動させることで、前記固定ボルトと前記当接部材とで前記柱脚プレートを上下から挟み込む状態で前記柱脚プレートを前記基礎部に固定する鉄骨構造物の施工方法。 - 前記鉄骨構造物の構築時には、前記柱脚プレートと前記基礎部との間に支持モルタルを設けない状態で前記柱脚プレートを前記基礎部に固定しておき、前記鉄骨構造物の解体時には、前記基礎部に固定された前記鉄骨構造物から前記固定ボルトを取り外すと共に、前記当接部材を前記柱脚プレートから下方へ引退させた状態で、前記鉄骨構造物を、前記設置箇所から前記組立ヤードまで前記レール上をスライド移動させた後、前記鉄骨構造物を解体する請求項1に記載の鉄骨構造物の施工方法。
- 鉄骨構造物の柱脚プレートを、基礎部に固定する鉄骨構造物の固定部材であって、
前記基礎部に縦に埋設可能で、上端部の内周部に雌ネジ部を備え、且つ、上端部の外周部に雄ネジ部を備えたアンカー部材と、
前記柱脚プレートの上方からボルト軸部を挿通させて前記雌ネジ部に螺合可能な固定ボルトと、
前記雄ネジ部に螺合させた状態で、上方に螺進させることで前記柱脚プレートの下面に当接可能な固定ナットとを備える鉄骨構造物の固定部材。
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