<第1の実施形態>
以下、本発明に係る実施形態について図面を用いて詳細に説明する。先ず、本発明に係る画像形成装置について図2を参照して説明する。なお、図2は、本実施形態における画像形成装置100を示す概略断面図である。
[画像形成装置]
本実施形態における画像形成装置100は、インライン方式、中間転写方式を採用したフルカラーレーザプリンタにより構成される。画像形成装置100は、画像情報に従って、例えば記録用紙、プラスチックシート或いは布などのシートSに、フルカラー画像を形成する。画像情報は、画像形成装置本体100a(以下「装置本体100a」とも言う)に接続された画像読み取り装置や、装置本体100aに通信可能に接続されたパーソナルコンピュータ等のホスト機器から、装置本体100aに入力される。
画像形成装置100は、複数の画像形成部として、夫々イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を形成するための第1〜第4の画像形成部SY、SM、SC、SKを有している。本実施形態では、シート給送装置21から送り出されたシートに画像を形成する第1〜第4の画像形成部SY、SM、SC、SKが、鉛直方向と交差する方向に一列となるように配置されている。装置本体100a内には、制御部60が設けられている。この制御部60は、シート給送装置21に係る給送動作をはじめ、画像形成装置100の各動作を統括的に制御する。
なお、本実施形態では、第1〜第4の画像形成部の構成及び動作は、形成する画像の色が異なることを除いて実質的に同じである。従って、以下、特に区別を要しない場合は、いずれかの色用に設けられた要素であることを表すために符号に付与した添え字Y、M、C、Kは省略して、総括的に説明することとする。
画像形成装置100は、複数の像担持体として、鉛直方向と交差する方向に並設された4個のドラム型の電子写真感光体、即ち感光体ドラム1を有している。感光体ドラム1は、図2中の矢印Aの方向(時計回り方向)に不図示の駆動源により回転駆動される。
感光体ドラム1の周囲には、感光体ドラム1の表面を均一に帯電する帯電ローラ2と、画像情報に基づきレーザを照射して感光体ドラム1上に静電潜像を形成するスキャナユニット3とが配置されている。また、感光体ドラム1の周囲には、静電潜像をトナー像として現像する現像ユニット4と、転写後の感光体ドラム1の表面に残った転写残トナーを除去するクリーニング部材6とが配置されている。
更に、4個の感光体ドラム1に対向して、感光体ドラム上のトナー像をシートSに転写する中間転写体としての中間転写ベルト5が配置されている。感光体ドラム1の回転方向において、帯電ローラ2による帯電位置、スキャナユニット3による露光位置、現像ユニット4による現像位置、中間転写ベルト5へのトナー像の転写位置、クリーニング部材6によるクリーニング位置は、この順番で設けられている。
本実施形態において、現像ユニット4は、現像剤として非磁性一成分現像剤、即ち、トナーを用いる。また、本実施形態では、現像ユニット4は、現像剤担持体としての現像ローラを感光体ドラム1に接触させて反転現像を行う。即ち、現像ユニット4は、感光体ドラム1の帯電極性と同極性(本実施形態では負極性)に帯電したトナーを、感光体ドラム1上の、露光により電荷が減衰した部分(画像部、露光部)に付着させることで静電潜像を現像する。
本実施形態では、感光体ドラム1、感光体ドラム1に作用する帯電ローラ2、現像ユニット4及びクリーニング部材6は、一体的にカートリッジ化されて、プロセスカートリッジ7を構成している。プロセスカートリッジ7は、装置本体100aに設けられた装着ガイド、位置決め部材などの装着部を介して、画像形成装置100に着脱可能となっている。
本実施形態では、各色用のプロセスカートリッジ7は全て同一形状を有しており、各色用のプロセスカートリッジ7内には、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナーが収容されている。
無端状ベルトである中間転写ベルト5は、全ての感光体ドラム1に当接し、図2の矢印Bの方向(反時計回り方向)に循環移動(回転)する。中間転写ベルト5は、複数の支持部材としての駆動ローラ48、2次転写対向ローラ49及び従動ローラ50に掛け回されている。
中間転写ベルト5の内周面側には、各感光体ドラム1に対向するように、1次転写部としての4個の1次転写ローラ8が並設されている。1次転写ローラ8は、中間転写ベルト5を感光体ドラム1に向けて押圧し、中間転写ベルト5と感光体ドラム1とが当接する1次転写部N1を形成する。そして、1次転写ローラ8に、不図示の1次転写バイアス印加部としての1次転写バイアス電源(高圧電源)から、トナーの正規の帯電極性とは逆極性のバイアスが印加される。これにより、感光体ドラム1上のトナー像が中間転写ベルト5上に転写(1次転写)される。
また、中間転写ベルト5の外周面側における2次転写対向ローラ49に対向する位置には、2次転写部としての2次転写ローラ9が配置されている。2次転写ローラ9は、中間転写ベルト5を介して2次転写対向ローラ49に圧接し、中間転写ベルト5と2次転写ローラ9とが当接する2次転写部N2を形成する。2次転写部N2の上流側には、給送ローラ(給送回転体)51及び押圧部材52のニップ部Nから送られるシートSを受けて下流側に搬送する搬送ローラ15が配置されている。なお、給送ローラ51は、シートSを摩擦力でシート給送方向(図1(b)の矢印D方向)に送り出す本発明の給送回転体を構成する。
そして、2次転写ローラ9に、2次転写バイアス印加部としての不図示の2次転写バイアス電源(高圧電源)から、トナーの正規の帯電極性とは逆極性のバイアスが印加される。これにより、中間転写ベルト5上のトナー像がシートSに2次転写される。トナー像が転写されたシートSは、定着部としての定着装置10に搬送されて、熱及び圧力を加えられることでトナー像を定着される。なお、1次転写ローラ8と2次転写ローラ9とは同様の構成を有する。
そして、1次転写工程後に感光体ドラム1上に残留した1次転写残トナーは、クリーニング部材6によって除去、回収される。また、2次転写工程後に中間転写ベルト5上に残留した2次転写残トナーは、中間転写ベルトクリーニング装置11によって清掃される。なお、画像形成装置100は、所望の単独又はいくつか(全てではない)の画像形成部のみを用いて、単色又はマルチカラーの画像を形成することも可能に構成されている。
また、これまで説明した画像形成装置100の構成については、発明を好適に実施するための一例であって、請求項にて規定されていない内容は本発明を限定するものではない。なお、本明細書において、シート給送装置21の構成や動作について、上、下、垂直、水平といった方向を表す用語は、特に断りのない場合は、それらの通常の使用状態において見たときの方向を表す。
[シート給送装置]
次に、本実施形態におけるシート給送装置21について図1を参照して説明する。なお、図1(a)はシート給送装置21の概略断面図であり、図1(b)はシート給送装置21の概略斜視図である。
シート給送装置21は、給送回転体である給送ローラ51と、押圧部材52と、シート状のシート状引上げ部材53と、板状の板状引上げ部材54及び引戻しバネ56から構成されるシート引上げユニット57とを有している。更にシート給送装置21は、給送センサとしての電流測定回路62とを有している。なお、本実施形態では、給送回転体として給送ローラ51を用いているが、これに限らず、無端状ベルトを給送回転体として用いることも可能である。
シート状引上げ部材53及び板状引上げ部材54は、本発明のシート案内部を構成する。シート案内部は、積載したシートのシート給送方向の少なくとも下流端部を保持し、給送ローラ51の回転時に摩擦力で引張られてシートの下流端部を給送ローラ51に対する非接触位置(図3(a)の位置)から接触位置(図3(b)の位置)に移動させる。なお、板状持上げ部材54の形状によっては、積載したシートSの下流端部に限らず、シートSの上流側に向かう広い範囲を保持する構成とすることも可能である。
また、板状引上げ部材54は、収容されているシートSの下流端部を給送ローラ51に対する非接触位置と接触位置との間で移動させる本発明の案内部材を構成する。シート状引上げ部材53は、給送ローラ51との圧接状態で、摩擦力の作用状態では給送ローラ51の回転により板状引上げ部材54を接触位置に誘導し、かつ摩擦力の非作用状態では板状引上げ部材54を非接触位置に誘導する誘導部材を構成する。
給送ローラ51は、装置本体100a側に支持された状態で、電流測定回路62による検出信号に基づいて回転駆動される給送モータ61の動力を受けて、図1(a)中の矢印R方向に回転するように支持されている。
押圧部材52は非駆動のローラであり、装置本体100a側に支持されて給送ローラ51の対向位置に設けられ、圧縮バネである給送加圧バネ93により給送ローラ51側に付勢されて給送ローラ51と圧接している。給送ローラ51には、軸の周りに、例えば硬度20〜40°(Aスケール)程度のEPDMゴム等の高摩擦材料からなる弾性部材が取り付けられている。
シート状引上げ部材53は、シート給送方向上流側(図1(b)の矢印D方向の上流側)の一端側が、板状引上げ部材54のシート給送方向下流側(図1(b)の矢印D方向の下流側)の一端側における連結部59で板状引上げ部材54に連結されている。なお、以下、シート給送方向上流側を後側とも言い、シート給送方向下流側を前側とも言う。
シート状引上げ部材53は、可撓性の材質のシート状の部材であり、前側が給送ローラ51と押圧部材52との間のニップ部Nに挟み込まれた状態で、前側の端部が適度な弛みを持った状態で装置本体100a側に支持されて保持されている。シート状引上げ部材53は、例えば、ポリエステルフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルム、ポリカーボネートフィルムなどの可撓性の樹脂製シートを用いて、好適に作製することができる。シート状引上げ部材53の厚みは、50〜250μmが好適である。本実施形態では、150μmのポリエステルフィルムを使用している。
板状に形成された板状引上げ部材54は、シート給送方向上流側(図1(b)の矢印D方向の上流側)の一端側が回動支軸58を介して、装置本体100a側に固定された支持部材22に回動可能に支持されている。板状引上げ部材54におけるシート給送方向下流側(図1(b)の矢印D方向の下流側)の他端側には連結部59が設けられている。
連結部59において、シート状引上げ部材53の後側が板状引上げ部材54の前側に連結されている。板状引上げ部材54の前側には、板状引上げ部材54を下方に付勢して荷重を掛けるための、引張りバネである引戻しバネ56の一端が取り付けられている。この引戻しバネ56の他端は、支持部材22に取り付けられている。なお、引戻しバネ56は、シート状引上げ部材(誘導部材)53に対する給送ローラ51の摩擦力が非作用状態になった時点で、板状引上げ部材(案内部材)54を非接触位置に引き戻す付勢部材を構成する。
シートを収容するシート収容部である給送トレイ55は、シートSを収容積載するトレイ本体90と、トレイ本体90に対して移動可能に配置されてシートSの両サイドを規制する一対のシート規制板91とを有している。一対のシート規制板91は、シートSのサイズに応じてシート給送方向(矢印D方向)と直交する幅方向にスライド移動し、トレイ本体90に収容されたシートSの両サイドを斜行しないように規制する。
トレイ本体90の前側には、略T字状に切り欠かれた切欠き部90aが形成されている。支持部材22に支持されたシート引上げユニット57は、全体的に切欠き部90aに余裕をもって収容可能なサイズに形成されている。従って、給送トレイ55の装置本体100aへの装填時、給送トレイ55はその切欠き部90aをシート引上げユニット57の形状に合わせながら、板状引上げ部材54の動作を妨げないようにセットされる。給送トレイ55上に積載されるシートSは、給送トレイ55を装置本体100aに装着した際に、板状引上げ部材54の上にも部分的に積載される。そして、給送トレイ55は、装置本体100aからの離脱時には、シート引上げユニット57において分離することになる。
次に、本発明におけるシート給送装置21の動作について、図3(a),(b)及び図4(a),(b)を用いて説明する。なお、図3(a)は、本実施形態におけるシート給送装置の非給送時の概略断面図を示し、図3(b)は、給送時の概略断面図を示している。また、図4(a),(b)は、それぞれ給送ローラ部分を拡大した概略断面図である。
図3(a)に示すように、給送処理開始前の初期状態では、給送ローラ51と給送トレイ55上のシートSとは非接触の状態にあり、給送ローラ51と押圧部材52との間にはシート状引上げ部材53の前端部(下流端部)が挟持されている。
ここで、CPU60からの給送処理開始の指令に応答して給送モータ61が回転駆動すると、給送ローラ51が図3中の矢印R方向に回転を開始する。これにより、給送ローラ51と接触しているシート状引上げ部材53が、給送ローラ51の回転によってシート給送方向(図3(a)の矢印D方向)に沿って引上げられる。
この際、シート状引上げ部材53は、連結部59で板状引上げ部材54と連結されているため、引上げられると同時に、板状引上げ部材54が回動支軸58を支点として図中の反時計回り方向に回動する。これにより、板状引上げ部材54の前側端部が、引戻しバネ56の付勢力に抗して図3(b)のように上昇する。
このように板状引上げ部材54が上昇すると、図4(a)に示すように、板状引上げ部材54上(シート案内部上)に積載されているシートSが、給送ローラ51に接触し始め、給送ローラ51によるシートSの送り出しが開始される。このときの給送ローラ51とシートSとの当接圧は、給送ローラ51と押圧部材52間のニップ部Nに挟持されたシートSを引上げるテンションによって確保される。
そして、給送ローラ51の回転が進むと、シートSの先端がシート状引上げ部材53に接触し、図4(b)に示すように、シート状引上げ部材53の一側面に沿って搬送されていく。給送ローラ51の回転が更に進むと、給送ローラ51とシート状引上げ部材53間のニップ部Nへと到達する。
そして、シートSが給送ローラ51とシート状引上げ部材53間のニップ部Nに到達すると、シートSは、押圧部材52からの付勢力(押圧力)をシート状引上げ部材53越しに受けることで、給送ローラ51との当接圧が確保される。これにより、シートSは、搬送状態を維持されながら次工程の搬送ローラ15(図2参照)へと渡される。
一方、シートSが給送ローラ51とシート状引上げ部材53とのニップ部Nに到達した時点において、シート状引上げ部材53は、給送ローラ51との接触状態から、シートSとの接触状態に変わる。そのため、シート状引上げ部材53は、給送ローラ51から受けていた摩擦力を瞬間的に受けられない状態となる。
シート状引上げ部材53は、板状引上げ部材54及び板状引上げ部材54上に積載されたシートSの重量と、板状引上げ部材54を下方に引っ張る引戻しバネ56の荷重とによる下方(重力方向)への力を受ける。従って、シート状引上げ部材53は、シートSが給送ローラ51で給送され始めてからは、その時点での位置を維持できずに下方へと引き戻される。
このように、板状引上げ部材54は、シート状引上げ部材53に対する摩擦力が非作用状態になった時点で、板状引上げ部材54の重量と、積載したシートの重量とにより非接触位置に引き戻される。更に、引戻しバネ56により、板状引上げ部材54及びシート状引上げ部材53がより確実に下方の初期位置(非接触位置)に引き戻される。
そして、シート状引上げ部材53が下方に戻された結果、シート状引上げ部材53、板状引上げ部材54、及び板状引上げ部材54上に積載されたシートSは、初期状態の位置(図3(a)参照)へと移動する。これにより、給送ローラ51と、板状引上げ部材54上のシートSとは、非接触の状態となる。
なお、本実施形態では、板状引上げ部材54に引戻しバネ56を取り付けた。しかし、これに限らず、板状引上げ部材54の重量や、シート状引上げ部材53と押圧部材52との摩擦係数等を調整することで、引戻しバネ56を取り付けない設定でもシート状引上げ部材53を下方へと引き戻すことが可能となる。
ここで、図5を参照して、本実施形態における画像形成装置の制御構成について説明する。なお、図5は、本実施形態における画像形成装置100の制御系を示す機能ブロック図である。
画像形成装置100は、CPUを含む制御部60を有しており、この制御部60にはタイマ202が内蔵されている。制御部60には、駆動回路203、駆動回路203に備えられた給送センサとしての電流測定回路62、不揮発性の記録装置であるROM装置205、書き換え可能な記憶装置であるRAM装置206、及び転写バイアス電源204が接続されている。
制御部(CPU)60は、画像形成装置100の各部を制御する中央処理演算装置であり、図6のフローチャートに示す給送処理を実行する。
駆動回路203は、制御部(CPU)60からの信号に応答して給送モータ61に駆動電流を供給する。電流測定回路62では、給送モータ61に流れる電流を検知し測定する。つまり、駆動回路203内の電流測定回路62は、給送ローラ51を駆動する給送モータ61に供給される電流を検知・測定(モニタ)し、図7(a)の時刻tpで示す電流の急激な変化をトルク変化として検知し、給送するシートSの先端位置を検知する。
ROM装置205には、モータ制御プログラムが格納されており、必要に応じてプログラムが制御部(CPU)60にロードされる。
RAM装置206は、制御部(CPU)60が演算を行う際に、演算結果を格納したり、一時的に計算結果を退避させたりするための書き換え可能な記憶装置である。また近年は、ROMとRAMをCPUと同一のパッケージに集積させたCPUも存在するため、そのようなCPUを使用する場合、ROM装置205とRAM装置206は省略することが可能である。
上記構成を備える本画像形成装置100では、電流測定回路62によって、給送ローラ51を駆動するために給送モータ61に供給される電流がモニタされる。
ここで、図7(a)は、電流測定回路62がモニタした給送動作と給送モータ61への電流との関係を説明するグラフ図である。
シート給送装置21の動作に対して、給送ローラ51に加わる負荷が変わると給送ローラ51のトルクが変動すると、それに伴って給送モータ61の電流値も変動する。そこで、上述したシート給送装置21の動作に合わせて、給送ローラ51のトルクの観点から説明を進めていく。
まず初期状態において、制御部(CPU)60からの給送処理開始の指令が出力されると、図6に示すように給送処理が開始される。図7(a)において、給送ローラ51の回転が開始される時刻t0では、給送ローラ51は、シートSとは非接触の状態で、給送ローラ51と押圧部材52との間のニップ部Nに挟み込まれたシート状引上げ部材53とのみ接触している。この状態では、シート状引上げ部材53をシート給送方向に引上げる力が、給送ローラ51の回転する際に掛かる負荷となり、給送ローラ51を回転させるトルクの変動となる。
シート状引上げ部材53の上昇に伴い、このシート状引上げ部材53に連結される板状引上げ部材54も上方に移動するため、板状引上げ部材54に取り付けられた引戻しバネ56の作用力が大きくなる。それに伴い、給送ローラ51のトルクも徐々に上昇する。
そして、給送ローラ51と板状引上げ部材54上に積載されるシートSとが接触し始める時刻t1からは、給送ローラ51に、シートSを搬送する際の負荷が加わるため、トルクが上昇する。シートSが給送ローラ51とシート状引上げ部材53間のニップ部Nに到達すると、ニップ部NにシートSを挟み込む負荷も加わり、給送ローラ51のトルクはさらに上昇する。
ところが、シートの搬送が進み、給送ローラ51の接触状態が、シート状引上げ部材53との接触からシートとの接触に変わると、次のようになる。つまり、それまでシート状引上げ部材53をシート給送方向へと引上げるために働いていたトルクが、瞬間的に、シートSをシート給送方向へと送り出すためのトルクに変わる。
シート状引上げ部材53には、押圧部材52側から受ける付勢力、板状引上げ部材54や板状引上げ部材54上に積載されたシートSの重量、及び、板状引上げ部材54に取り付けられている引戻しバネ56による荷重等の負荷が掛かる。
これに対し、給送ローラ51と接触しているシートSに対して掛かる負荷は、押圧部材52側から受ける付勢力のみである。そのため、給送ローラ51の接触状態が、シート状引上げ部材53との接触から、シートSとの接触に変わった瞬間に、給送ローラ51のトルクが激減する。この給送ローラ51の接触状態が、シート状引上げ部材53との接触からシートSとの接触に切り替わった瞬間は、時刻tpとして読み取られる。
この急激な変化が生じる時刻tpが、電流測定回路62によって検知されることにより、シートSの先端位置が検知される(図6のステップS1)。なお、電流測定回路62は、給送ローラ51とシート状引上げ部材53間の正規の給送位置(図4(b)の位置)へのシート到達を検出するシート検出部を構成する。この電流測定回路62は、板状引上げ部材54が接触位置に移動され、給送ローラ51の摩擦力がシートに移行したときの給送ローラ51のトルク変化に基づいてシートの到達を検出する。つまり、電流測定回路62は、給送ローラ51を回転駆動する給送モータ(モータ)61への供給電流の変化をトルク変化としてモニタし、そのモニタ結果に基づき、給送ローラ51の正規の給送位置へのシート到達を検出する。
この後、ステップS2において、制御部(CPU)60の指令に応答して給送ローラ51が停止し、画像形成が開始される(ステップS3)。そして、1次転写バイアスが印加され(ステップS4)、給送ローラ51の回転が再開され(ステップS5)、2次転写バイアスが印加される(ステップS6)。
そして、トナー像を2次転写されたシートSは下流の定着装置10に搬送され、熱及び圧力を加えられることでトナー像を定着された後、装置本体100aの外方に排出される。
次に、上述の構成を有する画像形成装置100において、搬送中のシートSに同期して、感光体ドラム上にトナーを形成するタイミングと、転写ローラに画像形成用の転写バイアスを印加するタイミングとを制御する方法について説明する。
図7(b)は、電流測定回路62がシート先端を検知してから、1色目であるイエローがシートSに転写されるまでのタイミングチャートを示したものである。図7(b)のグラフでは、横軸に時間tをとり、縦軸には、画像形成(Y)、1次転写バイアス(Y)、2次転写バイアス、及び給送ローラ51の回転をそれぞれとっている。
シートの先端位置が検知された時刻tpを起点として、所定時間ty後に、画像形成部SYにおけるイエロー用の感光体ドラム1Y上の画像形成を開始させ、時刻tpから所定時間tytr後に、イエロー用の画像形成用の1次転写バイアスを印加する。他の色に対しても、時刻tpを基準として、所定時間後に各感光体ドラムへの画像形成を開始させ、画像形成用の1次転写バイアスを印加する。そして、2次転写に対しても同様に、時刻tpを基準として、所定時間後に2次転写バイアスを印加する。
近年の画像形成装置は、小型化されて、給送ローラ51位置から2次転写部N2までの距離が短くなっている。そのため、1色目の1次転写部N1から2次転写部N2までの距離が、給送ローラ51位置から2次転写部N2までの距離よりも長くなる場合がある。
そのような場合には、シートSの先端位置を検知したタイミングで、給送ローラ51を一旦停止し、2次転写バイアスを印加するタイミングに合わせて、所定時間後に給送ローラ51の回転を再開することも可能である。
以上の本実施形態によると、レバーと透過型フォトインタラプタを組み合わせたようなシート検知センサを用いない、シート給送部を兼用する簡易な構成によってシート先端位置を確実に検知できるシート給送装置21を得ることができる。即ち、給送ローラ51の駆動用として給送モータ61に供給される電流を電流測定回路62でモニタすることで、シート給送装置21を兼ねた簡易な構成で、シートSの先端位置を正確に検知することができる。そして、シートSの先端位置を検知した情報を起点として、各画像形成プロセスに対するバイアスを印加するタイミングを制御したり、画像に合わせてシートの搬送速度を制御したりすることができる。このように、シートSの先端位置を確実に検知することができるシート給送装置21を、簡単な構成によって実現できる。
<第2の実施形態>
次に、本発明に係る第2の実施形態について図8〜図11を参照して説明する。本実施形態のシート給送装置21は、基本的には第1の実施形態に準ずるが、以下の点で異なっている。即ち、本実施形態は第1の実施形態に比し、給送ローラ51に半月ローラを用いる点と、制御部60にシート到達時間測定部207とシート残量判定部208を設けた点などが異なるが、他の部分は略同一なのでそれらには同一符号を付してその説明を省略する。
なお、図8は本第2の実施形態におけるシート給送装置の概略断面図、図9は本実施形態における画像形成装置の制御系を示す機能ブロック図、図10は本実施形態における給送処理を説明するためのフローチャートである。また、図11(a)は本実施形態における給送動作と給送モータ電流との関係を説明する図、図11(b)はシート到達時間とシート残量との関係を説明する図である。なお、図8においても、シート給送方向は図3(a)の矢印Dと同じ方向である。
図8に示すように、本実施形態における給送ローラ51は、外周面51bの一部が切り欠かれて半径を小さくされた切欠き領域51aを有する所謂半月ローラ形状として構成されている。また、押圧部材52の給送ローラ51側への移動を制限するL字状の移動制限部材63が、装置本体100a側に位置決め支持されている。
給送ローラ51の切欠き領域51aが押圧部材52に対向する位相においては、移動制限部材63によって押圧部材52が給送ローラ51を押圧しないように設定されている。また、本実施形態では、板状引上げ部材54に対して引戻しバネ56を設置していない。
本実施形態における制御部(CPU)60は、第1の実施形態の構成に加えて、シート到達時間測定部207、及び板状引上げ部材54上のシート残量を判定するシート残量判定部208を備えている。
シート到達時間測定部207は、給送ローラ51の回転開始の指示から、シートSの先端位置検知までの時間を測定する。即ち、制御部60内に備えたタイマ202を用いて、給送ローラ51の回転開始指示から、シートSの先端位置検知までの時間を計測し、シート到達時間とする。
シート残量判定部208は、シート到達時間とシート残量との関係に係るテーブルデータをデータベース内に格納しておき、給送トレイ55内のシート残量の多寡によってシート到達時間が異なることを利用し、給送トレイ55内のシート残量を判定している。
即ち、シート残量判定部208は、接触位置から非接触位置への到達時間と板状引上げ部材54上のシート残量との関係に係るテーブルデータを有している。そして、シート残量判定部208は、給送ローラ51への回転指令の出力時点から計測した接触位置から非接触位置への到達時間とテーブルデータとに基づきシート残量を判定する。このような本実施形態によると、シート給送部を兼用する簡易な構成を利用して、シート残量を高い精度で検出することができる。
ここで、本実施形態において給送ローラ51の外周面に切欠き領域51aを有することによる第1の実施形態との差異について説明する。それに続いて、本実施形態においてシート残量を判定する機能について説明する。
即ち、本実施形態の給送ローラ51は、不図示のクラッチ機構により1回転して、図8に示すように、給送ローラ51の外周面における切欠き領域51aが押圧部材52と対向する位置で停止する。この状態を初期状態とする。つまり、この初期状態では、L字状の移動制限部材63が、押圧部材52の給送ローラ51側への移動を制限するため、給送ローラ51と押圧部材52との間にあるシート状引上げ部材53は、押圧部材52からの付勢力を受けない。
そして、制御部60から給送処理開始指示を受けた駆動回路203により給送ローラ51が回転開始させられると、給送ローラ51の切欠き領域51a以外の外周面51bがシート状引上げ部材53を介して押圧部材52に接する。これにより、給送ローラ51は、押圧部材52からの付勢を受けるようになる。
これにより、給送ローラ51と押圧部材52との間にあるシート状引上げ部材53が、給送ローラ51の回転力によって、シート給送方向(矢印D方向、図3(a)参照)に引上げられる。そして、給送ローラ51の回転が進むと、第1の実施形態と同様、板状引上げ部材54上のシートSが上昇して、図3(b)の場合と同様に、給送ローラ51に接触し始める。
さらに、給送ローラ51の回転が進むと、シートSが給送ローラ51とシート状引上げ部材53との間のニップ部に到達する。ここでも第1の実施形態と同様に、シート状引上げ部材53は、給送ローラ51との接触状態からシートSとの接触状態に変わることで、給送ローラ51による持ち上げ力を受けなくなり、その時点での位置を維持できず下方に引き戻される。この場合、本実施形態では引戻しバネ56を有さないため、板状引上げ部材54を下方に引張る力は、板状引上げ部材54の重量及び板状引上げ部材54上のシートSの重量のみによる。
このように、板状引上げ部材54は、シート状引上げ部材53に対する摩擦力が非作用状態になった時点で、板状引上げ部材54の重量と、積載したシートの重量とにより非接触位置に引き戻される。なお、本実施形態においても、板状引上げ部材54及びシート状引上げ部材53をより確実に下方の初期位置(非接触位置)に引き戻すために、第1の実施形態のように引戻しバネ56を配置してもよい。
シート状引上げ部材53が下方に引き戻された結果、シート状引上げ部材53、板状引上げ部材54、及び板状引上げ部材54上のシートSは、初期状態の位置へと移動する。つまり、給送ローラ51と、板状引上げ部材54上のシートSとは、非接触の状態となる。
一方、給送ローラ51に接触し始めた最上位のシートSは、押圧部材52の付勢力をシート状引上げ部材53越しに受けることによって給送ローラ51との当接圧を確保される。これにより、最上位のシートSは、給送状態が維持されて、次工程の搬送ローラ15(図2参照)へと渡される。そして、このシートSが次工程の搬送ローラ15へと渡されるまでは、給送ローラ51の外周面51bのシートSに対する接触が維持されるように寸法が設定されている。
そして、最上位のシートSが次工程の搬送ローラ15へと渡された後、給送ローラ51は、不図示のクラッチ機構によって、給送ローラ51の切欠き領域51aが押圧部材52に対向する位置で停止される。
ところで、本実施形態においても第1の実施形態と同様に、電流測定回路62が、給送ローラ51を駆動する給送モータ61に流れる電流をモニタすることで、シートSの先端位置を検知することができる(図10のステップS11)。
この後、ステップS12において、制御部(CPU)60の指令に応答して給送ローラ51が停止し、画像形成が開始される(ステップS13)。そして、ステップS14において1次転写バイアスが印加され、ステップS15において給送ローラ51の回転が再開され、ステップS16において2次転写バイアスが印加される。
そして、トナー像を2次転写されたシートSは下流の定着装置10に搬送され、熱及び圧力を加えられることでトナー像を定着された後、装置本体100aの外方に排出される。
一方、上記ステップS11で、ステップS12に進まない場合は、ステップS17に進んで、シート到達時間測定部207によるシート到達時間の算出を行う。引き続き、ステップS18に進んで、シート残量判定部208によるシート残量の判定を行い、その残量を不図示の表示部に表示する。
ここで、第1の実施形態と同様に、シート給送装置21の動作に合わせて給送ローラ51に加わる負荷によるトルク変動の観点から、図11(a)について説明を進める。
まず、図8に示す初期状態において、給送処理開始の指示を受けて給送ローラ51の回転が開始される時刻t0では、給送ローラ51は、切欠き領域51aをシート状引上げ部材53に向けてシート状引上げ部材53との非接触状態にある。同時に、給送ローラ51は、下降位置にある板状引上げ部材54上のシートSとも非接触の状態にある。
そして、給送ローラ51の外周面における切欠き領域51aが押圧部材52に対向して停止していることで、給送ローラ51及びシート状引上げ部材53は、押圧部材52からの付勢力を受けていない。そのため、給送ローラ51のみを回転させるトルクが電流値として検知される。
そして、給送ローラ51の回転が進むと、給送ローラ51は、外周面51bがシート状引上げ部材53に接触するようになるため、押圧部材52からの付勢力を受けるようになる。このため、給送ローラ51と押圧部材52との間にあるシート状引上げ部材53が、給送ローラ51の回転によりシート給送方向に引上げられる。この状態では、シート状引上げ部材53をシート給送方向に引上げるトルクが、給送ローラ51の回転時に作用する負荷となる。
そして、給送ローラ51と板状引上げ部材54上のシートSとが接触し始める時刻t1からは、給送ローラ51にはシートSを送り出す際の負荷が加わり(図4(a)参照)、トルクが上昇する。引き続き、シートSが給送ローラ51とシート状引上げ部材53とのニップ部に到達すると、給送ローラ51とシート状引上げ部材53との間にシートSを挟み込む負荷も加わり(図4(b)参照)、給送ローラ51のトルクは更に上昇する。
ところが、シートの搬送が進み、給送ローラ51の接触状態がシート状引上げ部材53との接触から、シートとの接触に変わると、次のようになる。つまり、それまでにシート状引上げ部材53を搬送方向へと引上げるために働いていたトルクが、瞬間的に、シートSを給送方向に搬送するトルクに変わる。
シート状引上げ部材53には、押圧部材52側から受ける付勢力と、板状引上げ部材54や板状引上げ部材54上のシートSの重量による負荷が作用する。これに対して、給送ローラ51と接触しているシートSに対して掛かる負荷は、押圧部材52側から受ける付勢力のみである。このため、給送ローラ51が、シート状引上げ部材53との接触状態からシートSとの接触状態に変わった瞬間に、給送ローラ51のトルクが激減する。この給送ローラ51の接触状態がシート状引上げ部材53との接触からシートSとの接触に切り替わった瞬間を、時刻tp(tp1,tp2)とする。
この急激な変化を、電流測定回路62としての電流測定回路がトルク変化として検知することにより、シートSの先端位置を確実に検知することができる。さらに給送ローラ51の回転が進むと、給送ローラ51における切欠き領域51aが押圧部材52と対向するようになって、トルクがさらに減少する。
ここで、本実施形態におけるシート残量の判定方法について説明する。すなわち、シート到達時間測定部207では、制御部(CPU)60内に備えたタイマ202を用いて、給送ローラ51の回転開始指示から、シートSの先端位置検知までの時間を計測し、この時間をシート到達時間と判定する。
また、シート残量判定部208は、シート到達時間とシート残量との関係をデータベース内に格納しており、給送トレイ55内のシート残量に対応してシート到達時間が異なることを利用して、給送トレイ55内のシート残量を判定する。
ここで、図11(b)を参照し、シート到達時間tとシート残量との間で同図のグラフのような関係になる理由について、以下に説明する。
すなわち、制御部60から給送処理開始指示を受けた駆動回路203の出力により給送ローラ51が回転開始すると、シート状引上げ部材53をシート給送方向に引上げ始める。シート状引上げ部材53が引上げられると、これと同時に、板状引上げ部材54及び板状引上げ部材54上のシートSも上昇する。これにより、給送ローラ51が、板状引上げ部材54上に積載されているシートSと接触し始める。
給送トレイ55内のシートSの残量が多い場合は、板状引上げ部材54に積載されているシート束の最上位のシートSと、給送ローラ51の外周面51bとの距離が、シートSの残量が少ない場合に比して近い。そのため、給送ローラ51の回転開始から、給送ローラ51が、板状引上げ部材54上の最上位のシートSと接触するまでの時間は、残量が少ない場合に比して短い。
一方、給送トレイ55内のシートSの残量が少ない場合は、板状引上げ部材54に積載されているシート束の最上位のシートSと、給送ローラ51の外周面51bとの距離が、シートSの残量が多い場合に比して遠くなる。そのため、給送ローラ51の回転開始から、給送ローラ51が、板状引上げ部材54上の最上位のシートSと接触するまでの時間は、残量が多い場合に比して長くなる。
このように、給送トレイ55内のシート残量の多寡に対応して、給送ローラ51の回転開始から、給送ローラ51が板状引上げ部材54上の積載シート束の最上位のシートSに接触するまでの時間に差が生じる。
すなわち、給送ローラ51と板状引上げ部材54上の最上位のシートSとが接触し始める時刻t1(図11(a)参照)において、給送ローラ51には、シートSを送り出す際の負荷が加わってトルクが上昇する。なお、この時刻t1でのトルク変動を電流値として検知し、時刻t1における時間差を比較することによって、シート残量を判定することも可能である。
本実施形態でも、第1の実施形態と同様、駆動回路203内の電流測定回路62が、給送モータ61に供給される電流を検知・測定(モニタ)し、図11(a)の時刻tpで示す電流の急激な変化を検知し、シートSの先端位置を検知する。
本実施形態でも、第1の実施形態と同様、給送ローラ51が回転開始する時刻t0から時間計測するため、給送ローラ51が板状引上げ部材54上のシート束の最上位のシートSに接触するまでの時間に差が発生する。これに起因して、シートSの先端位置検知までの時間にも同様に差が生じる。そのため、シートSの先端位置検知までの時間差を検知することに基づき、板状引上げ部材54上の(即ち、給送トレイ55内の)シート残量を判定する。
電流測定回路62がモニタした給送動作と、給送モータ61の電流との関係を説明する図11(a)において、実線はシート残量が多い場合を示し、破線はシート残量が少ない場合を示している。シート残量が多い場合のシート到達時間1が時刻tp1であり、シート残量が少ない場合のシート到達時間2が時刻tp2である。
以上のように本実施形態では、シート到達時間測定部207がシート到達時間を測定し、その測定結果に基づきシート残量判定部208が、給送トレイ内のシート残量の多寡に対応してシート到達時間が異なることを利用し、給送トレイ内のシート残量を判定する。
ところで、第1の実施形態では、給送ローラ51がシートSを給送している間は、シート状引上げ部材53、板状引上げ部材54、及び板状引上げ部材54上の積載シートSは、初期位置に維持されていた。しかし、シートSが搬送ローラ15に渡された後、給送ローラ51と押圧部材52との間にシートSが無くなった時点で、給送ローラ51の回転が続くと、次の給送処理開始の指示が無いにも拘わらずシート状引上げ部材53を再び引上げてしまうおそれがある。
そこで本実施形態では、シートSが搬送ローラ15に渡された後は、次の給送処理開始の指示まで、給送ローラ51の切欠き領域51aが押圧部材52に対向するように停止する。これにより、シート状引上げ部材53に押圧部材52の付勢力が作用しないようにでき、給送ローラ51と押圧部材52との間のシート状引上げ部材53が引上がらないようにできる。そのため、負荷の掛かっていないシート状引上げ部材53を、下方の初期状態の位置へと確実に引き戻すことができ、連続的にシートSを給送した際にも安定したシート残量の判定を行うことができる。
以上のように本実施形態では、板状引上げ部材54に対する引戻しバネ56を配置しないにも拘わらず、給送ローラ51と押圧部材52との間のシート状引上げ部材53が押圧部材52からの付勢力を受けないようにすることができる。これにより、シート状引上げ部材53を下方の初期位置に適正に引き戻すことができる。
ここで、以上説明した第1及び第2の実施形態による効果について、より詳細に説明する。すなわち、両実施形態によると、シート給送装置21を兼ねた簡易な構成によってシートSの先端位置を検知でき、低コスト化が可能になる。具体的には、電流測定回路62として、給送ローラ51を駆動する給送モータ61に流れる電流をモニタし、トルク変動を電流値として検知することで、シートSの先端位置を検知することができる。
また、両実施形態では、給送トレイ55内のシートSを給送ローラ51に接触させるシート状引上げ部材53の移動により、給送ローラ51に対して大きなトルク変動を与えることができる。そして、これを利用することで、トルク変動による電流変化を検知し易くしている。さらに、シートSの先端は、シート状引上げ部材53に接触し、シート状引上げ部材53に沿って搬送されながら、給送ローラ51とシート状引上げ部材53とのニップ部へと到達するため、シートSの経路においてバラツキが発生しにくい。
また、前述した特許文献1のような技術では、傾斜したガイド板でシートを規制する際、最上位シートを搬送する際に1枚下のシート及びそれ以下のシートがつれられて搬送されると、給送トレイ内でシート先端が本来の初期位置とずれる虞がある。
これに対し、両実施形態では、シート状引上げ部材53及びシートを積載した板状引上げ部材54がシートを送り出す度に上下動作する。これにより、シートがつれられて送り出された場合でも、シートを積載した板状引上げ部材54が下方に移動したタイミングで、つられて給送されたシートがシート状引上げ部材53に沿って滑り、先端が整えられて初期位置に戻るという効果を奏する。
以上のように、本発明に係る両実施形態によると、給送トレイ55内で、シートの先端位置を整えることで、シート到達時間のバラツキを抑えることができ、シート残量の検知精度をより向上させることができる。