JP5893440B2 - タイヤおよびタイヤの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、リムに装着されるタイヤ及びその製造方法に係り、特に、少なくとも一部が熱可塑性樹脂材料で形成されたタイヤ及びその製造方法に関する。
従来、乗用車等の車両には、ゴム、有機繊維材料、スチール部材などから構成された空気入りタイヤが用いられている。
近年では、軽量化や、成形の容易さ、リサイクルのしやすさから、樹脂材料、特に熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマーなどをタイヤ材料として用いることが検討されている。
例えば、特許文献1には、熱可塑性の高分子材料を用いて成形された空気入りタイヤが開示されている。
熱可塑性の高分子材料を用いたタイヤは、ゴム製の従来タイヤと比べて、製造が容易で且つ低コストである。しかし、タイヤ骨格体がカーカスプライなどの補強部材を内装しない均一な熱可塑性高分子材料で形成されている場合には、ゴム製の従来タイヤと比べて、タイヤ骨格体を形成する熱可塑性樹脂材料の特性に起因して、耐熱性の観点でなお改良の余地がある(例えば、特許文献1参照)。
熱可塑性樹脂材料を含む材料によりタイヤを製造する場合、製造効率を高め低コストを実現しつつ、得られたタイヤは従来のゴム製タイヤと比して遜色のない性能を実現することが求められる。例えば、タイヤには操縦安定性が高いことが求められるが、熱可塑性樹脂材料を主たる材料として用いて成形されたタイヤにおいても従来のゴムを用いたタイヤと同等以上の操縦安定性が求められている。
操縦安定性の高いタイヤを得るためには、一般に、熱可塑性樹脂材料にカーボン等の充填剤を添加することにより、熱可塑性樹脂材料の引張弾性率を上げることが行われているが、充填剤の添加によりタイヤの転がり摩擦抵抗が大きくなり易い。このため、タイヤの転がり摩擦抵抗の低下と、操縦安定性の向上を両立することが難しかった。
特開2003−104008号公報
本発明は、前記問題を解決すべくなされたものであり、熱可塑性樹脂材料を用いてなり、操縦安定性に優れるタイヤ、および、転がり摩擦抵抗に影響を与えにくく、操縦安定性に優れたタイヤを製造可能なタイヤの製造方法を提供することを目的とする。
(1)本発明のタイヤは、ポリアミド系熱可塑性エラストマーと、分子内に水素結合を結合し得る基を有し、且つ、炭素数が3以上のガラス転移温度を有しない低分子量化合物と、を含有する物熱可塑性樹脂材料で形成された環状のタイヤ骨格体を有する。
本発明における熱可塑性樹脂材料は、熱可塑性を有する樹脂およびエラストマーの少なくとも一方を意味し、従来の天然ゴムや合成ゴム等の加硫ゴムは含まれない。
また、「ポリアミド系熱可塑性エラストマー」とは、結晶性で融点の高いハードセグメントを構成するポリマーと非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成するポリマーとを有する共重合体からなる熱可塑性樹脂材料であって、ハードセグメントを構成するポリマーの主鎖にアミド結合(−CONH−)を有するものを意味する。
以下、分子内に水素結合を結合し得る基を有し、且つ、炭素数が3以上のガラス転移温度を有しない低分子量化合物を「特定化合物」ともいう。
タイヤ骨格体が、ポリアミド系熱可塑性エラストマー及び特定化合物を含有する熱可塑性樹脂材料で形成されていることで、タイヤ骨格体の引張弾性率が高くなる。
ここで、引張弾性率は、タイヤ骨格体の強度や操縦安定性の指標となり、引張弾性率が大きいほど、タイヤ骨格体の強度が大きくなり、タイヤの変形が小さくなるため、操縦安定性が向上する。
すなわち、本発明のタイヤが上記構成であることで、操縦安定性に優れる。
この理由は定かではないが、次の作用によるものと推定される。
ポリアミド系熱可塑性エラストマーは、分子内にアミド結合を有しており、ポリアミド系熱可塑性エラストマー分子同士が、互いのアミド結合と水素結合を結ぶことにより、柔軟で、強靭な性質を有していると考えられている。また、ポリアミド系熱可塑性エラストマーは、分子内に結晶部と非晶部(アモルファス)とを有している。結晶部は、分子が緻密に配列し、低分子量の化合物は入り込みにくいが、非晶部は、分子がばらけているため、結晶部に比べ隙間を有し、低分子量の化合物が非晶部に入り込み易いと考えられる。
ここで、当該低分子量の化合物が、分子内に水素結合を結合し得る基を有する場合、すなわち、特定化合物である場合、特定化合物は、アミド結合の酸素原子ないし水素原子に引き寄せられて、ポリアミド系熱可塑性エラストマーの非晶部のアミド結合と水素結合を結ぶと考えられる。
特定化合物は、炭素数が3以上であることから、ポリアミド系熱可塑性エラストマーの非晶部の引張弾性率を上げ、結果的に、ポリアミド系熱可塑性エラストマーを含有するタイヤ骨格体の引張弾性率を上げるものと考えられる。
また、特定化合物は、ガラス転移温度(Tg)を有しない化合物である。ガラス転移温度を有する化合物は、ポリマー等の高分子化合物であり、低分子量化合物よりも硬い。従って、特定化合物がガラス転移温度を有しないことで、ポリアミド系熱可塑性エラストマーの非晶部に特定化合物が入り込んでも、ポリマーが入り込む場合よりも柔軟で、ポリアミド系熱可塑性エラストマーの引張弾性率が大きくなりすぎないと考えられる。
このように、熱可塑性樹脂材料が、ポリアミド系熱可塑性エラストマーとともに特定化合物を含有していることで、硬くなりすぎない程度にタイヤ骨格体の引張弾性率を上げることができ、その結果、操縦安定性に優れたタイヤとなるものと考えられる。
特に、エラストマーのアミド結合と特定化合物とが水素結合で結ばれているために、エラストマーの非晶部に入り込んだ特定化合物は、非晶部から容易には脱離しにくいと考えられる。したがって、タイヤ骨格体が外的負荷を受けても、タイヤ骨格体の引張弾性率を維持し得ると考えられる。
以下、本発明の好ましい態様を挙げる。
(2)前記水素結合を結合し得る基が、アミノ基およびカルボキシ基の少なくとも一方である前記(1)に記載のタイヤ。
分子内に水素結合を結合し得る基を有し、且つ、炭素数が3以上のガラス転移温度を有しない低分子量化合物(特定化合物)が分子内に有する水素結合を結合し得る基は、アミノ基およびカルボキシ基の少なくとも一方であることが好ましい。すなわち、特定化合物は、アミノ基を有するアミノ化合物、カルボキシル基を有するカルボン酸、または、アミノ基とカルボキシ基の両方を有するアミノ酸であることが好ましい。
特定化合物がアミノ化合物、カルボン酸、またはアミノ酸であることで、タイヤ骨格体の引張弾性率が向上し易い。
ポリアミド系熱可塑性エラストマーが有するアミド結合は、通常、アミノ基とカルボキシ基とが脱水して結合したものであるが、特定化合物は、このように、アミド結合を構成し得る化合物であることが好ましい。
特定化合物がアミノ化合物、カルボン酸、またはアミノ酸であることで、タイヤ骨格体の引張弾性率が向上し得る理由は定かではないが、特定化合物がアミノ基およびカルボキシ基は、他の官能基に比べ、アミド結合と相性がよく、特定化合物とポリアミド系熱可塑性エラストマーの非晶部との親和性が高まり、非晶部から特定化合物が離脱しにくいためと考えられる。
(3) 前記低分子量化合物の重量平均分子量が、85〜2200である前記(1)又は(2)に記載のタイヤ。
特定化合物の重量平均分子量(以下、単に「分子量」または「Mw」とも称する)は、85〜2200であることが好ましい。特定化合物の分子量が85以上であることで、タイヤ骨格体の引張弾性率を向上させやすく、2200以下であることで、タイヤ骨格体が硬くなりすぎない。
(4) 前記低分子量化合物の含有量が、ポリアミド系熱可塑性エラストマーの全質量に対して、5質量%〜40質量%である前記(1)〜(3)のいずれか1つに記載のタイヤ。
特定化合物の量が、ポリアミド系熱可塑性エラストマーの全質量に対して、5質量%以上であることで、タイヤ骨格体の引張弾性率を向上させ易く、40質量%以下であることで、タイヤ骨格体が硬くなりすぎない。
既述の本発明のタイヤの製造方法は、上記構成のタイヤを製造し得る方法であれば特に制限されないが、転がり摩擦抵抗に影響を与えにくく、操縦安定性に優れたタイヤを製造する観点からは、次の本発明のタイヤの製造方法であることが好ましい。
(5)本発明のタイヤの製造方法は、ポリアミド系熱可塑性エラストマーと、分子内に水素結合を結合し得る基を有し、且つ、炭素数が3以上のガラス転移温度を有しない低分子量化合物とを混合して熱可塑性樹脂材料を得る混合工程と、
前記熱可塑性樹脂材料を含む材料を用いて、環状のタイヤ骨格体を成形するタイヤ骨格体成形工程と
を含む。
本発明のタイヤの製造方法は、熱可塑性樹脂材料を含んで構成される環状のタイヤ骨格体を有するタイヤの製造方法である。
ポリアミド系熱可塑性エラストマーと、特定化合物とを混合して熱可塑性樹脂材料を得た上でタイヤ骨格体を成形することで、ポリアミド系熱可塑性エラストマーのみを用いてタイヤ骨格体を成形する場合に比べ、タイヤ骨格体の力学的損失係数(転がり係数:tanδ)に変化を与えずに、引張弾性率を向上することができる。
ここで、引張弾性率は、既述のようにタイヤ骨格体の強度や操縦安定性の指標となり、引張弾性率が大きいほど、タイヤ骨格体の強度が大きくなり、操縦安定性が向上する。tanδは、タイヤ骨格体の転がり摩擦抵抗の指標となり、tanδが小さいことは、転がり摩擦抵抗が小さいことを表し、タイヤの発熱性が低く、燃費が良いことを意味する。
すなわち、本発明のタイヤの製造方法によれば、タイヤの発熱性を低く抑えたまま、操縦安定性を向上することができる。
(6)前記水素結合を結合し得る基が、アミノ基およびカルボキシ基の少なくとも一方である前記(5)に記載のタイヤの製造方法。
本発明のタイヤ製造方法に用いる特定化合物は、分子内にアミノ基およびカルボキシ基の少なくとも一方を有し、炭素数が3以上のガラス転移温度を有しない低分子量化合物であることが好ましい。
特定化合物が、アミノ化合物、カルボン酸、またはアミノ酸であることで、ポリアミド系熱可塑性エラストマーの非晶部のアミド結合と特定化合物との親和性が高まると考えられる。その結果、特定化合物がエラストマーの非晶部に入り込んだときに、水素結合と親和力により特定化合物が非晶部から離脱しにくく、タイヤ骨格体が外的負荷を受けた場合にも優れた引張弾性率を維持し易いタイヤを製造することができると考えられる。
(7)前記低分子量化合物の重量平均分子量が、85〜2200である前記(5)または前記(6)に記載のタイヤの製造方法。
特定化合物の分子量を上記範囲とすることで、操縦安定性により優れたタイヤを製造することができる。
(8)前記低分子量化合物を、ポリアミド系熱可塑性エラストマーの全質量に対して、5質量%〜40質量%混合する前記(5)〜(7)のいずれか1つに記載のタイヤ。
特定化合物を、ポリアミド系熱可塑性エラストマーの全質量に対して、上記範囲で混合することで、操縦安定性により優れたタイヤを製造することができる。
以上説明したように、本発明によれば、熱可塑性樹脂材料を用いてなり、操縦安定性に優れるタイヤ、および、転がり摩擦抵抗に影響を与えにくく、操縦安定性に優れたタイヤを製造可能なタイヤの製造方法を提供することができる。
(A)は本発明の製造方法を適用しうるタイヤの一実施形態の一部の断面を示す斜視図であり、(B)は、リムに装着したビード部の断面図である。 本実施形態のタイヤのタイヤ骨格体のクラウン部に補強コードが埋設された状態を示すタイヤ回転軸に沿った断面図である。 コード加熱装置、及びローラ類を用いてタイヤ骨格体のクラウン部に補強コードを埋設する動作を説明するための説明図である。 本実施形態に係るタイヤの製造方法を適用したタイヤAと、当該製造方法を適用せずに製造したタイヤBおよびタイヤCの、引張弾性率および力学的損失係数(転がり係数:tanδ)の変化を示すグラフである。
<タイヤ>
以下、本発明におけるタイヤ骨格体を構成する樹脂材料について説明し、続いて本発明のタイヤの具体的な実施形態について図を用いて説明する。
本発明のタイヤはポリアミド系熱可塑性エラストマーと、分子内に水素結合を結合し得る基を有し、且つ、炭素数が3以上のガラス転移温度を有しない低分子量化合物(特定化合物)とを含有する物熱可塑性樹脂材料で形成された環状のタイヤ骨格体を有する。
熱可塑性樹脂材料が、ポリアミド系熱可塑性エラストマーと特定化合物とを含有することで、タイヤ骨格体の引張弾性率が上がり、操縦安定性に優れる。かかる理由は定かではないが、ポリアミド系熱可塑性エラストマーの非晶部に、特定化合物が介入するとともに、特定化合物が有する水素結合により、非晶部に位置するアミド結合と特定化合物が結ばれているためと考えられる。特定化合物は、炭素数が3以上であるため、水素結合を有し得る水やアンモニアの如き化合物よりも硬質であり、特定化合物が入り込んだ非晶部の引張弾性率を向上しているものと考えられる。また、特定化合物が、分子がばらけている非晶部の分子を束ねる、いわば架橋剤として機能しているとも考えられる。なお、特定化合物は、炭素数が3以上であり、水分子やアンモニア分子等と比べれば硬質であるが、ガラス転移温度を有しない化合物であるので、柔軟性を有しており、エラストマーの非晶部の引張弾性率を大きくしすぎることはないと考えられる。
したがって、熱可塑性樹脂材料が、ポリアミド系熱可塑性エラストマーと特定化合物とを含有することで、タイヤ骨格体の引張弾性率が適度に向上し、操縦安定性に優れると考えられる。
〔熱可塑性樹脂材料〕
前記タイヤ骨格体を構成する熱可塑性樹脂材料には、少なくともポリアミド系熱可塑性エラストマーおよび特定化合物が含まれるが、本発明の効果を損なわない限度において、さらに、ポリエステル系熱可塑性エラストマー等の他のエラストマーや添加剤が含まれていてもよい。
(ポリアミド系熱可塑性エラストマー)
本発明において、
ここで、「ポリアミド系熱可塑性エラストマー」とは、結晶性で融点の高いハードセグメントを構成するポリマーと非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成するポリマーとを有する共重合体からなる熱可塑性樹脂材料であって、ハードセグメントを構成するポリマーの主鎖にアミド結合(−CONH−)を有するものを意味する。ポリアミド系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、JIS K6418:2007に規定されるアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)等や、特開2004−346273号公報に記載のポリアミド系エラストマー等を挙げることができる。
前記ポリアミド系熱可塑性エラストマーは、少なくともポリアミドが結晶性で融点の高いハードセグメントを構成し、他のポリマー(例えば、ポリエステルまたはポリエーテル等)が非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成している材料が挙げられる。また、ポリアミド系熱可塑性エラストマーはハードセグメントおよびソフトセグメントの他に、ジカルボン酸等の鎖長延長剤を用いてもよい。前記ハードセグメントを形成するポリアミドとしては、例えば、下記一般式(1)または一般式(2)で表されるモノマーによって生成されるポリアミドを挙げることができる。
一般式(1)中、Rは、炭素数2〜20の炭化水素の分子鎖、または、炭素数2〜20のアルキレン基を表す。
一般式(2)中、Rは、炭素数3〜20の炭化水素の分子鎖、または、炭素数3〜20のアルキレン基を表す。
一般式(1)中、Rとしては、炭素数3〜18の炭化水素の分子鎖または炭素数3〜18のアルキレン基が好ましく、炭素数4〜15の炭化水素の分子鎖または炭素数4〜15のアルキレン基が更に好ましく、炭素数10〜15の炭化水素の分子鎖または炭素数10〜15のアルキレン基が特に好ましい。また、一般式(2)中、Rとしては、炭素数3〜18の炭化水素の分子鎖または炭素数3〜18のアルキレン基が好ましく、炭素数4〜15の炭化水素の分子鎖または炭素数4〜15のアルキレン基が更に好ましく、炭素数10〜15の炭化水素の分子鎖または炭素数10〜15のアルキレン基が特に好ましい。
前記一般式(1)または一般式(2)で表されるモノマーとしては、ω−アミノカルボン酸やラクタムが挙げられる。また、前記ハードセグメントを形成するポリアミドとしては、これらω−アミノカルボン酸やラクタムの重縮合体や、ジアミンとジカルボン酸との共縮重合体等が挙げられる。
前記ω−アミノカルボン酸としては、6−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、8−アミノオクタン酸、10−アミノカプリン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸などの炭素数5〜20の脂肪族ω−アミノカルボン酸等を挙げることができる。また、ラクタムとしては、ラウリルラクタム、ε−カプロラクタム、ウデカンラクタム、ω−エナントラクタム、2−ピロリドンなどの炭素数5〜20の脂肪族ラクタムなどを挙げることができる。
前記ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、3−メチルペンタメチレンジアミン、メタキシレンジアミンなどの炭素数2〜20の脂肪族ジアミンなどのジアミン化合物を挙げることができる。また、ジカルボン酸は、HOOC−(R)m−COOH(R:炭素数3〜20の炭化水素の分子鎖、m:0または1)で表すことができ、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの炭素数2〜20の脂肪族ジカルボン酸を挙げることができる。
前記ハードセグメントを形成するポリアミドとしては、ラウリルラクタム、ε−カプロラクタムまたはウデカンラクタムを開環重縮合したポリアミドを好ましく用いることができる。
また、前記ソフトセグメントを形成するポリマーとしては、例えば、ポリエステル、ポリエーテルが挙げられ、例えば、ポリエチレングリコール、プリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ABA型トリブロックポリエーテル等が挙げられ、これらを単独でまたは2種以上を用いることができる。また、ポリエーテルの末端にアニモニア等を反応させることによって得られるポリエーテルジアミン等を用いることができる。
ここで、「ABA型トリブロックポリエーテル」とは、下記一般式(3)に示されるポリエーテルを意味する。
一般式(3)中、xおよびzは、1〜20の整数を表す。yは、4〜50の整数を表す。
前記一般式(3)において、xおよびzとしては、それぞれ、1〜18の整数が好ましく、1〜16の整数が更に好ましく、1〜14の整数が特に好ましく、1〜12の整数が最も好ましい。また、前記一般式(3)において、yとしては、それぞれ、5〜45の整数が好ましく、6〜40の整数が更に好ましく、7〜35の整数が特に好ましく、8〜30の整数が最も好ましい。
前記ハードセグメントと前記ソフトセグメントとの組合せとしては、上述で挙げたハードセグメントとソフトセグメントとのそれぞれの組合せを挙げることができる。この中でも、ラウリルラクタムの開環重縮合体/ポリエチレングリコールの組合せ、ラウリルラクタムの開環重縮合体/ポリプロピレングリコールの組合せ、ラウリルラクタムの開環重縮合体/ポリテトラメチレンエーテルグリコールの組合せ、ラウリルラクタムの開環重縮合体/ABA型トリブロックポリエーテルの組合せ、が好ましく、ラウリルラクタムの開環重縮合体/ABA型トリブロックポリエーテルの組合せが特に好ましい。
前記ハードセグメントを構成するポリマー(ポリアミド)の数平均分子量としては、溶融成形性の観点から、300〜15000が好ましい。また、前記ソフトセグメントを構成するポリマーの数平均分子量としては、強靱性および低温柔軟性の観点から、200〜6000が好ましい。更に、前記ハードセグメント(x)およびソフトセグメント(y)との質量比(x:y)は、成形性の観点から、50:50〜90:10が好ましく、50:50〜80:20が更に好ましい。
前記ポリアミド系熱可塑性エラストマーは、前記ハードセグメントを形成するポリマーおよびソフトセグメントを形成するポリマーを公知の方法によって共重合することで合成することができる。
前記ポリアミド系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、市販品の宇部興産(株)の「UBESTA XPA」シリーズ(例えば、XPA9063X1、XPA9055X1、XPA9048X2、XPA9048X1、XPA9040X1、XPA9040X2XPA9044等)、ダイセル・エポニック(株)の「ベスタミド」シリーズ(例えば、E40−S3、E47−S1、E47−S3、E55−S1、E55−S3、EX9200、E50−R2)等を用いることができる。
熱可塑性樹脂材料としては、前記ポリアミド系熱可塑性エラストマー以外にも、他の熱可塑性エラストマーを併用してもよい。他の熱可塑性エラストマーとしては、ハードセグメントを構成するポリマーが、ウレタン、スチレン又はオレフィン等から選ばれる構造を有する単量体を重合させることによって得られる主鎖にウレタン、スチレン又はオレフィン等の骨格を有するポリウレタン、ポリスチレン、ポリオレフィンが挙げられる。他の熱可塑性エラストマーとしては、例えば、JIS K6418に規定される、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPC)、等が挙げられる。
前記他の熱可塑性エラストマーとしては、例えば、市販品を用いることができる。
前記ポリウレタン系熱可塑性樹脂組成物としては、例えば、市販品のBASF社製の「エラストラン」シリーズ(例えば、ET680、ET880、ET690、ET890、C80A、S80A)等を用いることができる。
前記ポリスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、市販品の旭化成社製の「タフテック」シリーズ(例えば、H1031、H1041、H1043、H1051、H1052,H1053,H1082、H1141、H1221、H1272)等を用いることができる。
前記ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、市販品の三井化学社製の「タフマー」シリーズ(例えば、A0550S、A1050S、A4050S、A1070S、A4070S,A35070S、A1085S、A4085S、A7090、A70090、MH7007、MH7010、P275)等を用いることができる。
前記ポリエステル系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、市販品の東レ・デュポン製の「ハイトレル」シリーズ(例えば、3046,5557,6347,4047,4767等)、東洋紡社製「ベルプレン」シリーズ(P30B、P40B、P40H、P55B、P70B、P150B、P280B、P450B、P150M、S1001、S2001、S5001、S6001、S9001等)、三菱化学社製「プリマロイA」シリーズ(A1500N、A1600N、A1700N、A1800N、A1900N等)を用いることができる。
また、本発明において熱可塑性樹脂材料(タイヤ骨格体)中のポリアミド系熱可塑性エラストマーの総含有量は、特に限定されるものではないが、熱可塑性樹脂材料の全質量に対して、50質量%以上が好ましく、90質量%以上が更に好ましい。
(分子内に水素結合を結合し得る基を有し、且つ、炭素数が3以上のガラス転移温度を有しない低分子量化合物 −特定化合物−)
熱可塑性樹脂材料には、分子内に水素結合を結合し得る基を有し、且つ、炭素数が3以上のガラス転移温度を有しない低分子量化合物(特定化合物)が含まれる。
分子内に水素結合を結合し得る基の種類は特に制限されず、例えば、ヒドロキシ基(−OH)、アミノ基(−NH)、カルボキシ基(−COOH)等が挙げられる。
特定化合物は、分子内に、水素結合を結合し得る基を1つのみ有していても、2つ以上を有していてもよい。また、水素結合を結合し得る基は1種のみ有していてもよいし、2種以上を有していてもよい。
水素結合を結合し得る基は、タイヤの操縦安定性の観点から、上記の中でも、アミノ基およびカルボキシ基の少なくとも一方であることが好ましい。
すなわち、特定化合物は、アミノ基を有するアミノ化合物、カルボキシル基を有するカルボン酸、または、アミノ基とカルボキシ基の両方を有するアミノ酸であることが好ましい。特定化合物がアミノ化合物、カルボン酸、またはアミノ酸であることで、タイヤ骨格体の引張弾性率が向上し易い。
既述のように、特定化合物は、分子内に存在する水素結合を結び得る基により、ポリアミド系熱可塑性エラストマーのアミド結合と水素結合を結ぶため、エラストマーの引張弾性率を高くし、その結果、熱可塑性樹脂材料ならびにタイヤ骨格体の引張弾性率を向上する。このとき、特定化合物が、アミド結合を構成するアミノ基ないしカルボキシ基を有することで、アミド結合と特定化合物との親和性が高まり、特定化合物とアミド結合との結びつきが高くなると考えられる。したがって、タイヤ骨格体が外部から物理的な負荷を受けても、アミド結合と特定化合物とが離れにくく、安定した引張弾性率を維持することができると考えられる。
アミノ化合物としては、R−NH〔一般式(A−1);Rは、炭素数3以上の置換基〕で表されるモノアミン、HN−R−NH〔一般式(A−2);Rは、炭素数3以上の2価の連結基〕で表されるジアミン等のアミノ化合物が挙げられる。特定化合物は3つ以上のアミノ基を有するポリアミンいてもよい。
カルボン酸としては、R−COOH〔一般式(C−1);Rは、炭素数3以上の置換基〕で表されるモノカルボン酸、HOOC−R−COOH〔一般式(C−1);Rは、炭素数3以上の2価の連結基〕で表されるジカルボン酸等が挙げられる。特定化合物は3つ以上のカルボキシ基を有するポリカルボン酸でもよい。
アミノ酸としては、HOOC−R−NH〔一般式(AC−1);Rは、炭素数3以上の2価の連結基〕が挙げられる。
上記一般式(A−1)、(A−2)、(C−1)、(C−2)、及び(AC−1)中のR及びRについて説明する。
として表される炭素数3以上の置換基としては、炭素数3以上のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基等の炭化水素基が挙げられる。アルキル基、アルケニル基、及びアルキニル基は、直鎖状でも、分岐状でも、環状でもよい。
アルキル基としては、例えば、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ドデシル基等が挙げられる。
アルケニル基としては、例えば、イソプロペニル基、2−プロペニル基、2−メチル−プロペニル基、1−メチル−1−プロペニル基、1−ブテニル基、3−ブテニル基、1−メチル−1−ブテニル基等が挙げられる。
アルキニル基としては、例えば、プロピニル基、ブチニル基、2−メチル−2−プロピニル基、2−エチニル−1−シクロヘキシル基等が挙げられる。
アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
以上の中でも、熱可塑性樹脂材料の引張弾性率の観点から、Rはアルキル基またはアリール基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
として表される炭素数3以上の2価の連結基としては、炭素数3以上のアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基等の炭化水素基が挙げられる。アルキレン基、アルケニレン基、及びアルキニレン基は、直鎖状でも、分岐状でも、環状でもよい。
アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、及びアリーレン基としては、Rとして説明したアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、及びアリール基から、それぞれ水素原子を1つ取り除いた基が挙げられる。例えば、アルキレン基としては、ドデシレン基(−C1224−)、アリーレン基としては、フェニレン基(−C−)が挙げられる。
中でも、熱可塑性樹脂材料の引張弾性率の観点から、アルキレン基またはフェニレン基が好ましく、アルキレン基がより好ましい。
具体的には、モノアミンとしては、例えば、プロピルアミン、エチルブチルアミン、アニリン、トルイジン、ナフチルアミンなどが挙げられる。ジアミンとしては、例えば、ブタン−1,4−ジアミン、デキサン−1,2−ジアミン、ベンジジン等が挙げられる。
モノカルボン酸としては、プロピオン酸、ラウリン酸、(メタ)アクリル酸、安息香酸等が挙げられる。ジカルボン酸としては、コハク酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸等が挙げられる。
アミノ酸としては、例えば、6−アミノヘキサン酸、アミノドデカン酸、4−アミノベンゾ酸等が挙げられる。
以上のように種々挙げた中でも、ジアミン、ジカルボン酸、及びアミノ酸が好ましく、アミノ酸がより好ましい。
特定化合物の炭素数は、3以上であり、操縦安定性の観点から、6 〜24 であることが好ましい。
また、特定化合物は、常温(例えば、30℃)で固体であることが好ましい。特定化合物が固体であると、熱可塑性樹脂材料の引張弾性率を向上し易い。
特定化合物の重量平均分子量(Mw)は、85〜2200であることが好ましい。特定化合物の分子量が85以上であることで、タイヤ骨格体の引張弾性率を向上しやすく、2200以下であることで、タイヤ骨格体が硬くなりすぎないため、優れた操縦安定性を実現することができる。特定化合物の分子量は、100〜1000であることがより好ましい。
熱可塑性樹脂材料中の特定化合物の含有量は、ポリアミド系熱可塑性エラストマーの全質量に対して、5質量%〜40質量%であることが好ましい。
特定化合物の量が、ポリアミド系熱可塑性エラストマーの全質量に対して、5質量%以上であることで、タイヤ骨格体の引張弾性率を向上し易く、40質量%以下であることで、タイヤ骨格体が硬くなりすぎないため、優れた操縦安定性を実現することができる。特定化合物の分子量は、ポリアミド系熱可塑性エラストマーの全質量に対して5質量%〜20質量%であることがより好ましい。
熱可塑性樹脂材料には、所望に応じて、ゴム、他の熱可塑性エラストマー、熱可塑性樹脂、各種充填剤(例えば、シリカ、炭酸カルシウム、クレイ)、老化防止剤、オイル、可塑剤、着色剤、耐候剤、補強材等の各種添加剤を含有させてもよい。
熱可塑性樹脂材料は、ポリアミド系熱可塑性エラストマーと特定化合物とを混合し、必要に応じて各種添加剤を添加して、公知の方法(例えば、溶融混合)で適宜混合することにより得ることができる。溶融混合して得られた熱可塑性樹脂材料は、必要に応じてペレット状にして用いることができる。
熱可塑性樹脂材料(タイヤ骨格体)自体の融点(または軟化点)としては、通常100℃〜350℃、好ましくは100℃〜250℃程度であるが、タイヤの生産性の観点から120℃〜250℃程度が好ましく、120℃〜200℃が更に好ましい。このように、融点が120〜250℃の熱可塑性エラストマーを含む熱可塑性樹脂材料を用いることで、例えばタイヤの骨格体を、その分割体(骨格片)を融着して形成する場合に、120℃〜250℃の周辺温度範囲で融着された骨格体であってもタイヤ骨格片同士の接着強度が十分である。このため、本発明のタイヤは耐パンク性や耐摩耗性など走行時における耐久性に優れる。尚、前記加熱温度は、タイヤ骨格片を形成する熱可塑性エラストマーを含む熱可塑性樹脂材料の融点(または軟化点)よりも10〜150℃高い温度が好ましく、10〜100℃高い温度が更に好ましい。
熱可塑性樹脂材料(タイヤ骨格体)自体のJIS K7113:1995に規定される引張弾性率(以下、特に特定しない限り本明細書で「弾性率」とは引張弾性率を意味する。)としては、100〜1000MPaが好ましく、100〜800MPaがさらに好ましく、100〜700MPaが特に好ましい。樹脂材料の引張弾性率が、100〜700MPaであると、タイヤ骨格の形状を保持しつつリム組みを効率的におこなうことができる。
熱可塑性樹脂材料(タイヤ骨格体)自体のJIS K7113:1995に規定される引張降伏強さは、5MPa以上が好ましく、5〜20MPaが好ましく、5〜17MPaがさらに好ましい。樹脂材料の引張降伏強さが、5MPa以上であると、走行時などにタイヤにかかる荷重に対する変形に耐えることができる。
熱可塑性樹脂材料(タイヤ骨格体)自体のJIS K7113:1995に規定される引張降伏伸びは、10%以上が好ましく、10〜70%が好ましく、15〜60%がさらに好ましい。熱可塑性樹脂材料の引張降伏伸びが、10%以上であると、弾性領域が大きく、リム組み性をよくすることができる。
熱可塑性樹脂材料(タイヤ骨格体)自体のJIS K7113:1995に規定される引張破断伸びとしては、50%以上が好ましく、100%以上が好ましく、150%以上がさらに好ましく、200%以上が特に好ましい。熱可塑性樹脂材料の引張破断伸びが、50%以上であると、リム組み性がよく、衝突に対して破壊しにくくすることができる。
熱可塑性樹脂材料(タイヤ骨格体)自体のISO75−2またはASTM D648に規定される荷重たわみ温度(0.45MPa荷重時)としては、50℃以上が好ましく、50〜150℃が好ましく、50〜130℃がさらに好ましい。熱可塑性樹脂材料の荷重たわみ温度が、50℃以上であると、タイヤの製造において加硫を行う場合であってもタイヤ骨格体の変形を抑制することができる。
[本実施形態]
以下に、図面に従って本発明のタイヤの本実施形態に係るタイヤを説明する。
本実施形態のタイヤ10について説明する。図1(A)は、本発明の一実施形態に係るタイヤの一部の断面を示す斜視図である。図1(B)は、リムに装着したビード部の断面図である。図1に示すように、本実施形態のタイヤ10は、従来一般のゴム製の空気入りタイヤと略同様の断面形状を呈している。
図1(A)に示すように、タイヤ10は、図1(B)に示すリム20のビードシート21およびリムフランジ22に接触する1対のビード部12と、ビード部12からタイヤ径方向外側に延びるサイド部14と、一方のサイド部14のタイヤ径方向外側端と他方のサイド部14のタイヤ径方向外側端とを連結するクラウン部16(外周部)と、からなるタイヤケース(タイヤ骨格体)17を備えている。
ここで、本実施形態のタイヤケース(タイヤ骨格体)17は、ポリアミド系熱可塑性エラストマー(例えば、宇部興産社製、UBESTA、「XPA9048X1」:弾性率183MPa)と特定化合物としてアミノドデカン酸とを含む。
本実施形態においてタイヤケース17は、単一の熱可塑性樹脂材料(ポリアミド系熱可塑性エラストマー+特定化合物)で形成されているが、本発明はこの構成に限定されず、従来一般のゴム製の空気入りタイヤと同様に、タイヤケース17の各部位毎(サイド部14、クラウン部16、ビード部12など)に異なる特徴を有する熱可塑性樹脂材料を用いてもよい。また、タイヤケース17(例えば、ビード部12、サイド部14、クラウン部16等)に、補強材(高分子材料や金属製の繊維、コード、不織布、織布等)を埋設配置し、補強材でタイヤケース17を補強してもよい。
本実施形態のタイヤケース17は、ポリアミド系熱可塑性エラストマーと特定化合物(アミノドデカン酸)とを含む熱可塑性樹脂材料で形成された一対のタイヤケース半体(タイヤ骨格片)17A同士を接合させたものである。タイヤケース半体17Aは、一つのビード部12と一つのサイド部14と半幅のクラウン部16とを一体として射出成形等で成形された同一形状の円環状のタイヤケース半体17Aを互いに向かい合わせてタイヤ赤道面部分で接合することで形成されている。なお、タイヤケース17は、2つの部材を接合して形成するものに限らず、3以上の部材を接合して形成してもよい。
熱可塑性樹脂材料で形成されるタイヤケース半体17Aは、例えば、真空成形、圧空成形、インジェクション成形、メルトキャスティング等で成形することができる。このため、従来のようにゴムでタイヤケースを成形する場合に比較して、加硫を行う必要がなく、製造工程を大幅に簡略化でき、成形時間を省略することができる。
また、本実施形態では、タイヤケース半体17Aは左右対称形状、即ち、一方のタイヤケース半体17Aと他方のタイヤケース半体17Aとが同一形状とされているので、タイヤケース半体17Aを成形する金型が1種類で済むメリットもある。
本実施形態において、図1(B)に示すようにビード部12には、従来一般の空気入りタイヤと同様の、スチールコードからなる円環状のビードコア18が埋設されている。しかし、本発明はこの構成に限定されず、ビード部12の剛性が確保され、リム20との嵌合に問題なければ、ビードコア18を省略することもできる。なお、スチールコード以外に、有機繊維コード、樹脂被覆した有機繊維コード、または硬質樹脂などで形成されていてもよい。
本実施形態では、ビード部12のリム20と接触する部分や、少なくともリム20のリムフランジ22と接触する部分に、タイヤケース17を構成する熱可塑性樹脂材料よりもシール性に優れた材料、例えば、ゴムからなる円環状のシール層24が形成されている。このシール層24はタイヤケース17(ビード部12)とビードシート21とが接触する部分にも形成されていてもよい。タイヤケース17を構成する熱可塑性樹脂材料よりもシール性に優れた材料としては、タイヤケース17を構成する熱可塑性樹脂材料に比して軟質な材料を用いることができる。シール層24に用いることのできるゴムとしては、従来一般のゴム製の空気入りタイヤのビード部外面に用いられているゴムと同種のゴムを用いることが好ましい。また、タイヤケース17を形成する熱可塑性樹脂材料のみでリム20との間のシール性が確保できれば、ゴムのシール層24は省略してもよく、熱可塑性樹脂材料よりもシール性に優れる他の熱可塑性樹脂(熱可塑性エラストマー)を用いてもよい。このような他の熱可塑性樹脂としては、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル樹脂等の樹脂やこれら樹脂とゴム若しくはエラストマーとのブレンド物等が挙げられる。また、熱可塑性エラストマーを用いることもでき、例えば、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、或いは、これらエラストマー同士の組み合わせや、ゴムとのブレンド物等が挙げられる。
図1に示すように、クラウン部16には、タイヤケース17を構成する熱可塑性樹脂材料よりも剛性が高い補強コード26がタイヤケース17の周方向に巻回されている。補強コード26は、タイヤケース17の軸方向に沿った断面視で、少なくとも一部がクラウン部16に埋設された状態で螺旋状に巻回されており、補強コード層28を形成している。補強コード層28のタイヤ径方向外周側には、タイヤケース17を構成する熱可塑性樹脂材料よりも耐摩耗性に優れた材料、例えばゴムからなるトレッド30が配置されている。
図2を用いて補強コード26によって形成される補強コード層28について説明する。図2は、本実施形態のタイヤのタイヤケースのクラウン部に補強コードが埋設された状態を示すタイヤ回転軸に沿った断面図である。図2に示されるように、補強コード26は、タイヤケース17の軸方向に沿った断面視で、少なくとも一部がクラウン部16に埋設された状態で螺旋状に巻回されており、タイヤケース17の外周部の一部と共に図2において破線部で示される補強コード層28を形成している。補強コード26のクラウン部16に埋設された部分は、クラウン部16(タイヤケース17)を構成する熱可塑性樹脂材料と密着した状態となっている。補強コード26としては、金属繊維や有機繊維等のモノフィラメント(単線)、または、スチール繊維を撚ったスチールコードなどこれら繊維を撚ったマルチフィラメント(撚り線)などを用いることができる。なお、本実施形態において補強コード26としては、スチールコードが用いられている。
また、図2において埋設量Lは、タイヤケース17(クラウン部16)に対する補強コード26のタイヤ回転軸方向への埋設量を示す。補強コード26のクラウン部16に対する埋設量Lは、補強コード26の直径Dの1/5以上であれば好ましく、1/2を超えることがさらに好ましい。そして、補強コード26全体がクラウン部16に埋設されることが最も好ましい。補強コード26の埋設量Lが、補強コード26の直径Dの1/2を超えると、補強コード26の寸法上、埋設部から飛び出し難くなる。また、補強コード26全体がクラウン部16に埋設されると、表面(外周面)がフラットになり、補強コード26が埋設されたクラウン部16上に部材が載置されても補強コード周辺部に空気が入るのを抑制することができる。なお、補強コード層28は、従来のゴム製の空気入りタイヤのカーカスの外周面に配置されるベルトに相当するものである。
上述のように補強コード層28のタイヤ径方向外周側にはトレッド30が配置されている。このトレッド30に用いるゴムは、従来のゴム製の空気入りタイヤに用いられているゴムと同種のゴムを用いることが好ましい。なお、トレッド30の代わりに、タイヤケース17を構成する熱可塑性樹脂材料よりも耐摩耗性に優れる他の種類の熱可塑性樹脂材料で形成したトレッドを用いてもよい。また、トレッド30には、従来のゴム製の空気入りタイヤと同様に、路面との接地面に複数の溝からなるトレッドパターンが形成されている。
<タイヤの製造方法>
以下、本発明のタイヤの製造方法について説明する。
本発明のタイヤの製造方法は、ポリアミド系熱可塑性エラストマーと、分子内に水素結合を結合し得る基を有し、且つ、炭素数が3以上のガラス転移温度を有しない低分子量化合物とを混合して熱可塑性樹脂材料を得る混合工程と、前記熱可塑性樹脂材料を含む材料を用いて、環状のタイヤ骨格体を成形するタイヤ骨格体成形工程とを含む。
本発明のタイヤの製造方法は、さらに、補強コード部材巻回工程を含んでいてもよい。
〔混合工程〕
混合工程では、ポリアミド系熱可塑性エラストマーと、分子内に水素結合を結合し得る基を有し、且つ、炭素数が3以上のガラス転移温度を有しない低分子量化合物とを混合して熱可塑性樹脂材料を得る。
混合工程で用いるポリアミド系熱可塑性エラストマーおよび特定化合物の詳細は、記述のとおりであり、特定化合物の好ましい態様も同様である。
ポリアミド系熱可塑性エラストマーおよび特定化合物のほかに、必要に応じて各種添加剤を添加して混合してもよい。混合方法は、特に制限されず、公知の方法で適宜混合すればよいが、特定化合物と、ポリアミド系熱可塑性エラストマーのアミド結合との水素結合を結び易くさせる観点からは、押出機を用いた溶融混練により混合することが好ましい。
ポリアミド系熱可塑性エラストマーと特定化合物とを溶融混練するときは、二軸押出機を用い、二軸スクリューの回転速度を80rpm〜120rpmとすることが好ましい。また、溶融混練時間は、2分〜10分であることが好ましい。
また、特定化合物は、ポリアミド系熱可塑性エラストマーの全質量に対して、5 質量%〜40 質量%の範囲で混合することが好ましい。かかる範囲で特定化合物を混合することで、本発明におけるタイヤ骨格体を構成する熱可塑性樹脂材料に含まれる特定化合物の含有量が、既述の範囲となり、操縦安定性に優れたタイヤを製造し易い。
溶融混合して得られた熱可塑性樹脂材料は、必要に応じてペレット状にして用いることができる。
〔タイヤ骨格体成形工程〕
タイヤ骨格体成形工程では、混合工程で得られた熱可塑性樹脂材料を含む材料を用いて、環状のタイヤ骨格体(タイヤケース)を成形する。
具体的には、次のように行うことが好ましい。
まず、薄い金属の支持リングに支持されたタイヤケース半体同士を互いに向かい合わせる。次いで、タイヤケース半体の突き当て部分の外周面と接するように図を省略する接合金型を設置する。ここで、前記接合金型はタイヤケース半体Aの接合部(突き当て部分)周辺を所定の圧力で押圧するように構成されている。次いで、タイヤケース半体の接合部周辺を、タイヤケースを構成する熱可塑性樹脂材料の融点(または軟化点)以上で押圧する。タイヤケース半体の接合部が接合金型によって加熱・加圧されると、前記接合部が溶融しタイヤケース半体同士が融着しこれら部材が一体となってタイヤケース17が形成される。尚、本実施形態においては接合金型を用いてタイヤケース半体の接合部を加熱したが、本発明はこれに限定されず、例えば、別に設けた高周波加熱機等によって前記接合部を加熱したり、予め熱風、赤外線の照射等によって軟化または溶融させ、接合金型によって加圧して。タイヤケース半体を接合させてもよい。
タイヤを、上記構成の工程で製造することにより、熱可塑性樹脂材料が特定化合物を含有せずにタイヤ骨格体(タイヤケース)を製造することにより、30℃〜60℃におけるタイヤ骨格体のtanδを維持したまま、弾性率を大きくすることができる。すなわち、ポリアミド系熱可塑性エラストマーおよび特定化合物を含有する熱可塑性樹脂材料で構成された本発明のタイヤ骨格体Aと、ポリアミド系熱可塑性エラストマーを含有し、特定化合物を含有しない熱可塑性樹脂材料で構成されたタイヤ骨格体Bとは、30℃〜60℃におけるタイヤ骨格体のtanδは同等でありながら、弾性率はタイヤ骨格体Aの方が大きくなる。
なお、tanδは、30℃,20Hz,せん断歪み1%における貯蔵剪断弾性率(G’)と損失剪断弾性率(G”)との比(G”/G‘)から算出される値であり、材料が変形する際にその材料がどの程度のエネルギーを吸収するか(熱に変わるか)を示す値である。Tanδは、値が大きい程エネルギーを吸収するため、タイヤとしての転がり抵抗が増大し、結果としてタイヤの燃費性能低下の要因となる。
熱可塑性樹脂材料およびタイヤ骨格体のtanδは、動的粘弾性測定装置(Dynamic−Mechanical Analysis:DMA)で測定することができる。
したがって、本発明のタイヤの製造方法によれば、特定化合物を含有しない熱可塑性樹脂材料を用いて形成したタイヤ骨格体で製造されたタイヤに比べ、タイヤの発熱性特性を維持したまま、操縦安定性を向上したタイヤを製造することができる。
これを、図4を用いて説明する。
図4は、熱可塑性樹脂材料として、ポリアミド系熱可塑性エラストマーと、特定化合物(アミノドデカン酸)とを含有する熱可塑性樹脂材料を用いて成形したタイヤ骨格体を用いて製造したタイヤA、ポリアミド系熱可塑性エラストマーのみを含有する熱可塑性樹脂材料を用いて成形したタイヤ骨格体Bを用いて製造したタイヤ、および、熱可塑性樹脂材料として、ポリアミド系熱可塑性エラストマーと、ガラス転移温度を有する化合物(ポリアミド12)とを含有する熱可塑性樹脂材料を用いて成形したタイヤ骨格体を用いて製造したタイヤCについての、引張弾性率および30℃,20Hz,せん断歪み1%における力学的損失係数(転がり係数:tanδ)の変化を示すグラフである。
なお、いずれも、ポリアミド系エラストマーとして、宇部興産製の「ウベスタXPA9048X1(Tg−20℃)」を用いた。
図4には、タイヤAについての曲線(曲線A;実線)と、タイヤBについての曲線(曲線B;破線)と、タイヤCについての曲線(曲線C;一点鎖線)とが示されており、曲線A〜曲線Cは、それぞれ左上方から右下方へ伸びる曲線(1)と、0℃付近に極大を有する曲線(2)との2種が示されている。
曲線(1)における曲線A〜曲線C、ならびに、曲線(2)における曲線A〜曲線Cは、いずれも、横軸は温度(Temp.)〔℃〕であり、共通する。
左上方から右下方へ伸びる曲線(1)は、左側の縦軸(logG’)を適用する。つまり、曲線(1)は、タイヤの引張弾性率の温度変化を表すグラフである。
−30℃〜0℃に極大を有する曲線(2)は、右側の縦軸(tanδ)を適用する。つまり、曲線(2)は、タイヤの転がり摩擦抵抗の指標となる力学的損失係数(転がり係数:tanδ)の温度変化を表すグラフである。
まず、曲線(1)(logG’)からわかるように、熱可塑性樹脂材料が、特定化合物またはポリマーを含有しないタイヤBの曲線B(破線)を基準として、特定化合物Aを含むタイヤの曲線Aと、ポリマーを含むタイヤCの曲線Cは、−30℃〜120℃の広い範囲にわたって、弾性率(logG’)が大きくなっていることがわかる。つまり、タイヤAおよびタイヤCは、タイヤBに比べ、操縦安定性が高くなる傾向にある。
一方、曲線(2)(tanδ)において、タイヤBの曲線Bを基準に、タイヤAの曲線Aと、タイヤCの曲線Cとを比べると、曲線Aは30℃〜90℃の範囲にわたって、曲線Bとほぼ同じ曲線を辿っている。つまり、熱可塑性樹脂材料がポリアミド系熱可塑性エラストマーのみを含有していても、特定化合物をさらに含有していても、得られるタイヤのtanδには変化が無く、タイヤの転がり摩擦抵抗や発熱性等の特性を維持することができていることがわかる。
しかし、ポリアミド系熱可塑性エラストマーとガラス転移温度(Tg)を有する化合物(ポリアミド12)を含有する熱可塑性樹脂材料を用いて製造したタイヤであるタイヤCの曲線Cは、曲線Aおよび曲線Bと異なり、30℃〜60℃の付近に、tanδの副分散を示す極大が示されている。これは、30℃〜60℃の温度領域における熱可塑性樹脂材料の緩和現象を示すもので、ポリマーのTgに起因すると考えられる。つまり、特定化合物の代わりに、Tgを有する化合物を用いてタイヤを製造すると、タイヤ骨格体の弾性率が上がり、操縦安定性は良くなるものの、タイヤが通常用いられる温度領域である30℃〜60℃においてtanδも大きくなってしまい、転がり摩擦抵抗が大きくなったり、発熱し易くなることがわかる。
また、曲線Aで、曲線Cのごとき30℃〜60℃で、tanδの副分散の極大が無いのは、アミノドデカン酸が、ポリマー(ポリアミド12)に比べ、非常に結晶性が高く、非晶部を形成しないためとも考えられる。
(補強コード部材巻回工程)
次に、補強コード巻回工程について図3を用いて説明する。図3は、コード加熱装置、およびローラ類を用いてタイヤケースのクラウン部に補強コードを埋設する動作を説明するための説明図である。図3において、コード供給装置56は、補強コード26を巻き付けたリール58と、リール58のコード搬送方向下流側に配置されたコード加熱装置59と、補強コード26の搬送方向下流側に配置された第1のローラ60と、第1のローラ60をタイヤ外周面に対して接離する方向に移動する第1のシリンダ装置62と、第1のローラ60の補強コード26の搬送方向下流側に配置される第2のローラ64と、および第2のローラ64をタイヤ外周面に対して接離する方向に移動する第2のシリンダ装置66と、を備えている。第2のローラ64は、金属製の冷却用ローラとして利用することができる。また、本実施形態において、第1のローラ60または第2のローラ64の表面は、溶融または軟化した樹脂材料の付着を抑制するためにフッ素樹脂(本実施形態では、テフロン(登録商標))でコーティングされている。なお、本実施形態では、コード供給装置56は、第1のローラ60または第2のローラ64の2つのローラを有する構成としているが、本発明はこの構成に限定されず、何れか一方のローラのみ(即ち、ローラ1個)を有している構成でもよい。
また、コード加熱装置59は、熱風を生じさせるヒーター70およびファン72を備えている。また、コード加熱装置59は、内部に熱風が供給される、内部空間を補強コード26が通過する加熱ボックス74と、加熱された補強コード26を排出する排出口76とを備えている。
本工程においては、まず、コード加熱装置59のヒーター70の温度を上昇させ、ヒーター70で加熱された周囲の空気をファン72の回転によって生じる風で加熱ボックス74へ送る。次に、リール58から巻き出した補強コード26を、熱風で内部空間が加熱された加熱ボックス74内へ送り加熱(例えば、補強コード26の温度を100〜200℃程度に加熱)する。加熱された補強コード26は、排出口76を通り、図3の矢印R方向に回転するタイヤケース17のクラウン部16の外周面に一定のテンションをもって螺旋状に巻きつけられる。ここで、加熱された補強コード26がクラウン部16の外周面に接触すると、接触部分の樹脂材料が溶融または軟化し、加熱された補強コード26の少なくとも一部がクラウン部16の外周面に埋設される。このとき、溶融または軟化した樹脂材料に加熱された補強コード26が埋設されるため、樹脂材料と補強コード26とが隙間がない状態、つまり密着した状態となる。これにより、補強コード26を埋設した部分へのエア入りが抑制される。なお、補強コード26をタイヤケース17の樹脂材料の融点(または軟化点)よりも高温に加熱することで、補強コード26が接触した部分の樹脂材料の溶融または軟化が促進される。このようにすることで、クラウン部16の外周面に補強コード26を埋設しやすくなると共に、効果的にエア入りを抑制することができる。
また、補強コード26の埋設量Lは、補強コード26の加熱温度、補強コード26に作用させるテンション、および第1のローラ60による押圧力等によって調整することができる。そして、本実施形態では、補強コード26の埋設量Lが、補強コード26の直径Dの1/5以上となるように設定されている。なお、補強コード26の埋設量Lとしては、直径Dの1/2を超えることがさらに好ましく、補強コード26全体が埋設されることが最も好ましい。
このようにして、加熱した補強コード26をクラウン部16の外周面に埋設しながら巻き付けることで、タイヤケース17のクラウン部16の外周側に補強コード層28が形成される。
次に、タイヤケース17の外周面に加硫済みの帯状のトレッド30を1周分巻き付けてタイヤケース17の外周面にトレッド30を、接着剤などを用いて接着する。なお、トレッド30は、例えば、従来知られている更生タイヤに用いられるプレキュアトレッドを用いることができる。本工程は、更生タイヤの台タイヤの外周面にプレキュアトレッドを接着する工程と同様の工程である。
そして、タイヤケース17のビード部12に、加硫済みのゴムからなるシール層24を、接着剤等を用いて接着すれば、タイヤ10の完成となる。
このようにして得られたタイヤ10は、特定化合物を含まない熱可塑性樹脂材料を用いて得られたタイヤに比べ、タイヤケース17の弾性率が大きく、操縦安定性に優れる。
また、本実施形態のタイヤ10では、樹脂材料で形成されたタイヤケース17のクラウン部16の外周面に前記樹脂材料よりも剛性が高い補強コード26が周方向へ螺旋状に巻回されていることから耐パンク性、耐カット性、およびタイヤ10の周方向剛性が向上する。なお、タイヤ10の周方向剛性が向上することで、熱可塑性樹脂材料で形成されたタイヤケース17のクリープが防止される。
また、タイヤケース17の軸方向に沿った断面視(図1に示される断面)で、樹脂材料で形成されたタイヤケース17のクラウン部16の外周面に補強コード26の少なくとも一部が埋設され且つ樹脂材料に密着していることから、製造時のエア入りが抑制されており、走行時の入力などによって補強コード26が動くのが抑制される。これにより、補強コード26、タイヤケース17、およびトレッド30に剥離などが生じるのが抑制され、タイヤ10の耐久性が向上する。
このように補強コード層28が、樹脂材料を含んで構成されていると、補強コード26をクッションゴムで固定する場合と比してタイヤケース17と補強コード層28との硬さの差を小さくできるため、更に補強コード26をタイヤケース17に密着・固定することができる。これにより、上述のエア入りを効果的に防止することができ、走行時に補強コード部材が動くのを効果的に抑制することができる。
更に、補強コード26がスチールコードの場合に、タイヤ処分時に補強コード26を加熱によって樹脂材料から容易に分離・回収が可能であるため、タイヤ10のリサイクル性の点で有利である。また、樹脂材料は加硫ゴムに比して損失係数(Tanδ)が低いため、補強コード層28が樹脂材料を多く含んでいると、タイヤの転がり性を向上させることができる。更には、樹脂材料は加硫ゴムに比して、面内せん断剛性が大きく、タイヤ走行時の操安性や耐摩耗性にも優れるといった利点がある。
そして、図2に示すように、補強コード26の埋設量Lが直径Dの1/5以上となっていることから、製造時のエア入りが効果的に抑制されており、走行時の入力などによって補強コード26が動くのがさらに抑制される。
また、路面と接触するトレッド30を、タイヤケース17を構成する樹脂材料よりも耐摩耗性のあるゴム材で構成していることから、タイヤ10の耐摩耗性が向上する。
さらに、ビード部12には、金属材料からなる環状のビードコア18が埋設されていることから、従来のゴム製の空気入りタイヤと同様に、リム20に対してタイヤケース17、すなわちタイヤ10が強固に保持される。
またさらに、ビード部12のリム20と接触する部分に、タイヤケース17を構成する樹脂材料よりもシール性のあるゴム材からなるシール層24が設けられていることから、タイヤ10とリム20との間のシール性が向上する。このため、リム20とタイヤケース17を構成する樹脂材料のみとでシールする場合と比較して、タイヤ内の空気漏れがより一層抑制される。また、シール層24を設けることでリムフィット性も向上する。
上述の実施形態では、補強コード26を加熱し、加熱した補強コード26が接触する部分のタイヤケース17の表面を溶融または軟化させる構成としたが、本発明はこの構成に限定されず、補強コード26を加熱せずに熱風生成装置を用い、補強コード26が埋設されるクラウン部16の外周面を加熱した後、補強コード26をクラウン部16に埋設するようにしてもよい。
また、本実施形態では、コード加熱装置59の熱源をヒーターおよびファンとしているが、本発明はこの構成に限定されず、補強コード26を輻射熱(例えば、赤外線など)で直接加熱する構成としてもよい。
さらに、本実施形態では、補強コード26を埋設した熱可塑性樹脂材料が溶融または軟化した部分を金属製の第2のローラ64で強制的に冷却する構成としたが、本発明はこの構成に限定されず、熱可塑性樹脂材料が溶融または軟化した部分に冷風を直接吹きかけて、熱可塑性樹脂材料の溶融または軟化した部分を強制的に冷却固化する構成としてもよい。
また、本実施形態では、補強コード26を加熱する構成としたが、例えば、補強コード26の外周をタイヤケース17と同じ樹脂材料で被覆する構成としてもよく、この場合には、被覆補強コードをタイヤケース17のクラウン部16に巻き付ける際に、補強コード26と共に被覆した樹脂材料も加熱することで、クラウン部16への埋設時におけるエア入りを効果的に抑制することができる。
また、補強コード26は螺旋巻きするのが製造上は容易だが、幅方向で補強コード26を不連続とする方法等も考えられる。
本実施形態のタイヤ10は、ビード部12をリム20に装着することで、タイヤ10とリム20との間で空気室を形成する、所謂チューブレスタイヤであるが、本発明はこの構成に限定されず、完全なチューブ形状であってもよい。
以上、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、これらの実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲がこれらの実施形態に限定されないことは言うまでもない。
以下、本発明について実施例を用いてより具体的に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
まず、上述の本実施形態に従って、実施例および比較例のタイヤを成形した。この際、タイヤケースを形成する材料については下記の材料を用いた。また、各実施例および比較例について、材料の物性評価およびタイヤ性能の評価を下記に従っておこなった。
1.ポリアミド系熱可塑性エラストマー
宇部興産社製、「ウベスタXPA9048X1」(下記表1中、「PA」と記載)
2.特定化合物
アミノドデカン酸 (下記表1中、「ADA」と記載)
〔一般式(AC−1)において、Rが直鎖状のアルキレン基であるアミノ酸〕
3.Tgを有する化合物(ポリマー)
ポリアミド12(宇部興産社製、「3012U」(下記表1中、「PA12」と記載)
<損失係数(Tanδ)、引張弾性率の評価>
表1に示すポリアミド系熱可塑性エラストマー、アミノ酸、及びポリマーを用いて、表1に示す組成で混合し、混合物を得た。得られた混合物を、住友重工社製、SE30Dを用い、射出成形を行い、成形温度180℃〜260℃、金型温度50℃〜70℃とし、100mm×30mm、厚さ2.0mmのサンプルを得た。
各サンプルを打ち抜き、JISK6251:1993に規定されるダンベル状試料片(5号形試料片)を作製した。
次いで、島津製作所社製、島津オートグラフAGS−J(5KN)を用いて、引張速度を200mm/minに設定し、前記各ダンベル状試料片の30℃における引張弾性率およびtanδを測定した。結果を表1に示す。
ポリアミド系熱可塑性エラストマーを用いて得られたタイヤ骨格体は耐熱性が良好であり、また、タイヤBと、タイヤAとを比較すると、tanδにほとんど変化が無いまま、弾性率が大きくなっていることがわかる。一方、タイヤCは、タイヤAと同様に弾性率が大きくなっているものの、tanδも大きくなっていることがわかった。
なお、図4の曲線Aは実施例1のタイヤAの評価結果を表し、曲線Bは参考例1のタイヤBの評価結果を表し、曲線Cは比較例1のタイヤCの評価結果を表している。
10 タイヤ
12 ビード部
16 クラウン部(外周部)
18 ビードコア
20 リム
21 ビードシート
22 リムフランジ
17 タイヤケース(タイヤ骨格体)
24 シール層(シール部)
26 補強コード(補強コード部材)
28 補強コード層
30 トレッド
D 補強コードの直径(補強コード部材の直径)
L 補強コードの埋設量(補強コード部材の埋設量)

Claims (4)

  1. ポリアミド系熱可塑性エラストマーと、アミノ基及びカルボキシル基の少なくとも一方を含み、炭素数が3以上のガラス転移温度を有しない重量平均分子量が85〜2200の低分子量化合物とを含有する熱可塑性樹脂材料で形成された環状のタイヤ骨格体を有するタイヤ。
  2. 前記低分子量化合物の含有量が、ポリアミド系熱可塑性エラストマーの全質量に対して、5質量%〜40質量%である請求項1に記載のタイヤ。
  3. ポリアミド系熱可塑性エラストマーと、アミノ基及びカルボキシル基の少なくとも一方を含み、炭素数が3以上のガラス転移温度を有しない重量平均分子量が85〜2200の低分子量化合物とを混合して熱可塑性樹脂材料を得る混合工程と、
    前記熱可塑性樹脂材料を含む材料を用いて、環状のタイヤ骨格体を成形するタイヤ骨格体成形工程と
    を含むタイヤの製造方法。
  4. 前記低分子量化合物を、ポリアミド系熱可塑性エラストマーの全質量に対して、5質量%〜40質量%混合する請求項3に記載のタイヤの製造方法。
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