JP2017095616A - タイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】湿熱条件下に晒された場合でも、転がり抵抗の増加が抑制されるタイヤを提供する。【解決手段】少なくとも、(A)アミド結合及びエステル結合の少なくとも一方を有する樹脂材料と、(B)カルボジイミド化合物と、を含み、前記樹脂材料100質量部に対する前記カルボジイミド化合物の含有量が0.3質量部以上6質量部未満である樹脂組成物で形成されるタイヤ骨格体を有するタイヤ。【選択図】図1

Description

本発明は、タイヤに関する。
近年、軽量化や、成形の容易さ、リサイクルのしやすさから、樹脂材料、特に熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマーなどをタイヤ材料として用いることが検討されている。
特に、その高い耐熱性と小さな転がり抵抗性から、特許文献1ではアミド結合やエステル結合を有するような樹脂材料をタイヤ材料として用いる検討が多くなされている。
特開2012−046030公報
樹脂材料を用いたタイヤの多くは、タイヤ骨格体や補強コード部材等にアミド結合やエステル結合を有するような樹脂材料を用いており、このような樹脂材料を用いたタイヤを使用するに際しては、長期使用に耐える等の高い経済性が求められる。タイヤの経済性に直接影響する物性としては、タイヤの転がり抵抗が挙げられる。
一方、タイヤを長期間使用する場合には、タイヤが高温多湿な環境下に置かれることが想定されるが、このような条件下において前述のアミド結合やエステル結合を有するような樹脂材料を用いたタイヤは、使用期間を増すごとに転がり抵抗性が悪化していくことが分かってきている。
ところが、このような樹脂材料を用いたタイヤが高温多湿な条件下(湿熱条件下)に晒された場合に、タイヤの転がり抵抗がどのように変化するかは不明な点が多く、これに対する有効な解決策は未だ提案されていない。
以上の状況に鑑み、本発明は、湿熱条件下に晒された場合でも、転がり抵抗の増加が抑制されるタイヤを提供することを目的とする。
<1>少なくとも、(A)アミド結合及びエステル結合の少なくとも一方を有する樹脂材料と、(B)カルボジイミド化合物と、を含み、前記樹脂材料100質量部に対する前記カルボジイミド化合物の含有量が0.3質量部以上6質量部未満である樹脂組成物で形成されるタイヤ骨格体を有するタイヤ。
<2>前記樹脂材料が、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド樹脂及びポリエステル樹脂から選ばれる少なくとも1つの樹脂を含む<1>に記載のタイヤ。
<3>前記タイヤ骨格体の外周部に周方向に巻回されることで補強コード層を形成する補強コード部材をさらに有し、前記補強コード部材は、少なくとも被覆用樹脂によって被覆された<1>又は<2>に記載のタイヤ。
<4>前記被覆用樹脂が、前記樹脂材料である<3>に記載のタイヤ。
<5>前記被覆用樹脂が、前記樹脂組成物である<3>に記載のタイヤ。
本発明は、湿熱条件下に晒された場合でも、転がり抵抗の増加が抑制されるタイヤを提供できる。
(A)は、本発明の第1実施形態に係るタイヤの一部の断面を示す斜視図であり、(B)は、リムに装着したビード部の断面図である。 第1実施形態のタイヤのタイヤケースのクラウン部に補強コードが埋設された状態を示すタイヤ回転軸に沿った断面図である。 コード加熱装置、及びローラ類を用いてタイヤケースのクラウン部に補強コードを埋設する動作を説明するための説明図である。 (A)は本発明の第2実施形態に係るタイヤのタイヤ幅方向に沿った断面図であり、(B)はタイヤにリムを嵌合させた状態のビード部のタイヤ幅方向に沿った断面の拡大図である。 第2実施形態のタイヤの補強層の周囲を示すタイヤ幅方向に沿った断面図である。
本発明のタイヤは、少なくとも、(A)アミド結合及びエステル結合の少なくとも一方を有する樹脂材料と、(B)カルボジイミド化合物と、を含み、前記樹脂材料100質量部に対する前記カルボジイミド化合物の含有量が0.3質量部以上6質量部未満である樹脂組成物で形成されるタイヤ骨格体を有する。
タイヤの使用において、タイヤ骨格体に使用される樹脂材料は、長期間の使用中に、水の影響を受ける場合が多いと想定される。特に、エステル結合やアミド結合を有する樹脂材料で形成されたタイヤ骨格体を有するタイヤが湿熱条件下に晒された場合には、タイヤの転がり抵抗が増大するという問題があった。その為に、かかる樹脂材料を原料とするタイヤを用いた自動車は、長期間の使用後に、転がり抵抗が大きくなり、燃費が悪化することが懸念される。また、このようなタイヤは、湿熱条件下に晒された場合には、発熱により樹脂が劣化することも懸念されるため、耐久性の面においても課題がある。
タイヤにおいては、樹脂組成物(タイヤ骨格体)の損失正接(tanδ)が大きくなると、タイヤが転動する際の変形で発生するエネルギー損失(発熱)が大きくなり、転がり抵抗も大きくなる傾向にある。エステル結合やアミド結合を有する樹脂材料で形成されたタイヤ骨格体を有するタイヤにおいても、長期間でかつ湿熱条件下に晒された後には、転がり抵抗が大きくなるともに、tanδも大きくなる傾向がある。
しかし、本発明における樹脂組成物(タイヤ骨格体を形成する樹脂組成物)中には、カルボジイミド化合物が含まれているので、湿熱条件下に晒された後(湿熱条件の経過後)でも、タイヤ骨格体のtanδの上昇が抑制される。さらに、湿熱条件下に晒される前のtanδよりも、湿熱条件下に晒された後のtanδをむしろ低下させることができる。このため、本発明のタイヤにおいては、タイヤとしての転がり抵抗が、湿熱条件下に晒された後にも維持されるか、あるいは改善されるという効果を有する。
本明細書におけるtanδは、JISK6251(1993年)に規定されるダンベル状試験片(5号形試験片)を作製した後、市販の粘弾性測定試験機(レオメトリックス社製)を使用し、温度30℃、歪1%、周波数20Hzで測定することによって得ることができる。
また、タイヤの転がり抵抗は、JATMAに準拠する所定のリムに組み付けて、所定の内圧、負荷荷重及び速度でタイヤを転動させ、所定の大きさの鉄板表面を持つドラム試験機を用いて測定することができる。
また、本明細書中の「湿熱条件下に晒される」とは、目的のタイヤあるいはタイヤ骨格体(樹脂組成物を形成する樹脂組成物)が40℃以上で、湿度60%RH(相対湿度60%)以上の雰囲気に少なくとも合計100時間以上晒されることをいう。
まず、本発明におけるタイヤ骨格体を構成する(A)アミド結合及びエステル結合の少なくとも一方を有する樹脂材料(以下、特定樹脂材料と称する)、及びこれらに添加する(B)カルボジイミド化合物について説明し、続いて本発明のタイヤの具体的な実施形態について図を用いて説明する。
(特定樹脂材料)
特定樹脂材料とは、樹脂材料中のポリマー分子中にアミド結合もしくはエステル結合、又はアミド結合及びエステル結合の両方を含むものをいう。この場合に、アミド結合もしくはエステル結合のいずれかの結合を有するポリマーを前記特定樹脂材料中に含むものでもよいし、アミド結合を有するポリマーと、前記アミド結合を有するポリマー以外のエステル結合を有するポリマーと、を混合したものでもよい。
特定樹脂材料としては、熱可塑性樹脂(熱可塑性エラストマーを含む)及び熱硬化性樹脂など、本発明の効果を損なわない限り、アミド結合及びエステル結合の少なくとも一方を有するいかなる樹脂を用いてもよいが、中でもタイヤの転がり抵抗をより低下させるという観点から、熱可塑性エラストマー、ポリアミド樹脂及びポリエステル樹脂から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。ここで、ポリアミド樹脂及びポリエステル樹脂とは、前記熱可塑性エラストマー以外の樹脂をいう。ポリアミド樹脂及びポリエステル樹脂としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂(熱可塑性エラストマーを除く)やエンジニアリングプラスチックとして用いられているものが挙げられる。また、後述するように、上記の特定樹脂材料の熱可塑性エラストマーとしては、ポリアミド系熱可塑性エラストマー及びポリエステル系熱可塑性エラストマーが挙げられる。
また、特定樹脂材料において、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド樹脂及びポリエステル樹脂の詳細については、下記にそれぞれ説明する。
なお、本明細書において、「樹脂」には、加硫ゴムは含まれない。
特定樹脂材料の含有量としては、樹脂組成物の総量に対して30質量%以上であることが好ましい。前記含有量が、樹脂組成物の総量に対して、30質量%以上であると樹脂材料の特性を十分に発揮させることができ、タイヤの転がり抵抗をより低下させることができる。また、特定樹脂材料の含有量は、50質量%以上であることが更に好ましく、70質量%以上であることが特に好ましい。
(ポリアミド樹脂)
ポリアミド樹脂としては、本発明の効果を損なわない限り特に限定されない。前記ポリアミド樹脂としては、例えば、ε-カプロラクタムを開環重縮合したポリアミド(アミド6)、ウンデカンラクタムを開環重縮合したポリアミド(アミド11)、ラウリルラクタムを開環重縮合したポリアミド(アミド12)、ジアミンと二塩基酸とを重縮合したポリアミド(アミド66)又はメタキシレンジアミンを構成単位として有するポリアミド(アミドMX)等を挙げることができる。
熱可塑性エラストマーでないポリアミド系樹脂は、市販の製品を用いてもよい。
前記アミド6としては、例えば、市販品の宇部興産社製「UBEナイロン」1022B
、1011FB等を用いることができる。前記アミド12としては、例えば、宇部興産社製「UBEナイロン」、3024U等を用いることができる。前記アミド66としては、「UBEナイロン 2020B」等を用いることができる。また、前記アミドMXとしては、例えば、市販品の三菱ガス化学社製のMXナイロン(S6001、S6021,S6011)等を用いることができる。
(ポリエステル樹脂)
ポリエステル樹脂としては、結晶性でも非晶性でもよく、脂肪族系ポリエステル、芳香族系ポリエステル等が挙げられる。脂肪族系ポリエステルは、飽和脂肪族系ポリエステルであっても、不飽和脂肪族系ポリエステルであってもよい。
芳香族系ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリスチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等が挙げられ、ポリブチレンテレフタレートを挙げることが好ましい。
脂肪族系ポリエステルとしては、ジカルボン酸/ジオール縮合系、及びヒドロキシカルボン酸縮合系の何れも用いられる。例えば、ポリ乳酸、ポリヒドロキシ−3−ブチル酪酸、ポリヒドロキシ−3−ヘキシル酪酸、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリエナントラクトン、ポリカプリロラクトン、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペート等が挙げられる。
上記のようなポリエステル樹脂としては、市販品を用いることもでき、例えば、ポリプラスチック(株)製の「ジュラネックス」シリーズ(例えば、2000、2002等)、三菱エンジニアリングプラスチック(株)製のノバデュランシリーズ(例えば、5010R5、5010R3−2等)、東レ(株)製の「トレコン」シリーズ(例えば、1401X06、1401X31等)が挙げられる。
(熱可塑性エラストマー)
熱可塑性エラストマーとしては、アミド結合及びエステル結合の少なくとも一方を含む、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、ポリアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPC)、及び、動的架橋型熱可塑性エラストマー(TPV)、が挙げられる。
熱可塑性エラストマーとは、温度上昇と共に材料が軟化、流動し、冷却すると比較的硬く強度のある状態になる高分子化合物であって、かつ、ゴム状弾性を有する高分子化合物をいう。
上記の熱可塑性エラストマーの中でも、ポリアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPC)が好ましい。
(ポリアミド系熱可塑性エラストマー)
「ポリアミド系熱可塑性エラストマー」とは、結晶性で融点の高いポリマーに由来するハードセグメントと非晶性でガラス転移温度の低いポリマーに由来するソフトセグメントとを有する共重合体からなる熱可塑性樹脂材料であって、ハードセグメントを形成するポリマーの主鎖にアミド結合(−CONH−)を有するものを用いることができる。ポリアミド系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、JIS K6418:2007に規定されるアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)等や、特開2004−346273号公報に記載のポリアミド系熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。
また、本発明におけるポリアミド系熱可塑性エラストマーとしては、エステル結合を有するポリマーを含んでいてもよい。
ポリアミド系熱可塑性エラストマーは、少なくともポリアミドが結晶性で融点の高いハードセグメントを構成し、他のポリマー(例えば、ポリエステル又はポリエーテル等)が非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成している材料が挙げられる。また、ポリアミド系熱可塑性エラストマーはハードセグメント及びソフトセグメントの他に、ジカルボン酸等の鎖長延長剤を用いてもよい。前記ハードセグメントを形成するポリアミドとしては、例えば、下記一般式(1)または一般式(2)で表されるモノマーによって生成されるポリアミドを挙げることができる。
−ハードセグメント−
前記ハードセグメントを形成するポリアミドとしては、例えば、下記一般式(1)又は一般式(2)で表されるモノマーを用いて合成されるポリアミドを挙げることができる。
一般式(1)中、Rは、炭素数2〜20の脂肪族炭化水素(好ましくは飽和脂肪族炭化水素)の分子鎖を表す。炭素数2〜20の脂肪族炭化水素の分子鎖としては、例えば、炭素数2〜20のアルキレン基が挙げられる。
一般式(2)中、Rは、炭素数3〜20の脂肪族炭化水素(好ましくは飽和脂肪族炭化水素)の分子鎖を表す。炭素数3〜20の脂肪族炭化水素の分子鎖としては、例えば、炭素数3〜20のアルキレン基が挙げられる。
一般式(1)中、Rとしては、炭素数3〜18の脂肪族炭化水素の分子鎖(例えば、炭素数3〜18のアルキレン基)が好ましく、炭素数4〜15の脂肪族炭化水素の分子鎖(例えば、炭素数4〜15のアルキレン基)が更に好ましく、炭素数10〜15の脂肪族炭化水素の分子鎖(例えば、炭素数10〜15のアルキレン基)が特に好ましい。また、一般式(2)中、Rとしては、炭素数3〜18の脂肪族炭化水素の分子鎖(例えば、炭素数3〜18のアルキレン基)が好ましく、炭素数4〜15の脂肪族炭化水素の分子鎖(例えば、炭素数4〜15のアルキレン基)が更に好ましく、炭素数10〜15の脂肪族炭化水素の分子鎖(例えば、炭素数10〜15のアルキレン基)が特に好ましい。前記一般式(1)又は一般式(2)で表されるモノマーとしては、ω−アミノカルボン酸やラクタムが挙げられる。
また、前記ハードセグメントを形成するポリアミドとしては、これらω−アミノカルボン酸やラクタムの重縮合体や、ジアミンとジカルボン酸との共縮重合体等が挙げられる。
前記ω−アミノカルボン酸としては、6−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、8−アミノオクタン酸、10−アミノカプリン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸などの炭素数5〜20の脂肪族ω−アミノカルボン酸等を挙げることができる。また、ラクタムとしては、ラウリルラクタム、ε−カプロラクタム、ウンデカンラクタム、ω−エナントラクタム、2−ピロリドンなどの炭素数5〜20の脂肪族ラクタムなどを挙げることができる。
前記ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、3−メチルペンタメチレンジアミン、メタキシレンジアミンなどの炭素数2〜20の脂肪族ジアミンなどのジアミン化合物を挙げることができる。
また、ジカルボン酸は、HOOC−(R−COOH(R:炭素数3〜20の炭化水素の分子鎖、m:0又は1)で表すことができ、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの炭素数2〜22の脂肪族ジカルボン酸を挙げることができる。
前記ハードセグメントを形成するポリアミドとしては、ε-カプロラクタムを開環重縮合したポリアミド(ポリアミド6)、ウンデカンラクタムを開環重縮合したポリアミド(ポリアミド11)、ラウリルラクタムを開環重縮合したポリアミド(ポリアミド12)、12−アミノドデカン酸を重縮合したポリアミド(ポリアミド12)、ジアミンと二塩基酸との重縮合ポリアミド(ポリアミド66)又はメタキシレンジアミンを構成単位として有するポリアミド(アミドMX)等を挙げることができる。
前記ポリアミド6は、例えば、{CO−(CH−NH}(nは任意の繰り返し単位数を表す)で表すことができ、例えば、nとしては2〜100が好ましく、3〜50が更に好ましい。
前記ポリアミド11は、例えば、{CO−(CH10−NH}(nは任意の繰り返し単位数を表す)で表すことができ、例えば、nとしては2〜100が好ましく、3〜50が更に好ましい。
前記ポリアミド12は、例えば、{CO−(CH11−NH}(nは任意の繰り返し単位数を表す)で表すことができ、例えば、nとしては2〜100が好ましく、3〜50が更に好ましい。
前記ポリアミド66は、例えば、{CO(CHCONH(CHNH}(nは任意の繰り返し単位数を表す)で表すことができ、例えば、nとしては2〜100が好ましく、3〜50が更に好ましい。
また、メタキシレンジアミンを構成単位として有するアミドMXは、例えば、下記構成単位(A−1)〔(A−1)中、nは任意の繰り返し単位数を表す〕で表わすことができ、例えば、2〜100が好ましく、3〜50が更に好ましい。
前記ポリアミド熱可塑性エラストマーは、ハードセグメントとして、−[CO−(CH11−NH]−で表される単位構造を有するポリアミド(ポリアミド12)を有することが好ましい。上述のようにポリアミド12は、ラウリルラクタムを開環重縮合又は12−アミノドデカン酸を重縮合することで得ることができる。
−ソフトセグメント−
前記ソフトセグメントを形成するポリマーとしては、例えば、ポリエステルや、ポリエーテルが挙げられる。更に、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)、ポリエステルポリオール等のポリエーテル、ABA型トリブロックポリエーテルジオール等が挙げられる。これらを単独で又は2種以上を用いることができる。また、ポリエーテルの末端にアンモニア等を反応させることによって得られるポリエーテルジアミン等を用いることができ、例えば、ABA型トリブロックポリエーテルジアミンを用いることができる。
ここで、「ABA型トリブロックポリエーテルジオール」としては、下記一般式(3)に示されるポリエーテルを挙げることができる。
一般式(3)中、x及びzは、それぞれ独立に1〜20の整数を表す。yは、4〜50の整数を表す。
前記一般式(3)において、x及びzとしては、それぞれ、1〜18の整数が好ましく、1〜16の整数が更に好ましく、1〜14の整数が特に好ましく、1〜12の整数が最も好ましい。また、前記一般式(3)において、yとしては、5〜45の整数が好ましく、6〜40の整数が更に好ましく、7〜35の整数が特に好ましく、8〜30の整数が最も好ましい。
また、「ABA型トリブロックポリエーテルジアミン」とは、下記一般式(N)に示されるポリエーテルジアミンを挙げることができる。
一般式(N)中、X及びZは、それぞれ独立に1〜20の整数を表す。Yは、4〜50の整数を表す。
前記一般式(N)において、X及びZとしては、それぞれ、1〜18の整数が好ましく、1〜16の整数が更に好ましく、1〜14の整数が特に好ましく、1〜12の整数が最も好ましい。また、前記一般式(N)において、Yとしては、5〜45の整数が好ましく、6〜40の整数が更に好ましく、7〜35の整数が特に好ましく、8〜30の整数が最も好ましい。
前記ハードセグメントと前記ソフトセグメントとの組合せとしては、上述で挙げたハードセグメントとソフトセグメントとのそれぞれの組合せを挙げることができる。この中でも、ラウリルラクタムの開環重縮合体/ポリエチレングリコールの組合せ、ラウリルラクタムの開環重縮合体/ポリプロピレングリコールの組合せ、ラウリルラクタムの開環重縮合体/ポリテトラメチレンエーテルグリコールの組合せ、ラウリルラクタムの開環重縮合体/ABA型トリブロックポリエーテルジオールの組合せ、アミノドデカン酸の重縮合体/ポリエチレングリコールの組合せ、アミノドデカン酸の重縮合体/ポリプロピレングリコールの組合せ、アミノドデカン酸の重縮合体/ポリテトラメチレンエーテルグリコールの組合せ、アミノドデカン酸の重縮合体/ABA型トリブロックポリエーテルジオールの組合せ、が好ましく、ラウリルラクタムの開環重縮合体/ABA型トリブロックポリエーテルジオールの組合せ、アミノドデカン酸の重縮合体/ABA型トリブロックポリエーテルジオールの組合せ、が特に好ましい。これらの組み合わせは本発明におけるポリアミド系熱可塑性エラストマーが分子中にエステル結合を有するように選択されるのが好ましい。
前記ソフトセグメントを形成するポリマーは、炭素数6〜22の分岐型飽和ジアミン、炭素数6〜16の分岐脂環式ジアミン、又は、ノルボルナンジアミン等のジアミンをモノマー単位として含んでいてもよい。また、これら、炭素数6〜22の分岐型飽和ジアミン、炭素数6〜16の分岐脂環式ジアミン、又は、ノルボルナンジアミンは、それぞれ単独で用いてもよいし、これらを組み合わせて用いてもよいが、上述の、ABA型トリブロックポリエーテルジオールと組み合わせて用いることが好ましい。
前記炭素数6〜22の分岐型飽和ジアミンとしては、例えば、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノペンタン、2−メチル−1,5−ジアミノペンタン及び2−メチル−1,8−ジアミノオクタンなどが挙げられる。
前記炭素数6〜16の分岐脂環式ジアミンとしては、例えば、5−アミノ−2,2,4−トリメチル−1−シクロペンタンメチルアミン、5−アミノ−1,3,3−トリメチルシクロヘキサンメチルアミン等を挙げることができる。これらのジアミンはシス体及びトランス体のいずれであってもよく、これら異性体の混合物であってもよい。
前記ノルボルナンジアミンとしては、例えば、2,5−ノルボナンジメチルアミン、2,6−ノルボナンジメチルアミンあるいはこれらの混合物などが挙げられる。
更に、前記ソフトセグメントを構成するポリマーは、上述以外の他のジアミン化合物をモノマー単位として含んでいてもよい。他のジアミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、3−メチルペンタンメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、1,4−ビスアミノメチルシクロヘキサンなどの脂環式ジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミンなどの芳香族ジアミンなどが挙げられる。
上述のジアミンは単独で使用してもよいし、2種類以上を適宜組合せて使用してもよい。
−鎖長延長剤−
上述のように、ポリアミド系熱可塑性エラストマーはハードセグメント及びソフトセグメントの他に、ジカルボン酸等の鎖長延長剤を用いてもよい。前記ジカルボン酸としては、例えば、脂肪族、脂環式及び芳香族ジカルボン酸から選ばれる少なくとも一種又はこれらの誘導体を用いることができる。
前記ジカルボン酸の具体例としては、アジピン酸、デカンジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等の炭素数2〜25の直鎖脂肪族ジカルボン酸;トリグリセリドの分留により得られる不飽和脂肪酸を二量化した炭素数14〜48の二量化脂肪族ジカルボン酸及びこれらの水素添加物等の脂肪族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、及びテレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸を挙げることができる。
〜エステル結合を有するポリアミド系熱可塑性エラストマー〜
特定樹脂材料には、エステル結合を含んだポリアミド系熱可塑性エラストマーを用いることができる。このような特定樹脂材料を用いることで、タイヤの転がり抵抗をより低下させることができ、さらにリム組み性を高めることができるので有利である。前記エステル結合は、ポリアミド系熱可塑性エラストマーのハードセグメントやソフトセグメント中のいずれにあってもよいが、ソフトセグメントとして、ポリエステルポリオール等のポリエステルを含む共重合体を用いてもよいし、ソフトセグメントとしてポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)、又は、上述のABA型トリブロックポリエーテルジオール等の両末端に水酸基を有するジオール化合物を用い、更に鎖長延長剤として多価カルボン酸(ジカルボン酸)を用い、これらの縮重合体に由来する構成単位に含まれるエステル結合を有していてもよい。以上の観点から、本発明におけるポリアミド熱可塑性エラストマーとしては、ソフトセグメントとしてジオール化合物を含み、前記ジオール化合物の水酸基と、(例えば、ハードセグメントや鎖長延長剤中の)カルボキシル基との結合に由来するエステル結合を含むことが好ましい。前記ジオール化合物としては、特に限定はなく上述のグリコール類やジオール類を挙げることができるが、具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)、及び、上述の一般式(3)で表されるABA型トリブロックポリエーテルジオールから選ばれる両末端に水酸基を有するジオール化合物を挙げることができ、例えば、ABA型トリブロックポリエーテルジオールやPTMG用いることができる。
また、ポリアミド系熱可塑性エラストマーの原料として、ハートセグメント、ソフトセグメント及び鎖長延長剤の種類及び仕込み量を選定することで、各原料間の重合反応においてエステル結合が生成される量を制御することができる。例えば、ハードセグメントとして上述のポリアミド12を有するポリアミド系熱可塑性エラストマーを合成する場合、ハードセグメントの原料としてラウリルラクタムを開環重縮合又は12−アミノドデカン酸を用い、ソフトセグメントの原料としてPTMG又は上述の一般式(3)で表されるABA型トリブロックポリエーテルジオールから選ばれるジオール化合物を用い、鎖長延長剤としてアジピン酸又はデカンジカルボン酸を用いて合成反応を行うことで、エステル結合を有するポリアミド系熱可塑性エラストマーを合成することができる。
(HS質量比)
上記の前記ポリアミド系熱可塑性エラストマーのハードセグメント(HS)とソフトセグメント(SS)との質量比(HS/SS)については特に限定されず、適宜調整されることが好ましい。例えば、前記HS質量比が10/90〜90/10であると、より適度な弾性率にすることができ、さらにリム組み性をより高めることができる。前記HS質量比は、ハードセグメントを構成する原料及びソフトセグメントを構成する原料の仕込み量を設定することで所望の範囲に調整することができる。また、前記HS質量比は、ポリアミド熱可塑性エラストマーはH−NMRを用いることで、測定することができる。
前記鎖長延長剤を用いる場合、その含有量は前記ソフトセグメントを構成するモノマーの水酸基又はアミノ基と、鎖長延長剤のカルボキシル基とがほぼ等モルになるように設定されることが好ましい。
前記ポリアミド系熱可塑性エラストマー中のハードセグメント、ソフトセグメント及び必要に応じて用いられる鎖長延長剤の含有量は、適宜選定され、例えば各々の仕込み量を設定することで各々所望の含有量とすることができる。
特定樹脂材料に含まれるポリアミド系熱可塑性エラストマーの重量平均分子量は、特に限定はないが、10,000〜400,000程度であることが好ましい。リム組み性の更なる向上やタイヤの内圧に対する耐圧性を向上させる観点からは、前記ポリアミド系熱可塑性エラストマーの重量平均分子量が15,700〜300,000が好ましく、22,000〜200,000が更に好ましい。前記ポリアミド系熱可塑性エラストマーの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができ、例えば、東ソー株式会社製の「HLC−8320GPC EcoSEC」等のGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)を用いることができる。
また、前記ハードセグメントを構成するポリマー(ポリアミド)の数平均分子量としては、溶融成形性の観点から、300〜15000が好ましい。また、前記ソフトセグメントを構成するポリマーの数平均分子量としては、強靱性及び低温柔軟性の観点から、200〜6000が好ましい。これらの数平均分子量については、上記GPCの測定により求めることができる。
前記ポリアミド系熱可塑性エラストマーは、前記ハードセグメントを形成するポリマー及びソフトセグメントを形成するポリマーを公知の方法によって共重合することで合成することができる。例えば、前記ポリアミド系熱可塑性エラストマーは、ハードセグメントを構成するモノマー(例えば、12−アミノドデカン酸などのω−アミノカルボン酸や、ラウリルラクタムなどのラクタム)と、ソフトセグメントを構成するモノマー(例えば、前記ABA型トリブロックポリエーテルジオール)と、鎖長延長剤(例えば、アジピン酸又はデカンジカルボン酸)とを容器内で重合させることで得ることができる。特に、ハードセグメントを構成するモノマーとしてω−アミノカルボン酸を使用する場合、常圧溶融重合又は常圧溶融重合に、更に減圧溶融重合を行って合成することができる。ハードセグメントを構成するモノマーとしてラクタムを用いる場合には、適量の水を共存させることができ、0.1〜5MPaの加圧下での溶融重合とそれに続く常圧溶融重合及び減圧溶融重合からなる方法のいずれかで製造することができる。また、これら合成反応は、回分式及び連続式のいずれでも実施することができる。また、上述の合成反応には、バッチ式反応釜、一槽式若しくは多槽式の連続反応装置、管状連続反応装置などを単独であるいは適宜組み合わせて用いてもよい。
前記ポリアミド系熱可塑性エラストマーの製造において、重合温度は、150〜300℃が好ましく、160〜280℃が更に好ましい。また、重合時間は、合成するポリアミド熱可塑性エラストマーの重合平均分子量及び重合温度との関係で適宜決定できるが、例えば、0.5〜30時間が好ましく、0.5〜20時間が更に好ましい。
前記ポリアミド系熱可塑性エラストマーの製造においては、必要に応じて分子量の調整や成形加工時の溶融粘度安定化を目的として、ラウリルアミン、ステアリルアミン、ヘキサメチレンジアミン、メタキシリレンジアミンなどのモノアミン若しくはジアミン、酢酸、安息香酸、ステアリン酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などのモノカルボン酸、或いはジカルボン酸などの添加剤を添加してもよい。これら添加剤は、本発明の効果に悪い影響を与えない範囲で、得られるポリアミド系熱可塑性エラストマーの分子量や粘度等の関係で適宜選定することができる。
また、前記ポリアミド系熱可塑性エラストマーの製造においては、必要に応じて触媒を用いることができる。前記触媒としては、P、Ti、Ge、Zn、Fe、Sn、Mn、Co、Zr、V、Ir、La、Ce、Li、Ca、及び、Hfからなる群より選択される少なくとも1種を含む化合物が挙げられる。
例えば、無機系リン化合物、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機スズ化合物等が挙げられる。
具体的には、無機系リン化合物としては、リン酸、ピロリン酸、ポリリン酸、亜リン酸、次亜リン酸等のリン含有酸、リン含有酸のアルカリ金属塩、リン含有酸のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。
有機チタン化合物としては、チタンアルコキシド〔チタンテトラブトキシド、チタンテトライソプロポキシド等〕等が挙げられる。
有機ジルコニウム化合物としては、ジルコニウムアルコキシド〔ジルコニウムテトラブトキシド(「Zr(OBu)」または「Zr(OC」とも称される)等〕等が挙げられる。
有機スズ化合物としては、ジスタノキサン化合物〔1−ヒドロキシ−3−イソチオシアネート−1,1,3,3−テトラブチルジスタノキサン等〕、酢酸スズ、ジラウリン酸ジブチルスズ、ブチルチンヒドロキシドオキシドヒドレート等が挙げられる。
触媒添加量及び触媒添加時期は、目的物を速やかに得られる条件であれば特に制限されない。
前記ポリアミド系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ラウリルラクタムの開環重縮合体/ポリエチレングリコール/アジピン酸の組合せ、ラウリルラクタムの開環重縮合体/ポリプロピレングリコール/アジピン酸の組合せ、ラウリルラクタムの開環重縮合体/ポリテトラメチレンエーテルグリコール/アジピン酸の組合せ、ラウリルラクタムの開環重縮合体/ABA型トリブロックポリエーテル/アジピン酸の組合せ、ラウリルラクタムの開環重縮合体/ポリエチレングリコール/デカンジカルボン酸の組合せ、ラウリルラクタムの開環重縮合体/ポリプロピレングリコール/デカンジカルボン酸の組合せ、ラウリルラクタムの開環重縮合体/ポリテトラメチレンエーテルグリコール/デカンジカルボン酸の組合せ、ラウリルラクタムの開環重縮合体/ABA型トリブロックポリエーテル/デカンジカルボン酸の組合せ、アミノドデカン酸の重縮合体/ポリエチレングリコール/アジピン酸の組合せ、アミノドデカン酸の重縮合体/ポリプロピレングリコール/アジピン酸の組合せ、アミノドデカン酸の重縮合体/ポリテトラメチレンエーテルグリコール/アジピン酸の組合せ、アミノドデカン酸の重縮合体/ABA型トリブロックポリエーテル/アジピン酸の組合せ、アミノドデカン酸の重縮合体/ポリエチレングリコール/デカンジカルボン酸の組合せ、アミノドデカン酸の重縮合体/ポリプロピレングリコール/デカンジカルボン酸の組合せ、アミノドデカン酸の重縮合体/ポリテトラメチレンエーテルグリコール/デカンジカルボン酸の組合せ、アミノドデカン酸の重縮合体/ABA型トリブロックポリエーテル/デカンジカルボン酸の組合せが好ましく、ラウリルラクタムの開環重縮合体/ABA型トリブロックポリエーテル/アジピン酸の組合せ、アミノドデカン酸の重縮合体/ABA型トリブロックポリエーテル/アジピン酸の組合せ、アミノドデカン酸の重縮合体/ポリテトラメチレンエーテルグリコール/アジピン酸の組合せ、アミノドデカン酸の重縮合体/ポリテトラメチレンエーテルグリコール/デカンジカルボン酸の組合せが特に好ましい。前記ポリアミド系熱可塑性エラストマーとしては、構成単位の組み合わせ、その構成比、分子量等について上述した好ましい態様同士を組み合わせたものを用いることができる。
上記に挙げたポリアミド系熱可塑性エラストマーについては、例えば市販品のポリエーテルポリアミド樹脂(アルケマ社製のPebax2533、Pebax3533、Pebax4033、Pebax5533、Pebax6333、Pebax7033及びPebax7233等、及び宇部興産(株)製の「UBESTA XPA」シリーズ(例えば、XPA9063X1、XPA9055X1、XPA9048X2、XPA9048X1、XPA9044等)、ダイセル・エポニック(株)製の「ベスタミド」シリーズ(例えば、E40−S3、E47−S1、E47−S3、E55−S1、E55−S3、E55−S4、E55−K1W2、EX9200、E50−R2))が適宜利用できる。
これらのポリアミド系熱可塑性エラストマーは、ハードセグメントであるポリアミドブロックと、ソフトセグメントであるポリエーテルブロックがエステル結合を介して結合した“ポリエーテルブロックアミド”が縮重合した熱可塑性エラストマー、すなわちエステル結合を有するポリアミド系熱可塑性エラストマーである。これらのポリアミド系熱可塑性エラストマーは、優れた動力学的性質や成形性を有し、さらにカルボジイミド化合物やその他の添加剤との良好な相溶性を有する。このため、当該エラストマーを特定樹脂材料として含む樹脂組成物(タイヤ骨格体)は、tanδを低め、タイヤとした場合の転がり抵抗を低下させることができるので有利である。
ポリエステル系熱可塑性エラストマーを樹脂材料に用いる場合には、ポリエステル系熱可塑性エラストマーは、樹脂組成物の総量に対して30質量%以上が好ましい。前記含有量が、樹脂組成物の総量に対して30質量%以上であると、樹脂材料の特性を発揮させることができ、タイヤの転がり抵抗をより低下させることができる。また、ポリエステル系熱可塑性エラストマーの含有量は、50質量%以上であることが更に好ましく、70質量%以上であることが特に好ましい。
(ポリエステル系熱可塑性エラストマー)
「ポリエステル系熱可塑性エラストマー」とは、弾性を有する高分子化合物であり、結晶性で融点の高いハードセグメントを構成するポリマーと、非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成するポリマーと、を有する共重合体からなる熱可塑性樹脂材料であって、ハードセグメントを構成するポリマーとしてポリエステル樹脂を有するものを用いることができる。ポリエステル系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、JIS K6418:2007に規定されるエステル系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
本発明におけるポリエステル系熱可塑性エラストマーとしては、アミド結合を有していてもよい。
ポリエステル系熱可塑性エラストマーとしては、特に限定されるものではないが、結晶性のポリエステルが融点の高いハードセグメントを構成し、非晶性のポリマーがガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成している共重合体が挙げられる。
ハードセグメントを形成する結晶性のポリエステルとしては、芳香族ポリエステルを用いることができる。芳香族ポリエステルは、例えば、芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体と脂肪族ジオールとから形成することができる。
ハードセグメントを形成する芳香族ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリスチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等が挙げられ、ポリブチレンテレフタレートが好ましい。
ハードセグメントを形成する好適な芳香族ポリエステルの一つとしては、テレフタル酸及びジメチルテレフタレートのいずれか1つと1,4−ブタンジオールから誘導されるポリブチレンテレフタレートが挙げられる。更に、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−スルホイソフタル酸、あるいはこれらのエステル形成性誘導体などのジカルボン酸成分と、分子量300以下のジオール〔例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコールなどの脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメチロールなどの脂環式ジオール、キシリレングリコール、ビス(p−ヒドロキシ)ジフェニル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(2−ヒドロキシ)フェニル]スルホン、1,1−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシ−p−ターフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−p−クオーターフェニルなどの芳香族ジオール〕などから誘導されるポリエステル、あるいはこれらのジカルボン酸成分およびジオール成分を2種以上併用した共重合ポリエステルであってもよい。また、3官能以上の多官能カルボン酸成分、多官能オキシ酸成分及び多官能ヒドロキシ成分などを5モル%以下の範囲で共重合することも可能である。
ソフトセグメントを形成するポリマーとしては、例えば、脂肪族系ポリエステル及び脂肪族系ポリエーテルから選択されたポリマーが挙げられる。
脂肪族系ポリエーテルとしては、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体等が挙げられる。
脂肪族系ポリエステルとしては、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリエナントラクトン、ポリカプリロラクトン、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペートなどが挙げられる。
これらの脂肪族系ポリエーテル及び脂肪族系ポリエステルの中でも、得られる共重合体の弾性特性の観点から、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加物、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペートなどが好ましい。
ハードセグメントを形成するポリマー(ポリエステル)の数平均分子量としては、強靱性及び低温柔軟性の観点から、300〜6000が好ましい。また、ソフトセグメントを形成するポリマーの数平均分子量としては、強靱性及び低温柔軟性の観点から、300〜6000が好ましい。更に、ハードセグメント(x)及びソフトセグメント(y)との質量比(x:y)は、成形性の観点から、99:1〜20:80が好ましく、98:2〜30:70が更に好ましい。
ポリエステル系熱可塑性エラストマーは、上記ハードセグメントを形成するポリマー及びソフトセグメントを形成するポリマーを公知の方法によって共重合することで合成することができる。
ポリエステル系熱可塑性エラストマーとしては、市販品を用いることもでき、例えば、東レ・デュポン(株)製の「ハイトレル」シリーズ(例えば、3046、5557、6347、4047、4767)、東洋紡(株)製の「ペルプレン」シリーズ(例えば、P30B、P40B、P40H、P55B、P70B、P150B、P250B、E450B、P150M、S1001、S2001、S5001、S6001、S9001等)等を用いることができる。
ポリエステル系熱可塑性エラストマーを樹脂材料に用いる場合には、ポリエステル系熱可塑性エラストマーは、樹脂組成物の総量に対して30質量%以上が好ましい。前記含有量が、樹脂組成物の総量に対して30質量%以上であると、樹脂材料の特性を発揮させることができ、タイヤの転がり抵抗をより低下させることができる。また、ポリエステル系熱可塑性エラストマーの含有量は、50質量%以上であることが更に好ましく、70質量%以上であることが特に好ましい。
また、特定樹脂材料として、ポリアミド系熱可塑性エラストマーとポリエステル系熱可塑性エラストマーを混合させて用いる場合には、ポリアミド系熱可塑性エラストマー(x)とポリエステル系熱可塑性エラストマー(y)との質量比(x:y)は、95:5〜50:50であることが好ましい。これらエラストマーの質量比が、95:5〜50:50にあると、ポリアミド系熱可塑性エラストマーとポリエステル系熱可塑性エラストマーとが、ポリアミド系熱可塑性エラストマーの特性を維持しつつ、ポリエステル系熱可塑性エラストマーの特性を付与することができ、ポリアミド系熱可塑性エラストマーによる補強コード部材とタイヤ骨格体との溶着性を維持したまま、容易にタイヤの弾性率を制御することができ、タイヤの耐久性をより向上し、温度変化に対してより変形し難いタイヤとすることができる。ポリアミド系熱可塑性エラストマー(x)とポリエステル系熱可塑性エラストマー(y)との質量比(x:y)としては、90:10〜50:50が更に好ましい。
特定樹脂材組成物は、所望に応じて、上記以外の樹脂(熱可塑性エラストマーを含む)、ゴム、各種充填剤(例えば、シリカ、炭酸カルシウム、クレイ)、老化防止剤、オイル、可塑剤、着色剤、耐候剤、補強材等の各種添加剤を含有させてもよい。前記添加剤の樹脂組成物(タイヤ骨格体)中の含有量は特に限定はなく、本発明の効果を損なわない範囲で適宜用いることができる。
(カルボジイミド化合物)
本発明における樹脂組成物はカルボジイミド化合物を含む。カルボジイミド化合物としては、分子内に1個以上のカルボジイミド基を有する化合物であれば如何なるものでもよく、例えばN,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、N,N’−ジ(o−トルイル)カルボジイミド、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N’−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド等の一官能カルボジイミド化合物;p−フェニレン−ビス(2,6−キシリルカルボジイミド)、p−フェニレン−ビス(t−ブチルカルボジイミド)、p−フェニレン−ビス(メシチルカルボジイミド)、テトラメチレン−ビス(t−ブチルカルボジイミド)、シクロヘキサン−1,4−ビス(メチレン−t−ブチルカルボジイミド)等の二官能カルボジイミド化合物;イソシアネート単量体の縮合物等の多官能カルボジイミド化合物等が挙げられ、その中でも多官能カルボジイミド化合物が好ましい。ここで、多官能カルボジイミド化合物とは、2個以上のカルボジイミド基を有する化合物をさす。該多官能カルボジイミド化合物としては、例えばカルボジライトLA−1(日清紡社製)、カルボジライトHMV−8CA(日清紡社製)、カルボジライトHMV−15CA(日清紡社製)、エラストスタブH01(日清紡社製)、Stabaxol P(RheinChemie社製)等の商品名で一般的に知られている多官能カルボジイミド化合物が挙げられる。これらのカルボジイミド化合物は1種又は2種以上が使用できる。
また、本発明における樹脂組成物は、(B)カルボジイミド化合物の、(A)前記特定樹脂材料を100質量部とした場合の前記特定樹脂材料に対する含有量比が0.3質量部以上6質量部未満の範囲で含む。カルボジイミド化合物がこの範囲で含まれることで、湿熱条件下に晒された場合に樹脂組成物のtanδの増加を抑制できる、あるいは湿熱条件下に晒される前に比べて該tanδを低下させることができる。さらに、前記樹脂組成物を含むタイヤにおいても、湿熱条件下に晒された後の前記タイヤの転がり抵抗をより低下させることができる。また、カルボジイミド化合物を前記特定樹脂材料に対し0.5質量部〜5.5質量部の含有量で含むことがさらに好ましく、1.0質量部〜0.55質量部の含有量比で含むことが特に好ましく、2.0質量部〜5.5質量部の含有量比で含むことが最も好ましい。
また、湿熱条件下に晒された後には、タイヤ骨格体等を形成する特定樹脂材料が、カルボジイミド化合物に由来する構造に変化した樹脂を含む可能性がある。
(樹脂組成物の物性)
次に、タイヤ骨格体を構成する樹脂組成物の好ましい物性について説明する。本発明における樹脂組成物は、上述の特定樹脂材料及びカルボジイミド化合物を用いるものである。
樹脂組成物(タイヤ骨格体)自体のtanδは、上記特定樹脂材料の種類や配合比、及びカルボジイミド化合物の含有量によって適宜調整されるが、湿熱条件下に晒された後のタイヤの転がり抵抗性をより低下させる観点から、前記樹脂組成物(タイヤ骨格体)の湿熱条件下に晒される前における30℃においての最大のtanδが0を超えて0.06未満であることが好ましい。さらに、tanδが0.02〜0.055であることがより好ましく、0.025〜0.05であることが特に好ましい。
また、樹脂組成物(タイヤ骨格体)自体のtanδは、JISK6251(1993年)に規定される5号型ダンベル状試験片を作製した後、市販の粘弾性測定試験機を使用し、30℃、歪1%、周波数20Hzで測定することによって得ることができる。
また、前記樹脂組成物自体の融点(又は軟化点)としては、通常100℃〜350℃、好ましくは100℃〜250℃程度であるが、タイヤの生産性の観点から120℃〜250℃程度が好ましく、120℃〜200℃が更に好ましい。
このように、融点が120℃〜250℃の樹脂組成物を用いることで、例えばタイヤ骨格体を、その分割体(骨格片)を融着して形成する場合に、120℃〜250℃の周辺温度範囲で融着された骨格体であってもタイヤ骨格片同士の接着強度が十分である。このため、本発明のタイヤは耐パンク性や耐摩耗性など走行時における耐久性に優れる。尚、前記加熱温度は、タイヤ骨格片を形成する樹脂組成物の融点(又は軟化点)よりも10℃〜150℃高い温度が好ましく、10℃〜100℃高い温度が更に好ましい。
前記樹脂組成物は、必要に応じて各種添加剤を添加して、公知の方法(例えば、溶融混合)で適宜混合することにより得ることができる。
溶融混合して得られた樹脂組成物は、必要に応じてペレット状にして用いることができる。
前記樹脂組成物自体のJIS K7113(1995)に規定される引張降伏強さは、5MPa以上が好ましく、5MPa〜20MPaが好ましく、5MPa〜17MPaがさらに好ましい。樹脂組成物の引張降伏強さが、5MPa以上であると、走行時などにタイヤにかかる荷重に対する変形に耐えることができる。
前記樹脂組成物自体のJIS K7113(1995)に規定される引張降伏伸びは、10%以上が好ましく、10%〜70%が好ましく、15%〜60%がさらに好ましい。樹脂組成物の引張降伏伸びが、10%以上であると、弾性領域が大きく、リム組み性をよくすることができる。
前記樹脂組成物自体のJIS K7113(1995)に規定される引張破断伸びとしては、50%以上が好ましく、100%以上が好ましく、150%以上がさらに好ましく、200%以上が特に好ましい。樹脂組成物の引張破断伸びが、50%以上であると、リム組み性がよく、衝突に対して破壊しにくくすることができる。
前記樹脂組成物自体のISO75−2又はASTM D648に規定される荷重たわみ温度(0.45MPa荷重時)としては、50℃以上が好ましく、50℃〜150℃が好ましく、50℃〜130℃がさらに好ましい。樹脂組成物の荷重たわみ温度が、50℃以上であると、タイヤの製造において加硫を行う場合であってもタイヤ骨格体の変形を抑制することができる。
(補強コード部材)
本発明のタイヤは、タイヤ骨格体の外周部に周方向に巻回されて補強コード層を形成する補強コード部材をさらに有し、前記補強コード部材は、被覆用樹脂によって被覆されていてもよい。
ここで、被覆用樹脂とは、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂を含む概念であり、本発明の効果を損なわない限り、樹脂であればどのようなものを含んでいてもよいが、加硫ゴムは含まない。
このように、補強コード層に被覆用樹脂が含まれていると、補強コード部材をタイヤ骨格体に更に密着・固定することができる。
更に、補強コード部材がスチールコードなどの金属コードの場合、タイヤ処分時に補強コード部材をクッションゴムから分離しようとすると、加硫ゴムは加熱だけでは補強コード部材と分離させるのが難しいのに対し、被覆用樹脂は加熱のみで補強コード部材と分離することが可能である。このため、タイヤのリサイクル性の点で有利である。また、被覆用樹脂は通常加硫ゴムに比して損失係数(tanδ)が低い。このため、補強コード層が被覆用樹脂を多く含んでいると、タイヤの転がり性を向上させることができる。更には、加硫ゴムに比して相対的に弾性率の高い樹脂は、面内せん断剛性が大きく、タイヤ走行時の操安性や耐摩耗性にも優れるといった利点がある。
補強コード層に用いることのできる前記熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。
補強コード層に用いることのできる前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、オレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。
前記被覆樹脂用の熱可塑性エラストマーとしては、例えば、JIS K6418:2007に規定されるアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)、エステル系熱可塑性エラストマー(TPC)、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、ウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、熱可塑性ゴム架橋体(TPV)、若しくはその他の熱可塑性エラストマー(TPZ)等が挙げられる。なお、走行時に必要とされる弾性と製造時の成形性等を考慮すると熱可塑性エラストマーを用いることが好ましい。
また、上記のように補強コード部材が被覆用樹脂で被覆される場合には、被覆用樹脂が本発明における特定樹脂材料であることが好ましい。この場合は、補強コード層とタイヤ骨格体とが同じ樹脂であるので、補強コード層とタイヤ骨格体との密着性をより高めることができる。
さらに補強コード部材を覆う被覆用樹脂が、前記特定樹脂と前記カルボジイミド化合物、すなわち本発明における樹脂組成物であることが特に好ましい。この場合、補強コード層とタイヤ骨格体との密着性をより高めることができるので、その結果、被覆用樹脂におけるtanδの向上を防ぐとともに、タイヤ骨格体から被覆用樹脂へのカルボジイミド化合物の移行を抑止することができるため、本発明の効果が損なわれにくい。
また、被覆用樹脂に含まれるカルボジイミド化合物の量はタイヤ骨格体の樹脂組成物と同様に、前記特定樹脂材料に対し0.5質量部〜5.5質量部の含有量で含むことがさらに好ましく、1.0質量部〜0.55質量部の含有量で含むことが特に好ましく、2.0質量部〜5.5質量部の含有量で含むことが最も好ましい。
本範囲の含有量とすることにより、被覆用樹脂におけるtanδの向上を効果的に防げるだけでなく、よりタイヤ骨格体から被覆用樹脂へのカルボジイミド化合物の移行を抑止することができるとともに、補強コード部材と被覆用樹脂との接着性を確保できる。
また、前記補強コード部材を被覆する前記被覆用樹脂は、前記補強コード部材の表面を直接被覆してもよいし、前記補強コード部材と前記被覆用樹脂の間に別の層を設けてもよい。
補強コード層に用いられる樹脂材料の弾性率(JIS K7113(1995)に規定される引張弾性率)は、タイヤ骨格体を形成する樹脂組成物の弾性率の0.1倍から10倍の範囲内に設定することが好ましい。前記樹脂材料の弾性率がタイヤ骨格体を形成する樹脂組成物の弾性率の10倍以下の場合は、クラウン部が硬くなり過ぎずリム組み性が容易になる。また、前記樹脂材料の弾性率がタイヤ骨格体を形成する樹脂組成物の弾性率の0.1倍以上の場合には、補強コード層を構成する樹脂が柔らかすぎず、ベルト面内せん断剛性に優れコーナリング力が向上する。
また、前記補強コード層に樹脂材料を含めた場合、補強コードの引き抜き性(引き抜かれにくさ)を高める観点から、前記補強コード部材はその表面の20%以上の面積が樹脂材料に覆われていることが好ましく、50%以上の面積が覆われていることが更に好ましい。また、前記補強コード層中の樹脂材料の含有量は、補強コードを除いた補強コード層を構成する材料の総量に対して、補強コードの引き抜き性を高める観点から、20質量%以上が好ましく、50質量%以上が更に好ましい。
[第1の実施形態]
以下に、図面に従って本発明の第1の実施形態に係るタイヤについて説明する。
図1(A)は、本発明の第1の実施形態に係るタイヤの一部の断面を示す斜視図である。図1(B)は、リムに装着したビード部の断面図である。図1に示すように、本実施形態のタイヤ10は、従来一般のゴム製の空気入りタイヤと略同様の断面形状を呈している。
図1(A)に示すように、タイヤ10は、図1(B)に示すリム20のビードシート21及びリムフランジ22に接触する1対のビード部12と、ビード部12からタイヤ径方向外側に延びるサイド部14と、一方のサイド部14のタイヤ径方向外側端と他方のサイド部14のタイヤ径方向外側端とを連結するクラウン部16(外周部)と、からなるタイヤケース17を備えている。
ここで、本実施形態のタイヤケース17は、樹脂組成物として、例えば、アミド結合及びエステル結合の少なくとも一方を含む樹脂材料と、カルボジイミド化合物と、を含み、前記樹脂材料100質量部に対する前記カルボジイミド化合物の含有量が0.3質量部以上6質量部未満である樹脂組成物で形成されたものを用いている。
本実施形態においてタイヤケース17は、上記の成分で形成されているが、本発明はこの構成に限定されず、従来一般のゴム製の空気入りタイヤと同様に、タイヤケース17の各部位毎(サイド部14、クラウン部16、ビード部12など)に異なる特徴を有する他の樹脂材料を用いてもよい。また、タイヤケース17(例えば、ビード部12、サイド部14、クラウン部16等)に、補強材(高分子材料や金属製の繊維、コード、不織布、織布等)を埋設配置し、補強材でタイヤケース17を補強してもよい。
本実施形態のタイヤケース17は、樹脂組成物で形成された一対のタイヤケース半体(タイヤ骨格片)17A同士を接合させたものである。タイヤケース半体17Aは、一つのビード部12と一つのサイド部14と半幅のクラウン部16とを一体として射出成形等で成形された同一形状の円環状のタイヤケース半体17Aを互いに向かい合わせてタイヤ赤道面部分で接合することで形成されている。なお、タイヤケース17は、2つの部材を接合して形成するものに限らず、3以上の部材を接合して形成してもよい。
前記樹脂組成物で形成されるタイヤケース半体17Aは、例えば、真空成形、圧空成形、インジェクション成形、メルトキャスティング等で成形することができる。このため、従来のようにゴムでタイヤケースを成形する場合に比較して、加硫を行う必要がなく、製造工程を大幅に簡略化でき、成形時間を省略することができる。
また、本実施形態では、タイヤケース半体17Aは左右対称形状、即ち、一方のタイヤケース半体17Aと他方のタイヤケース半体17Aとが同一形状とされているので、タイヤケース半体17Aを成形する金型が1種類で済むメリットもある。
本実施形態において、図1(B)に示すようにビード部12には、従来一般の空気入りタイヤと同様の、スチールコードからなる円環状のビードコア18が埋設されている。しかし、本発明はこの構成に限定されず、ビード部12の剛性が確保され、リム20との嵌合に問題なければ、ビードコア18を省略することもできる。なお、スチールコード以外に、有機繊維コード、樹脂被覆した有機繊維コード、又は硬質樹脂などで形成されていてもよい。
本実施形態では、ビード部12のリム20と接触する部分や、少なくともリム20のリムフランジ22と接触する部分に、タイヤケース17を構成する樹脂組成物中の特定樹脂材料よりもシール性に優れた材料、例えば、ゴムからなる円環状のシール層24が形成されている。このシール層24はタイヤケース17(ビード部12)とビードシート21とが接触する部分にも形成されていてもよい。タイヤケース17を構成する特定樹脂材料よりもシール性に優れた材料としては、タイヤケース17を構成する特定樹脂材料に比して軟質な材料を用いることができる。シール層24に用いることのできるゴムとしては、従来一般のゴム製の空気入りタイヤのビード部外面に用いられているゴムと同種のゴムを用いることが好ましい。また、前記特定樹脂材料よりもシール性に優れる他の熱可塑性樹脂(熱可塑性エラストマー)を用いてもよい。このような他の熱可塑性樹脂としては、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系熱可塑性樹脂、ポリエステル樹脂等の樹脂やこれら樹脂とゴム若しくはエラストマーとのブレンド物等が挙げられる。また、熱可塑性エラストマーを用いることもでき、例えば、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、或いは、これらエラストマー同士の組み合わせや、ゴムとのブレンド物等が挙げられる。
図1に示すように、クラウン部16には、タイヤケース17を構成する特定樹脂材料よりも剛性が高い補強コード26がタイヤケース17の周方向に巻回されている。補強コード26は、タイヤケース17の軸方向に沿った断面視で、少なくとも一部がクラウン部16に埋設された状態で螺旋状に巻回されており、補強コード層28を形成している。補強コード層28のタイヤ径方向外周側には、タイヤケース17を構成する特定樹脂材料よりも耐摩耗性に優れた材料、例えばゴムからなるクラウン30が配置されている。
図2を用いて補強コード26によって形成される補強コード層28について説明する。図2は、第1実施形態のタイヤのタイヤケースのクラウン部に補強コードが埋設された状態を示すタイヤ回転軸に沿った断面図である。図2に示されるように、補強コード26は、タイヤケース17の軸方向に沿った断面視で、少なくとも一部がクラウン部16に埋設された状態で螺旋状に巻回されており、タイヤケース17の外周部の一部と共に図2において破線部で示される補強コード層28を形成している。補強コード26のクラウン部16に埋設された部分は、クラウン部16(タイヤケース17)を構成する樹脂組成物と密着した状態となっている。補強コード26としては、金属繊維や有機繊維等のモノフィラメント(単線)、又は、スチール繊維を撚ったスチールコードなどこれら繊維を撚ったマルチフィラメント(撚り線)などを用いることができる。なお、本実施形態において補強コード26としては、スチールコードが用いられている。
また、図2において埋設量Lは、タイヤケース17(クラウン部16)に対する補強コード26のタイヤ回転軸方向への埋設量を示す。補強コード26のクラウン部16に対する埋設量Lは、補強コード26の直径Dの1/5以上であれば好ましく、1/2を超えることがさらに好ましい。そして、補強コード26全体がクラウン部16に埋設されることが最も好ましい。補強コード26の埋設量Lが、補強コード26の直径Dの1/2を超えると、補強コード26の寸法上、埋設部から飛び出し難くなる。また、補強コード26全体がクラウン部16に埋設されると、表面(外周面)がフラットになり、補強コード26が埋設されたクラウン部16上に部材が載置されても補強コード周辺部に空気が入るのを抑制することができる。なお、補強コード層28は、従来のゴム製の空気入りタイヤのカーカスの外周面に配置されるベルトに相当するものである。
上述のように補強コード層28のタイヤ径方向外周側にはクラウン30が配置されている。このクラウン30に用いるゴムは、従来のゴム製の空気入りタイヤに用いられているゴムと同種のゴムを用いることが好ましい。なお、クラウン30の代わりに、タイヤケース17を構成する特定樹脂材料よりも耐摩耗性に優れる他の種類の樹脂材料で形成したクラウンを用いてもよい。また、クラウン30には、従来のゴム製の空気入りタイヤと同様に、路面との接地面に複数の溝からなるクラウンパターンが形成されている。
以下、本実施形態のタイヤの製造方法について説明する。
(タイヤケース成形工程)
まず、上述のようにアミド結合及びエステル結合の少なくとも一方を含む樹脂材料と、カルボジイミド化合物と、を含み、前記樹脂材料100質量部に対する前記カルボジイミド化合物の含有量が0.3質量部以上6質量部未満である樹脂組成物を用いて、タイヤケース半体を形成する。これらタイヤケースの形成は、射出成形で行うことが好ましい。次に、薄い金属の支持リングに支持されたタイヤケース半体同士を互いに向かい合わせる。次いで、タイヤケース半体の突き当て部分の外周面と接するように図を省略する接合金型を設置する。ここで、前記接合金型はタイヤケース半体17Aの接合部(突き当て部分)周辺を所定の圧力で押圧するように構成されている。次いで、タイヤケース半体の接合部周辺を、タイヤケースを構成する樹脂組成物の融点(又は軟化点)以上で押圧する。タイヤケース半体の接合部が接合金型によって加熱・加圧されると、前記接合部が溶融しタイヤケース半体同士が融着しこれら部材が一体となってタイヤケース17が形成される。尚、本実施形態においては接合金型を用いてタイヤケース半体の接合部を加熱したが、本発明はこれに限定されず、例えば、別に設けた高周波加熱機等によって前記接合部を加熱したり、予め熱風、赤外線の照射等によって軟化又は溶融させ、接合金型によって加圧して、タイヤケース半体を接合させてもよい。
(補強コード部材巻回工程)
次に、補強コード巻回工程について図3を用いて説明する。図3は、コード加熱装置、及びローラ類を用いてタイヤケースのクラウン部に補強コードを埋設する動作を説明するための説明図である。図3において、コード供給装置56は、補強コード26を巻き付けたリール58と、リール58のコード搬送方向下流側に配置されたコード加熱装置59と、補強コード26の搬送方向下流側に配置された第1のローラ60と、第1のローラ60をタイヤ外周面に対して接離する方向に移動する第1のシリンダ装置62と、第1のローラ60の補強コード26の搬送方向下流側に配置される第2のローラ64と、及び第2のローラ64をタイヤ外周面に対して接離する方向に移動する第2のシリンダ装置66と、を備えている。第2のローラ64は、金属製の冷却用ローラとして利用することができる。また、本実施形態において、第1のローラ60又は第2のローラ64の表面は、溶融又は軟化した樹脂組成物の付着を抑制するためにフッ素樹脂(本実施形態では、テフロン(登録商標))でコーティングされている。なお、本実施形態では、コード供給装置56は、第1のローラ60又は第2のローラ64の2つのローラを有する構成としているが、本発明はこの構成に限定されず、何れか一方のローラのみ(即ち、ローラ1個)を有している構成でもよい。
また、コード加熱装置59は、熱風を生じさせるヒーター70及びファン72を備えている。また、コード加熱装置59は、内部に熱風が供給される、内部空間を補強コード26が通過する加熱ボックス74と、加熱された補強コード26を排出する排出口76とを備えている。
本工程においては、まず、コード加熱装置59のヒーター70の温度を上昇させ、ヒーター70で加熱された周囲の空気をファン72の回転によって生じる風で加熱ボックス74へ送る。次に、リール58から巻き出した補強コード26を、熱風で内部空間が加熱された加熱ボックス74内へ送り加熱(例えば、補強コード26の温度を100〜200℃程度に加熱)する。加熱された補強コード26は、排出口76を通り、図3の矢印R方向に回転するタイヤケース17のクラウン部16の外周面に一定のテンションをもって螺旋状に巻きつけられる。ここで、加熱された補強コード26がクラウン部16の外周面に接触すると、接触部分の樹脂組成物が溶融又は軟化し、加熱された補強コード26の少なくとも一部がクラウン部16の外周面に埋設される。このとき、溶融又は軟化した樹脂組成物に加熱された補強コード26が埋設されるため、樹脂組成物と補強コード26とが隙間がない状態、つまり密着した状態となる。これにより、補強コード26を埋設した部分へのエア入りが抑制される。なお、補強コード26をタイヤケース17の樹脂組成物の融点(又は軟化点)よりも高温に加熱することで、補強コード26が接触した部分の樹脂組成物の溶融又は軟化が促進される。このようにすることで、クラウン部16の外周面に補強コード26を埋設しやすくなると共に、効果的にエア入りを抑制することができる。
また、補強コード26の埋設量Lは、補強コード26の加熱温度、補強コード26に作用させるテンション、及び第1のローラ60による押圧力等によって調整することができる。そして、本実施形態では、補強コード26の埋設量Lが、補強コード26の直径Dの1/5以上となるように設定されている。なお、補強コード26の埋設量Lとしては、直径Dの1/2を超えることがさらに好ましく、補強コード26全体が埋設されることが最も好ましい。
このようにして、加熱した補強コード26をクラウン部16の外周面に埋設しながら巻き付けることで、タイヤケース17のクラウン部16の外周側に補強コード層28が形成される。
次に、タイヤケース17の外周面に加硫済みの帯状のクラウン30を1周分巻き付けてタイヤケース17の外周面にクラウン30を、接着剤などを用いて接着する。なお、クラウン30は、例えば、従来知られている更生タイヤに用いられるプレキュアクラウンを用いることができる。本工程は、更生タイヤの台タイヤの外周面にプレキュアクラウンを接着する工程と同様の工程である。
そして、タイヤケース17のビード部12に、加硫済みのゴムからなるシール層24を、接着剤等を用いて接着すれば、タイヤ10の完成となる。
(作用)
本実施形態のタイヤ10では、タイヤケース17が、エステル結合を有するポリアミド系熱可塑性エラストマーとカルボジイミド化合物を含む樹脂組成物によって形成されているため、湿熱条件下に晒された後のタイヤの転がり抵抗の増大を抑制させることができる。また、タイヤ10は従来のゴム製のタイヤに比して構造が簡易であるため重量が軽い。このため、本実施形態のタイヤ10は、耐摩擦性及び耐久性が高い。更に、タイヤケース17を射出成形できることから生産性にも非常に優れる。
また、本実施形態のタイヤ10では、樹脂組成物で形成されたタイヤケース17のクラウン部16の外周面に前記樹脂組成物よりも剛性が高い補強コード26が周方向へ螺旋状に巻回されていることから耐パンク性、耐カット性、及びタイヤ10の周方向剛性が向上する。なお、タイヤ10の周方向剛性が向上することで、樹脂組成物で形成されたタイヤケース17のクリープが防止される。
また、タイヤケース17の軸方向に沿った断面視(図1に示される断面)で、樹脂組成物で形成されたタイヤケース17のクラウン部16の外周面に補強コード26の少なくとも一部が埋設され且つ樹脂組成物に密着していることから、製造時のエア入りが抑制されており、走行時の入力などによって補強コード26が動くのが抑制される。これにより、補強コード26、タイヤケース17、及びクラウン30に剥離などが生じるのが抑制され、タイヤ10の耐久性が向上する。
補強コード層28が、樹脂を含んで構成されていると、補強コード26をクッションゴムで固定する場合と比してタイヤケース17と補強コード層28との硬さの差を小さくできるため、更に補強コード26をタイヤケース17に密着・固定することができる。これにより、上述のエア入りを効果的に防止することができ、走行時に補強コード部材が動くのを効果的に抑制することができる。
更に、補強コード26がスチールコードの場合に、タイヤ処分時に補強コード26を加熱によって樹脂から容易に分離・回収が可能であるため、タイヤ10のリサイクル性の点で有利である。また、樹脂は加硫ゴムに比して損失係数(tanδ)が低いため、補強コード層28が樹脂を多く含んでいると、タイヤの転がり性を向上させることができる。更には、樹脂は加硫ゴムに比して、面内せん断剛性が大きく、タイヤ走行時の操安性や耐摩耗性にも優れるといった利点がある。
そして、図2に示すように、補強コード26の埋設量Lが直径Dの1/5以上となっていることから、製造時のエア入りが効果的に抑制されており、走行時の入力などによって補強コード26が動くのがさらに抑制される。
また、路面と接触するクラウン30を、タイヤケース17を構成する樹脂組成物よりも耐摩耗性のあるゴム材で構成していることから、タイヤ10の耐摩耗性が向上する。
さらに、ビード部12には、金属材料からなる環状のビードコア18が埋設されていることから、従来のゴム製の空気入りタイヤと同様に、リム20に対してタイヤケース17、すなわちタイヤ10が強固に保持される。
タイヤケース17は、エステル結合を含むポリアミド系熱可塑性エラストマーを用いているため、ビード部12のリム20と接触する部分に、タイヤケース17を構成する特定樹脂材料よりもシール性のあるゴム材からなるシール層24を設けることで、タイヤ10とリム20との間のリム組み性を更に向上させることができる。
上述の実施形態では、補強コード26を加熱し、加熱した補強コード26が接触する部分のタイヤケース17の表面を溶融又は軟化させる構成としたが、本発明はこの構成に限定されず、補強コード26を加熱せずに熱風生成装置を用い、補強コード26が埋設されるクラウン部16の外周面を加熱した後、補強コード26をクラウン部16に埋設するようにしてもよい。
また、第1実施形態では、コード加熱装置59の熱源をヒーター及びファンとしているが、本発明はこの構成に限定されず、補強コード26を輻射熱(例えば、赤外線など)で直接加熱する構成としてもよい。
さらに、第1実施形態では、補強コード26を埋設した樹脂組成物が溶融又は軟化した部分を金属製の第2のローラ64で強制的に冷却する構成としたが、本発明はこの構成に限定されず、樹脂組成物が溶融又は軟化した部分に冷風を直接吹きかけて、樹脂組成物の溶融又は軟化した部分を強制的に冷却固化する構成としてもよい。
また、第1実施形態では、補強コード26を加熱する構成としたが、例えば、補強コード26の外周をタイヤケース17と同じ樹脂組成物で被覆する構成としてもよく、この場合には、被覆補強コードをタイヤケース17のクラウン部16に巻き付ける際に、補強コード26と共に被覆した樹脂組成物も加熱することで、クラウン部16への埋設時におけるエア入りを効果的に抑制することができる。
また、補強コード26は螺旋巻きするのが製造上は容易だが、幅方向で補強コード26を不連続とする方法等も考えられる。
第1実施形態のタイヤ10は、ビード部12をリム20に装着することで、タイヤ10とリム20との間で空気室を形成する、所謂チューブレスタイヤであるが、本発明はこの構成に限定されず、完全なチューブ形状であってもよい。また、本発明のタイヤは、特開2012−46030号公報の第2実施形態(図4及び5)に示すようにコード部材が樹脂材料で被覆されている補強コード部材を用いた態様であってもよい。
以上、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、これらの実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲がこれらの実施形態に限定されないことは言うまでもない。
[第2の実施形態]
次に、図面に従って本発明のタイヤの製造方法及びタイヤの第2実施形態について説明する。本実施形態のタイヤは、上述の第1実施形態と同様に、従来一般のゴム製の空気入りタイヤと略同様の断面形状を呈している。このため、以下の図において、前記第1実施形態と同様の構成については同様の番号が付される。図4(A)は、第2実施形態のタイヤのタイヤ幅方向に沿った断面図であり、図4(B)は第2実施形態のタイヤにリムを嵌合させた状態のビード部のタイヤ幅方向に沿った断面の拡大図である。また、図5は、第2実施形態のタイヤの補強層の周囲を示すタイヤ幅方向に沿った断面図である。
第2実施形態のタイヤは、上述の第1実施形態と同様に、タイヤケース17が、アミド結合及びエステル結合の少なくとも一方を含む樹脂材料と、カルボジイミド化合物と、を含み、前記樹脂材料100質量部に対する前記カルボジイミド化合物の含有量が0.3質量部以上6質量部未満である樹脂組成物で形成されている。本実施形態においてタイヤ200は、図4及び図5に示すように、クラウン部16に、被覆コード部材26Bが周方向に巻回されて構成された補強コード層28(図5では破線で示されている)が積層されている。この補強コード層28は、タイヤケース17の外周部を構成し、クラウン部16の周方向剛性を補強している。なお、補強コード層28の外周面は、タイヤケース17の外周面17Sに含まれる。
この被覆コード部材26Bは、タイヤケース17を形成する樹脂組成物中の特定樹脂材料よりも剛性が高いコード部材26Aにタイヤケース17を形成する樹脂組成物とは別体の被覆用の樹脂である被覆用樹脂27を被覆して形成されている。また、被覆コード部材26Bはクラウン部16との接触部分において、被覆コード部材26Bとクラウン部16とが接合(例えば、溶接、又は接着剤で接着)されている。
また、被覆用樹脂27においては、タイヤケース17を形成する樹脂組成物と同様の組成物を用いてもよいし、前記樹脂組成物中の特定樹脂材料と同じ樹脂材料を用いてもよい。
また、被覆用樹脂27の弾性率は、タイヤケース17を形成する樹脂組成物の弾性率の0.1倍から10倍の範囲内に設定することが好ましい。被覆用樹脂27の弾性率がタイヤケース17を形成する樹脂組成物の弾性率の10倍以下の場合は、クラウン部が硬くなり過ぎずリム組み性が容易になる。また、被覆用樹脂27の弾性率が、タイヤケース17を形成する弾性率の0.1倍以上の場合には、補強コード層28を構成する樹脂が柔らかすぎず、ベルト面内せん断剛性に優れコーナリング力が向上する。
また、図5に示すように、被覆コード部材26Bは、断面形状が略台形状とされている。なお、以下では、被覆コード部材26Bの上面(タイヤ径方向外側の面)を符号26Uで示し、下面(タイヤ径方向内側の面)を符号26Dで示す。また、本実施形態では、被覆コード部材26Bの断面形状を略台形状とする構成としているが、本発明はこの構成に限定されず、断面形状が下面26D側(タイヤ径方向内側)から上面26U側(タイヤ径方向外側)へ向かって幅広となる形状を除いた形状であれば、いずれの形状でもよい。
図5に示すように、被覆コード部材26Bは、周方向に間隔をあけて配置されていることから、隣接する被覆コード部材26Bの間に隙間28Aが形成されている。このため、補強コード層28の外周面は、凹凸とされ、この補強コード層28が外周部を構成するタイヤケース17の外周面17Sも凹凸となっている。
タイヤケース17の外周面17S(凹凸含む)には、微細な粗化凹凸96が均一に形成され、その上に接合剤を介して、クッションゴム29が接合されている。このクッションゴム29は、径方向内側のゴム部分が粗化凹凸96に流れ込んでいる。
また、クッションゴム29の上(外周面)にはタイヤケース17を形成している樹脂組成物中の特定樹脂材料よりも耐摩耗性に優れた材料、例えばゴムからなるトレッド30が接合されている。
なお、トレッド30に用いるゴム(トレッドゴム30A)は、従来のゴム製の空気入りタイヤに用いられているゴムと同種のゴムを用いることが好ましい。また、トレッド30の代わりに、タイヤケース17を形成する特定樹脂材料よりも耐摩耗性に優れる他の種類の樹脂材料で形成したトレッドを用いてもよい。また、トレッド30には、従来のゴム製の空気入りタイヤと同様に、路面との接地面に複数の溝からなるトレッドパターン(図示省略)が形成されている。
次に本実施形態のタイヤの製造方法について説明する。
(タイヤ骨格形成工程)
(1)まず、上述の第1実施形態と同様にして、タイヤケース半体17Aを形成し、これを接合金型によって加熱・押圧し、タイヤケース17を形成する。
(補強コード部材巻回工程)
(2)本実施形態におけるタイヤの製造装置は、上述の第1実施形態と同様であり、上述の第1実施形態の図3に示すコード供給装置56において、リール58にコード部材26Aを被覆用樹脂27(本実施形態では熱可塑性材料)で被覆した断面形状が略台形状の被覆コード部材26Bを巻き付けたものが用いられる。
まず、ヒーター70の温度を上昇させ、ヒーター70で加熱された周囲の空気をファン72の回転によって生じる風で加熱ボックス74へ送る。リール58から巻き出した被覆コード部材26Bを、熱風で内部空間が加熱された加熱ボックス74内へ送り加熱(例えば、被覆コード部材26Bの外周面の温度を、被覆用樹脂27の融点以上)とする。ここで、被覆コード部材26Bが加熱されることにより、被覆用樹脂27が溶融又は軟化した状態となる。
そして被覆コード部材26Bは、排出口76を通り、紙面手前方向に回転するタイヤケース17のクラウン部16の外周面に一定のテンションをもって螺旋状に巻回される。このとき、クラウン部16の外周面に被覆コード部材26Bの下面26Dが接触する。そして、接触した部分の溶融又は軟化状態の被覆用樹脂27はクラウン部16の外周面上に広がり、クラウン部16の外周面に被覆コード部材26Bが溶着される。これにより、クラウン部16と被覆コード部材26Bとの接合強度が向上する。
(粗化処理工程)
(3)次に、図示を省略するブラスト装置にて、タイヤケース17の外周面17Sに向け、タイヤケース17側を回転させながら、外周面17Sへ投射材を高速度で射出する。射出された投射材は、外周面17Sに衝突し、この外周面17Sに算術平均粗さRaが0.05mm以上となる微細な粗化凹凸96を形成する。
このようにして、タイヤケース17の外周面17Sに微細な粗化凹凸96が形成されることで、外周面17Sが親水性となり、後述する接合剤の濡れ性が向上する。
(積層工程)
(4)次に、粗化処理を行なったタイヤケース17の外周面17Sに接合剤を塗布する。
なお、接合剤としては、ハロゲン化ゴム系接着剤等のゴム系接着剤(例えば、塩化ゴム系接着剤)、トリアジンチオール系接着剤、フェノール系樹脂接着剤、イソシアネート系接着剤など、特に制限はないが、クッションゴム29が加硫できる温度(90℃〜140℃)で反応することが好ましい。
(5)次に、接合剤が塗布された外周面17Sに未加硫状態のクッションゴム29を1周分巻き付け、そのクッションゴム29の上に例えば、ゴムセメント組成物などの接合剤を塗布し、その上に加硫済み又は半加硫状態のトレッドゴム30Aを1周分巻き付けて、生タイヤケース状態とする。
(加硫工程)
(6)次に生タイヤケースを加硫缶やモールドに収容して加硫する。このとき、粗化処理によってタイヤケース17の外周面17Sに形成された粗化凹凸96に未加硫のクッションゴム29が流れ込む。そして、加硫が完了すると、粗化凹凸96に流れ込んだクッションゴム29により、アンカー効果が発揮されて、タイヤケース17とクッションゴム29との接合強度が向上する。すなわち、クッションゴム29を介してタイヤケース17とトレッド30との接合強度が向上する。
(8)そして、タイヤケース17のビード部12に、樹脂材料よりも軟質である軟質材料からなるシール層24を、接着剤等を用いて接着すれば、タイヤ200の完成となる。
(作用)
本実施形態のタイヤ200では、タイヤケース17がアミド結合及びエステル結合の少なくとも一方を含む樹脂材料と、カルボジイミド化合物と、を含み、前記樹脂材料100質量部に対する前記カルボジイミド化合物の含有量が0.3質量部以上6質量部未満である樹脂組成物によって形成されているため、湿熱条件下に晒された後のタイヤの転がり抵抗の増加を抑制し、さらに低下させることができる。さらにタイヤ構造が簡素化できる為、従来のゴムに比して重量が軽い。このため、本実施形態のタイヤ200は、耐久性に優れ、温度変化に影響を受け難く、自動車に用いたときには、燃費が良い。
また、補強コード層28が、被覆コード部材26Bを含んで構成されていると、補強コード26Aを単にクッションゴム29で固定する場合と比してタイヤケース17と補強コード層28との硬さの差を小さくできるため、更に被覆コード部材26Bをタイヤケース17に密着・固定することができる。これにより、上述のエア入りを効果的に防止することができ、走行時に補強コード部材が動くのを効果的に抑制することができる。
更に、補強コードがスチールコードの場合、タイヤ処分時に被覆コード部材26Bからコード部材26Aを加熱によって容易に分離・回収が可能であるため、タイヤ200のリサイクル性の点で有利である。また、樹脂材料は通常加硫ゴムに比して損失係数(tanδ)が低い。このため、補強コード層が樹脂を多く含んでいると、タイヤの転がり性を向上させることができる。更には、加硫ゴムに比して相対的に弾性率の高い樹脂は、面内せん断剛性が大きく、タイヤ走行時の操安性や耐摩耗性にも優れるといった利点がある。
また、補強コード部材26Aを被覆する被覆用樹脂27について、タイヤケース17を形成する樹脂組成物と同様の組成物を用いてもよい。これによって、補強コード部材26Bのtanδをより低下させ、さらにタイヤの転がり抵抗の増加を抑制することができる。
本実施形態のタイヤの製造方法では、タイヤケース17とクッションゴム29及びトレッドゴム30Aとを一体化するにあたり、タイヤケース17の外周面17Sが粗化処理されていることから、アンカー効果により接合性(接着性)が向上する。また、タイヤケース17を形成する樹脂組成物が投射材の衝突により掘り起こされることから、接合剤の濡れ性が向上する。これにより、タイヤケース17の外周面17Sに接合剤が均一な塗布状態で保持され、タイヤケース17とクッションゴム29との接合強度を確保することができる。
特に、タイヤケース17の外周面17Sに凹凸が構成されていても、凹部(隙間28A)に投射材を衝突させることで凹部周囲(凹壁、凹底)の粗化処理がなされ、タイヤケース17とクッションゴム29との接合強度を確保することができる。
一方、クッションゴム29がタイヤケース17の外周面17Sの粗化処理された領域内に積層されることから、タイヤケース17とクッションゴムとの接合強度を効果的に確保することができる。
加硫工程において、クッションゴム29を加硫した場合、粗化処理によってタイヤケース17の外周面17Sに形成された粗化凹凸96にクッションゴム29が流れ込む。そして、加硫が完了すると、粗化凹凸96に流れ込んだクッションゴム29により、アンカー効果が発揮されて、タイヤケース17とクッションゴム29との接合強度が向上する。
このような、タイヤの製造方法にて製造されたタイヤ200は、タイヤケース17とクッションゴム29との接合強度が確保される、すなわち、クッションゴム29を介してタイヤケース17とトレッド30との接合強度が確保される。これにより、走行時などにおいて、タイヤ200のタイヤケース17の外周面17Sとクッションゴム29との間の剥離が抑制される。
また、タイヤケース17の外周部を補強コード層28が構成していることから、外周部を補強コード層28以外のもので構成しているものと比べて、耐パンク性及び耐カット性が向上する。
また、被覆コード部材26Bを巻回して補強コード層28が形成されていることから、タイヤ200の周方向剛性が向上する。周方向剛性が向上することで、タイヤケース17のクリープ(一定の応力下でタイヤケース17の塑性変形が時間とともに増加する現象)が抑制され、且つ、タイヤ径方向内側からの空気圧に対する耐圧性が向上する。
本実施形態では、タイヤケース17の外周面17Sに凹凸を構成したが、本発明はこれに限らず、外周面17Sを平らに形成する構成としてもよい。
また、タイヤケース17は、タイヤケースのクラウン部に巻回され且つ接合された被覆コード部材を被覆用熱可塑性材料で覆うようにして補強コード層を形成してもよい。この場合、溶融又は軟化状態の被覆用熱可塑性材料を補強コード層28の上に吐出して被覆層を形成することができる。また、押出機を用いずに、溶着シートを加熱し溶融又は軟化状態にして、補強コード層28の表面(外周面)に貼り付けて被覆層を形成してもよい。
上述の第2実施形態では、ケース分割体(タイヤケース半体17A)を接合してタイヤケース17を形成する構成としたが、本発明はこの構成に限らず、金型などを用いてタイヤケース17を一体的に形成してもよい。
第2実施形態のタイヤ200は、ビード部12をリム20に装着することで、タイヤ200とリム20との間で空気室を形成する、所謂チューブレスタイヤであるが、本発明はこの構成に限定されず、タイヤ200は、例えば、完全なチューブ形状であってもよい。
第2実施形態では、タイヤケース17とトレッド30との間にクッションゴム29を配置したが、本発明はこれに限らず、クッションゴム29を配置しない構成としてもよい。
また、第2実施形態では、被覆コード部材26Bをクラウン部16へ螺旋状に巻回する構成としたが、本発明はこれに限らず、被覆コード部材26Bが幅方向で不連続となるように巻回する構成としてもよい。
第2実施形態では、被覆コード部材26Bを形成する被覆用樹脂27を熱可塑性材料とし、この被覆用樹脂27を加熱することにより溶融又は軟化状態にしてクラウン部16の外周面に被覆コード部材26Bを溶着する構成としているが、本発明はこの構成に限定されず、被覆用樹脂27を加熱せずに接着剤などを用いてクラウン部16の外周面に被覆コード部材26Bを接着する構成としてもよい。
また、被覆コード部材26Bを形成する被覆用樹脂27を熱硬化性樹脂とし、被覆コード部材26Bを加熱せずに接着剤などを用いてクラウン部16の外周面に接着する構成としてもよい。
さらに、被覆コード部材26Bを形成する被覆用樹脂27を熱硬化性樹脂とし、タイヤケース17を熱可塑性樹脂材料で形成する構成としてもよい。この場合には、被覆コード部材26Bをクラウン部16の外周面に接着剤などを用いて接着してもよく、タイヤケース17の被覆コード部材26Bが配設される部位を加熱して溶融又は軟化状態にして被覆コード部材26Bをクラウン部16の外周面に溶着してもよい。
またさらに、被覆コード部材26Bを形成する被覆用樹脂27を熱可塑性材料とし、タイヤケース17を熱可塑性樹脂材料で形成する構成としてもよい。この場合には、被覆コード部材26Bをクラウン部16の外周面に接着剤などを用いて接着してもよく、タイヤケース17の被覆コード部材26Bが配設される部位を加熱して溶融又は軟化状態としつつ、被覆用樹脂27を加熱し溶融又は軟化状態にして被覆コード部材26Bをクラウン部16の外周面に溶着してもよい。なお、タイヤケース17及び被覆コード部材26Bの両者を加熱して溶融又は軟化状態にした場合、両者が良く混ざり合うため接合強度が向上する。また、タイヤケース17を形成する樹脂材料(特定樹脂材料)、及び被覆コード部材26Bを形成する被覆用樹脂27をともに熱可塑性樹脂材料とする場合には、同種の熱可塑性材料、特に同一の熱可塑性材料とすることが好ましい。また、樹脂材料の同種とは、エステル系同士、アミド系同士などの形態を指す。
また、さらに、粗化処理を行なったタイヤケース17の外周面17Sに、コロナ処理やプラズマ処理等を用い、外周面17Sの表面を活性化し、親水性を高めた後、接着剤を塗布してもよい。
またさらに、タイヤ200を製造するための順序は、第2実施形態の順序に限らず、適宜変更してもよい。
以上、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、これらの実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲がこれらの実施形態に限定されないことは言うまでもない。
以下、本発明について実施例を用いてより具体的に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
まず、上述の第2実施形態に従って、実施例及び比較例のタイヤケース(タイヤ骨格体)の試料片及びタイヤを作製した。この際、タイヤケースの試料片を形成する材料については下記表1に記載の材料を用いた。また、各実施例及び比較例でのタイヤの作製においては、各実施例及び比較例のタイヤケースの試料片の作製に用いた樹脂組成物と同じ組成物によってタイヤケースを作製した後、下記表2に記載の補強コード部材を用いてタイヤを作製した。
<タイヤケース試料片の作製>
〔樹脂組成物に配合する成分〕
1.特定樹脂材料
樹脂組成物に含める特定樹脂材料として、市販のポリアミド系熱可塑性エラストマー(Pebax5533SP、アルケマ社製)をそのまま用いた。
2.カルボジイミド化合物
樹脂組成物に含めるカルボジイミド化合物として、市販のカルボジイミド化合物(Stabaxol P、RheinChemie社製)をそのまま用いた。
〔タイヤケースの試料片の作製〕
実施例1〜5に用いるタイヤケースの試料片の作製において、まず、前記特定樹脂材料とカルボジイミド化合物を、表1に示す組成で混合して、プラストミル(LABOPLASTOMILL 50MR 2軸押出し機、東洋精機製作所製)により混練し、ペレットを調製した。また、比較例1においては、前記特定樹脂材料のみを用い、実施例1〜5と同様にペレットを調製した。なお表1には、特定樹脂材料の質量を100質量部基準とした場合の、前記特定樹脂材料に対するカルボジイミド化合物の含有量を質量部で示す。
次に、調製したペレットを成形材料として用い、電熱プレス(小平製作所製)を用いて、230℃、12MPaの条件下、5分間加熱することで、加熱プレスを行い、長さ80mm、幅40mm、厚み2mmの樹脂プレートを作製した。上記にて作製した樹脂プレートから、JISK6251(1993年)に規定されるダンベル状試験片(5号形試験片)を打ち抜き、評価用のタイヤケースの試料片を作製した。
<湿熱処理前後のtanδの測定>
上記で作製した実施例1〜5並びに比較例1及び2に用いるタイヤケースの試料片について、粘弾性測定試験機(レオメトリックス社製)を使用し、温度30℃、歪1%、周波数20Hzで損失正接(tanδ)を測定した。
その後、実施例1〜5並びに比較例1及び2のタイヤケース試料片を、湿熱条件(80℃、湿度95%RHの雰囲気下)で1000時間静置された後(湿熱処理後)、湿熱処理後の各試料片について、上記と同様の方法によって、tanδを測定した。表1に、各試料片についての湿熱処理前のtanδ(初期値)、湿熱処理後(1000時間後)tanδ及び湿熱処理前後のtanδの差を示す。
<タイヤの作製及び湿熱処理前の転がり抵抗>
上述にのように、第2実施形態に従って、実施例1〜5並びに比較例1及び2に用いた樹脂組成物と同じ組成の各タイヤケースを作製し、表2に記載された組成の補強コード被覆用の樹脂で被覆されたスチール製の補強コードを用いて、タイヤサイズ225/45R17のタイヤを作製した。
実施例1〜5並びに比較例1及び2のそれぞれのタイヤにつき、JATMAに準拠する7.5JJ×17リムに組み付けて、内圧を230kPa、負荷荷重3.92kNとし、時速80km/hでタイヤを転動させ、直径1.7mの鉄板表面を持つドラム試験機を用いて、タイヤ作製直後でかつ湿熱処理前の転がり抵抗(初期転がり抵抗)について測定した。この際、各実施例及び比較例の初期転がり抵抗については、比較例1のタイヤ作製直後でかつ湿熱処理前の転がり抵抗(初期転がり抵抗)を基準値(100)とする指数で表し、下記のように評価した。結果を表2に示す。
・98より小さい:A
・98〜102:B
・102より大きい:C
<湿熱処理後の転がり性能維持性における評価>
上記で作製したタイヤを湿熱処理(60℃〜80℃、湿度85%RHの雰囲気下)で1000時間静置した後、湿熱処理後のタイヤについて、上記と同様に転がり抵抗を測定した。この際、転がり性能維持性については、以下のように評価した。結果を表2に示す。
・湿熱処理後に、転がり抵抗が、湿熱処理前に比べて、小さくなった:A
・湿熱処理前後で、転がり抵抗に有意な差はなかった:B
・湿熱処理後に、転がり抵抗が、湿熱処理前に比べて、大きくなった:C
表1に示されるように、実施例1〜5において、湿熱処理後の樹脂組成物(タイヤ骨格体)のtanδが湿熱処理前のtanδに比べて回復した。また実施例1〜5の湿熱処理前のtanδは、カルボジイミド化合物を含まない比較例1より高いものの、湿熱処理後には、比較例1に比べてより低下した。一方、カルボジイミド化合物を過剰に含む比較例2では、湿熱処理後のtanδは低下するものの、カルボジイミド化合物を含まない比較例1よりも高いtanδであることが示された。
以上の結果から、樹脂組成物(タイヤ骨格体)に含めるカルボジイミド化合物の特定樹脂材料に対する含有量が0.3質量%以上6質量%未満の場合には、湿熱処理後に、tanδが、カルボジイミド化合物を含めない場合よりも有意に低下することが示された。
また、表2に示されるように、実施例1〜5では、湿熱処理後のタイヤとしての転がり抵抗が湿熱処理前のものに比べて小さくなり、タイヤとしての転がり性能維持性が良化した。逆に、比較例1及び2では、湿熱処理後には、転がり抵抗が大きくなり、タイヤとしての転がり性能維持性が悪化した。
また、上記の実施例2〜3、及び比較例1のタイヤケース試料片においては、湿熱処理を開始してから1000時間までの各時間におけるtanδについても測定した。
その結果、カルボジイミド化合物を含まない比較例1の樹脂組成物(タイヤ骨格体)は湿熱処理の時間の経過に伴って、tanδ値が上昇し続けたが、カルボジイミド化合物を含む実施例2及び3の樹脂組成物は、湿熱条処理の時間の経過に伴って、比較例1の樹脂組成物は逆にtanδ値が低下することが示された。
以上のように、タイヤ骨格体を形成する樹脂組成物中に特定樹脂材料と特定の含有量のカルボジイミド化合物を含めることで、タイヤが湿熱条件下に晒された後でも、タイヤ骨格体のtanδ値を低下させ、タイヤとしての転がり性能維持性を良化できることが示された。
10,200 タイヤ
12 ビード部
16 クラウン部(外周部)
18 ビードコア
20 リム
21 ビードシート
22 リムフランジ
17 タイヤケース(タイヤ骨格体)
24 シール層(シール部)
26 補強コード(補強コード部材)
26A コード部材(補強コード部材)
28 補強コード層
30 トレッド
D 補強コードの直径(補強コード部材の直径)
L 補強コードの埋設量(補強コード部材の埋設量)

Claims (5)

  1. 少なくとも、(A)アミド結合及びエステル結合の少なくとも一方を有する樹脂材料と、(B)カルボジイミド化合物と、を含み、前記樹脂材料100質量部に対する前記カルボジイミド化合物の含有量が0.3質量部以上6質量部未満である樹脂組成物で形成されるタイヤ骨格体を有するタイヤ。
  2. 前記樹脂材料が、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド樹脂及びポリエステル樹脂から選ばれる少なくとも1つの樹脂を含む請求項1に記載のタイヤ。
  3. 前記タイヤ骨格体の外周部に周方向に巻回されることで補強コード層を形成する補強コード部材をさらに有し、
    前記補強コード部材は、少なくとも被覆用樹脂によって被覆された請求項1又は請求項2に記載のタイヤ。
  4. 前記被覆用樹脂が、前記樹脂材料である請求項3に記載のタイヤ。
  5. 前記被覆用樹脂が、前記樹脂組成物である請求項3に記載のタイヤ。
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