次に、本発明に係る実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。
なお、下記の実施形態に係る空気入りタイヤは、ビート部やカーカス層、ベルト層(不図示)を備える空気入りタイヤであるが、かかる構成は省略して説明する。
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態について説明する。
(1)トレッドパターンの構成
図1は、本発明の第1実施形態に係る空気入りタイヤ1を構成するトレッドパターンを示す一部平面図である。
図1に示すように、空気入りタイヤ1は、トレッド面視において、タイヤ周方向Tcに沿って延びる複数の周方向溝10と、トレッド幅方向Tw(タイヤ幅方向)に延びる複数の横溝20と、複数の周方向溝10と複数の横溝20とによって区画され、路面に接地する踏面を有するブロック部100とを備える。なお、トレッド幅方向Twの最も外側に形成されるショルダー陸部には、トレッド幅方向Twに沿って延びるラグ溝が、タイヤ周方向Tcに所定間隔を設けて形成されていている。
なお、トレッド面とは、タイヤを適用リムに装着するとともに、規定の空気圧を充填し、静止した状態で平板上に垂直に置き、規定の質量に対応する負荷を加えたときの平板との接触面をいうものとする。この場合、適用リムとは、タイヤのサイズに応じて下記の規格に規定されたリムを示し、規定の空気圧とは、下記の規格において、最大負荷能力に対応して規定される空気圧を示し、最大負荷能力とは、下記の規格で、タイヤに負荷することが許容される最大の質量を示す。また、規定の質量とは、上記の最大負荷能力をいう。なお、ここでいう空気は、窒素ガス等の不活性ガスその他に置換することも可能である。
そして規格とは、タイヤが生産または使用される地域に有効な産業規格をいい、たとえば、アメリカ合衆国では“THE TIRE AND RIM ASSOCIATION INC.のYEAR BOOK”であり、欧州では、“THE European Tyre and Rim Technical OrganisationのSTANDARDS MANUAL”であり、日本では日本自動車タイヤ協会の“JATMA YEAR BOOK”である。
また、本実施形態では、主溝10は、トレッド幅方向Twに屈曲する、いわゆるジグザグ状にタイヤ周方向Tcに延びる。複数の横溝20の各々は、隣接する2つの主溝10aに開口し、タイヤ周方向Tcでオフセットするように形成されている。すなわち、複数の横溝20の各々は、タイヤ周方向Tcにおける位相が異なる。なお、複数の横溝20の各々は、トレッド幅方向Twに屈曲する周方向溝10のピーク部分に開口する。
本実施形態に係る空気入りタイヤ1では、複数の周方向溝10と複数の横溝20とに区画されることによって、複数のブロック部100が形成されている。ブロック部100のトレッド幅方向Twの幅は、タイヤ周方向Tcの外側から中央に向かうにつれて、広がるように形成されている。なお、このブロック部100のトレッド幅方向Twに最も広がる部分は、トレッド幅方向Twに屈曲する周方向溝10のピーク部分によって形成される。具体的に、本実施形態に係るブロック部100の踏面は、タイヤ周方向Tcの外側から中央に向かうにつれて、トレッド幅方向Twにおける幅が広がる六角形状に形成されている。また、複数のブロック部100は、タイヤ周方向Tcにおける位相を異なるように配置されており、トレッド幅方向Twに隣接するブロック部100同士が、トレッド幅方向Twの幅が広くなるブロック部100のタイヤ周方向Tcの中央と、トレッド幅方向Twの幅が狭くなるブロック部100のタイヤ周方向Tcの外側とが隣接するように配置されている。このように複数のブロック部100を配置することによって、隣接するブロック部100間の間隔が密に配置されている。
また、複数の周方向溝10には、主溝10aと主溝10aよりも溝幅の狭い細溝10bとが含まれている。つまり、主溝10aの溝幅W1と細溝10bの溝幅W2とは、W1>W2の関係を満たす。なお、細溝10bの溝幅W2は、空気入りタイヤ1に上述した規格に規定される空気圧を充填し、上述した規格に規定される最大負荷能力の負荷を与えることによって、トレッド面が接地したときに閉じることが可能な溝幅であることが好ましい。好ましくは、溝幅W2は、2.5〜3.5mmの範囲内であり、3mmであることがより好ましい。
空気入りタイヤ1では、細溝10bは、タイヤ赤道線CLに沿って1本形成されており、主溝10aは、細溝10bよりもトレッド幅方向Twの一方の外側に2本、他方の外側に2本形成されている。
また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1では、ブロック部100として、2つの主溝10aと横溝20とによって区画されることによって形成される外側ブロック部110と、主溝10aと細溝10bと横溝とによって区画されることによって形成される内側ブロック部120とが形成されている。内側ブロック部120は、細溝10bのトレッド幅方向Tw外側の一方と、細溝10bのトレッド幅方向Tw外側の他方とに、1列ずつ形成されている。また、細溝10bのトレッド幅方向Tw外側の一方に形成される内側ブロック部120と、細溝10bのトレッド幅方向Tw外側の他方に形成される内側ブロック部120とは、タイヤ周方向Tcに交互に配置、すなわち、タイヤ周方向Tcにおける位相を異なるように配置されている。
(2)ブロック部の構成
次に、外側ブロック部110と内側ブロック部120との構成について図面を参照しながら説明する。まず、外側ブロック部110の構成について説明する。図2は、本実施形態に係る外側ブロック部110の拡大平面図である。
図2に示すように、外側ブロック部110は、踏面110Xと、トレッド幅方向Twに隣接する一方の主溝10aによって形成される周方向側壁面111と、トレッド幅方向Twに隣接する他方の主溝10aによって形成される周方向側壁面113と、タイヤ周方向Tcに隣接する一方の横溝20によって形成される幅方向側壁面112と、タイヤ周方向Tcに隣接する他方の横溝20によって形成される幅方向側壁面114とを有する。なお、本実施形態において、外側ブロック部110に形成される周方向側壁面111は、外側ブロック部110のトレッド幅方向Twのタイヤ赤道線CL側、すなわち、トレッド幅方向Tw内側に位置するものとする。
また、外側ブロック部110では、踏面110Xは、周方向側壁面111側に形成される端部110Aと、周方向側壁面113側に形成される端部110Cと、幅方向側壁面112側に形成される端部110Bと、幅方向側壁面114側に形成される端部110Dとを有する。
外側ブロック部110の踏面110Xのタイヤ周方向Tcにおける長さBLは、外側ブロック部110のトレッド幅方向Twの最も外側に位置する外端部Wm間の幅BWよりも長い。つまり、外側ブロック部110の踏面110Xは、トレッド幅方向Twの幅よりもタイヤ周方向Tcに長くなるように形成されている。
また、本実施形態において、踏面110Xに平行な面による外側ブロック部110の断面形状は、踏面110Xからタイヤ径方向内側に向かうにつれて変形する。つまり、外側ブロック部110の周囲に形成される側壁の傾斜角度が、箇所によって異なる。以下に、外側ブロック部110の側壁角度について具体的に説明する。
本実施形態において、外側ブロック部110は、主溝10aによって外側ブロック部110に形成される一方の周方向側壁面111と、踏面110Xとが成す周方向側壁角度θ11は、タイヤ周方向Tcに隣接する一方の横溝20によって外側ブロック部110に形成される一端110Dにおいて鈍角となり、タイヤ周方向Tcに隣接する他方の横溝20によって外側ブロック部110に形成される他端110Bにおいて、鋭角となるように変化する。
ここで、図3(a)には、図2のA1−A1’線における断面図が示されている。図3(b)には、図2のB1−B1’線における断面図が示されている。図3(c)には、図2のC1−C1’線における断面図が示されている。なお、図3(a)の断面図は、図2のA2−A2’線における断面図と同一であり、図3(b)の断面図は、図2のB2−B2’線における断面図と同一であり、図3(c)の断面図は、図2のC2−C2’線における断面図と同一である。
周方向側壁角度θ11は、図3(a)に示すように、幅方向側壁面114側においては鈍角、すなわち90度より大きくなるように構成される。また、周方向側壁角度θ11は、図3(b)に示すように、周方向側壁面111のタイヤ周方向Tcにおける中間部分(ここでは、幅方向に最も突出した箇所)においては90度になるように構成される。また、周方向側壁角度θ11は、図3(c)に示すように、幅方向側壁面112側においては鋭角、すなわち90度より小さくなるよう構成されている。
一方、外側ブロック部110は、図3(a)乃至(c)に示すように、他方の周方向側壁面113と踏面110Xとが成す周方向側壁角度θ13は、タイヤ周方向Tcにおける外側ブロック部110の一端110Dにおいて鋭角となり、他端110Bにおいて鈍角となるように変化する。つまり、外側ブロック部110では、周方向側壁角度θ11と周方向側壁角度θ13とが、タイヤ周方向Tcの所定方向に沿って、逆側に変化する。
次に、横溝20によって外側ブロック部110に形成される幅方向側壁面112と、踏面110Xとがなす幅方向側壁角度θ12について説明する。
外側ブロック部110では、横溝20によって外側ブロック部110に形成される幅方向側壁面112と、踏面110Xとが成す幅方向側壁角度θ12は、周方向側壁面111に近づくに連れて、鈍角から鋭角に変化する。
ここで、図4(a)には、図2のD1−D1’線における断面図が示されている。図4(b)には、図2のE1−E1’線における断面図が示されている。図4(c)には、図2のF1−F1’線における断面図が示されている。なお、図4(a)の断面図は、図2のD2−D2’線における断面図と同一であり、図4(b)の断面図は、図2のE2−E2’線における断面図と同一であり、図4(c)の断面図は、図2のF2−F2’線における断面図と同一である。
幅方向側壁角度θ12は、図4(a)に示すように、トレッド幅方向Twの周方向側壁面113側においては鈍角、すなわち、90度より大きくなるように構成され、図4(b)に示すように、幅方向側壁面112のトレッド幅方向Twの中間部分(ここでは、幅方向に最も突出した箇所)においては90度になるように構成され、図4(c)に示すように、周方向側壁面111側においては鋭角、すなわち90度より小さくなるよう構成されている。
一方、外側ブロック部110は、図4(a)乃至(c)に示すように、横溝20によって外側ブロック部110に形成される幅方向側壁面114と、踏面110Xとが成す幅方向側壁角度θ14は、周方向側壁面113に近づくに連れて、鈍角から鋭角に変化する。つまり、外側ブロック部110では、幅方向側壁角度θ12と幅方向側壁角度θ14とが、トレッド幅方向Twの所定方向に沿って逆側に変化する。
なお、上述した周方向側壁角度θ11、θ13と、幅方向側壁角度θ12、14とは、70度から110度の範囲内で変化することが好ましい。
また、外側ブロック部110は、トレッド幅方向Twに沿って延びるサイプ50を有する。 なお、本実施形態において、サイプとは、空気入りタイヤ1に上述した規格に規定される空気圧を充填し、上述した規格に規定される最大負荷能力の負荷を与えることによって、ブロック部のトレッド面が接地したときに閉じることが可能な溝幅をもつものである。好ましくは、サイプは、1.5mm以下の溝幅をもつ。ただし、TBRタイヤといった大型のバスやトラックに用いられるタイヤにおいては、サイプの溝幅は、1.5mm以上であっても良い。
また、サイプ50によって外側ブロック部110に形成されるサイプ壁面51と踏面110Xとが成すサイプ壁角度θ51は、幅方向側壁面112、114に対応して変化する。言い換えると、サイプ50は、幅方向側壁面112、114に対応して、タイヤ径方向に傾斜して延びる。
ここで、図5(a)には、図2のG−G’線における断面図が示されている。図5(b)には、図2のH−H’線における断面図が示されている。図5(c)には、図2のI−I’線における断面図が示されている。
サイプ壁角度θ51は、図5(a)に示すように、トレッド幅方向Twの周方向側壁面113側においては鈍角、すなわち、90度より大きくなるように構成され、図5(b)に示すように、トレッド幅方向Twの中間部分においては90度になるように構成され、図5(c)に示すように、周方向側壁面111側においては鋭角、すなわち90度より小さくなるよう構成されている。このように、サイプ壁角度θ51が、幅方向側壁面112、114に対応して変化するので、外側ブロック部110がサイプ50によって小ブロックに分断されても、分断された小ブロックの体積の差を抑制できる。よって、サイプ50を形成することによる外側ブロック部110の剛性の低下を抑制できる。
また、本実施形態において、外側ブロック部110のタイヤ周方向Tcにおける長さBLは、外側ブロック部110のタイヤ径方向における高さBDの4倍以上である。ここで、図6には、外側ブロック部110のトレッド幅方向Twの中央線BCにおける断面図が示されている。図6に示すように、外側ブロック部110のタイヤ周方向Tcにおける長さBLと、外側ブロック部110のタイヤ径方向における高さBDとは、BL≧4BDの関係を満たす。外側ブロック部110の長さBLが、高さBDの4倍未満であると、外側ブロック部110の剛性が低くなりすぎる。このような構成によって、外側ブロック部110の剛性の最適化を図ることが可能になる。
次に、内側ブロック部120の構成について説明する。図7は、本実施形態に係る内側ブロック部120の拡大平面図である。また、図7に示すように、内側ブロック部120にも、上述した外側ブロック部110と同様にタイヤ径方向に傾斜するサイプ50が形成されている。
また、図7に示すように、内側ブロック部120は、踏面120Xと、トレッド幅方向Twに隣接する細溝10bによって形成される周方向側壁面121と、トレッド幅方向Twに隣接する主溝10aによって形成される周方向側壁面123と、タイヤ周方向Tcに隣接する一方の横溝20によって形成される幅方向側壁面122と、タイヤ周方向Tcに隣接する他方の横溝20によって形成される幅方向側壁面124とを有する。なお、本実施形態において、内側ブロック部120に形成される周方向側壁面121は、内側ブロック部120のトレッド幅方向Twのタイヤ赤道線CL側、すなわち、トレッド幅方向Tw内側に位置するものとする。
また、内側ブロック部120では、踏面110Xは、周方向側壁面121側に形成される端部120Aと、周方向側壁面123側に形成される端部120Cと、幅方向側壁面122側に形成される端部120Bと、幅方向側壁面124側に形成される端部120Dとを有する。
なお、内側ブロック部120の踏面120Xのタイヤ周方向Tcにおける長さBLと、踏面120Xのトレッド幅方向Twの最も外側に位置する外端部Wm間の幅BWとは、上述した外側ブロック部110の長さBLと幅BWと同様であるため、ここでは説明を省略する。
また、内側ブロック部120においても、内側ブロック部120の周囲に形成される側壁の傾斜角度が、箇所によって異なる。以下に、内側ブロック部120の側壁角度について具体的に説明する。
ここで、内側ブロック部120では、主溝10aによって内側ブロック部120に形成される周方向側壁面123と、踏面120Xとが成す周方向側壁角度θ23は、上述した外側ブロック部110の周方向側壁角度θ13と同様に変化するように構成されている。
また、内側ブロック部120では、内側ブロック部120に形成される幅方向側壁面122と踏面120Xとが成す幅方向側壁角度θ22は、上述した外側ブロック部110の幅方向側壁角度θ12と同様に変化するように構成されている。また、内側ブロック部120では、内側ブロック部120に形成される幅方向側壁面124と踏面120Xとが成す幅方向側壁角度θ24は、上述した外側ブロック部110の幅方向側壁角度θ14と同様に変化するように構成されている。したがって、ここでは、外側ブロック部110との相違点である内側ブロック部120の周方向側壁面121の構成に着目して説明する。
本実施形態に係る空気入りタイヤ1では、細溝10bによって内側ブロック部120に形成される周方向側壁面121と踏面120Xとが成す周方向側壁角度θ21と、主溝10aによって外側ブロック部110に形成される周方向側壁面111と踏面110Xとが成す周方向側壁角度θ11とは、タイヤ周方向Tcにおいて異なるように変化する。
ここで、図8(a)には、図7のJ−J’線における断面図が示されている。図8(b)には、図7のK−K’線における断面図が示されている。図8(c)には、図7のL−L’線における断面図が示されている。図8(d)には、図7のM−M’線における断面図が示されている。図8(e)には、図7のN−N’線における断面図が示されている。図8(f)には、図7のO−O’線における断面図が示されている。図8(g)には、図7のP−P’線における断面図が示されている。
細溝10bによって形成される周方向側壁角度θ21は、図8(a)乃至(g)に示すように、幅方向側壁面124側においては鈍角、すなわち90度より大きくなるように構成される。また、周方向側壁角度θ21は、図8(b)に示すように、幅方向側壁面124と外端部Wmとの間において90度になるように構成される。また、周方向側壁角度θ21は、図3(c)に示すように、外端部Wmにおいては、鋭角、すなわち90度より小さくなるよう構成されている。また、周方向側壁角度θ21は、図8(d)に示すように、外端部Wmと幅方向側壁面122の間において、90度となり、図8(e)に示すように、再び鈍角すなわち90度より大きくなるように構成される。また、周方向側壁角度θ21は、図8(f)に示すように、外端部Wmから幅方向側壁面122に近づくにつれて、再び90度となり、図8(g)に示すように、幅方向側壁面122において鋭角すなわち90度より小さくなるように構成される。
このように、内側ブロック部120では、細溝10bによって形成される周方向側壁角度θ21は、タイヤ周方向Tcの一方の幅方向側壁面124から、他方の幅方向側壁面122に向かって、鈍角と鋭角とへの変化を繰り返すように構成されている。
また、本実施形態において、細溝10bの一方に隣接する内側ブロック部120に形成される周方向側壁面121と、細溝10bの他方に隣接する内側ブロック部120に形成される周方向側壁面121との間において、細溝10bの溝底Dbは、タイヤ周方向Tcに沿って延びる。ここで、細溝10bの溝底Dbは、タイヤ周方向Tcに沿って直線状に延びることが好ましい。なお、細溝10bの溝底Dbは、タイヤ周方向Tcに沿って略直線状に延びていればよい。タイヤ周方向Tcに沿って略直線状に延びるとは、トレッド幅方向Twに5mm(±2.5mm)の範囲以内であることを示す。
図9は、3つの内側ブロック部120を拡大した拡大平面図である。図10(a)には、図9のX−X’線における断面図が示されている。図10(b)には、図9のY−Y’線における断面図が示されている。図10(c)には、図9のZ−Z’線における断面図が示されている。
図9及び図10(a)乃至(c)に示すように、細溝10bの溝底Dbは、タイヤ赤道線CLに沿って、すなわち、タイヤ周方向Tcに沿って直線状に延びるように形成されている。つまり、細溝10bは、タイヤ径方向Td外側(踏面側)において、タイヤ周方向Tcにジグザグ状に延びるが、タイヤ径方向Td内側(溝底側)に向かうにつれて、タイヤ周方向Tcに沿って、直線状に延びるように変化する。
また、このように細溝10bを形成することによって、細溝10bの溝底Dbは、領域X1において、細溝10bのトレッド幅方向Twの一方の内側ブロック部120の内側に位置する。また、細溝10bの溝底Dbは、領域X2において、細溝10bのトレッド幅方向Twの他方の内側ブロック部120の内側に位置する。つまり、空気入りタイヤ1をトレッド面視した際、細溝10bのトレッド幅方向Twの一方に位置する内側ブロック部120の周方向側壁面121と、細溝10bのトレッド幅方向Twの他方に位置する内側ブロック部120の周方向側壁面121とは、領域X1,X2のトレッドの平面視においてオーバーラップする。言い換えると、図10(b)に示すように、トレッド幅方向Tw及びタイヤ径方向Td断面において、細溝10bの一方に位置する内側ブロック部120の周方向側壁面121のタイヤ径方向Tdに、細溝10bの他方に位置する内側ブロック部120の周方向側壁面121の一部が配置される。
このような構成によって、細溝10bによって形成される内側ブロック部120は、踏面120Xに接地圧が付与されても、隣接する内側ブロック部120同士が互いに支え合うので、倒れ込みを抑制できる。
なお、図10(a)乃至(c)の例では、細溝10bの溝底Dbの断面形状が、曲面形状である場合を例に挙げているが、より鋭角な形状であってもよい。
(3)作用・効果
次に、第1実施形態に係る空気入りタイヤ1の作用並びに効果について説明する。ここで、一般的な空気入りタイヤにおいて、車両走行時、ブロック部100は、重力、車両の重みに起因する接地圧と、ゴムの非圧縮性とによって蹴出端側へ膨出する。
また、蹴り出し時において、ブロック部100が路面から離れる際に、ブロック部100の膨出した部分によって、踏面には大きな剪断歪が生じる。これにより、踏面が路面上を滑り、ブロック部100は、蹴出端において初期摩耗が発生し易くなる。また、車両の走行距離に応じて摩耗が進行すると、路肩側の蹴出端は、路面との接地圧が弱くなり、その結果、さらに路面上を滑りやすくなる。このため、ブロック部100の摩耗は、さらにタイヤ回転方向前方へ向かって進展していく。
すなわち、摩耗を抑制するためには、ブロック部100に接地圧がかかる際の膨出量を少なくすることが効果的である。発明者は、車両走行時の接地状態におけるブロック部100の膨出量について鋭意研究した結果、接地圧がかかる際のブロック部100の膨出量は、踏面とブロック部100の溝壁の成す角度が90度よりも小さい程、又は、90度よりも大きい程、抑制できることがわかった。これは、次の理由による。すなわち、踏面とブロック部100の溝壁の成す角度が90度の場合に比べて、かかる角度が90度よりも小さい程、又は、90度よりも大きい程、溝壁面の全体面積を大きくすることができる。このような構成によれば、ブロック部100に接地圧がかかった際に、接地圧が分散されるので、ブロック部100の溝壁の膨出量を抑制することが可能になる。
さらに、ブロック部100を構成するゴムは、一般的に、ゴムの非圧縮性によって、タイヤ周方向Tcにおけるブロック部100中央付近を中心に蹴出端側から踏込端側へ流動する。すなわち、ブロック部100では、蹴出端における膨出量を抑制して、ブレーキング力を打ち消すようにゴムが蹴出端側から踏込端側へ流動すれば、タイヤ周方向Tcの剪断歪を減少させることできるので、ブロック部100に発生した初期摩耗がタイヤ回転方向前方へ進展することを抑制できる。
上述した第1実施形態に係る空気入りタイヤ1は、タイヤ周方向Tcに沿って延びる複数の周方向溝10(主溝10a、細溝10b)と、トレッド幅方向Twに延びる複数の横溝20と、複数の周方向溝10と複数の横溝20とによって区画されるブロック部100を備える。
かかる空気入りタイヤ1によれば、周方向溝10(主溝10a、細溝10b)によってブロック部100(外側ブロック部110,内側ブロック部120)に形成される周方向側壁面111,121の周方向側壁角度θ11,θ21は、一方の横溝20によってブロック部100に形成される一端110D,120Dにおいて鈍角となり、他方の横溝20によってブロック部100に形成される他端110B,120Bにおいて鋭角となるように変化する。また、幅方向壁角度θ12,θ22は、一方の周方向側壁面111,121に近づくにつれて、鈍角から鋭角に変化する。
また、かかる空気入りタイヤ1によれば、ブロック部100(外側ブロック部110,内側ブロック部120)に形成される周方向側壁面113,123の周方向側壁角度θ13,θ23は、一方の横溝20によってブロック部100に形成される一端110B,120Bにおいて鈍角となり、他方の横溝20によってブロック部100に形成される他端110D,120Dにおいて鋭角となるように変化する。また、幅方向壁角度θ14,θ24は、周方向側壁面113,123に近づくにつれて、鈍角から鋭角に変化する。
すなわち、本実施形態に係る空気入りタイヤ1によれば、ブロック部100の周方向側壁角度θ11,θ13,θ21,θ23と、幅方向側壁角度θ12,θ14,θ22,θ24とが、90度よりも大きい値と、90度よりも小さい値とを有するように構成されているため、ブロック部100に接地圧がかかる際の壁面における膨出量を抑制できる。このため、ブロック部100のタイヤ周方向Tcにおける端部110B,120B,110D,120Dにおける剪断歪を抑制できるので、端部110B,120B,110D,120Dに発生する偏摩耗を抑制することが可能になる。
また、本実施形態に係るブロック部100では、周方向側壁面111,121が、ブロック部100のタイヤ周方向Tcにおける端部110D,120Dにおいて、鈍角となり、端部110B,120Bにおいて、鋭角となるように変化する。一方、ブロック部100では、周方向側壁面113,123が、ブロック部100のタイヤ周方向Tcにおける端部110B,120Bにおいて、鈍角となり、端部110D,120Dにおいて、鋭角となるように変化する。これによれば、たとえ使用者が、タイヤ回転方向Trを誤って空気入りタイヤ1を車両に装着したとしても、ブロック部100における周方向側壁面111,121、幅方向側壁面112,122は、蹴出端に配置することが可能になる。従って、使用者にとっては、タイヤ回転方向を意識することなく、車両に装着することができる。
また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1によれば、側壁角度θ11,θ13,θ21,θ23と、幅方向側壁角度θ12,θ14,θ22,θ24とが、90度よりも小さい角度と、90度よりも大きい角度とを有する。仮に、これらの角度θ11乃至θ14,θ21乃至θ24の各々が、90度よりも小さい角度のみで構成する場合、ブロック部100の剛性が低下して、倒れ込みやすくなるため、操縦安定性が低下する。一方、角度θ11乃至θ14,θ21乃至θ24の各々が、90度よりも大きい角度のみで構成する場合、周方向溝10(主溝10a及び細溝10b)と横溝20との溝体積が低下してしまうため、排水性能が低下する。本実施形態に係る空気入りタイヤ1によれば、それぞれの角度θ1乃至θ4が、90度よりも小さい角度と、90度よりも大きい角度とを有することで、操縦安定性及び排水性能も考慮しつつ、偏摩耗を抑制することが可能になる。
また本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、複数の周方向溝10には、主溝10aと主溝10aよりも溝幅の狭い細溝10bとが含まれている。よって、主溝10aだけでブロック部100を形成する場合に比べて、ブロック部100の剛性を高めることが可能になり、操縦安定性を向上できる。
また、細溝10bは、タイヤ赤道線CL上に沿って形成されているため、細溝10bによって区画される内側ブロック部120が、タイヤ赤道線CL上に形成される。すなわち、剛性の高い内側ブロック部120をタイヤ赤道線CL近傍に形成されているため、操縦安定性を向上することができる。
また、また本実施形態に係る空気入りタイヤ1では、細溝10bの一方に隣接する内側ブロック部120に形成される周方向側壁面121と、細溝10bの他方に隣接する内側ブロック部120に形成される周方向側壁面121との間において、細溝10bの溝底は、タイヤ周方向Tcに沿って直線状に延びる。このように細溝10bを形成することによって、細溝10bの溝底Dbは、領域X1において、細溝10bのトレッド幅方向Twの一方の内側ブロック部120の内側に位置する。また、細溝10bの溝底Dbは、領域X2において、細溝10bのトレッド幅方向Twの他方の内側ブロック部120の内側に位置する。つまり、空気入りタイヤ1をトレッド面視した際、細溝10bのトレッド幅方向Twの一方に位置する内側ブロック部120の周方向側壁面121と、細溝10bのトレッド幅方向Twの他方に位置する内側ブロック部120の周方向側壁面121とは、領域X1,X2において、オーバーラップする。よって、トレッド面に接地圧が付与されても、隣接する内側ブロック部120が互いに支え合い、より一層操縦安定性が高まる。
また本実施形態に係るブロック部100は、トレッド面視において、六角形状に形成されている。かかる形状のブロック部100によれば、矩形状のブロック部に比べて、剛性が高まるため、操縦安定性を一層向上させることが可能になる。
また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1によれば、周方向側壁角度θ11,θ13,θ21,θ23と、幅方向側壁角度θ12,θ14,θ22,θ24とが、90度よりも小さい角度と、90度よりも大きい角度とを有し、それぞれ70度以上、110度以下にある事が望ましい。側壁角度が70度以下の場合、ブロック部の剛性が低下して倒れ込みやすくなるため、操縦安定性が低下する。加えて、倒れ込み量が大きくなることで偏摩耗を促進してしまう。一方、110度以上ある場合は、溝体積が低下し、排水性能が低下する。
[比較評価]
次に、本発明の効果を更に明確にするために、以下の従来例及び実施例に係る空気入りタイヤを用いて行った比較評価について説明する。具体的には、(1)評価方法、(2)評価結果について説明する。なお、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
(1)評価方法
複数種類の空気入りタイヤを用いて試験を行い、偏摩耗量について評価をした。
なお、偏摩耗量の評価については、走行後の空気入りタイヤにおいて、所定走行距離を走行後の摩耗量を実測によって測定するとともに、測定結果の平均値を算出した。なお、表1において、数値が小さいほど偏摩耗量が少ないことを示している。
また、試験に使用した空気入りタイヤに関するデータは、以下に示す条件において測定された。
・ タイヤサイズ :11R22.5
・ リム・ホイールサイズ :7.5×22.5
・ タイヤの種類 :重荷重用タイヤ
・ 車両 :トラクター(定積状態)
・ 試験用タイヤの装着位置 :操舵輪
・ 最終評価時の走行距離 :約50,000km
・ 走行路線の特徴 :高速道路
なお、表1において、実施例1乃至6に係るタイヤは、本願発明の第1実施形態に係る空気入りタイヤを使用している。なお、ブロック部の側壁角度は、表1に示すとおりである。また、従来例に係るタイヤは、ブロック部の側壁角度が97度である一般的な空気入りタイヤを用いた。なお、従来例に係るタイヤは、内側ブロック部に形成される周方向側壁面と踏面とが成す周方向側壁角度θ21のみ90度であるものを用いた。他の構成は、従来例、実施例1乃至6ともに同様である。
(2)評価結果
各空気入りタイヤの評価結果について、表1を参照しながら説明する。
表1に示すように、実施例1乃至6に係る空気入りタイヤは、従来例に係る空気入りタイヤと比較すると、偏摩耗量の抑制に優れていることが解る。特に、側壁傾斜角度が70度から110度の範囲内で変化する実施例3乃至6に係る空気入りタイヤは、偏摩耗量の抑制について飛躍的に改善していることが解る。
従って、本発明の空気入りタイヤによれば、ブロック部100の端部に発生する歪が大きくなることを抑制し、偏摩耗の発生を抑制する効果が大きいことが証明された。
[その他の実施形態]
上述したように、本発明の実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。
例えば、本発明は、タイヤとして、空気や窒素ガスなどが充填される空気入りタイヤであってもよく、空気や窒素ガスなどが充填されないソリッドタイヤでもあってもよい。また、タイヤのトレッドパターンは、タイヤ赤道線CLを境に左右を反転させた線対称パターンであってもよい。
また、図11には、他の実施形態に係る空気入りタイヤ1Aの内側ブロック部130のトレッド面における拡大平面図が示されている。ここで、上述した第1実施形態では、横溝20が、トレッド幅方向Twに延びるように構成されていた。しかし、図11に示すように、トレッド幅方向Twに対して傾斜する方向に延びるように構成されていてもよい。この場合、内側ブロック部130の踏面には、横溝20Aの延在方向に平行に延びるサイプ50Aが形成されることが好ましい。なお、上述した実施形態では、ブロック部100が六角形状である場合を例に挙げて説明したが、七角形以上の多角形状であってもよい。
また、図12には、他の実施形態に係る空気入りタイヤ1Bの内側ブロック部140のトレッド面における拡大平面図が示されている。空気入りタイヤ1では、図12に示す内側ブロック部140のように、踏面のトレッド幅方向Twにおける外端部Wmが、タイヤ周方向Tcに沿って、所定の長さを有してもよい。このような内側ブロック部140によれば、横力に対するエッジ効果が高まるので、操縦安定性を高めることが可能になる。
また、図13は、他の実施形態に係る空気入りタイヤ1Cのトレッドパターンを示す一部平面図である。図13に示すように、空気入りタイヤ1Cは、複数の細溝10bを備えていてもよい。このような空気入りタイヤ1Cによれば、細溝10bに隣接して形成されるブロック部100(内側ブロック部120)は、互いに支え合うので、倒れ込みにくくなる。よって、ブロック部100の剛性が高まり、操縦安定性を確保することが可能になる。
このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められる。