JP5887060B2 - 空気入りタイヤおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
第1は、トレッド端TEの付近を拡大したタイヤ幅方向断面を図1(a)に示すように、トレッドゴム6とサイドゴム8との境界Pがショルダー部に存在するような構成である。ところが、ショルダー部は、タイヤの負荷転動時に大きく屈曲して変形するため、このショルダー部に存在する境界Pが故障の起点となるおそれがあった。また、特にアイス性能を確保するために、トレッドゴム6を発泡ゴムで構成した場合、ユーザがショルダー部の発泡ゴムを視認して、外観不良と考えるおそれもあった。
そこで、第2は、図1(b)に示すように、ショルダー部からサイドウォール部にかけてサイドゴム8を配置し、両サイドゴム8の間にトレッドゴム6を配置して、ショルダー部にトレッドゴム6を露出させない構成である(例えば、特許文献1)。
本発明者がこの問題を詳しく調べたところ、ゴム欠けは、生タイヤを加硫した後、加硫済みタイヤを金型から取り外すときに起こっていることを知見した。さらに、ゴム欠けは、トレッド中央では発生せず、トレッド端TE付近のサイプの周辺でのみ生じていることを知見した。本発明者は、以上の知見をもとに、サイプを型付けするためのブレードと、トレッドゴムおよびサイドゴムとの関係を鋭意検討し、本発明を完成させるに至った。
(1)トレッドゴムと、該トレッドゴムのトレッド幅方向両側に隣接したサイドゴムとを有し、トレッド端を含む陸部に、トレッド周方向を横切る向きに延びる複数のサイプが形成されている空気入りタイヤにおいて、
前記トレッドゴムと前記サイドゴムとのタイヤ表面における境界が、前記トレッド端よりトレッド幅方向内側、且つ前記複数のサイプよりトレッド幅方向外側にあり、トレッド端から前記サイプのトレッド幅方向外側端までの距離が、1.0mm〜2.0mmであることを特徴とする空気入りタイヤ。
(3)タイヤ幅方向断面でみたとき、前記トレッドゴムと前記サイドゴムとのタイヤ表面を通る境界線と、トレッド踏面とのなす角度θは、10°以上120°以下であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の空気入りタイヤ。
前記トレッドゴムと前記サイドゴムとのタイヤ表面における境界が、前記複数のサイプよりトレッド幅方向外側かつ該タイヤのショルダー部にあり、タイヤ幅方向断面でみたとき、該トレッドゴムと該サイドゴムとのタイヤ表面における境界点を通る境界線がトレッド踏面と10°以上45°以下の角度をなし、トレッド端を通りタイヤ赤道面に平行な線分と交差することを特徴とする空気入りタイヤ。
(6)前記トレッドゴムは発泡ゴムであり、
前記サイドゴムは非発泡ゴムである、
ことを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
前記トレッドゴムと前記サイドゴムとのタイヤ表面における境界が、前記トレッド端よりトレッド幅方向内側となる配置とし、
前記サイプを型付けするためのブレードを、前記境界よりトレッド幅方向内側、且つトレッド端からトレッド幅方向内側に1.0mm〜2.0mm離間した位置に配置して加硫成形を行うことを特徴とする空気入りタイヤの製造方法。
(8)トレッドゴムと、該トレッドゴムのトレッド幅方向両側に隣接したサイドゴムとを有し、トレッド端を含む陸部にトレッド周方向を横切る向きに延びる複数のサイプが形成されている空気入りタイヤの製造方法において、
前記トレッドゴムと前記サイドゴムとのタイヤ表面における境界が、該タイヤのショルダー部にあり、タイヤ幅方向断面でみたとき、該トレッドゴムと該サイドゴムとのタイヤ表面における境界点を通る境界線がトレッド踏面と10°以上45°以下の角度をなし、トレッド端を通りタイヤ赤道面に平行な線分と交差する配置とし、
前記サイプを型付けするためのブレードを、前記境界よりトレッド幅方向内側に配置して加硫成形を行うことを特徴とする空気入りタイヤの製造方法。
図2は、本発明の空気入りタイヤの幅方向断面図である。本発明の空気入りタイヤ10は、ビードコア1を埋設した一対のビード部間にトロイダル状に跨るカーカス2を骨格として、このカーカス2のクラウン部のタイヤ径方向外側に、タイヤ赤道面CLに対して斜めに配置した複数本のコードをゴム被覆し、積層間でコード相互が交差する傾斜ベルト層3a、3bからなるベルト3を配置してなる。なお、これらのビード部、カーカス、ベルトの構造は一例であり、本発明はこれに限定されることはない。
また、図示例のトレッド部には、タイヤ周方向に延びる周方向溝4a、4bが設けられ、これらの周方向溝4a、4bによってリブ状の陸部5a、5b、5cが形成されている。これらの溝の形状および本数も一例であり、周方向溝を設けない場合、あるいは、ラグ溝をさらに設けて陸部をブロック状に形成することもできる。
トレッドゴム6とサイドゴム8とは異種ゴムである。トレッドゴム6は、路面と接触し制駆動を伝達するためにグリップが良いゴムであり、サイドゴム8は、変形性が良く、経年や環境による劣化に強いゴムである。
トレッドゴム6は、駆動力、制動力、旋回力等のタイヤにかかる種々の力を路面に伝達し、内部の骨格部材(ベルト等)を外力から保護するようにその物性を決定する必要がある。それゆえ、グリップ性、耐摩耗性などの性能が求められ、特に、冬用タイヤの場合は低温環境下でも路面との密着性を高めるために柔軟な弾性を保持する材料を選択する必要がある。
なお、トレッドゴム6は、タイヤ径方向内側のベースゴムとタイヤ径方向外側のキャップゴムとの2層から構成することもできる。この場合、キャップゴムが、上記したトレッドゴム6の物性を有する。
一方、サイドゴム8は、内部の骨格部材を外力から保護するため、繰り返しの屈曲変形を受けてもその耐久性を保持し、外傷の拡大を極力抑えるように、その物性を決定する必要がある。
図3(a)に示すように、トレッド端TEを含む陸部5aに、トレッド周方向を横切る向きに延びるサイプ7が形成されている。サイプ7は、陸部5aの剛性を調整するために、トレッド端TEからサイプ7のトレッド幅方向外側端までの距離dが1.0mm〜2.0mm程度となる位置に形成されている。
ここで、トレッドゴム6とサイドゴム8とのタイヤ表面における境界(図示例ではこの境界はトレッド端TEに一致している)が、サイプ7よりトレッド幅方向外側にあることが肝要である。
また、図3(b)に示すように、トレッドゴム6とサイドゴム8とのタイヤ表面における境界Pが、トレッド端TEよりトレッド幅方向内側にあることも併せて肝要である。
なお、図示例のサイプ7は、トレッド幅方向(すなわち、トレッド周方向に直交する向き)に延び、サイプ7のサイプ壁は平面的であるが、本発明はこれに限定されることはない。サイプ7はトレッド幅方向に対して傾斜したり、トレッド幅方向およびサイプ7の深さ方向に向かってジグザグ状の、いわゆる3Dサイプとすることもできる。
この現象に関し、本発明者がさらに鋭意研究したところ、このゴム欠けは、サイドゴム8がトレッドゴム6に比べてブレードへの密着性が高いことに起因していることを知見した。そこで、本発明では、トレッドゴム6とサイドゴム8とのタイヤ表面における境界を、サイプ7よりトレッド幅方向外側に設定した。
境界線B1とトレッド踏面とのなす角度θは10°以上120°以下であることが好ましい。
なぜなら、120°超の場合、トレッド端TE付近におけるサイドゴム8の量が少ないので、トレッド端TEの剛性を十分に確保できないおそれがあるためである。
一方、10°未満の場合、トレッド端TE付近におけるトレッドゴム6の量が少ないので、十分なグリップ性能を確保できないおそれがあるためである。
なお、トレッドゴム6とサイドゴム8とのタイヤ表面を通らない境界線B2は特に規定していない。
また、図5(b)に示すように、トレッドゴム6とサイドゴム8とのタイヤ表面における境界Pがトレッド端TEとサイプ7の間にあり、かつ、トレッド部の内部において、サイドゴム8がサイプ7の領域に重なってもよいものとする。
さらにまた、図5(c)に示すように、トレッドゴム6とサイドゴム8との境界Pがトレッド端TEよりトレッド幅方向外側のショルダー部にあり、Pを通る境界線B1が、線分Lと交差してもよいものとする。ただし、このようにショルダー部に境界Pがあると、トレッドゴム6を発泡ゴムで構成した場合、発泡ゴムがユーザに視認され、外観不良とみなされるおそれはある。
それゆえ、タイヤ性能、生産性および外観の観点から、図5(a)の場合が最も好ましい。
発明例タイヤおよび従来例タイヤを試作し、生産性、アイス制動性能、偏摩耗率を評価したので以下に説明する。
各供試タイヤ(タイヤサイズ:195R/65R15、リム:6JJ)は、トレッドゴム6とサイドゴム8の配置以外の構成は同一である。タイヤ周方向に延びる4本の周方向溝とタイヤ幅方向に延びるラグ溝とによって、ブロック状の陸部を形成している。トレッド端TEを含むブロックには、周方向に5mm間隔でいわゆる3Dサイプが形成されている。
参考例タイヤ1は、図3(a)に示すように、トレッドゴム6とサイドゴム8とのタイヤ表面における境界点がトレッド端TEと一致して、トレッドゴム6とサイドゴム8との境界線はタイヤ幅方向外側に向かって延在している。
参考例タイヤ2は、図5(a)に示すように、トレッドゴム6とサイドゴム8とのタイヤ表面における境界点がトレッド端TEと一致して、トレッドゴム6とサイドゴム8とのタイヤ表面を通る境界線B1が、トレッド端TEを通りタイヤ赤道面CLに平行な線分Lよりタイヤ幅方向内側に延在している。また、境界線B1とトレッド踏面とのなす角θは45°である。
従来例タイヤは、図4(a)に示すように、トレッドゴム6とサイドゴム8とのタイヤ表面における境界点Pがサイプ7の形成されている領域に存在している。
供試タイヤを100個ずつ作製し、加硫成型後の各供試タイヤのブロックサイプ部にゴム欠けがあるか否かを目視にて確認した。ゴム欠けが、2ヶ所未満であれば良品、2箇所以上であれば不良品とした。
各供試タイヤを表1に示す条件にてアイス路面を走行させ、速度40km/hで制動力をかけてABSを作動させた際の制動距離を測定した。結果は、従来例タイヤの制動距離を100として指数表示した。なお、指数が大きいほど、アイス制動性能に優れていることを示す。
各供試タイヤを表2に示す条件にて一般路を5000km走行させた後、トレッド中央部とトレッド端部の摩耗量の比を偏摩耗率として測定した。なお、指数が大きいほど、性能に優れていることを示す。
2 カーカス
3 ベルト
4 周方向溝
5 陸部
6 トレッドゴム
7 サイプ
8 サイドゴム
10 空気入りタイヤ
Claims (8)
- トレッドゴムと、該トレッドゴムのトレッド幅方向両側に隣接したサイドゴムとを有し、トレッド端を含む陸部に、トレッド周方向を横切る向きに延びる複数のサイプが形成されている空気入りタイヤにおいて、
前記トレッドゴムと前記サイドゴムとのタイヤ表面における境界が、前記トレッド端よりトレッド幅方向内側、且つ前記複数のサイプよりトレッド幅方向外側にあり、トレッド端から前記サイプのトレッド幅方向外側端までの距離が、1.0mm〜2.0mmであることを特徴とする空気入りタイヤ。 - タイヤ幅方向断面で見たとき、前記トレッドゴムと前記サイドゴムとのタイヤ表面を通る境界線が、トレッド端を通りタイヤ赤道面に平行な線分よりタイヤ幅方向内側にあることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
- タイヤ幅方向断面でみたとき、前記トレッドゴムと前記サイドゴムとのタイヤ表面を通る境界線と、トレッド踏面とのなす角度θは、10°以上120°以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
- トレッドゴムと、該トレッドゴムのトレッド幅方向両側に隣接したサイドゴムとを有し、トレッド端を含む陸部に、トレッド周方向を横切る向きに延びる複数のサイプが形成されている空気入りタイヤにおいて、
前記トレッドゴムと前記サイドゴムとのタイヤ表面における境界が、前記複数のサイプよりトレッド幅方向外側かつ該タイヤのショルダー部にあり、タイヤ幅方向断面でみたとき、該トレッドゴムと該サイドゴムとのタイヤ表面における境界点を通る境界線がトレッド踏面と10°以上45°以下の角度をなし、トレッド端を通りタイヤ赤道面に平行な線分と交差することを特徴とする空気入りタイヤ。 - 前記トレッド端から前記サイプのトレッド幅方向外側端までの距離が、1.0mm〜2.0mmであることを特徴とする請求項4に記載の空気入りタイヤ。
- 前記トレッドゴムは発泡ゴムであり、
前記サイドゴムは非発泡ゴムである、
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。 - トレッドゴムと、該トレッドゴムのトレッド幅方向両側に隣接したサイドゴムとを有し、トレッド端を含む陸部にトレッド周方向を横切る向きに延びる複数のサイプが形成されている空気入りタイヤの製造方法において、
前記トレッドゴムと前記サイドゴムとのタイヤ表面における境界が、前記トレッド端よりトレッド幅方向内側となる配置とし、
前記サイプを型付けするためのブレードを、前記境界よりトレッド幅方向内側、且つトレッド端からトレッド幅方向内側に1.0mm〜2.0mm離間した位置に配置して加硫成形を行うことを特徴とする空気入りタイヤの製造方法。 - トレッドゴムと、該トレッドゴムのトレッド幅方向両側に隣接したサイドゴムとを有し、トレッド端を含む陸部にトレッド周方向を横切る向きに延びる複数のサイプが形成されている空気入りタイヤの製造方法において、
前記トレッドゴムと前記サイドゴムとのタイヤ表面における境界が、該タイヤのショルダー部にあり、タイヤ幅方向断面でみたとき、該トレッドゴムと該サイドゴムとのタイヤ表面における境界点を通る境界線がトレッド踏面と10°以上45°以下の角度をなし、トレッド端を通りタイヤ赤道面に平行な線分と交差する配置とし、
前記サイプを型付けするためのブレードを、前記境界よりトレッド幅方向内側に配置して加硫成形を行うことを特徴とする空気入りタイヤの製造方法。
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