以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
(非接触給電システムの構成)
図1は、この発明の実施の形態に従う車両給電システム(非接触給電システム)10の全体構成図である。図1を参照して、車両給電システム10は、車両100と、送電装置200とを備える。車両100は、受電部110と、通信部160とを含む。また、送電装置200は、電源装置210と、送電部220と、通信部230とを含む。
受電部110は、たとえば車体底面に設置され、送電装置200の送電部220から出力される高周波の交流電力を、電磁界を介して非接触で受電する。なお、受電部110の
詳細な構成については、送電部220の構成、ならびに送電部220から受電部110への電力伝送とともに、後ほど説明する。通信部160は、車両100が送電装置200と通信を行なうための通信インターフェースである。
送電装置200における電源装置210は、所定の周波数を有する交流電力を発生する。一例として、電源装置210は、図示されない系統電源から電力を受けて高周波の交流電力を発生し、その発生した交流電力を送電部220へ供給する。
送電部220は、たとえば駐車場の床面に設置され、電源装置210から高周波の交流電力の供給を受ける。そして、送電部220は、送電部220の周囲に発生する電磁界を介して車両100の受電部110へ非接触で電力を出力する。なお、送電部220の詳細な構成についても、受電部110の構成、ならびに送電部220から受電部110への電力伝送とともに、後ほど説明する。通信部230は、送電装置200が車両100と通信を行なうための通信インターフェースである。
車両給電システム10においては、送電装置200の送電部220から車両100の受電部110へ非接触で電力が伝送される。
図2は、図1に示した車両給電システム10の詳細構成図である。図2を参照して、送電装置200は、上述のように、電源装置210と、送電部220と、車両検出部270とを含む。電源装置210は、通信部230に加えて、制御装置である送電ECU240と、電源部250と、整合器260と、ユーザインターフェース(I/F)部280とをさらに含む。また、送電部220は、共振コイル221と、キャパシタ222と、電磁誘導コイル223とを含む。
電源部250は、送電ECU240からの制御信号MODによって制御され、商用電源400などの交流電源から受ける電力を高周波の電力に変換する。そして、電源部250は、その変換した高周波電力を、整合器260を介して電磁誘導コイル223へ供給する。
また、電源部250は、図示されない電圧センサ,電流センサによってそれぞれ検出される送電電圧Vtrおよび送電電流Itrを送電ECU240へ出力する。
整合器260は、送電装置200と車両100との間のインピーダンスをマッチングさせるための回路である。整合器260は、電源部250と送電部220との間に設けられ、回路のインピーダンスを変更することができる。整合器260は、任意の構成を採用することができるが、一例として、可変キャパシタとコイルとによって構成され(図示せず)、可変キャパシタの容量を変化させることによってインピーダンスを変更することができる。この整合器260においてインピーダンスを変更することによって、送電装置200のインピーダンスを車両100のインピーダンスと整合させることができる(インピーダンスマッチング)。なお、図2においては、整合器260は、電源部250と分離して設けられる構成として記述されているが、電源部250が整合器260の機能を含むようにしてもよい。
車両検出部270は、車両100が送電装置200の送電可能範囲内に存在していることを検出する。車両検出部270は、たとえば、レーザ、赤外線、超音波などの非接触型のセンサや、リミットスイッチなどの接触型センサ、あるいは車重を検知する荷重センサなどの任意のセンサを用いることができる。
I/F部280は、ユーザ操作の入力およびユーザへの情報の出力を行なう。I/F部280は、たとえば、ユーザ操作によって送電対象の車両の選択や外部充電の開始を指示する指令を受ける。また、I/F部280は、送電状態や課金情報をユーザに提供する。
共振コイル221は、車両100の受電部110に含まれる共振コイル111へ非接触で電力を転送する。なお、受電部110と送電部220との間の電力伝送については、図3を用いて後述する。
通信部230は、上述のように、送電装置200と車両100との間で無線通信を行なうための通信インターフェースであり、車両100側の通信部160と情報INFOの授受を行なう。通信部230は、通信部160から送信される車両情報、ならびに、送電の開始および停止を指示する信号等を受信し、受信したこれらの情報を送電ECU240へ出力する。また、通信部230は、送電ECU240からの送電電圧Vtrおよび送電電流Itrを含む情報を車両100へ送信する。
送電ECU240は、いずれも図1には図示しないがCPU(Central Processing Unit)、記憶装置および入出力バッファを含み、各センサ等からの信号の入力や各機器への制御信号の出力を行なうとともに、電源装置210における各機器の制御を行なう。なお、これらの制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で処理することも可能である。
車両100は、受電部110および通信部160に加えて、ユーザインターフェース(I/F)部165と、充電リレーCHR170と、整流器180と、蓄電装置190と、システムメインリレーSMR115と、駆動装置155と、制御装置である車両ECU(Electronic Control Unit)300と、電圧センサ195と、電流センサ196とを含む。
駆動装置155は、パワーコントロールユニットPCU(Power Control Unit)120と、モータジェネレータ130と、動力伝達ギヤ140と、駆動輪150とを含む。受電部110は、共振コイル111と、キャパシタ112と、電磁誘導コイル113とを含む。
なお、本実施の形態においては、車両100として電気自動車を例として説明するが、蓄電装置に蓄えられた電力を用いて走行が可能な車両であれば車両100の構成はこれに限られない。車両100の他の例としては、エンジンを搭載したハイブリッド車両や、燃料電池を搭載した燃料電池車などが含まれる。
共振コイル111は、送電装置200に含まれる共振コイル221から非接触で電力を受電する。
整流器180は、電磁誘導コイル113からCHR170を介して受けた交流電力を整流し、その整流された直流電力を蓄電装置190に出力する。整流器180としては、たとえば、後に図8〜図12で説明するようにダイオードブリッジおよび平滑用のキャパシタを含む構成とすることができる。
整流器180として、スイッチング制御を用いて整流を行なう、いわゆるスイッチングレギュレータを用いることも可能である。整流器180が受電部110に含まれる場合には、発生する電磁場に伴うスイッチング素子の誤動作等を防止するために、ダイオードブリッジのような静止型の整流器とすることがより好ましい。
CHR170は、受電部110と整流器180との間に電気的に接続される。CHR170は、車両ECU300からの制御信号SE2により制御され、受電部110から整流器180への電力の供給と遮断とを切換える。
蓄電装置190は、充放電可能に構成された電力貯蔵要素である。蓄電装置190は、たとえば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池あるいは鉛蓄電池などの二次電池や、電気二重層キャパシタなどの蓄電素子を含んで構成される。
蓄電装置190は、整流器180に接続される。そして、蓄電装置190は、受電部110で受電されかつ整流器180で整流された電力を蓄電する。また、蓄電装置190は、SMR115を介してPCU120とも接続される。蓄電装置190は、車両駆動力を発生させるための電力をPCU120へ供給する。さらに、蓄電装置190は、モータジェネレータ130で発電された電力を蓄電する。蓄電装置190の出力は、たとえば200V程度である。
なお、図2には示されていないが、受電電圧と蓄電装置190の充電電圧とが異なる場合には、整流器180と蓄電装置190との間に、DC−DCコンバータのような電力変換装置を設けるようにしてもよい。また、送電装置200と同様に、インピーダンスマッチングを行なう整合器が設けられてもよい。
蓄電装置190には、いずれも図示しないが、蓄電装置190の電圧VBおよび入出力される電流IBを検出するための電圧センサおよび電流センサが設けられる。これらの検出値は、車両ECU300へ出力される。車両ECU300は、この電圧VBおよび電流IBに基づいて、蓄電装置190の充電状態(「SOC(State Of Charge)」とも称する。)を演算する。
SMR115は、蓄電装置190とPCU120との間に電気的に接続される。そして、SMR115は、車両ECU300からの制御信号SE1によって制御され、蓄電装置190とPCU120との間での電力の供給と遮断とを切換える。
PCU120は、いずれも図示しないが、コンバータやインバータを含む。コンバータは、車両ECU300からの制御信号PWCにより制御されて蓄電装置190からの電圧を変換する。インバータは、車両ECU300からの制御信号PWIにより制御されて、コンバータで変換された電力を用いてモータジェネレータ130を駆動する。
モータジェネレータ130は交流回転電機であり、たとえば、永久磁石が埋設されたロータを備える永久磁石型同期電動機である。
モータジェネレータ130の出力トルクは、動力伝達ギヤ140を介して駆動輪150に伝達される。車両100は、このトルクを用いて走行する。モータジェネレータ130は、車両100の回生制動動作時には、駆動輪150の回転力によって発電することができる。そして、その発電電力は、PCU120によって蓄電装置190の充電電力に変換される。
また、モータジェネレータ130の他にエンジン(図示せず)が搭載されたハイブリッド自動車では、エンジンおよびモータジェネレータ130を協調的に動作させることによって、必要な車両駆動力が発生される。この場合、エンジンの回転による発電電力を用いて、蓄電装置190を充電することも可能である。
通信部160は、上述のように、車両100と送電装置200との間で無線通信を行なうための通信インターフェースであり、送電装置200の通信部230と情報INFOの授受を行なう。通信部160から送電装置200へ出力される情報INFOには、車両ECU300からの車両情報や、送電の開始および停止を指示する信号が含まれる。
車両ECU300は、いずれも図1には図示しないがCPU、記憶装置および入出力バッファを含み、各センサ等からの信号の入力や各機器への制御信号の出力を行なうとともに、車両100における各機器の制御を行なう。なお、これらの制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で処理することも可能である。
電圧センサ195は、電磁誘導コイル113に並列に接続され、受電部110で受電された受電電圧Vreを検出する。電流センサ196は、電磁誘導コイル113とCHR170とを結ぶ電力線に設けられ、受電電流Ireを検出する。検出された受電電圧Vreおよび受電電流Ireは車両ECU300に送信され、伝送効率の演算に用いられる。
I/F部165は、ユーザ操作の入力およびユーザへの情報の出力を行なう。I/F部165は、たとえば、ユーザ操作による外部充電の開始を指示する指令を受ける。また、I/F部165は、受電部110と送電部220との位置情報や、蓄電装置190の充電状態などの情報をユーザに提供する。
なお、図2においては、受電部110および送電部220に、電磁誘導コイル113,223がそれぞれ設けられる構成を示したが、受電部110および送電部220に電磁誘導コイル113,223が設けられない構成とすることも可能である。この場合には、図2には示されないが、送電部220においては共振コイル221が整合器260に接続され、受電部110においては共振コイル111がCHR170を介して整流器180に接続される。
(電力伝送の原理)
図3は、送電装置200から車両100への電力伝送時の等価回路図である。図3を参照して、送電装置200の送電部220は、共振コイル221と、キャパシタ222と、電磁誘導コイル223とを含む。
電磁誘導コイル223は、共振コイル221と所定の間隔をおいて、たとえば共振コイル221と略同軸上に設けられる。電磁誘導コイル223は、電磁誘導により共振コイル221と磁気的に結合し、電源装置210から供給される高周波電力を電磁誘導により共振コイル221へ供給する。
共振コイル221は、キャパシタ222とともにLC共振回路を形成する。なお、後述するように、車両100の受電部110においてもLC共振回路が形成される。共振コイル221およびキャパシタ222によって形成されるLC共振回路の固有周波数と、受電部110のLC共振回路の固有周波数との差は、前者の固有周波数または後者の固有周波数の±10%以下である。そして、共振コイル221は、電磁誘導コイル223から電磁誘導により電力を受け、車両100の受電部110へ非接触で送電する。
なお、電磁誘導コイル223は、電源装置210から共振コイル221への給電を容易にするために設けられるものであり、電磁誘導コイル223を設けずに共振コイル221に電源装置210を直接接続してもよい。また、キャパシタ222は、共振回路の固有周波数を調整するために設けられるものであり、共振コイル221の浮遊容量を利用して所望の固有周波数が得られる場合には、キャパシタ222を設けない構成としてもよい。
車両100の受電部110は、共振コイル111と、キャパシタ112と、電磁誘導コイル113とを含む。共振コイル111は、キャパシタ112とともにLC共振回路を形成する。上述のように、共振コイル111およびキャパシタ112によって形成されるL
C共振回路の固有周波数と、送電装置200の送電部220における、共振コイル221およびキャパシタ222によって形成されるLC共振回路の固有周波数との差は、前者の固有周波数または後者の固有周波数の±10%である。そして、共振コイル111は、送電装置200の送電部220から非接触で受電する。
電磁誘導コイル113は、共振コイル111と所定の間隔をおいて、たとえば共振コイル111と略同軸上に設けられる。電磁誘導コイル113は、電磁誘導により共振コイル111と磁気的に結合し、共振コイル111によって受電された電力を電磁誘導により取出して電気負荷装置118へ出力する。なお、電気負荷装置118は、整流器180(図2)以降の電気機器を包括的に表わしたものである。
なお、電磁誘導コイル113は、共振コイル111からの電力の取出しを容易にするために設けられるものであり、電磁誘導コイル113を設けずに共振コイル111に整流器180を直接接続してもよい。また、キャパシタ112は、共振回路の固有周波数を調整するために設けられるものであり、共振コイル111の浮遊容量を利用して所望の固有周波数が得られる場合には、キャパシタ112を設けない構成としてもよい。
送電装置200において、電源装置210から電磁誘導コイル223へ高周波の交流電力が供給され、電磁誘導コイル223を用いて共振コイル221へ電力が供給される。そうすると、共振コイル221と車両100の共振コイル111との間に形成される磁界を通じて共振コイル221から共振コイル111へエネルギ(電力)が移動する。共振コイル111へ移動したエネルギ(電力)は、電磁誘導コイル113を用いて取出され、車両100の電気負荷装置118へ伝送される。
上述のように、この電力伝送システムにおいては、送電装置200の送電部220の固有周波数と、車両100の受電部110の固有周波数との差は、送電部220の固有周波数または受電部110の固有周波数の±10%以下である。このような範囲に送電部220および受電部110の固有周波数を設定することで電力伝送効率を高めることができる。一方、上記の固有周波数の差が±10%よりも大きくなると、電力伝送効率が10%よりも小さくなり、電力伝送時間が長くなるなどの弊害が生じる可能性がある。
なお、送電部220(受電部110)の固有周波数とは、送電部220(受電部110)を構成する電気回路(共振回路)が自由振動する場合の振動周波数を意味する。なお、送電部220(受電部110)を構成する電気回路(共振回路)において、制動力または電気抵抗を実質的に零としたときの固有周波数は、送電部220(受電部110)の共振周波数とも呼ばれる。
図4および図5を用いて、固有周波数の差と電力伝送効率との関係とを解析したシミュレーション結果について説明する。図4は、電力伝送システムのシミュレーションモデルを示す図である。また、図5は、送電部および受電部の固有周波数のズレと電力伝送効率との関係を示す図である。
図4を参照して、電力伝送システム89は、送電部90と、受電部91とを備える。送電部90は、第1コイル92と、第2コイル93とを含む。第2コイル93は、共振コイル94と、共振コイル94に設けられたキャパシタ95とを含む。受電部91は、第3コイル96と、第4コイル97とを備える。第3コイル96は、共振コイル99とこの共振コイル99に接続されたキャパシタ98とを含む。
共振コイル94のインダクタンスをインダクタンスLtとし、キャパシタ95のキャパシタンスをキャパシタンスC1とする。また、共振コイル99のインダクタンスをインダクタンスLrとし、キャパシタ98のキャパシタンスをキャパシタンスC2とする。このように各パラメータを設定すると、第2コイル93の固有周波数f1は、下記の式(1)によって示され、第3コイル96の固有周波数f2は下記の式(2)によって示される。
f1=1/{2π(Lt×C1)1/2} … (1)
f2=1/{2π(Lr×C2)1/2} … (2)
ここで、インダクタンスLrおよびキャパシタンスC1,C2を固定して、インダクタンスLtのみを変化させた場合において、第2コイル93および第3コイル96の固有周波数のズレと電力伝送効率との関係を図5に示す。なお、このシミュレーションにおいては、共振コイル94および共振コイル99の相対的な位置関係は固定とし、さらに、第2コイル93に供給される電流の周波数は一定である。
図5に示すグラフのうち、横軸は固有周波数のズレ(%)を示し、縦軸は一定周波数の電流における電力伝送効率(%)を示す。固有周波数のズレ(%)は、下記の式(3)によって示される。
(固有周波数のズレ)={(f1−f2)/f2}×100(%) … (3)
図5から明らかなように、固有周波数のズレ(%)が0%の場合には、電力伝送効率は100%近くとなる。固有周波数のズレ(%)が±5%の場合には、電力伝送効率は40%程度となる。固有周波数のズレ(%)が±10%の場合には、電力伝送効率は10%程度となる。固有周波数のズレ(%)が±15%の場合には、電力伝送効率は5%程度となる。すなわち、固有周波数のズレ(%)の絶対値(固有周波数の差)が、第3コイル96の固有周波数の10%以下の範囲となるように第2コイル93および第3コイル96の固有周波数を設定することで、電力伝送効率を実用的なレベルに高めることができることがわかる。さらに、固有周波数のズレ(%)の絶対値が第3コイル96の固有周波数の5%以下となるように第2コイル93および第3コイル96の固有周波数を設定すると、電力伝送効率をさらに高めることができるのでより好ましい。なお、シミュレーションソフトしては、電磁界解析ソフトウェア(JMAG(登録商標):株式会社JSOL製)を採用している。
再び図2を参照して、送電装置200の送電部220および車両100の受電部110は、送電部220と受電部110との間に形成され、かつ、特定の周波数で振動する磁界と、送電部220と受電部110との間に形成され、かつ、特定の周波数で振動する電界との少なくとも一方を通じて、非接触で電力を授受する。送電部220と受電部110とを電磁界によって共振(共鳴)させることで、送電部220から受電部110へ電力が伝送される。
そして、送電部220と受電部110との間の結合係数(κ)は、たとえば、0.3以下程度であり、好ましくは、0.1以下である。当然のことながら、結合係数(κ)を0.1〜0.3程度の範囲も採用することができる。結合係数(κ)は、このような値に限定されるものでなく、電力伝送が良好となる種々の値をとり得る。
ここで、送電部220の周囲に形成される特定の周波数の磁界について説明する。「特定の周波数の磁界」は、典型的には、電力伝送効率と送電部220に供給される電流の周波数と関連性を有する。そこで、まず、電力伝送効率と、送電部220に供給される電流の周波数との関係について説明する。送電部220から受電部110に電力を伝送するときの電力伝送効率は、送電部220および受電部110間の距離などの様々な要因よって変化する。たとえば、送電部220および受電部110の固有周波数(共振周波数)をf0とし、送電部220に供給される電流の周波数をf3とし、送電部220および受電部110の間のエアギャップをエアギャップAGとする。
図6は、固有周波数f0を固定した状態で、エアギャップAGを変化させたときの電力伝送効率と、送電部220に供給される電流の周波数f3との関係を示すグラフである。図6を参照して、横軸は、送電部220に供給される電流の周波数f3を示し、縦軸は、電力伝送効率(%)を示す。効率曲線L1は、エアギャップAGが小さいときの電力伝送効率と、送電部220に供給される電流の周波数f3との関係を模式的に示す。この効率曲線L1に示すように、エアギャップAGが小さい場合には、電力伝送効率のピークは周波数f4,f5(f4<f5)において生じる。エアギャップAGを大きくすると、電力伝送効率が高くなるときの2つのピークは、互いに近づくように変化する。そして、効率曲線L2に示すように、エアギャップAGを所定距離よりも大きくすると、電力伝送効率のピークは1つとなり、送電部220に供給される電流の周波数が周波数f6のときに電力伝送効率がピークとなる。エアギャップAGを効率曲線L2の状態よりもさらに大きくすると、効率曲線L3に示すように電力伝送効率のピークが小さくなる。
たとえば、電力伝送効率の向上を図るため手法として次のような手法が考えられる。第1の手法としては、エアギャップAGにあわせて、送電部220に供給される電流の周波数を一定として、キャパシタ222やキャパシタ112のキャパシタンスを変化させることで、送電部220と受電部110との間での電力伝送効率の特性を変化させる手法が考えられる。具体的には、送電部220に供給される電流の周波数を一定とした状態で、電力伝送効率がピークとなるように、キャパシタ222およびキャパシタ112のキャパシタンスを調整する。この手法では、エアギャップAGの大きさに関係なく、送電部220および受電部110に流れる電流の周波数は一定である。なお、電力伝送効率の特性を変化させる手法としては、送電装置200の整合器260を利用する手法や、車両100において整流器180と蓄電装置190との間に設けられるコンバータ(図示せず)を利用する手法などを採用することも可能である。
また、第2の手法としては、エアギャップAGの大きさに基づいて、送電部220に供給される電流の周波数を調整する手法である。たとえば、電力伝送特性が効率曲線L1となる場合には、周波数f4またはf5の電流を送電部220に供給する。周波数特性が効率曲線L2,L3となる場合には、周波数f6の電流を送電部220に供給する。この場合においては、エアギャップAGの大きさに合わせて送電部220および受電部110に流れる電流の周波数を変化させることになる。
第1の手法では、送電部220を流れる電流の周波数は、固定された一定の周波数となり、第2の手法では、送電部220を流れる周波数は、エアギャップAGによって適宜変化する周波数となる。第1の手法や第2の手法などによって、電力伝送効率が高くなるように設定された特定の周波数の電流が送電部220に供給される。送電部220に特定の周波数の電流が流れることで、送電部220の周囲には、特定の周波数で振動する磁界(電磁界)が形成される。受電部110は、受電部110と送電部220との間に形成され、かつ特定の周波数で振動する磁界を通じて送電部220から電力を受電している。したがって、「特定の周波数で振動する磁界」とは、必ずしも固定された周波数の磁界とは限らない。なお、上記の例では、エアギャップAGに着目して、送電部220に供給される電流の周波数を設定するようにしているが、電力伝送効率は、送電部220および受電部110の水平方向のずれ等のように他の要因によっても変化するものであり、当該他の要因に基づいて、送電部220に供給される電流の周波数を調整する場合がある。
なお、上記の説明では、共振コイルとしてヘリカルコイルを採用した例について説明したが、共振コイルとして、メアンダラインなどのアンテナなどを採用した場合には、送電部220に特定の周波数の電流が流れることで、特定の周波数の電界が送電部220の周囲に形成される。そして、この電界を通して、送電部220と受電部110との間で電力伝送が行なわれる。
この電力伝送システムにおいては、電磁界の「静電磁界」が支配的な近接場(エバネッセント場)を利用することで、送電および受電効率の向上が図られている。
図7は、電流源(磁流源)からの距離と電磁界の強度との関係を示した図である。図7を参照して、電磁界は3つの成分から成る。曲線k1は、波源からの距離に反比例した成分であり、「輻射電磁界」と称される。曲線k2は、波源からの距離の2乗に反比例した成分であり、「誘導電磁界」と称される。また、曲線k3は、波源からの距離の3乗に反比例した成分であり、「静電磁界」と称される。なお、電磁界の波長を「λ」とすると、「輻射電磁界」と「誘導電磁界」と「静電磁界」との強さが略等しくなる距離は、λ/2πと表わすことができる。
「静電磁界」は、波源からの距離とともに急激に電磁波の強度が減少する領域であり、この実施の形態に係る電力伝送システムでは、この「静電磁界」が支配的な近接場(エバネッセント場)を利用してエネルギ(電力)の伝送が行なわれる。すなわち、「静電磁界」が支配的な近接場において、近接する固有周波数を有する送電部220および受電部110(たとえば一対のLC共振コイル)を共鳴させることにより、送電部220から他方の受電部110へエネルギ(電力)を伝送する。この「静電磁界」は遠方にエネルギを伝播しないので、遠方までエネルギを伝播する「輻射電磁界」によってエネルギ(電力)を伝送する電磁波に比べて、共鳴法は、より少ないエネルギ損失で送電することができる。
このように、この電力伝送システムにおいては、送電部220と受電部110とを電磁界によって共振(共鳴)させることで、送電部220と受電部110との間で非接触で電力が伝送される。そして、送電部220と受電部110との間の結合係数(κ)は、たとえば、0.3以下程度であり、好ましくは、0.1以下である。当然のことながら、結合係数(κ)を0.1〜0.3程度の範囲も採用することができる。結合係数(κ)は、このような値に限定されるものでなく、電力伝送が良好となる種々の値をとり得る。
なお、電力伝送における、上記のような送電部220と受電部110との結合を、たとえば、「磁気共鳴結合」、「磁界(磁場)共鳴結合」、「電磁界(電磁場)共振結合」、「電界(電場)共振結合」等という。「電磁界(電磁場)共振結合」は、「磁気共鳴結合」、「磁界(磁場)共鳴結合」、「電界(電場)共振結合」のいずれも含む結合を意味する。
送電部220と受電部110とが上記のようにコイルによって形成される場合には、送電部220と受電部110とは、主に磁界(磁場)によって結合し、「磁気共鳴結合」または「磁界(磁場)共鳴結合」が形成される。なお、送電部220と受電部110とに、たとえば、メアンダライン等のアンテナを採用することも可能であり、この場合には、送電部220と受電部110とは、主に電界(電場)によって結合し、「電界(電場)共鳴結合」が形成される。
図8は、図2の整流器180の構成の検討例を示した図である。図8を参照して検討例である整流器180Xは、交流電力を受ける端子T1,T2と、端子T1およびT2に与えられた交流電力を整流する整流ブリッジ回路302と、整流ブリッジ回路302が整流後の直流電力を出力する端子に接続されるインピーダンスバランス(IB)回路304と、負荷に対して直流電力を出力する出力端子T3,T4と、出力端子T3,T4とIB回路304との間に接続される平滑コンデンサ回路305およびフィルタ306とを含む。なお、各回路の内部構成については、図9で説明する。
非接触受電用のAC/DCコンバータ(整流器180X)は、高周波の交流電力を安定な直流電力に変換し、負荷(図2では蓄電装置190)に直流電力を供給する。
しかし、図8の構成では、整流ブリッジ回路302のダイオード312,314,316,318に高いリップル電圧が印加される場合がある。IB回路304に含まれるY型コンデンサ320,322のためにY型コンデンサが小容量(たとえば1nF〜5nF)の場合にはv(t)=1/C・∫i(t)・dtの関係で電圧が高くなる。この場合は耐圧の高いダイオードで整流ブリッジ回路302を構成しなければならなくなる。
図9は、本実施の形態で用いられる整流器180の構成を示した回路図である。図9を参照して、整流器180は、交流電力を受ける入力端子T1,T2と、整流素子を有し、入力端子T1,T2に加えられた交流電力を直流電力に整流する整流ブリッジ回路302と、整流ブリッジ回路302が整流した後の直流電力を出力するノードN1,N2に一方端が接続されるコイル対402,404と、コイル対402,404の他方端に接続されるインピーダンスバランス(IB)回路304と、負荷に対して直流電力を出力する出力端子T3,T4と、出力端子T3,T4とIB回路304との間に接続される平滑コンデンサ回路305およびフィルタ306とを含む。
整流ブリッジ回路302は、入力端子T1とノードN1との間に接続されるダイオード312と、入力端子T1とノードN2との間に接続されるダイオード314と、入力端子T2とノードN1との間に接続されるダイオード316と、入力端子T2とノードN2との間に接続されるダイオード318とを含む。
ダイオード312は、ノードN1から入力端子T1に向かう向きが順方向に設定される。ダイオード314は、入力端子T1からノードN2に向かう向きが順方向に設定される。ダイオード316は、ノードN1から入力端子T2に向かう向きが順方向に設定される。ダイオード318は、入力端子T2からノードN2に向かう向きが順方向に設定される。
IB回路304は、Y型コンデンサ320,322と、コイル324,326とを含む。コンデンサ320は、コイル324の一方端と接地ノードとの間に接続される。コンデンサ322は、コイル326の一方端と接地ノードとの間に接続される。
平滑コンデンサ回路305は、コイル324の他方端とコイル326の他方端との間に並列接続されるコンデンサ308,310を含む。
フィルタ306は、コモンモードチョークコイル332とラインバイパスコンデンサ328,330とを含む。
図9に示した整流器180は、図8に示した検討例の整流器180Xに加えてコイル402,404を含む。コイル402,404をY型コンデンサ320,322と組み合わせて用いることにより、矢印AR1に示す経路に共振を発生させる。するとノードN1、N2間に生じる電圧リップルは、共振の振動によってピークが小さくなる。
図10は、図8の検討例の整流器に生じる電圧リップルを説明するための波形図である。図8、図10を参照して、波形W2は、Y型コンデンサ320,322の各々に発生するリップル電圧である。波形W1は、ノードN1とノードN2の間に発生するリップル電圧である。波形W1の波高値V2は波形W2の波高値V1の2倍である。
図11は、図9の整流器に生じる電圧リップルを説明するための図である。図9、図11を参照して、波形W3は、Y型コンデンサ320,322の各々に発生するリップル電圧である。波形W4は、コイル402,404の各々に発生する電圧である。そして波形W5は、ノードN1とノードN2の間に発生するリップル電圧である。
ノードN1とノードN2の間には、コイル402、コンデンサ320、コンデンサ322、コイル404が直列に接続されている。したがって、波形W5は、波形W3の電圧と波形W4の電圧を加えた値を2倍した電圧を示す。
波形W5のピーク電圧V3は、図10の波形W1のピーク電圧V2よりも大幅に減少している。本願発明者が行なった回路シミュレーションでは、電圧V3は電圧V2のおよそ半分に低減された。
このように、ノードN1とノードN2の間に生じるリップル電圧が大幅に低減するので、ダイオード312,314,316,318として、耐圧が低く損失が少ないものを採用することが可能となる。
図12は、整流器の変形例を示した図である。図12に示した整流器180Aは、図9に示した整流器180に加えて、ノードN1とノードN2に接続されるY型コンデンサ502,504をさらに含む。他の部分の構成については、整流器180Aは整流器180と同様であるので説明は繰返さない。
Y型コンデンサ502,504を接続することによってコイル402,404に流れる電流変化がより激しくなる。コンデンサ502,504の容量を適切に調整すれば、コイルに発生する損失w=∫vi・dtを低減させることができる。
最後に再び図を参照して本実施の形態について総括する。図2、図9を参照して、本実施の形態の非接触受電装置は、非接触で送電装置200からの交流電力を受電する受電部110と、受電部110で受電された交流電力を直流電力に変換する整流器180とを備える。整流器180は、受電部110から受電電力を受ける入力端子T1,T2と、整流素子312,314,316,318を有し、入力端子T1,T2に加えられた交流電力を直流電力に整流する整流ブリッジ回路302と、整流ブリッジ回路302が整流した後の直流電力を出力するノードN1,N2に一方端が接続されるコイル対402,404と、コイル対402,404の他方端に接続されるインピーダンスバランス回路304と、負荷に対して直流電力を出力する出力端子T3,T4と、出力端子T3,T4とインピーダンスバランス回路304との間に接続される平滑コンデンサ回路305およびフィルタ306とを含む。
好ましくは、図12に示すように、インピーダンスバランス回路304は、電力線対に接続される第1のY型コンデンサ回路320,322を含む。非接触受電装置は、コイル対402,404の一方端に接続される第2のY型コンデンサ回路502,504をさらに備える。
好ましくは、図2に示すように、送電装置200は、電力を非接触で供給するための送電部220を含む。送電部220の固有周波数と受電部110の固有周波数との差は、送電部220の固有周波数または受電部110の固有周波数の±10%以下である。
好ましくは、送電装置200は、電力を非接触で供給するための送電部220を含む。送電部220と受電部110との結合係数は0.3以下である。
好ましくは、送電装置200は、電力を非接触で供給するための送電部220を含む。受電部110は、受電部110と送電部220との間に形成される特定の周波数で振動する磁界、および、受電部110と送電部220との間に形成される特定の周波数で振動する電界の少なくとも一方を通じて、送電部220から受電する。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。