JP5884187B2 - 炭素鋼の精錬方法 - Google Patents

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Description

本発明は、炭素鋼の精錬方法に関し、具体的には、鋼中のC濃度を精度良く制御することはできる炭素鋼の精錬方法に関するものである。
高炉製鋼法における鋼の精錬プロセスでは、高炉から出銑した溶銑を溶銑予備処理工程で硫黄Sや燐P、珪素Siなどの不純物をある程度取り除いた後、転炉で溶鋼中に酸素Oを吹き込んで炭素Cを低減する一次精錬(脱炭吹錬)した後、さらに真空脱ガス処理設備等でCや窒素Nを低減した上で、最終製品に要求される鋼成分組成となるよう加炭材や各種合金元素を添加して成分調整を行う二次精錬し、その後、連続鋳造法や造塊−分塊圧延法等でスラブ等の鋼素材を製造するのが一般的である。なお、上記二次精錬工程では、最終製品に要求される鋼成分組成となるよう溶鋼成分を調整することに加えて、後工程の連続鋳造や造塊(鋳造)に適した溶鋼温度を確保することも重要な管理課題の一つとなっている。
上記鋼の精錬プロセスでは、通常、図1に示したように、転炉出鋼後、二次精錬途中、二次精錬終了後および連続鋳造途中のそれぞれの段階において溶鋼から試料を採取し、機側または精錬工場の近くに設けられた分析室へ搬送して成分分析し、その分析結果(連続鋳造時を除く)に基づいて、溶鋼の最終的な成分調整を行っている。しかし、成分調整が完了し、分析結果が判明するまである程度の時間を要するため、その間、溶鋼温度は徐々に低下する。そのため、測定に長時間を要する場合や、分析精度が悪く、鋼の成分調整を繰り返して行わざるを得ない場合には、溶鋼温度は大きく低下してしまう。
そこで、鋼精錬の実操業においては、上記溶鋼温度の低下を予め見込んで転炉で高温出鋼したり、温度が低下した溶鋼を、取鍋内でアーク放電により加熱したり、タンディッシュ内でプラズマトーチにより加熱することが行われている。しかし、出鋼温度を高めることは、耐火物の溶損を助長して耐火物コストを上昇させ、また、溶鋼加熱も多大の熱エネルギーの投入を必要とし、エネルギーコストを上昇させるため、製造コストの上昇を招く。そのため、分析時間の短縮および分析精度の向上が強く望まれている。
鋼中の成分を迅速に分析する方法の1つに、非特許文献1に記載され、また、JIS G1253(2002)に規定された「スパーク放電発光分光分析法」(通称、「QV」または「カントバック」)がある。このスパーク放電発光分光分析法(以降、「発光分光分析法」ともいう。)は、不活性ガス雰囲気中あるいは真空中で、分析対象である試料とこれに対向した電極との間で毎秒数百回のスパーク放電を発生させ、放電で発生した光を各元素固有の輝線スペクトルに分光して光電子増倍管等で検出し、その波長から元素を特定し、発光強度から、予め求めておいた検量線を用いて、各元素の含有量を定量する方法である。この方法は、試料を固体のまま迅速に分析することができるため、鉄鋼精錬プロセスにおいては極めて重要な分析方法となっている。
しかし、この発光分光分析法は、鉄鋼材料中の様々な元素、例えばC,Si,Mn,P,S,Cu,Ni,Cr,Mo,V,Ti,B,Nb,Al,Co,Ca,N等の元素の迅速分析が可能であるが、C,N,S等のいわゆるガス成分といわれている元素については、感度や精度が他元素と比較して劣るため、分析可能な濃度範囲に制約がある。そのため、鋼種によっては、上記ガス成分については、別の分析手法を用いて分析が行われている。
例えば、Cの場合、JIS G1211−3(2011)に規定された燃焼−赤外線吸収法(以降、「赤外線吸収法」ともいう。)が用いられることが多い。たとえば、特許文献1には、溶鋼を取鍋精錬して鋳造する工程において、取鍋精錬時の炭素成分調整をピン試料の燃焼−赤外線吸収法によって分析した値に基いて行った後に、取鍋下の炭素成分値もピン試料の燃焼−赤外線吸収法によって分析することにより鋼中炭素成分を制御する方法が記載されている。この赤外線吸収法は、発光分光分析法に比べて、感度や精度の面で優れているが、分析に要する時間が数分程度長くなる。そのため、鋼の精錬プロセスに赤外線吸収法を適用する場合は、前述した製造コストの上昇に加えて、生産性の低下を招くことは避けられない。
ところで、近年、自動車用鋼板には、自動車車体の安全性の向上と燃費の向上を指向する観点から、高強度化と軽量化の両立が可能な高強度鋼板の適用が進められている。この高強度鋼板は、固溶強化や細粒化強化、析出強化、変態強化などの種々の強化機構を駆使して造り込まれているが、特に変態強化機構の寄与するところが大きい。この変態強化機構は、鉄鋼材料にマルテンサイト変態等の低温変態を起こさせて導入した歪部にCを侵入させることにより高強度化を図るものであるため、鋼中C濃度がきわめて重要となる。
つまり、C濃度の変動が大きいと、それによって鋼板の強度特性のバラツキが大きくなり、場合によっては目標とする強度の許容範囲から逸脱してしまう。したがって、高強度鋼板用の鋼の精錬では、鋼板強度を目標強度の許容範囲内に収めるため、C濃度の制御を他の鋼種よりも厳しくし、狭い範囲に管理する必要がある(以降、このような鋼種を「C厳格管理材」とも称する)。具体的には、目標とするC濃度が0.1mass%である場合、分析値のバラツキの範囲を±0.004mass%の範囲内に収める程度の精度が求められる。ここで、上記要求を満たすための分析精度としては、95%の信頼限界で、分析精度の標準偏差σが0.002mass%以下であることが必要となる。
発光分光分析法では、C濃度0.1mass%の分析は可能ではある。しかし、現在の発光分光分析法は、上記のようなσ≦0.002mass%を満たす分析精度を有していないため、C厳格管理材への適用は困難である。また、Cは、他の元素とは異なり、大気中のCOの表面吸着や作業環境等に由来する油脂や有機物質主体の粉塵等の吸着、その他外部からの汚染などにより、分析値に誤差が生じやすいという問題があり、C濃度分析において、これらの誤差要因を特定し、排除することは難しい。そのため、Cの厳格な管理が必要とされるC厳格管理材については、分析時間が長くても、より高い精度でC濃度を分析することができる赤外線吸収法を採用しており、迅速性が損なわれていた。
特開平05−118985号公報
「鉄鋼の製造のための分析解析技術」;日本鉄鋼協会 分析技術部会編,2002年
上記のように、溶鋼中のC濃度を狭い範囲で厳格に管理する必要のある炭素鋼(C厳格管理材)を精錬する場合には、従来の発光分光分析法では分析精度に問題があり、赤外線吸収法によって分析を行う必要があるため、分析時間が長くなることによる生産性の低下に加えて、その間の溶鋼温度低下の問題を回避するため、高温出鋼したり、溶鋼を加熱したりする必要があり、製造コストの上昇を招いていた。また、C濃度の分析に赤外線吸収法を用いる場合には、他の合金元素を分析する発光分光分析用とは別の試料が必要となるため、分析試料のサンプリングや試料の準備、分析作業等の分析負荷や分析費用が増大するという問題もある。したがって、発光分光分析法で、C濃度を精度よく分析できれば、上記問題点は解消されることになる。
本発明は、従来技術が抱える上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、赤外線吸収法よりも迅速分析が可能なスパーク放電発光分光分析法で、高精度なC濃度分析を可能とし、これを鋼の精錬プロセスに適用することによって、鋼中のC濃度を高い精度で制御することができる炭素鋼の精錬方法を提案することにある。
発明者らは、上記課題の解決に向け、スパーク放電発光分光分析法でC濃度の分析精度が異なる試料に着目して鋭意検討を重ねた。その結果、C濃度の分析精度が高い試料と低い試料とでは、内標準物質として使用しているFeの単位放電(以降、各スパーク放電のことを「単位放電」あるいは「パルス」とも称する。)ごとに得られるパルスデータ(発光強度データ)にバラつきがあり、そのバラつきはAlの異常発光によって引き起こされていること、したがって、C濃度の分析精度を高めるためには、上記Alの異常発光の影響を受けたデータを除外してやる必要があることを見出し、本発明を開発するに至った。
すなわち、本発明は、転炉出鋼から二次精錬終了までのいずれか1以上の段階で溶鋼から試料を採取して成分分析し、その分析結果に基いて溶鋼の成分調整および/または二次精錬の終了判定を行う炭素の含有量が0.05〜0.3mass%の炭素鋼の精錬方法において、上記成分分析におけるC濃度の分析に、Feを内標準元素とし、多数回のスパーク放電で単位放電ごとに得られるFeに対するAlの発光強度比(IpAl/IpFe)データに基づいて、単位放電ごとに得られるFeに対するCの発光強度比(Ip/IpFe)データの一部を棄却し、残りの(Ip/IpFe)データを平均してC濃度を求めるスパーク放電発光分光分析法を用いることを特徴とする炭素鋼の精錬方法である。
本発明の炭素鋼の精錬方法に用いる上記スパーク放電発光分光分析法では、多数回のスパーク放電で単位放電ごとに得られるFeに対するAlの発光強度比(IpAl/IpFe)データを昇順に並び替え、所定の百分位値における発光強度比(IpAl/IpFe)を上回るスパーク放電から得られるFeに対するCの発光強度比(Ip/IpFe)データを棄却することを特徴とする。
また、本発明の炭素鋼の精錬方法に用いるスパーク放電発光分光分析法における上記所定の百分位値は、Feに対するAlの発光強度比(IpAl/IpFe)データを昇順に並び替えたときの20〜80百分位値間に設定することを特徴とする。
本発明によれば、Feに対するAlの発光強度比(IpAl/IpFe)データに基いて、Feに対するCの発光強度比(Ip/IpFe)データの一部を棄却してC濃度を求めるスパーク放電発光分光分析法を鋼の精錬プロセスに適用することによって、鋼中のC濃度を迅速かつ高精度で分析することができるので、C濃度を厳しく管理する必要があるC厳格管理材を安定して製造することが可能となる。また、本発明によれば、C濃度を短時間かつ高精度で分析できるので、他の分析方法を用いる必要がないだけでなく、精錬時間を短縮したり、複数回の成分調整を回避したり、C濃度の基準外れを防止したりすることができ、しかも、溶鋼温度確保のための高温出鋼や溶鋼加熱も不要となるので、製造コストの低減や生産性の向上にも大いに寄与する。
炭素鋼の精錬プロセスにおいて、成分分析を行う一般的な段階を説明する図である。 C濃度の分析精度が高い試料と、低い試料のFe,CおよびAlの、単位放電ごとのパルスデータ(発光強度データ)を対比して示したグラフである。 分析精度が低い試料の、1000回の単位放電におけるFeに対するAlの発光強度比(IpAl/IpFe)データと、Feに対するCの発光強度比(Ip/IpFe)データを放電順に並べたグラフである。 図3に示した試料の、Feに対するAlの発光強度比(IpAl/IpFe)データを昇順に並び替えるとともに、その順番で、Feに対するCの発光強度比(Ip/IpFe)データを並び替えたグラフである。 実施例における参考例、比較例および発明例のRH処理時間と赤外線吸収法で分析した鋼中C濃度との関係を示すグラフである。
以下、本発明について具体的に説明する。
先述したように、C濃度が0.1mass%レベルの炭素鋼は、通常、高炉から出銑した溶銑を、溶銑予備処理工程でSやP,Si等の不純物をある程度除去した後、転炉で溶鋼中に酸素Oを吹き込んで脱C処理(一次精錬)し、真空脱ガス処理設備等でC,N等をさらに低減した上で、加炭材や各種合金元素を添加して最終製品に要求される成分組成に成分調整する二次精錬し、その後、連続鋳造等でスラブ等の鋼素材とするのが一般的である。
上記精錬プロセスにおいて、溶鋼からサンプルを採取してC濃度を分析するのは、図1に示したように、一次精錬後(転炉出鋼後)、二次精錬途中、二次精錬終了後および連続鋳造途中である。これらの中で、転炉出鋼後および二次精錬途中の成分分析、とりわけ、二次精錬途中の成分分析は、その分析値が二次精錬の終了を見込んだ最終成分調整におけるアクションを決定する元データとなるため分析精度が高いことが、また、分析結果が判明するまでの待ち時間を短くし、溶鋼温度の低下を極力抑えるため分析時間が短いことが強く求められる。
しかし、従来の発光分光分析法は、C濃度の分析精度に劣ることから、C厳格管理材については、鋼成分が規格外れになることを回避するために正確性を優先し、赤外線吸収法を採用している。しかし、C濃度を赤外線吸収法で分析するためには、他の合金元素を分析する発光分光分析法に供する試料とは別の試料をサンプリングし、分析しなければならず、分析作業が二重手間となっている。そこで、発光分光分析法によって、C濃度分析が可能となれば、サンプリングや分析に要する手間とコストの削減できるだけでなく、分析時間を短縮することも可能となる。
そこで、発明者らは、C濃度が0.05〜0.3mass%の範囲のC厳格管理材への適用に向けて、スパーク放電発光分光分析法によるC濃度の高精度分析方法について調査、検討を重ねた。その結果、発光分光分析法における多数回のスパーク放電で、単位放電ごとに得られるFe,Alのパルスデータの分布すなわち発光強度の分布に、C濃度の分析精度が高い試料と低い試料とでは、大きな違いがあることを見出した。
図2は、スパーク放電発光分光分析法で1000パルスの放電を行ったときの、C濃度の分析精度が高い試料(σ=0.002mass%)と低い試料(σ=0.009mass%)におけるFe,CおよびAlの発光強度を、放電順に並べて示したものである。なお、上記分析においては、Fe,C,Al各元素の測定に用いる輝線の波長として、Fe:287.2nm、C:193.0nm、Al:394.4nmを選択した。この図から、Cの発光強度は、両者の間に大きな違いはないが、分析精度が悪い試料では、Feの発光強度が著しく低いパルスが多数存在していることがわかる。そこで、他の元素の発光強度も調べたところ、Alの発光強度が、Feの発光強度の低下と同じタイミングで高くなっていることがわかった。
上記Alの異常発光は、アルミニウム系介在物に起因したものと考えられる。そして、上記の発光強度の違いが、C濃度の分析精度の低下を引き起こす原因について、発明者らは以下のように考えている。
スパーク放電発光分光分析法では、分析対象である試料とこれに対向した電極との間で毎秒数百回のスパーク放電を起こさせ、その放電で発生した光をスペクトル分析している。しかし、その発光強度は、放電のゆらぎや、放電効率の時間変動、その他物理的変動に起因して放電ごとに異なる。そこで、試料内に均一に含まれている一つの元素を内標準元素とし、その元素特有の輝線強度と分析対象の元素特有の輝線強度を対比することによって定量化している。その際、分析精度を高めるために、数百〜数千回の放電を行い、それらの結果を平均化している。
鉄鋼の精錬プロセスにおけるスパーク放電発光分光分析法においては、上記内標準元素として、一般に、試料の主体元素であるFeを用いている。マトリックスであるFeを内標準物質とすることによって、測定対象元素の発光強度は、Feの発光強度と連動して変化するはずであるため、何らかの放電不良等が生じても、同等の分析値、分析精度を得ることができると考えられているからである。
しかし、図2に示したように、その原因は未だ明らかではないが、C濃度の分析精度が劣る試料では、Feの発光強度は、Al系介在物による異常発光に連動して低下しているが、Cの発光強度は、Feの発光強度のように連動せず、ほぼ一定であるため、内標準元素としてのFeが有効に働かず、分析精度の低下を引き起こしているものと考えられた。なお、C以外のその他の元素は、Feと同様、Alの異常発光に連動して変化するため、大きな分析精度の低下は起こらない。
酸素(O)はアルミニウムと介在物を形成していると考えられるが、上記のように、Alの発光強度がFeの発光強度の低下と同じタイミングで高くなっていることがわかったので、Oの発光強度についても、AlおよびFeの発光強度との関係があるかを調べた。しかし、C濃度の分析精度が高い試料(σ=0.002mass%)と低い試料(σ=0.009mass%)について、Oの発光強度を測定し、上記と同様にAlおよびFeの発光強度と比較したが、Oの発光強度とAlの発光強度の挙動とは全ては一致せず、また、Feの発光強度が著しく低くなるタイミングとOの発光強度が変化するタイミングとは必ずしも一致しないことがわかった。これは、アルミニウム以外の酸化物系介在物も存在するので、そこからのOの発光もあるためと推定された。結果として、C濃度を高い精度で分析するためには、アルミニウムの発光強度に基づいた補正を行うことが最適であると考えた。
そこで、発明者らは、上記のC分析精度の低い試料のパルスデータから、C濃度を高い精度で分析するデータの補正方法を検討した。
図3(a)は、放電回数(パルス数)が1000回の場合における各放電ごとのFeに対するAlの発光強度比(IpAl/IpFe)データを、また、図3(b)は、図3(a)と同様、放電回数(パルス数)が1000回の場合における単位放電ごとのFeに対するCの発光強度比(Ip/IpFe)データを、放電順に並べて示したものであるが、(IpAl/IpFe)データおよび(Ip/IpFe)データに中には、Alの異常発光の影響を受けて、大きく変動しているものが混在していることがわかる。
また、図4(a)は、上記図3(a)のパルスデータを、Feに対するAlの発光強度比(IpAl/IpFe)を小さい方から大きい方に、すなわち、昇順に並べ替えたものであり、また、図4(b)は、同じく上記図3(b)のパルスデータを、上記順番、すなわち、図4(a)での放電の順番に対応させて並べ替えたものである。その結果、データの並べ替えを行った後にも、横軸の値が同じ(IpAl/IpFe)および(Ip/IpFe)は、同じ回のスパーク放電に対する強度比のデータとなっている。図4(a)および図4(b)を対比することでわかるように、Alの異常発光の影響を受けた発光強度比(IpAl/IpFe)が高いデータ(図4(a)の右側データ)を除いた領域に対応する図4(b)における発光強度比(Ip/IpFe)データは、比較的安定しており、バラつきが小さいことがわかる。この知見に基き、C濃度を高精度で分析するデータの補正方法を検討し、以下の分析方法を開発した。
本発明がC濃度の分析に用いるスパーク放電発光分光分析法においては、多数回の放電において単位放電ごとに得られるFeに対するAlの発光強度比(IpAl/IpFe)データを小さい方から大きい方に昇順に並べ替えたときの所定の百分位値における発光強度比(IpAl/IpFe)を上回る放電から得られるFeおよびCの発光強度比(Ip/IpFe)データを棄却し、残された、(IpAl/IpFe)が所定の百分位値以下の放電タイミングにおけるFeおよびCの発光強度比(Ip/IpFe)データのみを用いることとした。
上記(Ip/IpFe)のパルスデータを棄却する閾値となる百分位値は、(IpAl/IpFe)データの20〜80百分位値間のいずれかの百分位値とするのが好ましい。80百分位値を超えると、Alの異常発光の影響を受けたパルスデータが含まれてくるおそれがあること、一方、20百分位値未満となると、C濃度の分析に必要なデータ数が少なくなって、逆に高い分析精度が得られ難くなるため、放電回数を多くする必要があるからである。より好ましい閾値となる分位点は、(IpAl/IpFe)データの50〜70百分位値間である。
ここで、上記百分位値とは、昇順に整列されたn個のデータ値の分布を百等分した時、1×n/100,2×n/100,3×n/100,・・・,i×n/100,・・・,(100−2)×n/100,(100−1)×n/100番目のそれぞれのデータの値を「百分位値」、i番目の百分位値を「i百分位値」ということとする。
そして、上記百分位値は、以下のようにして算出する。
鉄に対するアルミニウムの発光強度比IpAl/IpFeデータを、小さい方から大きい方へ昇順に並べたn個のデータX(i=1,2,3,・・・,n−1,n)(ここで、X≦X≦X,・・・,Xn−1≦Xであり、Xは小さい方から数えてi番目のIpAl/IpFe)において、所定の百分位値、例えば、m百分位値(mは自然数)Qを求める場合、
(n+1)×m/100=qで与えられるqが自然数のときは、Q=Xである。
一方、上記qが自然数でないときは、Q=(ceil(q)−q)Xfloor(q)+(q−floor(q))Xceil(q)である。ここで、ceil(q)は天井関数、floor(q)は床関数であり、それぞれqの小数部分を切り上げた値、切り捨てた値である。
例えば、q=3.25のとき、
=0.75X+0.25X
となる。
なお、図4中には、(Ip/IpFe)データを棄却する閾値となる百分位値として、(IpAl/IpFe)の50百分位値を用いた例を示した。すなわち、1000パルス分のFeに対するAlの発光強度比(IpAl/IpFe)データを昇順に並び替えたときの50百分位値、つまり、発光強度比(IpAl/IpFe)の値Q50を求め、このQ50を超える(IpAl/IpFe)の放電から得られる(Ip/IpFe)データを棄却し、発光強度比(IpAl/IpFe)の値がQ50以下となる放電タイミングの(Ip/IpFe)データのみを平均し、平均(Ip/IpFe)を求め、これをC定量のために用いる。
C濃度の算出は、予め複数の認証標準物質を上記本発明の方法にて分析して求めた平均(Ip/IpFe)と、赤外線吸収法や湿式分析等他の方法で求めた(C(mass%)/Fe(mass%))とから検量線を作成しておき、これを用いて分析対象試料の上記平均(Ip/IpFe)から(C(mass%)/Fe(mass%))を求める。
求められた(C(mass%)/Fe(mass%))は、Feに対する炭素の質量比であるが、従来公知の方法により、試料中(鋼材中)の炭素の濃度に変換することが可能である。例えば、試料鋼に対するFeの質量比を求め、それと積算したり、もしくは鋼中の炭素以外の元素について定量分析を行い、その値を加味したりすることによって、試料中(鋼材中)の炭素濃度を算出することができる。
上記の補正を行うことにより、多数回の放電で得られたパルスデータから、Alの異常発光の影響を受けたパルスデータを取り除くことができるので、鋼中のC濃度を高精度で分析することができ、例えば、C濃度が0.1mass%の炭素鋼では、標準偏差σを0.002mass%以下に低減することができるので、C濃度を狭い範囲に制御する必要があるC厳格管理材にも十分に適用することが可能となる。さらに、上記分析方法を用いることにより、測定時間が短縮されるだけでなく、従来、C濃度の分析に用いていた赤外線吸収法による分析が不要となるので、サンプリングや分析の工数削減を図ることができる。さらに、本発明を適用することにより、成分調整を正確に行うことが可能となるので、成分的中率の向上の他、成分外れに起因した成分の再調整も低減すことができるので、二次精錬時間を大幅に短縮することも可能となる。
なお、本発明が対象とする炭素鋼は、C濃度が0.05〜0.3mass%の炭素を含有する鋼であることが好ましい。C濃度が、0.05mass%未満あるいは0.3mass%超えでは、本発明のスパーク放電発光分光分析法を用いても、高い分析精度を確保することが難しいからである。
高炉から出銑した溶銑を溶銑予備処理して脱P、脱Sした後、転炉でCを約0.03mass%まで脱炭吹錬した約300トンの溶鋼を、RH真空脱ガス装置を用いて二次精錬する精錬プロセスで、目標C濃度が0.1±0.004mass%のC厳格管理材を溶製した。なお、上記RH真空脱ガス処理装置は、脱ガス槽の下部に設けられた2本の浸漬管を溶鋼中に浸漬した状態で、脱ガス槽内の空気を排気し、一方の浸漬管からArガスを吹込んで取鍋内の溶鋼を脱ガス槽内に導入し、他方の浸漬管から溶鋼を取鍋内に戻す環流を起こさせることによって、溶鋼に脱C、脱N等の脱ガス処理を施すものである。
上記二次精錬は、以下の要領で行った。先ず、真空脱ガス処理を開始する前の溶鋼中のC濃度(炉裏C濃度)と、脱ガス槽の真空度、環流用Arガス流量などからなる脱炭速度式から、C濃度が0.005mass%以下に低減するまでの処理時間を予め求めておき、その時間になったらAlを添加し、脱酸して脱炭処理を終了し、成分分析用の試料を採取し、二次精錬途中の鋼中成分を分析した。
上記成分分析におけるC濃度の分析は、下記A〜Cの3種の測定法を、各10チャージに適用した。また、C以外の元素の分析には、従来と同様、スパーク放電発光分光分析法を用いた。
・測定法A:赤外線吸収法(参考例)
・測定法B:従来技術のスパーク放電発光分光分析法(比較例)
・測定法C:発光強度比(IpAl/IpFe)データに基く補正を行うスパーク放電発光分光分析法(本発明例)
なお、上記測定法Bおよび測定法Cに用いたスパーク放電発光分光分析法の測定条件は、予備放電については、1回のスパーク放電の放電エネルギー0.2J、周波数333Hz、パルス数2000、予備放電後、分析のためにデータを取得した放電については、1回のスパーク放電の放電エネルギーが0.1J、周波数333Hz、パルス数1000とし、また、Fe,C,Alの測定には、それぞれFe:287.2nm、C:193.0nm、Al:394.4nmの波長の輝線を用いた。
また、測定法Cにおけるパルスデータの処理は、分析のためにデータを取得した放電1000パルス分のFeに対するAlの発光強度比(IpAl/IpFe)のデータを昇順に並び替えたときの(IpAl/IpFe)データの50百分位値における発光強度比(IpAl/IpFe)の値Q50を求め、そのQ50を超える放電における(Ip/IpFe)データを棄却し、残された(IpAl/IpFe)がQ50以下の放電における(Ip/IpFe)データのみを平均し、C定量のために用いた。なお、先述したように、qは、
q=(n+1)×50/100=500.5
であるから、上記1000個のパルスデータの50百分位値における発光強度比(IpAl/IpFe)の値Q50は、(IpAl/IpFe)のデータを昇順に並び替えたときの500番目のデータと501番目のデータの中間値とした。
次いで、上記の分析結果に基づいて、加炭材や合金元素を添加して、要求される鋼成分に適合するよう最終成分調整した後、二次精錬を終了した。なお、上記最終成分調整におけるC濃度の調整は、上記3種の方法で得られたC濃度分析値に基いて加炭材の添加量を決定した。また、上記C濃度の調整には、炭材(コークスなど)の他、Cを含有するフェロマンガンやフェロクロムなどの加炭材を用いた。
次いで、上記二次精錬終了後の溶鋼から分析試料を採取し、最終成分調整後の溶鋼成分を分析し、鋼成分が所期した目標範囲内にあるか否かを判定した。なお、上記最終成分調整後のC濃度の分析には、赤外線吸収法を用いた。
図5は、上記二次精錬後(最終成分調整後)のC濃度の分析値と二次精錬時間(RH真空脱ガス処理時間)との関係を、二次精錬途中のC分析法ごとに示したものである。
この図から、赤外線吸収法を用いた場合(参考例)には、10チャージ全てが目標のC濃度管理範囲内に調整できているものの、分析に長時間を要するため、RH脱ガス処理時間が長くなっている。
また、従来技術のスパーク放電発光分光分析法を用いた場合(比較例)には、RH脱ガス処理時間は短いものの、C濃度を目標管理範囲内に調整できているのは、10チャージ中6チャージでしかなかった。これは、二次精錬途中のC濃度の分析に、分析精度に劣る従来技術の発光分光分析法を用いたため、加炭材の添加量を適切に定めることができなかったことによるものと推測される。
これに対して、発光強度比(IpAl/IpFe)データに基く補正を行うスパーク放電発光分光分析法を用いた場合(発明例)には、10チャージ全てが目標のC濃度管理範囲内に調整できているだけでなく、RH脱ガス処理も炭時間で終了することができていることがわかる。
本発明の技術は、スパーク放電発光分光分析法を用いた炭素鋼の精錬方法に限定されるものではなく、他の金属の精錬方法にも好適に適用することができる。

Claims (3)

  1. 転炉出鋼から二次精錬終了までのいずれか1以上の段階で溶鋼から試料を採取して成分分析し、その分析結果に基いて溶鋼の成分調整および/または二次精錬の終了判定を行う炭素の含有量が0.05〜0.3mass%の炭素鋼の精錬方法において、上記成分分析におけるC濃度の分析に、Feを内標準元素とし、多数回のスパーク放電で単位放電ごとに得られるFeに対するAlの発光強度比(IpAl/IpFe)データに基づいて、単位放電ごとに得られるFeに対するCの発光強度比(Ip/IpFe)データの一部を棄却し、残りの(Ip/IpFe)データを平均してC濃度を求めるスパーク放電発光分光分析法を用いることを特徴とする炭素鋼の精錬方法。
  2. 上記スパーク放電発光分光分析法では、多数回のスパーク放電で単位放電ごとに得られるFeに対するAlの発光強度比(IpAl/IpFe)データを昇順に並び替え、所定の百分位値における発光強度比(IpAl/IpFe)を上回るスパーク放電から得られるFeに対するCの発光強度比(Ip/IpFe)データを棄却することを特徴とする請求項1に記載の炭素鋼の精錬方法。
  3. 上記所定の百分位値は、Feに対するAlの発光強度比(IpAl/IpFe)データを昇順に並び替えたときの20〜80百分位値間に設定することを特徴とする請求項2に記載の炭素鋼の精錬方法。
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