JP5883636B2 - カチオン化キサンタンガム及びそれを含有する乳化組成物 - Google Patents
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Description
また、カチオン化キサンタンガムの製造時に用いたカチオン化剤が残存している場合があり、この場合には、カチオン化キサンタンガムのカチオン電荷量を測定したとき、該電荷量に、キサンタンガムにおける水酸基と置換されたカチオン化基に由来するカチオン電荷量だけでなく、残存カチオン化剤に由来するカチオン電荷量(残存カチオン電荷量)が含まれることが判明した。
さらに、測定されたカチオン電荷量が、残存カチオン電荷量を含んでいると、この分については、キサンタンガムの乳化力や乳化安定性の発揮に寄与し得ないため、カチオン化キサンタンガムが特性として有する乳化力及び乳化安定性を適切に把握することができず、カチオン電荷量が適切であるにもかかわらず乳化力や乳化安定性が不十分な場合が不意に生じる場合があることが判明した。
そして、カチオン化キサンタンガムにおける、残存カチオン電荷量の分を除いた、乳化力や乳化安定性に寄与し得る有効カチオン電荷量が特定の範囲である場合に、優れた乳化力及び乳化安定性を発揮し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
で表される基が挙げられるが、該第4級窒素含有基は、これらに特に限定されない。
かかる有効カチオン電荷量が0.62meq/g以上1.13meq/g以下であることによって、界面張力の低下能が向上するため、乳化力が向上する。これにより、水と油成分とを用い、これらにカチオン化キサンタンガムを乳化剤として乳化した際、乳化粒子を小さくすることができ、良好な乳化物を作ることができる。また、水と油成分の界面に吸着して強力な界面膜を形成することができるため、乳化粒子の凝集・合一を防ぎ、乳化粒子の経時的な増大や乳化物の分離の程度を小さくすることができる。従って、乳化力及び乳化物の安定性を確実に向上させることができる。
すなわち、カチオン化キサンタンガムの全窒素含量Mtと、該カチオン化キサンタンガムの製造に用いたキサンタンガムの窒素含量Maとを、セミケルダール法(食品添加物公定書第8版、一般試験法)に基づいて測定する。
まず、カチオン化キサンタンガムを含水アルコール(具体的には90質量%メタノール)で洗浄し、洗浄液中のカチオン化剤の対イオンとして塩素の質量を、Fajans法に基づいて測定する。なお、塩素の質量とカチオン化剤の質量との関係を示す検量線を予め作成し、この検量線に塩素の質量の測定結果をあてはめることによって、残存カチオン化剤の質量を得ることができる。
次に、得られた残存カチオン化剤の質量の、測定に用いたカチオン化キサンタンガムの質量に対する百分率を算出することによって、カチオン化キサンタンガム中の残存カチオン化剤含有量R(質量%)を算出する。
さらに、得られた残存カチオン化剤含有量Rから、以下の計算式に従って、残存カチオン化剤に由来する窒素含量Mr(質量%)を算出する。
Mr=R×窒素の原子量/カチオン化剤の分子量
例えば、窒素の原子量を14.0とし、カチオン化剤としてグリシジルトリメチルアンモニウムクロリドを用いた場合、該カチオン化剤の分子量は151であるため、Mr=R×14.0/151となる。
そして、このようにして測定した全窒素含量Mtと、残存カチオン化剤に由来する窒素含量Mrと、キサンタンガムの窒素含量Maとから、下記式に従って、有効カチオン電荷量を算出することができる。
有効カチオン電荷量(meq/g)=(Mt―Mr―Ma)×1000/[(窒素の原子量)×100]
工程(1):イソプロピルアルコール濃度が35質量%以上70質量%以下となるように水及びイソプロピルアルコールを準備し、該水、該イソプロピルアルコール、アルカリ剤、キサンタンガム及びカチオン剤を混合する工程、
工程(2):工程1で得られた混合液を、室温以上の温度下で攪拌して、キサンタンガムとカチオン化剤とを反応させる工程(反応工程)、
工程(3):工程(2)で得られた反応生成物を含む液から反応生成物を分離する工程、及び
工程(4):工程(3)で分離された反応生成物を、アルコールまたは該アルコールを含む含水アルコールで洗浄する工程、
を備えており、工程(1)〜(4)を行うことによって、カチオン化キサンタンガムを製造し得る。
かかる洗浄の回数は、特に限定されないが、2〜5回であることが好ましい。
このように、アルコールまたは含水アルコールを2種類用いて2段階の洗浄を行うことによって、残存カチオン化剤を充分に取り除くことができる。
なお、上記したようなイソプロピルアルコールまたは含水イソプロピルアルコールを用いた洗浄と、メタノールまたは含水メタノールを用いた洗浄とを、交互に繰り返し行うこともできる。
このように洗浄工程を実施することによって、残存カチオン化剤を減少させることができ、上記したように水に難溶化または不溶化することをより回避することが可能となるが、かかる洗浄工程は、必ずしも必要ではない。
なお、反応時の様態が均一か否かは、反応時の粒子の膨潤度合い(粒子の大きさ)や粒子同士の付着状態を目視で観察することによって判断することができる。例えば、粒子の膨潤度合いが異なっていたり、粒子同士が付着して均一でない状態となっていたりした場合を、不均一と判断することができる。
上記した化粧料としては、例えば、乳液、美容液、クリーム、メイクアップベースローション、メイクアップベースクリーム、乳液状ファンデーション、クリーム状ファンデーション、クリーム状アイカラー、クリーム状チークカラー、パック、マッサージクリーム、マッサージローション等のスキンケア用化粧料、メイクアップ用化粧料、ボディローション、ボディ用クリーム、ハンドクリーム等のボディ用化粧料、ヘアリンス、ヘアセットローション、ヘアワックス、ヘアトリートメント等のヘア用化粧料、染毛用剤、パーマネントウエーブ用剤、入浴剤、洗浄剤等が挙げられる。
また、上記した外用剤としては、従来、外用剤として慣用されている剤型、例えばクリーム剤、ゲル剤、ローション剤、乳剤、液剤、スプレー剤、パップ剤、テープ剤またはパッチ剤等、任意の剤型を有する外用剤が挙げられる。
また、上記した一般工業用剤としては、塗料、コーティング剤、接着剤、製紙用剤、インク、香料、農薬、床用ワックス等のハウスホールド製品、家庭用や工業用に用いられる洗浄剤、ワックスや油膜取り剤等のカーケア製品、離型剤、芳香剤等が挙げられる。
製造例1、2、4〜12
水172.8gにアルカリ剤たる水酸化ナトリウム(ナカライテスク株式会社製)5.76gを添加して均一に溶解させ、得られた水溶液にさらにイソプロピルアルコール(ナカライテスク株式会社製)265.5gとキサンタンガムたるラボールガムGS−C(DSP五協フード&ケミカル株式会社製)100gとを添加して均一に溶解させた。次いで、得られた溶液に、下記表1に示す配合量でカチオン化剤たるグリシジルトリメチルアンモニウムクロリド(阪本薬品工業株式会社製)を加え、得られた混合物を、50〜55℃の温度下で攪拌しつつ5時間反応させた。
ここで、上記カチオン化剤を加えて得られた混合物に含まれているイソプロピルアルコールの質量は265.6g、水及びイソプロピルアルコールの合計質量は438.4gであっため、かかる混合物中のイソプロピルアルコール濃度は、60.6質量%と算出された。
また、下記表1に示すように、水、イソプロピルアルコール、カチオン化剤及びアルカリ剤の配合量を変えること以外は上記製造例1、2、4〜12と同様にして、製造例3のカチオン化キサンタンガムを得た。
製造例1〜12で得られたカチオン化キサンタンガムの全窒素含量Mtと、該カチオン化キサンタンガムの製造に用いたキサンタンガムの窒素含量Maとを、セミケルダール法(食品添加物公定書第8版、一般試験法)に基づいて測定した。
まず、得られたカチオン化キサンタンガムを含水アルコール(具体的には90質量%メタノール)で洗浄し、洗浄液中のカチオン化剤(グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド:分子量151)の対イオンとして塩素の質量を、Fajans法に基づいて測定した。なお、塩素の質量とカチオン化剤の質量との関係を示す検量線を予め作成し、この検量線に塩素の質量の測定結果をあてはめることによって、残存カチオン化剤の質量を得た。
次に、得られた残存カチオン化剤の質量の、測定に用いたカチオン化キサンタンガムの質量に対する百分率を算出することによって、カチオン化キサンタンガム中の残存カチオン化剤含有量R(質量%)を算出した。
そして、得られた残存カチオン化剤含有量Rから、以下の計算式に従って、残存カチオン化剤に由来する窒素含量Mr(重量%)を算出した。なお、窒素の原子量を14.0とした。
Mr=R×窒素の原子量(14.0)/カチオン化剤の分子量(151)
このようにして測定した全窒素含量Mtと、残存カチオン化剤に由来する窒素含量Mrと、キサンタンガムの窒素含量Maとから、下記式に従って、有効カチオン電荷量を算出した。結果を表1に示す。なお、上記製造に用いたキサンタンガムの窒素含量Maは、0.40であった。
有効カチオン電荷量(meq/g)=(Mt―Mr―Ma)×1000/[(窒素の原子量(14.0))×100]
乳化物における乳化粒子の調整直後の粒子径(平均粒子径)を、粒子径分布測定装置(レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置、HORIBA製LA−300)を用い、25℃の恒温槽(TAITEC社製、THEMO MINDER SP−12R)に1時間静置下した後、メジアン径(d50)として測定した。また、原料として用いたキサンタンガムを上記と同様にして乳化させて得られた乳化物における乳化粒子の調製直後(乳化直後)の粒子径を測定した。そして、下記のように、カチオン化キサンタンガムの乳化物における乳化粒子の粒子径を、キサンタンガムの乳化物における乳化粒子の粒子径と比較することにより、カチオン化キサンタンガムの乳化物の乳化力を評価した。結果を表2、図1に示す。なお、以下、乳化粒子の粒子径を乳化粒子径という場合がある。
乳化粒子径が、原料たるキサンタンガムでの乳化粒子径未満の場合・・・○
乳化粒子径が、原料たるキサンタンガムでの乳化粒子径以上の場合・・・×
・乳化粒子の粒子径の経時安定性評価
50℃で7日及び28日保存した乳化物における乳化粒子の粒子径を、上記と同様にして25℃の恒温槽に1時間静置した後に測定し、調整直後からの乳化粒子径の変化率を下記式に基づいて算出した。得られた算出結果を下記のように判定することによって、乳化物の安定性を評価した。なお、調整直後の乳化粒子径は、上記<乳化力の評価>で得られた値を用いた。結果を表2、図1に示す。なお、表2、図1には、原料たるキサンタンガムを用い、上記製造例1〜12と同様にして乳化させて得られた乳化物における乳化粒子径の経時安定性評価結果も併せて示す。
乳化粒子径の変化率(%)=(28日後の乳化粒子径−調製直後の乳化粒子径)/(28日後の乳化粒子径)×100
乳化粒子径の変化率が±10%未満・・・○
乳化粒子径の変化率が±10%以上・・・×
得られた乳化物80gをキャップ付のビンに移し、50℃で保存した。保存後、一定時間ごとに、図3に示すように、ビン内に収容された全成分の表面までの高さ(液面の高さA)と、ビン内に収容された全成分のうち下方に存在している水層の上面までの高さ(水槽の高さB)を測定した。そして、得られた液面の高さA及び水層の高さBから下記式により分離率を算出し、下記のように乳化安定性を判定することによって、分離率を評価した。なお、上記水層は、全成分のうち、上方に存在している乳化層(乳化粒子が存在している層)と分離して該乳化層の下方に存在している層とした。結果を表3、図2に示す。なお、表3、図2には、原料たるキサンタンガムを上記と同様にして乳化させて得られた乳化物の分離率を併せて示す。
分離率=水層の高さB/液面の高さA×100(%)
28日後の分離率が0である・・・・○
28日後の分離率が0を超える・・・×
また、有効カチオン電荷量が1.30meq/gを超える場合、乳化力や乳化安定性は良好であるものの、経時的に増粘やゲル化するといったように経時的に物性の変化が起こるため、長時間安定に保存される必要があるものへの使用には適さないことがわかった。
Claims (5)
- キサンタンガムの水酸基の一部が第4級窒素含有基を有するカチオン化剤によってカチオン化されてなるカチオン化キサンタンガムであって、
有効カチオン電荷量が0.72meq/g以上0.94meq/g以下であり、
前記有効カチオン電荷量は、下記式によって得られることを特徴とするカチオン化キサンタンガム。
有効カチオン電荷量(meq/g)=(Mt―Mr―Ma)×1000/[(窒素の原子量)×100]
Mt:カチオン化キサンタンガムの全窒素含量
Mr:下記式によって得られる残存カチオン化剤に由来する窒素含量
Mr=R×窒素の原子量/カチオン化剤の分子量
R:カチオン化キサンタンガム中の残存カチオン化剤含有量
Ma:カチオン化キサンタンガムの製造に用いたキサンタンガムの窒素含量 - 請求項1に記載されたカチオン化キサンタンガムと、水と、油成分とを含有していることを特徴とする乳化組成物。
- 請求項1に記載のカチオン化キサンタンガムの製造方法であって、
下記(1)〜(4)の工程を備えることを特徴とするカチオン化キサンタンガムの製造方法。
工程(1):イソプロピルアルコール濃度が35質量%以上70質量%以下となるように水及びイソプロピルアルコールを準備し、該水、該イソプロピルアルコール、アルカリ剤、前記キサンタンガム及び前記第4級窒素含有基を有するカチオン化剤を混合する工程、
工程(2):工程1で得られた混合液を、室温以上の温度下で攪拌して、前記キサンタンガムと前記カチオン化剤とを反応させる工程、
工程(3):工程(2)で得られた反応生成物を含む液から反応生成物を分離する工程、及び
工程(4):工程(3)で分離された反応生成物を、アルコールまたは該アルコールを含む含水アルコールで洗浄する工程。 - 請求項1に記載のカチオン化キサンタンガムと、水と、油成分とを混合し、乳化することを特徴とする乳化組成物の製造方法。
- キサンタンガムの水酸基の一部が第4級窒素含有基を有するカチオン化剤によってカチオン化されてなるカチオン化キサンタンガムと、水と、油成分とを含有している乳化組成物の乳化力及び乳化安定性の向上方法であって、
前記カチオン化キサンタンガムとして、有効カチオン電荷量が0.72meq/g以上0.94meq/g以下であるものを用い、
前記有効カチオン電荷量は、下記式によって得られることを特徴とする乳化組成物の乳化力及び乳化安定性の向上方法。
有効カチオン電荷量(meq/g)=(Mt―Mr―Ma)×1000/[(窒素の原子量)×100]
Mt:カチオン化キサンタンガムの全窒素含量
Mr:下記式によって得られる残存カチオン化剤に由来する窒素含量
Mr=R×窒素の原子量/カチオン化剤の分子量
R:カチオン化キサンタンガム中の残存カチオン化剤含有量
Ma:カチオン化キサンタンガムの製造に用いたキサンタンガムの窒素含量
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