JP5883532B1 - 多糖類の精製方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】十分に多糖類を精製することができるユーグレナ属微細藻類の貯蔵する多糖類の精製方法の提供。【解決手段】ユーグレナ属微細藻類に含まれる多糖類と該多糖類以外の細胞構成物とを分離して多糖類を精製する精製工程であって、前記精製工程は、pH5以下の液体に含まれるユーグレナ属微細藻類の細胞膜をタンパク質分解酵素で破壊する酵素処理工程を有する、多糖類の精製方法。前記タンパク質分解酵素が酸性プロテアーゼである該方法。前記精製工程は、前記酵素処理工程後に、液体から前記多糖類を分離する分離工程をさらに有する精製方法。前記酵素処理工程後に前記多糖類に付着している付着物を界面活性により多糖類から分離する界面活性処理工程を更に有する多糖類の精製方法。【選択図】なし

Description

本発明は、例えば、ユーグレナ属微細藻類の内部に貯められた多糖類を精製する多糖類の精製方法に関する。
従来、例えば、ユーグレナ属微細藻類を含む液体に、タンパク質分解酵素及び/又はβ−1,3グルカナーゼなどの酵素を加え、斯かる酵素によって微細藻類の酵素処理物を免疫能賦活物質として得る方法が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載の方法では、例えば、多糖類を酵素処理又は酸処理によって加水分解することにより、免疫能賦活化物質を得ることができる。
ところで、近年、ユーグレナ属微細藻類の内部に貯められた多糖類を健康食品などの有価物として利用するために、斯かる多糖類を十分に精製できる多糖類の精製方法が要望されている。
特開平03−227939号公報
本発明は、上記の点に鑑み、十分に多糖類を精製することができる多糖類の精製方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決すべく、本発明に係る多糖類の精製方法は、ユーグレナ属微細藻類に含まれる多糖類と該多糖類以外の細胞構成物とを分離して多糖類を精製する精製工程を備え、
前記精製工程は、pH5以下の液体に含まれるユーグレナ属微細藻類の細胞膜をタンパク質分解酵素で破壊する酵素処理工程を有することを特徴とする。
上記構成からなる多糖類の精製方法においては、前記酵素処理工程にて、タンパク質分解酵素によって、ユーグレナ属微細藻類の細胞膜を構成する主要成分であるタンパク質を分解することができる。タンパク質が分解されることによってユーグレナ属微細藻類の細胞膜が破壊される。一方、多糖類はタンパク質分解酵素によって分解されない。これにより、多糖類を取り囲んでいた細胞構成物を多糖類から分離して液体中に分散させることができる。
また、前記酵素処理工程にて、ユーグレナ属微細藻類を構成するタンパク質をpH5以下の液体にて分解させるため、液体のpHは、比較的低く保たれる。タンパク質の分解によって細胞内部から放出されたDNAは、液体の粘度上昇を引き起こすが、液体のpHが比較的低いことによって、細胞から放出されたDNAが加水分解されるため、DNAが加水分解される分、粘度の上昇が抑制される。粘度の上昇が抑えられることによって、ユーグレナ属微細藻類を構成するタンパク質とタンパク質分解酵素とが効率よく接触できる。従って、十分に微細藻類のタンパク質を分解させることができる。これにより、細胞膜を十分に破壊して、多糖類を取り囲んでいた細胞構成物を多糖類から分離して液体中に分散させることができ、多糖類を十分に精製することができる。
前記酵素処理工程では、前記液体のpHが2以上4未満であることが好ましい。前記液体のpHが2以上であることにより、多糖類が加水分解することを抑制することができる。前記液体のpHが4未満であることにより、液体の粘度が上昇することをより十分に抑制することができる。
本発明に係る多糖類の精製方法においては、前記タンパク質分解酵素が酸性プロテアーゼであることが好ましい。液体がpH5以下の酸性であり、タンパク質分解酵素が酸性プロテアーゼであるため、ユーグレナ属微細藻類の細胞膜を構成するタンパク質をより十分に分解でき、微細藻類の細胞膜をより十分に破壊することができる。
本発明に係る多糖類の精製方法においては、前記精製工程は、前記酵素処理工程後に、液体から前記多糖類を分離する分離工程をさらに有することが好ましい。
本発明に係る多糖類の精製方法においては、前記精製工程は、前記酵素処理工程後に、前記多糖類に付着している付着物を界面活性剤によって多糖類から分離する界面活性剤処理工程をさらに有することが好ましい。
本発明の多糖類の精製方法は、十分に多糖類を精製することができるという効果を奏する。
パラミロン溶液の吸光度によってパラミロンの精製度を表すグラフ。 パラミロン溶液の吸光度によってパラミロンの精製度を表すグラフ。 パラミロン溶液の吸光度によってパラミロンの精製度を表すグラフ。
以下、本発明に係る多糖類の精製方法(多糖類の製造方法)の一実施形態について詳しく説明する。
本実施形態の多糖類の精製方法(多糖類の製造方法)は、液体に含まれたユーグレナ属微細藻類を培養する培養工程と、培養されたユーグレナ属微細藻類に含まれる多糖類と該多糖類以外の細胞構成物とを分離して多糖類を精製する精製工程とを備える。
前記精製工程は、pH5以下の液体に含まれるユーグレナ属微細藻類の細胞膜をタンパク質分解酵素で破壊する酵素処理工程と、酵素処理工程後に前記多糖類に付着している付着物を界面活性剤によって多糖類から分離する界面活性剤処理工程と、界面活性剤処理工程を経た液体から前記多糖類を分離する分離工程と、分離された多糖類を洗浄する洗浄工程とを有する。
前記培養工程では、水と、ユーグレナ属微細藻類と、ユーグレナ属微細藻類が利用できる栄養素とを含む液体を撹拌しつつユーグレナ属微細藻類を培養する。
前記ユーグレナ属微細藻類は、大きさが概ね数マイクロメートルから数十マイクロメートル程度の微小な藻類である。ユーグレナ属微細藻類は、自然界では、通常、水中を浮遊しつつ生息する。
前記ユーグレナ属微細藻類は、ユーグレナ(Euglena)属に属する微細藻類である。
前記ユーグレナ属微細藻類は、パラミロンなどの多糖類を含む。パラミロンは、細胞内部に固体状で存在する。パラミロンは、β−1,3−グルカンの1種である。ユーグレナ属微細藻類は、ビタミン、カロテノイド、タンパク質などを細胞内部に含む。なお、ユーグレナ属微細藻類は、バイオディーゼルの原料となる油脂類(ワックスエステル)を細胞内部で産生できる。
前記ユーグレナ属微細藻類は、光合成によって増殖できる光独立栄養生物である。また、ユーグレナ属微細藻類は、光合成しなくてもグルコースなどの糖類を栄養素として利用して増殖できる。また、ユーグレナ属微細藻類は、光合成しつつ糖類を栄養素として利用できる。
前記ユーグレナ属微細藻類としては、例えば、Euglena gracilisEuglena longaEuglena caudataEuglena oxyurisEuglena tripterisEuglena proximaEuglena viridisEuglena sociabilisEuglena ehrenbergiiEuglena desesEuglena pisciformisEuglena spirogyraEuglena acusEuglena geniculataEuglena intermediaEuglena mutabilisEuglena sanguineaEuglena stellataEuglena terricolaEuglena klebsiEuglena rubra、又は、Euglena cyclopicolaなどが挙げられる。
前記Euglena gracilisとしては、例えば、Euglena gracilis NIES-48(後述する独立行政法人国立環境研究所微生物系統保存施設における保管株)、Euglena gracilis EOD-1(2013年6月28日付で独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許生物寄託センター(NITE−IPOD(郵便番号292-0818 日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 120号室)にブダペスト条約の規定下で、受託番号FERM BP−11530として国際寄託済み)などが挙げられる。
上記Euglena gracilis NIES-48などの一般的なユーグレナ属微細藻類は、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(郵便番号292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)、独立行政法人国立環境研究所微生物系統保存施設(郵便番号305-8506 茨城県つくば市小野川16-2)、又は、The Culture Collection of Algae at the University of Texas at Austin, USA(http://web.biosci.utexas.edu/utex/default.aspx)などから容易に入手される。
前記培養工程の液体は、通常、水に溶解した糖類などの炭水化物と、ミネラル類と、ビタミンB類とを栄養素として含む。
前記糖類は、単糖構造を分子中に含む有機化合物である。前記糖類としては、グルコース(ブドウ糖)、フルクトース(果糖)などの単糖類、又は、スクロース(ショ糖)、マルトース(麦芽糖)などの二糖類が挙げられる。スクロースやマルトースなどの二糖類は、酵素によって単糖類に分解されると、栄養素としてユーグレナ属微細藻類に利用される。糖類としては、単糖類としてのグルコースが最も好ましい。
前記ミネラル類としては、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、鉄、亜鉛、モリブデン、銅、リン、窒素、硫黄、又は、ホウ素などが挙げられる。ミネラル類は、通常、イオンの状態で液体に溶解している。
前記ビタミンB類としては、ビタミンB1(チアミン)、ビタミンB2(リボフラビン)、ナイアシン、パントテン酸、ビタミンB6(ピリドキシン、ピリドキサール、又はピリドキサミン)、ビタミンB12(シアノコバラミン)、葉酸、又は、ビオチンなどが挙げられる。
前記培養工程では、ユーグレナ属微細藻類に光を照射することにより、微細藻類に光合成をさせてもよい。
前記培養工程においてユーグレナ属微細藻類に光を照射すると、微細藻類は、光合成によって二酸化炭素を細胞内に取り込んで増殖する。また、液体中の糖類などを栄養素として利用してパラミロンなどの多糖類などを合成しつつ増殖し得る。
前記培養工程においては、ユーグレナ属微細藻類を増殖させつつ、微細藻類に光を照射する期間と、光を照射しない期間とを交互に設けてもよい。
即ち、前記培養工程においては、光を照射して光合成を行わせつつユーグレナ属微細藻類を増殖させる期間と、暗条件下にて光合成を抑制しつつユーグレナ属微細藻類を増殖させる期間とを繰り返し交互に設けることができる。
一方、前記培養工程においては、ユーグレナ属微細藻類に光を照射しない状態で、光合成を抑制しつつ微細藻類を増殖させることができる。即ち、暗い条件下で微細藻類を増殖させることができる。前記培養工程においては、光が照射されない暗条件下では、微細藻類が増殖しつつ、糖類などから有機化合物(多糖類や油脂類等)を合成して該有機化合物を細胞内部に貯める。なお、光を照射しない状態とは、ユーグレナ属微細藻類への光の強度が10μmol/m/s未満であることである。より好ましくは、光が全く当たらない完全な暗所で微細藻類を増殖させる。暗い条件下で微細藻類を増殖させることにより、光合成を抑制させてパラミロンの生成量を増加させることができる。
前記培養工程においては、パラミロンをより多く生成させるため、例えば、液体に配合する栄養素の炭素元素(C)と窒素元素(N)とのモル比(C/N)が培養開始時に10〜40となるように、配合する栄養素の量を調整する(例えば、特表平03−505101参照)。培養工程においては、回文培養又は流加培養が採用され得る。回分培養の場合、培養開始時に培地組成を調整し、培養終了までpH以外の成分調整を行わず、所定時間培養を行う。流加培養の場合、そのまま所定時間培養した後、培地成分を追加で添加する際に、培地中のC/N比が所定の値(10〜40)となるように、添加する培地成分量を調整する。また、流加培養において液体に添加する炭素(C)の量は、通常、培養後のユーグレナ属微細藻類の量(乾燥質量)に比例するように、調整する。即ち、培養後の微細藻類の量(乾燥質量)に、液体中の炭素(C)の量が比例するように、炭素(C)の添加量を調整する。
なお、培地としては、上記のものに限定されず、ユーグレナ属微細藻類を培養できる公知の培地を利用できる。例えば、コーレン・ハットナー(Korren - Hutner)培地 (J. Protozool., 14, Suppl., 17(1967))、ハットナー(Hutner)培地( J.Methods Enzymol., 23, 1971)や、これらの培地組成を適宜変更した培地を利用することもできる。
前記培養工程における培養温度は、ユーグレナ属微細藻類が増殖できる温度であれば、特に限定されない。該培養温度(液体の温度)としては、例えば、20℃〜35℃が採用される。
前記培養工程における液体中の溶存酸素濃度は、特に限定されないが、0.8ppm以上40ppm以下に維持されることが好ましい。40ppm以下の溶存酸素濃度であることにより、酸素ガスを溶存させるための散気量を抑えること等によって、培養に要するコストを抑えることができる。一方、溶存酸素濃度が0.8ppm以上であることにより、ユーグレナ属微細藻類が細胞外に粘性の高分子物質を分泌することを抑えることができる。従って、多糖類(パラミロン)の生成量が低下することを抑制できると共に、分泌された粘性の高分子物質によって液体の粘度が高くなることを抑制できる。
前記培養工程における液体のpHは、ユーグレナ属微細藻類が増殖できるpHであれば、特に限定されない。ユーグレナ属微細藻類が増殖できるpHとしては、例えば3.0〜5.5が採用される。液体のpHは、液体に無機酸や有機酸などの酸、又は、金属水酸化物などのアルカリを添加することによって調整できる。
前記培養工程では、ユーグレナ属微細藻類の培養に伴って、液体のpHが変化する。例えば、Modified Hutner培地(Eng. Life Sci. 2009, 9, No.1, 23-28)の組成を採用した液体で培養する場合、窒素源として尿素及びグルタミン酸ナトリウムを使用せず、代わりに塩化アンモニウムや炭酸水素アンモニウムを栄養素として含む液体のpHは、ユーグレナ属微細藻類を培養することにより、低下する。
本実施形態では、培養工程によってpHが5以下に下がった液体を酵素処理工程で用いることが好ましく、培養工程によってpHが2以上4未満にまで下がった液体を酵素処理工程で用いることがより好ましい。
前記培養工程においては、ユーグレナ属微細藻類の酸素呼吸を維持させるべく、酸素を含むガスを液体に供給することができる。また、前記培養工程においては、ユーグレナ属微細藻類の光合成を促すべく、二酸化炭素を含むガスを液体に供給することができる。斯かるガスの供給は、液体を曝気すること、又は、液体を撹拌することなどにより行うことができる。
前記培養工程においては、上記のようにしてユーグレナ属微細藻類を培養することにより、ユーグレナ属微細藻類を増殖させ、細胞内部にパラミロンなどの多糖類を貯めさせることができる。
なお、前記培養工程の後に、液体の遠心分離や重力分離などによってユーグレナ属微細藻類の濃度を高める工程を行ってもよい。
遠心分離では、例えば、ディスクタイプの遠心分離機を利用できる。遠心分離機を利用する場合、連続式の遠心分離を行ってもよく、回分式の遠心分離を行ってもよい。
重力分離では、液体を槽内で所定時間(例えば1時間〜24時間)静置して、微細藻類を沈殿させ、沈殿させた微細藻類を槽外へ抜き出すことにより、微細藻類の濃度を高めることができる。このような操作は、複数回行ってもよい。
前記酵素処理工程では、pH5以下の液体に含まれる培養後のユーグレナ属微細藻類の細胞膜をタンパク質分解酵素で破壊する。即ち、培養によって多糖類を細胞内部に貯めた生きたユーグレナ属微細藻類に対して、タンパク質分解酵素によって酵素処理を施す。例えば、増殖した微細藻類を含む培養工程後のpH5以下の液体と、タンパク質分解酵素とを混合することによって、微細藻類に酵素処理を施す。
前記酵素処理工程では、多糖類の分解を防ぐため、グリコシド結合を加水分解するグリコシダーゼによる酵素処理をユーグレナ属微細藻類に施さない。なお、前記酵素処理工程では、脂質分解酵素(リパーゼ)による酵素処理を微細藻類に施してもよく、施さなくてもよい。
前記酵素処理工程では、ユーグレナ属微細藻類の細胞膜を構成するタンパク質がタンパク質分解酵素によって分解される。微細藻類の細胞膜を構成する主要な成分の1つがタンパク質であるため、細胞膜のタンパク質が分解されることに伴い、微細藻類の細胞膜は、本来の細胞構造を保つことができず、破壊される。これにより、細胞構成物は、液体中に分散する。多糖類以外の細胞構成物の一部は、多糖類に付着した状態で液体中に分散する。
前記タンパク質分解酵素は、タンパク質のペプチド結合を加水分解できる酵素である。タンパク質分解酵素としては、エンド型プロテアーゼ、エキソ型プロテアーゼなどが挙げられる。また、タンパク質分解酵素としては、pH5以下に至適pHを有する酸性プロテアーゼが挙げられる。至適pHとは、最も活性が高い温度にて、最も活性が高くなるpHである。なお、酵素処理工程では、液体のpHは、通常、所定pH範囲内に調整する。所定pH範囲は、例えば、タンパク質分解酵素の至適pHを中心とした2pH分の範囲である。
前記タンパク質分解酵素としては、ペプシン、キモシンなどの酸性プロテアーゼが好ましい。酸性プロテアーゼとしては、至適pHが2以上4未満の酸性プロテアーゼが好ましい。
前記タンパク質分解酵素としては、市販されているものを使用することができる。市販されているタンパク質分解酵素としては、製品名「ニューラーゼF」(天野エンザイム社製)、製品名「プロテアーゼM「アマノ」SD」(天野エンザイム社製)、製品名「モルシンF」(キッコーマンバイオケミファ社製)、製品名「スミチームAP」(新日本化学工業社製)、製品名「デナプシン2P」(ナガセケムテックス社製)、製品名「グリンドアミルPR59」(ダニスコジャパン社製)、製品名「オリエンターゼAY」(エイチビィアイ社製)、製品名「テトラーゼS」(エイチビィアイ社製)、製品名「ブリューワーズクラレックス」(ディー・エス・エムジャパン社製)、製品名「プロテアーゼYP−SS」(ヤクルト薬品工業社製)などの酸性プロテアーゼが挙げられる。
前記酵素処理工程では、水とユーグレナ属微細藻類とを少なくとも含むpH5以下の液体に、タンパク質分解酵素を加えることで、酵素処理を開始する。酵素処理の開始時には、液体がpH5以下の酸性に制御されている。酵素処理工程の開始時には、液体のpHが2以上4未満であることが好ましく、液体のpHが2.5以上3.5以下であることがより好ましい。なお、液体のpHは、例えば、無機酸やアルカリ金属水酸化物などを液体に添加することによって調整することができる。
前記酵素処理工程では、通常、酵素処理を止めるまで(酵素処理を続ける間)、液体のpHが5以下である。酵素処理工程では、酵素処理を止めるまで、液体のpHが2以上4未満であることが好ましく、液体のpHが2.5以上3.5以下であることがより好ましい。なお、酵素処理は、後に詳述する界面活性剤処理工程を開始することによって、止めることができる。
前記酵素処理工程では、液体のpHが5以下であることにより、ユーグレナ属微細藻類のDNAが加水分解される。詳しくは、タンパク質分解酵素による酵素処理によって微細藻類の細胞膜が破壊され、斯かる破壊に伴って微細藻類のDNAが酸性環境に暴露される。DNA自体は、液体の粘度を上昇させ得るが、液体のpHが比較的低い(例えば、pH5以下の酸性環境下、好ましくはpH4未満の酸性環境下)ことにより、DNAの少なくとも一部が加水分解される。加水分解によってDNAの分子量が小さくなる分、液体の粘度の上昇が抑えられる。
前記酵素処理工程では、至適pHが2以上4未満の酸性プロテアーゼによって、pHが2以上4未満の液体に含まれた状態のユーグレナ属微細藻類に酵素処理を施すことが好ましい。
前記酵素処理工程では、タンパク質分解酵素の最適温度を含む所定温度範囲内の液体内で酵素処理を行う。酵素処理工程では、液体の温度が40℃以上80℃以下であることが好ましく、50℃以上55℃以下であることがより好ましい。
前記酵素処理工程では、液体におけるタンパク質分解酵素の濃度が1〜10g/1Lとなるように、液体にタンパク質分解酵素を添加する。
前記酵素処理工程にて、酵素処理を続ける時間は、特に限定されないが、通常、30分〜5時間である。
前記界面活性剤処理工程では、酵素処理工程を経た多糖類に付着している付着物を界面活性剤の分散力によって多糖類から分離する。界面活性剤処理工程では、酵素処理工程後の液体と界面活性剤とを混合し、混合後の液体を撹拌する。そして、界面活性剤の分散力によって、多糖類に付着した付着物が多糖類から離れる。多糖類に付着した付着物は、例えば、細胞膜が破壊された後の細胞構成物であって多糖類以外の細胞構成物である。なお、界面活性剤処理工程では、細胞膜が破壊された後の細胞構成物であって多糖類以外の細胞構成物が、撹拌力によってさらに細かくなり得る。
前記界面活性剤処理工程では、ユーグレナ属微細藻類の細胞膜を構成していたタンパク質の分解物(例えば、ペプチド)が界面活性剤の分散力によって液体中に分散する。また、微細藻類の細胞膜を構成していた脂質が界面活性剤の分散力によって液体中に分散する。
前記界面活性剤処理工程では、液体のpHを酸性(例えばpH5以下)に調整することが好ましく、2以上4未満に調整することがより好ましい。液体のpHは、2.5以上3.5以下であることがさらに好ましい。液体のpHが酸性(例えば3.5以下)であることにより、ユーグレナ属微細藻類のDNAがより十分に加水分解される。
前記界面活性剤処理工程では、通常、液体の温度を40℃〜80℃に調整する。また、界面活性剤処理工程を続ける時間は、通常、10分間〜2時間である。
前記界面活性剤処理工程では、界面活性剤の濃度は、液体100容量部に対して1〜3質量部(1〜3w/v%)であることが好ましい。また、前記界面活性剤処理工程では、界面活性剤の量は、ユーグレナ属微細藻類の乾燥質量100質量部に対して0.5〜3質量部であることが好ましい。なお、後述する2回目以降の界面活性剤処理工程では、界面活性剤の量は、液体100容量部に対して0.5〜2質量部であってもよい。
前記界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤などが挙げられる。
前記アニオン界面活性剤としては、デオキシコール酸ナトリウムなどのカルボン酸型界面活性剤、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸型界面活性剤、ドデシル硫酸ナトリウムなどの硫酸エステル型界面活性剤、ラウリルリン酸ナトリウムなどのリン酸エステル型界面活性剤などが挙げられる。
前記カチオン界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミンオキシドなどが挙げられる。
前記ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル(製品名 Triton X-100)などが挙げられる。
前記界面活性剤としては、安価であり分散力に優れるという点、pHが低くても分解しにくいという点で、ドデシル硫酸ナトリウムが好ましい。
前記分離工程では、一般的な方法によって、酵素処理工程及び界面活性剤処理工程を経た液体から多糖類を分離する。分離工程では、例えば、重力分離、遠心分離、ろ過によって液体から多糖類を分離する。また、例えば、液体を静置することによって多糖類を沈殿させて多糖類を分離することができる。
前記分離工程では、例えば重力分離によって、固体粒状の多糖類が主に沈殿し、多糖類以外の破壊された細胞構成物が上澄み液に含まれる。また、遠心分離によって、沈殿物の方(濃縮される方)に多糖類が集まり、上澄み液の方(透過液側)に多糖類以外の破壊された細胞構成物が含まれることとなる。また、例えばろ過膜を用いたろ過によって、固体粒状の多糖類がろ過膜を透過せず、多糖類以外の破壊された細胞構成物などを含む液体がろ過膜を透過する。ろ過膜の孔径は、多糖類を通さない大きさであることが好ましい。
前記界面活性剤処理工程と前記分離工程とは、交互に繰り返すことができる。即ち、それぞれの工程を交互に複数回行うことができる。具体的には、界面活性剤処理工程後の液体に対してそのまま分離工程を行い、分離工程によって濃縮された多糖類を含む濃縮液(又は固形物)に所定濃度の界面活性剤を含む水溶液を添加して撹拌することで、再度、界面活性剤処理工程を行う。そして、上記と同様な分離工程を再度行う。このように、界面活性剤処理工程と分離工程とを、例えばそれぞれ2〜5回行う。これにより、より十分に精製された多糖類を得ることができる。
前記界面活性剤処理工程は、複数回行われることが好ましい。1回目の界面活性剤処理工程では、酵素処理を行った液体に界面活性剤を添加する。一方、2回目以降の界面活性剤処理工程では、分離工程を経てDNAなどの細胞構成物が減らされた後に、液体に界面活性剤を添加するため、多糖類に付着するDNAの量が少なく、液体の粘度が高くなりにくい。従って、2回目以降の界面活性剤処理工程では、pH調整を行わなくともよい。
前記洗浄工程では、分離された多糖類を水(純水)で洗浄する。洗浄工程では、例えば、分離された多糖類を40〜50℃の水中で30分間程度撹拌する。撹拌した後、上述した重力分離、遠心分離、ろ過などによって、洗浄した多糖類を分離する。洗浄工程では、上記のような撹拌と分離とを交互に繰り返すことができる。
前記精製方法では、通常、洗浄工程の後に、洗浄された多糖類を乾燥させる乾燥工程を実施する。
本実施形態の多糖類の精製方法は、例えば、ユーグレナ属微細藻類を培養する培養タンクと、培養後の液体を収容する収容タンクと、連続的に遠心分離を行う連続遠心分離機と、多糖類を洗浄するための洗浄タンクとを用いることによって行うことができる。具体的には、培養タンク内でユーグレナ属微細藻類を培養することによって培養工程を行うことができる。また、培養後の液体を収容タンクに収容し、収容タンク内で酵素処理工程及び界面活性剤処理工程を行うことができる。また、連続遠心分離機によって分離工程を行うことができる。また、洗浄タンク及び連続遠心分離機によって洗浄工程を行うことができる。なお、連続遠心分離機に代えて、重力沈降を行う沈殿タンクを用いてもよい。
一方、本実施形態の多糖類の精製方法は、例えば、多機能ろ過乾燥機を用いて行うことができる。多機能ろ過乾燥機は、内部に液体を収容し、液体を撹拌し、液体をろ過できるように構成されている。また、ろ過によって内部に残留した残留物を乾燥するように構成されている。このように構成された多機能ろ過乾燥機に培養後の液体を収容し、撹拌及びろ過などを行うことよって、上記の各工程を行うことができる。
本実施形態の各工程を経て得られたパラミロンなどの多糖類は、食品、医薬品、飼料、又は化成品など様々な用途にて使用され得る。
上記のごとき本実施形態の多糖類の精製方法(多糖類の製造方法)では、酵素処理工程にて、タンパク質分解酵素によって、ユーグレナ属微細藻類の細胞膜を構成する主要成分であるタンパク質を分解することができる。タンパク質が分解されることによって微細藻類の細胞膜が破壊される。一方、多糖類はタンパク質分解酵素によって分解されない。これにより、微細藻類の細胞膜を破壊して、多糖類を取り囲んでいた細胞構成物を多糖類から分離して液体中に分散させることができる。
また、前記酵素処理工程にて、ユーグレナ属微細藻類を構成するタンパク質をpH5以下の液体にて分解させるため、液体のpHは、比較的低く保たれる。タンパク質の分解によって細胞内部から放出されたDNAは、液体の粘度を上昇させ得るが、液体のpHが比較的低い(例えばpH5以下)ことによって、DNAの加水分解が起こり粘度の上昇が抑制される。粘度の上昇が抑えられることによって、微細藻類を構成するタンパク質とタンパク質分解酵素とが効率よく接触でき、DNA及び酸液液体も効率よく接触できる。従って、十分に微細藻類のタンパク質を分解させることができると共にDNAの加水分解も十分に行うことができる。これにより、細胞膜を十分に破壊して、固体粒子状の多糖類を取り囲んでいた細胞構成物を多糖類から分離して液体中に分散させることができ、多糖類を十分に精製することができる。
上記の多糖類の精製方法において、酵素処理工程で前記液体のpHが2以上であることにより、多糖類が加水分解することを抑制することができる。前記液体のpHが4未満であることにより、液体の粘度が上昇することをより十分に抑制することができる。
上記の多糖類の精製方法では、酵素処理工程にて、pH5以下の液体に含まれるユーグレナ属微細藻類に対して酸性プロテアーゼによる酵素処理を施すことにより、至適pHで酸性プロテアーゼによる酵素処理を行うため、微細藻類の細胞膜を構成するタンパク質をより十分に分解でき、微細藻類の細胞膜をより十分に破壊することができる。
上記の多糖類の精製方法では、培養工程によってpHが下がりpH5以下の酸性となった液体を酵素処理工程で用いることが好ましく、培養工程によってpHが2以上4未満に下がった液体を酵素処理工程で用いることがより好ましい。これにより、培養工程を経た液体のpHを5以下の酸性に調整しなくても、酵素処理工程を行うことができる。
上記の多糖類の精製方法では、界面活性剤処理工程によって、細胞膜が破壊された後のユーグレナ属微細藻類の細胞構成物であって多糖類以外の細胞構成物を界面活性剤によって液体中に分散させることができる。また、界面活性剤の分散力によって、多糖類に付着した付着物を多糖類から離すことができる。
上記の多糖類の精製方法では、界面活性剤処理工程によって、ユーグレナ属微細藻類の細胞膜を構成していたタンパク質の分解物(例えば、ペプチド)を液体中に分散させることができる。また、微細藻類の細胞膜を構成していた脂質を液体中に分散させることができる。
上記の多糖類の精製方法では、酸性の液体(pH5以下の液体)を用いて界面活性剤処理工程を行うことによって、ユーグレナ属微細藻類のDNAをより十分に加水分解することができる。また、DNAの分解物を液体中に分散させることができる。
上記の多糖類の精製方法では、界面活性剤処理工程によって、固体粒状の多糖類も、多糖類以外の細胞構成物も、いったん液体中に分散される。しかしながら、固体粒状の多糖類は、液体中で沈殿し得る程度に比較的大きいことから、分離工程によって、液体から分離することができる。
上記の多糖類の精製方法では、アセトン、メタノール、エタノール、又はn−ヘキサンなどの引火性の有機溶媒を使用しなくても、多糖類を十分に精製することができる。引火性の有機溶媒を使用しない場合、多糖類を精製するための設備が防爆設備である必要がなく、設備に要するコストを抑えることができる。また、有機溶媒を含む液体を排水処理しなくてもよいため、排水設備に要するコストを抑えることができる。
従来の精製方法では、有機溶媒として特にアセトンが使用される。これに対して、上記の多糖類の精製方法では、アセトンを使用しなくとも多糖類を十分に精製することが可能である。発がん性を有するともいわれているアセトンを使用しない場合、上記の防爆設備や排水処理コストを低減できることに加え、作業者の発がん性などのリスクを低減することができる。
上記の実施形態の多糖類の精製方法(多糖類の製造方法)は、上記例示の通りであるが、本発明は、上記例示の多糖類の精製方法に限定されるものではない。
また、一般の多糖類の精製方法において用いられる種々の態様を、本発明の効果を損ねない範囲において、採用することができる。
上記の実施形態では、培養工程によって培養されたユーグレナ属微細藻類に対して酵素処理工程を行う多糖類の精製方法について詳しく説明したが、本発明では、酵素処理工程の前に微細藻類の細胞膜を破壊させる工程を行ってもよい。
例えば、培養されたユーグレナ属微細藻類を含む液体と、アセトンやn−ヘキサンなどの有機溶媒とを混合することによって、生きたユーグレナ属微細藻類の脂質を細胞内部から溶出させて微細藻類の細胞膜を破壊させる脱脂処理工程を行った後に、酵素処理工程を行ってもよい。また、培養された生きた微細藻類を含む液体と、上記のごとき界面活性剤とを混合することにより、微細藻類のタンパク質及び脂質を細胞内部から取り除いて微細藻類の細胞膜を破壊させる工程を行った後に、酵素処理工程を行ってもよい。
また、上記の実施形態では、洗浄工程の後に多糖類を乾燥させる乾燥工程を実施する精製方法について説明したが、本発明では、洗浄工程の後、有機溶媒によって多糖類を脱脂する工程を行ってもよい。
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
下記の条件下にて微細藻類を培養した後の多糖類(パラミロン)を以下のようにして精製した。
[ユーグレナ属微細藻類]: Euglena gracilis EOD-1株
(上述したように、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許生物寄託センターに
寄託済み)
[培養工程]
「培養容器」:500mL坂口フラスコ
「振とう培養条件」:125rpm(振とうにより液体中に空気を供給する)
「培養温度」:28℃
「培養開始時の液体のpH」:4.7(塩酸によって調整)
「培養のための液体量」:約200mL/1フラスコ
「培養のための液体の組成」:表1の通り
「光照射条件」:24時間暗所
「微細藻類の初期重量」:0.78g/L(乾燥重量)
「培養期間」:2日間
培養工程後に、5フラスコ分の液体を集め、集めた液体を遠心管内で遠心分離(500×g、4分間、室温)した。遠心管内の上澄み液をいったん取り除いて回収した。回収した上澄み液を遠心管に入れて遠心管内の沈殿物(微細藻類)を分散させ、100mL容積のメスシリンダーに全て移した。さらに、メスシリンダーに、回収した上澄み液を加えて、90mLにメスアップした。
[酵素処理工程]
90mLにメスアップした液体を200mLビーカーに移し、撹拌しながら塩酸水溶液を添加することによって液体のpHを3に調整した。タンパク質分解酵素(酸性プロテアーゼ 製品名「プロテアーゼYP−SS」ヤクルト薬品工業社製 至適pH2.5〜3.0)を5g/L濃度となるように液体に添加した。液体を撹拌しつつ50℃にて2時間、酵素処理を施した。
[界面活性剤処理工程]
ドデシル硫酸ナトリウムの濃度が3.0質量/容量(w/v)%となるように、酵素処理工程を経た液体に、ドデシル硫酸ナトリウムの水溶液を加えた。ドデシル硫酸ナトリウムを含む液体を撹拌しつつ、塩酸水溶液の添加によって液体のpHを3に調整した。さらに、液体をプロペラ撹拌機(回転速度200rpm)で60℃にて30分間撹拌した。
[分離工程]
遠心分離(1000×g、2分間、室温)によってパラミロンを沈殿させ、界面活性剤処理工程を経た液体から、パラミロンを分離した。
ドデシル硫酸ナトリウムの濃度が1.0質量/容量%となるように変更した点、pHを調整しなかった点以外は、同様にしてさらに界面活性剤処理工程を行った。その後、上記と同様にして分離工程を行った。このようにして、界面活性剤処理工程及び分離工程をそれぞれ3回ずつ行った。
[洗浄工程]
遠心分離によって沈殿したパラミロンを純水によって懸濁させ、40℃にて10分間静置した。次に、遠心分離(1000×g、2分間、室温)によってパラミロンを沈殿させた。このような操作を合計3回行った。
その後、50℃にてパラミロンを乾燥させた。
(実施例2)
実施例1と同様にして洗浄工程まで行い、パラミロンを乾燥させる前に、アセトンによってパラミロンを懸濁させた。懸濁液が入った容器を振とうさせることによって懸濁液を10分間撹拌した。遠心分離(1000×g、2分間、4℃)によってパラミロンを沈殿させ、上澄み液を除去した。このような操作を合計2回行った。その後、パラミロンを50℃にて乾燥させた。
(実施例3)
界面活性剤処理工程及び分離工程をそれぞれ5回ずつ行った点以外は、実施例1と同様である。
(実施例4)
界面活性剤処理工程及び分離工程をそれぞれ5回ずつ行った点、実施例2と同様にしてアセトンによるパラミロンの洗浄を行った点以外は、実施例1と同様である。
(比較例1)
従前の方法(Plant Physiol.(1982)70,760-764に記載の方法)によってパラミロンを精製した。具体的には、濃縮したユーグレナを80%濃度のアセトンに5分間浸漬させた後、遠心分離機を用いて固液分離した。その後、固体分を再度80%濃度のアセトンに浸漬し、固液分離する工程を3回繰り返した。続いて、タンパク質を除去するために、1%濃度の100℃のドデシル硫酸ナトリウム水溶液に固体分を5分間浸漬させたものを遠心分離機を用いて固液分離した。同様の操作を2回繰り返した後、純水で洗浄したパラミロンを得た。
(比較例2)
培養後のpHが5.6であった培養後の液体を用いて、pH調整及び酵素処理を行わず、液体に界面活性剤を添加することにより、パラミロンの精製を行った。その結果、界面活性剤によりユーグレナの細胞膜が壊れ、DNAが細胞内部から放出され、液体の粘度が高くなった。粘度が高くなった液体に酸を添加してDNAの加水分解を試みたが、粘度が高すぎて撹拌がうまく出来なかった。また、液体のpH調整もできなかった。詳しくは、pH調整を行うべく酸の添加を続けたところ、所定量添加した時点で急激に液体の粘度が低下した。急激に粘度が低下した液体の撹拌は可能であったが、液体のpHは1以下に低下した。
このような現象は、液体の粘度が高すぎることで、撹拌されない部分と撹拌される部分とが液体に混在し、pHの偏りが起こったことによると推察される。そして、単に撹拌出来ないだけでなく、pHも適切に測定できないため、酸を継続して添加すると、ある時点でDNAが加水分解されて、液体の粘度が急激に低下したと推測される。このように、局所的にpHが1以下の部分が存在するため、この部分で多糖類(パラミロン)が加水分解されたおそれがある。パラミロンが加水分解された可能性があったため、操作を中止した。なお、本比較例では、界面活性剤によって細胞膜を破壊したが、液体のpHが5以下の酸性でなければ、タンパク質分解酵素を用いて酵素処理を行っても、DNAによる液体の粘度上昇を抑制することが出来ない。
なお、酵素処理前のユーグレナ属微細藻類のバイオマス濃度は、いずれの実施例、比較例でも160g(乾燥重量)/L程度であった。
<パラミロンの精製度の評価>
各実施例及び比較例で得られたパラミロン1gと1Nの水酸化ナトリウム20mlとを混合した混合液を、2時間室温で振とうさせて撹拌し、パラミロンを溶解させた溶液を調製した。この溶液の吸光度を吸光光度計によって測定し、精製度を評価した。
なお、吸光光度計で波長をそれぞれOD260,OD280,OD420,OD660に変化させることにより、溶液中のDNA濃度、タンパク質濃度、着色度、濁度をそれぞれ測定することができる。具体的には、OD260=1.0の時にDNA濃度=50mg/Lとしてパラミロン溶液におけるDNA濃度およびパラミロン1gあたりのDNA量を算出できる。また、WarburgとChristianの式:タンパク質濃度[g-protein/L]=1.55×OD280−0.76×OD260 を用いて、パラミロン溶液におけるタンパク質濃度およびパラミロン1gあたりのタンパク質量を算出できる。
上記の評価結果を図1〜図3に示す。図1は、各パラミロン溶液(実施例1〜3、比較例1)の吸光度測定において各波長での吸光度を表す。図2は、各パラミロン溶液(実施例1〜4、比較例1)の420nm及び660nmの各波長での吸光度を表す。図3は、各パラミロン溶液(実施例1〜4、比較例1)の260nm及び280nmの各波長での吸光度を表す。表2は、260nm及び280nmの各波長での吸光度から算出した、パラミロン中のDNA及びタンパク質量を示す。評価結果から把握されるように、実施例の方法によって、パラミロンを十分に精製することができる。
本発明の多糖類の精製方法(多糖類の製造方法)は、例えば、ユーグレナ属微細藻類が作り出した多糖類(パラミロン)を、健康食品、医薬品、飼料、又は化成品等の用途で利用するために、好適に使用できる。

Claims (5)

  1. ユーグレナ属微細藻類に含まれる多糖類と該多糖類以外の細胞構成物とを分離して多糖類を精製する精製工程を備え、
    前記精製工程は、pH5以下の液体に含まれる前記ユーグレナ属微細藻類の細胞膜をタンパク質分解酵素で破壊する酵素処理工程を有する、多糖類の精製方法。
  2. 前記酵素処理工程では、前記液体のpHが2以上4未満である、請求項1記載の多糖類の精製方法。
  3. 前記タンパク質分解酵素が酸性プロテアーゼである、請求項1又は2記載の多糖類の精製方法。
  4. 前記精製工程は、前記酵素処理工程後に、液体から前記多糖類を分離する分離工程をさらに有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の多糖類の精製方法。
  5. 前記精製工程は、前記酵素処理工程後に、前記多糖類に付着している付着物を界面活性剤によって多糖類から分離する界面活性剤処理工程をさらに有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の多糖類の精製方法。
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