JP3150862B2 - n−ヘキサン抽出物含有廃水の処理方法 - Google Patents

n−ヘキサン抽出物含有廃水の処理方法

Info

Publication number
JP3150862B2
JP3150862B2 JP02456595A JP2456595A JP3150862B2 JP 3150862 B2 JP3150862 B2 JP 3150862B2 JP 02456595 A JP02456595 A JP 02456595A JP 2456595 A JP2456595 A JP 2456595A JP 3150862 B2 JP3150862 B2 JP 3150862B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
pseudomonas
strain
wastewater
culture
hexane extract
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP02456595A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH08197086A (ja
Inventor
昭 渡辺
智子 大野
信和 木幡
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Ebara Corp
Original Assignee
Ebara Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Ebara Corp filed Critical Ebara Corp
Priority to JP02456595A priority Critical patent/JP3150862B2/ja
Publication of JPH08197086A publication Critical patent/JPH08197086A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3150862B2 publication Critical patent/JP3150862B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
  • Purification Treatments By Anaerobic Or Anaerobic And Aerobic Bacteria Or Animals (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はシュードモナス(Pseudom
onas)属に属し、各種のn−へキサン抽出物に対して高
い分解能を有する新規なシュードモナス エスピー(Pse
udomonas sp.) ER−B1菌株(FERM P−146
99 以下、本明細書中では単に、ER−B1株とも称
する)を用いて、廃水に含まれるn−へキサン抽出物を
生物学的に分解除去する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】廃水中のn−へキサン抽出物は、その性
状から、これまでは自然分離法や加圧浮上分離法、なら
びに各種の油吸着材を利用した吸着法等、物理化学的方
法により除去されてきた。この中で、凝集剤を併用した
加圧浮上分離法は、n−へキサン抽出物の除去に効果的
であり、これまで多くの処理施設において適用されてい
る。しかしながら、凝集剤を併用した加圧浮上分離法
は、汚泥発生量が多く、処分地の不足が問題となってい
る今日、該方法を敬遠する事業所が増えてきている。ま
た、n−へキサン抽出物を含む分離汚泥の臭気も問題と
なっている。グリーストラップ等の他の物理化学的方法
では、乳化したn−へキサン抽出物の多い廃水の場合、
放流基準値まで安定に除去することが困難な場合が多
い。
【0003】n−へキサン抽出物質とは、n−へキサン
によって抽出され、80±5℃、30分間の乾燥で揮散
しないものをいう。それらの中には、炭化水素やその誘
導体、各種動植物性油脂や鉱物油、ステロール類等が含
まれる。その中で、厨房廃水等に含まれる動植物性油脂
の場合、活性汚泥法等の生物学的処理方法により、ある
程度までは分解・除去できるが、油脂分の負荷量が増え
た場合、油脂が汚泥フロックや生物膜表面に付着して、
酸素や基質の透過性に悪影響を及ぼし、徐々に処理性が
悪化して、最終的には処理不能に陥ることもある。この
ような方法とは別に、特開平5−146798号公報に
は、リパーゼを使って廃水中の油脂分を予め脂肪酸とグ
リセリンに加水分解し、微生物が資化しやすい形にした
後、後段の活性汚泥により処理する方法が提案されてい
る。しかし、この方法では、加水分解物である脂肪酸の
不溶化を防止するためにアルカリ剤を添加して、pHを
6.5以上に維持する必要があり、また、主に菌体外酵
素として得られるリパーゼは蛋白質を主成分とする有機
物であることから、微生物分解やSS分への吸着等によ
り、リパーゼ処理の効果が低下することが考えられる。
さらに、この方法の対象となるのは、リパーゼの基質と
なる動植物性油脂を含む廃水に特定されるため、鉱物油
等の他のn−へキサン抽出物を含む廃水には、適用出来
ない。
【0004】また、特開平5−346036号公報、特
開平5−245489号公報、特開平4−179745
号公報および特開平3−254893号公報には、油脂
類または油分を資化・分解する微生物を使用することが
記載されている。しかし、上記の文献には、使用する微
生物についての詳細な開示はほとんどされていない。特
開平3−270781号公報および特開平3−2751
95号公報には、油成分を資化・分解する微生物が具体
的にその種名を挙げて例示されている。しかし、これら
の文献に例示された微生物の油成分資化・分解能力につ
いては詳細に開示されていない。特開平3−94898
号公報には好気性脂質資化菌を使用すること及びそれら
の脂質資化・分解能力が開示されている。しかし、この
文献に記載の好気性脂質資化菌は、鉱物油までも資化・
分解することはできなかった。
【0005】勿論、動植物性脂質だけでなく鉱物油を資
化できる微生物は存在する。しかしながら従来は両種油
分は通常別々のものとして処理されている。動植物性油
脂と鉱物油とが混在する可能性がある廃水を一括して浄
化するには、例えば動植物性油脂を分解するリパーゼを
分泌する菌および鉱物油を摂食する菌をそれぞれ又は混
合して作用させることになるが、それぞれ異なった菌を
混在させる場合には、至適成育条件などの違いや成育の
競合により、n−へキサン抽出物が好適に分解されない
という問題があった。また、別々に作用させることは施
設的にも問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記
の従来技術の有する課題を解決するためのものであり、
新規のn−へキサン抽出物分解菌を使って、これまで困
難であった(例えば、動植物性油脂と鉱物油とが混在す
る場合を含む)各種n−へキサン抽出物の除去を生物学
的に効率よく分解する方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明者らは、n−へキサン抽出物分解能の高い微
生物を自然界から分離することを試み、土壌や活性汚泥
等を分離源としてスクリーニングを行った結果、活性汚
泥からn−へキサン抽出物分解能の高いシュードモナス
エスピー(Pseudomonas sp.)ER−B1菌株を分離
し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、シュ
ードモナス(Pseudomonas)属に属し、n−へキサン抽出
物分解能を有するシュードモナス エスピー(Pseudomon
as sp.)ER−B1菌株を用いて、廃水中に含まれる各
種n−へキサン抽出物を分解処理することを特徴とする
n−へキサン抽出物含有廃水の処理方法である。この方
法の態様としては、活性汚泥または各種生物膜中にER
−B1菌株を成育させてn−へキサン抽出物含有廃水の
処理を行うことが試みられる。
【0008】また、前記ER−B1菌株の培養物を生物
学的廃水処理法に組み込む場合は、乾燥物相当重量が1
00重量部の汚泥に対して、0.01〜10重量部添加
することをが好ましい。該菌体の組み込みは培養液の注
入・散布や粉体製剤としての添加・その他等適宜の方法
による。又、組み込みのタイミングは連続的でも間欠的
でも運転・負荷等の状況に合うように行うことができ
る。乾燥物相当重量とは、通常スラリー状にある汚泥を
乾燥した場合の重量に相当するスラリー状汚泥の量を示
すものであり、汚泥乾重とも称する。0.01重量部未
満では十分な量のER−B1菌株の定着が観られず、n
−へキサン抽出物の分解が好適に行われない。また10
重量部を越えるとコストが高くなり、例えば培養液等に
由来するBOD値も上がり廃水処理装置に負担がかかる
ようになることもあり、好ましくない。なお、添加する
ER−B1菌株培養物は、通常、菌体濃度0.01〜1
00×1010個/mlで定常期の培養液を用いる。
【0009】以下に、シュードモナス エスピー(Pseud
omonas sp.)ER−B1菌株の(1)分離方法、(2)
菌学的性質、(3)培養方法、(4)保存方法、ならび
に(5)同菌株が生産するリパーゼの性状と(6)添加
方法について説明する。なお、菌学的性質の試験および
分類方法は、下記の文献に基づいて行った。藪内英子
他;菜根出版「新しい分類学に伴走する細菌同定法」
(1987)、江崎孝行他;日本細菌学雑誌、45,8
51(1990)、バージェイズ マニュアル オブ
システマティク バクテリオロジー(Bergey's Manual
of Systematic Bacterio1ogy)(1984)およびバー
ジェイズ マニュアル オブ デターミネイティブ バ
クテリオロジー(Bergey's Manual of Determinative B
acterio1ogy)(1994)。
【0010】(1)分離方法 ラード1%、酵母エキス0.1%、リン酸アンモニウム
0.1%、塩化カリウム0.02%、硫酸マグネシウム
0.02%、炭酸カルシウム0.5%を含む培地(pH
7.6)を121℃で15分間オートクレーブで滅菌し
た後、滅菌水で適当に希釈した土壌(7サンプル)およ
び活性汚泥(6サンプル)を添加して、28℃の培養温
度で3日間振とうした。その後、培養液1%を前記培地
に植え継ぐ操作を2度繰り返した。一方、前記培地に寒
天1.5%を加え、ホモジナイザーによりラードを乳化
分散させた寒天培地を用意して、先の培養液の希釈液
0.2mlを塗抹して、クリアーゾーンを形成する菌を
18株分離した。次に前記の培地において、ラードの添
加量を0.1%とした液体培地と、ラードの代わりに鉱
物油を主体としたエマルジョンタイプの水溶性切削油を
0.1%添加した液体培地をそれぞれ用意し、滅菌水に
濁度を一定(OD660 1.0)に調製した先の分離菌の
懸濁液を5%添加して、24時間後のラードと切削油の
減少率をそれぞれ調べた。その結果、表1に示すよう
に、活性汚泥から分離したER−B1株が、ラードおよ
び切削油ともに最も高い分解率を示した。
【0011】
【表1】
【0012】(2)菌学的性状 1)形態 (a) 細胞の形および大きさ:長さ約2ミクロン、幅約1
ミクロンの桿菌、 (b) 運動性:あり、(c) 鞭毛:極単毛、(d) 胞子:な
し、 (e) グラム染色性:陰性 2)生育状態 (a) 肉汁寒天平板培養:円形、表面は滑らかで光沢あ
り。特徴的集落色素を生成せず。 (b) 肉汁寒天斜面培養:糸状、表面は滑らかで光沢あ
り。特徴的集落色素を生成せず。 (c) 肉汁液体培養:生育普通、懸濁、色素生成せず。 (d) 肉汁ゼラチン穿刺培養:ゼラチンを液化する。
【0013】3)生理的性質 (a) 酸素に対する態度:好気性、(b) オキシダーゼ:陽
性、 (c) カタラーゼ:陽性、(d) OFテスト:好気的に酸を
生成、 (e) PHBの蓄積:陰性、(f) インドール生産:陰性、 (g) エスクリン分解:陰性、(h) 水溶性色素の生成:陽
性、 (i) 蛍光色素の生成:陽性、(j) アルギニンジヒドラー
ゼ:陽性、 (k) 41℃での生育:陽性、(l) シュークロースからの
レバン生成:陰性、 (m) 脱窒素反応:陰性、(n) デンプン分解:陰性、 (o) 資化性:グルコース、ゲラニオール、L−バリン、
β−アラニン、DL−アルギニン、クエン酸は資化する
が、トレハロース、2−ケトグルコン酸、meso−イノシ
トールは資化せず。 4)その他の性質 (a) キノン系:Q−9、(b) GC含量:66(モル%;
HPLC法) (c) アシルアミダーゼ:陰性
【0014】以上の菌学的性質と前記の文献の分類方法
に基づいて検索した結果、本菌株はグラム陰性桿菌で、
極鞭毛を有し、キノン系がQ−9であることからシュー
ドモナス(Pseudomonas)に属する細菌と同定された。さ
らに、鞭毛が極単毛であり、蛍光色素を生産すること、
また41℃で生育し、GC含量が高い等、シュードモナ
ス エアロジノーサ(Pseudomonas aeruginosa)に類似し
た性状を示した。しかし、シュードモナス エアロジノ
ーサ(Pseudomonas aeruginosa)の大きな特徴である脱窒
素能やアシルアミダーゼ活性が本菌株の場合は陰性であ
ること、また、2−ケトグルコン酸を資化できないな
ど、シュードモナス エアロジノーサ(Pseudomonas aer
uginosa)とは異なる性状を有していることなどから、他
の菌種であることも考えられた。そこで、上記の生理形
態学的特質に類似した4種類のシュードモナス(Pseudom
onas)属細菌(シュードモナス プチダ(Pseudomonas pu
tida)、シュードモナス メンドシーナ(Pseudomonas me
ndocina) 、シュードモナスシュードアルカリゲネス
サブスピーシス シュードアルカリゲネス(Pseudomonas
pseudoalcaligenes subsp. pseudoalcaligenes)、およ
びシュードモナスエアロジノーサ(Pseudomonas aerugin
osa))の基準株とシュードモナス エスピー(Pseudomon
as sp.)ER−B1株とのDNA相同性試験を行った。
その結果、表2に示すように、いずれの菌種とも高い相
同性は得られなかった。
【0015】
【表2】
【0016】以上の知見より、形態や生理的特質ではシ
ュードモナス エアロジノーサ(Pseudomonas aeruginos
a)に類縁の菌株と同定されるが、遺伝学的な性質は全く
異なることから、本菌株はシュードモナス(Pseudomona
s)に属する新菌株であると判断し、シュードモナス エ
スピー(Pseudomonas sp.)ER−B1株と命名した。本
菌株は、平成6年12月12日に通商産業省工業技術院
生命工学工業技術研究所に寄託した。微生物受託番号
は、FERM P−14699である。
【0017】(3)培養方法 本発明のシュードモナス エスピー(Pseudomonas sp.)
ER−B1株の培養は、炭素源、窒素源、リン酸等の各
種無機塩やビタミン、アミノ酸等の微量栄養源を調製し
た通常の培地で培養することができる。好ましくは、炭
素源および窒素源として、ペプトンや肉エキス、トリプ
トン等、無機塩としては硫酸アンモニウム、リン酸第二
カリウム、硫酸マグネシウム等を用いて、培地pH5〜
10、好ましくはpH6〜8、培養温度15〜45℃、
好ましくは25〜30℃の条件下で好気的培養するのが
望ましい。また、同菌株は、細胞外にリパーゼを生産す
るが、その場合、炭素源および窒素源として脱脂大豆粉
を用いるとリパーゼ活性の高い培養物が得られ、さらに
レシチンを添加することでリパーゼ活性はさらに高くな
る。なお、肉汁培地では、菌体の生育性は変わらない
が、リパーゼはほとんど生産されない。また、培養温度
は30℃以下で行うことが好ましく、30℃以上ではリ
パーゼの生産性は低下し、40℃以上では生産されな
い。培養時間は24〜48時間が適当であり、その間、
培養液pHは8.5程度に上昇するが、特にpHコント
ロールを行う必要はない。また、通気培養を行う場合
は、発泡を抑制するために消泡剤を添加する必要がある
が、シリコン系の消泡剤が有効であり、0.5%程度添
加することでリパーゼ活性が上昇する。
【0018】(4)保存方法 培養した菌体は、真空乾燥法や凍結真空乾燥法等の各種
の乾燥法により保存可能であり、培養上澄液を除いた
後、生理食塩水やリン酸緩衝液等の有機物を含まない溶
液に菌体を懸濁して、冷蔵庫内で長期間液体保存するこ
ともできる。なお、凍結法で保存することが最も簡便で
あり、その場合、−20℃で保存する場合は、グリセロ
ール等の凍結保護剤を必要とするが、−60℃以下では
保護剤を添加することなく、培養液のまま凍結すること
で長期間、安定に保存できる。
【0019】(5)リパーゼの性状 リパーゼ活性の測定方法は、山田−町田法(日本農芸化
学会誌、第36巻、第860〜864頁、1962年)
を用い、オリーブ油とポリビニルアルコールのエマルジ
ョンを基質として、37℃の反応温度において1分間に
1マイクロモルの脂肪酸を遊離せしめる酵素量を1単位
(ユニット:Uと略する)とした。試験に用いたシュー
ドモナス エスピー(Pseudomonas sp.)ER−B1株の
リパーゼは、表3の培地を用いて、500ml容振とう
フラスコ(培地量100ml)により、48時間振とう
培養した培養液を遠心分離により菌体を除去した上澄液
であり、そのリパーゼ活性は42.4U/ml(培養液
の活性は70.5U/ml)であった。
【0020】
【表3】
【0021】表4に、シュードモナス エスピー(Pseud
omonas sp.)ER−B1株の生産するリパーゼの性状を
示す。
【0022】
【表4】
【0023】(6)添加方法 上記の方法によって得られたシュードモナス エスピー
(Pseudomonas sp.)ER−B1株培養液を含油廃水処理
に利用する場合の添加方法は、連続注入法または間欠注
入法のいずれでも良い。廃水の種類や運転条件等の影響
により、生物処理槽でシュードモナス エスピー(Pseud
omonas sp.)ER−B1株の定着性が悪い場合は、連続
的に注入する方が好ましく、別途、濃厚な培養物を添加
することもできる。連続的に注入する場合の注入量は、
廃水の種類やn−へキサン抽出物濃度、また活性汚泥の
凝集・沈降性、生物膜の状態、ならびに原生動物による
補食の程度等によって異なるが、通常は生物槽内の汚泥
乾重当たり、1日に0.01〜1%(w/w)、好まし
くは0.05%以上添加することが、処理水中のn−へ
キサン抽出物濃度を低下させる上でも、また、シュード
モナス エスピー(Pseudomonas sp.)ER−B1株が他
の微生物と生態学的に競合し、生物処理系内に一定量存
在するためにも必要な添加量となる。一方、間欠的に注
入する場合は、第1回目の注入時に汚泥乾重当たり、
0.1〜10%(w/w)、好ましくは1%以上添加
し、その後は、処理水質の良否によって随時添加しても
良いが、3日から1ケ月に1回、好ましくは1週間に1
回、汚泥乾重当たり、0.1%(w/w)添加するのが
良い。なお、注入法にかかわらず、活性汚泥の凝集性が
良い状態、あるいは各種担体表面に生物膜が形成される
時期にシュードモナス エスピー(Pseudomonas sp.)E
R−B1株の培養液を添加すると、その定着性が良く、
その後の処理が良好に行われるとともに、培養液の注入
量も減らすことができる。なお、生物処理槽から流出し
たER−B1株を含む汚泥を返送汚泥として再度生物処
理槽に添加する等の公知技術も、併用して行うことがで
きる。
【0024】なお、活性汚泥あるいは生物膜に定着した
シュードモナス エスピー(Pseudomonas sp.)ER−B
1株の菌数を計数する場合は、抗生物質であるアンピシ
リン50mg/リットルを添加したキングB培地(プロ
テオースペプトン2%、グリセロール1%、リン酸第二
カリウム0.15%、硫酸マグネシウム0.15%、寒
天1.5%、pH7.2)を用いて、41℃の培養温度
で24時間培養することで、選択的に同菌株のコロニー
を計数することができる。
【0025】
【実施例】次に本発明の実施例について示す。 (実施例1)200リットル容発酵槽に、表3の培地を
120リットル仕込み、121℃、30分間殺菌した。
培地が十分に冷えた後、予め前培養しておいたシュード
モナス エスピー(Pseudomonas sp.)ER−B1株の培
養液を接種し、25℃、撹拌翼回転数200rpm、通
気量120リットル/分の好気的条件下で30時間培養
した。このようにして得た培養液を限外ろ過膜により2
倍濃縮した後、−80℃で凍結保存した。得られた培養
濃縮液のリパーゼ活性は、120U/mlであり、生菌
数は1.5×1011個/mlであった。また、同培養液
の固形物濃度は、1.6%であった。この凍結培養液の
残存リパーゼ活性と生菌数の経日変化を調べた結果、生
菌数は7日後に6.6×1010個/mlに低下したが、
その後菌数の低下は認められなかった(180日目まで
測定)。一方、リパーゼ活性は、凍結前の活性を維持
し、酵素活性の低下は全く認められなかった。
【0026】(実施例2)肉エキス40mg/リット
ル、ペプトン40mg/リットル、炭酸水素ナトリウム
250mg/リットル、リン酸第一カリウム10mg/
リットル、硫酸マグネシウム20mg/リットル、pH
7.0に調製した人工廃水100mlに、オリーブ油、
大豆油、ラード、鉱物油を主体としたエマルジョンタイ
プの水溶性切削油(以下、単に切削油ともいう)、軽
油、A重油をそれぞれ1,000mg/リットルの濃度
になるように添加して、シュードモナス エスピー(Pse
udomonassp.)ER−B1株培養液による分解性を調べ
た。反応温度25℃、反応時間12時間、培養液固形物
濃度160mg/リットル(濃縮培養液を1%(v/
v)添加)の条件下で行った。反応容器は、500ml
容振とうフラスコを用いた。また、シュードモナス エ
スピー(Pseudomonas sp.)ER−B1株培養液は、実施
例1で調製した凍結培養液を30℃の水浴中で解凍して
使用した。実験結果は、表5に示す通りであり、動植物
油の場合、70〜90%、鉱物油の場合は50〜70%
の分解率であった。
【0027】
【表5】
【0028】(実施例3)オリーブ油の添加濃度を変え
た人工廃水(実施例2と同じ)に、解凍したシュードモ
ナス エスピー(Pseudomonas sp.)ER−B1株培養液
を添加して、オリーブ油の分解性を調べた。実験条件と
方法は実施例2に準じた。実験結果を表6に示す。初期
オリーブ油濃度400mg/リットル以下の場合、その
除去率は90%以上であり、初期オリーブ油濃度1,6
00mg/リットルの場合でも68%の除去率であっ
た。
【0029】
【表6】
【0030】(実施例4)シュードモナス エスピー(P
seudomonas sp.)ER−B1株の解凍培養液を、n−へ
キサン抽出物質を約150mg/リットル含む食堂廃水
に添加して、その効果を活性汚泥と比較した。500m
l容振とうフラスコに、下水処理場の濃縮汚泥(MLS
S7,800mg/リットル)25mlと食堂廃水75
mlを添加した。同様に調製したフラスコに、解凍培養
液をそれぞれ汚泥乾重当たり0.01%、0.1%、
1.0%添加して、25℃の温度条件下で12時間振と
うした。実験結果を表7に示す。シュードモナス エス
ピー(Pseudomonas sp.)ER−B1株培養液を添加する
ことで、n−へキサン抽出物質の除去率が上がった。
【0031】
【表7】
【0032】(実施例5)実施例4の食堂廃水に、実施
例2で使用した切削油を最終濃度50mg/リットルに
なるように添加して、シュドモナス エスピー(Pseudom
onas sp.)ER−B1株の培養液を加えて、その効果を
活性汚泥と比較した。実験方法と条件は、実施例4と同
様であり、活性汚泥と廃水を加えた500ml容振とう
フラスコに、培養液を汚泥乾重当たり0.01%、0.
1%、1.0%それぞれ添加した。実験結果を表8に示
す。シュードモナス エスピー(Pseudomonas sp.)ER
−B1株培養液を添加することで、n−へキサン抽出物
質の除去率が上がった。
【0033】
【表8】
【0034】(実施例6)曝気槽と沈殿池で構成された
活性汚泥処理実験装置を2系列設けて、実施例1で調製
したシュードモナス エスピー(Pseudomonas sp.)ER
−B1株の解凍培養液を添加した場合の、n−へキサン
抽出物の除去性と同菌株の定着性を調べた。2系列の実
験系は、RUN1が培養液を添加しない対照区であり、
RUN2は培養液を汚泥乾重当たり1.0%(w/w)
添加した実験区である。活性汚泥濃度は2,000mg
/リットルに調整し、廃水は実施例4で使用した食堂廃
水を用いた。曝気槽は有効容積10リットルのものを用
い、食堂廃水は、30リットル/日の流量で連続通水し
た。実験結果を表9に示す。培養液を添加したRUN2
は、RUN1(対照区)に比べて処理水中のn−へキサ
ン抽出物濃度が低く、アンピシリンを添加したキングB
培地を用いて、シュードモナス エスピー(Pseudomonas
sp.)ER−B1株の生菌数を計数した結果、培養液添
加28日後においても2.2×1010個/mlの菌数が
維持されていた。
【0035】
【表9】
【0036】(実施例7)10mm角に成形したポリエ
ーテル系スポンジを反応槽容積当たり20%(v/v)
充填した処理装置を3系列設けて、実施例6と同様にシ
ュードモナス エスピー(Pseudomonas sp.)ER−B1
株のn−へキサン抽出物の除去性と同菌株の定着性を調
べた。3系列の実験系は、RUN1が培養液を添加しな
い対照区であり、RUN2は培養液をスポンジに付着し
た汚泥乾重当たり0.1%(w/w)添加した実験区で
あり、RUN3は、1.0%(w/w)添加した実験区
である。スポンジに付着した活性汚泥濃度は6,800
mg/リットル−スポンジ(スポンジ体積1リットル当
たり)であり、廃水は実施例4で使用した食堂廃水を用
いた。曝気槽は有効容積20リットルのものを用い、食
堂廃水は、60リットル/日の流量で連続通水した。実
験結果を表10に示す。培養液を添加したRUN2、3
は、RUN1(対照区)に比べて処理水中のn−へキサ
ン抽出物濃度が低かったが、RUN2は、培養液添加3
日後にはn−へキサン抽出物の除去率が低下した。それ
に対して、RUN3は、培養液添加後はRUN1に比べ
て処理水中のn−へキサン抽出物濃度が低く、安定に処
理された。また、アンピシリンを添加したキングB培地
を用いて、シュードモナス エスピー(Pseudomonas s
p.)ER−B1株の生菌数を計数した結果、RUN2で
はn−へキサン抽出物の除去率との相関が認められ、実
験開始3日後から菌数が減少した。それに対して、RU
N3では、実験期間中、1010個/リットル−スポンジ
以上の菌数が保持されていた。
【0037】
【表10】
【0038】
【発明の効果】以上の通り、本発明によれば、n−へキ
サン抽出物含有廃水を物理化学的な方法により油水分離
することなく、ER−B1株の生物処理により廃水中の
n−へキサン抽出物を効率よく分解・除去することがで
きる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C12R 1:38) (72)発明者 木幡 信和 神奈川県藤沢市本藤沢4丁目2番1号 株式会社荏原総合研究所内 (56)参考文献 特開 平7−8270(JP,A) 特開 平5−276933(JP,A) 特開 昭52−120181(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C02F 3/34 C12N 1/20

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 シュードモナス(Pseudomonas)属に属
    し、n−へキサン抽出物分解能を有するシュードモナス
    エスピー(Pseudomonas sp.)ER−B1菌株を用い
    て、廃水中に含まれる各種n−へキサン抽出物を分解処
    理することを特徴とするn−へキサン抽出物含有廃水の
    処理方法。
  2. 【請求項2】 活性汚泥を用いる廃水の処理方法におい
    て、該活性汚泥を構成する微生物群にシュードモナス
    エスピー(Pseudomonas sp.)ER−B1菌株の培養物を
    添加することを特徴とする請求項1記載のn−へキサン
    抽出物含有廃水の処理方法。
  3. 【請求項3】 生物膜を用いる廃水の処理方法におい
    て、該生物膜を構成する微生物群に、シュードモナス
    エスピー(Pseudomonas sp.)ER−B1菌株の培養物を
    添加することを特徴とする請求項1記載のn−へキサン
    抽出物含有廃水の処理方法。
  4. 【請求項4】 乾燥物相当重量が100重量部の前記微
    生物群に対して、シュードモナス エスピー(Pseudomon
    as sp.)ER−B1菌株の培養物を0.01〜10重量
    部添加することを特徴とする請求項2又は3記載のn−
    へキサン抽出物含有廃水の処理方法。
JP02456595A 1995-01-20 1995-01-20 n−ヘキサン抽出物含有廃水の処理方法 Expired - Fee Related JP3150862B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP02456595A JP3150862B2 (ja) 1995-01-20 1995-01-20 n−ヘキサン抽出物含有廃水の処理方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP02456595A JP3150862B2 (ja) 1995-01-20 1995-01-20 n−ヘキサン抽出物含有廃水の処理方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH08197086A JPH08197086A (ja) 1996-08-06
JP3150862B2 true JP3150862B2 (ja) 2001-03-26

Family

ID=12141685

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP02456595A Expired - Fee Related JP3150862B2 (ja) 1995-01-20 1995-01-20 n−ヘキサン抽出物含有廃水の処理方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3150862B2 (ja)

Families Citing this family (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001519663A (ja) * 1997-04-04 2001-10-23 ピー. ウィークス、ドナルド 遺伝子導入ジカンバ−分解生物体を製造及び使用するための方法及び材料
KR100288685B1 (ko) * 1997-10-06 2001-05-02 조민호 폭기조내의 미생물을 이용한 오. 폐수처리용 미생물 처리제 및 그 제조방법
JP4492896B2 (ja) * 1999-05-13 2010-06-30 エンダイ産業株式会社 高濃度排水の微生物処理方法及び装置
US7172895B2 (en) 2002-04-25 2007-02-06 Takuya Kitamura Microorganism and drainage method
JP5119441B2 (ja) * 2005-02-25 2013-01-16 国立大学法人鳥取大学 水溶性加工液のリサイクル方法、水溶性加工液のリサイクル装置、含油排水の処理方法および含油排水の処理装置
JP2010126495A (ja) * 2008-11-28 2010-06-10 Morinaga Milk Ind Co Ltd 母乳添加用粉末
JP5219050B2 (ja) * 2009-12-21 2013-06-26 住友重機械工業株式会社 油脂分解菌及び油脂分解剤
WO2019098255A1 (ja) * 2017-11-14 2019-05-23 国立大学法人名古屋大学 油脂含有排水処理方法、システムおよび装置
JP7041010B2 (ja) * 2018-06-07 2022-03-23 シーシーアイホールディングス株式会社 油脂の新規分解微生物
CN114029036A (zh) * 2021-11-18 2022-02-11 浙江树人学院(浙江树人大学) 一种改性竹炭及制备方法与应用

Also Published As

Publication number Publication date
JPH08197086A (ja) 1996-08-06

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Bowman et al. Alteromonadales ord. nov.
JP3150862B2 (ja) n−ヘキサン抽出物含有廃水の処理方法
CA2338249A1 (en) Biodispersion as a method for removal of hydrocarbon oil from marine aqueous environments
Ueda et al. Microflora of activated sludge
JP5448512B2 (ja) 油脂分解能を有する微生物及びそれを用いた油脂含有排水の処理方法
RU2509150C2 (ru) Ассоциация штаммов бактерий-нефтедеструкторов и способ ремедиации нефтезагрязненных объектов
JP2787015B2 (ja) 油脂資化性細菌およびそれを使用した油脂の処理方法
JP4707251B2 (ja) 活性汚泥及び排水処理方法
JP3728721B2 (ja) 新規微生物及び排水の処理方法
Wiebe et al. Variation in the fine structure of a marine achromobacter and a marine pseudomonad grown under selected nutritional and temperature regimes
JPH1147789A (ja) 油脂含有廃水の処理方法
JPH0824589B2 (ja) フェノール性化合物の生物分解方法およびそれに用い得る新規菌株
Chen et al. Aquincola amnicola sp. nov., isolated from a freshwater river
US7172895B2 (en) Microorganism and drainage method
Kakii et al. Isolation and characterization of a Ca++-dependent floc-forming bacterium
Ivanova et al. Oceanimonas smirnovii sp. nov., a novel organism isolated from the Black Sea
JP2000270845A (ja) 油脂分解能を有する微生物及び排水の処理方法
Katayama-Hirayama et al. Removal of nitrogen by Antarctic yeast cells at low temperature
RU2128221C1 (ru) Штамм arthrobacter sp. для разложения нефти и нефтепродуктов
RU2118663C1 (ru) Способ утилизации жидких отходов производства пальмового масла
RU2083667C1 (ru) Консорциум штаммов микроорганизмов-деструкторов: alcaligenes denitrificans, pseudomonas maltophila, pseudomonas putida, pseudomonas species, bacillus species для очистки почв, почвогрунтов, вод от нефти, нефтепродуктов и остаточной замазученности
AU785249B2 (en) New microorganism and drainage method
JP3455749B2 (ja) 新規微生物
JP2003024051A (ja) 新規微生物、それを含有する油脂分解剤、および該分解剤を用いた油脂含有物質の処理方法
JPH0646869A (ja) フラン化合物の生物分解方法および2−フランカルボン酸の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
LAPS Cancellation because of no payment of annual fees