JP2022519874A - 微生物脂質を生産するための方法 - Google Patents

微生物脂質を生産するための方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、微生物脂質を生産するための方法に関する。第1の態様において、本発明は、微生物脂質を生産するための方法に関し、前記方法は、以下のステップ、すなわち、a)油脂微生物を提供するステップ;b)前記油脂微生物を炭素源および有機酸を含む培地中で増殖させ、それによって、前記油脂微生物に微生物脂質を産生させるステップ;c)いかなる溶媒による抽出または化学薬品による解乳化も行わない、前記増殖させた油脂微生物の純粋に酵素的な処理を実施し、前記産生された微生物脂質を、その後の回収に適合させるステップ;d)前記産生された微生物脂質を、密度に基づく分離法によって回収するステップを含む。

Description

本発明は、微生物脂質を生産するための方法に関する。
植物によるトリグリセリド油の生産における、土地を使いすぎること、単一栽培であること、および生物学的に多様な生息環境を排除して単一種を優先することによる潜在的な悪影響に鑑みて、微生物による油の生産は、可能性がある魅力的な代替手段とみなされてきた。しかしながら、経済的に、原材料の入手性およびコスト、トリグリセリド油の生産性、ならびに油の回収までに必要な処理ステップ数が、工業スケールでの生産を妨げている主要な課題である。Koutinasら、2014,Fuel,Volume 116,pp.566-577によれば、微生物により産生された油には5.5米ドル/kg(USD 5,5/kg)かかると見積もられるのに対し、大豆油とパーム油には、それぞれ、およそ0.79米ドル/kgおよび0.66米ドル/kgしかかからない。したがって、この著しい価格差を低減させるために、微生物油プロセスは、プロセス廃棄物の利用に加えて、生産性を最大化し、かつプロセスのステップ数が最小になるように設計することが必要とされる。1つの問題は、微生物による油の製造に使用することができる、持続可能で安価な原材料を識別することである。考慮すべきさらなる側面は、脂質を回収するための下流プロセスの最適化であり、それはプロセスの全体的な経済性に与える影響は大きいと考えられるためである。従来の脂質抽出の手順は、典型的には、細胞壁の破壊と、それに続く有機溶媒を用いた脂質抽出を含み、この有機溶媒は、多くの場合、毒性である(例えば、クロロホルムまたはヘキサンなど)。さらに、細胞壁が強固である場合、典型的には、例えば温度ショック、化学的処理、または高圧ホモジナイズなどの過酷な処理がさらに行われ、それによって全体的なプロセスのコストが上昇する。有機溶媒を使用し、脂質を抽出することで、最終製品の品質が悪影響を受け、そのような脂質を食品および/または医薬用途に使用する可能性が制限される。
よって、本発明は、実施が容易かつ簡単であり、その結果、油脂微生物の培養を使用して微生物脂質を生産するために必要な全体的な労力を減少させる方法を提供することを目的とする。
Koutinasら、2014,Fuel,Volume 116,pp.566-577
第1の態様において、本発明は、微生物脂質を生産するための方法に関し、前記方法は、以下のステップ、すなわち、
a)油脂微生物を提供するステップ;
b)前記油脂微生物を炭素源および有機酸を含む培地中で増殖させ、それによって、前記油脂微生物に微生物脂質を産生させるステップ;
c)いかなる溶媒による抽出または化学薬品による解乳化も行わない、前記増殖させた油脂微生物の純粋に酵素的な処理を実施し、前記産生された微生物脂質を、その後の回収に適合させるステップ;
d)前記産生された微生物脂質を、密度に基づく分離法によって回収するステップ
を含む。
1つの実施形態において、前記油脂微生物は、酵母、菌類、細菌、および微細藻類から選択され、ここで、好ましくは、前記油脂微生物は、油脂酵母であり、より好ましくは、前記油脂酵母は、Rhodospirillum属、Trichosporon属、Rhodosporidium属、Rhodosporon属、Candida属、Cryptococcus属、Lipomyces属、Yarrowia属、Rhodotorula属、Apiotrichum属、およびCutaneotrichosporon属から選択される。
前記油脂微生物が菌類(すなわち油脂菌類)である場合、好ましくは、前記油脂菌類は、Cunninghamella属、Aspergillus属、Mortierella属、およびHumicola属から選択される。
前記油脂微生物が細菌(すなわち油脂細菌)である場合、好ましくは、前記油脂細菌は、Rhodococcus属、Acinetobacter属、およびBacillus属から選択される。
前記油脂微生物が微細藻類(すなわち油脂微細藻類)である場合、好ましくは、前記微細藻類は、Chlorella属、Pseudochlorococcum属、Nannochloris属、Nannochloropsis属、Isochrysis属、Tribonema属、Dunaliella属、Ankistrodesmus属、Botryococcus属、Pavlova属、Scenedesmus属、Skeletonema属、およびNitzschia属から選択される。
油脂酵母の好ましい種は、Trichosporon oleaginosus、Trichosporon capitatu、Trichosporon asahii、Lipomyces starkeyi、Rhodosporidium toruloides、Yarrowia lipolytica、Rhodotorula graminis、Rhodotorula glutinis、Cutaneotrichosporon oleaginosus、Apiotrichum curvarum、Cryptococcus curvatus、Candida sp.(Candida sp)、Rhodotorula gracilisである。油脂酵母の特に好ましい種は、Cutaneotrichosporon oleaginosusである。
油脂微細藻類の好ましい種は、Chlorella sp.、Pseudochlorococcum sp.、Nannochloris sp.(Nannochloris sp)、Nannochloropsis sp.、Isochrysis sp.(Isochrysis sp)、Tribonema minus、Dunaliella sp.、Ankistrodesmus sp.、Botryococcus braunii、Pavlova sp.、Scenedesmus sp.、Skeletonema sp.、Nitzschia sp.である。
油脂細菌の好ましい種は、Rhodococcus opacus、Acinetobacter calcoaceticus、およびBacillus alcalophilusである。
油脂菌類の好ましい種は、Cunninghamella sp.、Aspergillus sp.、Mortierella sp.、およびHumicola sp.である。
1つの実施形態において、前記炭素源は、炭水化物;アミノ酸;脂肪酸;好ましくは単糖類、好ましくはペントースまたはヘキソース、より好ましくはグルコース、キシロース、および/またはマンニトール;オリゴ糖;動物組織の加水分解物、植物組織の加水分解物、または微生物の加水分解物;および前記のいずれかの組み合わせを含む群から選択され、ここで、より好ましくは、前記炭素源は、グルコースである。
1つの実施形態において、前記有機酸は、酢酸、マロン酸、シュウ酸、クエン酸、プロピオン酸、吉草酸、アクリル酸、クロトン酸、酪酸、イソ酪酸、イソ吉草酸、3-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシプロピオン酸、2-ヒドロキシ酪酸、乳酸、およびこれらの酸のそれぞれの塩(単数または複数)、ならびに前記有機酸の任意のものの組み合わせを含む群から選択される。好ましくは、前記有機酸は、酢酸またはアセテートである。1つの実施形態において、前記有機酸は、酢酸またはアセテート単独であり;別の実施形態において、前記有機酸は、酢酸またはアセテートと、上述のその他の有機酸との組み合わせである。
用語「有機酸」は、本明細書で使用される場合、各有機酸のプロトン化度に関わらず、それぞれの有機酸を包含することが意図されていること、すなわち、(例えば、前記有機酸が、それぞれのpKa値に応じて、それぞれプロトン化または脱プロトン化されるpHの水溶液における場合の)プロトン化状態(単数または複数)の前記酸ならびに脱プロトン化状態(単数または複数)の前記酸を包含することが意図されていることに留意すべきである。用語「有機酸」は、本明細書で使用される場合、前記有機酸の塩(単数または複数)、例えば、そのような有機酸のそれぞれの金属塩を包含することも意図されている。そのような金属塩の例は、それぞれの有機酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩である。前記塩は、それらの解離形態または非解離形態であり得る。用語「有機酸混合物」は、本明細書で使用される場合、それぞれが酸形態の有機酸の(すなわち、他の有機酸との)混合物、酸形態の有機酸と、塩形態の他の有機酸との有機酸混合物、および有機酸の塩と、他の有機酸の塩との混合物を包含することを意図している。
用語「有機酸」は、本明細書で使用される場合、脂肪酸またはアミノ酸を包含しないことに留意すべきである。
語句「炭素源および有機酸」は、本明細書で使用される場合、「炭素源」が、「有機酸」とは異なるということを含意する。よって、前記2つのものは、化学的に異なっている。
1つの実施形態において、ステップb)の間の前記炭素源の濃度は、150~400mM、好ましくは200~300mMの範囲内である。1つの実施形態において、ステップb)の間の前記有機酸の濃度は、30~100mM、好ましくは50~70mMの範囲内である。1つの実施形態において、ステップb)の間の前記炭素源の濃度は、150mM~400mM、好ましくは200~300mMの範囲内であり、ステップb)の間の前記有機酸の濃度は、30mM~100mM、好ましくは50~70mMの範囲内である。
1つの実施形態において、ステップb)の間の培地中の炭素と窒素の重量比(C:N)は、特に窒素制限培地である場合、(100~200):1である。別の実施形態において、ステップb)の間の培地中の炭素と窒素の重量比(C:N)は、特に窒素制限培地ではない場合、(10~100):1、好ましくは(10~50):1である。1つの実施形態において、ステップb)において使用される培地は、富窒素培地である。
前記の重量比、および以下にさらに記載される重量比は、開始培地における重量比、すなわちステップb)が始まるときの重量比である。本明細書で使用される場合、用語「富窒素培地」は、窒素制限培地ではない培地を指す。1つの実施形態において、「富窒素培地」は、炭素と窒素の重量比(C:N)が100未満、好ましくは80またはそれ未満である培地である。
1つの実施形態において、前記増殖させた油脂微生物の前記純粋に酵素的な処理は、前記微生物の、加水分解酵素単独による処理、プロテアーゼと組み合わせた加水分解酵素による処理、または加水分解酵素による処理の後にプロテアーゼによる処理が続く処理である。
本明細書で使用される場合、用語「いかなる前処理、溶媒による抽出、または化学薬品による解乳化も行わない、前記増殖させた油脂微生物の純粋に酵素的な処理」は、a)1つまたはいくつかの溶媒を用いた抽出を行わない、b)1つまたはいくつかの(適切な)化学試薬を用いた解乳化を行わない、またはc)a)とb)のいずれも行わない、前記油脂微生物の酵素的な処理を指すことが意図されている。好ましくは、この用語は、抽出溶媒に対するいかなる曝露もなく、かつ解乳化化学試薬に対するいかなる曝露もない、酵素的な処理を指すことが意図されている。この用語は、また、前記増殖させた油脂微生物に対する、その他のいかなる前処理の実施も排除することが意図されている。
本発明の実施形態において、「純粋に酵素的な処理」は、前記増殖させた油脂微生物のいかなる前処理の実施も排除していることに留意すべきであり、この前処理は、化学的前処理(前記増殖させた油脂微生物が曝露されることになる1つまたはいくつかの化学試薬を用いるもの)、または物理的前処理(例えば、温度、圧力、超音波、光、電磁放射線による照射などの物理的条件の変化など)であり得る。
1つの実施形態において、前記加水分解酵素は、菌類から、好ましくは糸状菌から、より好ましくはTrichoderma属、Aspergillus属、Penicillium属、Aureobasilium属、およびFusarium属の菌類から得られたものである。
1つの実施形態において、前記密度に基づく分離法は、自然の重力に基づく分離、重力を利用した相分離、および遠心分離から選択され、ここで、前記自然の重力に基づく分離、重力を利用した相分離、および遠心分離は、それぞれ単独で実施されるか、またはデカンテーション、吸引、またはその他の機械的回収法と組み合わせて実施される。
1つの実施形態において、ステップb)とc)は、同じ反応槽の中で実施される。
1つの実施形態において、ステップc)および/またはd)は、脂質相、および前記油脂微生物の加水分解物をもたらす。いくつかの例において、ステップc)および/またはd)は、加えて、前記油脂微生物の残存バイオマス(この残存バイオマスは、前記脂質相および前記加水分解物とは異なる)ももたらし得る。1つの実施形態において、前記方法は、ステップb)~d)を繰り返し実施することを含み、ここで、ステップc)および/またはd)から得られる前記油脂微生物の前記加水分解物は、ステップb)を実施するために再利用/リサイクルされる。
1つの実施形態において、ステップb)~d)は、2~n回実施され、ここで、nは、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、および50から選択される整数である。
1つの実施形態において、前記加水分解酵素は、前記油脂微生物の細胞壁を溶解させる加水分解酵素調製物を得るために、誘導システム存在下で培養された菌類から取得し、ここで、好ましくは、前記誘導システムは、前記油脂微生物の構成成分、より好ましくは、微生物脂質を生産するために用いられる前記油脂微生物の1つまたはいくつかの細胞壁構成成分である。1つの実施形態において、前記誘導システムは、ステップc)および/またはd)の間に産生された前記油脂微生物の前記残存バイオマスであるか、または前記残存バイオマスの一部もしくは構成成分である。
1つの実施形態において、ステップb)で使用される前記培地は、富窒素培地である。
1つの実施形態において、ステップb)で使用される前記培地は、窒素源を、好ましくはタンパク質加水分解物の形態で、例えば、ペプトン、トリプトン、またはその他のペプチド性加水分解物などの形態でさらに含み、ここで、好ましくは、前記ペプチド性加水分解物は、動物組織、植物組織、および/または前記油脂微生物の構成成分を含む。
1つの実施形態において、前記プロテアーゼは、存在する場合、Aspergillus sp.、Streptomyces sp.、またはBacillus sp.によって産生されたプロテアーゼから選択される。
1つの実施形態において、前記菌類から得た前記加水分解酵素は、(本発明のステップb)~c)を実施することによって)別々に調製され、前記菌類を培養することによって直接得られる液体調製物として、またはステップc)で使用する溶液中で後に再構成される凍結乾燥調製物として、ステップc)に用いられる。
1つの実施形態において、前記加水分解酵素は、1つまたはいくつかの活性、例えば、それらに限定されないが、セルラーゼ、キシログルカナーゼ、β-グルコシダーゼ、マンナナーゼ、キシラナーゼ、およびラミナリナーゼ酵素活性から選択される酵素活性を有する。
1つの実施形態において、前記方法は、流加モード、半連続モード、または連続モードで実施され、ここで、好ましくは、前記方法は、上で定義したような、有機酸の反復的な添加を含み、ここで、好ましくは、前記方法は、有機酸、例えば酢酸またはアセテートの反復的な添加を含む。
ステップb)で産生される前記微生物脂質の組成は、このステップb)で用いられた条件による影響を受け得ることに留意すべきである。ステップb)の典型的な条件は、以下のとおりである。
1つの実施形態において、ステップb)の間の増殖温度は、5℃~32℃の範囲内である。ステップb)の1つの実施形態において、pHは、5~8の範囲内である。ステップb)の好ましい実施形態において、ステップb)の間の増殖温度は、10℃~28℃の範囲内である。ステップb)のさらに好ましい実施形態において、pHは、5.5~7.5の範囲内である。さらにいっそう好ましい実施形態において、ステップb)の間の増殖温度は、5℃~32℃の範囲内であり、pHは、5~8の範囲内である。特に好ましい実施形態において、ステップb)の間の増殖温度は、10℃~28℃の範囲内であり、pHは、5.5~7.5の範囲内である。
1つの実施形態において、本方法は、全脂肪酸含量に対する不飽和脂肪酸含量が>60%であり、および/または流動点が<10℃の範囲内、例えば9℃~5℃、例えばおよそ5℃などである脂質を生産するために特に有用である。このことは、ステップb)のために、以下のパラメーター、すなわち
前記油脂微生物を、炭素源および有機酸を含む培地中で、炭素源=グルコース;有機酸=酢酸+クロトン酸添加;温度10~15℃;溶存酸素含量10~30%、およびクロトン酸添加(全有機酸の4~10%)という条件で増殖させ、それにより、前記油脂微生物に、「流動点」が<10℃の範囲内、例えば9℃~5℃、例えばおよそ5℃などであり、および/または全脂肪酸含量に対する不飽和脂肪酸含量が>60%であることを特徴とする微生物脂質を産生させる、というパラメーターを採用した場合に、特にあてはまる。
「流動点」は、本明細書で使用される場合、典型的には、以下の規格、すなわちDIN51597、DIN EN 23015:1994-05、DIN ISO 3015:1982-10、DIN ISO 3016:1982-10、ASTM D97、ASTM D5985のいずれかに従って、好ましくはDIN ISO 3016を用いて決定される。
油脂微生物は、当業者に知られている。本発明の1つの実施形態によれば、本発明による方法で用いられる油脂微生物は、油脂酵母である。1つの実施形態において、前記油脂酵母は、Rhodospirillum属、Trichosporon属、Rhodosporidium属、Rhodosporon属、Candida属、Cryptococcus属、Lipomyces属、Yarrowia属、Rhodotorula属、Apiotrichum属、およびCutaneotrichosporon属を含む属の群から選択される。好ましい実施形態において、前記油脂微生物/酵母は、Cutaneotrichosporon oleaginosum(C.oleaginosum)である。
微生物油の生産のために微生物を培養している間、微生物油の生産のための脂質生産性またはバイオマス生産性のいずれかにおける代償が存在する。従来、脂質の産生は、非制限条件下でバイオマスを生産するための第1のステップと、それに続く栄養制限フェーズ(このフェーズの間、バイオマスの増殖は停止し、脂質のみが蓄積される)を含む2フェーズ系で行われている。このような条件下においては、脂質生産性は70%(w/w)を超えない。驚くべきことに、本発明は、バイオマス増殖と脂質蓄積を同時に達成し得る、脂質生産のための全く新しい経路を開示する。
これにより、バイオマスが200g/Lを超え、そのバイオマスが85%(w/w)を超える脂質を含有する、バイオマスおよび脂質収率のための選択肢が提供される。1つの実施形態において、前記油脂微生物は、さらに上で定義したような、炭素源および有機酸を含む培地中で増殖させる。前記培地のpHに依存して、前記有機酸は解離/脱プロトン化され、この場合において、前記有機酸は、塩/カルボキシレートアニオン形態の有機酸として存在し、または前記有機酸は解離せず、この場合において、前記有機酸は、プロトン化形態の有機酸として存在する。前記油脂微生物を増殖させる培地は、このようなカルボン酸/カルボキシレートと共に、炭素源を含む。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、有機酸、例えば酢酸/アセテートの存在が脂質生産性を向上させる一方、炭素源の存在が全バイオマスを増加させるものと考えている。「炭素源」および有機酸は、上で定義したように、互いに異なる2つの別々のものである。1つの実施形態において、炭素源は、脂肪酸、アミノ酸、炭水化物、好ましくは単糖類、好ましくはペントースまたはヘキソース、より好ましくはグルコース、キシロース、マンニトール;オリゴ糖;動物組織の加水分解物、植物組織の加水分解物、または微生物の加水分解物;ならびに前記のいずれかの組み合わせを含む群から選択され、ここで、より好ましくは、前記炭素源は、グルコースである。前記グルコースは、単独で使用してもよく、または、例えば、適切な加水分解物、例えばペプトン、トリプトンなどと組み合わせて使用してもよい。
1つの実施形態において、前記加水分解物は、藻類加水分解物、リグノセルロース加水分解物、野菜加水分解物、海生バイオマス加水分解物、例えば海生の大型藻類および微細藻類の加水分解物など、トウモロコシ加水分解物、小麦加水分解物、またはその他の加水分解物である。本発明による方法の、リサイクリングステップを含むいくつかの実施形態において、前記加水分解物は、前記油脂微生物(例えば酵母自体)の加水分解に由来する微生物加水分解物(例えば酵母加水分解物)であってもよく、脂質の産生に使用された後の加水分解物であるのが好ましい。
上で定義した炭素源および有機酸を含む適切な培地中で前記油脂微生物を増殖させると、前記油脂微生物は、微生物脂質を産生する。しかしながら、典型的には、これらの微生物脂質は、まだ前記油脂微生物の細胞内に含まれており、したがって、その後の回収のために利用しやすくする必要がある。したがって、本発明の実施形態は、産生された微生物脂質を、その後の培養槽からの回収に適合させる、または、その後の培養槽からの回収に利用しやすくする、前記増殖させた油脂微生物の酵素的な処理を規定する。本発明による方法は、いかなる前処理ステップ(例えば化学的前処理ステップ)にも、またはそれに続く、もしくはそれと同時の、溶媒を用いた前記脂質の抽出にも頼る必要がない、前記増殖させた油脂微生物の純粋に酵素的な処理を含むことに留意すべきである。このような化学的前処理ステップ、またはそれに続く、またはそれと同時の抽出ステップは、溶媒による抽出または化学薬品による解乳化である。しかしながら、このような排除された前処理ステップは、物理的ステップ、例えば、温度変化、圧力変化、遠心分離、音波処理、照射などでもあり得る。
用語「化学薬品による解乳化」は、本明細書で使用される場合、(形成されている可能性がある)任意の乳濁液の解乳化を可能にするために、増殖させたバイオマスを解乳化剤に曝露することを指す。
本発明の実施形態によれば、前記方法は、溶媒による抽出、化学薬品による解乳化、または、例えば温度ショック、化学的処理、または高圧ホモジナイズもしくは超音波ホモジナイズなどのその他の処理を含まない。これらの処理は、潜在的に、前記方法のコストまたは危険な特性を増加させるであろうことから、本発明では回避される。本発明者らは、驚くべきことに、このような過酷な処理ステップが、厳密には必要ではないことを見いだした。
本発明による実施形態において、続いて、前記産生された微生物脂質は、密度に基づく分離法を用いて回収される。最も簡単な形態において、このような密度に基づく分離法は、前記油脂微生物の培養物を、ある期間、単に放置するプロセスであってもよく、その結果、脂質相は、密度および/または水に対する溶解性の違いによって、水相から分離する。この分離法は、その後のデカンテーション、吸引、またはその他の培養物からの脂質相の機械的分離と組み合わせてもよい。他の実施形態において、重力を利用した相分離によって、遠心分離によって、分離が起こり得、これらは単独であってもよく、その後の脂質相の機械的分離(mechanical removal or the lipid-phase)、例えばデカンテーションまたは吸引と組み合わせてもよい。
1つの実施形態において、ステップc)の間、前記「いかなる溶媒による抽出も行わない、前記増殖させた油脂微生物の純粋に酵素的な処理」とは、前記微生物の、加水分解酵素による処理である。好ましくは、このような加水分解酵素は、別の微生物から、好ましくは菌類から、より好ましくは糸状菌から得る。1つの実施形態において、前記菌類は、Trichoderma属、Aspergillus属、Penicillium属、Aureobasillium属、およびFusarium属から選択される。より好ましい実施形態において、前記糸状菌は、Trichoderma reeseiであり、その理由は、この糸状菌は、前記油脂微生物の細胞壁を溶解させる、特に効果的な加水分解酵素を産生することが確認されているからである。1つの実施形態において、前記加水分解酵素は、誘導システムの存在下で培養された菌類、好ましくは糸状菌から取得し、ここで、好ましくは、前記誘導システムは、前記油脂微生物の細胞壁を溶解させる加水分解酵素調製物が得られるように、微生物脂質を生産するために用いられる前記油脂微生物の構成成分、好ましくは前記油脂微生物の1つまたはいくつかの細胞壁構成成分である。1つの実施形態において、前記誘導システムは、ステップc)およびd)の間に産生され得る前記残存バイオマス、またはその構成成分である。好ましくは、このような加水分解酵素は、前記油脂微生物の細胞壁のフラグメントの存在下で、前記糸状菌を培養することによって産生される。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、前記糸状菌、例えばT.reeseiを、前記油脂微生物のこのような細胞壁構成成分の存在に曝露することによって、前記のような糸状菌に、前記油脂微生物の細胞壁の溶解を完了させるための、まさに適切な酵素を産生させると考えている。特に好ましい実施形態において、Trichoderma属由来の糸状菌、例えば、Trichoderma reeseiが用いられ、特に好ましい実施形態において、Trichoderma reeseiのミュータント、例えば、ATCC寄託番号56765および13631を有するミュータントが用いられる。糸状菌が培養されたら、得られた培養物をさらに処理、例えば濃縮してもよく、そして前記菌類自体のバイオマスを除去し、得られた上清をその形態で使用してもよく、またはその上清を、保存およびその後の適切な水溶液中での再構成のために、凍結乾燥して保管してもよい。再び、いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、このようにして産生された加水分解酵素は、種々の酵素活性の組み合わせ、例えば、セルラーゼ、キシログルカナーゼ、β-グルコシダーゼ、マンナナーゼ、キシラナーゼ、およびラミナリナーゼ、ならびに、場合により、その他の酵素活性の組み合わせを示し得ると考えている。
本発明による1つの実施形態において、ステップb)およびc)は、同じ反応槽の中で実施される。これは、本明細書において、「ワンポット法」または「ワンポットプロセス」とも呼ばれることがある。この実施形態において、本発明による方法は、微生物脂質の製造のためのワンポットプロセスとみなされる。典型的には、ステップc)および/またはステップd)は、脂質相と前記油脂微生物の加水分解物相をもたらし、そして本方法は、好ましくは、ステップb)~d)を繰り返し実施することを含む。このような実施形態において、ステップc)および/またはd)から得られる前記加水分解物は、ステップb)を実施するために再利用/リサイクルされる。このような実施形態において、ステップc)および/またはd)から得られる前記微生物加水分解物は、ステップb)において使用される培地中に再供給され、炭素源としての、または追加の炭素源(選択された、最初に存在する炭素源に対する、追加の炭素源)としての役割を果たし得る。ここで、ステップb)~d)における副生成物が再利用/リサイクルされる実施形態、例えば、ステップc)および/またはd)から得られる生成物がステップb)において再利用/リサイクルされる実施形態は、廃棄物の発生を防止する。したがって、このような実施形態は、本明細書において、「廃棄物の出ないプロセス」または「廃棄物の出ない方法」とも呼ばれることがある。
1つの実施形態において、特に前記油脂微生物の前記加水分解物がステップb)を実施するために再利用/リサイクルされる場合、本発明による方法は、ステップb)~d)が、繰り返し、好ましくは2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、または、場合により11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、または、更には50回50実施される方法である。1つの実施形態において、ステップb)~d)は、2~3回実施される。繰り返しリサイクルを行うことによって、このプロセスから生じる生成物、例えば前記油脂微生物の加水分解物が、その油脂微生物を増殖させるための開始培地として再利用されるため、含まれる種々の培地の効率的な利用が可能になり、過剰な廃棄物の生成が回避される。
1つの実施形態において、ステップb)において使用される培地は、窒素源を、好ましくはタンパク質加水分解物の形態で、例えば、ペプトン、トリプトン、またはその他のペプチド性加水分解物などの形態でさらに含む。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、このような追加の窒素源が存在することによって、全体として、脂質とバイオマスの生産を向上させると考えている。
1つの実施形態において、ステップb)において使用される培地は、富窒素培地である。用語「富窒素培地」は、本明細書で使用される場合、炭素と窒素の重量比(C:N)が、<100、好ましくは≦80、より好ましくは25~80である培地を指す。
本発明による1つの実施形態において、ステップc)において実施される「純粋に酵素的な処理」は、前記微生物の、プロテアーゼによる処理をさらに含む(しかしながら、依然として、前処理、または溶媒による抽出もしくは化学薬品による解乳化は排除される)。このようなプロテアーゼは、もし使用されるときは、前述の加水分解酵素を用いた処理に続いて使用されるか、または前述の加水分解酵素を用いた処理と組み合わせて使用されることに留意すべきである。再び、いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、プロテアーゼを含む前記処理によって、産生された脂質に付随するあらゆるタンパク質から前記産生された脂質を分離することが可能となり、その結果、脂質の遊離が促進されると考えている。1つの実施形態において、前記プロテアーゼは、Aspergillus sp.、Streptomyces sp.、またはBacillus sp.によって産生されたプロテアーゼの群から選択される。
1つの実施形態において、本発明による方法は、流加様式または連続モード様式で実施され、流加モードが好ましい。好ましくは、本発明による方法が流加様式で実施される場合、ステップb)の実施のために、上で定義したような、所定量の前記炭素源、および所定量の前記有機酸を、繰り返して、好ましくはステップb)が実施される回数だけ添加する。好ましい実施形態において、ステップb)の間の前記有機酸の濃度は、発酵時間にわたって、30~100mMの範囲、好ましくは50~70mMの範囲の濃度に維持すべきである。
さらに、図面について以下のように言及する。
図1は、本方法の実施によって得られる生成物、特に油脂微生物の加水分解によって得られる生成物のいくつかのリサイクルを含む、本発明による実施形態に含まれるバイオマスの流れを示す。
図2は、異なるフィードを用いた、すなわち(a)酢酸単独を用いた;(b)グルコース単独を用いた、発酵時間にわたるバイオマス増殖およびフィード消費量を示す。
図3は、異なるフィードを用いた、発酵時間にわたるバイオマス増殖 フィード消費量、および脂質蓄積、すなわち(a)窒素制限培地において酢酸とグルコースの両方による共発酵を用いた、発酵時間に対するバイオマス増殖および基質燃焼;(b)窒素制限培地において酢酸とグルコースの両方による共発酵を用いた、発酵時間にわたる、発酵時間に対する脂質蓄積;(a)富窒素培地において酢酸とグルコースの両方による共発酵を用いた、発酵時間に対するバイオマス増殖および基質燃焼;ならびに(d)富窒素培地において酢酸とグルコースによる共発酵を用いた、発酵時間に対する脂質蓄積を示す。
図4は、異なるフィードを用いた、発酵時間にわたるバイオマス増殖、脂質蓄積、およびフィード消費、すなわち(a)酢酸とグルコースによる共発酵をLaminaria digitata加水分解物と共に用いた、発酵時間に対するバイオマス増殖および基質燃焼;(b)単位g/L(明るい灰色の縦棒)および単位%(w/dwバイオマス)(重量パーセント/バイオマス乾燥重量あたり)(暗い灰色の縦棒)の両方で表した、(a)の培養物の脂質の蓄積および生産性;(c)半連続モードを用い、富窒素培地において酢酸とグルコースによる共発酵を用いた、発酵時間に対するバイオマス増殖および基質燃焼(すなわち、酢酸のバッチを繰り返し(例えば2回)加え、そしてバイオマスもまた繰り返し(例えば2回)回収する);および(d)富窒素培地において酢酸とグルコースによる共発酵を用いた(ここでも、3a)と同様に半連続モードを用いる)、発酵時間に対する脂質の蓄積および生産性を示す。
図5は、連続発酵モードを用い、富窒素培地において酢酸とグルコースによる共発酵を用いた、発酵時間に対するバイオマス増殖および脂質蓄積を示す;(a)発酵時間に対する、OD600nmによって測定したバイオマス増殖;(b)発酵時間に対する、細胞数によって測定したバイオマス増殖;(c)発酵時間に対する、重量分析法によって測定したバイオマス増殖;および(d)発酵時間に対する、重量分析法によって測定した脂質の蓄積および生産性。
図6は、(a)T.reesei(ATCC 13631)を用いた、酵素的加水分解時間に対するバイオマス重量の相対的減少;(b)T.reesei RUT C-30(ATCC 56765)を用いた、酵素的加水分解時間に対するバイオマス重量の相対的減少;(c)酵素系(すなわちミックス1(市販の混合物)、ミックス2(市販の混合物)、前記T.reesei ATCC 13631、および前記T.reesei RUT C-30(ATCC 56765))と共に12時間および18時間インキュベートした後の相対残存バイオマス重量;ならびに2つの対照、すなわち対照1=未処理のバイオマス;対照2=加水分解酵素処理を行わないことを除き、同じ条件下でインキュベートしたバイオマス;(d)従来の溶媒抽出(クロロホルム:MeOH(2:1(v/v)を溶媒として用いる)を用いて遊離された脂質、および加水分解酵素処理を行わないことを除き、同じ条件下でインキュベートした対照と比較した、酵素系(すなわちミックス1(市販の混合物)、ミックス2(市販の混合物)、T.reesei ATCC 13631、およびT.reesei RUT C-30(ATCC 56765))と共に12時間および18時間インキュベートした後の、遊離された脂質の相対重量を示す。ミックス1:マンナナーゼ(Clariant、スイス)、Cellic Ctec2(Novozymes、デンマーク)、Cellic Htec(Novozymes、デンマーク)、およびβ-グルコシダーゼ(Novozymes、デンマーク)の混合物。ミックス2:Liquebeet(Clariant、スイス)、CLA(Clariant、スイス)、マンナナーゼ(Clariant、スイス)1,3-β-グルカナーゼ(1.3-β-glucanase)(Megazyme、フランス)、およびβ-グルコシダーゼ(Novozymes、デンマーク)の混合物。
図7は、(a)酵素的加水分解時間に対する、C.oleaginosus細胞密度(dell density)の細胞密度プロット図を示す。この細胞密度プロットは、前方散乱(FSC)(x軸)および側方散乱(SSC)(y軸)の強度;(b)酵素的加水分解時間に対する、糖濃度の上昇;(c)酵素的加水分解時間に対する、C.oleaginosusの細胞数の減少を示す。
図8は、(a)酵素的加水分解を10時間行った後の、酵母細胞についての蛍光顕微鏡イメージを示す。脂質は、ナイルレッドで染色した;(b)酵素的加水分解後の培養物(この培養物は、ワークベンチ上に終夜放置されていたものである);(c)遠心分離(9000g、20分間)後の培養物;(d)さらなる精製を何も行わずにデカンテーションした後の浮遊脂質。
図9は、酢酸とグルコースによる共発酵を用いた、発酵時間に対する、重量分析法によって測定したバイオマス増殖を示す。サイクル1において、使用した培地は、グルコースと酢酸の両方を使用して、さらにペプチド加水分解物を含む、富窒素培地であった。サイクル2および3において、使用した培地は、その前のサイクルにおいて産生された加水分解物を含んでいた。
図10は、酢酸のみを使用した、発酵時間に対する(発酵は、2リットルフラスコ中で、温度28℃、pH6.5、およびpO≧50%で行った)、g/Lで測定した脂質含量(明るい灰色の縦棒)の増加、および単位%(w/dwバイオマス)(重量パーセント/バイオマス乾燥重量あたり)での生産性の向上(暗い灰色の縦棒)を示す。
図11は、最小窒素培地におけるグルコースによる発酵(左図)および富窒素培地における共発酵(右図)についての、細胞容積および脂質含量の著しい増加を示す蛍光顕微鏡イメージを示す。
図12は、富窒素培地における、発酵時間に対する、酢酸とグルコースによる共発酵の前方散乱[FSC]強度(x軸)および側方散乱[SSC]強度(y軸)の上昇を示す。発酵は、21リットルのバッチで、温度28℃、pH6.5、およびpO≧50%で行った。
図13は、富窒素培地における、発酵時間に対する、酢酸とグルコースによる共発酵の脂肪酸プロファイル(全脂肪酸重量あたりの重量%で表される)において観察された変化を示す。発酵は、21リットルのバッチで、温度28℃、pH6.5、およびpO≧50%で行った。
図14は、グルコースと酢酸の両方を使用した共発酵における発酵後、および15,000gで30分間の遠心分離後の油性の酵母培養物を示す。
図15は、2400barの圧力を3回加えた、高圧ホモジナイザーによる処理後の、C.oleaginous細胞についての電子顕微鏡イメージを示す。
図16は、異なる運転条件下で産生された脂質のサンプルを示す。
図17は、100%酢酸を使用した培地中でC.oleaginosusを培養した後に得られた酵母油の脂肪酸プロファイルを示す。
図18は、90%酢酸と10%イソ酪酸の混合物を使用した培地中でC.oleaginosusを培養した後に得られた酵母油の脂肪酸プロファイルを示す。
図19は、90%酢酸と10%イソ吉草酸の混合物を使用した培地中でC.oleaginosusを培養した後に得られた酵母油の脂肪酸プロファイルを示す。
図20は、90%と10%クロトン酸の混合物を使用した培地中でC.oleaginosusを培養した後に得られた酵母油の脂肪酸プロファイルを示す。
さらに、以下の実施例に言及するが、これらは、本発明を限定するためではなく、例証するために示されている。
1.1.脂質生産性の最大化
実施例1(比較のための、酢酸単独の発酵、グルコース単独の発酵)
窒素制限培地条件および富窒素培地条件を用いた、種々の発酵設定(酢酸単独、グルコース単独、酢酸とグルコースの共発酵)が検討された。単独基質発酵に関して、グルコース単独の発酵(培地A)(図2b)は、酢酸単独の発酵(培地B)(図2a)に対して、より高いバイオマス生産性を示す。しかしながら、酢酸単独の発酵は、グルコース単独の発酵の設定に対して、わずかに高い脂質生産性を示し(図10)、それぞれ、酢酸単独の発酵は、0.13g/L/h[バイオマス22g/L、脂質72%(w脂質バイオマス)]、およびグルコース単独の発酵は、0.09g/L/h[バイオマス34g/L、脂質45%(w脂質バイオマス)]をもたらした。
さらに、油脂生物を用いた従来の脂質生産は2段階のプロセスであり、第1のステップは、非制限条件下(対数増殖期)においてバイオマス形成をもたらし、第2の脂質誘導ステップ(栄養制限フェーズ)は、細胞数増加が止まった状態において、高い細胞内脂質の蓄積をもたらす。本発明者らのデータは、糖と有機酸(例えば酢酸)の共発酵が、代謝ストレス因子(例えば窒素制限など)を必要とせずに、バイオマスと脂質の同時形成を実現しうることを初めて実証した。本発酵手段は、これまでに発表されたあらゆるデータを凌駕するバイオマスおよび脂質生産速度(バイオマス240g/L、脂質87%(w/w))を達成した。
株:Cutaneotrichosporon oleaginosus(ATCC 20509)を、抗生物質(10mg/L アンピシリン、10mg/L カナマイシン、および12mg/L テトラサイクリン)を含有する、YPD培地ブロス(10g/L 酵母抽出物、20g/L ペプトン、および20g/L グルコース)が入ったエルレンマイヤーフラスコ内で培養した。そのフラスコを、ロータリーシェーカー内で、100rpm、温度28℃で2日間インキュベートし、次いで、それを接種材料として使用した。
培地A:グルコース 30g/L、酵母抽出物 0.5g/L、NHCl 0.5g/L、KHPO 2.4g/L、NaHPO・12HO 0.9g/L、MgSO・7HO 1.5g/L、FeCl・6HO 0.08g/L、ZnSO・7HO 0.01g/L、CaCl・2HO 0.1g/L、MnSO・5HO 0.1mg/L、CuSO・5HO 0.1mg/L、CO(NO・6HO 0.1mg/L。
培地B:酵母抽出物 0.5g/L、酢酸ナトリウム 4.1g/L、NHCl 0.5g/L、KHPO 2.4g/L、NaHPO・12HO 0.9g/L、MgSO・7HO 1.5g/L、FeCl・6HO 0.08g/L、ZnSO・7HO 0.01g/L、CaCl・2HO 0.1g/L、MnSO・5HO 0.1mg/L、CuSO・5HO 0.1mg/L、CO(NO・6HO 0.1mg/L。
2Lバイオリアクター:T.oleaginosusの流加培養を、2Lバイオリアクター(INFORS HTシステム、スイス)内で、対応する培地の仕込み容量1Lで実施した。温度は28℃で一定に保たれ、バイオリアクターのpHは、1M NaOHまたは1M HCl(グルコース発酵の場合)および50%酢酸(AA発酵の場合)によって、pH6.5±0.2に調節された。撹拌(350~1000rpm)およびエアレーション(1.0~2.0NL/Vの空気)は、50%を上回る溶存酸素を維持するように自動的に制御された。0.01%(V/V)の消泡剤(Antifoam 204、Sigma Aldrich)を加えることによって泡を予防した。
実施例2(窒素制限培地における酢酸とグルコースの共発酵)
比べて、窒素制限培地(培地C)におけるグルコースと酢酸の共発酵(図3a)は、初めの24時間で、バイオマスが20g/L、脂質含量が20%(w脂質バイオマス))]に達した(図3b)。これに対して、同じ時点で、個別のグルコースおよび酢酸発酵は、それぞれ、バイオマスが10g/L、脂質含量が12%(w脂質バイオマス)、ならびにバイオマスが5g/L、脂質が30%(w脂質バイオマス)に達したにすぎなかった。これは、第1日からの脂質生産性が0.2g/L/hであり、これに対して、個別のグルコースおよび酢酸バッチ発酵に関しては0.075g/L/hであったことと符合する。
窒素制限条件下における脂質生産性は、その後、発酵第5日までに、0.18g/L/h[バイオマス43g/L、脂質73.5%(w脂質バイオマス)]まで低下した。算出された炭素:炭素利用率は、0.22g/g 脂質/全炭素であった。この低下は、制限された窒素資源が原因であり得る。
株:Cutaneotrichosporon oleaginosus(ATCC 20509)を、抗生物質(10mg/L アンピシリン、10mg/L カナマイシン、および12mg/L テトラサイクリン)を含有する、YPD培地ブロス(10g/L 酵母抽出物、20g/L ペプトン、および20g/L グルコース)が入ったエルレンマイヤーフラスコ内で培養した。そのフラスコを、ロータリーシェーカー内で、100rpm、温度28℃で2日間インキュベートし、次いで、それを接種材料として使用した。
培地C:グルコース 30g/L、酵母抽出物 0.5g/L、酢酸ナトリウム 4.1g/L、NHCl 0.5g/L、KHPO 2.4g/L、NaHPO・12HO 0.9g/L、MgSO・7HO 1.5g/L、FeCl・6HO 0.08g/L、ZnSO・7HO 0.01g/L、CaCl・2HO 0.1g/L、MnSO・5HO 0.1mg/L、CuSO・5HO 0.1mg/L、CO(NO・6HO 0.1mg/L。
2Lバイオリアクター:T.oleaginosusの流加培養を、2Lバイオリアクター(INFORS HTシステム、スイス)内で、対応する培地の仕込み容量1Lで実施した。温度は28℃で一定に保たれ、バイオリアクターのpHは、1M NaOHまたは1M HCl(グルコース発酵の場合)および50%酢酸(AA発酵の場合)によって、pH6.5±0.2に調節された。撹拌(350~1000rpm)およびエアレーション(1.0~2.0NL/Vの空気)は、50%を上回る溶存酸素を維持するように自動的に制御された。0.01%(V/V)の消泡剤(Antifoam 204、Sigma Aldrich)を加えることによって泡を予防した。
実施例3(窒素に富む培地における酢酸とグルコースの共発酵)
興味深いことに、富窒素培地(培地D)をベースとした発酵によって、第1日までに、脂質生産性が0.67g/L/hまで向上した(図3cおよび3d)。注目すべきことに、富窒素培地による共発酵は、発酵を開始した直後に、バイオマスと細胞内脂質の両方の同時形成を示す。これらの条件下で、70%(w脂質バイオマス)を超える脂質含量が、発酵第2日までに達成された。その後、この脂質収率はさらに上昇し、120時間後に85%(w脂質バイオマス)に達した。これは、油脂酵母でこれまでに観察された、最も高い細胞内脂質収率である。このような実験条件下で、バイオマス収率もまた、水平化して定常期に入ることなく、直線的に上昇を続けた(図3c)。ここで適用した酢酸と糖の共発酵プロトコルによって、脂質生産性は、0.53g/L/h[バイオマス84g/L、84.9%(w脂質バイオマス)]まで改善された。しかしながら、炭素:炭素利用率は、0.24g/g 脂質/全炭素であった。確証的に、蛍光顕微鏡イメージングによって、細胞容積と脂質含量の著しい増加が示された(図11)。
推定では、そしていかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、酢酸は、培地から同化され、そして直接アセチル-CoA(細胞増殖、脂質生合成、およびエネルギー代謝に関係する、普遍的な基盤となる代謝産物である)に変換され得る。この変換は酢酸CoAリガーゼによって触媒され、このことは以前にC.oleaginosusのトランスクリプトーム分析において報告されている。よって、酢酸CoAリガーゼは、糖ベースの発酵について報告されているような相対的なC:N比とは無関係に、脂質生合成経路への近道に関連する、高脂質含量をもたらす基本的な酵素活性であり得る。
具体的には、酢酸CoAは、細胞の恒常性および増殖と結びついている、中心的なTCA中間体である。しかしながら、酢酸のみを使用して(すなわち、独立した炭素源なしで)得た本発明者らのデータは、アセテートは脂肪酸生合成に優先的に向けられ、細胞増殖を確実にするものではないこと示している。この点に関し、バイオマスの生産が、脂質生合成と同時に誘導され得るか否かを明らかにすることが重要である。バイオマスと脂質の同時形成は、プロセスの経済的実現可能性のための鍵となる因子である。この点に関し、炭素源と有機酸の共発酵、例えば糖と酢酸の共発酵が、迅速なバイオマス増殖と脂質蓄積の両方を引き起こすための最も有効な手順であると思われる。
株:Cutaneotrichosporon oleaginosus(ATCC 20509)を、抗生物質(10mg/L アンピシリン、10mg/L カナマイシン、および12mg/L テトラサイクリン)を含有する、YPD培地ブロス(10g/L 酵母抽出物、20g/L ペプトン、および20g/L グルコース)が入ったエルレンマイヤーフラスコ内で培養した。そのフラスコを、ロータリーシェーカー内で、100rpm、温度28℃で2日間インキュベートし、次いで、それを接種材料として使用した。
培地D:グルコース 30g/L、酵母抽出物 0.5g/L、ペプトン 5g/L、酢酸ナトリウム 4.1g/L、NHCl 0.5g/L、KHPO 2.4g/L、NaHPO・12HO 0.9g/L、MgSO・7HO 1.5g/L、FeCl・6HO 0.08g/L、ZnSO・7HO 0.01g/L、CaCl・2HO 0.1g/L、MnSO・5HO 0.1mg/L、CuSO・5HO 0.1mg/L、CO(NO・6HO 0.1mg/L。
2Lバイオリアクター:T.oleaginosusの流加培養を、2Lバイオリアクター(INFORS HTシステム、スイス)内で、対応する培地の仕込み容量1Lで実施した。温度は28℃で一定に保たれ、バイオリアクターのpHは、1M NaOHまたは1M HCl(グルコース発酵の場合)および50%酢酸(AA発酵の場合)によって、pH6.5±0.2に調節された。撹拌(350~1000rpm)およびエアレーション(1.0~2.0NL/Vの空気)は、50%を上回る溶存酸素を維持するように自動的に制御された。0.01%(V/V)の消泡剤(Antifoam 204、Sigma Aldrich)を加えることによって泡を予防した。
実施例4(酢酸と褐藻類加水分解物培地の共発酵)
先の発酵操作において、純粋なグルコースを含む合成培地を適用した。しかしながら、共発酵による土地利用変化の影響を回避するために、海生褐藻類バイオマスであるL.digitataを糖源として供給した。以前に報告されているL.digitata加水分解物(参考文献:Masriら、Journal Appl.Energ.,2018,vol.224,1-12)(この加水分解物は、炭素源として、特にグルコースとマンニトールを含有している)を、酢酸と共に、共発酵モードで用いた。L.digitata加水分解物と酢酸の共発酵によって、栄養制限なしで、バイオマスと脂質が同時に形成された。加えて、バイオマス収率は細胞内脂質形成を上回り、また、このより高いバイオマス収率によって、全脂質生産性は、0.59g/L/h[バイオマス114g/L、脂質64%(w脂質バイオマス)]と向上した。この実験の設定において、炭素利用率は、0.24g/g 脂質/全炭素量であった(図4aおよび4b)。
転作した土地からのバイオ燃料およびオレオケミカルの生産は、これらのバイオ燃料がもたらすであろう年間の温室効果ガス(GHG)削減量よりも17~420倍多くのCOを放出することから、固有の炭素負債を生じさせる。例えば、アブラヤシ由来のバイオディーゼル(アブラヤシは転作した泥炭雨林に植えられた)によって生じた炭素負債を償還するためには、約423年を要する。対照的に、廃棄物バイオマス(例えば森林廃棄物など)または耕作放棄地で作られたバイオ燃料およびオレオケミカルは、生じさせる炭素負債がわずかであるか、または炭素負債を生じさせない。他方、このような廃棄物バイオマスまたは耕作放棄地の植栽は、食品産業に対する高い圧力を生じさせ、土地の制約による価格の上昇を引き起こすであろう。
この点に関し、本発明者らは、褐藻類であるL.digitata(本発明者らは、以前に、L.digitataが、C.oleaginousのための優れた発酵基材であることを実証している(Masriら、Journal Appl.Energ.,2018,vol.224,1-12))の酵素的加水分解物を用いることにした。さらに、ライフサイクルの影響およびプロセスの持続可能性に関し、L.digitata由来の褐藻類加水分解物などの海生バイオマスは、あらゆる陸生バイオマス残渣よりも優れており、その理由は、海生バイオマスは、農業活動と競合せず、陸生の同等物よりも著しく早く成長し、かつ、陸生リグノセルロース(lingo-cellulosic)バイオマスが必要とするエネルギー集約的な物理化学的前処理によらずに、容易に加水分解され得るからである。
株:Cutaneotrichosporon oleaginosus(ATCC 20509)を、抗生物質(10mg/L アンピシリン、10mg/L カナマイシン、および12mg/L テトラサイクリン)を含有する、YPD培地ブロス(10g/L 酵母抽出物、20g/L ペプトン、および20g/L グルコース)が入ったエルレンマイヤーフラスコ内で培養した。そのフラスコを、ロータリーシェーカー内で、100rpm、温度28℃で2日間インキュベートし、次いで、それを接種材料として使用した。
L.digitata加水分解物:Laminaria digitata(L.digitata)の褐藻類サンプルの酵素的加水分解を、20リットルの酢酸バッファー溶液(50.0mM、pH5.0)および60.0gのバイオマスが入った5リットルガラス瓶(Schott)を用いて行った。この反応は、酵素溶液を加え、電磁攪拌器を用いて400rpmで撹拌しながら、50℃で72時間インキュベートすることによって引き起こした。それから、反応混合物を8000gで30分間遠心し、次いでクロスフロー濾過した(再生セルロースから作られた10kDa膜を、以下のパラメーターで使用した:入口圧(P1)2bar、リペンタント圧(repentant-pressure)(P2)0.3~0.5bar、および透過物は大気圧に開放されていた。リペンタント(repentant)と透過物の流速は、それぞれ、およそ2L/分とおよそ0.1L/分であった。得られた加水分解物を滅菌するために、出口に0.2μmフィルターカプセルを取り付けた。)。
2Lバイオリアクター:T.oleaginosusの流加培養を、2Lバイオリアクター(INFORS HTシステム、スイス)内で、対応する培地の仕込み容量1Lで実施した。温度は28℃で一定に保たれ、バイオリアクターのpHは、1M NaOHまたは1M HCl(グルコース発酵の場合)および50%酢酸(AA発酵の場合)によって、pH6.5±0.2に調節された。撹拌(350~1000rpm)およびエアレーション(1.0~2.0NL/Vの空気)は、50%を上回る溶存酸素を維持するように自動的に制御された。0.01%(V/V)の消泡剤(Antifoam 204、Sigma Aldrich)を加えることによって泡を予防した。
実施例5(窒素に富む培地における酢酸とグルコースの共発酵-半連続運転モード)
経済効率に関し、各種の運転モードを試験した。そのために、半連続運転モードおよび連続運転モードを、長時間の運転時間で試験した。
2つの回収点を含む半連続運転モードを、約12日間行った。この2つの部分的回収点は、162時間と234時間の時点で行い、培養物の40~50%(V/V)をバイオリアクターから取り出し、その分を新鮮な培地Eで置き換えた。長時間にわたるN富化培地(培地D)と酢酸の初めの共発酵を図4cおよび4dに示す。以前に観察されたように、バイオマスと脂質の形成は同時的で、162時間後に、脂質生産性は0.57g/L/h[バイオマス106g/L、脂質87%(w脂質バイオマス)]に達していた。このとき、第1の回収点で、40%(V/V)回収され、それによってバイオマス濃度は69g/Lに低下した。
これに続く42時間の運転において、バイオマス濃度は急速に増加し、235g/Lに達した。さらに、脂質含量は、驚くべきことに、80%(w脂質バイオマス)超に維持することができ、脂質生産性は0.90g/L/hであった。これは、この点のプロセス最適化において観察された、最も高い脂質生産性である。
234時間の時点において、第2の回収ステップを実施し、培養量の50%(V/V)を取り出した(図4c)。このため、バイオマス濃度は、158g/Lに低下した。興味深いことに、バイオマス濃度は、続く32時間の発酵の間に、240g/Lまで回復し、脂質含量は87.5%(w脂質バイオマス)であった。
運転の終わりには、全脂質生産性は、0.8g/L/h[バイオマス240g/L、脂質87.6%(w脂質バイオマス)]であった。しかしながら、脂質形成に関する炭素利用率は、0.39g/gであった。しかしながら、この生産性の数値は、回収された培養物量を考慮しておらず、この回収された培養物量は、元の培養物の体積の80%(V/V)を超えていた。極めて高い細胞密度および脂質含量は、細胞を水にさらした時に、極めて高い粘度および細胞の疎水性によって視覚的に明らかにすることができた。
株:Cutaneotrichosporon oleaginosus(ATCC 20509)を、抗生物質(10mg/L アンピシリン、10mg/L カナマイシン、および12mg/L テトラサイクリン)を含有する、YPD培地ブロス(10g/L 酵母抽出物、20g/L ペプトン、および20g/L グルコース)が入ったエルレンマイヤーフラスコ内で培養した。そのフラスコを、ロータリーシェーカー内で、100rpm、温度28℃で2日間インキュベートし、次いで、それを接種材料として使用した。
培地D:グルコース 30g/L、酵母抽出物 0.5g/L、ペプトン 5g/L、酢酸ナトリウム 4.1g/L、NHCl 0.5g/L、KHPO 2.4g/L、NaHPO・12HO 0.9g/L MgSO・7HO 1.5g/L、FeCl・6HO 0.08g/L、ZnSO・7HO 0.01g/L、CaCl・2HO 0.1g/L、MnSO・5HO 0.1mg/L、CuSO・5HO 0.1mg/L、CO(NO・6HO 0.1mg/L。
培地E:酵母抽出物 1.0g/L、ペプトン 1.0g/L、NHCl 0.5g/L、KHPO 2.4g/L、NaHPO・12HO 0.9g/L MgSO・7HO 1.5g/L、FeCl・6HO 0.08g/L、ZnSO・7HO 0.01g/L、CaCl・2HO 0.1g/L、MnSO・5HO 0.1mg/L、CuSO・5HO 0.1mg/L、CO(NO)2・6HO 0.1mg/L。
2Lバイオリアクター:T.oleaginosusの流加培養を、2Lバイオリアクター(INFORS HTシステム、スイス)内で、対応する培地の仕込み容量1Lで実施した。温度は28℃で一定に保たれ、バイオリアクターのpHは、1M NaOHまたは1M HCl(グルコース発酵の場合)および50%酢酸(AA発酵の場合)によって、pH6.5±0.2に調節された。撹拌(350~1000rpm)およびエアレーション(1.0~2.0NL/Vの空気)は、50%を上回る溶存酸素を維持するように自動的に制御された。0.01%(V/V)の消泡剤(Antifoam 204、Sigma Aldrich)を加えることによって泡を予防した。
実施例6(窒素に富む培地における酢酸とグルコースの共発酵-連続運転モード-スケールアップ)
技術的に妥当なスケールにおける、発明者らのデータを検証するために、25Lスケールで、N富化培地において共発酵を行った。発酵は、連続希釈として50%(w/w)の酢酸を用いて、連続モードで運転した。酵素は、この実験操作の開始後約48時間で著しい酢酸代謝を引き起こしたために、50%(w/w)の濃度で酢酸の供給を行ったので、反応槽の希釈度は増大した。この点に関し、実験期間にわたって酢酸代謝が増大するにつれて、希釈係数が連続的に増加したことに留意しなければならない。
最初の24時間以内は、酢酸供給は、1日あたり2kg/日であり、その後、96時間において6kgまで指数関数的に増加させた。この供給速度において、培養物の体積は、96時間にわたって4.5L増加し[18%(V/V)の体積増加]、これは7.5mL/L/hの希釈に相当する。この体積増加は、これと等しい体積の培養物を毎日回収(4.5L/日)することによって相殺した。96時間後、一定のODおよび細胞数(フローサイトメトリーによって)を検出することができ、これは反応における、増殖速度と、適用した希釈係数との間のバランスによるものであった(図5aおよび5b)。しかしながら、細胞数が一定であった一方で、バイオマス形成の連続的な増加が測定され、これは、細胞内脂質の定常的増加によるものであり得る(図5cおよび5d)。よって、このバイオマスの増加は、細胞容積の拡大のみに起因しており、これは、フローサイトメトリーによって検出されたような細胞内脂質ベシクルの体積増加と相関している(図12)。図13は、発酵時間にわたる脂肪酸プロファイルの変化を示す。
25Lスケールにおけるその時点のデータに基づくと、50%(w脂質バイオマス)の酢酸の供給は、培養密度にいかなる影響も与えることなく、発酵体積の20%(V/V)を毎日または連続的に回収することを可能にする。しかしながら、このプロセスを10,000L発酵槽にスケールアップすると、1日に回収される体積は、108kgの油を含有する、1800リットルになるであろう。この量が、下流プロセスに連続的に移送される可能性がある。
本発明による新たなプロセスの実施形態で、本発明者らは、種々の油脂酵母および培養条件について報告された最高の脂質生産性を更新した。この点に関し、90g/Lのセロビオースとキシロースの共発酵におけるLipomyces starkeyの脂質生産性は、0.12g/L/h[バイオマス 31.5g/L、脂質 55%(w脂質バイオマス)]であった(Z.Gong、Q.Wang、H.Shen、C.Hu、G.Jin、およびZ.K.Zhao、Bioresource Technol.,2012,117,20-24)。複雑な培地の場合(例えば、トウモロコシの茎や葉の加水分解物の利用)、Rhodotorula graminisがもたらす脂質生産性は、0.23g/L/h[バイオマス48g/L、脂質34%(w脂質バイオマス)]である(S.Galafassi、D.Cucchetti、F.Pizza、G.Franzosi、D.Bianchi、およびC.Compagno、Bioresource Technol.,2012,111,398-403)。同様に、15L撹拌槽型発酵槽中で、グルコースで培養されたRhodosporidium toruloides Y4がもたらす脂質生産性は、0.54g/L/h[バイオマス106.5g/L、脂質67.5%(w脂質バイオマス)]であった(Y.Li、Z.K.Zhao、およびF.Bai、Enzyme Microbial Technol.,2007,41,312-317)。
報告されているC.oleaginosusの能力に関し、酢酸によるpH一定の発酵が達成した生産性は、0.66g/L/h[バイオマス168g/L、脂質75%(w脂質バイオマス)]であった(Z.Chi、Y.Zheng、J.Ma、およびS.Chen、Int.J.Hydrogen Energ.,2011,36,9542-9550)。さらに、Yarrowia lipolyticaの遺伝的に最適化された系統であるNS432が達成した生産性は、流加グルコース発酵において、0.73g/L/h[バイオマス110g/L、脂質77%(w脂質バイオマス)]であった(J.Friedlander、V.Tsakraklides、A.Kamineni、E.H.Greenhagen、A.L.Consiglio、K.MacEwen、D.V.Crabtree、J.Afshar、R.L.Nugent、およびM.A.Hamilton、Biotechnol.Biofuels,2016,9,77)。しかしながら、最も良好な文献データは、富酸素バッチ培養におけるRhodotorula glutinisが達成した0.87g/L/h[バイオマス185g/L、脂質40%(w脂質バイオマス)]という生産性であった(J.G.Pan、M.Y.Kwak、およびJ.S.Rhee、Biotechnol.Lett.,1986,8,715-718)。Rhodotorula glutinisに関し、トリグリセリドを加えたこの油脂酵母は、著しい量のβ-カロチン(テルペンに基づく脂質)を生産し、これによってこの報告における全脂質収率が説明され得ることに留意しなければならない。本発明者らの現在のデータおよび積み重ねられた文献による報告に基づけば、種々のパラメーター、例えば、酢酸濃度、全培地組成、pH、発酵時間、エアレーション、および発酵システム自体が、脂質生産性を変化させ得る。
最適化手順のこの点において、本発明者らは、25Lスケールまでのスケールで、流加、半連続、または連続プロセスモードにおいて、C.oleaginousの共発酵に、規定の糖ベースの培地および有機酸、例えば酢酸を適用することに成功した。このスケールにおいて、合成N富化培地(培地D)および酢酸を利用して、半連続発酵モードで、1.2g/L/hという最も良好な脂質生産性を達成した。この数字は、Rhodotorula glutinisについて報告されている最も良好な脂質生産性に対して、脂質形成における138%の改善を示す。それにもかかわらず、本研究において、酵母細胞加水分解物を炭素源として使用した場合に、脂質の収率および生産性のさらなる向上が達成された。
株:Cutaneotrichosporon oleaginosus(ATCC 20509)を、抗生物質(10mg/L アンピシリン、10mg/L カナマイシン、および12mg/L テトラサイクリン)を含有する、YPD培地ブロス(10g/L 酵母抽出物、20g/L ペプトン、および20g/L グルコース)が入ったエルレンマイヤーフラスコ内で培養した。そのフラスコを、ロータリーシェーカー内で、100rpm、温度28℃で2日間インキュベートし、次いで、それを接種材料として使用した。
培地D:グルコース 30g/L、酵母抽出物 0.5g/L、ペプトン 5g/L、酢酸ナトリウム 4.1g/L、NHCl 0.5g/L、KHPO 2.4g/L、NaHPO・12HO 0.9g/L、MgSO・7HO 1.5g/L、FeCl・6HO 0.08g/L、ZnSO・7HO 0.01g/L、CaCl・2HO 0.1g/L、MnSO・5HO 0.1mg/L、CuSO・5HO 0.1mg/L、CO(NO・6HO 0.1mg/L。
培地E:酵母抽出物 1.0g/L、ペプトン 1.0g/L、NHCl 0.5g/L、KHPO 2.4g/L、NaHPO・12HO 0.9g/L MgSO・7HO 1.5g/L、FeCl・6HO 0.08g/L、ZnSO・7HO 0.01g/L、CaCl・2HO 0.1g/L、MnSO・5HO 0.1mg/L、CuSO・5HO 0.1mg/L、CO(NO)2・6HO 0.1mg/L。
50Lバイオリアクター:T.oleaginosusのFe流加培養を、50Lバイオリアクター(Bio-Engineer、USA)内で、対応する培地の仕込み容量50Lで実施した。温度は28℃で一定に保たれ、バイオリアクターのpHは、1M NaOHまたは1M HCl(菌類の発酵の場合)および50%酢酸(AA発酵の場合)によって、pH6.5±0.2に調節された。撹拌(350~800rpm)、エアレーション(1.0~2.0NL/Vの空気)、および圧力(0.2~1bar)は、60%を上回る溶存酸素濃度を維持するように自動的に制御された。0.01%(V/V)の消泡剤(Antifoam 204、Sigma Aldrich)を加えることによって泡を予防した。
1.2.下流プロセスおよび脂質回収
実施例7(加水分解酵素の生産)
T.reeseiの2つの変異体RUT C-30(ATCC 56765)および(ATCC 13631)を、個別に、50リットルスケールの発酵槽内で、開始炭素源としてグルコースを用いて培養した。発酵2日目までに、培地中のグルコース含量は、ほぼ枯渇した。その後、部分精製したC.oleaginosusバイオマスを10g/Lの濃度で発酵培地に加えた(培地F)。視覚的観察と、それに続く糖分析を用いて、経時的なC.oleaginosus細胞の減衰を追跡した[データ記載せず]。これによって、T.reeseiが、C.oleaginosus細胞を加水分解することができ、炭素源として利用することができることが示された。培養3日目までに、C.oleaginosus細胞デブリは、完全に分解された。この発酵は、この菌類にストレスをかけ、加水分解酵素の分泌を最大にするために、あと1日継続した。その後、加水分解酵素を濃縮、富化、および精製するために、遠心分離、10kDaクロスフロー濾過による培地濾過、およびバッファー交換を行った。最終的な酵素溶液は、RUT C-30(ATCC 56765)と(ATCC 13631)由来の各酵素溶液について、それぞれタンパク質濃度が3.2%と3.5%(wタンパク質/v溶液)である、約1Lの酵素溶液であった。
続いて、4つのステップにより、酵素活性を評価した:ステップ1-純粋な多糖類によるインキュベーション、ステップ2-精製した酵母バイオマスによるインキュベーション、ステップ3-実際の培養物によるインキュベーション。その後、ステップ4-スケールを25リットルにして酵素活性を確認。
菌類:Trichoderma reesei RUT C-30(ATCC 56765)および(ATCC 13631)をLB培地(5g/L 酵母抽出物、10g/L トリプトン)中で活性化した。そして、これを発酵のための接種材料として使用した。
培地F:TO細胞壁 10g/L、酵母抽出物 10g/L、グルコース 10g/L、(NHSO 1.4g/L、KHPO 2g/L、CaCl・2HO 0.4g/L、MgSO・7HO 0.3g/L、FeSO・7HO 0.005g/L、CoCl・6HO 0.0037g/L、MnSO・HO 0.0016g/L、ZnSO・7HO 0.0014g/L。部分精製細胞壁は、以下のようにして調製した:脂質抽出後、残ったC.oleaginosusバイオマスをdd水で3回洗浄し、凍結乾燥によって2日間乾燥させ、粉砕し、それをT.reeseiのための栄養源として使用した。
50Lバイオリアクター:T.oleaginosusのFe流加培養を、50Lバイオリアクター(Bio-Engineer、USA)内で、対応する培地の仕込み容量50Lで実施した。温度は28℃で一定に保たれ、バイオリアクターのpHは、1M NaOHまたは1M HCl(菌類の発酵の場合)および50%酢酸(AA発酵の場合)によって、pH6.5±0.2に調節された。撹拌(350~800rpm)、エアレーション(1.0~2.0NL/Vの空気)、および圧力(0.2~1bar)は、60%を上回る溶存酸素濃度を維持するように自動的に制御された。0.01%(V/V)の消泡剤(Antifoam 204、Sigma Aldrich)を加えることによって泡を予防した。
実施例8(純粋な多糖類で産生された酵素の評価-活性アッセイステップ1、および純粋な酵母バイオマスで産生された酵素の評価-活性アッセイステップ2)
純粋な多量体糖基質による酵素溶液の(0.35%(w酵素基質)での)インキュベーションの間、本発明者らは、両方の調製物において、セルラーゼ、キシログルカナーゼ、β-グルコシダーゼ、マンナナーゼ、キシラナーゼ、およびラミナリナーゼ酵素活性を検出することができた[データは記載せず]。次いで、得られた酵素系を、C.oleaginosusの精製細胞壁調製物で試験した。図6aおよび6bは、インキュベーション時間にわたる残存バイオマス重量の減少を示し、ATCC13631とATCC56765の酵素溶液による28時間のインキュベーションの後、残存するバイオマスは、それぞれわずか16%(w/w)未満と20%(w/w)未満であった。
酵素活性アッセイ:セルラーゼ、キシログルカナーゼ、β-グルコシダーゼ、マンナナーゼ、キシラナーゼ、およびラミナリナーゼ酵素活性を試験するために、50.0mgのセルロース、キシログルカン、セロビオース、マンナン、キシラン、およびラミナリンを、1mlのバッファー(酢酸ナトリウム 50mM、pH5.0)、および0.35%(w/wバイオマス)の酵素溶液とインキュベートした。C.oleaginosusバイオマスの酵素活性を試験するために、50.0mgの部分精製細胞壁を1mlのバッファー(酢酸Na 50mM、pH5.0)および0.35%(w/wバイオマス)の酵素溶液とインキュベートした。全ての試験は、50℃で28時間インキュベートした。加水分解を追跡するために、重量分析的/糖分析(HPLC)を使用した。
実施例9(新鮮な培養物で産生された酵素の評価-活性アッセイステップ3)
その後、酵素溶液を、新鮮なC.oleaginosus培養物で試験した。比較のために、市販の酵素系の2種類の混合物を調製した。これら2種類の混合物(ミックス1およびミックス2と称する)は、T.reesei由来の酵素系と同じ酵素活性を有していた。両方の混合物における最終的なタンパク質濃度は、それぞれ14.2%と14.5%(wタンパク質/v溶液)であった。個別に、4種類の各酵素系の100μlを、5.0mlの酢酸バッファー(50mM、pH5.0)中で、1.0gのバイオマスと18時間インキュベートした。同じ体積の酵素調製物を用いると、異なる酵素/バイオマス比(w/w)となる。この点に関し、酵素:バイオマス比は、それぞれ、市販の混合物においては約1.4%(w酵素バイオマス)であり、T.reeseiが産生した酵素系についてはおよそ0.35%(w酵素バイオマス)であった。市販の混合物の場合、40~48%(w/w)のバイオマスが溶解し、これに対してT.reeseiが産生した酵素調製物では57~63%(w/w)が溶解した(図6c)。しかしながら、全ての調製物において、遊離した脂質は約40%(w/w)であった(図6d)。
酵素活性アッセイ-2:部分精製細胞壁は、以下のようにして調製した:脂質抽出後、残ったC.oleaginosusバイオマスをdd水で3回洗浄し、凍結乾燥によって2日間乾燥させ、粉砕し、それをT.reeseiのための栄養源として使用した。市販の酵素混合物は次の通りである。ミックス1:マンナナーゼ(Clariant、スイス)、Cellic Ctec2(Novozymes、デンマーク)、Cellic Htec(Novozymes、デンマーク)、およびβ-グルコシダーゼ(Novozymes、デンマーク)。ミックス2:Liquebeet(Clariant、スイス)、CLA(Clariant、スイス)、マンナナーゼ(Clariant、スイス)、1,3-β-グルカナーゼ(1.3-β-glucanase)(Megazyme、フランス)、およびβ-グルコシダーゼ(Novozymes、デンマーク)。
実施例10(25Lスケールで産生された酵素の評価-活性アッセイステップ4)
実験室ベースの実験に続き、本発明者らは、25Lスケールの発酵で、酵素によるC.oleaginosusの溶解手順の妥当性を確認した。最初のC.oleaginosusの発酵は、前記の通りに実施し、C.oleaginosusの増殖は、エアレーションを止めることによって停止させた。この時点では、バイオマスの回収は行わなかった。代わりに、発酵槽の温度を45℃に上昇させ、pHを4.5に調節し、撹拌速度を800rpmに上げることによって、その後のT.reesei加水分解酵素による高脂質含有C.oleaginosus細胞の溶解を可能にした。細胞溶解は、各T.reesei酵素調製物を0.4%(w酵素バイオマス)加えることによって開始させた[全濃度は、0.8%(w酵素バイオマス)であった]。処理の20時間後、反応条件を変更し、pHを7.0、温度を37℃にした。その後、市販のプロテアーゼ調製物(Lavergy(商標)、BASF)を0.5%(w酵素バイオマス)加えることによって、細胞のタンパク質を分解し、反応物を解乳化させた(これは、脂質の遊離を助ける)。
時間分解した細胞溶解および脂質遊離の分析を、フローサイトメトリーによる細胞数分析およびHPLCによる糖遊離分析によって行った。図7aは、インタクトな細胞領域に位置する1つの集団としての細胞密度プロットを示す(R3)。加水分解時間にわたり、領域R3内の細胞密度は減少しているが、より小さい領域(R4)内に新たな集団が生じている。この新たな集団は、細胞デブリを表す。細胞数(図7c)は、細胞数が酵素的加水分解前の983×10細胞/mlから139×10細胞/mlに低下していることから、前記密度プロットの変化を裏付けている。糖分析(図7b)は、加水分解時間にわたる糖含量の増加を示す。
これらのデータは、蛍光顕微鏡によってさらに補強され、この蛍光顕微鏡によって、溶解プロセスの視覚的な洞察が可能となった(図8a)。その後、バイオマスを遠心分離にかけ、そこで、その上層画分は、遊離した脂質を驚くほど純粋な形態で含有していた。この点に関し、図8b、8c、および8dは、遠心分離前後の、酵素的な処理後の遊離脂質を示す。積み重ねられたデータによって、C.oleaginosus酵母細胞の85%(w/w)が加水分解され、全細胞内脂質の約90%(w/w)を遊離させることに成功したことが実証された。
50Lバイオリアクター:T.oleaginosusのFe流加培養を、50Lバイオリアクター(Bio-Engineer、USA)内で、対応する培地の仕込み容量50Lで実施した。温度は28℃で一定に保たれ、バイオリアクターのpHは、1M NaOHまたは1M HCl(菌類の発酵の場合)および50%酢酸(AA発酵の場合)によって、pH6.5±0.2に調節された。撹拌(350~800rpm)、エアレーション(1.0~2.0NL/Vの空気)、および圧力(0.2~1bar)は、60%を上回る溶存酸素濃度を維持するように自動的に制御された。0.01%(V/V)の消泡剤(Antifoam 204、Sigma Aldrich)を加えることによって泡を予防した。
下流プロセス、特に脂質抽出は、経済的および環境的の両方のプロセス効率、ならびに保証を必要とする市場部門(例えば食品産業など)に関係する製品の品質に対して重大な影響力を有する。脂質生産の下流プロセスの処理は、従来、以下の5ステップであった;密度に基づくバイオマス濃縮(例えば、ディスク型セパレーターなど)、細胞破壊(例えば、高圧ホモジナイザーのようなもの)、溶媒抽出(例えば、ヘキサン、またはクロロホルム)、そして最終的に溶媒分離および回収(例えば、固液型分離装置と、それに続いて単一効用エバポレーター)。高コストに加えて、多くの技術的障害が、これらのプロセスを、微生物油の商業的生産のために、工業的に応用する上で妨げになるであろう。まず、高脂質含量(50%(w脂質バイオマス)超)の細胞は、高G遠心分離(約50,000g)において、上清中に懸濁したままであるか、または固まっていない層として最上部に浮かんだままとなるであろうことから(図14)、細胞が高脂質含量であることによって、効率的な分離が妨げられ、それにより回収ステップが非効率的になる。次のステップにおいて、酵母細胞が強固であるため、高圧ホモジナイズは、複数ステップを行っても有効ではない。図15は、2,400barで高圧ホモジナイズを3回行った後の(すなわち、本発明にしたがった処理を受けていない)酵母細胞についての電子散乱顕微鏡像を示す。最後に、ホモジナイズされた細胞は、有機溶媒によって抽出する必要がある。そのため、有機溶媒で抽出された脂質は、高価値な食品および飼料用途のために保証することが困難である。製品の品質以外にも、有機溶媒はプロセス水中および細胞残渣流中にも蓄積し、それがこれらのプロセス流の価格安定化およびリサイクルにおける重大な環境問題を引き起こすであろう。
この研究において、本発明者らは、前処理または有機溶媒を利用した脂質回収ステップを行う必要のない、定量的な細胞溶解と脂質回収/精製を可能にする、新たなin situの酵素的な処理プロセスを開発した。しかしながら、炭水化物とタンパク質加水分解産物(単量体の糖とアミノ酸)は、いかなる溶媒の痕跡による汚染もないため、潜在能力的には、その後の発酵において再利用することが可能である。
1.3.バイオマスと加水分解物画分のリサイクル
実施例11(発酵培地としての酵母加水分解物の試験-リサイクル実験)
最初に、500mLの培地Gを、最初のC.oleaginosus培養サイクルに使用した。図9は、発酵時間にわたる最初のC.oleaginosus増殖速度を示す。これらの実験セットについて、45時間後の脂質生産性は、1.23g/L/h[バイオマス72g/L、脂質77%(w脂質バイオマス)]であった。発酵の終わり(138時間)には、脂質生産性は、0.71g/L/h[バイオマス115.6g/L、脂質85%(w脂質バイオマス)]であった。
続いて、上記のように、その後のグルコヒドロラーゼ処理およびプロテアーゼ処理によって、C.oleaginosusバイオマスの溶解および脂質の遊離がもたらされた。糖、アミノ酸、および微量栄養素を含有する、得られた液体加水分解物を、滅菌および残存する酵素残留物の除去のために、10kDaクロスフローフィルターによって濾過した。その後、加水分解物を60g/Lグルコースに調節し、さらなる培養サイクルにおける発酵培地として使用した。
興味深いことに、発酵培地を含有するこの加水分解物によって、45時間後のバイオマス生産性は、147g/Lまで著しく向上した。同時に、脂質生産性は、2.4/L/h[バイオマス147g/L、脂質73%(w脂質バイオマス)]を記録した。これらの結果は、続く3番目の培養操作においても正確に再現することができた(図9)。バイオマスと脂質の生産性、ならびにそれぞれの全収率は、以前の結果のどれよりも優れている。結果として、このデータは、バイオマス生産性と脂質生産性について、最良の文献値を著しく上回っており、それぞれ1.5倍と2.9倍であった。45
さらに、本発明者らのこの時点のデータは、実験の初めの45時間以内に、より優れたバイオマス生産性および脂質生産性が得られることを示している。よって、本発明者らは、コストおよび大量の効率的培養のためには、最大の収率を得るには45~72時間という短い培養時間で十分であることを示唆する。
培地G:グルコース 50~60g/L、酵母抽出物 5g/L、ペプトン 5g/L、(NHSO 1.4g/L、KHPO 2g/L、CaCl・2HO 0.4g/L、MgSO・7HO 0.3g/L、FeSO・7HO 0.005g/L、CoCl・6HO 0.0037g/L、MnSO・HO 0.0016g/L、ZnSO・7HO 0.0014g/L。
1Lバイオリアクター:対応する培地1Lの4倍の仕込み容量のDASGIP(登録商標)パラレルバイオリアクターシステム(Eppendorf、ドイツ)。温度は、28~30℃で変動し、バイオリアクターのpHは、1M NaOHまたは70~100%酢酸でpH7.0~6.5±0.2に調節された。撹拌(350~800rpm)、酸素比(21~100%)、およびエアレーション(1.0~2.0NL/Vの空気)は、pO≧50%を上回る溶存酸素濃度を維持するように自動的に制御された。0.01%(V/V)の消泡剤(Antifoam 204、Sigma Aldrich)を加えることによって泡を予防した。
本発明者らは、炭素源と有機酸(例えば、糖と酢酸)の両方の同時的な同化を可能にし、栄養限定を必要とすることなく、高いバイオマス収率と脂質収率を同時にもたらす、C.oleaginosus共発酵システムを提示してきた。脂質は、本プロセスについての主要な収益源であると考えられるが、脂質抽出後の残存バイオマスは、従来、低価値な副産物とみなされている。溶媒を利用した脂質抽出/精製に頼った標準的なプロセスにおいて、このバイオマスの副流は、溶媒残留物で汚染されており、かつ、本質的にプロセスコストを増大させる厳しい規制上の要求に基づいて廃棄しなければならない、環境的に有害な廃棄物流として取り扱わなければならない。
これらの従来のプロセスとは対照的に、本発明者らの酵素的加水分解は、有機溶媒のいかなる関与もなしに、酵母バイオマス残留物を発酵可能な糖に変換し、その全濃度は18g/Lであった。さらに、得られた酵母加水分解物は、価値のあるアミノ酸、可溶性リン脂質、ミネラル、および親水性2次代謝産物も含有しており、これらはC.oleaginosusの増殖を促進させ得る。そのため、この加水分解物のリサイクルには、原料の節約および廃棄物流の除去などの多くの利点がある。次の実験において、本発明者らは、バッチ培養と脂質生産を繰り返すための発酵基材としての、C.oleaginosus細胞可溶化物のリサイクルを検討した。
実施例12(さまざまな運転条件の試験)
この実験セットにおいて、さまざまな運転条件を適用した。表1は、適用した運転設定を示す。
この実験結果は、発酵温度と溶存酸素が、それぞれ28℃から10℃および70%から30%に低下するにつれて、得られた脂質の20℃における状態が、硬質/固体から液体に変化していることを示す(表1、図16)。しかしながら、低温かつ低溶存酸素では、暗く赤みがかった油になる。低温かつ低溶存酸素と組み合わせて、酢酸にクロトン酸を加えることによって、脂質の色が改善され、非常に明るい黄色になる。
Figure 2022519874000002
株:Cutaneotrichosporon oleaginosus(ATCC 20509)を、抗生物質(10mg/L アンピシリン、10mg/L カナマイシン、および12mg/L テトラサイクリン)を含有する、YPD培地ブロス(10g/L 酵母抽出物、20g/L ペプトン、および20g/L グルコース)が入ったエルレンマイヤーフラスコ内で培養した。そのフラスコを、ロータリーシェーカー内で、100rpm、温度28℃で2日間インキュベートし、次いで、それを接種材料として使用した。
培地D:グルコース 30g/L、酵母抽出物 0.5g/L、ペプトン 5g/L、酢酸ナトリウム 4.1g/L、NHCl 0.5g/L、KHPO 2.4g/L、NaHPO・12HO 0.9g/L、MgSO・7HO 1.5g/L、FeCl・6HO 0.08g/L、ZnSO・7HO 0.01g/L、CaCl・2HO 0.1g/L、MnSO・5HO 0.1mg/L、CuSO・5HO 0.1mg/L、CO(NO・6HO 0.1mg L
1Lバイオリアクター:対応する培地1Lの4倍の仕込み容量のDASGIP(登録商標)パラレルバイオリアクターシステム(Eppendorf、ドイツ)。温度は、28~30℃で変動し、バイオリアクターのpHは、1M NaOHまたは70~100%酢酸でpH7.0~6.5±0.2に調節された。撹拌(350~800rpm)、酸素比(21~100%)、およびエアレーション(1.0~2.0NL/Vの空気)は、pO≧50%を上回る溶存酸素濃度を維持するように自動的に制御された。0.01%(V/V)の消泡剤(Antifoam 204、Sigma Aldrich)を加えることによって泡を予防した。
実施例13
この実験において、本発明者らは、他の有機酸を栄養源として適用し、油性酵母の増殖、脂質蓄積、および産生された油の脂肪酸プロファイルに対する効果を検討した。したがって、酢酸(AA)、イソ酪酸(iBA)、イソ吉草酸(iVA)、およびクロトン酸(CA)を、グルコースと共に、有機酸源として共発酵に適用した。共発酵システム内での酢酸の使用を、以前の実施例において検証した。よって、酢酸を、この実験の対照として使用した。
4バイオリアクター型のDASGIP(登録商標)パラレルバイオリアクターシステム(Eppendorfから入手)を、この実験のために選択した。バイオリアクター1においては、有機酸源として100%酢酸を適用したが、バイオリアクター2、3、および4においては、有機酸混合物として、それぞれ10%イソ酪酸、イソ吉草酸、またはクロトン酸と、90%酢酸を組み合わせた混合物を適用した。
株:Cutaneotrichosporon oleaginosus(ATCC 20509)を、抗生物質(10mg/L アンピシリン、10mg/L カナマイシン、および12mg/L テトラサイクリン)を含有する、YPD培地ブロス(10g/L 酵母抽出物、20g/L ペプトン、および20g/L グルコース)が入ったエルレンマイヤーフラスコ内で培養した。そのフラスコを、ロータリーシェーカー内で、100rpm、温度28℃で2日間インキュベートし、次いで、それを接種材料として使用した。
培地D:グルコース 30g/L、酵母抽出物 0.5g/L、ペプトン 5g/L、酢酸ナトリウム 4.1g/L、NHCl 0.5g/L、KHPO 2.4g/L、NaHPO・12HO 0.9g/L、MgSO・7HO 1.5g/L、FeCl・6HO 0.08g/L、ZnSO・7HO 0.01g/L、CaCl・2HO 0.1g/L、MnSO・5HO 0.1mg/L、CuSO・5HO 0.1mg/L、CO(NO・6HO 0.1mg L。
1Lバイオリアクター:対応する培地1Lの4倍の仕込み容量のDASGIP(登録商標)パラレルバイオリアクターシステム(Eppendorf、ドイツ)。温度は、28~30℃で変動し、バイオリアクターのpHは、1M NaOHまたは100%酢酸もしくは酢酸と他の有機酸の混合物でpH7.0~6.5±0.2に調節された。撹拌(350~800rpm)、酸素比(21~100%)、およびエアレーション(1.0~2.0NL/Vの空気)は、pO≧50%を上回る溶存酸素濃度を維持するように自動的に制御された。0.01%(V/V)の消泡剤(Antifoam 204、Sigma Aldrich)を加えることによって泡を予防した。
GC-FID:脂肪酸プロファイルは、メチル化後、水素炎イオン化検出器を用いたガスクロマトグラフィー(GC-FID)を用いて測定した。メチル化は、1mgの油を1mlのNaOCHとインキュベートすることによって、短時間に行った(80℃で20分間)。そして、この混合物と1mlのHCl(37%、メタノール中)を、再度、80℃で20分間インキュベートした。これによって生じた脂肪酸メチルエステル(FAMEs(fatty acid methyl esters))を、注入したGC-FID(Shimadzu、日本)内で、ヘキサンによって抽出した。トリグリセロール C19:0を、内部標準として使用した。
バイオマスおよび脂質蓄積は、全てのバイオリアクターにおいて類似していることがわかった。これにより、iBA、iVA、およびCAを栄養源として適用し得ることが裏付けられた。しかしながら、脂肪酸プロファイルについてのGC-FID分析によって、適用した栄養源に応じて、ある程度までは異なる脂肪酸分布が示された。図17、18、19、および20は、C16:0、C18:0、C18:1、およびC18:2のピーク強度の変化を示し、これは、使用した酸に付随する脂肪酸濃度の変化が原因であり得る。さらに、新たな脂肪酸を示す新たなピークが観察された。例えば、図17は、酢酸を栄養源として適用することで得られる、典型的な脂肪酸プロファイルを示す。しかしながら、10%iBAを適用することによって、C17:0およびC17:1が形成される(図18)。その上、10%iVAを適用した場合に、さらに5つの不明なピークが集中的に形成された(図19)。
結論
本発明者らは、酢酸および糖から持続可能な脂質への生物学的変換を、生産性を最大化し、かつ廃棄物生成およびエネルギー消費を最小化して行うための、統合された運転ユニットを実証する。そのため、植物に基づく脂質とのコスト的な隔たりが、大幅に縮小された。

Claims (17)

  1. a)油脂微生物を提供するステップ;
    b)前記油脂微生物を炭素源および有機酸を含む培地中で増殖させ、それによって、前記油脂微生物に微生物脂質を産生させるステップ;
    c)いかなる溶媒による抽出または化学薬品による解乳化も行わない、前記増殖させた油脂微生物の純粋に酵素的な処理を実施し、前記産生された微生物脂質を、その後の回収に適合させるステップ;
    d)前記産生された微生物脂質を、密度に基づく分離法によって回収するステップ
    を含む、微生物脂質を生産するための方法。
  2. 前記油脂微生物が、酵母、菌類、細菌、および微細藻類から選択され、好ましくは、前記油脂微生物が、油脂酵母であり、より好ましくは、前記油脂酵母が、Rhodospirillum属、Trichosporon属、Rhodosporidium属、Rhodosporon属、Candida属、Cryptococcus属、Lipomyces属、Yarrowia属、Rhodotorula属、Apiotrichum属、およびCutaneotrichosporon属から選択される、請求項1に記載の方法。
  3. 前記炭素源が、炭水化物;アミノ酸;脂肪酸;好ましくは単糖類、好ましくはペントースまたはヘキソース、より好ましくはグルコース、キシロース、マンニトール;オリゴ糖;動物組織の加水分解物、植物組織の加水分解物、または微生物の加水分解物;および前記のいずれかの組み合わせを含む群から選択され、より好ましくは、前記炭素源が、グルコースである、前記の請求項のいずれかに記載の方法。
  4. 前記有機酸が、酢酸、マロン酸、シュウ酸、クエン酸、プロピオン酸、吉草酸、アクリル酸、クロトン酸、酪酸、イソ酪酸、イソ吉草酸、3-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシプロピオン酸、2-ヒドロキシ酪酸、乳酸、およびこれらの酸のそれぞれの塩(単数または複数)、ならびに前記有機酸の任意のものの組み合わせを含む群から選択され、好ましくは、前記有機酸が、酢酸またはアセテートである、前記の請求項のいずれかに記載の方法。
  5. 前記増殖させた油脂微生物の前記純粋に酵素的な処理が、前記微生物の、加水分解酵素単独による処理、プロテアーゼと組み合わせた加水分解酵素による処理、または加水分解酵素による処理の後にプロテアーゼによる処理が続く処理である、前記の請求項のいずれかに記載の方法。
  6. 前記加水分解酵素が、菌類から、好ましくは糸状菌から、より好ましくはTrichoderma属、Aspergillus属、Penicillium属、Aureobasillium属、およびFusarium属から選択される菌類から得られたものである、請求項5に記載の方法。
  7. 前記密度に基づく分離法が、自然の重力に基づく分離、重力を利用した相分離、および遠心分離から選択され、ここで、前記自然の重力に基づく分離、重力を利用した相分離、および遠心分離が、それぞれ単独で実施されるか、またはデカンテーション、吸引、またはその他の機械的回収法と組み合わせて実施される、前記の請求項のいずれかに記載の方法。
  8. ステップb)およびc)が、同じ反応槽の中で実施される、前記の請求項のいずれかに記載の方法。
  9. ステップc)および/またはd)が、脂質相、前記油脂微生物の残存バイオマス、および前記油脂微生物の加水分解物をもたらし、ここで、前記方法が、ステップb)~d)を繰り返し実施することを含み、ここで、ステップc)および/またはd)から得られる前記油脂微生物の前記加水分解物が、ステップb)を実施するために再利用/リサイクルされる、前記の請求項のいずれかに記載の方法。
  10. ステップb)~d)が、2~n回実施され、ここで、nが、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、および50から選択される整数である、前記の請求項のいずれかに記載の方法、特に請求項9に記載の方法。
  11. 前記加水分解酵素が、前記油脂微生物の細胞壁を溶解させる加水分解酵素調製物を得るために、誘導システム存在下で培養された菌類から取得され、ここで、好ましくは、前記誘導システムが、前記油脂微生物の構成成分であり、好ましくは微生物脂質を生産するために用いられる前記油脂微生物の1つまたはいくつかの細胞壁構成成分である、請求項5~6に記載の方法、または請求項5~6のいずれかに従属している場合の請求項7~10に記載の方法。
  12. ステップb)で使用される前記培地が、富窒素培地であり、ここで、好ましくは、前記富窒素培地が、炭素と窒素の重量比(C:N)が<100、より好ましくは≦80、とりわけ好ましくは25~80の範囲内である培地である、前記の請求項のいずれかに記載の方法。
  13. ステップb)で使用される前記培地が、窒素源を、好ましくはタンパク質加水分解物の形態で、例えば、ペプトン、トリプトン、またはその他のペプチド性加水分解物の形態でさらに含み、ここで、好ましくは、前記ペプチド性加水分解物が、動物組織、植物組織、および/または前記油脂微生物の構成成分を含む、前記の請求項のいずれかに記載の方法。
  14. 前記プロテアーゼが、存在する場合、Aspergillus sp.、Streptomyces sp.、またはBacillus sp.によって産生されたプロテアーゼから選択される、請求項5~13のいずれかに記載の方法。
  15. 記菌類から得た前記加水分解酵素が、別々に調製され、前記菌類を培養することによって直接得られる液体調製物として、またはステップc)で使用する溶液中で後に再構成される凍結乾燥調製物として、ステップc)に用いられる、請求項6~14のいずれかに記載の方法。
  16. 前記加水分解酵素が、セルラーゼ、キシログルカナーゼ、β-グルコシダーゼ、マンナナーゼ、キシラナーゼ、およびラミナリナーゼ酵素活性から選択される1つまたはいくつかの活性を有する、請求項5~15のいずれかに記載の方法。
  17. 前記方法が、流加様式、半連続モード様式、または連続モード様式で実施され、ここで、好ましくは、前記方法が、前記有機酸の反復的な添加、好ましくは酢酸またはアセテートの反復的な添加を含む、請求項9~16のいずれかに記載の方法。

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