JP5881801B2 - 腸内ポリアミン増強剤 - Google Patents

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Description

本発明は、腸内のポリアミン増強剤、及び当該増強剤を含有する食品及び医薬品等に関する。
腸管内のポリアミン濃度は健康と関わりが強く、疾病予防や寿命の伸長等の作用があることが明らかになりつつある。例えば、腸内のポリアミン濃度を高めることによって、腸管バリア機能が充実する(回復)こと、抗変異原性作用が発揮されること、アトピー性皮膚炎が軽減されること、そして腸管から吸収されたポリアミンによる全身性の慢性炎症が抑制されること等が知られている(非特許文献1)。
上記のようなポリアミンの作用に着目し、腸内のポリアミン濃度を高める検討が行われている。ポリアミンを経口的に摂取した場合、その殆どが小腸上部で速やかに吸収されることが報告されている(非特許文献2)。従って、ポリアミンを単に経口摂取するだけでは腸内のポリアミン濃度を高めることは困難である。また、プロバイオティクスを投与することによって腸内のポリアミン濃度を高めることができると報告されている(非特許文献3)。
細菌のポリアミン濃度の制御機構に関しては、モデル生物の大腸菌を用いた研究により、細胞膜に複数のポリアミントランスポーター(輸送タンパク質)を有しており、培養条件や対数増殖期等の菌のフェーズによってポリアミンの吸収・放出が変動することが明らかになっている。しかしながら、細菌によるポリアミンの吸収又は放出を調節する物質の存在については、コハク酸が大腸菌によるポリアミンの吸収を阻害することが報告されているに過ぎない(非特許文献4)。
松本光晴(2009).腸内増殖型ビフィズス菌LKM512の腸内代謝産物を介した保健機能.Milk Science, 58: 143-152 Uda, K., Tsujikawa, T., Fujiyama, Y. and Bamba, T. (2003) Rapid absorption of luminal polyamines in a rat small intestine ex vivo model. J. Gastroenterol. Hepatol. 18, 554-559 Matsumoto, M., Ohishi, H. & Benno, Y. (2001) Impact of LKM512 yogurt on improvement of intestinal environment of the elderly. FEMS Immunol. Med. Microbiol. 31, 181-186. 壺井雄一、栗原新、小田晋平、熊谷英彦、鈴木秀之.大腸菌の新規プトレッシンインポーターPuuPに関する研究、2006年日本農芸化学会大会講演要旨集p. 108
しかし、プロバイオティクスの投与によっては、投与対象となるヒトや動物の腸内常在菌種の構成によってポリアミン濃度が上昇しないことがある。さらに、腸内のポリアミン濃度を増強する作用を有する成分は知られていない。
このような事情に鑑み、本発明者は、腸内のポリアミン濃度を増強する作用を有する成
分の探索を試みた。その結果、腸内のポリアミン濃度を増強する作用の高い成分をいくつか見出した。かかる知見に基づいて、本発明を完成させた。
本発明は、以下を提供する。
(1)腸内細菌によるポリアミンの生成を促進する成分を少なくとも1種含有する、腸内のポリアミン濃度の増強剤。
(2)腸内細菌によるポリアミンの生成を促進する成分が、アラニン、アルギニン、セリン、プロリン、リシン、γ−アミノ酪酸、ヒドロキシプロリン、リンゴ酸、アスパラギン酸、イソロイシン、チロシン、バリン、ロイシン、アデニン、ウラシル、イノシン、フマル酸、ニコチン酸、ヒポキサンチン、又はこれらの組み合わせから選択される、(1)に記載の増強剤。
(3)胃内及び小腸上中部で溶解せず、小腸下部及び大腸で溶解する被覆層を有する、(1)又は(2)に記載の増強剤。
(4)顆粒剤、粉剤、錠剤、カプセル剤、及びマイクロカプセル剤のいずれかの形態である、(1)〜(3)のいずれか1に記載の増強剤。
(5)食品添加剤として使用する(1)〜(4)のいずれか1に記載の増強剤。
(6)(1)〜(5)のいずれか1に記載の増強剤を含有する食品。
(7)食品がヨーグルトである(6)に記載の食品。
(8)機能性食品である(6)又は(7)に記載の食品。
(9)(1)〜(4)のいずれか1に記載の増強剤を含有する医薬品。
(10)アトピー性皮膚炎を治療するための(9)に記載の医薬品。
本発明に係る成分が腸内細菌によるポリアミンの生産をどのような機構で増強するのかについては、現時点では殆ど解明されていない。これに関連する事項としては、大腸菌におけるポリアミンの代謝経路において、当該代謝経路の中間物質であるコハク酸が大腸菌内に取り込まれることによって菌体内ポリアミン濃度が増加する結果、環境中のポリアミンを吸収しないと推測されているに過ぎない(非特許文献4)。
本発明に係る成分が腸内細菌によるポリアミンの生産を促進することによって腸内のポリアミンの濃度を増強することが示された。このような効果は、上記の報告を鑑みたとしても全くの予想外である。
糞便の抽出物中のポリアミンと当該抽出物中に検出された成分の濃度上の相関関係の一例を示す図である。(A)はγ−アミノ酪酸とプトレッシンとの相関関係、及び(B)はリンゴ酸とスペルミジンとの相関関係を示す図である。 糞便抽出物中の成分がバクテロイデス・テタイオタオミクロン(Bacteroides thetaiotaomicron)によるポリアミンの生成に与える影響を示す図である。(A)〜(C)は、各成分が(A)プトレッシン、(B)スペルミジン、又は(C)スペルミンの生成に与える影響を示す図である。各成分が与える影響を対照に対する比で示した。 糞便抽出物中の成分がブラウティア・プロダクタ(Blautia producta)によるポリアミンの生成に与える影響を示す図である。(A)〜(C)は、各成分が(A)プトレッシン、(B)スペルミジン、及び(C)スペルミンの生成に与える影響を示す図である。各成分が与える影響を対照に対する比で示した。
本発明は、腸内細菌によるポリアミンの生成を促進する成分を有効成分として含有する、腸内のポリアミン濃度の増強剤を提供する(以下、本発明の増強剤ということもある)。本明細書でいう、腸内細菌によるポリアミンの生成を促進する成分とは、腸内細菌に作用してポリアミンの生成を促進させる成分をいう。そのような成分としては、例えば、ポリペプチド、ペプチド、アミノ酸、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、モノヌクレオチド、多糖、オリゴ糖、単糖、脂質、脂肪酸(飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸)、有機酸、ビタミン、及びこれらの類縁体が挙げられる。好ましくはアミノ酸、モノヌクレオチド、有機酸、ビタミン、及びこれらの類縁体が挙げられる。このような成分の具体例として、アラニン、アルギニン、セリン、プロリン、リシン、γ−アミノ酪酸、ヒドロキシプロリン、アスパラギン酸、イソロイシン、チロシン、バリン、ロイシン、アデニン、ウラシル、イノシン、ヒポキサンチン、リンゴ酸、フマル酸、ニコチン酸、及びこれらの誘導体が挙げられる。これらの成分から1種を選択して本発明の増強剤の有効成分としてもよい。さらに、2種以上の成分を選択し、これらの組み合わせを本発明の増強剤の有効成分としてもよい。
ポリアミンとは、アミンを2個以上持つ塩基性物質をいう。ポリアミンは、DNA、RNA、タンパク質の合成と安定化、及び細胞の分化と増殖等に関与することが知られており、生体にとって必須の生理活性物質である。本明細書でいうポリアミンとは、上記のポリアミンのうち、哺乳類の生体内に存在するポリアミンを特に意味する。そのようなポリアミンとは、例えば、プトレッシン、スペルミジン、及びスペルミンが挙げられる。
本発明の増強剤は、腸内細菌によるポリアミンの生成の促進上有効量で投与されることが好ましい。ヒトを投与対象とした場合、そのような有効量とは、例えば、体重1kg当たり0.1〜200mg/kg、好ましくは1〜100mg/kg、より好ましくは5〜20mg/kgである。
本明細書でいう腸内細菌とは、動物の腸内に住みつくいずれの菌をも包含する。腸内菌の主要な割合を占めるのは細菌であるが、酵母やカビ等も存在する。年齢や個体によって菌叢は変動するが、主な細菌としては、クロストリディウム・コッコイデス(Clostridium coccoides)グループ、クロストリディウム・レプタム(Clostridium leptum)グルー
プ、バクテロイデス・フラギリス(Bacteroides fragilis)グループ、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)、アトポビウム(Atopobium)クラスター等が挙げられる。特に、クロストリディウム・コッコイデスグループとバクテロイデス・フラギリスグループの細菌全体に占める割合は高く、少なくともこの2グループで50%以上を占めることが
知られている。クロストリディウム・コッコイデスグループとしては、例えばクロストリディウム・クロストリディフォルムス(Clostridium clostridiiformes)、ブラウティア・プロダクタ(Blautia producta)(旧名:ルミノコッカス・プロダクタス(Ruminococcus productus))、及びユウバクテリウム・レクターレ(Eubacterium rectale)が挙げ
られる。バクテロイデス・フラギリスグループとしては、例えばバクテロイデス・テタイオタオミクロン(Bacteroides thetaiotaomicron)、バクテロイデス・ユニフォルミス(Bacteroides uniformis)、及びバクテロイデス・オバタス(Bacteroides ovatus)が挙
げられる。
本発明の増強剤は、医薬組成物又は食品(特に、機能性食品、健康食品、サプリメントなど)として継続的な摂取が行いやすいように、例えば顆粒剤(ドライシロップを含む)、カプセル剤(軟カプセル剤、硬カプセル剤)、錠剤(チュアブル剤などを含む)、散剤(粉末剤)、丸剤などの各種の固形製剤、又は内服用液剤(液剤、懸濁剤、シロップ剤を含む)などの液状製剤などの形態で調製することができ、成分の安定性や摂取の簡便さの点からカプセル剤又は錠剤の形態が好ましいが、特に限定されるものではない。
カプセル剤又は錠剤の形態の本発明の代謝活性化剤は、医薬又は食品として許容される公知の添加物を用いて製造することができ、医薬又は食品の分野で採用されている通常の製剤化手法を適用することができる。例えば、錠剤は、各成分を処方に従って添加配合し、粉砕、造粒、乾燥、整粒、及び混合を行い、得られた調製混合物を打錠することによって調製することができる。
製剤化のための添加物としては、限定はされないが、例えば、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、流動化剤、分散剤、湿潤剤、防腐剤、粘稠剤、pH調整剤、着色剤、矯味矯臭剤、界面活性剤、溶解補助剤などが挙げられる。また、液剤の形態にする場合は、ペクチン、キサンタンガム、グアガムなどの増粘剤を配合することができる。また、コーティング剤を用いてコーティング錠剤にしたり、ペースト状の膠剤とすることもできる。さらに、他の形態に調製する場合であっても、従来の方法に従えばよい。
本発明の組成物は、必要に応じ、従来公知の着色剤、保存剤、香料、風味剤、コーティング剤などの成分を配合して調製することもできる。
また、本発明の組成物は、1以上の追加成分を配合して調製してもよい。追加成分の例としては、抗酸化剤、血糖降下剤、抗コレステロール剤、免疫賦活剤、ビタミン、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、ミネラル分(鉄、亜鉛、マグネシム、ヨードなど)、脂肪酸(EPA、DHAなど)等を挙げることができる。
本発明の別の側面では、投与方法に適した形態を有する腸内のポリアミン濃度の増強剤を提供する。投与方法としては、例えば、経口投与及び非経口投与が挙げられる。本明細書において「経口投与に適した形態」というときは、例えば、錠剤、ロゼンジ、硬質又は軟質カプセル、水性又は油性懸濁液、乳液、分散性粉末又は顆粒、シロップ又はエリキシルが挙げられる。また「非経口投与に適した形態」としては、直腸投与に適した形態である。「直腸投与に適した形態」としては、例えば座薬、浣腸薬が挙げられる。
本発明の増強剤を経口投与する場合、成分の大部分が小腸上部及び小腸中部において吸収されることにより、腸内細菌によるポリアミンの生成が十分に促進されない可能性がある。ここで、腸の構造をヒトを例にして説明すると、おおまかに3つの領域、小腸上中部、小腸下部、及び大腸、に区分することができる。そして、腸内における上記で説明した主要な細菌:クロストリディウム・コッコイデスグループ、クロストリディウム・レプタムグループ、バクテロイデス・フラギリスグループ、ビフィドバクテリウム属、アトポビウムクラスター等は主として大腸部分に存在している。このような理由から、本発明のポリアミン濃度の増強剤を経口で投与する場合には、小腸上部及び小腸中部における有効成分の吸収を抑制することが、発明の効果を発揮させる上でより好ましい。
従って、本発明の別の側面では、胃内及び小腸上部及び小腸中部で溶解せず、小腸下部及び大腸で溶解する、経口投与用の腸内のポリアミン濃度の増強剤を提供する。そのような増強剤としては、顆粒剤、粉剤、錠剤、カプセル剤、及びマイクロカプセル剤等が挙げられる。一態様として、本発明に係る腸内細菌によるポリアミン生成を促進する成分を封入することによってカプセル剤を調製してもよい。カプセル剤は、使用目的に応じて大きさを任意に調節することができる。例えば、カプセル剤を食品等に混合して使用する場合には、食品本来の食感にできるだけ影響を与えないように小さなカプセル剤を使用してもよい。そのような場合、例えば、直径1mm以下のマイクロカプセルを使用することが挙げられる。一方、カプセル剤をサプリメントとして使用する場合には、サプリメントとして一般的な大きさを採用してもよい。さらに、腸内細菌によるポリアミン生成を促進する成分に加えて、その他の成分をカプセル剤に含有させてもよい。その他の成分としては、例えば、本発明の効果を維持、増強、及び/又は補完する作用を有するものを挙げること
ができる。具体例としては、ビフィズス菌、乳酸菌等が挙げられる。
本発明の増強剤は、例えば、以下のような用途に適している。本発明の増強剤は、例えば、飲料、発酵食品、菓子類、パン類、スープ類等の各種食品又はその添加成分として;又はドッグフード、キャットフードなどの各種ペットフード又はその添加成分として使用することができる。これらの食品の製造方法は、本発明の効果を損なわないものであれば特に限定されず、各用途で当業者によって使用されている方法に従えばよい。本発明の増強剤が適用できる食品は、例えば、生物が日常的に摂取する食品だけでなく、特定保健用食品、栄養機能食品、特別用途食品等の機能性食品にも適用できる。本発明の増強剤が適用可能な食品の例としては、牛乳、ヨーグルト、乳酸菌飲料、チーズ、プリン、アイスクリーム、フルーツジュース、緑茶、紅茶、烏龍茶、コーヒー、サプリメント、及び豆乳等が挙げられる。固形食品に加える場合には、例えば顆粒剤、及び粉剤等の形態で加えることが好ましい。また、飲料、ペースト状食品の場合には、例えばマイクロカプセルの形態で加えることが好ましい。
さらに、本発明の増強剤は、例えば、病気や状態の治療、予防、軽減、抑制等に使用するための医薬に適用することができる。例えば、アトピー性皮膚炎、花粉症など各種アレルギー、炎症性腸疾患、及び慢性炎症の予防と軽減、そして大腸がんの予防等に使用するための医薬品に本発明の増強剤を適用することができる。
本発明に係る腸内細菌によるポリアミンの生成を促進する成分の探索は、自然界に存在する物質、任意に合成した化合物のライブラリー等、いずれを対象にしてもよいが、一例として、動物の代謝産物を対象にすることができる。一態様を以下に示す。
腸内の全代謝産物を解析(メタボローム解析)することによって、腸内のポリアミン濃度を制御する可能性のある成分を探索することができる。健康な成人から採取した糞便をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で抽出し、当該抽出液をろ過フィルターで処理したものを
腸内の全代謝産物として解析用のサンプルとする。当該サンプルをメタボローム解析に供し、ピークを検出する。当該ピークの情報として、質量電荷比(m/z)、泳動時間(Migration time: MT)、及びピーク面積値を得る。各ピーク面積値の内部標準の面積値に
対する相対値を算出し、腸内の代謝産物中のポリアミン含量との相関性を検討する。これとは別に、各ピークについてのm/z及びMT値に基づいて、対応する成分を同定する。
上記の探索によってポリアミン濃度と正の相関を有する成分が見出された場合は、当該成分が腸内のポリアミン濃度の増強効果を有するのか評価する必要がある。そのような評価において、例えば、腸内細菌によるポリアミンの生成を指標とすることができる。一態様を以下に示す。
腸内で最も優勢に存在する常在菌、例えば、クロストリディウム・コッコイデスグループやバクテロイデス・フラギリスグループに属する細菌を前培養し、適切な液体培地に所定の濃度で懸濁する。一方、上記の探索で見出された成分を所定の濃度で含有する液体培地を調製し、上記の細菌を懸濁した培地を所定量で接種し、嫌気的に培養する。所定時間後の培養液を回収して上清を得る。当該上清をトリクロロ酢酸(TCA)で処理し、TCAを除去する。その後蛍光標識し、ポリアミンに相当する蛍光ピークを検出する。対照との比較において、ポリアミンの濃度を1.2倍以上に増強させる成分を、腸内細菌によるポリアミンの生成を促進させる効果を有するものとして判断する。
以下の具体例によって本発明をさらに詳細に説明する。これらは、本発明の理解をより容易にするために記載されたものであって、本発明の範囲はこれに限定されるものではな
い。
[試験例1] ポリアミンの濃度を増強させる可能性のある成分の探索
腸内全代謝産物解析(メタボローム解析)を用いて、腸内のポリアミン濃度を増強する可能性のある成分を糞便から探索した。
食事由来成分による影響を低くするため、20〜30歳代の健康な成人男性12名に全く同じメニューの食事を1日3回(朝昼晩、約2300kcal/day)4日間に渡って与えた。5日目の朝の糞便を採取し、PBSで5倍に希釈した。当該希釈液を分子量5000の限界ろ過フィルターで処理後、CE−TOFMSによるメタボローム解析に供した。当該メタボローム解析は、ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社に受託した。解析条件を以下に示す。
1.陽イオン性代謝物質(カチオンモード)
装置:Agilent CE-TOFMS system(Agilent Technologies社);
Capillary : Fused silica capillary i.d. 50 μm × 80 cm;
測定条件;
Run buffer : Cation Buffer Solution ( p/n : H3301-1001)
Rinse buffer : Cation Buffer Solution ( p/n : H3301-1001)
Sample injection : Pressure injection 50 mbar, 10 sec
CE voltage : Positive, 27 kV
MS ionization : ESI Positive
MS capillary voltage : 4,000 V
MS scan range : m/z 50-1,000
Sheath liquid : HMT Sheath Liquid ( p/n : H3301-1020)。
2.陰イオン性代謝物質(アニオンモード)
装置:Agilent CE-TOFMS system(Agilent Technologies 社);
Capillary : Fused silica capillary i.d. 50 μm × 80 cm;
測定条件;
Run buffer : Anion Buffer Solution ( p/n : H3302-1021)
Rinse buffer : Anion Buffer Solution ( p/n : H3302-1022)
Sample injection : Pressure injection 50 mbar, 25 sec
CE voltage : Positive, 30 kV
MS ionization : ESI Negative
MS capillary voltage : 3,500 V
MS scan range : m/z 50-1,000
Sheath liquid : HMT Sheath Liquid ( p/n : H3301-1020)。
CE−TOFMSによって検出されたピークは、自動積分ソフトウェアのMasterHands ver.2.1.0.1(慶應義塾大学開発)を用いて自動抽出し、ピーク情報として質量電荷比(
m/z)、泳動時間(Migration time: MT)、及びピーク面積値を得た。当該各ピーク
面積値を内部標準の面積値で割り、相対値を算出し個体間の比較を行った。各ピークの相対値と、上記の方法で同様に算出したポリアミン(プトレッシン、スペルミジン、スペルミン)の相対値を比較検討した。一方、検出された各ピークについてのm/z及びMTの値をHMT代謝物質データベースと照合することにより、各ピークに対応する成分を同定した。
解析の結果、糞便の抽出物からカチオン125成分、アニオン96成分が検出された。これらの成分とポリアミンの濃度上の相関性の有無を検討した。その一例を図1に示す。
当該検討により、プトレッシンの濃度と危険率5%以下で正の相関性を有する成分が28
種類、スペルミジンの濃度と危険率5%以下で正の相関性を有する成分が23種類存在す
ることが示された(表1)。
[試験例2] 腸内のポリアミン濃度の増強効果
試験例1においてポリアミンと濃度上の有意な相関性を示した成分が、腸内の常在菌によるポリアミンの生成を促進するか検討した。
上記成分の中から、コストや安全性等の様々な観点を考慮して、次の成分を選択し、試験を行った: アラニン、セリン、ロイシン、イソロイシン、チロシン、バリン、アスパラギン酸、アルギニン、プロリン、リジン、γ−アミノ酪酸(GABA)、アデニン、イノシン、ヒポキサンチン、ウラシル、キサンチン、ニコチン酸、リンゴ酸、フマル酸。
腸内で最も優勢に存在するクロストリディウム・コッコイデスグループやバクテロイデス・フラギリスグループから、試験に使用する腸内常在菌を選択した。バクテロイデス・フラギリスグループとしてバクテロイデス・テタイオタオミクロンJCM 5827T及びクロス
トリディウム・コッコイデスグループとしてブラウティア・プロダクタJCM 1471T(旧名
:ルミノコッカス・プロダクツ)を用いた(独立行政法人 理化学研究所バイオリソースセンター微生物材料開発室より入手)。これら菌株をそれぞれEggerth Gagnon(EG)寒天培地にて37℃で48時間前培養し、GAM液体培地(日水製薬株式会社)にOD660値
が0.5になるよう懸濁した。
一方、上記試験例1で選択した成分を希釈して10%(w/v)水溶液を調整した。一部の有機酸、即ちフマル酸、アスパラギン酸、イノシン、アデニン、ヒポキサンチン、キサンチン、イソロイシン、ニコチン酸、ロイシン、バリン、チロシン、及びウラシルは、水酸化ナトリウムで中和しながら溶解することによって10%(w/v)水溶液を調整した。当該10%(w/v)水溶液をそれぞれGAM液体培地に添加し、各成分を0.2%(w/v)で含有するGAM液体培地を調製した。当該液体培地の液量の1%に相当する量で上記菌株の懸濁液を当該液体培地に添加し、アネロパック・ケンキ(商標)(三菱ガス化学株式会社)を用いる嫌気培養を行なった(37℃、24時間)。培養24時間後に培養液を回収し、遠心分離にかけて上清を得た。当該上清を以下の分析に使用するまで−20℃で保存した。
当該上清をトリクロロ酢酸(TCA)(最終濃度13.3%)で処理した後、ジエチルエーテルで2回処理することによってTCAを除去した。さらに9−フルオレニルメチルクロロホルメート(FMOC)を用いて蛍光標識し、ACQUITY UPLC(商標)システム(Waters)にて測定した。データ解析はEmpower(商標)2(Waters)を用いて行った。各培養液のポリアミン濃度は、対照に対する相対値として算出した。対照は上記成分の代わりに蒸留水を添加した以外は、同様の処理を施したものである。
試験に供した成分が、バクテロイデス・テタイオタオミクロンによるポリアミンの生成に与える影響を図2に示した。プトレッシンの濃度は、アラニン、アルギニン、及びイノシンの添加によっておよそ1.2倍、セリンの添加によっておよそ1.25倍、ロイシンの添加によっておよそ1.4倍、及びアデニンの添加によっておよそ2.0倍に増加した(図2(A))。スペルミジンの濃度は、イソロイシンの添加によっておよそ1.25倍、ニコチン酸の添加によっておよそ1.5倍、γ−アミノ酪酸、イノシン、及びヒポキサンチンの添加によっておよそ2.0倍、アラニンの添加によっておよそ2.5倍、アデニンの添加によっておよそ3.2倍、そしてリンゴ酸の添加によっておよそ4.5倍に増加した(図2(B))。スペルミンの濃度は、リンゴ酸、アスパラギン酸、チロシン、ロイシン、アデニン、及びキサンチンの添加によっておよそ1.25倍、イソロイシン、イノシン、フマル酸、及びヒポキサンチンの添加によっておよそ1.5倍、ニコチン酸の添加によっておよそ1.8倍、ウラシルの添加によっておよそ2.0倍、そしてバリンの添加によっておよそ2.3倍に増加した(図2(C))。
一方、試験に供した成分が、ブラウティア・プロダクタによるポリアミンの生成に与える影響を図3に示した。プトレッシンの濃度は、イノシンの添加によっておよそ1.2倍、ロイシンの添加によっておよそ1.25倍、アデニン及びヒポキサンチンの添加によっておよそ1.3倍、γ−アミノ酪酸、ウラシル、及びキサンチンの添加によっておよそ1.5倍に増加した(図3(A))。スペルミジンの濃度は、アデニンの添加によっておよそ1.2倍、そしてリンゴ酸の添加によっておよそ1.5倍に増加した(図3(B))。スペルミンの濃度は、アルギニン、プロリン、及びヒポキサンチンの添加によっておよそ1.3倍、チロシン、イノシン、及びニコチン酸の添加によっておよそ1.5倍、アラニン、セリン、リジン、及びアスパラギン酸の添加によっておよそ1.8倍、γ−アミノ酪酸、ロイシン、及びアデニンの添加によっておよそ2.3倍、リンゴ酸の添加によっておよそ2.8倍、そしてバリンの添加によっておよそ3.0倍に増加した(図3(C))。
図2及び図3の結果を併せて考えると、アラニン、アルギニン、セリン、プロリン、リジン、γ−アミノ酪酸、ヒドロキシプロリン、リンゴ酸、アスパラギン酸、イソロイシン、チロシン、バリン、ロイシン、アデニン、ウラシル、イノシン、フマル酸、ニコチン酸、ヒポキサンチン、及びキサンチンが、プトレッシン、スペルミジン、及びスペルミンのいずれかの濃度を対照と比べて1.5倍以上に増加させることが示された。特にアラニン、γ−アミノ酪酸、リンゴ酸、バリン、ロイシン、及びアデニンは、プトレッシン、スペルミジン、及びスペルミンのいずれかの濃度を2.0倍以上に増加させる高い効果を有していることが示された。
以上の試験例の結果を総合すれば、本発明に係る成分は、腸内の常在菌であるバクテロイデス・テタイオタオミクロン及びブラウティア・プロダクタに対してポリアミンの生成を促進させる効果があることが明らかである。そして、当該成分は、これら菌株が属するクロストリディウム・コッコイデスグループやバクテロイデス・フラギリスグループに属する他の菌株に対しても同様の効果を発揮することが示唆される。クロストリディウム・コッコイデスグループやバクテロイデス・フラギリスグループを合わせると、ヒト腸内の菌叢の50%程度を占める最優勢菌群となることから、本発明に係る成分は生体内において高い効果を発揮することが考えられる。

Claims (5)

  1. 腸内細菌によるプトレッシンの生成を促進するための腸内のポリアミン濃度の増強剤であって、
    腸内細菌によるプトレッシンの生成を促進する成分を少なくとも1種含有、前記成分が、アラニン、アルギニン、セリン、γ−アミノ酪酸、リンゴ酸、ロイシン、アデニン、ウラシル、イノシン、ヒポキサンチン又はこれらの組み合わせから選択される、
    前記増強剤。
  2. 前記成分としてアルギニンを含んでなる、請求項1に記載の剤。
  3. 前記成分はアルギニンからなる、請求項1又は2に記載の増強剤。
  4. 胃内及び小腸上中部で溶解せず、小腸下部及び大腸で溶解する被覆層を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の増強剤。
  5. 顆粒剤、粉剤、錠剤、カプセル剤、及びマイクロカプセル剤のいずれかの形態である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の増強剤。
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