JP5046174B2 - アルギニン含有血流増加用組成物 - Google Patents
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Description
こうした血流増加剤としてカルシウム拮抗剤や細胞呼吸賦活剤、鎮けい剤、生体内酵素などが用いられてきた。
これまでの研究によりアルギニンは血管を拡張させることが知られており、その作用機構として、血管内皮細胞に発現する一酸化窒素合成酵素が血管を拡張させる一酸化窒素をアルギニンから合成することが明らかにされている。外部から投与されたアルギニンはただちに一酸化窒素の合成を引き起こし、この作用による血管の拡張が生じるが、食餌由来のアルギニンは通常こうした作用を示さない(非特許文献2)。
こうしたアルギニン摂取の作用は広く知られていたが、従来はアルギニンによる血管の拡張は血流の増加と同時に血圧の低下も生じさせると考えられてきた。例えば平均体重78キログラムのヒトに30グラムないし6グラムのアルギニンを静脈投与した検討では、30グラムのアルギニン投与では血圧の低下および血管抵抗の低下が生じたのに対して6グラムのアルギニン投与ではそのどちらも生じなかったことが報告されている(非特許文献3)。このほかにもアルギニンによる血流の増加は報告されているが、いずれの場合もアルギニン投与量が過大か、ポリフェノール類といった単独で血流増加作用を有する血流増加用組成物と併用する必要がある(非特許文献4、特許文献1、2)。このためアルギニン単独では血圧の低下を引き起こすことなく血流を増加させることは難しいと考えられてきた。
すなわち本発明は、アルギニンを含有する血流増加用組成物であって、アルギニンを1回あたりの投与量が25mg/kg体重〜150mg/kg体重となる量で含有する前記血流増加用組成物を提供する。
本発明はまた、上記血流増加用組成物を含有する、痴呆、冷え性、肩凝り、くすみ、筋疲労を予防、軽減又は治療するための医薬組成物を提供する。
本発明はまた、アルギニンを含有した血流増加用食品を提供する。
本発明はまた、上記血流増加用組成物を含有する飼料を提供する。
本発明の血流増加用組成物におけるアルギニンの含有量は、1回あたりの投与量が25mg/kg体重〜150mg/kg体重、好ましくは50〜150mg/kg体重となる量である。
本発明の血流増加用組成物におけるアルギニンの含有量は、アルギニンを投与した際の血漿中遊離アルギニン濃度の上昇が血漿1ミリリットルあたり15ミリグラムから180ミリグラム、好ましくは25ミリグラムから180ミリグラム、より好ましくは50ミリグラムから180ミリグラム、更に好ましくは50ミリグラムから150ミリグラムの範囲となるような用量のアルギニンに相当するのが好ましく、本発明の1回あたりの投与量はこれを満足するものである。ここで、血漿中遊離アルギニン濃度は、アルギニン投与後、10分経過後の血漿を採取して、アミノ酸アナライザー(日立製作所製アミノ酸アナライザー、L8500)を用いることにより測定することができる。
上記範囲でアルギニンを含有することにより、全身血圧の降下等の副作用を抑制しながら毛細血管での血流を効果的に増加させることができる。
本発明では、本発明の組成物を投与する前の血流に対して20%以上血流が増加したとき血流増加と判断し、本発明の組成物を投与する前の血圧に対する変動が±11mg以内のとき血圧の変動がないと判断する。これは、対照自体が19%未満の血流の変動かつ12mmHg未満の血圧変動を示すことがあることに起因している。
このうち、グルタミンが特に好ましい。
本発明において使用できるグルタミンとしては、L体グルタミンおよび生体内ですみやかにL体グルタミンに代謝されるL体グルタミン誘導体、例えばN−アセチル−L−グルタミンおよび構成アミノ酸としてL体グルタミンを含むペプチドがあげられる。このうち、L体グルタミンが好ましい。
本発明において使用できるピロリドンカルボン酸としては、L体が好ましい。該酸は、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属及びカルシウム等のアルカリ土類金属、アルギニン及びリジン等の塩基性アミノ酸、トリエタノールアミン等のアミン類等と塩を形成してもよい。該酸はまた、アルコール類と誘導体を形成してもよく、該酸から構成される酸無水物、ペプチド及びたんぱく質等の形態であってもよい。このうち、ナトリウム塩が好ましい。
本発明において使用できるグルタミン酸としては、L体グルタミン酸および構成アミノ酸としてL体グルタミン酸を含むペプチドがあげられる。該酸は、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属及びカルシウム等のアルカリ土類金属、アルギニン及びリジン等の塩基性アミノ酸、トリエタノールアミン等のアミン類等と塩を形成してもよい。該酸はまた、アルコール類と誘導体を形成してもよく、該酸から構成される酸無水物、ペプチド及びたんぱく質等の形態であってもよい。このうち、L体グルタミンが好ましい。
本発明の血流増加用組成物におけるアルギニンと、グルタミン、ピロリドンカルボン酸、グルタミン酸及びこれらの塩又は誘導体からなる群から選ばれるアミノ酸との配合比は、質量比にして1:4〜4:1、好ましくは1:2〜2:1とするのが好ましい。このような比でアルギニンと、グルタミン、ピロリドンカルボン酸、グルタミン酸及びこれらの塩又は誘導体からなる群から選ばれるアミノ酸とを併有することにより、血流量が著しく増大するので好ましい。
本発明の血流増加用組成物は、医薬組成物形態の他、血流増加のために用いられるものである旨の表示を附した食品、健康食品、栄養補助食品(サプリメント)、栄養組成物又は飼料等の形態をとることもできる。投与量は、通常、投与対象の体重及び健康状態等に依存して変化するが、成人に使用する場合、アルギニンとして1日あたり好ましくは4.5g〜27g、より好ましくは9g〜27gである。
本発明の医薬組成物は、更に、中枢神経用薬、末梢神経用薬、循環器用薬、ホルモン剤、抗ホルモン剤、ビタミン剤、滋養強壮薬、解毒剤、抗腫瘍剤、アレルギー用薬、生薬、漢方製剤、化学療法剤、生物学的製剤、診断用薬など医薬品として使用されている他の有効成分を含有することもできる。
本発明の医薬組成物は、経口的又は非経口的に、例えば経腸、経静脈投与することができる。
本発明の食品は、更に、アミノ酸、ビタミン、卵殻カルシウム、パントテン酸カルシウム、その他のミネラル類、ローヤルゼリー、プロポリス、蜂蜜、食物繊維、アガリクス、キチン、キトサン、カプサイシン、ポリフェノール、カロテノイド、脂肪酸、ムコ多糖、補酵素、抗酸化物質などを配合することにより健康食品とすることもできる。
本発明の血流増加用組成物の製品形態には特別の制限は無く、通常用いられているアミノ酸の摂取できる形態であればいずれの形態でもよい。このような形態としては経口摂取であれば適当な賦形剤を使用した粉末、顆粒、タブレット、液体(飲料、ゼリー飲料)、キャンディ(チョコレート等)、あるいは上記1種あるいは2種のアミノ酸の単なる混合物を挙げることが出来る。また静脈投与であれば上記1種あるいは2種のアミノ酸を含有した輸液、水溶液、用時調製のためのアミノ酸粉末を挙げることが出来る。
一方、血圧測定は、動脈に挿入したカテーテル内の血圧を圧力センサー(トランスデューサー 日本光電製TP−400T)、アンプ(日本光電製AP−601G)、記録装置(ADInstruments製MacLab/16S)等を用いて経時的に測定できる。
試験例1(ラットにアルギニンを投与した際の血圧と血流の変化量の確認)
(1)試験の概要:
(a)ラットを対象に、アルギニン投与による全身血圧の変化と下肢大腿部の皮膚の毛細血管での血流増加効果を検討した。
(b)体重400グラム前後のSD系雄ラットを対象とした。
(c)ラットをペントバルビタールで麻酔し、動脈にカテーテルを挿入したうえでここから血圧を経時的に測定、記録した。また下肢大腿部の皮膚上にレーザードップラー血流測定装置のプローブを固定し、皮膚表面の血流を経時的に測定、記録した。アルギニンはクエン酸でpHを7.4に調整したものを体重1キロあたり50、150および500ミリグラムの用量で30分間にわたり一定速度で持続的に頚静脈より注入し、前後の血圧および下肢大腿部皮膚の血流を観察した。1投与量あたり3匹のラットを用い、3匹の平均値の変動で評価を行った。陰性対象群には生理食塩水を投与した。
(e)以上の結果から、体重1キロ当たり500ミリグラムのアルギニンを投与したラットでは血圧の低下と血流の増加が認められたのに対して体重1キロ当たり150ミリグラム以下のアルギニンを投与したラットでは血圧低下を殆ど生ずることなく血流の増加が認められ、本発明の用量でのアルギニン投与は血圧低下を殆ど生ずることなく血流の増加を引き起こすと考えられた。
(c)血流の測定:レーザードップラー血流計(オメガウェーブ製FLO−N1)に接続した薄型プローブを皮膚表面に貼付け、レーザーを照射することにより血液量、血液速度、血流を測定した。
(d)試験結果:アルギニン投与試験で観察された血圧および血流の変化を下記第2表にまとめた。血圧及び血流は、アルギニン注入開始直前と、注入開始から20〜30分後(用量50および150ミリグラムの場合)、50〜60分後(用量500ミリグラムの場合)に測定し、10分間の値の平均値で表した。
(1)試験の概要:
(a)ラットを対象にアルギニン投与時の複数の臓器での毛細血管での血流の変化を測定した。
(b)体重400グラム前後のSD系雄ラットを対象とした。
(c)ラットをペントバルビタールで麻酔し、頚静脈よりクエン酸でpHを7.4に調整したアルギニンを体重1キロあたり0、50、および150ミリグラムの用量で30分間にわたり一定速度で持続的に注入した。このアルギニン投与の前後に頚動脈から左心室に留置したカテーテルから各々黄色および赤色のマイクロスフィアを注入し、心臓から全身の臓器の毛細血管に分布したマイクロスフィア量を比較することにより各臓器のアルギニン投与前後の血流を比較した。
(e)以上の結果から、体重1キロ当たり150ミリグラムのアルギニンを投与したラットでは幅広い臓器、器官の毛細血管において血流の増加が認められたのに対して、体重1キロ当たり50ミリグラムのアルギニンを投与したラットでは、筋肉および脳の毛細血管での血流の増加が顕著に認められており、本発明の用量でのアルギニン投与は筋肉および脳において得に顕著であると考えられた。
(f)また、血圧については、10mmHg以内の変動しか示されなかったため、体重1キロあたり50および150ミリグラムのアルギニン投与の際には、血圧に変動は生じないことが示された。
(c)血流の測定:30分間のアルギニン投与の直前および直後に黄色および赤色マイクロスフィアを左心室内に留置したカテーテルより注入した。二度目のマイクロスフィア投与から十分な時間を置いた後にラットを安楽死させ、筋肉、消化管、肝臓、腎臓、脾臓、心臓、脳、脂肪組織、腹部皮膚を取り出したのちに、各臓器に含まれるマイクロスフィアを回収し、マイクロスフィア量から算出した血流の変化率を各臓器ごとに求めた。
(d)試験結果:アルギニン投与試験で観察された血流の変化を下記第4表にまとめた。
(1)試験の概要:
(a)ラットを対象に、アルギニン静脈投与時の血漿中遊離アルギニン濃度を測定した。
(b)体重400グラム前後のSD系雄マウスを対象とした。
(c)ラットをペントバルビタールで麻酔し、頚静脈よりクエン酸でpHを7.4に調整したアルギニンを体重1キロあたり0、50、および150ミリグラムの用量で午前10時より30分間にわたり一定速度で持続的に注入した。このアルギニン投与の直前および投与終了後10分後から40分後までの10分おきに大腿動脈に留置したカテーテルより採血を行い、血漿中の遊離アルギニン濃度を測定した。
(d)アルギニンを体重1キロあたり50ミリグラム投与したラットでは血漿中遊離アルギニン濃度が最大で1ミリリットルあたり46.1マイクログラム上昇し、アルギニンを体重1キロあたり150ミリグラム投与したラットでは血漿中遊離アルギニン濃度が最大で1ミリリットルあたり177.5マイクログラム上昇した。一方でアルギニンを投与しない対照群では血漿中遊離アルギニン濃度の上昇は見られなかった。
(e)以上の結果から、血流増加が認められた体重1キロあたり50および150ミリグラムのアルギニン投与の際には、血漿中遊離アルギニン濃度は各々1ミリリットルあたり15.7から46.1マイクログラムあるいは1ミリリットルあたり77.2から177.5マイクログラム上昇していることが確認された。
(f)また血圧については、同じ投与量で行った試験例1において変化しないことが示されており、ここで示された範囲の血漿中アルギニン濃度の変動では血圧は変動しないことが確認された。
(c)血漿中遊離アルギニン濃度の測定:ラットの大腿動脈に留置したカテーテルよりアルギニン投与の前後に採血を行い、この血液中に含まれる遊離アルギニンの濃度をアミノ酸アナライザー(日立製作所製アミノ酸アナライザー、L8500)を用いて測定した。
(d)試験結果:アルギニン投与試験で観察された血漿中遊離アルギニン濃度の経時的な上昇量の変化を下記第6表にまとめた。
(a)ラットを対象に、アルギニンとグルタミンの投与による全身血圧の変化と下肢大腿部の皮膚の毛細血管での血流増加効果を検討した。
(b)体重400グラム前後のSD系雄ラットを対象とした。
(c)ラットをペントバルビタールで麻酔し、動脈にカテーテルを挿入したうえでここから血圧を経時的に測定、記録した。また下肢大腿部の皮膚上にレーザードップラー血流測定装置のプローブを固定し、皮膚表面の血流を経時的に測定、記録した。投与液にはクエン酸で中和したアルギニンまたはアルギニンとグルタミンの等量の混合液を用い、アルギニンの用量として体重1キロあたり50ミリグラムを30分間にわたり一定速度で持続的に注入し、この前後の血圧および下肢大腿部皮膚の血流を観察した。1投与量あたり3匹のラットを用い、3匹の平均値の変動で評価を行った。陰性対象群には生理食塩水を投与した。
(d)体重1キロ当たり50ミリグラムのアルギニンを投与した全てのラットにおいて、アルギニン投与後に下肢大腿部皮膚の血流量が最大で+20.0%増加することが確認されたが、体重1キロ当たり50ミリグラムのアルギニンと等量のグルタミンとの混合液では下肢大腿部皮膚の血流量が最大で+39.9%増加することが確認された。
(e)以上の結果から、体重1キロ当たり50ミリグラムのアルギニンと等量のグルタミンとの混合液は体重1キロ当たり50ミリグラムのアルギニンのみを投与した時よりも血流の増加が著しいことから、本発明でのアルギニン投与による血流増加はグルタミンとの併用により増強されると考えられた。
(c)血流の測定:レーザードップラー血流計(オメガウェーブ製FLO−N1)に接続した薄型プローブを皮膚表面に貼付け、レーザーを照射することにより血液量、血液速度、血流を測定した。
(d)試験結果:投与試験で観察された血圧および血流の経時的変化を下記第8表にまとめた。血圧及び血流は、アルギニン注入開始直前と、注入開始から20〜30分後に測定し、10分間の値の平均値で表した。
(1)試験の概要:
(a)ラットを対象にアルギニン投与時の複数の臓器への化合物の送達量の変化を測定する目的で、医薬品などの化合物の送達量を推定するためのモデルとして用いたエバンスブルー(和光純薬工業製)の送達量の変化を測定した。
(b)体重400グラム前後のSD系雄ラットを対象とした。
(c)ラットをペントバルビタールで麻酔し、頚静脈よりクエン酸でpHを7.4に調整したアルギニンを体重1キロあたり0、50、および150ミリグラムの用量で30分間にわたり一定速度で持続的に注入した。このアルギニン投与の前後に頚静脈に留置したカテーテルからエバンスブルーを注入し、全身の臓器に分布したエバンスブルーの量を分光光度計で比較することにより各臓器への化合物の送達量を比較した。
(e)以上の結果から、体重1キロ当たり50あるいは150ミリグラムのアルギニンを投与したラットではエバンスブルーの送達量が増加しており、本発明の用量でのアルギニン投与は臓器への化合物の送達量を増加させることが示された。
(c)エバンスブルー送達量の測定:30分間のアルギニン投与の直後にエバンスブルー水溶液(50ミリグラム/ミリリットル)を頸静脈に留置したカテーテルより注入した。十分な時間を置いた後にラットを安楽死させ、筋肉、消化管、肝臓、腎臓、脾臓、心臓、脳、脂肪組織、腹部皮膚を取り出し、各臓器をホルマリン溶液に浸漬してエバンスブルーを溶出し、分光光度計で得られた吸光度から算出したエバンスブルー送達量を各臓器ごとに求めた。
(d)試験結果:アルギニン投与試験で観察されたエバンスブルー送達量の変化を下記第10表にまとめた。
Claims (5)
- アルギニンを1回あたりの投与量が25mg/kg体重〜150mg/kg体重となる量で含有し、グルタミンを、1回あたりの投与量が6.25mg/kg体重〜600mg/kg体重となる量で含有する、血圧を下げることなく血流を増加させるための組成物。
- アルギニンが、L-アルギニン、L-アルギニン塩化物からなる群から選ばれる請求項1記載の組成物。
- 前記組成物が、毛細血管における血流を増加させるための組成物である、請求項1又は2記載の組成物。
- 前記組成物が、皮膚、筋肉、腸、心臓又は脂肪組織における血流を増加させるための組成物である、請求項1〜3のいずれか1項記載の組成物。
- 請求項1〜4のいずれか1項記載の組成物を含有する、痴呆、冷え性、肩凝り、くすみ又は筋疲労を予防、軽減又は治療するための医薬組成物。
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