JP5881503B2 - キャニスタパージ制御装置 - Google Patents

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本発明は、キャニスタパージ制御装置に関するものであり、特に、蒸散燃料の外部流出を抑制するためキャニスタに貯えられた蒸散燃料を吸気系統に環流(以下、「パージ」という)させる際に、燃料噴射補正量の値に基づいてパージ量を制御することができるキャニスタパージ制御装置に関する。
特許文献1には、主として停車時に燃料タンクで発生する蒸散燃料が大気中に放出されるのを抑制するため、燃料系に設けられたキャニスタに一時的に蒸散燃料を貯え、エンジン運転時にパージ制御弁で流量制御しつつ吸気系にパージして燃焼処理するキャニスタパージ制御装置が開示されている。このキャニスタパージ制御装置では、基本燃料噴射量のフィードバック補正係数に基づいてパージ制御弁を制御している。
特許第3212211号公報
特許文献1に記載されているキャニスタパージ制御装置では、O2センサ(酸素濃度センサ)の出力をもとに、空燃比を理論空燃比に収斂させる目標空燃比フィードバック制御(以下、単に「目標空燃比制御」という)において、フィードバック補正係数が所定の範囲内に収まるようにパージ制御弁のデューティ比を制御する。しかし、自動二輪車におけるエンジンのように目標空燃比制御する領域と、目標空燃比制御を行っていない領域とを有するエンジンに特許文献1に記載されている従来技術をそのまま適用するだけでは、目標空燃比制御を行っていない領域でパージ制御弁のデューティ比を目標空燃比制御に応じて算出できないので、パージ制御を止めてしまうと、キャニスタに蒸散燃料が多く溜まり、次のパージ制御での吸気系に戻される量が多くなり、エミッションが悪くなったりドライバビリティが低下してしまったりする課題がある。
本発明の目的は、上記課題を解消して、自動二輪車により良く適したキャニスタパージ制御装置を提供することにある。
前記目的を達成するための本発明は、燃料タンクで発生する蒸散燃料を吸着するキャニスタ(39)に吸着された蒸散燃料をエンジンの吸気通路(24)へパージするためのパージ通路(40)を流れる蒸散燃料の流量を制御するソレノイド駆動型のパージ制御弁(52)と、前記エンジンの目標空燃比制御時に得られる燃料噴射補正量(KO2)に基づいて前記パージ制御弁(52)の通電デューティ値を決定して該パージ制御弁(52)を駆動するパージ量制御部(63)とを有するキャニスタパージ制御装置において、前記パージ量制御部(63)が、予め設定したエンジンの目標空燃比制御領域においてパージ要求があった時に前記燃料噴射補正量(KO2)が所定範囲内に収束するように前記パージ制御弁(52)の通電デューティ値を決定する通電デューティ決定部(103)と、前記目標空燃比制御領域から外れた時の通電デューティ値を記憶する学習値記憶手段(106)とを具備し、前記通電デューティ決定部(103)が、前記目標空燃比制御領域において次のパージ要求があった時に、前記学習値記憶手段(106)に記憶されている前回の通電デューティ値を読み出して今回の初期値として決定し、この決定された初期値を使って前記パージ制御弁(52)が制御される点に第1の特徴がある。また前記決定された初期値から段階的に変化させた値を通電デューティ値として決定し、パージ量を制御するように構成されている点に第2の特徴がある。
また、本発明は、前記通電デューティ決定部(103)が、前記目標空燃比制御領域外でパージ要求があった場合は、前回目標空燃比制御領域から外れた時の前記学習値記憶手段(106)に記憶した通電デューティ値を今回の初期値として決定する点に第3の特徴がある。
また、本発明は、前記通電デューティ決定部(103)は、前記エンジンの状態が、少なくともエンジン回転数(NE)およびスロットル開度(TH)に基づいて決定されるアイドル領域、加速領域、および燃料カット領域の少なくともいずれかであった場合に、前記目標空燃比制御領域外であると判断する制御領域判別手段(101)を含んでいる点に第4の特徴がある。
また、本発明は、前記通電デューティ決定部(103)が、通電デューティ値を0%から100%の間で20%、50%、80%と不均等な間隔で通電デューティ値を設定したデューティマップを有しており、該デューティマップを参照して通電デューティ値を段階的に変化させる点に第5の特徴がある。
また、本発明は、前記通電デューティ決定部(103)が、目標空燃比制御領域では、燃料噴射補正量(KO2)が補正量上限値(KO2RFU)以上のときは通電デューティ値を増加させ、燃料噴射補正量(KO2)が補正量上限値(KO2RFU)未満であって補正量下限値(KO2RFD)以上のときは通電デューティ値を維持し、燃料噴射補正量(KO2)が補正量下限値(KO2RFD)未満のときは通電デューティ値を減少させるように構成される点に第6の特徴がある。
第1、2の特徴を有する本発明によれば、パージ量制御中の通電デューティ値を学習し、次回のパージ量制御に反映して初期値として用いることで、パージ量制御の実行と停止とが頻繁に繰り返されるエンジンにおいて、目標空燃比制御が行われない状態でもパージ量制御を実行でき、キャニスタに多くの蒸散燃料が溜まることを防止し、もって、エミッションやドライバビリティが悪化するレベルを抑えることができる。特に、前回パージ時に含まれる蒸散燃料の濃度に応じたデューティ値からパージ量制御を開始することができるので空燃比がオーバリッチになるのを抑えることができる。これによって急激な空燃比の変化を抑制してエミッションの低下を抑制し、かつドライバビリティを向上させることができる。
第3、4の特徴を有する本発明によれば、目標空燃比制御領域以外の領域で要求されたパージ量制御に対しても、前回学習値である通電デューティ値からパージ量制御を開始することができるので、急激な空燃比の変化を抑制してエミッションの低下を抑制し、かつドライバビリティを向上させることができる。
第5の特徴を有する本発明では、通電デューティ値の使用可能範囲のうち、実質的にオフの状態である0%〜20%と、実質的にオンの状態である80%〜100%の通電デューティ値を等分した通電デューティ値とを用いることで円滑な通電制御を行うことができる。
第6の特徴を有する本発明によれば、目標空燃比の収束が早く、かつ、変動を小さくすることができるので、エミッションの低下を抑制し、かつドライバビリティを向上させることができる。
本発明の一実施形態に係るキャニスタパージ制御装置を適用する自動二輪車の左側面図である。 実施形態に係るキャニスタパージ制御装置を含む自動二輪車の要部システム構成図である。 パージ制御部の動作を示すタイミングチャートである。 目標空燃比制御領域の一例を示す図である。 パージ量制御を実施する領域の一例を示す図である。 パージ量制御部を実現するマイクロコンピュータの要部機能を示すブロック図である。
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。図1は本発明の一実施形態に係るキャニスタパージ制御装置を適用する自動二輪車の左側面図である。図1において、自動二輪車1は、4サイクル水冷エンジン2を搭載する。自動二輪車1の車体フレーム3は、ヘッドパイプ30の上端寄りに先端部が接合されて斜め下後方に延在するメインフレーム31と、ヘッドパイプ30の下端寄りに先端部が接合されるダウンフレーム32と、メインフレーム31の中間部から斜め上後方に延在するシートフレーム33と、シートフレーム33に後部で接合されるサブフレーム34と、メインフレーム31の後端部およびサブフレーム34の前端部に接合されて下方に延在するハンガブラケット35とを含んでいる。シートフレーム33とサブフレーム34との間にはリブ41、42が設けられる。
エンジン2は、シリンダ部21、クランク室22、および減速機部23を備える。シリンダ部21の後部には吸気管24が接続され、吸気管24の端部はエアクリーナ4内部に連通される。吸気管24にはスロットルボディ38が設けられ、スロットルボディ38とシリンダ部21との間には、一端がキャニスタ39に接続されるパージ通路40の他端が接続される。キャニスタ39の蒸散燃料入口は燃料タンク16の上部に接続される。なお、キャニスタ39は、図1に示した位置に限らず、任意の位置に配置できる。
シリンダ部21の前部には排気管25が連結され、排気管25は車体下方を迂回して車体後部のマフラ5に連結される。エンジン2は、ハンガブラケット35およびダウンフレーム32の下部に結合されて支持される。ダウンフレーム32には、エンジン2の冷却水が循環されるラジエータ43が取り付けられる。ハンガブラケット35の下部に接合されるステー47には、サイドスタンド49が枢支される。
ヘッドパイプ30を上下に貫通する図示しないステアリングステムの上下には、それぞれトップブリッジ26およびボトムブリッジ27が結合される。これらトップブリッジ26およびボトムブリッジ27によって支持されるフロントフォーク28の下端部には前輪軸29によって前輪WFが回転自在に支持される。ヘッドパイプ30には、車体前方に向けて突出したステー36によってヘッドライト7およびメータ装置8が支持される。トップブリッジ26の上部にはステアリングハンドル6が取り付けられ、ステアリングハンドル6の左右にはグリップ44ならびにミラー45がそれぞれ取り付けられる。
ハンガブラケット35には、車幅方向に延在する枢軸9が設けられ、この枢軸9によってスイングアーム10の前部が上下方向に揺動自在に支持される。スイングアーム10の後端部に設けられる後輪軸11によって後輪WRが支持される。減速機部23の出力軸46には駆動スプロケット37aが結合され、後輪軸11には従動側スプロケット37bが結合されており、両スプロケット間にエンジン2の出力を後輪WRに伝達する駆動用チェーン12が掛け渡される。
スイングアーム10は前端部が枢軸9で支持されるとともに、クッションユニット13によって中間部が支持される。クッションユニット13は、スイングアーム10の枢軸9と後輪WRと間でスイングアーム10と車体フレーム3とに連結される。クッションユニット13の上端部はバッテリ19の前方でハンガブラケット35に支持され、下端部はスイングアーム10より、下方に配置されるリンク機構14を介してスイングアーム10から下方に張り出しているステー15に連結される。燃料タンク16の後部には乗員シート17が配置される。
図2は本実施形態に係るキャニスタパージ制御装置を含む自動二輪車の要部システム構成図である。図2において、エンジン2に接続される吸気管24に設けられるスロットルボディ38にはスロットル弁49が設けられ、スロットル弁49とエンジン2との間には燃料噴射装置50が設けられる。スロットル弁49にはスロットル開度THを検知するスロットルセンサ51が設けられる。さらに、吸気管24には、燃料噴射装置50とスロットル弁49との間に蒸散燃料のパージ通路40の一端が連結される。パージ通路40の他端はキャニスタ39を経由して燃料タンク16の上部に連結される。キャニスタ39は活性炭を収容しており、燃料タンク16で発生する蒸散燃料を吸着して貯える。キャニスタ39と吸気管24との間において、パージ通路40には該パージ通路40の開度を制御してパージ量(容量流量)を調整するパージ制御弁52が設けられる。パージ制御弁52はソレノイドによって駆動され、その開閉量はソレノイドの駆動デューティつまり通電時間のオン時間割合(オン時間/(オン時間+オフ時間))によって制御される。燃料噴射装置50には燃料タンク16に設けられる燃料ポンプ53から吐出される燃料を該燃料噴射装置に供給する燃料通路54が接続される。排気管25は触媒を含むマフラ5に連結され、マフラ5とエンジン2との間には排気中の酸素濃度を検知する酸素濃度センサ(以下、「O2センサ」という)55が設けられる。エンジン2のクランク軸56またはクランク軸56に関連して回転する回転部57にはエンジン回転数NEを検知するエンジン回転数センサ58が設けられる。
また、エンジン回転数センサ58、スロットルセンサ51およびO2センサ55によってそれぞれ検知される情報に基づき、燃料噴射量を決定して燃料噴射装置50に駆動指令を出力する制御装置60が設けられる。制御装置60は、エンジン回転数NEおよびスロットル開度THに基づいて基本燃料噴射量(基本燃料噴射時間)Tiを決定する基本燃料噴射量算出部61と、O2センサ55から出力される酸素濃度情報O2を使用して空燃比フィードバックにより燃料噴射補正量KO2を決定し、基本燃料噴射量Tiを補正するための燃料噴射量補正部62とを有する。なお、O2センサは、酸素濃度が理論空燃比に対応する酸素濃度より高いか低いかに応じたオン・オフ信号を検知信号として制御装置60に入力する。さらに、制御装置60は燃料噴射補正量KO2に応じてソレノイドの通電デューティ制御(パージ量制御)をするパージ量制御部63を備える。なお、基本燃料噴射量Tiは燃料噴射補正量KO2の他、燃料噴射補正量KO2に加えてエンジン温度、大気温度、大気圧、吸気管負圧等、他のパラメータを使用して補正するようにしてもよい。制御装置60はマイクロコンピュータによって構成することができる。
図3はパージ制御部の動作を示すタイミングチャートである。図3において、最上段は目標空燃比制御の実施有無を示す制御領域判別信号であり、エンジン回転数NEおよびスロットル開度THに基づく目標空燃比制御領域であることを示すオン信号、および目標空燃比制御を行わない領域(以下、「非空燃比制御領域」という)であることを示すオフ信号を出力する。非空燃比制御領域はアイドル運転時、燃料カット時、および所定値以上の急加速時等である。
第2段目は燃料噴射補正量KO2の変化を示す図であり、蒸散燃料のパージを実施するか否かの判断を行うために設定される補正量上限値KO2RFUと補正量下限値KO2RFDとの関係で燃料噴射補正量KO2の変化を示す。パージ量制御時は、燃料噴射補正量KO2が補正量上限値KO2RFUを超えていれば(KO2>KO2RFU)、パージ制御弁52の通電デューティの関数としてのインデックスINDEXを大きくしてパージ制御弁52の開度を大きくする。一方、燃料噴射補正量KO2が補正量下限値KO2RFDを下回っていれば(KO2<KO2RFD)、パージ制御弁52の開度を小さくするためインデックスINDEXを小さくする。そして、燃料噴射補正量KO2が補正量上限値KO2RFU以下であって補正量下限値KO2RFD以上であるときは(KO2RFU>KO2>KO2RFD)、前回のインデックスINDEXを維持する。
インデックスINDEXに対応させて通電デューティを予めパージ量制御部63にマップとして設定しておき、インデックスINDEXが大きくなるにつれて大きい通電デューティを選択してパージ流量を多くする。ここでは、インデックスINDEXを4段階に設定し、インデックスINDEX1〜INDEX4にそれぞれ通電デューティ20%、50%、80%および100%を対応させている。インデックスINDEXの初期値はインデックスINDEX1であるが、目標空燃比制御領域から非空燃比制御領域に移行した時に、その時点のインデックスINDEXを記憶し、次に目標空燃比制御領域に移行した時には、記憶されているインデックスINDEXを読み出して、そのインデックスINDEXを初期値として通電デューティを増減させる。
第3段目は第2段目に示した燃料噴射補正量KO2と補正量上限値KO2RFUおよび補正量下限値KO2RFDとの関係で得られたパージ量制御判断信号の変化を示す。パージ量制御を実施する時はパージ量制御判断信号がオン「1」であり、パージ量制御を実施しない時はパージ量制御判断信号がオフ「0」である。
最下段は、インデックスINDEXの変化の例を示す図である。目標空燃比制御中は燃料噴射補正量KO2の変化に応じてインデックスINDEXが所定の変化幅つまりインデックスマップに記憶してある値に従った変化幅で増減する。
図3を参照しつつ動作を説明する。タイミングt1では目標空燃比制御が開始される。これに伴い、非空燃比制御領域では「1.0」であった燃料噴射補正量KO2が小さくなる。目標空燃比制御が開始されたタイミングt1では、燃料噴射補正量KO2が補正量上限値KO2RFUを超えているので、パージ量制御実施判断信号がオンになり、インデックスINDEXの初期値としてインデックスINDEX1が選択される。燃料噴射補正量KO2が補正量上限値KO2RFUを下回るまで、インデックスINDEXは段々と増加する。燃料噴射補正量KO2が補正量上限値KO2RFU以下になると、燃料噴射補正量KO2が補正量下限値KO2RFD以上である間、インデックスINDEXは維持される。タイミングt2で燃料噴射補正量KO2が補正量下限値KO2RFDを下回ると、インデックスINDEXは減少される。そして、燃料噴射補正量KO2が上昇に転じてタイミングt3で燃料噴射補正量KO2が補正量下限値KO2RFDを超え、さらに補正上限値KO2RFU以上になるまでインデックスINDEXは維持される。そして、タイミングt4で燃料噴射補正量KO2が、補正量上限値KO2RFUを超えた時にインデックスINDEXは再び増加し始める。つまり、燃料噴射補正量KO2が、補正上限値KO2RFUより大きいときはインデックスINDEXを増加させ、補正下限値KO2RFDより小さいときはインデックスINDEXを減少させ、さらに補正上限値KO2RFUと補正下限値KO2RFDとの間にあるときはインデックスINDEXを維持するように制御が行われる。
インデックスINDEXが増加して燃料噴射補正量KO2が下がり始め、タイミングt5で燃料噴射補正量KO2が補正量下限値KO2RFDを下回ると、インデックスINDEXは減少され、タイミングt6までインデックスINDEXの低減が続けられる。そして、タイミングt7で目標空燃比制御領域から外れると、その時のインデックスINDEX(この例ではインデックスINDEX2)を学習値として記憶し、インデックスINDEXの出力をオフにしてパージ量制御をオフにする。
なお、非空燃比制御領域においても、必要に応じてパージ要求に応えることができる。図3の例では、タイミングt8において、非空燃比制御領域でパージが行われてパージ量制御が実行され、タイミングt8からタイミングt9の間で行われるパージでは、非空燃比制御領域であり、燃料噴射補正量KO2として補正量上限値KO2RFUを超えた値「1」が参照されるので、インデックスINDEXは増加される。このときはインデックスINDEX1を初期値としてインデックスINDEXの増加を開始する。最も小さいインデックスINDEXを選択して使用することで急激な空燃比の変化を抑制するためである。タイミングt9でパージが終了するので、インデックスINDEXの増加を停止し、インデックスINDEXの出力をオフにしてパージ量制御をオフにする。
タイミングt10で再び目標空燃比制御領域に入ると、タイミングt7で学習値として記憶されたインデックスINDEX2を初期値としてインデックスINDEXの増加を開始する。タイミングt10〜t11の動作は、タイミングt1〜t7と同様であるので説明は省略する。タイミングt11で、目標空燃比制御領域から外れて非空燃比制御領域に入ると、その時点のインデックスINDEX(ここではインデックスINDEX4)が学習値として記憶される。したがって、次回、目標空燃比制御領域に入ってパージ量制御が行われるときには、タイミングt11で学習されたインデックスINDEX4が読み出され、これに対応する100%の通電デューティが選択されてパージ量制御が行われる。
このように、目標空燃比制御中に、燃料噴射補正量KO2が補正量上限値KO2RFUおよび補正量下限値KO2RFDに対してどこにあるかに基づいてインデックスINDEXを決定し、決定されたインデックスINDEXに対応する通電デューティでパージ量制御を行う。また、パージ量制御を終了する場合は、その終了時の通電デューティを示すインデックスINDEXを記憶学習して、次回のパージ量制御にはその学習値を初期値として制御を開始する。学習値を使用することにより、逐次変化している蒸散燃料の濃度に対応して適切な通電デューティからパージ量制御を開始させることができる。
なお、インデックスINDEXの記憶学習は、目標空燃比制御領域から外れた時に行うのに限らず、目標空燃比制御領域から外れた時に、その目標空燃比制御領域中に使用されたインデックスINDEXで最も多く使用された値、あるいは使用した平均値を記憶して学習値としてもよい。
目標空燃比制御領域は、エンジン回転数NEとスロットル開度THとで決定される。図4は目標空燃比制御領域の一例を示す図であり、縦軸はスロットル開度TH、横軸はエンジン回転数NEである。目標空燃比制御領域O2F/Bは上限エンジン回転数O2NEHと下限エンジン回転数O2NELとの間であって、上限スロットル開度O2THHと下限スロットル開度O2THLとの間で実施される。上限スロットル開度O2THHおよび下限スロットル開度O2THLはエンジン回転数NEに応じて異なる。上下限エンジン回転数O2NEH、O2NELならびに上下限スロットル開度O2THH、O2THLにはそれぞれヒステリシス幅Hyを設けることができる。エンジン回転数NEやスロットル開度THのわずかな変動に敏感に応答するのを回避するためである。図4のように、エンジン回転数NEが低いアイドル領域、エンジン回転数NEが極めて高くてフューエルカット等によりエンジン回転数NEを制限する必要がある領域、およびスロットル開度THが極めて大きい(TH>O2THH)加速領域では目標空燃比制御は実施されない。なお、目標空燃比制御は、図4に符号70で示す低エンジン回転数かつ低スロットル開度の範囲、例えばアイドル状態で停車している場合においても行うことができ、停車時においてエミッションの向上を図るためである。
図5はパージ量制御を実施する領域に一例を示す図であり、図5に示すように、パージ制御実施領域は、目標空燃比制御領域と同様、エンジン回転数NEとスロットル開度THとによって決定される。パージ制御上限スロットル開度PTHHおよびパージ制御下限スロットル開度PTHL並びにパージ上限エンジン回転数PNEHおよびパージ制御下限エンジン回転数PNELにはそれぞれヒステリシス幅Hyを設けることができる。エンジン回転数NEやスロットル開度THのわずかな変動に敏感に応答するのを回避するためである。また、エンジン冷却水温、大気温度、車速などがそれぞれ所定の範囲内にあるときに、パージ量制御を実施するか否かの判断基準としてエンジン回転数NEとスロットル開度THとに基づくパージ量制御領域であるか否かの判断を行うようにしてもよい。
図6はパージ量制御部63を実現するマイクロコンピュータの要部機能を示すブロック図である。図6において、空燃比制御領域判別部101はエンジン回転数NEおよびスロットル開度THで決定される範囲が、予め設定されている目標空燃比制御領域内であるか否かを判別する。パージ実施判別部102はエンジン回転数NEおよびスロットル開度THで決定される範囲が、予め設定されているパージ制御量実施領域内であるか否かを判別する。空燃比制御領域判別部101でエンジン状態が目標空燃比制御領域内であると認識された場合にパージ実施判別部102が起動される。パージ実施判別部102でエンジン状態がパージ制御実施領域内にあると認識された場合にデューティ値決定部103が起動される。
デューティ値決定部103は、目標空燃比制御によって得られる燃料噴射補正量KO2を読み込み、燃料噴射補正量KO2を補正量上限値KO2RFUと補正量下限値KO2RFDと対比し、その上下関係に基づいてインデックスINDEXを決定し、インデックスINDEXに対応する通電デューティを、インデックス/通電デューティマップ104を参照して決定する。決定された通電デューティはパージ制御弁52を駆動するソレノイドのドライバ105に供給されてパージ制御弁52が駆動される。通電デューティはデューティ初期値記憶部106に記憶されるデューティ初期値に対して、燃料噴射補正量KO2に応じたインデックスINDEXを加減した値に設定される。デューティ値決定部103はエンジン状態が目標空燃比制御領域外であると認識された場合は、現在の通電デューティを学習値としてデューティ初期値記憶部(学習値記憶手段)106に記憶し、この記憶値は、次回制御時の通電デューティ初期値として使用される。なお、学習値記憶手段としての記憶部をデューティ初期値記憶部106とは別個に設けてもよい。
図6においては、目標空燃比制御領域とパージ領域とが重複した場合にパージ量制御する構成を示したが、目標空燃比制御領域外でパージ要求があった場合でも目標空燃比制御領域外で使用する所定の通電デューティ値を使用するのではなく、目標空燃比制御領域で学習した通電デューティ値を通電デューティの初期値としてパージ要求に応えることができる。したがって、空燃比がリッチおよびリーンのいずれの状態であっても必要に応じてパージ量制御を行うことができる。
1…自動二輪車、 2…エンジン、 4…エアクリーナ、 16…燃料タンク、 24…吸気管、 38…スロットルボディ、 39…キャニスタ、 40…パージ通路、 49…スロットル弁、 50…燃料噴射装置、 51…スロットル弁、 52…パージ制御弁、 55…O2センサ、 58…エンジン回転数センサ、 60…制御装置、 62…燃料噴射量補正部、 63…パージ量制御部、 101…空燃比制御領域判別部、 102…パージ実施判別部、 103…デューティ決定部、 104…インデックス/通電デューティマップ、 106…デューティ初期値(学習値)記憶部

Claims (5)

  1. 燃料タンクで発生する蒸散燃料を吸着するキャニスタ(39)に吸着された蒸散燃料をエンジンの吸気通路(24)へパージするためのパージ通路(40)を流れる蒸散燃料の流量を制御するソレノイド駆動型のパージ制御弁(52)と、前記エンジンの目標空燃比制御時に得られる燃料噴射補正量(KO2)に基づいて前記パージ制御弁(52)の通電デューティ値を決定して該パージ制御弁(52)を駆動するパージ量制御部(63)とを有するキャニスタパージ制御装置において、
    前記パージ量制御部(63)が、
    予め設定したエンジンの目標空燃比制御領域においてパージ要求があった時に前記燃料噴射補正量(KO2)が所定範囲内に収束するように前記パージ制御弁(52)の通電デューティ値を決定する通電デューティ決定部(103)と、
    前記目標空燃比制御領域から外れた時の通電デューティ値を記憶する学習値記憶手段(106)とを具備し、
    前記通電デューティ決定部(103)が、前記目標空燃比制御領域において次のパージ要求があった時に、前記学習値記憶手段(106)に記憶されている前回の通電デューティ値を読み出して今回の初期値として決定し、この決定された初期値を使って前記パージ制御弁(52)が制御され、
    前記通電デューティ決定部(103)は、
    前記目標空燃比制御領域外でパージ要求があった場合は、前回目標空燃比制御領域から外れた時の前記学習値記憶手段(106)に記憶した通電デューティ値を今回の初期値として決定することを特徴とするキャニスタパージ制御装置。
  2. 前記決定された初期値から段階的に変化させた値を通電デューティ値として決定し、パージ量を制御するように構成されていることを特徴とする請求項1記載のキャニスタパージ制御装置。
  3. 前記通電デューティ決定部(103)は、
    前記エンジンの状態が、少なくともエンジン回転数(NE)およびスロットル開度(TH)に基づいて決定されるアイドル領域、加速領域、および燃料カット領域の少なくともいずれかであった場合に、前記目標空燃比制御領域外であると判断する制御領域判別手段(101)を含んでいることを特徴とする請求項1または2に記載のキャニスタパージ制御装置。
  4. 前記通電デューティ決定部(103)が、通電デューティ値を0%から100%の間で20%、50%、80%と不均等な間隔で通電デューティ値を設定したデューティマップを有しており、該デューティマップを参照して通電デューティ値を段階的に変化させることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のキャニスタパージ制御装置。
  5. 前記通電デューティ決定部(103)が、
    目標空燃比制御領域では、燃料噴射補正量(KO2)が補正量上限値(KO2RFU)以上のときは通電デューティ値を増加させ、燃料噴射補正量(KO2)が補正量上限値(KO2RFU)未満であって補正量下限値(KO2RFD)以上のときは通電デューティ値を維持し、燃料噴射補正量(KO2)が補正量下限値(KO2RFD)未満のときは通電デューティ値を減少させるように構成されることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のキャニスタパージ制御装置。
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