以下、本発明の実施の形態例を図面に基づいて詳細に説明する。
(搬入装置の構成)
まず、図1及び図2に基づき、本発明の実施の形態例に係る原子炉容器上蓋4aの輸送容器11(被搬入機器)を搬入するための機器搬入装置1の全体的な概要について説明する。なお、図1には原子炉建屋2の外部27から原子炉格納容器3の機器搬入口3cまでを主に示しており、図2には原子炉格納容器3の機器搬入口3cから原子炉格納容器3の内部29までを主に示している。
図1及び図2に示すように、PWR発電プラントは原子炉建屋2、タービン建屋(図示せず)などを有しており、原子炉建屋2の内側に原子炉格納容器3が設けられている。原子炉格納容器3の内部29には、原子炉容器4や蒸気発生器5などの機器が、放射線などを遮蔽するための遮蔽壁に囲まれた状態で設置されている。原子炉容器4は、炉心などの炉内構造物を収納する容器である。
PWR発電プラントでは、原子炉容器4の炉心で発生した熱が1次冷却水に伝えられ、この1次冷却水と2次冷却水とが蒸気発生器5で熱交換されて2次冷却水が蒸気となり、この蒸気でタービン建屋の蒸気タービンが回転駆動され、この蒸気タービンで発電機が回転駆動されることによって発電する。
そして、長期間運転されたPWR発電プラントでは、高い信頼性を確保するための予防保全として、原子炉容器4の上蓋4aを取り替えることが計画されている。
原子炉建屋2の側壁(遮蔽壁)2aには機器搬入口2cが設けられ、原子炉格納容器3の側壁(遮蔽壁)3aには機器搬入口(機器ハッチ)3cが設けられている。機器搬入口2cは開口が矩形状である一方、機器搬入口3cは円筒状(開口が円形状)になっている。取替用の原子炉容器上蓋4aを収納した鋼製の輸送容器11を搬入する際には、原子炉建屋2の機器搬入口2cの手前に設けられたシャッタ7が開けられ、原子炉建屋2の機器搬入口2cを閉じていた引き戸8も開けられる。更に、原子炉格納容器3の機器搬入口3cを閉じていた蓋(図示省略)も開けられる。その後、機器搬入装置1が設置される。
機器搬入装置1は、平行に延びた一対の第1レール21と、平行に延びた一対の第2レール22と、下部スキッド24(機器搬入方向前側の第1スキッド)と、上部スキッド23(機器搬入方向後側の第2スキッド)と、油圧ジャッキ反力受け25と、連結棒26と、搬入用の油圧ジャッキ30とを備えたものである。
第1レール21は、原子炉建屋2の外部27から、原子炉建屋2の機器搬入口2cと、原子炉建屋2の機器搬入口2cと原子炉格納容器3の機器搬入口3cとの間の機器搬入ルート28と、原子炉格納容器3の機器搬入口3cとを通って、原子炉格納容器3の内部29へと延びるように設置されている。
しかし、原子炉建屋2の機器搬入口2cと原子炉格納容器3の機器搬入口3cは、直線的な配置ではなく、屈折した配置になっている。即ち、平面視において、原子炉建屋2の機器搬入口2cにおける輸送容器11の機器搬入方向と、原子炉格納容器3の機器搬入口3aにおける輸送容器11の機器搬入方向とが、一致しておらず、互いに交差(屈折)している(図示例では左方向へ屈折している)。
このため、第1レール21は、その全体を直線状にすることができず、原子炉建屋2の機器搬入口2cと原子炉格納容器3の機器搬入口3cとの間の機器搬入ルート28では曲りレール部21Bが用いられている。即ち、第1レール21は、原子炉建屋2の外部27から原子炉格納容器3の内部29へ向かって順に第1直線レール部21Aと、曲りレール部21Bと、第2直線レール部21Cとを有して成るものである。
第1直線レール部21Aは、原子炉建屋2の外部27から原子炉建屋2の機器搬入口2cに亘って直線状に設置されている。なお、第1直線レール部21Aは、原子炉建屋2の外部27では仮設の基礎31上に設置され、機器搬入口2c内では機器搬入口2cの内周面の下部2c−1上に設置されている。
曲りレール部21Bは、前述のとおり、原子炉建屋2の機器搬入口2cと原子炉格納容器3の機器搬入口3cとの間の機器搬入ルート28に設置されている。なお、曲りレール部21Bは、機器搬入ルート28の床32上に設置されている。
曲りレール部21Bは、原子炉建屋2の機器搬入口2cから原子炉格納容器3の機器搬入口3cに向かうように左方向に曲がっており、機器搬入口2cと機器搬入口3cの位置関係に合わせた曲率を有している。従って、搬入時に輸送容器11は、原子炉建屋2の機器搬入口2cを通過する途中から、曲りレール部21Bに沿って、徐々に左方向へ方向転換しながら、原子炉格納容器3の機器搬入口3cへ向かって移動する。
第2直線レール部21Cは、原子炉格納容器3の機器搬入口3aに直線状に設置されている。第2直線レール部21Cは、機器搬入口3c内では機器搬入口3cの内周面の下部3c−1上に設けられた支持台10(図1では図示省略:図23参照)の上に設置され、原子炉格納容器3の内部29では床面33上に設置されている。なお、第2直線レール部21Cは、機器搬入口3c内において、機器搬入口3cの幅方向の中央部に配設されている。
原子炉格納容器3内では、蒸気発生器(SG)5の周囲を囲んでいる遮蔽壁(SG壁)6が、原子炉格納容器3の機器搬入口3cの直ぐ前に位置しており、機器搬入口3cからSG壁6までの距離が短い。従って、SG壁6を回避して原子炉容器4の近傍の搬入位置(立て起こし位置)35まで輸送容器11を搬送するには、輸送容器11が機器搬入口3cを通過してから(輸送容器11全体が原子炉格納容器3の内部29に入ってから)ではなく、機器搬入口3cを通過する途中から、輸送容器11の方向転換を開始しなければならない。しかも、このときの輸送容器11の方向転換を、曲りレールによって行うことは、機器搬入口3cからSG壁6までの距離が短すぎるため、困難である。
このため、原子炉格納容器3の内部29では、曲りレールは用いず、直線状の第2レール22だけを用いている。第2レール22は、SG壁6を避けた位置(SG壁6の側方)であって、第1レール21から離れた位置から、原子炉容器4の近傍の搬入位置35まで延びている。なお、第2レール22は、原子炉格納容器3の内部29の床33上にキャビティ34を跨ぐ形で設置されている。
また、第1レール21(第2直線レール部21C)と第2レール22は、屈折した配置になっている。即ち、第1レール21(第2直線レール部21C)の長手方向(機器搬入方向)と、第2レール22の長手方向(機器搬入方向)は、互いに交差(屈折)している。
次に、図1、図3及び図4に基づき、輸送容器11について概要を説明し(詳細について後述する)、スキッド駆動手段を構成する油圧ジャッキ反力受け25及び油圧ジャッキ30について詳細に説明する。なお、図4では、説明の便宜上、輸送容器11を一点鎖線の透視図で示している。
図1、図3及び図4に示すように、輸送容器11は、横向きに倒された状態で下部スキッド24及び上部スキッド23の上に載置されている。輸送容器11は搬入後に立て起こされる(図27,図28参照)。立て起こされた輸送容器11は、図3における左側(機器搬入方向の前側)が下、右側(機器搬入方向の後側)が上になる。下部スキッド24(機器搬入方向前側の第1スキッド)は、輸送容器11の下部(機器搬入方向の前部)に位置し、上部スキッド23(機器搬入方向後側の第2スキッド)は、輸送容器11の上部(機器搬入方向の後部)に位置している。
輸送容器11は、円筒状の輸送容器上部胴11Aと、円筒状の輸送容器下部胴11Bと、円板状の輸送容器天板11Cと、円板状の輸送容器底板11Dとを有しており、内部に取替用の原子炉容器上蓋4aを収納している。図3に示すQ点が、取替用の原子炉容器上蓋4aを収納した輸送容器11の重心位置である。重量物である原子炉容器上蓋4aが輸送容器11の下側(機器搬入方向前側)に位置しているため、重心位置Qは、輸送容器11の中央部よりも下寄り(機器搬入方向の前寄り)に位置している。
なお、図3に例示した輸送容器11では、輸送容器上部胴11Aの全体の外径と、輸送容器下部胴11Bの一部の外径とが、輸送容器下部胴11Bの下部11B−1の外径に比べて、小さくなっている。これは、原子炉格納容器3の機器搬入口3cの内径との関係を考慮して、機器搬入口3cにおける方向転換(詳細後述)の際に輸送容器11が、機器搬入口3cの内周面に接触するのを防止するためである。輸送容器下部胴11Bの下部11B−1が下部スキッド24に載置され、輸送容器上部胴11Aが上部スキッド23に載置されている。
但し、図3に例示したような外径の輸送容器11に限定するものではなく、原子炉容器上蓋4cの外径に対して機器搬入口3cの内径が比較的大き場合には、輸送容器下部胴11B全体を同じ外径にすることもできる(図29参照:詳細後述)。
図1、図3及び図4に示すように、上部スキッド23よりも機器搬入方向の後方に油圧ジャッキ反力受け25が配設されている。この油圧ジャッキ反力受け25は第1レール21の幅方向に長い装置であり、反力受け本体部25eと、この反力受け本体部25eの長手方向の両端に設けられた反力受け固定部25fとを有している。そして、油圧ジャッキ反力受け25は、反力受け本体部25eの長手方向が第1レール21の幅方向に沿い、両側の反力受け固定部25fが第1レール21の上面21cにそれぞれ載せられた状態で第1レール21に設置される。
両側の反力受け固定部25fには何れも、1つの固定ピン(位置決めピン)穴25aと、2つの固定ボルト穴25bとが設けられている。固定ピン穴25aと固定ボルト穴25bは、第1レール21の長手方向(機器搬入方向)に沿って一列に配設されている。固定ボルト穴25bは、固定ピン穴25aに対して、機器搬入方向の前後に1つずつ設けられている。
一方、第1レール21の上面21cには、固定ピン穴25aに対応した複数の固定ピン(位置決めピン)穴21aと、固定ボルト穴25bに対応した複数の固定ボルト穴21bとが設けられている。固定ピン穴21aと固定ボルト穴21bは、第1レール21の長手方向(機器搬入方向)に沿って一列に且つ交互に配設されている。
そして、油圧ジャッキ反力受け25(反力受け固定部25f)の固定ピン穴25aと第1レール21の固定ピン穴21aとに固定ピン(位置決めピン)41が、鉛直方向に挿入されることにより、油圧ジャッキ反力受け25(反力受け固定部25f)が第1レール21に固定(位置決め)されている。
更に、固定ボルト42が、油圧ジャッキ反力受け25(反力受け固定部25f)の固定ボルト穴25bに挿通され、第1レール21の固定ボルト穴21bに固定されることにより、油圧ジャッキ反力受け25(反力受け固定部25f)を第1レール21に固定している。この固定ボルト42による反力受け固定部25fの固定は、油圧ジャッキ30からの反力を固定ピン41で受けたときに反力受け固定部25が浮き上がるのを防止して、固定ピン41にモーメントが作用するのを防止するためのものである。
また、反力受け本体部25の長手方向の中央部には、連結ピン穴25dを有する油圧ジャッキ連結部25cが設けられている。
油圧ジャッキ30はジャッキ本体部(シリンダ部)30aと、ピストンロッド30bとを有しており、その長手方向が第1レール21の長手方向(機器搬入方向)に沿うように配設されている。油圧ジャッキ30は、作業員が操作する油圧供給装置(図示省略)から油圧が供給されることによって、作動(ピストンロッド30bが伸縮)する。ジャッキ本体部30aの基端側には連結ピン穴30cを有する基端側連結部30dが設けられ、ピストンロッド30bの先端側には連結ピン穴30eを有する先端側連結部30fが設けられている。
従って、油圧ジャッキ30は、基端側連結部30dの連結ピン穴30cと油圧ジャッキ連結部25cの連結ピン穴25dとに基端側の連結ピン51が鉛直方向に挿入されて油圧ジャッキ反力受け25に連結されており、この連結ピン51(鉛直方向の回動軸)回りに水平に回動可能になっている。一方、油圧ジャッキ30の先端側連結部30fは、上部スキッド23に連結されている(詳細後述)。
次に、図1、図3、図4及び図5に基づき、下部スキッド24について詳細に説明する。
図1、図3、図4及び図5に示すように、下部スキッド24は第1レール21の幅方向に長い装置であり、長手方向(第1レール21の幅方向)の両端部24aが、第1レール21の上面21cにそれぞれ載せられて、この上面21c上を摺動するものである。
下部スキッド24の両端部24aと第1レール21との間には、摺動材62が介設されている。詳述すると、下部スキッド24の両端部24aの下面24bには、両端部24aを円滑に摺動させるため、エンジニアリングプラスチックなどの板状の摺動材62が固定ボルト63によって固定されており、この摺動材62が第1レール21の上面21cに接している。
また、下部スキッド24の両端部24aの下面24b側には、ガイドローラ64が1個ずつ取り付けられている。これらのガイドローラ64は、下部スキッド24の両端部24aに固定された鉛直方向の回転軸64a回りに回転可能になっており、外周面64bが、第1レール21の内側の側面であるガイド面21dに対向している。なお、下部スキッド24が第1レール21の曲りレール部21B上を移動(摺動)するときのことを考慮して、ガイドローラ64の外周面64bと第1レール21の側面21dとの間には、多少の隙間を有している。また、ガイドローラ64の取り付け位置は、周辺の物との干渉を防止することを考慮した移動軌跡となるように検討の上、決定している。
下部スキッド24の上面である輸送容器支持面24dは、輸送容器下部胴11Bの外周面(図示例では外径の大きい下部11B−1の外周面)に合わせた曲面となっている。輸送容器11(輸送容器下部胴11B)は、この支持面24d上に載置され、固定ボルト61によって下部スキッド24の上側フランジ24eに固定されている。
次に、図1、図3、図4及び図6〜図13に基づき、上部スキッド23について詳細に説明する。
図1、図3、図4及び図6〜図9に示すように、上部スキッド23は第1レール21の幅方向に長い装置であり、上部スキッド本体部(土台部分)23Aと、この上部スキッド本体部23Aの上側に設置されたスライドテーブル23B及びターンテーブル23Cとを備えている。
上部スキッド本体部23Aは、その長手方向(第1レール21の幅方向)の両端部23aが、第1レール21の上面21cにそれぞれ載せられて、この上面21c上を摺動するものである。
上部スキッド本体部23Aの両端部23aと第1レール21との間には、摺動材71が介設されている。詳述すると、上部スキッド本体部23Aの両端部23aの下面23bには、両端部23aを円滑に摺動させるため、エンジニアリングプラスチックなどの板状の摺動材71が固定ボルト72によって固定されており、この摺動材71が第1レール21の上面21cに接している。
また、上部スキッド本体部23Aの両端部23aの下面23b側には、ガイドローラ73が複数個(図示例では2個ずつ計4個)取り付けられている。これらのガイドローラ73は、上部スキッド本体部23Aの両端部23aに固定された鉛直方向の回転軸73b回りに回転可能になっており、外周面73aが、第1レール21の内側の側面であるガイド面21dに対向している。なお、上部スキッド23が第1レール21の曲りレール部21B上を移動(摺動)するときのことを考慮して、ガイドローラ73の外周面73bと第1レール21の側面21dとの間には、多少の隙間を有している。また、ガイドローラ73の取り付け位置は、周辺の物との干渉を防止することを考慮した移動軌跡となるように検討の上、決定している。
スライドテーブル23Bは平面視が長方形状の部材であり、この長手方向が上部スキッド本体部23Aの長手方向に沿うようにして上部スキッド本体部23A上に設置されている。スライドテーブル23Bの下面23cには、平行に延びた一対の摺動部(スライド部)23dが突設されている。摺動部23aは横断面が矩形状のものであり、スライドテーブル23Bの長手方向(第1レール21の幅方向)に延びている。
一方、上部スキッド本体部23Aの上面23eには、平行に延びた一対の摺動溝(スライド溝)23fが設けられている。摺動溝23fは横断面が矩形状のものであり、上部スキッド本体部23Aの長手方向(第1レール21の幅方向)に延びている。スライドテーブル23Bの摺動部23dは、上部スキッド本体部23Bの摺動溝23fに嵌め込まれており、この摺動溝23fに沿って摺動する。なお、スライドテーブル23Bの摺動部23dと上部スキッド本体部23Aの摺動溝23fの間には、摺動材74が介設されている。詳述すると、スライドテーブル23Bの摺動部23dを円滑に摺動させるため、上部スキッド本体部23Aの摺動溝23fには、エンジニアリングプラスチックなどの横断面がコ字状の摺動材74が、固定ボルト(図示省略)によって固定されている。そして、スライドテーブル23Bの摺動部23dは、この摺動材74に嵌め込まれている。
スライドテーブル23Bは、摺動させないとき、固定ボルト75と固定ナット76とによって上部スキッド本体部23Aに固定されている。
ターンテーブル23Cは平面視が長方形状の部材であり、この長手方向がスライドテーブル23Bの長手方向に沿うようにして(旋回しないとき)、スライドテーブル23B上に設置されている。ターンテーブル23Cの上面である輸送容器支持面23hは、輸送容器上部胴11Aの外周面に合わせた曲面となっている。輸送容器11(上部胴11A)は、この輸送容器支持面23h上に載置され、固定ボルト77によってターンテーブル23Cに固定されている。
ターンテーブル23Cの中央部には、旋回ピン穴23iが設けられている。この旋回ピン穴23iに対応して、スライドテーブル23Bの中央部には、軸受である旋回ピン穴23jが設けられている。そして、これらの旋回ピン穴23iと旋回ピン穴23jとに旋回ピン78が、鉛直方向に挿入されている。従って、ターンテーブル23Cは、この鉛直方向の旋回軸である旋回ピン78回りに水平に旋回(摺動回転)することが可能になっている。図7には一点鎖線でターンテーブル23Cが旋回したときの状態を示している。
スライドテーブル23Bとターンテーブル23Cとの間には、摺動材79が介設されている。詳述すると、ターンテーブル23Cを円滑に旋回(摺動回転)させるため、スライドテーブル23Bの上面23kには、エンジニアリングプラスチックなどの板状の摺動材79が、固定ボルト81によって固定されている。そして、ターンテーブル23Cは、この摺動材79上に載置されている。なお、摺動材79はターンテーブル23Cに固定してもよい。
スライドテーブル23Bの旋回ピン穴23jと旋回ピン78の間には、摺動材80が介設されている。詳述すると、ターンテーブル23Cを円滑に旋回(摺動回転)させるため、スライドテーブル23Bの旋回ピン穴23jには、エンジニアリングプラスチックなどの円筒状の摺動材80が、固定ボルト(図示せず)によって固定されている。そして、旋回ピン78は、この摺動材80に挿入されている。
また、ターンテーブル23Cの幅方向の両側部には、旋回ピン穴23mが設けられている。これらの旋回防止ピン穴23mに対応して、スライドテーブル23Bの幅方向両側部には、旋回防止ピン穴23nが設けられている。そして、これらの旋回防止ピン穴23mと旋回ピン穴23nとに旋回防止ピン82が、鉛直方向に挿入されている。なお、旋回防止ピン穴23nには鋼製で円筒状のスリーブ89が嵌め込まれており、このスリーブ89に旋回防止ピン82が挿入されている。旋回防止ピン82が旋回防止ピン穴23m,23nに挿入されているときにはターンテーブル23Cの旋回が防止され、作業員が旋回防止ピン穴23m,23nから旋回防止ピン82を引き抜けば、ターンテーブル23Cの旋回が可能になる。
なお、ターンテーブル23Cの旋回防止構造としては、上記のような旋回防止ピン82を用いた構造に代えて、図10及び図11に示すような構造にしてもよい。図10及び図11では、ターンテーブル23Cの両側面23oとスライドテーブル23Bの両側面23pに当てた旋回防止プレート83を、ターンテーブル23の両側面23oに固定ボルト84によって固定している。従って、旋回防止プレート83がターンテーブル23Cに固定されているときにはターンテーブル23Cの旋回を、旋回防止プレート83によって防止することができ、作業員が固定ボルト84を緩めて旋回防止プレート83をターンテーブル23Cから取り外せば、ターンテーブル23Cのを旋回が可能になる。
なお、図示例ではターンテーブル23Cの一方の側面23oに2枚の旋回防止プレート83を固定し、他方の側面23oにも2枚の旋回防止プレート83を固定しているが、少なくとも各側面23oに1枚ずつ旋回防止プレート83が固定されていればよい。また、固定ボルト84によって旋回防止プレート83を、スライドテーブル23Bに固定するようにしてもよい。
次に、図6及び図12に基づき、上部スキッド23に設けられたスライド用の油圧ジャッキ85(スライドテーブル駆動手段)によるスライドテーブル23Bのスライド要領について説明する。
図6に示すように、スライドテーブル23を摺動させないときには、油圧ジャッキ85を上部スキッド23に設置しない。そして、図12に示すように、スライドテーブル23を摺動させるときに油圧ジャッキ85を、上部スキッド23に設置する。油圧ジャッキ85は、作業員が手動ポンプ86を操作することにより、油圧が供給されて作動(ピストンロッド85aが伸縮)する。
油圧ジャッキ85はジャッキ本体部(シリンダ部)85bとピストンロッド85aとを有しており、その長手方向が摺動溝23fの長手方向(第1レール21の幅方向)に沿うように配設される。上部スキッド本体部23Aの上面23eには、その長手方向(第1レール21の幅方向)の両側に油圧ジャッキ反力受け87と、スライドストッパ88とが設けられている。油圧ジャッキ85は、ジャッキ本体部85bの基端が油圧ジャッキ反力受け87に接続され、ピストンロッド85aの先端がスライドテーブル23Bの油圧ジャッキ連結部23qに連結される。
この状態で、図12に示すように油圧ジャッキ85のピストンロッド85aを伸長させると、スライドテーブル23B(摺動部23d)が摺動溝23fに沿って第1レール21の幅方向へ摺動し、スライドストッパ88に当接する。そして、このときにスライドテーブル23Bとともにターンテーブル23C及び輸送容器11も、摺動溝23fに沿って第1レール21の幅方向へ移動する。
なお、輸送容器11を原子炉格納容器3内に搬入するために方向転換させる際(詳細後述)、図13に一点鎖線で示すように輸送容器11の下側(機器搬入方向の前側)をクレーンで吊り上げて輸送容器11が傾斜したとき、この傾斜は、旋回ピン78と、その軸受である旋回ピン穴23j(摺動材80)の間に設けられた隙間で吸収する。
また、上部スキッド本体部23Aの長手方向の中央部には、連結ピン穴23rを有する油圧ジャッキ連結部23sが設けられている。そして、油圧ジャッキ30は、先端側連結部30fの連結ピン穴30eと油圧ジャッキ連結部23sの連結ピン穴23rとに先端側の連結ピン52が、鉛直方向に挿入されることにより、上部スキッド23(上部スキッド本体部23A)に連結され、且つ、この鉛直方向の回動軸である連結ピン52回りに水平に回動可能になっている。
連結棒26は、上部スキッド23と下部スキッド24を連結している。詳述すると、連結棒26は、作業員が持ち運び易くするために分割部26a,26b,26cに3分割されており、これらの分割部26a,26b,26cが2箇所の接続部26d,26eで接続されて1本の長尺な棒になっている。連結棒26は、その長手方向が機器搬入方向に沿うように配設されている。そして、連結棒26の一端側(機器搬入方向の前側)の連結部26fと、下部スキッド24の長手方向の中央部に設けられた連結棒連結部24cとが、これらの連結部24c,26fの連結ピン穴へ水平方向に挿入された連結ピン91によって連結されている。また、連結棒26の他端側(機器搬入方向の後側)の連結部26gと、上部スキッド本体部23Aの長手方向の中央部に設けられた連結棒連結部23tとが、これらの連結部23t,26gの連結ピン穴へ水平方向に挿入された連結ピン92によって連結されている。
(前半の輸送容器搬入手順)
次に、図1及び図14〜図16に基づき、前半の輸送容器搬入手順、即ち、原子炉建屋2の外部27から、原子炉建屋2の機器搬入口2cと、原子炉建屋2の機器搬入口2cと原子炉格納容器3の機器搬入口3cとの間の機器搬入ルート28を経て、原子炉格納容器3の機器搬入口3cまで輸送容器11を搬入する手順について説明する。このときには第1レール21において、図14〜図16に示すような油圧ジャッキ30の蠕動運動を行うことにより、取替用の原子炉容器上蓋4aを収納した輸送容器11を、上部スキッド23及び下部スキッド24とともに搬送する。
詳述すると、まず、図14に示すように、輸送容器11は停止し、油圧ジャッキ30のピストンロッド30bは縮めた状態にする。この状態で、油圧ジャッキ反力受け25(反力受け固定部25f)を、固定ピン41と固定ボルト42によって第1レール21に固定する。即ち、固定ピン41を、反力受け固定部25fの固定ピン穴25aと第1レール21の固定ピン穴21aとに挿入し、固定ボルト42を、反力受け固定部25fの固定ボルト穴25bに挿通して第1レール21の固定ボルト穴21bに固定することにより、油圧ジャッキ反力受け25(反力受け固定部25f)を第1レール21に固定する。
そして、図15に示すように、作業員が油圧ジャッキ30を操作して、油圧ジャッキ30のピストンロッド30bを伸ばす。その結果、この油圧ジャッキ30に押されて輸送容器11が、上部スキッド23及び下部スキッド24とともに前方(機器搬入方向)へ移動する。ここまでが第1手順である。このとき、ピストンロッド30bが上部スキッド23に連結されているため、直接的には上部スキッド23が油圧ジャッキ30によって押される。しかし、上部スキッド23と下部スキッド24が連結棒26によって連結されているため、油圧ジャッキ3が上部スキッド23を押す力は、連結棒26を介して下部スキッド24にも確実に伝わる。
なお、図示例では上部スキッド23及び下部スキッド24が、固定ボルト61,77(図5,図6参照)によって輸送容器11に固定されているため、この輸送容器11を介しても、油圧ジャッキ30の上部スキッド23を押す力が下部スキッド24に伝わる。しかし、連結棒26を設けずに固定ボルト61,77だけで対応しようとすると、油圧ジャッキ30が重量物の輸送容器11を押す力は非常に大きいことや、油圧ジャッキ30が押す位置よりも上方に位置している固定ボルト61,77に対してモーメントが作用することから、固定ボルト61,77を非常に大きなものにして、その固定箇所も強化する必要がある。これに対し、連結棒26を用いれば、固定ボルト61,77は小さなものでよく(原子炉建屋2から原子炉格納容器3までの搬送だけであれば固定ボルト61,77は無くてもよく)、その固定箇所の強化も不要である。
また、この輸送容器11の移動の際、第1レール21の幅方向への上部スキッド23及び下部スキッド24の移動は、ガイドローラ64,73によって規制される。このため、上部スキッド23及び下部スキッド24とともに輸送容器11を、第1レール21から外れることなく、確実に第1レール21に沿って移動させることができる。
続いて、前記第1手順を実施後、固定ピン41と固定ボルト42による第1レール21への油圧ジャッキ反力受け25の固定を解除する。即ち、固定ピン41を、第1レール21の固定ピン穴21a及び反力受け固定部25fの固定ピン穴25aから引き抜き、且つ、固定ボルト42を緩めて、第1レール21の固定ボルト穴21b及び反力受け固定部25fの固定ボルト穴25bから引く抜くことにより、第1レール21への油圧ジャッキ反力受け25(反力受け固定部25f)の固定を解除する。
そして、図16に示すように、作業員が油圧ジャッキ30を操作して、油圧ジャッキ30のピストンロッド30bを縮める。その結果、油圧ジャッキ反力受け25が、油圧ジャッキ30のジャッキ本体部30aとともにピストンロッド30bの先端側に引き寄せられて、機器搬入方向の前方へ第1レール21に沿って移動する。
その後、この油圧ジャッキ反力受け25が移動した位置において(輸送容器11は停止し、油圧ジャッキ30のピストンロッド30bは縮めた状態で)、再度、油圧ジャッキ反力受け25(反力受け固定部25f)を、固定ピン41と固定ボルト42によって第1レール21に固定する。ここまでが第2手順である。即ち、油圧ジャッキ反力受け25が移動した位置において、固定ピン41を、再度、反力受け固定部25fの固定ピン穴25aと、当該移動位置における第1レール21の固定ピン穴21aとに挿入し、固定ボルト42を、反力受け固定部25fの固定ボルト穴25bに挿通して、当該移動位置における第1レール21の固定ボルト穴21bに固定することにより、油圧ジャッキ反力受け25(反力受け固定部25f)を第1レール21に固定する。
そして、再度、前述のように油圧ジャッキ30のピストンロッド30bを伸ばすことにより、輸送容器11を上部スキッド23及び下部スキッド24とともに前方(機器搬入方向)へ移動させる。
以後、同様に上記のような油圧ジャッキ30の蠕動運動による輸送容器11の移動を繰り返す。即ち、前記第1手順と前記第2手順を順次繰り返す。かくして、上部スキッド23及び下部スキッド24とともに輸送容器11を、第1レール21に沿って、原子炉建屋2の外部27から、原子炉建屋2の機器搬入口2c、原子炉建屋2の機器搬入口2cと原子炉格納容器3の機器搬入口3cとの間の機器搬入ルート28を経て、原子炉格納容器3の機器搬入口3cまで(輸送容器11が機器搬入口3cを通過する途中まで)、搬送する。
(後半の輸送容器搬入手順)
次に、図2、図17〜図22及び図23〜図28に基づき、後半の輸送容器搬入手順、即ち原子炉格納容器3の機器搬入口3cから原子炉格納容器3内へ輸送容器11を搬入する手順について説明する。なお、図17〜図22では、説明の便宜上、輸送容器11を一点鎖線の透視図で示している。
前述の第1レール21において実施した油圧ジャッキ30による輸送容器11の搬入(前半の輸送容器搬入手順)によって、輸送容器11を、原子炉格納容器3の機器搬入口3cを通過する途中の位置である旋回開始位置まで搬入する。
ここで、連結部24c,26fから連結ピン91を引き抜き、連結部23t,26gから連結ピン92を引き抜いて、連結棒26を上部スキッド23及び下部スキッド24から取り外す。
次に、固定ボルト77を緩めて、上部スキッド23から輸送容器11を切り離す。そして、作業員が輸送容器11の下に配置したジャッキアップ用の油圧ジャッキ141(図23)によって、輸送容器11を持ち上げる(ジャッキアップ)する。このジャッキアップ状態で、作業員が油圧ジャッキ30を操作して、油圧ジャッキ30のピストンロッド30bを縮めることにより、上部スキッド23を、輸送容器11の上側(機器搬入方向の後方)の位置へ移動させる。また、旋回防止ピン82を旋回防止ピン穴23m,23nから引き抜いて、ターンテーブル23Cを旋回可能な状態にする。旋回防止プレート83を設けた場合には、固定ボルト84を緩めて旋回防止プレート83を取り外すことにより、ターンテーブル23Cを旋回可能な状態にする。
その後、輸送容器11を、油圧ジャッキ141によって下げることにより、再びターンテーブル23Bの上に載せてターンテーブル23Bに固定ボルト77で固定する。
このように上部スキッド23を後方位置へ移動させたときの状態を、図17及び図23に示している。その後、油圧ジャッキ141は撤去する。なお、図13には前記後方位置へ移動させる前の上部スキッド23を実線で示し、前記後方位置へ移動させた後の上部スキッド23を一点鎖線で示している。
なお、上部スキッド23を前記後方位置へ移動させるのは、上部スキッド23から輸送容器11の下端(機器搬入方向の前端)までの距離を長くして、輸送容器11の下端(機器搬入方向の前端)が確実に第2レール22に届くようにするためである。なお、前記後方位置に初めから上部スキッド23を設けた場合には、上部スキッド23と下部スキッド24の間隔が広くなるため、第1レール21の曲りレール部21Bにおける上部スキッド23及び下部スキッド24の移動が難しくなる。このため、旋回開始位置で上部スキッド23を前記後方位置へ移動させる。勿論、曲りレール部21Bの曲率などとの関係から、前記後方位置に初めから上部スキッド23を設けることが可能であれば、そのようにしてもよい。また、前記後方位置に移動させなくても、輸送容器11の下端(機器搬入方向の前端)が第2レール22に届くようにようであれば、上部スキッド23を前記後方位置へ移動させる作業は不要である。
輸送容器11を旋回させるには、図23などに示すポーラクレーン131を用いる。ポーラクレーン131は原子炉格納容器3内の上部に常設されており、矢印P1のような水平の旋回、矢印P2のような横行、矢印P3のような巻き上げ及び巻き上げなどを行うことができる。
ポーラクレーン131の主巻線131cに設けられているフック131aに取り付けたマルチスリング131dを、輸送容器底板11Dに設けられている吊りラグ11hに玉掛けによって接続する。この状態でポーラクレーン131により、輸送容器11の下端側(機器搬入方向の前端側)を吊り上げる(図13には吊り上げた状態を一点鎖線で示している)。このとき、輸送容器11とともに下部スキッド24も吊り上げられる。図17などに示すS点が、ポーラクレーン131による輸送容器11の吊り位置中心である。
輸送容器11を吊り上げた後、上部スキッド23に油圧ジャッキ85を設置し、固定ボルト75を緩めて上部スキッド本体部23Aへのスライドテーブル23Bの固定を解除する。この状態で油圧ジャッキ85のピストンロッド85aを伸ばしてスライドテーブル23Bを押すことにより、図17に矢印R1で示すようにスライドテーブル23Bを、第1レール21の幅方向へ摺動させる。このとき、スライドテーブル23とともにターンテーブル23C及び輸送容器11も同じ方向へ移動する。
この摺動後の状態を図12及び図18に示す。機器搬入方向前方を向いて右方向(即ち第2レール22が設置されている方向)が、輸送容器11を旋回させる方向(図18の矢印R2方向)であるため、この旋回方向(右方向)と反対の方向(左方向)へ、スライドテーブル23Bを摺動させる。このとき、スライドテーブル23とともにターンテーブル23C及び輸送容器11も前記反対の方向(左方向)へ移動する。なお、下部スキッド24は固定ボルト61で輸送容器11に固定されたままであるため、輸送容器11とともに移動する。スライドテーブル23Bは、摺動後、再び固定ボルト75と固定ナット76とによって上部スキッド本体部23Aに固定される。
そして、作業員がポーラクレーン131を操作して、ポーラクレーン131の横行や旋回を行うことにより、図18に矢印R2で示すように輸送容器11を、ターンテーブル23Cとともに旋回ピン78を旋回軸として右方向(第2レール22が設置されている方向)へ水平に旋回させる。
また、このポーラクレーン131による輸送容器11の旋回に連動して、油圧ジャッキ30による輸送容器11の搬入(移動)も行う。即ち、作業員が油圧ジャッキ30を操作し、油圧ジャッキ30のピストンロッド30bを伸ばして上部スキッド23を押すことにより、図18に矢印R3で示すように上部スキッド23とともに輸送容器11を、第1レール21(第2直線レール部21C)に沿って原子炉格納容器3内へと移動させる(搬入する)。更に油圧ジャッキ30のピストンロッド30bを縮めて油圧ジャッキ反力受け25を前へ移動させた後、油圧ジャッキ30による輸送容器11の移動を繰り返す。つまり、前半の輸送容器搬入手順と同様(図14〜図16参照)の油圧ジャッキ30の蠕動運動によって(前記第1手順と前記第2順を順次繰り返すことによって)、上部スキッド23とともに輸送容器11を搬送する。このときには連結棒26が取り外されており、輸送容器11とともに下部スキッド24は吊り上げられているため、油圧ジャッキ30の押す力は上部スキッド23にだけ伝えられることになる。
図19及び図20には、このようなポーラクレーン131による輸送容器11の旋回や、油圧ジャッキ30による輸送容器11の移動によって、原子炉格納容器3内へ輸送容器11を搬入している様子を示している。
かくして、輸送容器11の上下方向(機器搬入方向の前後方向)が、第2レール22の長手方向に一致した状態になり、輸送容器11の下端部(機器搬入方向の前端部)が、第2レール22の基端部(機器搬入方向の後端部)に達する。一方、第2レール22の基端部(機器搬入方向の後端部)には反転架台142が設置されている。この反転架台142には第1ピボット143と、第1ピボット143よりも背が高い第2ピボット144と、第1ピボット143と同様の背の高さの受け台145とが設けられている。第1ピボット143は輸送容器11に近い方に2つ設けられ、第2ピボット144は輸送容器11から遠い方に2つ設けられ、受け台145は反転架台14の端部(第2ピボット144の側方)に2つ設けられている。
そこで、輸送容器底板11Dに設けられている第1反転ラグ11fが、第1ピボット143の直上に達するまで、ポーラクレーン131と油圧ジャッキ30によって輸送容器11を移動させた後、ポーラクレーン131により輸送容器11を吊り下げて、図20及び図24に示すように第1反転ラグ11fを第1ピボット143に載置する。このとき第1反転ラグ11fは第1ピボット143に対して回動可能に係合する。
続いて、図25に示すように、マルチスリング131dを、吊りラグ11hから取り外し、輸送容器上部胴11Aに巻き付ける。即ち、取替用の原子炉容器上蓋4aを収納した輸送容器11の重心位置Qよりも上側(機器搬入方向の後側)にマルチスリング131を巻き付ける。また、固定ボルト77を緩めて上部スキッド23への輸送容器11の固定を解除する。この状態で輸送容器11の上側(機器搬入方向の後側)をポーラクレーン131によって吊り上げる。従って、上部スキッド23は第1レール21に残され、輸送容器11だけが吊り上げられて上部スキッド23から浮き上がる。
また、図21及び図25に示すように、反転架台142にウインチ146のワイヤ146aを接続する。ワイヤ146aはウインチ146から第2レール22の先端側へ延び、滑車(図示省略)で折り返されてから、反転架台142に接続されている。
この状態で、作業員がウインチ146を操作して、図21に矢印R5で示すようにワイヤ146aをウインチ146で巻き取り、且つ、作業員がポーラクレーン131を操作して、第2レール22の長手方向に沿ってポーラクレーン131を横行させることにより、図21及び図25に矢印R4で示すように第2レール22の長手方向に沿って輸送容器11を、反転架台142とともに横引きし、図22及び図26に示すように輸送容器搬入位置(立て起こし位置)35まで搬入する。
続いて、原子炉格納容器3内の床面33上に仮受台147を設置し、ポーラクレーン131によって輸送容器11を吊下げて、輸送容器11の上部側(機器搬入方向の後部側)を、仮受台147の上に載せる。このときの状態を図22及び図26に示している。また、このときに下部スキッド24と第2レール22との間には隙間が生じているため、下部スキッド24を、固定ボルト61を緩めて輸送容器11から取り外し、ハンドパレット(図示省略)によって輸送容器11から離れた位置まで移動させる。
続いて、マルチスリング131dを輸送容器11とフック131aから取り外し、図27に示すようにポーラクレーン131のフック131aに吊り具131bを取り付け、この吊り具131bを輸送容器天板11Cに取り付けらている吊上げ金具11iに接続する。
この状態でポーラクレーン131により、輸送容器11を吊り上げる。その結果、輸送容器11が、矢印R6で示すように第1ピボット143(第1反転ラグ11f)を回動軸として上方に回動することにより、立て起こされる。続いて、この立て起こしの途中で輸送容器底板11Dに設けられている第2反転ラグ11gが、第2ピボット144に載り、第1ピボット143に対して回動可能に係合する。その後、ポーラクレーン131によって更に輸送容器11を吊り上げると、輸送容器11は第2ピボット144(第2反転ラグ11g)を回動軸として上方に回動することにより、更に立て起こされる。
輸送容器11が真直ぐに立て起こされると、ポーラクレーン131により、一旦、輸送容器11を更に上方へ吊り上げて、第2ピボット144を反転架台142から取り外す。その後、図28に示すように輸送容器11を、ポーラクレーン131により吊下げて、第1ピボット143と受け台145の上に載置する。かくして、輸送容器11の立て起こしが完了する。
(輸送容器の構成)
次に、図29〜図35に基づき、輸送容器11の構成について詳述する。図29には取替用の原子炉容器上蓋4aを収納した状態の輸送容器11の構成を示している。
なお、図29には輸送容器上部胴11A及び輸送容器下部胴11Bの全体が同じ外径の輸送容器11の場合について例示しているが、勿論、図3に示すように輸送容器上部胴11Aの全体の外径と輸送容器下部胴11Bの一部の外径を、輸送容器下部胴11Bの下部11B−1の外径に比べて小さくした輸送容器11の場合も、この外径の変化以外は、図29に示す輸送容器11と同様に構成されている。
詳述すると、図29に示すように、輸送容器11は、前述のとおり円筒状の輸送容器上部胴11Aと、円筒状の輸送容器下部胴11Bと、円板状の輸送容器天板11Cと、円板状の輸送容器底板11Dとを有している。輸送容器底板11Dには、第1反転ラグ11fと第2反転ラグ11gと吊りラグ11hが設けられ、輸送容器天板11Cには、吊上げ金具11iが設けられている。また、輸送容器11の内部には、上部防振板11Eと中間部防振板11Fとが設けられている。
原子炉容器上蓋4aは、半球状(断面が円弧状)の上蓋本体部4cと、この上蓋本体部11cの下端(開口端)に形成されたフランジ部4bとを有している。また、上蓋本体部4cには、制御棒駆動装置(CRDM)を収容したCRDMハウジング101が、複数本取り付けられている。CRDMハウジング101は、制御棒駆動軸と、この制御棒駆動軸を駆動する駆動機構とを有して成る制御棒駆動装置(CRDM)を収容している。なお、前記駆動機構は、CRDMハウジング101の外径の大きな部分101aに収容されている。
輸送容器底板11Dの上には原子炉容器上蓋4aが載せられている。輸送容器下部胴11Bは、原子炉容器上蓋4aのフランジ部4bの上に載せられ、原子炉容器上蓋4aの上蓋本体部4cを囲んでいる。輸送容器下部胴11Bの下側のフランジ部11oと、原子炉容器上蓋4aのフランジ部4bと、輸送容器底板11Dは、第1接続ボルト111によって接続されている。
輸送容器下部胴11Bの上には、輸送容器上部胴11Aが載せられている。輸送容器下部胴11Bの上側のフランジ部11pと、輸送容器上部胴11Aの下側のフランジ部11qは、第3接続ボルト113によって接続されている。
輸送容器上部胴11Aの上には、輸送容器天板11Cが載せられている。輸送容器天板11Cと輸送容器上部胴11Aは、第5接続ボルト115によって接続されている。
なお、輸送容器11の内部を乾燥状態に保つため、輸送容器11内における輸送容器底板11D上などには、乾燥剤121が設置されている。
図30に示すように、上部防振板11Eには、原子炉容器上蓋4aに設けられたCRDMハウジング101の数に応じた個数のハウジング用穴11aが開けられている。同様に、図31に示すように、中間部防振板11Fにも、原子炉容器上蓋4aに設けられたCRDMハウジング101の数に応じた個数のハウジング用穴11bが開けられている。上部防振板11Eのハウジング用穴11aの内径に比べて、中間部防振板11Fのハウジング用穴11bの内径のほうが大きい。
図29に示すように、上部防振板11Eは、輸送容器上部胴11A内に設けられ、輸送容器上部胴11Aの内面に設けられた防振板支持部11cに第4接続ボルト117によって接続されている。中間部防振板11Fは、輸送容器下部胴11B内に設けられ、輸送容器下部胴11Bの内面に設けられた防振板支持部11dに第2接続ボルト119によって接続(締結)されている。
そして、CRDMハウジング101が、上部防振板11Eのハウジング用穴11aと、中間部防振板11Fのハウジング用穴11bとにそれぞれ挿通されている。なお、内径の小さい上部防振板11Eのハウジング用穴11aには、CRDMハウジング101の外径が小さい部分101bが挿入され、内径の大きい中間部防振板11Fのハウジング用穴11bには、CRDMハウジング101の外径が大きい部分101aが挿通されている。
また、ハウジング用穴11a,11bに挿通されたCRDMハウジング101は、上部防振板11Eに設けられた複数のハウジング支持手段と、中間部防振板11Fに設けられた複数のハウジング支持手段によって、支持されている。このハウジング支持手段の構成を図32及び図33に基づいて説明する。
図32に示すように、上部防振板11Eのハウジング支持手段は、ハウジング用穴11aの周縁部の両側(CRDMハウジング101の両側)に突設された支持部11jと、これらの支持部11jの押しボルト穴11kに固定された押しボルト102と、この押しボルト102に螺合された押しボルト固定ナット103と、押しボルト102の先端に設けられたサポートパッド104とを有して成るものである。サポートパッド104は、押しボルト102に対して、押しボルト102の軸回りに回転可能に取り付けられている。サポートパッド104は、CRDMハウジング101(外径が小さい部分101b)の外周面に応じた曲面(平面視が円弧状)になっている。
従って、押しボルト102を回してサポートパッド104をCRDMハウジング101(外径が小さい部分101b)の外周面に押し付けて、押しボルト固定ナット103で押しボルト102を固定することにより(即ち図示の状態とすることにより)、CRDMハウジング101を支持することができる。
中間部防振板11Fのハウジング支持手段も、上部防振板11Eのハウジング支持手段と同様の構成になっている。
即ち、図33に示すように、中間部防振板11Fのハウジング支持手段は、ハウジング用穴11bの周縁部の両側(CRDMハウジング101の両側)に突設された支持部11mと、これらの支持部11mの押しボルト穴11nに固定された押しボルト105と、この押しボルト105に螺合された押しボルト固定ナット106と、押しボルト105の先端に設けられたサポートパッド107とを有して成るものである。サポートパッド107は、押しボルト105に対して、押しボルト105の軸回りに回転可能に取り付けられている。サポートパッド107は、CRDMハウジング101(外径が大きい部分101a)の外周面に応じた曲面(平面視が円弧状)になっている。
従って、押しボルト105を回してサポートパッド107をCRDMハウジング101(外径が大きい部分101a)の外周面に押し付けて、押しボルト固定ナット103で押しボルト102を固定することにより(即ち図示の状態とすることにより)、CRDMハウジング101を支持することができる。
また、図30に示すように、上部防振板11Eに形成された多数のハウジング用穴11aのうちの複数個(図示例では四方の4個)には、ハウジング用穴ガイド108が嵌め込まれている。同様に、図31に示すように、中間部防振板11Fに形成された多数のハウジング用穴11bのうちの複数個(図示例では四方の4個)には、ハウジング用穴ガイド109が嵌め込まれている。
図34(a),(b)及び図35(a),(b)に示すように、ハウジング用穴ガイド108は、ハウジング用穴11aの内径に対応した外径を有する円筒状のガイド本体部108aと、このガイド本体部108aの上端に設けられたフランジ部108bとを有して成るのもであり、ガイド本体部108aがハウジング用穴11aに嵌め込まれている。そして、原子炉容器上蓋4aに設けられた多数のCRDMハウジング101のうちの複数本(図示例では四方の4本)のCRDMハウジング101(外径が小さい部分101b)は、ハウジング用穴ガイド108に挿通されている。
同様に、図34(c),(d)及び図35(c),(d)に示すように、ハウジング用穴ガイド109は、ハウジング用穴11bの内径に対応した外径を有する円筒状のガイド本体部109aと、このガイド本体部109aの上端に設けられたフランジ部109bとを有して成るのもであり、ガイド本体部109aがハウジング用穴11bに嵌め込まれている。また、ハウジング用穴ガイド109は、第1分割部109Aと第2分割部109Bに2分割されている。そして、原子炉容器上蓋4aに設けられた多数のCRDMハウジング101のうちの複数本(図示例では四方の4本)のCRDMハウジング101(外径が大きい部分101a)は、ハウジング用穴ガイド109に挿通されている。
(輸送容器の組立手順)
次に、図29及び図36〜図37に基づき、輸送容器11の組立手順について説明する。輸送容器11の組立作業は、製造工場において、当該製造工場に装備されているクレーンなどの組立設備(図示省略)を用いて実施される。
まず、図36に示すように、組立設備により、輸送容器底板11Dを製造工場内の所定の組立場所に設置し、原子炉容器上蓋4aを、クレーンにより吊下げて、輸送容器底板11Dの上に載せる。輸送容器底板11Dの上に原子炉容器上蓋4aを載せた状態を、図37に示す。
続いて、図37に示すように、輸送容器下部胴11Bを、クレーンにより吊下げて、原子炉容器上蓋4aの上に載せる。原子炉容器上蓋4aの上に輸送容器下部胴11Bを載せた状態を、図38に示す。ここで、輸送容器下部胴11Bの下側のフランジ部11oと、原子炉容器上蓋4aのフランジ部4bと、輸送容器底板11Dを、第1接続ボルト111によって接続する。
続いて、図38に示すように、中間部防振板11Fを、クレーンにより吊下げて、中間部防振板11Fの各ハウジング用穴11b(一部ではハウジング用穴ガイド109)に各CRDMハウジング101を挿通させつつ、輸送容器下部胴11B内へ搬入し、防振板支持部11dの上へ載せる。防振板支持部11dの上に中間部防振板11Fを載せた状態を、図39に示す。
ここで、中間部防振板11Fと防振板支持部11dを、第2接続ボルト119によって接続する。また、中間部防振板11Fのハウジング支持手段によってCRDMハウジング101を支持する。即ち、押しボルト105を回してサポートパッド107をCRDMハウジング101(外径が大きい部分101a)の外周面に押し付けて、押しボルト固定ナット106で押しボルト105を固定する。
続いて、図39に示すように、輸送容器上部胴11Aを、クレーンにより吊下げて、輸送容器下部胴11Bの上に載せる。輸送容器下部胴11Bの上に輸送容器上部胴11Aを載せた状態を、図40に示す。ここで、輸送容器下部胴11Bの上側のフランジ部11pと、輸送容器上部胴11Aの下側のフランジ部11qを、第3接続ボルト113によって接続する。
続いて、図40に示すように、上部防振板11Eを、クレーンにより吊下げて、上部防振板11Eの各ハウジング用穴11a(一部ではハウジング用穴ガイド108)に各CRDMハウジング101を挿通させつつ、輸送容器上部胴11A内へ搬入し、防振板支持部11cの上へ載せる。防振板支持部11cの上に上部防振板11Eを載せた状態を、図41に示す。
ここで、上部防振板11Eと防振板支持部11cを、第4接続ボルト117によって接続する。また、上部防振板11Eのハウジング支持手段によってCRDMハウジング101を支持する。即ち、押しボルト102を回してサポートパッド104をCRDMハウジング101(外径が小さい部分101b)の外周面に押し付けて、押しボルト固定ナット103で押しボルト102を固定する。
最後に、図41に示すように、輸送容器天板11Cを、組立設備により吊下げて、輸送容器上部胴11Aの上に載せる。輸送容器上部胴11Aの上に輸送容器上部胴11Aを載せた状態が、前述の図29である。ここで、輸送容器天板11Cと輸送容器上部胴11Aを、第5接続ボルト115によって接続する。
(輸送容器の解体手順)
次に、図29及び図42〜図46に基づき、輸送容器11の解体手順について説明する。輸送容器11の解体作業は、原子炉格納容器3内で実施する。このため、輸送容器11の解体作業には、原子炉格納容器3内に設置されているポーラクレーン131を利用する。
まず、図29に示す取替用の原子炉容器上蓋4aを収納した輸送容器11に対し、第5接続ボルト115を緩めて輸送容器天板11Cと輸送容器上部胴11Aの接続を解除する。そして、図42に示すように、ポーラクレーン131のフック131aに取り付けられている吊り具131bを、輸送容器天板11Cに設けられている吊上げ金具11iに接続し、ポーラクレーン131によって輸送容器天板11Cを吊り上げる。ここまでが第1手順である。
続いて、第4接続ボルト117を緩めて上部防振板11Eと防振板支持部11cの接続を解除する。また、押しボルト102を緩めて、CRDMハウジング101へのサポートパッド104の押し付けも解除する。そして、図43に示すように、輸送容器天板11Cの底部に設けられている吊りラグ11uと、上部防振板11Eの上面に設けられている吊りラグ11rとを、チェーンブロック132(接続手段)によって接続し、ポーラクレーン131によって輸送容器天板11Cと上部防振板11Eを吊り上げる。その後、チェーンブロック132を輸送容器天板11Cの吊りラグ11uと上部防振板11Eの吊りラグ11rからは外して、上部防振板11Eを輸送容器天板11Cから切り離す。ここまでが第2手順である。
続いて、ポーラクレーン131によって輸送容器天板11Cを、吊り下げ、輸送容器上部胴11Aの上に載せる。この状態で、第5接続ボルト115によって、再び輸送容器天板11Cと輸送容器上部胴11Aを接続する。また、第3接続ボルト113を緩めて輸送容器上部胴11Aと輸送容器下部胴11Bの接続を解除する。その後、図44に示すように、ポーラクレーン131によって輸送容器天板11Cと輸送容器上部胴11Aを吊り上げる。ここまでが第3手順である。
続いて、第2接続ボルト119を緩めて中間部防振板11Fと防振板支持部11dの接続を解除する。また、押しボルト105を緩めて、CRDMハウジング101へのサポートパッド107の押し付けも解除する。その後、図45に示すように、輸送容器上部胴11Aの下部内側に設けられている吊りラグ11sと、中間部防振板11Fの上面に設けられている吊りラグ11tとを、チェーンブロック132によって接続し、ポーラクレーン131によって輸送容器天板11Cと輸送容器上部胴11Aと中間部防振板11Fを吊り上げる。その後、チェーンブロック132を輸送容器上部胴11Aの吊りラグ11sと中間部防振板11Fの吊りラグ11tからは外して、中間部防振板11Fを輸送容器上部胴11Aから切り離す。ここまでが第4手順である。
最後に、ポーラクレーン131によって輸送容器天板11C及び輸送容器上部胴11Aを、吊り下げ、輸送容器下部胴11Bの上に輸送容器上部胴11Aを載せる。この状態で、第3接続ボルト113によって、再び輸送容器上部胴11Aと輸送容器下部胴11Bを接続する。また、第1接続ボルト111を緩めて、輸送容器下部胴11Bのフランジ部11oと、原子炉容器上蓋4cのフランジ部4bと、輸送容器底板11Dの接続を解除する。そして、図46に示すように、ポーラクレーン131によって輸送容器天板11Cと輸送容器上部胴11Aと輸送容器下部胴11Bを吊り上げる。ここまでが第5手順である。かくして、取替用の原子炉容器上蓋4aを収納した輸送容器11の解体が完了する。
(保管容器の構成)
次に、図47及び図48に基づき、輸送容器11を、原子炉容器4から取り外された使用後の原子炉容器上蓋4aを保管するための保管容器として利用する場合の構成について説明する。
なお、図47には輸送容器上部胴11Aの全体の外径と、輸送容器下部胴11Bの一部の外径とを、輸送容器下部胴11Bの下部11B−1の外径に比べて小さくした輸送容器11を保管容器として利用する場合について例示しているが、勿論、図29に示すような輸送容器上部胴11A及び輸送容器下部胴11Bの全体が同じ外径の輸送容器11を保管容器として利用する場合でも、この外径の変化以外は、図47に示す輸送容器11を保管容器として利用する場合と同様の構成である。
輸送容器11を保管容器として利用する場合には、前記保管容器に収納された使用後の原子炉容器上蓋4aに付着している放射性ダストが前記保管容器の外へ漏洩するのを防止するため、シール溶接をする必要がある。
詳述すると、図47及び図48(a)に示すように、輸送容器上部胴11Aと輸送容器下部胴11Bは、必要遮蔽厚の違いから、輸送容器下部胴11Bの方が板厚が厚くなっており、上下に重ね合わせたときに輸送容器上部胴11Aの外面11w−1と輸送容器下部胴11Bの外面11x−1が揃うようにすることより、輸送容器上部胴11Aの内面11w−2の下端と輸送容器下部胴11Bの内面11x−2の上端との間に段差11yが生じるようになっている。輸送容器上部胴11Aに比べて輸送容器下部胴11Bの方が肉厚であり、輸送容器上部胴11Aの内面11w−2よりも輸送容器下部胴11Bの内面11x−2のほうが内径が小さいため、輸送容器下部胴11Aの上端面11zに段差11yが生じる。即ち、段差11yは上向きである。
そして、輸送容器11の内側から、段差11yにすみ肉溶接を行うことにより、シール溶接部133を形成する。このシール溶接部133によって輸送容器上部胴11Aと輸送容器下部胴11Bの接続部をシールしている。また、段差11yにすみ肉溶接を行うときの溶接姿勢は、下向きになる。
図示は省略するが、以前には、輸送容器上部胴と輸送容器下部胴を内面揃いとし、外面にV字開先を形成して溶接することを計画していた。しかし、このような開先溶接の場合には、輸送容器上部胴と輸送容器下部胴を取り付けるときの初期不整による目違いにより、十分なV字開先を形成することできず、このことが溶接不良の原因になっていた。また、この開先溶接を行うときの溶接姿勢は、水平になる。
これに対して、本実施の形態例の輸送容器11では、輸送容器上部胴11Aの外面11w−1と輸送容器下部胴11Bの外面11x−1が揃うようにすることよって内面11w−2と内面11x−2に段差11yを生じさせ、この段差11yを利用してすみ肉溶接を行うことにより、溶接方法が開先溶接からすみ肉溶接になり、更に溶接姿勢が水平から下向きになるため、溶接施工性が向上する。
なお、その他にはシール溶接部134,135,136、137がある。シール溶接部134は、輸送容器11の内側から、輸送容器天板11Cと輸送容器上部胴11Aとをすみ肉溶接した部分である。このシール溶接部134によって輸送容器天板11Cと輸送容器上部胴11Aの接続部をシールしている。シール溶接部135は、輸送容器11の外側から、輸送容器下部胴11Bとシールプレート138とをすみ肉溶接した部分である。このシール溶接部135によって輸送容器下部胴11Bとシールプレート138の接続部をシールしている。シール溶接部136は、輸送容器11の外側から、輸送容器底板11Dとシールプレート138とをすみ肉溶接した部分である。このシール溶接部136によって輸送容器底板11Dとシールプレート138の接続部をシールしている。
シールプレート138は、放射性ダストの飛散を防止するため、原子炉容器上蓋4aのフランジ部4bを覆うためのものである。図48(b)に示すように、シールプレート138は円筒状の胴部138aと、円形の上面138bとを有し、上面138aの中央部に輸送容器下部胴11Bの外径に対応した内径の開口138cを有している。また、シールプレート138は周方向に複数(図示例では6つ)に分割された分割部から構成されている。シール溶接部137は、これら複数の分割部を原子炉容器上蓋4aのフランジ部4bの周囲に配設して、その外側から、隣り合う分割部同士を溶接した部分である。
なお、この保管容器として用いた輸送容器11の搬出は、搬入と逆の手順で行うことができる。
(作用効果)
以上のように、本実施の形態例の機器搬入装置1は、原子炉建屋2の機器搬入口2cと原子炉格納容器3の機器搬入口3cとが屈折した配置になっており、原子炉建屋2の外部27から、原子炉建屋2の機器搬入口2cと、原子炉建屋2の機器搬入口2cと原子炉格納容器3の機器搬入口3cとの間の機器搬入ルート28を経て、原子炉格納容器3の機器搬入口3cへ、輸送容器11(被搬入機器)を搬入する機器搬入装置であって、原子炉建屋2の外部27から原子炉建屋2の機器搬入口2cに亘って設置された第1直線レール部21Aと、機器搬入ルート28に設置された曲りレール部21Bと、原子炉格納容器3の機器搬入口3cに設置された第2直線レール部21Cとを有して成る一対の第1レール21と、輸送容器11の機器搬入方向前部が載置され、両端部23aが第1レール21の上面21cに載せられて当該上面21c上を摺動する機器搬入方向前側の下部スキッド24(第1スキッド)と、輸送容器11の機器搬入方向後部が載置され、両端部23aが第1レール21の上面21cに載せられて当該上面21c上を摺動する機器搬入方向後側の上部スキッド23(第2スキッド)と、上部スキッド23の機器搬入方向後方において、両端の反力受け固定部25fが第1レール21に着脱可能に固定された油圧ジャッキ反力受け25と、ジャッキ本体部30aの基端側が油圧ジャッキ反力受け25に連結され、ピストンロッド30bの先端側が下部スキッド24に連結された油圧ジャッキ30とを有することを特徴としている。
このため、下部スキッド24及び上部スキッド23とともに輸送容器11が、第1レール21の第1直線レール部21A、曲りレール部21B、第2直線レール部21Cに沿って移動し、特に曲りレール部21Bでは随時、輸送容器11の方向転換が行われるため、輸送容器11を容易且つ確実に搬入することができる。
従って、原子炉建屋2の機器搬入口2cと原子炉格納容器3機器搬入口3cとが屈折した配置になっていても、また、原子炉建屋2の機器搬入口2cと原子炉格納容器3の機器搬入口3cとの間の機器搬入ルート28が狭隘であっても、更には、輸送容器11が取替用の原子炉容器上蓋4aを収納した重くて大型のものであっても、容易且つ確実に輸送容器11を搬入することができる。
また、本実施の形態例の機器搬入装置1によれば、第1レール21の上面21cには、複数の固定ピン穴21aが第1レール21の長手方向に沿って一列に配設されており、油圧ジャッキ反力受け25の反力受け固定部25fは、固定ピン41が、第1レール21に設けられた固定ピン穴21aと、反力受け固定部25fに設けられた固定ピン穴25aとに挿入されることによって、第1レール21に着脱可能に固定されていることを特徴としているため、油圧ジャッキ反力受け25の反力受け固定部25fを、第1レール21に対して容易且つ確実に着脱することができる。
また、本実施の形態例の機器搬入装置1によれば、下部スキッド24と上部スキッド23は、連結棒26によって連結されていることを特徴としているため、油圧ジャッキ30が上部スキッド23を押す力を、連結棒26によって下部スキッド24に確実に伝えることができる。このため、油圧ジャッキ30の押す力を、確実に下部スキッド24及び上部スキッド23(即ち輸送容器11)の推力に変えることができる。
また、本実施の形態例の機器搬入装置1によれば、下部スキッド24の両端部24aの下面24cと、上部スキッド23の両端部23aの下面23bには、外周面64b,73aが第1レール21の側面であるガイド面21dに対向しているガイドローラ64,73が取り付けられていることを特徴としているため、下部スキッド24及び上部スキッド23(即ち輸送容器11)を、確実に第1レール21に沿って移動させることができる。
また、本実施の形態例の機器搬入装置1によれば、下部スキッド24の両端部24aと第1レール21との間には摺動材62が介設され、上部スキッド23の両端部23aと第1レール21との間には摺動材71が介設されていることを特徴としているため、摺動材62,71によって下部スキッド24及び上部スキッド23の摺動が円滑になり、下部スキッド24及び上部スキッド23(即ち輸送容器11)を、より確実に第1レール21に沿って移動させることができる。
また、本実施の形態例の機器搬入方法は、機器搬入装置11を用いた機器搬入方法であって、油圧ジャッキ反力受け25の反力受け固定部25fを第1レール21に固定した状態で、油圧ジャッキ30のピストンロッド30bを伸ばすことにより、下部スキッド24及び上部スキッド23とともに輸送容器11を、第1レール21に沿って機器搬入方向前方へ移動させる第1手順と、この第1手順を実施後、油圧ジャッキ反力受け25の反力受け固定部25fの第1レール21への固定を解除した後、油圧ジャッキ30のピストンロッド30bを縮めることにより、油圧ジャッキ反力受け25を機器搬入方向前方へ第1レール21に沿って移動させ、この移動位置において、油圧ジャッキ反力受け25の反力受け固定部25fを第1レール21に固定する第2手順とを有し、前記第1手順と前記第2手順とを順次繰り返すことにより、輸送容器11を第1レール21に沿って移動させることを特徴としている。
このため、原子炉建屋2の機器搬入口2cと原子炉格納容器3の機器搬入口3cとが屈折した配置になっていても、また、原子炉建屋2の機器搬入口2cと原子炉格納容器3の機器搬入口3cとの間の機器搬入ルート28が狭隘であっても、更には、輸送容器11が取替用の原子炉容器上蓋4aを収納した重くて大型のものであっても、容易且つ確実に輸送容器11を搬入することができる。