JP5880670B2 - 銅合金鋳片の溶解温度の決定方法 - Google Patents

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本発明は、銅合金鋳片の溶解温度の決定方法に係る。本発明は、特に、Be含有銅合金に代わる高強度銅合金として近年注目されているTi含有銅合金鋳片の溶解温度の決定方法に関する。
銅合金材の用途として、電気電子部品や安全工具などが挙げられる。
銅合金材が用いられる電気電子部品としては下記のものが挙げられる。エレクトロニクス分野ではパソコン用コネクタ、半導体ソケット、光ピックアップ、同軸コネクタ、ICチェッカーピンなどが挙げられる。コミュニケーション分野では携帯電話部品(コネクタ、バッテリー端子、アンテナ部品)、海底中継器筐体、交換機用コネクタなどが挙げられる。自動車分野ではリレー、各種スイッチ、マイクロモータ、ダイヤフラム、各種端子類などの種々の電装部品が挙げられる。医療・分析機器分野では医療用コネクタ、産業用コネクタなどが挙げられる。家電分野ではエアコン等家電用リレー、ゲーム機用光ピックアップ、カードメディアコネクタなどが挙げられる。これらは、厚さが0.1〜0.2mm程度の薄帯から成形加工して部品が作られることが多い。
銅合金材は、素材としては、薄帯の他に線材やバルク形状のものが用いられることも多い。これらの例として、航空・宇宙分野では航空機用ランディングギアやプラスティックの射出成形用金型などが挙げられる。線材からの加工品としては、溶接用電極材料が挙げられる。レーザービーム溶接用電極や、スポット溶接電極として、例えば自動車ボディーの組み立て工程で多用されている。
銅合金材が用いられる安全工具としては、例えば、弾薬庫や炭坑等、火花から引火して爆発する危険性がある場所で用いられる掘削棒やスパナ、チェーンブロック、ハンマー、ドライバー、ペンチ、ニッパなどの工具がある。
従来、上記のような部品には、Be含有銅合金が広く使用されている。これは、Beの時効析出による強化を狙った合金である。この合金は、引張強度と導電率の双方が優れるので、ばね用材料などとして広く使用されている。しかしながら、Be含有銅合金の製造工程およびこの合金を各種部品へ加工する工程においてBe酸化物が生成する。
BeはPb、Cdに次いで環境に有害な物質である。銅合金材の溶接工程、加工工程などの製造時やリサイクル時などには、有害なBe酸化物の吸引防止あるいは処理工程を設ける必要がある。このように、Beを用いると原材料費を上昇させるだけでなく、さらに製造コスト、環境管理コストを上昇させる。これらの理由によって、Pb、Cd、Be等の環境に有害な元素を用いず、強度や加工性等の機械的性質と導電性の双方が優れる材料の出現が待望されている。
例えば、特許文献1および特許文献2には、この問題を解決するべく、高強度と曲げ加工性のバランスに優れた銅合金が開示されている。これらの銅合金は、機械的性質、すなわち強度と加工性(特に、板材における曲げ加工性)は、従来のBe含有銅合金に匹敵する良好な特性を呈する。しかし、これらの銅合金のIACS(純銅に対する電気伝導度の百分率。)は、Be含有銅合金の6割程度と低い。これでは、特に電流を多く流す用途(パワー系の用途)に用いることができない。
本発明者は、特許文献3および特許文献4において、強度、加工性および導電性の特性バランスが優れた銅合金を提案している。これらの銅合金は、Be含有銅合金に匹敵する強度および曲げ加工性を有し、しかも、Be含有銅合金を凌駕する導電性を有する。これらの文献に記載される銅合金は、Tiに加え、多くの場合Cr等の元素を複合添加したものである。これらの発明では、特に、Crを添加することで、最終時効処理工程でCuTiとして析出しきれないで残留した電気伝導度に有害な固溶Tiを捕捉することとしている。一方、固溶Crは、導電性を害する程度がきわめて低い。このため、上記の文献に記載される銅合金は、導電性を著しく向上できるのである。
特許文献5には、融点から200℃以上高い温度に加熱してから鋳造することを特徴とするFeおよびTiを含有する銅合金の製造方法が開示されている。その目的は晶出したFe−Ti−P化合物の再固溶を図ることにあるとされている。
特許文献6には、Feを含有する銅合金の溶解時の合金元素の添加方法を、溶解炉の温度や添加順序との関係において説明している。
特許文献7には、合金元素の溶け残りをなくすため、Tiを2〜3.5%含有する銅合金の製造方法において、Tiに加えてさらに第3元素を含有する場合には、若干高めの温度、すなわち1210〜1230℃、で溶解して十分長い時間保持することが重要と述べられている。
特許文献8には、ツインベルト法で厚さが3〜8mm程度の銅合金薄鋳片を製造する方法が開示されている。また、特許文献9には、銅合金のツインベルト法での鋳込み温度を1500℃で行っている。
特開2004−231985号公報 特開2002−356726号公報 特開2005−281850号公報 国際公開WO2009/016706 特開昭62−185842号公報 特開平11−172350号公報 特開2006−283142号公報 国際公開WO2005/072891 特開平4−333538号公報
本発明者は、銅合金におけるTiの含有量のIACSに及ぼす影響を確認すべく、下記の実験を行った。
まず、それぞれの成分に調整した原料10kgを高周波真空溶解炉にて1350℃に加熱して溶製し、十分予加熱した鋼製金型に注湯してインゴットとした。押し湯部を除去後、930℃に加熱後に熱間鍛造して厚さ20mmとし、表面研削して圧延素材とした。900℃に加熱後の熱間圧延によって厚さ3mmの板とし、900℃で5minの溶体化処理を施し、水冷した。表面研削後、厚さ1mmまで冷間加工を施し、再び900℃で5minの溶体化処理を施し、酸洗後に厚さ0.2mmまで冷間圧延し、900℃で5minの溶体化処理と酸洗を施した後、厚さ0.1mmまで冷間圧延した。最後に400℃で6hrの時効処理を施して供試材とした。各供試材から、圧延方向と平行に試験片を切り出し、4端子法によって電気抵抗測定を行い、純銅の電気抵抗値を基準に、電気抵抗の逆数である導電率を求め、IACSを算出した。
図1は、銅合金におけるTiの含有量のIACSに及ぼす影響を示す図である。なお、図中の●は、Tiを単独添加した例であり、Ti含有量を0.1〜4%の範囲で変化させたものであり、図中の○は、TiおよびCrを添加した例であり、Ti含有量を0.05〜4.6%の範囲、Cr含有量を0.05〜0.6%の範囲で変化させたものである。
図1に示すように、材料の強度確保に寄与するTiの増量に伴ってIACSが低下する。このことはTiおよびCrを複合添加した銅合金も同様である。しかしながら、図中の矢印で示すようにCrを添加することにより、大幅にIACSが向上することが分かる。なお、IACSに及ぼすCr量の影響は0.05〜0.6%の範囲では比較的小さいため、Ti含有銅合金のIACS向上には少量のCr添加で十分であることが確認された。図示は省略するが、上記の供試材について引張試験および圧延方向と直角方向(Bad way)の曲げ試験を実施したところ、良好な材料強度および曲げ加工性を有していることが確認された。
このように、上記の実験段階においては、特性および品質において何の問題も発生しなかったが、実用化試験の段階で問題が発覚した。すなわち、上記の供試材を作製する段階においては、鉄鋼に用いる試験溶解炉を用い、鋳込温度を1350℃と十分高く設定していた。しかし、3%Tiおよび0.15%Crを含有する銅合金を用いて、サイズアップ試験のために2トンインゴットの試作試験を行った際、溶解炉の温度が十分上がらず、1200℃程度で溶解すると、溶湯の湯流れが極端に悪くなり、インゴットケースへの注湯が困難になるばかりか、凝固塊に多数の介在物が巻き込まれる結果となった。
上記のような介在物の巻き込みは、最終製品の品質不良、具体的には表面品質上の問題や化学組成の不均一に起因する特性のばらつき、あるいは局所的な延性不良の原因となる。例えば、酸化物、窒化物または金属間化合物は、室温、すなわち、冷間加工温度における変形能が著しく劣るため、介在物を介したままで加工を続けていくと、そのまま異物として残るか、割れた状態で介在することになる。その結果、表面疵を発生させるとともに、内部品質にも重大な影響をもたらす。板圧延の場合には表面に凹部を生じさせ、極端な場合には穴が空いてしまい、それらが連結することによって板の破断を招いて圧延の継続が不可能になる。線材の場合には、例えば線引き中に破断を招いて工程上の重大なトラブルになる可能性がある。
従来、設備費や省エネルギーの観点から、銅合金を溶解するのに液相線温度から大幅に高い温度で操業することは考えられず、溶解炉の上限温度も高々1200℃であった。このような設備を前提とする技術思想の元では、TiおよびCrを含有する合金(以下、「Ti、Cr複合添加銅合金」と呼ぶ。)の安定した生産はできない。
前掲の特許文献5〜9は、いずれも溶湯温度に言及のある文献であるが、例えば、特許文献5に記載の技術は、溶湯の粘性にまで踏み込んだ対策は取られていない。また、Fe−Ti−P化合物に関する対策が記載されるのみで、TiまたはCrの酸化物または窒化物い介在物の挙動については記載されていない。また、そもそも、特許文献5に記載の技術は、溶湯の粘度が影響するような成分系ではない。
特許文献6および7では、鋳込み時における酸化物や窒化物の混入と溶湯の粘度との関係については一切触れられておらず、本発明とは技術思想や効果の点でまったく異なるものである。
特許文献8および9は、いずれもツインベルト法で銅合金薄鋳片を製造する方法に関する技術が記載されているが、元来、ツインベルト法などの急冷凝固法では、注湯中の温度低下が激しいことから、鋳込み温度を高めに設定される。しかし、この方法を最終製品の断面積に対して少なくとも100倍以上好ましくは200倍以上さらに好ましくは500倍以上の断面積を有する鋳片を製造する場合に適用することはできない。
本発明は、このような従来技術の問題を解決するためになされたものであり、環境に問題のあるBeなどの元素を全く用いず、優れた強度および導電性を有し、しかも、加工性に優れたTi、Cr複合添加銅合金を安定的かつ高効率に製造する方法を提供することを目的としている。
なお、「加工性」に優れるとは、板材にあっては0.2mm厚の90°曲げ加工試験における限界曲げ半径と板厚の比B(=R/t、ただし、Rは曲げ部の曲率半径、tは板厚)が(4)式および(5)式を満たし、バルク材にあっては、引張試験における伸び、El(%)が引張強さTS(MPa)との関係おいて(6)式を満たすものをいう。
90≦2.0 ・・・ (4)
≦0.5 ・・・ (5)
El≧−24.138+24.6076×exp[−{(TS−1816.36)/2213.52}] ・・・ (6)
ただし、B90は試験片の長手方向が圧延方向と直角になるように試験片を採取した場合の結果を、Bは試験片の長手方向が圧延方法と平行になるように試験片を採取した場合の結果である。
本発明者は、更なる検討を重ね、溶湯の粘度が上昇する傾向は、Tiの単独添加の場合より、Tiと共に、Crを複合添加した場合に顕著になることを知見した。そこで、Ti、Cr複合添加銅合金の溶湯について、その粘性の温度依存性を詳細に調べた。高温での粘度測定は、次の手順で行った。
まず、純銅、3%Tiを含有する銅合金および3%Tiおよび0.2%Crを含有する銅合金の溶解原料5kgをそれぞれチャンバー内の高周波溶解炉にセットし、真空度を通常の工業用真空溶解炉のそれに近い0.1Paに保ちながら、1150〜1500℃の所定の温度に加熱し、所定の温度に達してから30min保持した後、軸受けを介してチャンバー内に挿入された溶湯攪拌用の羽根車を50回転/minで回転した時の抵抗値をトルクメーターで読み取り、粘度を相対値として算出した。
図2は、純銅、3%Tiを含有する銅合金または3%Tiおよび0.2%Crを含有する銅合金の溶湯における温度と粘度との関係を示す図である。図2の◆は純銅、○は3%Tiを含有する銅合金、●は3%Tiおよび0.2%Crを含有する銅合金をそれぞれ示している。図2に示すように、純銅の場合、溶解温度が低くなっても、溶湯の粘度はさほど上昇しないが、Tiを3%含有する例では粘度が高くなり、その傾向は、更にCrを0.2%含有する例で顕著となる。特に、溶湯の温度が1250℃を下回ると急激に粘度が上昇し、前述した品質上の問題が発生しやすい状態となる。
上記の実験に付随して、超高真空中での溶湯粘度を確認したところ、Ti又は更にCrを含有する銅合金の粘度は、純銅と比較して若干高くなる程度であった。すなわち、工業用真空炉の真空度、即ち、0.1Pa程度の低真空下で、Ti又は更にCrを添加することによって、溶湯の粘度が大幅に上昇すること、粘度の上昇傾向は、低温域(液相線からあまり高くない温度域)で顕著であり、特に、Ti単独添加の場合よりも、TiおよびCrの複合添加の場合に顕著であることが分かった。
このようなTiおよびCrの複合添加によって粘度が上昇する原因は、必ずしも定かではないが、以下の理由によるものと考えられる。
図3は、Ti−Crの2元系状態図である。図3に示すように、TiとCrを複合添加すると、溶銅中にβ(Ti,Cr)相などの金属間化合物が生成しやすくなる。溶解原料としてのTiおよびCrは融点が高いため、溶解温度が低い場合には溶け込むスピードが遅くなることが予想され、その結果、溶湯の粘度が高くなると推測される。そして、溶湯の攪拌が十分行われない場合には、局所的にβ(Ti,Cr)相を生じさせると考えられる。さらに、このような合金系では、真空度のあまり高くない工業用真空溶解炉では、TiまたはCrの酸化物または窒化物が生じやすく、これらの酸化物などは、溶湯の粘度が高いために浮上しにくく、粘度はさらに上昇することになると考えられる。これらの相乗効果によってTi、Cr複合添加銅合金の鋳塊には、介在物が混入し易くなると考えられる。
本発明者は、上記の知見に基づき、Ti、Cr複合添加銅合金においては、溶解時の雰囲気制御はもとより、十分な湯流れを確保し、ひいては鋳込み時の介在物の巻き込みを防止するためには、各種元素の添加量に応じた十分な溶解温度を確保することが必要であることを見出し、本発明を完成した。
次に鋳片の断面積と最終製品の断面積の比が製品の成形性に与える影響について調査した結果について述べる。3%Tiおよび0.1%Crを含有する銅合金、および1.2%Tiおよび0.2%Crを含有する銅合金を30kg高周波真空溶解炉にて1350℃に加熱して溶解後、鋼製鋳型に鋳込み130mm×130mm×190mmの鋳塊を2本ずつ得た。それぞれの鋳塊から押し湯部(上端から約35mm)を切断除去した。それぞれ一本の鋳塊については、押し湯部の切断面と平行に切断して、それぞれ5mm、10mm、20mm、50mmおよび70mmの厚さを有する素材を採取した。もう一本の鋳塊については、押し湯部の切断面と平行に切断して、それぞれ100mmの厚さを有する素材を採取した。
上記の厚さ5mm、10mmおよび20mmの素材については、925℃に加熱後、厚さ2mmまで熱間圧延した。厚さ50mm、70mmおよび100mmの素材については、930℃に加熱した後、厚さ20mmまで熱間鍛造した後、925℃に加熱後、厚さ2mmまで熱間圧延した。得られた熱間圧延材には、Arガス雰囲気中にて900℃で5minの溶体化処理を施した後、水冷、酸洗後に0.4mmまで冷間圧延した。得られた冷間圧延材には、再び溶体化処理を施し、酸洗した後に厚さが0.2mmまで冷間圧延した。得られた冷間圧延材には、最後に400℃で6hrの時効処理を施して、供試材とした。
これらの供試材から試験片を採取し、種々曲率半径を変えた90°曲げ試験を行い、50倍の顕微鏡観察によって割れ限界曲率半径Rを求め、曲げ加工性B90(=R/t、ただし、tは板厚。)を求めた。ただし、B90は長手方向が圧延方向と直角になるように採取した試験片における曲げ加工性である。
成形性が最も問題となるB90を、鋳塊から採取した素材(ここでは単に「素材」という)と最終製品との断面積比(素材の断面積/最終製品の断面積比を意味する。)との関係においてプロットしたものを図4に示す。図中、○印は3%Tiおよび0.1%Crを含有する銅合金の結果を、△印は1.2%Tiおよび0.2%Crを含有する銅合金の結果をそれぞれ示す。なお、供試材は板材であるため、素材と最終製品との断面積比としては、厚さ比、即ち、素材の厚さ/最終製品の厚さの計算値を用いた。従って、厚さ5mmの素材における断面積比は25、厚さ10mmの素材における断面積比は50、厚さ20mmの素材における断面積比は100、厚さ50mmの素材における断面積比は250、厚さ70mmの素材における断面積比は350、厚さ100mmの素材における断面積比は500である。
図4に示すように、B90は断面積比の低下、すなわち、鋳塊から切り出した素材の厚さの低下とともに大きくなり、断面積比が100以下となると急激に増大する。すなわち、断面積比が小さいほど、曲げ加工性が低下することがわかる。工業的に求められているB90は2以下なので、少なくとも該断面積比が100倍以上になるように鋳片を用意する必要があることがわかる。
本発明は、下記の(A)〜(D)のいずれかに示す銅合金鋳片の溶解温度の決定方法を要旨とする。
(A)質量%で、Ti:0.05〜4%、Cr:0.01〜0.7%を含有する銅合金から、長手方向に垂直な断面における面積が最終製品の長手方向に垂直な断面における面積の100倍以上である鋳片を得るに際し、溶解温度を下記(1)式から求められる温度TM(℃)以上とする、銅合金鋳片の溶解温度の決定方法。
TM = TL + 20[Ti] + 150[Cr]+ 90・・・(1)
TL = 1084.87 − 4.242[Ti] − 6.475[Cr] − 4.242[Ag] + 3.700[Fe] − 11.236[Sn] − 6.342[Mn] + 5.894[Co] − 6.820[Al] − 28.02[Si] + 89.757[Nb] + 75.742[Ta] + 81.535[Mo] + 392.7[V] + 386.6[W] − 2.278[Au] − 2.395[Zn] + 6.846[Ni] − 13.01[Ge] − 9.459[Zr] − 24.25[P] − 28.14[B] − 38.75[Mg] − 31.82[Li] − 25.59[Ca] − 11.0[RE]・・・(2)
但し、上記式中、TLは(2)式から求められる液相線温度(℃)、各元素記号は、それぞれの元素の含有量(質量%)を意味する。
(B)さらに、質量%で、Ag:0.001〜1%および/またはFe:0.01〜1%を含有する銅合金を用いる、上記(A)の銅合金鋳片の溶解温度の決定方法
(C)さらに、質量%で、下記の第1群および第2群に記載の元素から選ばれた1種以上の元素を合計で1.0%以下含有する銅合金を用いる、上記(A)または(B)の銅合金鋳片の溶解温度の決定方法
第1群:PおよびB:それぞれ、0.001〜0.05%、
第2群:Sn、Zn、Zr、Mn、Ni、Co、Al、Si、Nb、Ta、Mo、V、W、Au、Te、SeおよびGe:それぞれ0.005〜1%
(D)さらに、質量%で、Mg、Li、Caおよび希土類元素の中から選ばれた1種以上の元素を合計で0.0005〜0.5%含有する銅合金を用いる、上記(A)〜(C)のいずれかの銅合金鋳片の溶解温度の決定方法
本発明によれば、環境に問題のあるBeなどの元素を全く用いず、優れた強度および導電性を有し、しかも、加工性に優れたTi、Cr複合添加銅合金を安定的かつ高効率に製造することができる。
銅合金におけるTiの含有量のIACSに及ぼす影響を示す図 純銅、3%Ti銅合金または3%Tiおよび0.2%Crを含有する銅合金の溶湯における温度と粘度との関係を示す図 Ti−Crの2元系状態図 曲げ加工性B90と、鋳塊と最終製品との断面積比との関係を示す図
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の説明において、各元素の含有量についての「%」は「質量%」を意味する。
(A)本発明に用いられる銅合金の化学組成について
本発明に用いられる銅合金は、Ti:0.05〜4%およびCr:0.01〜0.7%を含有するものである。
Ti:0.05〜4%
Tiは、材料の強度を確保するのに必須の元素である。すなわち、Tiは、時効処理によってCuTiを析出させ、その析出硬化によって銅合金の強度を上昇させる。この際、Tiの含有量が0.05%未満では、十分な強度が得られない。そして、その含有量が4%を超えると、強度は上昇するものの導電性が劣化し、さらに曲げ加工性が劣化する。従って、Tiの含有量は0.05〜4%とした。Ti含有量の下限は0.1%とするのが好ましい。
Cr:0.01〜0.7%
上述のとおり、Tiは強度上昇に有効であるが、析出しないでCuマトリックス中に固溶し、残存した場合には導電性を著しく劣化させる。Crは、Cuマトリックス中に固溶しても、導電性の劣化は小さい。一方、Crは、固溶TiをCr−Tiの形で固定するため、マトリックス中の固溶Tiを低減でき、その結果、銅合金の導電性を向上させる。また、加工・熱処理工程で生じたβ(Ti,Cr)微細析出物は、溶体化処理等において高温にさらされたとしても安定して残存する。このため、この析出物は、Cuマトリックスの結晶粒の粗大化を抑制し、最終製品の結晶粒を微細にする効果がある。その結果、最終製品の機械的性質、とりわけ延性を向上できる。固溶Ti低減することにより導電性を向上する効果は、Cr含有量が0.01%未満では不十分である。しかし、Crを0.7%を超えて含有させても、導電性の改善効果は飽和し、延性を低下させ、曲げ加工性を劣化させる場合がある。従って、Cr含有量は0.01〜0.7%とした。Cr含有量の好ましい下限は0.02%である。Cr含有量の好ましい上限は0.5%、より好ましくは0.3%である。
本発明で用いられる銅合金の一つは、上記各元素を含有するものである。その残部は、例えば、Cuおよび不純物からなるものとすることができる。不純物とは、鉱石、スクラップ等の原料、製造工程の種々の要因によって混入する成分であって、本発明に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。但し、本発明の効果が発揮される範囲において他の元素を含有させても良い。
具体的には、Cuの一部に代えて、Ag:0.001〜1%、Fe:0.01〜1%、P:0.001〜0.05%、B:0.001〜0.05%、Sn:0.005〜1%、Zn:0.005〜1%、Zr:0.005〜1%、Mn:0.005〜1%、Ni:0.005〜1%、Co:0.005〜1%、Al:0.005〜1%、Si:0.005〜1%、Nb:0.005〜1%、Ta:0.005〜1%、Mo:0.005〜1%、V:0.005〜1%、W:0.005〜1%、Au:0.005〜1%、Te:0.005〜1%、Se:0.005〜1%、Ge:0.005〜1%、Mg:0.0005〜0.5%、Li:0.0005〜0.5%、Ca:0.0005〜0.5%および希土類元素:0.0005〜0.5%の中から選ばれた1種以上の元素を含有させることができる。なお、以下の説明では、PおよびBを第1群元素、Sn、Zn、Zr、Mn、Ni、Co、Al、Si、Nb、Ta、Mo、V、W、AuおよびGeを第2群元素と呼ぶこととする。
Ag:0.001〜1%
Agは、Cuマトリックスに固溶しても、導電性を劣化させにくい元素である。金属Agは、微細析出によって強度を上昇させることができるので、必要に応じて含有させることができる。このような効果を特に発現させたい場合には、Agを0.001%以上含有させるのが好ましい。しかし、1%を超えて含有させても、その効果は飽和し、合金のコスト上昇を招くだけである。従って、Agを含有させる場合には、その含有量を0.001〜1%とするのが好ましい。Ag含有量の好ましい下限は0.005%である。Ag含有量の好ましい上限は0.1%である。
Fe:0.01%以上かつ1%未満
Feは、強度と導電性のバランスを殆ど損ねることなく、加工性を向上させることができるので、必要に応じて含有させることができる。Feは、上記のTiおよびCrと同時に添加しても、凝固中および冷却中に余分な金属間化合物等が生成されない元素である。このような効果を特に発現させたい場合には、Feを0.01%以上含有させるのが好ましい。しかし、1%以上含有させると、その効果が飽和するばかりか、導電性を劣化させる。従って、Feを含有させる場合には、その含有量を0.01%以上かつ1%未満とするのが好ましい。Fe含有量の好ましい下限は0.05%である。Fe含有量の好ましい上限は0.3%である。
第1群:PおよびB:それぞれ0.001〜0.05%、
第2群:Sn、Zn、Zr、Mn、Ni、Co、Al、Si、Nb、Ta、Mo、V、W、AuおよびGe:それぞれ0.005〜1%、
これらの元素は、いずれも強度と導電率のバランスを維持しつつ、耐食性および耐熱性を向上させる効果を有するので、必要に応じて含有させることができる。これらの効果は、PおよびBでは、それぞれの含有量が0.001%以上の場合に顕著となり、Sn、Zn、Zr、Mn、Ni、Co、Al、Si、Nb、Ta、Mo、V、W、AuおよびGeでは、それぞれの含有量が0.005%以上の場合に顕著となる。しかしながら、これらの含有量が過剰な場合には、導電率が低下するおそれがある。従って、Pおよび/またはBを含有させる場合には、それぞれの含有量の上限を0.05%とするのが好ましい。また、Sn、Zn、Zr、Mn、Ni、Co、Al、Si、Nb、Ta、Mo、V、W、AuおよびGeの一種以上の元素を含有させる場合には、それぞれの含有量の上限を1%とするのが好ましい。
さらに、これらの元素の含有量が上記の範囲内であっても、総量が1%を超えると、導電性が劣化することがある。従って、これらの元素を含有させる場合には、その総量の上限を1%以下に制限することが好ましい。これらの元素の総量は、0.5%以下とするのが好ましい。また、これらの元素の総量は、0.05%以上とするのが好ましい。
Mg、Li、Caおよび希土類元素:合計で0.0005〜0.5%
Mg、Li、Caおよび希土類元素は、Cuマトリックス中の酸素原子と結びついて微細な酸化物を生成して高温強度を上げる元素であるので、必要に応じて含有させることができる。この効果は、これらの元素の含有量が合計で0.0005%以上のときに顕著となる。しかし、これらの元素の含有量が合計で0.5%を超えると、上記の効果が飽和するだけでなく、延性を劣化させる場合がある。従って、Mg、Li、Caおよび希土類元素の中から選ばれた1種以上を含有させる場合には、その合計含有量を0.0005〜0.5%とすることが望ましい。好ましい下限は、0.001%である。なお、REMは、Sc、Yおよびランタノイドの合計17元素の総称であり、それぞれの元素の単体を添加してもよく、また、希土類元素の混合物であるミッシュメタルを添加してもよい。また、REMの含有量は、上記元素の合計量を意味する。
(B)本発明の製造方法について
溶解は、真空溶解が好ましいが、フラックス等を用いることによって非酸化性または還元性の雰囲気であれば大気溶解でも構わない。これは、溶銅中の固溶元素と酸素あるいは窒素が結びついて酸化物や窒化物を生成しやすくなり、歩留まりが低下して生産性を損なう他、最終製品にまで混入して表面疵や機械的性質等の特性劣化につながるからである。真空溶解であっても、既述のように工業用溶解炉の真空度は高いとは言えず、酸化物の生成をさらに抑制するには、炭粒で溶湯部を覆って還元性雰囲気を作ってやる等の対策がより効果的である。合金元素の添加方法については特に限定しないが、CrやTiといった融点の高い元素を比較的多量に添加する場合には、Cu溶湯中により溶け込みやすくするために、例えばCu−20%TiまたはCu−5%Crなどの銅合金の形であらかじめ準備した母合金を使用するのが好ましい。
加熱方法は特に問わないが、溶湯の攪拌効果が優れている高周波加熱が望ましい。
前述のように、TiおよびCrは、溶湯中で結合し、時にはβ(Ti,Cr)が生成し、一方、酸化物または窒化物を生成して、溶湯の粘度を上昇させる。特に、溶解の初期には、溶解原料であるTiおよびCr、またはこれらの元素を含む合金銅塊が溶け込む過程で、局所的にTiまたはCrの濃度の高い部分が生じることがある。これによって、溶湯の粘度が上昇して、攪拌が困難になり、ひいては成分の均一化が大きく抑制される。このように粘度の高い溶湯を鋳込んだ場合には、鋳塊表面に湯皺等の表面欠陥が生じ易くなり、また上記酸化物、窒化物または金属間化合物を巻き込みやすく鋳型中や保持炉中でも浮上しにくい。このようにして鋳塊中に残存した介在物は、最終製品の品質や特性を著しく害するおそれがある。
したがって、本発明においては、下記(1)式から求められる温度TM(℃)以上の温度に保って溶湯を十分攪拌することとした。TMは、TiやCrの濃度が高くなるにつれて高くする必要がある。品質を確保するためである。
TM = TL + 20[Ti] + 150[Cr]+ 90・・・(1)
TL = 1084.87 − 4.242[Ti] − 6.475[Cr] − 4.242[Ag] + 3.700[Fe] − 11.236[Sn] − 6.342[Mn] + 5.894[Co] − 6.820[Al] − 28.02[Si] + 89.757[Nb] + 75.742[Ta] + 81.535[Mo] + 392.7[V] + 386.6[W] − 2.278[Au] − 2.395[Zn] + 6.846[Ni] − 13.01[Ge] − 9.459[Zr] − 24.25[P] − 28.14[B] − 38.75[Mg] − 31.82[Li] − 25.59[Ca] − 11.0[RE]・・・(2)
但し、上記式中、TLは(2)式から求められる液相線温度(℃)、各元素記号は、それぞれの元素の含有量(質量%)を意味する。
溶解温度は、下記(3)式から求められる温度TM(℃)以上とすることが好ましく、さらに、下記(4)式から求め求められる温度TM(℃)以上とすることが好ましい。
TM = TL+ 20[Ti]+ 150[Cr]+ 140 ・・・・ (3)
TM = TL+ 20[Ti]+ 150[Cr]+ 180 ・・・・ (4)
鋳片を得る方法については特に限定はない。生産性の点では連続鋳造が好ましいが、他の方法、例えばインゴット法でも構わない。大気中鋳込によってインゴットを製造する場合、酸化物等の巻き込みによって、鋳片の品質上の問題が発生するのであれば、ダービル鋳造を採用するのが好ましい。インゴット鋳造の場合の鋳込み温度や連続鋳造の場合の保持炉中の温度については、特に限定はないが、好ましくは1150℃以上、さらに好ましくは1200℃以上、なお一層好ましくは1250℃以上とするのがよい。
ここで、最終製品の機械的性質確保のためには、途中工程での再結晶処理などを通じて結晶粒の微細化を図っておく必要がある。しかし、鋳片の断面積が小さすぎると、加工工程において十分な加工度を確保できないため、結晶粒の微細化が不十分となり、強度およびIACSを確保することはできても、十分な延性(成形性)を得ることができない。従って、鋳片は、最終製品の長手方向に対応する方向に垂直な断面における面積(以下、単に「鋳片の断面積」という。)が最終製品の長手方向に垂直な断面(以下、単に「最終製品の断面積」という。)における面積の100倍以上であることが必要である。鋳片の断面積は、最終製品の断面積の200倍以上とするのが好ましく、最終製品の断面積の350倍以上とするのがより好ましい。更に好ましい鋳片の断面積は、最終製品の断面積の500倍以上である。本発明の銅合金は、特に、十分な曲げ加工性B90が要求される携帯機器の部品に多用される薄帯に最適である。
得られた鋳片は、必要に応じて表面手入れや押し湯部の除去が行われる。そして、その鋳片形状が最終製品形状に近いために粗加工が必要でないときは、そのまま冷間加工又は200〜300℃の温度域での温間加工に進んでもよいが、上記結晶粒微細化の観点から、熱間鍛造や熱間圧延を組み合わせるのが好ましい。熱間加工時の加熱温度や加工温度も特に規定しないが、700〜950℃が好ましい。必要に応じて、700〜950℃の温度域で溶体化処理を施した後、好ましくは20%以上の加工度で冷間もしくは温間加工を行い、時効工程に移る。時効条件も特に限定しないが、350〜450℃で2〜24時間の熱処理を、好ましくは非酸化性もしくは還元性雰囲気中で行うのがよい。冷間加工又は温間加工、溶体化処理と時効処理の組み合わせは複数回行ってもよい。
加工方法は特に限定するものではない。例えば、最終製品形状が薄帯等の板状の場合は圧延を、そして、板状でない場合は、線材であれば線引きや押出を、また、バルク形状であれば鍛造やプレスを採用することができる。
表1および2に示す化学組成を有する銅合金を20kg高周波真空溶解炉にて種々の溶解温度にて溶製し、鋼製の鋳型に鋳込み、底部が90mm×90mm、トップ部が110mm×110mm、高さが約180mmの形状の重さ約約18kgの鋳塊を得た。これらの鋳塊から押し湯部を除去し、930℃に加熱した後、熱間鍛造および熱間圧延を経て、厚さ10mmの銅合金板を得た。表面研削後、冷間圧延と900℃での溶体化処理を経て厚さ1mmとし、厚さ0.05mmまでの強冷間圧延を実施した。
20%硫酸溶液に1%過酸化水素を添加した酸洗液を用いて10min間の強酸洗を行った後、表面を目視によって検査した。この際、何らの表面欠陥が認められないものを○、表面に介在物起因の凹凸が認められるものを×、0.05mmまでの圧延に耐えられず途中破断したものを××で評価した。評価が○であったものについては、さらに倍率5倍の拡大鏡にて無作為に5か所を観察し、何らの表面欠陥が認められなかったものを◎で評価した。その結果を表3に示す。
一部の試験においては、上記の厚さ10mmの銅合金板を圧延素材として、冷間圧延と900℃で10minの溶体化処理を繰り返して行い、最終の冷間圧延を40%となるように調整した後、400℃で8hrの時効処理を施して、厚さ0.15mmの供試材を得た。これらの供試材から、下記の方法に従って、曲げ加工性およびIACSを測定した。その結果を表3および4に示す。
<曲げ加工性>
上記の供試材から、圧延方向と平行方向及び直角方向から試験片を採取し、種々曲率半径を変えた90°曲げ試験を行い、50倍の顕微鏡観察によって限界曲率半径Rを求め、曲げ加工性B(=R/t、ただし、tは板厚。)を求めた。ただし、B90は試験片の長手方向が圧延方向と直角になるように試験片を採取した場合の結果を、Bは試験片の長手方向が圧延方法と平行になるように試験片を採取した場合の結果である。
<IACS>
上記の供試材から、圧延方向と平行に試験片を切り出し、4端子法によって電気抵抗測定を行い、純銅の電気抵抗値を基準に、電気抵抗の逆数である導電率を求め、IACSを算出した。
Figure 0005880670
Figure 0005880670
Figure 0005880670
表3に示すように、溶解温度が十分高い本発明例1〜25では、いずれも表面性状が良好であったが、溶解温度が不十分な比較例1〜4では多くの表面欠陥が認められた。特に溶解温度が1120℃と低かった比較例2では所定板厚まで圧延できずに途中で破断してしまった。本発明例1〜25では、優れた曲げ加工性を有すると共に、十分な導電性を有していた。また、本発明例の中でも、類似の化学組成の合金で溶解温度の影響を比較すると、溶解温度TMが(1)式よりも(3)式さらには(4)式を満たすもの方が表面性状はより良好であり、曲げ加工性も優れていた。
表4に示す化学成分の合金を高周波溶解炉にて溶製し、所定の温度になるよう調整して鋼製鋳型に鋳込み、底部が100mm径、トップ部が130mm径、高さが約180mmの形状の重さ約18kgインゴットを得た。押し湯部を除去し、930℃に加熱した後、熱間鍛造によって直径20mmの棒とした。皮むき後に冷間圧延と900℃での溶体化処理を繰り返し行い、溶体化後に、最終の加工度が50%になるように調整して、直径が5mmの棒材とし、400℃で7hrの時効処理を施して、供試材を得た。
これらの供試材から、平行部の直径が3mm、平行部長さが15mmの引張試験片を採取し室温にて引張試験を行った。また、直径3mm、長さが70mmの試験片を切り出して4端子法によって電気抵抗を測定し、同じ形状に切り出した純銅試験材の標準電気抵抗を用いてIACSを算出した。これらの結果を表5に示す。
Figure 0005880670
Figure 0005880670
表5に示すように、本発明例26〜35では、いずれも(6)式を十分満たす優れた機械的性質を有するとともに、高強度でありながら極めて高い導電性を示すことが確認された。これに対し、比較例5〜7では、IACSは発明法とほぼ同じであるが、伸びが大きく劣り、(6)式を満たさなかった。また、強度も微細析出物の密度が低いためやや低い値となっていた。また、本発明例の中でも、類似の化学組成の合金で延性に及ぼす溶解温度の影響を比較すると、溶解温度TMが(1)式よりも(3)式さらには(4)式を満たすもの方が延性が高い傾向が認められる。
本発明によれば、環境に問題のあるBeなどの元素を全く用いず、優れた強度および導電性を有し、しかも、加工性に優れたTi、Cr複合添加銅合金を安定的かつ高効率に製造することができる。

Claims (4)

  1. 質量%で、Ti:0.05〜4%、Cr:0.01〜0.7%を含有する銅合金から、長手方向に垂直な断面における面積が最終製品の長手方向に垂直な断面における面積の100倍以上である鋳片を得るに際し、溶解温度を下記(1)式から求められる温度TM(℃)以上とする、銅合金鋳片の溶解温度の決定方法。
    TM = TL + 20[Ti] + 150[Cr]+ 90・・・(1)
    TL = 1084.87 − 4.242[Ti] − 6.475[Cr] − 4.242[Ag] + 3.700[Fe] − 11.236[Sn] − 6.342[Mn] + 5.894[Co] − 6.820[Al] − 28.02[Si] + 89.757[Nb] + 75.742[Ta] + 81.535[Mo] + 392.7[V] + 386.6[W] − 2.278[Au] − 2.395[Zn] + 6.846[Ni] − 13.01[Ge] − 9.459[Zr] − 24.25[P] − 28.14[B] − 38.75[Mg] − 31.82[Li] − 25.59[Ca] − 11.0[RE]・・・(2)
    但し、上記式中、TLは(2)式から求められる液相線温度(℃)、各元素記号は、それぞれの元素の含有量(質量%)を意味する。
  2. さらに、質量%で、Ag:0.001〜1%および/またはFe:0.01〜1%を含有する銅合金を用いる、請求項1に記載の銅合金鋳片の溶解温度の決定方法
  3. さらに、質量%で、下記の第1群および第2群に記載の元素から選ばれた1種以上の元素を合計で1.0%以下含有する銅合金を用いる、請求項1または2に記載の銅合金鋳片の溶解温度の決定方法
    第1群:PおよびB:それぞれ、0.001〜0.05%、
    第2群:Sn、Zn、Zr、Mn、Ni、Co、Al、Si、Nb、Ta、Mo、V、W、Au、Te、SeおよびGe:それぞれ0.005〜1%、
  4. さらに、質量%で、Mg、Li、Caおよび希土類元素の中から選ばれた1種以上の元素を合計で0.0005〜0.5%含有する銅合金を用いる、請求項1から3までのいずれかに記載の銅合金鋳片の溶解温度の決定方法
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