JP5878464B2 - 中等度好熱性Bacilliのスクロースでの発酵 - Google Patents

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Description

本発明は、スクロースを利用する能力を、この能力を元は有さないBacillus株に与える為の中等度好熱性Bacillus株の遺伝子改変に関する。
中等度好熱性Bacillus種、好ましくは通性嫌気性且つホモ乳酸的であるそれらの種が、乳酸の産業的製造にとって理想的な有機体である。
本発明の文脈において、中等度好熱性Bacillus種は、37〜65℃で増殖することができ、且つ、50℃超の温度での産業的発酵を許す。この高い発酵温度は、産業的規模での発酵の場合に、いくつかの利点を有する:感染のより低いリスク、そしてすなわちより高い産物純度、より速い反応など。さらに、これらのバクテリアの栄養要求は、Lactobacillus種(これも比較的高価でない産業的プロセスを許す)などの乳酸バクテリアのものと比べて、より少なく要求するものである。
中等度好熱性Bacillus種は、好気性種及び通性嫌気性種を含む。通性嫌気性種のの使用が好ましく、というのも、これらの種は、嫌気性条件下、又は、少なくとも酸素の低分圧下での発酵を許し、これは産業的規模にとって望ましいからである。そのような条件は、費用のかかるエアレーションの要求を防ぎ、そして、低コスト媒体の使用を可能とし、一方でコンタミネーションリスクを最小化し又は非滅菌的製造手順を許しさえする。
ホモ乳酸的である中等度好熱性Bacillus種を使用することもまた好ましい。ホモ乳酸的性質は、炭水化物源(ヘキソース及びペントース糖を含む;国際公開第04/063382号パンフレットを参照)からの、15wt%超の副産物、例えばギ酸及び酢酸など、の形成の無い、乳酸の製造を許す。ホモ乳酸的表現型の遺伝子改変は、ホモ乳酸的株を、解糖から、例えばホスホエノールピルベート及び/又はピルベートから誘導可能な他の産業的産物の為のホモ発酵的生産株へと転化する為に適用されうる。これらの化合物の例は、ピルベート、アセトラクテート、ジアセチル、アセトイン、2,3−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、アセテート、ホルメート、アセトアルデヒド、エタノール、L−アラニン、オキサロアセテート、S−マレート、サクシネート、フマレート、2−オキソグルタレート、オキサロサクシネート、イソシトレート、シトレート、グリオキシレートである。
好ましくは、これらの生産株は胞子形成欠損である。
中等度好熱的且つ通性嫌気性のBacillus種の例は、Bacillus coagulans、Bacillus smithii、Bacillus thermoamylovorans、及びBacillus thermocloacaeであり、少なくとも最初の2つの種は、ホモ乳酸的でもある。好ましい種は、Bacillus coagulansである。
発酵媒体において安い未加工の原料を用いることが産業的発酵において望ましい。例えば、スクロース又はスクロース含有基質がしばしば、低コスト炭素源として産業的発酵の為に用いられる。しかしながら、産業的発酵の為に用いられる中等度好熱的Bacillus株の全てが、炭素源としてスクロースを利用する能力を有するわけではないことが発見された。これは、特にはもしそのような株が、産業的スケールでのそれらの発酵能力又は生産能力を改善する為の適応を受けたならば、不利である。例えば、Bacillus coagulans株DSM 1は、スクロースの非常に乏しい発酵体であるとみえた。乏しい増殖及び酸形成だけが、唯一の炭素源としてスクロースを用いて観察され、これはおそらく他の糖の利用の為の系の非特異的活性に起因する。
文献において、B. coagulansは、スクロース利用能力において可変であると言及されている(De Clerck, E., M. Rodriguez- Diaz, G. Forsyth, L. Lebbe, N. Logan, 2004: Polyphasic characterization of Bacillus coagulans strains. Syst. Appl. Microbiol. 27:50-60)。しかしながら、スクロース異化に関与する遺伝子について利用可能な情報は無く、且つ、B. coagulans 36D1ゲノム配列におけるスクロース異化についてアノテートされた遺伝子は無い(http: //genome.jgi- psf.org/draft microbes/bacco/bacco.home.html)。
すなわち、本発明の一つの目的は、元はスクロースを炭素源として利用できない中等度好熱的Bacillus株を遺伝子的に改変して、該株にスクロースを炭素源として利用する能力を備えることである。本発明の他の目的は、中等度好熱性Bacillus株のスクロース含有炭素源での培養を含む、関心のある化合物を生産する為の方法を利用することである。
スクロースを炭素源として利用することができない中等度好熱性Bacillus株は、スクロース利用に関与する1又はそれより多くの遺伝子を欠くものでありうる。
本発明は今、スクロース異化に関与し、且つ、中等度好熱性Bacillus種から、好ましくは中等度好熱性且つ通性嫌気性Bacillus種から、最も好ましくはホモ乳酸的である中等度好熱性且つ通性嫌気性Bacillus種から得られる新規遺伝子及びポリペプチドを開示する。
該新規ポリペプチドは、驚くべきことに、他のBacillus種からの対応するポリペプチドとかなり低いホモロジーを示すが、Lactobacillus種からの対応するポリペプチドとのより高いホモロジーが観察される。該新規遺伝子及びポリペプチドは、該新規遺伝子及びポリペプチドが入手可能である種と同じ(又は近縁の)種の非スクロース利用性の中等度好熱性Bacillus株へのスクロース利用能力の導入を許す。特に、該新規遺伝子は、セルフクローニングによる、すなわち種特異的遺伝子材料を用いる、遺伝子材料の導入を許す。
スクロースPTS酵素II遺伝子(scrA)及びスクロース−6−ホスフェートヒドロラーゼ遺伝子(scrB)を描く、Bacillus coagulansからのスクロースオペロンのゲノムマップを示す図である。 pMH84のプラスミドマップを示す図である。複製遺伝子(repA及びrepB)、クロラムフェニコール耐性遺伝子(cat)、スクロースPTS酵素II遺伝子(scrA)及びスクロース-6-ホスフェートヒドロラーゼ遺伝子(scrB)が矢印により描かれている。二重交差組み換えの為の相同性の上流(us)領域及び下流(ds)領域(灰色)、Bacillus coagulansプロモーター領域(Bco; 白)、及びlox部位(lox71及びlox66; 黒)が、囲まれている。BgIII及びNco1、該構築の為に関連する部位だけ、が含まれる。
すなわち、この発明の一つの局面において、スクロースを炭素源として利用することができない中等度好熱性Bacillus親株からの、スクロースを炭素源として利用することができる中等度好熱性Bacillus株の構築の為の方法が提供される。
特に、スクロースを炭素源として利用することができる該中等度好熱性Bacillus株は、スクロースを炭素源として利用することができない中等度好熱性Bacillus親株、スクロースの利用を得る為に必要なポリヌクレオチド(遺伝子)により形質転換することにより得られる。本明細書内に開示されるとおり、この必要なポリヌクレオチドは、a)スクロース特異的ホスホトランスフェラーゼ活性を有し且つ配列ID N0:1のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするDNA配列を含み、且つb)スクロース−6−ホスフェートヒドロラーゼ活性を有し且つ配列ID NO: 2のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするDNA配列を含む。
スクロースの利用を得る為の該ポリヌクレオチドの関心のある該中等度好熱性Bacillus株への導入は、当技術分野の当業者に知られている任意の適切な形質転換手順を用いて行われてよく、当該手順はプロトプラスト形質転換又はプロトプラスト融合、エレクトロポレーション、遺伝子銃(biolistic)形質転換、接合(conjugation)、又は天然のコンピテント細胞の形質転換を包含する。例えば、国際公開第2007/085443号パンフレット中に開示されたとおりの形質転換手順が用いられてよく、これは引用することにより本明細書に組み込まれる。
スクロースの利用を得る為の該ポリヌクレオチドは、自律的に複製するプラスミドを用いて又は染色体組み込みにより導入されうる。後者は、産業的適用にとって好ましく、というのも染色体組み込みは、一般に、より安定であるとみなされており、そして、子孫細胞にわたる該ポリヌクレオチドの安定な分配を確保するであろうからである。スクロース発酵それ自体が、スクロースの利用を得る為の該ポリヌクレオチドの維持のための選択圧でありうる。該ポリヌクレオチドの該染色体への導入は、非相同的組み換え並びに相同組み換えにより行われうる。
相同組み換えが好ましく、というのも、それは、該バクテリア染色体から/該バクテリア染色体へ、機能を導入すること、除去すること、又は同時に導入及び除去することの機会を開くからである。相同組み換えが意図される場合、該形質転換するポリヌクレオチドはさらに、改変される該特定のBacillusのゲノム標的配列と相同であるDNA配列を含む。任意の適切なゲノム標的配列が、この目的の為に選択されうる。適切なゲノム標的配列は、例えば、該ゲノムの非コード領域に位置している。当業者は、100%の同一性は相同組み換えを得る為に要求されないことを理解するであろう。また、約90%の同一性パーセンテージが十分であろう。一般に、相同組み換えにより該染色体中に挿入されるべき関心のある該DNA配列は、相同組み換えを可能とするのに十分な長さを有する相同配列に隣接される。そのような長さは、少なくとも約100 bp、例えば約200〜約1500bp、好ましくは約200〜約1000 bpでありうる。
スクロースの利用を得る為の該ポリヌクレオチドの発現を達成する為に、該ポリヌクレオチドの該コーディング配列は、必要な制御配列を備えられる。これらの制御配列は、生来の制御配列であってよく、又は、問題の該コーディング配列と異種のものであってもよい。
さらなる局面において、新規ポリペプチド、すなわちスクロース特異的ホスホトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチド及びスクロース−6−ホスフェートヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドが提供される。スクロース特異的ホスホトランスフェラーゼ活性を有する該ポリペプチドは、配列ID NO:1のアミノ酸配列を有する。該スクロース−6−ホスフェートヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列ID NO: 2のアミノ酸配列を有する。
配列ID NO:1のアミノ酸配列を有する該スクロース特異的ホスホトランスフェラーゼポリペプチドは、Pediococcus pentosaceus及びLactobacillus plantarum (タンパク質レベルで両方とも62%の同一性)並びに他の乳酸バクテリアからのスクロース特異的PTS系EIIBCA成分との有意な相同性を共有する。驚くべきことに、他のBacillus種との相同性ははるかにより低く、Bacillus clausiiホモログとの最も高い同一性を有する(タンパク質レベルでの44%同一性)。
配列ID NO: 2のアミノ酸配列を有するスクロース−6−ホスフェートヒドロラーゼポリペプチドは、Lactobacillus sakei (タンパク質レベルで50%同一性)及び他の乳酸バクテリアからのスクロース−6−ホスフェートヒドロラーゼとの有意な相同性を共有する。また、このポリペプチドについて、他のBacillusホモログとの相同性が、該乳酸バクテリアとの相同性よりも低いことが分かることは驚くべきことであった。最も近いBacillusホモログは、Bacillus clausii (タンパク質レベルで41%同一性)からのものであった。
本発明の目的の為に、2つのアミノ酸配列の間の同一性の程度は、該2つの配列の間で同一であるアミノ酸のパーセンテージをいう。該同一性の程度は、BLASTアルゴリズムを用いて決定され、これは、Altschul, et al., J. MoI. Biol. 215: 403- 410 (1990)、において記載されている。BLAST分析を実施する為のソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を通じて、公に利用可能である。BLASTアルゴリズムパラメータW、T、及びXは、アラインメントの感度(sensitivity)及び速さを決定する。BLASTPプログラムは、デフォルトとして、Word size: 3; Expect value: 10; Hitlist size 100; Gapcosts: 11,1; Matrix: BLOSUM62、を用いる。
さらなる局面においてさらに、前の局面の該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、例えば、配列ID N0:3又は配列ID N0:4に従う配列を有するポリヌクレオチドが提供される。
上記局面の該ポリペプチド及びポリヌクレオチドは、本明細書内に記載されたとおりの、炭素源としてスクロースを利用できる中等度好熱性Bacillus株を構築する為に使用可能である。
さらなる局面においてさらに、関心のある化合物の製造方法であって、スクロース含有炭素源での中等度好熱性Bacillus株の培養を含む前記方法が提供される。該方法は、培養される該中等度好熱性Bacillus株が、炭素源としてスクロースを利用することができない中等度好熱性Bacillus親株から、スクロースを炭素源として利用する為の能力を該親株に備えることにより得られることを特徴とする。
スクロースを炭素源として利用することができない該中等度好熱性Bacillus親株は、前の局面において記載されたとおりの方法及びポリヌクレオチドを用いて、炭素源としてスクロースを利用する能力を備えられる。この方法及びポリヌクレオチドを用いることにより、本発明は有利には、産業的培養条件に適応されており及び/又は高い生産能力を有する為に選択されており、且つ、元はスクロースを利用する能力を有さない中等度好熱性Bacillus株の、スクロース含有炭素源での培養を許す。
該中等度好熱性Bacillus株の培養の為に用いられる炭素源は、該炭素源の全重量に基づき、少なくとも0.5% (w/w)のレベルで、スクロースを含みうる。スクロースを唯一の炭素源として用いることも可能である。
該培養はさらに、当技術分野の当業者に一般に知られている慣用の条件下で実施されうる。
培養後、関心のある形成された化合物は、任意的に、発酵培地から分離され、そして、必要な場合には、精製されうる。例えば乳酸の為の、慣用の精製/分離方法は、蒸留、抽出、電気透析、吸着、イオン交換、結晶化、及び同様のもの、並びに、上記言及された精製/分離方法の組み合わせである。
該関心のある化合物は乳酸でありうる。語「乳酸」は、遊離酸又は塩のいずれかの形にある2-ヒドロキシ-プロピオン酸を意味する。乳酸は、不斉炭素原子を有し、そして、その故に、(R)及び(S)エナンチオマーとして存在しうる。この出願で用いられるときに、語「乳酸」は、純粋な(R)及び(S)異性体、及び、ラセミ混合物を包含するそれらの混合物を包含する。R-ラクテートの製造の為に、国際公開第2007/085443号パンフレット(これは引用することにより本明細書に組み込まれる)に記載されたとおりの遺伝子改変された生産株が用いられうる。
該関心のある化合物はさらに、ピルベートのラクテートへの転化がブロックされる株を用いて、ピルベートであってよい。該関心のある化合物はさらに、ピルベートから誘導可能な化合物であってよく、そのような化合物の生産にピルベートが向けなおされるところの株を用い、該化合物はアセトラクテート、ジアセチル、アセトイン、2, 3-ブタンジオール、1, 2-プロパンジオール、アセテート、ホルメート、アセトアルデヒド、エタノール、L-アラニン、オキサロアセテート、S-マレート、サクシネート、フマレート、2-オキソグルタレート、オキサロサクシネート、イソシトレート、シトレート、グリオキシレートを含む。
実施例
株及び培養条件
B. coagulans DSM 1が、DSMZ、Braunschweig、ドイツ、から得られた。B. coagulansは、50 g/lグルコースを含むBC培地(国際公開第2007/085443号パンフレット)中で、好気的条件下で(120 rpm)、50℃で、普通に増殖させられた。適切な場合には、該培地は、クロラムフェニコールを7 mg/lで補われた。Gelriteを有するBCプレートが、前に記載されたとおりに(国際公開第2007/085443号パンフレット)用意された。炭素使用の評価の為に、B. coagulansは、1リットル当たり2.O g (NH4) 2HPO4、3.5 g (NH4)2SO4、10 g Bis-Trisバッファー(ビス[2-ヒドロキシメチル] イミノトリス[ヒドロキシメチル]-メタン)、0.5 g KCl、0.234 g L-アルギニン、0.304 g L-アスパラギン酸、0.026 g L-シスチン、0.470 g グルタミン酸、0.093 g L- ヒスチジン、0.360 g L-イソロイシン、0.581 g L-ロイシン、0.111 g L- メチオニン、0.197 g L-プロリン、0.308 g L-セリン、0.350 g L-スレオニン、0.345 g L-バリン、0.2 g MgCl2・ 6 H2O、50 mg CaCl2・2 H2O、16 mg MnCl2、7 mg FeSO4・ 7 H2O、0.1 mg チアミン、0.5 mg ニコチン酸、0.1 mg パントテン酸、0.5 mg ピリドキサミン、0.5 mg ピリドキサール、 0.1 mg D-ビオチン、0.1 mg 葉酸、0.1 mg p- アミノ安息香酸、0.1 mg コバラミンを含む、化学的に規定された培地(CDM)で増殖させられた。適切な場合には、該CDMは、1リットル当たり5gのグルコース又は5gのスクロースを補われた。
Lactococcus lactis MG1363が、Gasson(Gasson, M. J., 1983: Plasmid complements of Streptococcus lactis NCDO 712 and other lactic streptococci after protoplast-induced curing, J. Bacteriol. 154:1-9)により記載された。L.lactisは、5 g/lグルコースを含むM17培地(Difco)中で、30℃で普通に培養された。
バクテリアは、15%(v/v)グリセロールを用いて、−80℃で、グリセロールストックで貯蔵された。
DNA操作技術
標準的なDNA操作技術が、Sambrook及びRussell (J. Sambrook and D. W. Russell. 2001: Molecular Cloning, a laboratory manual. 3 rd edition. Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York)により記載されたとおりに実施された。
100mL培養物からのラージスケールプラスミドDNA分離が、Jetstar 2.0 Plasmid Maxiprep Kit(商標)(Genomed)を用いて、製造者の指示に従い、実施された。1ml培養物からのスモールスケールプラスミドDNA分離が、Nucleospin Plasmid Quick Pure(商標)(Macherey-Nagel)キットを用いて、製造者の指示に従い、実施された。
L.lactisが、組み込みプラスミドpMH84の構築の間の中間宿主として働いた(図2)。L. lactisコンピテント細胞の調製及びエレクトロポレーションは、Holo及びNes(Holo, H. and I. F. Nes, 1989: High-frequency transformation, by electroporation, of Lactococcus lactis subsp. cremoris grown with glycine in osmotically stabilized media, Appl. Environ. Microbiol. 55:3119-3123)により記載されたとおりに実施された。
B. coagulansは、国際公開第2007/085443号パンフレットに記載されたとおりに、エレクトロポレーションにより形質転換された。
クローニング目的の為のPCR反応が、ハイフィデリティPwoポリメラーゼ(Roche)により、製造者の指示に従い、実施された。
コロニーPCR分析が、国際公開第2007/085443号パンフレットに記載されたとおりに、クロラムフェニコール耐性コロニー中でpNW33Nの存在を実証する為に用いられた。
発酵
B. coagulansバッチ発酵が、10mlのBC培地又はCDMを有するスクリューキャップチューブ(13 mL)中で、50℃で実施された。
試料が、発酵の終わりで、600nmでの濁度、pH、発酵培地中の有機酸含有量の測定のために引き取られた。後者のために、試料は、遠心され、そして、上清中の残存するデブリがMillex GP 0.22μmフィルター(商標)(Millipore)を用いたろ過により除去された。ろ液が、さらなる分析まで凍結された。
有機酸(ギ酸、酢酸、プロピオン酸、エタノール、酪酸、ピルビン酸、乳酸、2−ヒドロキシ酪酸、グリコール酸、シュウ酸、ソルビン酸、フマル酸、コハク酸、安息香酸、マレイン酸、リンゴ酸、クエン酸)が、誘導体化及びGLSを用いて測定された。R−ラクテート及びS−ラクテートが、メチル−ラクテートへとメチル化され、そして、キラルカラムでのヘッドスペース分析により測定された。
B. coagulansスクロース利用組み込みプラスミドの構築
選択されたスクロース発酵性B. coagulans株のランダム配列分析が、スクロースPTS酵素II遺伝子及びスクロース-6-ホスフェートヒドロラーゼ遺伝子(それぞれscrA及びscrB)との配列相同性を有する2つの遺伝子の領域を明らかにした。該領域の遺伝子マップが図1に示される。scrAB遺伝子クラスター及びそれらのプロモーターを含むDNA断片(配列ID NO: 5に示される)が、
鋳型DNAとしてのスクロース発酵性B. coagulans株からのゲノムDNAと一緒に、
プライマー
Figure 0005878464
(SphI部位を導入する、配列ID NO: 6)
及び
Figure 0005878464
(SacI部位を導入する、配列ID NO: 7)
を用いた高忠実度(ハイフィデリティ)PCRにより生成された。代わりに、scrAB遺伝子クラスターが、配列ID NO: 5に示される配列を有する合成DNAとして生成されうる。B. coagulans組み込みプラスミドが改変されて、該scrAB遺伝子クラスターの該B. coagulans DSM 1染色体における組み込みを許した。該染色体組み込み部位の1.0 kb上流断片及び下流断片が、組み換えの為に用いられた。組み込みベクターpMH84(図2)は、ラクトコッカスのクローニングベクターpMH3(国際公開第2007/085443号パンフレット)に基づき、且つ、B. coagulansにおける熱感受性レプリコンを有する。第一に、catプロモーターが、B. coagulansプロモーターにより置き換えられた。この目的の為に、該cat遺伝子を有する該pMH3 BglII-SalI断片が、該cat開始コドンとオーバーラップするNcoI部位を同時に導入する該cat遺伝子に翻訳的に連結された構成的B. coagulansプロモーターの融合PCR産物により置き換えられた(配列IDNO:18)。該プロモーター部分が、鋳型DNAとしてのスクロース発酵性B.coagulans株からのゲノムDNAと一緒に、
プライマーコンビネーション
(フォワード)
Figure 0005878464
(SalI部位を導入する、配列ID NO: 8)
及び
(リバース)
Figure 0005878464
(NcoI部位を導入する、配列ID NO: 9)
を用いて、生成された。該cat遺伝子が、鋳型としてのpMH3を用いて、プライマーコンビネーション
(フォワード)
Figure 0005878464
(NcoI部位を導入する、配列IDNO: 10)
及び
(リバース)
Figure 0005878464
(BglII部位を導入する、配列ID NO: 11)
を用いて生成された。両方の産物が、鋳型として、該プロモーターフォワードプライマー及びcatリバースプライマーを用いた新たなPCR反応において用いられた。この断片もまた、配列ID NO: 18において描かれる配列を有する合成DNAとして生成されうる。得られたプラスミドは、pMH71と呼ばれた。Cre-loxシステムの複数の使用を可能とする為に、プロモーター-cat領域に隣接するlox66部位及びlox71部位 (Langer, S. J., A. P. Ghafoori, M. Byrd, and L. Leinwand, 2002: A genetic screen identifies novel non-compatible loxP sites, Nucleic Acids Res. 30:3067-3077., Lambert, J. M., R. S. Bongers, and M. Kleere- bezem, 2007: Cre-lox-based system for multiple gene deletions and selectable-marker removal in Lactobacillus plantarum, Appl. Environ. Microbiol. 73:1126-1135.)が、
プライマー
Figure 0005878464
(lox66、Sal1、およびNheI部位を導入する、配列ID NO:12)
及び
プライマー
Figure 0005878464
(lox71及びBglII部位を導入する、配列ID NO: 13)
並びに鋳型としてpMH71を用いたPCRにより導入された。得られたPCR産物が、BglII-SalIにより消化され、そして、pMH71の該BglII-SalIプロモーター-cat領域と交換する為に用いられ、プラスミドpMH77を結果した。組み込み部位の上流断片が、
プライマー
Figure 0005878464
(XhoI及びBglII部位を導入する、配列ID NO: 14)
及び
プライマー
Figure 0005878464
(SacI及びSphI部位を導入する、配列ID NO: 15)
並びに、B. coagulans DSM1染色体DNAを鋳型として用いたPCRにより生成された。PCR産物が、SacI及びXhoIを用いてpMH77中にクローン化された。これが、pMH82を結果した。該組み込み部位の下流断片が、
プライマー
Figure 0005878464
(NheI部位を導入する、配列ID NO: 16)
及び
プライマー
Figure 0005878464
(SalI部位を導入する、配列ID NO: 17)
並びに鋳型としてB. coagulans DSM 1染色体DNAを用いたPCRにより生成された。PCR産物が、SalI-NheI断片としてpMH82中にクローン化され、pMH83を結果した。該scrAB遺伝子を含む該DNA断片が、SphI及びSacI断片として、同じ酵素により消化されたpMH83中にクローン化され、これが、組み込みベクターpMH84を結果した(図2)。プラスミドpMH84が分離され、そして、scrAB遺伝子クラスター、該上流領域及び下流領域、並びにlox部位の完全性が、DNA配列分析により確認された。
B. coagulans DSM 1におけるscrABのゲノム組み込み
scrAB遺伝子のB.coagulans DSM 1へのゲノム組み込みの為に、プラスミドpMH84が、この株へと、エレクトロポレーションにより形質転換され、そして、クロラムフェニコールを補われたBCプレートにプレートされた。形質転換体が、コロニーPCRにより、該プラスミドの存在についてスクリーニングされた。陽性コロニーが、プラスミド分離の為に培養され、そして、該プラスミドの完全性が、制限分析により確認された。一つの形質転換体が、さらなる実験の為に選択された。二重クロスオーバー交換(double crossover exchange)による該スクロース遺伝子の組み込みが、60℃での培養及びクロラムフェニコール耐性コロニーについての選択の後に確立された。一つの組み込み体が、さらなる研究の為に選択され、そして、グリセロールストックとして保存された。正確な組み込みが、該融合部位のPCR分析及び配列分析により確認された。この株は、B. coagulans DSM 1:: scrABと称された。
Figure 0005878464
データは、3つの発酵からの平均である。有機酸濃度は、%(w/w)で与えられる。N.D.、決定されていない。ギ酸(<0.02%)、酢酸(<0.02%)、プロピオン酸(<0.02%)、酪酸(<0.01%)、ピルビン酸(<0.02%)、2−ヒドロキシ酪酸(<0.01%)、グリコール酸(<0.20%)、シュウ酸(<0.02%)、ソルビン酸(<0.01%)、フマル酸(<0.02%)、コハク酸(<0.02%)、安息香酸(<0.03%)、及びマレイン酸(<0.02%)が、検出限界より下であった。
B. coagulansによるスクロース発酵
この実験において、本発明者らは、効率的なスクロース発酵ができないB.coagulans株が、どのように改変されることができて、スクロース発酵性となりうるかを示す。B.coagulans株DSM 1及びDSM 1: : scrABが、グリセロールストックから、糖を有さない10mlBC培地に植菌され、そして、50℃で120rpmでインキュベートされた。一晩培養物が、グルコースを補われた10mlCDMに移された(2% v/v)。一晩のインキュベーション後、培養物がペレット化され、そして、該ペレットが、糖を有さない10mlCDMに再懸濁された。それぞれの株について、1リットル当たり5gのグルコースを補われた、1リットル当たり5gのスクロースを補われた、又は糖を補われていない10mlCDMの3つの三通りの部分が、該再懸濁された培養物から植菌された(2% v/v)。スクリューキャップチューブ中での50時間の静的インキュベーション後、600nmでの濁度、pH、及び培養上清の有機酸含有量が、決定された(表1)。その結果は、糖が、適切な嫌気的増殖にとって要求されること、及び、B. coagulans DSM 1:: scrABが、スクロースを乳酸へと発酵することができる一方でB. coagulans DSM 1が当該発酵をすることができないことを示す。糖の不在は、両方のB. coagulans株についての増殖無し及び酸性化無しを結果した。スクロースの存在下において、DSM 1は、増殖及び酸性化のいずれも示さなかった一方で、B. coagulans DSM 1:: scrABは、良好な増殖及び酸性化を有した。乳酸は、該培養物上清において検出された唯一の有機酸であった。これは、B. coagulansのscrAB遺伝子カセットを導入することが、B. coagulansによる効率的なスクロース発酵にとって十分であることを示す。

Claims (10)

  1. スクロース含有炭素源での中等度好熱性Bacillus株の培養を含む、乳酸、ピルベート、サクシネート、ホルメート、アセテート、エタノール、アセトイン、及び2, 3-ブタンジオールからなる群から選ばれる関心のある化合物の製造方法であって、
    該中等度好熱性Bacillus株が、スクロースを炭素源として利用できない中等度好熱性Bacillus親株a)スクロース特異的ホスホトランスフェラーゼ活性を有し且つ配列ID N0:1のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするDNA配列を含み、且つb)スクロース−6−ホスフェートヒドロラーゼ活性を有し且つ配列ID NO: 2のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするDNA配列を含むポリヌクレオチドによ形質転換することによって得られたものであることを特徴とする、前記方法。
  2. 該関心のある化合物が乳酸である、請求項1に記載の方法。
  3. スクロースを炭素源として利用することができる中等度好熱性Bacillus株を構築する方法であって、スクロースを炭素源として利用できない中等度好熱性Bacillus親株を、a)スクロース特異的ホスホトランスフェラーゼ活性を有し且つ配列ID N0:1のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするDNA配列を含み、且つb)スクロース−6−ホスフェートヒドロラーゼ活性を有し且つ配列ID NO: 2のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするDNA配列を含むポリヌクレオチドにより形質転換することを含む、前記方法。
  4. 該中等度好熱性Bacillus株が通性嫌気性である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 該中等度好熱性Bacillus株がホモ乳酸的である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 該中等度好熱性Bacillus株がBacillus coagulansである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. スクロース特異的ホスホトランスフェラーゼ活性を有し且つ配列ID N0:1のアミノ酸配列を有するポリペプチド。
  8. スクロース−6−ホスフェートヒドロラーゼ活性を有し且つ配列ID NO: 2のアミノ酸配列を有するポリペプチド。
  9. 請求項7又は8のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
  10. 配列ID NO:3又は配列ID NO:4の配列を有する、請求項9のポリヌクレオチド。
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