[測定システムの構成例]
図1は、本発明を適用した測定システムの一実施の形態の構成例を示している。
図1の測定システムは、ヘッド計測装置1、ストロボカメラ2、データ処理装置3、動画像カメラ4、センサユニット5、及び高速ステレオカメラ6を有し、プレーヤ(被験者)がゴルフクラブをスイングして、所定の位置に置かれたゴルフボールを打撃したときの、打撃物であるゴルフクラブの速度と、被打撃物であるゴルフボールの速度を同時に測定するシステムである。以下において、ゴルフクラブの速度はヘッドスピード、ゴルフボールの速度はボールスピードともいう。
図1の測定システムは、ヘッド計測装置1内のドップラセンサ11を用いてヘッドスピードを計測するドップラ測定システムと、センサユニット5内のレーザセンサを用いてヘッドスピードを計測するレーザ測定システムとを備える。
ドップラ測定システムは、ヘッドスピードを計測するとともに、計測されたヘッドスピードを基に、インパクト直後のゴルフボールを撮像し、その結果得られる撮像画像を用いて、ゴルフボールの運動状態を解析する。
このドップラ測定システムは、ゴルフボールがゴルフクラブに打撃された瞬間のゴルフクラブとゴルフボールの速度を測定して表示するインパクト測定モード(第1のドップラ測定モード)と、ゴルフクラブとゴルフボールの速度の測定の他に、プレーヤのスイング動作全体の画像も撮影して表示する画像付き測定モード(第2のドップラ測定モード)とを有している。
一方、レーザ測定システムは、ヘッドスピードを計測するとともに、計測されたヘッドスピードを基にインパクト付近のクラブヘッドを撮像し、撮像された画像を用いて、クラブヘッド(ゴルフクラブのヘッド)の挙動を解析する。
従って、図1の測定システムでは、ヘッドスピードを、ドップラ測定システムとレーザ測定システムの両方で計測することができる。図1の測定システムは、ドップラ測定システム及びレーザ測定システムの一方または両方の計測結果を最終的な計測値とすることもできるし、2つの計算結果を用いた平均等の演算結果を最終的な計測値とすることもできる。
初めに、ドップラ測定システムとしての構成について説明する。
ドップラ測定システムは、ヘッド計測装置1、ストロボカメラ2、データ処理装置3、及び、動画像カメラ4により構成される。
ヘッド計測装置1は、ドップラセンサ11、コンパレータ12、及びADC(A/Dコンバータ)13を、それぞれ2個ずつ備えている。ドップラセンサ11は、マイクロ波の信号を送信信号として出力するとともに、出力した送信信号が所定の物体に反射して周波数が変更され、所定のドップラ周波数となった反射信号(以下、ドップラ信号という。)を受信する。ドップラセンサ11が出力する送信信号の周波数は、例えば、24.11GHzである。コンパレータ12は、ドップラセンサ11が受信したドップラ信号の出力レベルを、予め設定された基準レベルVTHと比較し、その出力レベルが基準レベルVTH以上である場合に、測定対象の物体を検出した検出信号K1またはK2を出力する。ADC13は、ドップラセンサ11が出力するドップラ信号を所定のビット数(例えば、16ビット)でAD変換し、AD変換後のデジタル化されたドップラ信号SIG1またはSIG2を出力する。
2個のドップラセンサ11、コンパレータ12、及びADC13のうち、一方は右打ちのプレーヤのヘッドスピード検出用であり、他方は左打ちのプレーヤのヘッドスピード検出用である。本実施の形態では、ドップラセンサ11a、コンパレータ12a、及びADC13aが右打ち用に設定されており、ドップラセンサ11b、コンパレータ12b、及びADC13bが左打ち用に設定されている。右打ち用と左打ち用の違いは、ヘッド計測装置1内のドップラセンサ11の取り付け位置の違いであるが、詳細については図12を参照して後述する。
以下では、右打ちのプレーヤ用の設定がなされている場合について主に説明し、左打ちのプレーヤ用の設定にした場合の相違部分については必要に応じて適宜説明する。
ヘッド計測装置1は、マイクロホン14、バッファメモリ15、切替部16、表示部17、制御部19、及び入出力部20も有している。
マイクロホン14は、被打撃物であるゴルフボールが打撃物であるゴルフクラブに打撃されたときの音声信号Mを取得することで、インパクトの瞬間、即ち、被打撃物であるゴルフボールが打撃物であるゴルフクラブに打撃された瞬間のタイミングを検出する。
バッファメモリ15は、制御部19の制御により、ドップラセンサ11aから出力されたドップラ信号SIG1、または、ドップラセンサ11bから出力されたドップラ信号SIG2を、予め設定された測定時間に対応する所定のデータ量だけ記憶する。バッファメモリ15はリングバッファとなっており、基準レベルVTH以上の新たなドップラ信号が供給されると、そこに記憶されている所定量のデータのうち、古いものから順次更新される。具体的には、例えば、右打ち用の設定の場合、ドップラ信号SIG1が、アドレスの小さな方から順に書き込まれ、全てのデータ領域に対し書き込みがされた場合、データの古い方から(即ち、アドレスの小さな方から)再度上書きすることにより、一定量(一定時間)の最新のドップラ信号SIG1がバッファメモリ15に記憶される。左打ち用の設定の場合には、ドップラ信号SIG1ではなくドップラ信号SIG2が、同様の要領でバッファメモリ15に記憶される。
切替部16は、例えば、DIPスイッチ等により構成され、右打ちのプレーヤ用と、左打ちのプレーヤ用の動作設定を切り替える。換言すれば、切替部16は、制御部19が行うゴルフクラブの速度の演算対象を、ドップラセンサ11aのドップラ信号とするか、または、ドップラセンサ11bのドップラ信号とするかを切り替える。なお、右打ちのプレーヤ用と、左打ちのプレーヤ用の動作設定を切り替えは、ヘッド計測装置1とデータ処理装置3を接続し、入出力部20を介してデータ処理装置3から供給される制御信号に基づいて行うようにしてもよい。この場合、切替部16は省略することができる。
表示部17は、3つのLED18a乃至18cを備え、制御部19からの制御信号に基づいて、LED18a乃至18cを点灯または消灯させる。1番目のLED18aは、ドップラセンサ11aが物体(ゴルフクラブ)を検出したとき、点灯する。2番目のLED18bは、インパクトが検出されたとき、点灯する。3番目のLED18cは、ドップラセンサ11aが物体(ゴルフクラブ)を検出し、かつ、物体検出から所定時間内にインパクトが検出されたとき、点灯する。換言すれば、3番目のLED18cは、1番目のLED18aが点灯してから所定時間の間に2番目のLED18bが点灯したとき、点灯する。詳細は後述するが、3番目のLED18cの点灯は、制御部19で演算されたヘッドスピードがストロボカメラ2に出力されたことを意味する。
なお、3つのLED18a乃至18cは、点灯の代わりに、点滅等の表示でもよい。また、3つのLED18a乃至18cの点灯を制御する制御信号をデータ処理装置3に送信し、LED18a乃至18cと同様の表示を、データ処理装置3の後述する表示部34に表示させるようにしてもよい。この場合、表示部17は省略することができる。
制御部19は、切替部16の設定に基づいて、ドップラ信号SIG1及びSIG2の制御を行う。即ち、制御部19は、切替部16において右打ち用の動作設定がなされている場合、コンパレータ12aから物体(クラブヘッド)を検出した旨の検出信号K1が供給された時点から、ADC13aから供給されるドップラ信号SIG1のバッファメモリ15への書き込みを開始する。そして、制御部19は、ヘッドスピードの計測に十分なデータ(ドップラ信号SIG1)がバッファメモリ15に保存されたときから、ヘッドスピードの演算を開始する。ヘッドスピードの演算は、ドップラ信号SIG1が新たにバッファメモリ15に供給される度に実行される。即ち、ドップラ信号SIG1の更新に応じて、ヘッドスピードも更新されることで、インパクトにより近いタイミングで計測された最新のヘッドスピードが常に求められる。
ヘッドスピードは、次のドップラ効果の公式により求めることができる。
v=(c・Fd)/(2・Ft)
ここで、cは光速(299792485m/s)、Fdは、受信したドップラ信号SIG1の周波数(ドップラ周波数)、Ftは、ドップラセンサ11aの出力周波数である。
また、制御部19は、検出信号K1が供給されてから所定の時間内に、マイクロホン14からの音声信号Mによりインパクトの瞬間が検出されたとき、直近に計測されたヘッドスピードを、入出力部20を介して、ストロボカメラ2に送信する。また、制御部19は、計測結果であるヘッドスピードをストロボカメラ2に送信した後、ドップラ信号SIG1のバッファメモリ15への書き込みを終了(停止)する。
さらに制御部19は、表示部17のLED18a乃至18cの点灯を制御する。具体的には、制御部19は、コンパレータ12aから検出信号K1が供給されたとき、1番目のLED18aを点灯させ、検出信号K1が供給されてから所定の時間内に、マイクロホン14から音声信号Mが供給されたとき、2番目のLED18bを点灯させる。そして、制御部19は、計測結果であるヘッドスピードをストロボカメラ2に出力したとき、3番目のLED18cを点灯させる。また、制御部19は、LED18a乃至18cの消灯も制御する。
このように、ゴルフクラブの検出、インパクトの瞬間の検出、計測結果であるヘッドスピードの出力、のそれぞれに対応してLED18a乃至18cを点灯させることにより、測定データが正常に取得できたか否かを一目で分かりやすくしている。
切替部16において左打ち用の動作設定がなされている場合には、制御部19は、上述した検出信号K1およびドップラ信号SIG1に代えて、検出信号K2およびドップラ信号SIG2を用いて同様の制御を行う。従って、右打ち用の設定か、または、左打ち用の設定かに応じて、2個ずつ用意されたドップラセンサ11、コンパレータ12、及びADC13の一方は未使用となる。ヘッド計測装置1を右打ち専用、または、左打ち専用とする場合には、切替部16と、ドップラセンサ11、コンパレータ12、及びADC13の不要な一方は省略し、コストダウンさせることができる。
ストロボカメラ2は、通信部21、制御部22、撮像部23、及び、ストロボ装置24を備える。なお、ストロボ装置24は2個設けられており、それらをストロボ装置24aおよび24bと区別する。
通信部21は、ヘッド計測装置1の入出力部20と接続され、ヘッド計測装置1で計測されたヘッドスピードを取得し、制御部22に供給する。また、通信部21は、データ処理装置3の通信部31と接続され、制御部22から供給された、撮像部23で撮像された2枚の画像(のデータ)を、データ処理装置3に送信する。
制御部22は、通信部21から供給される、ヘッド計測装置1で計測されたヘッドスピードに基づいて、撮像部23が行う2回の撮像のタイミングを決定し、決定した撮像タイミングに基づき、撮像部23およびストロボ装置24を制御する。
より具体的には、制御部22は、通信部21から供給されるヘッドスピードに基づいて、1回目の撮像タイミングと、2回目の撮像タイミング(1回目の撮像タイミングから2回目の撮像タイミングまでの時間間隔)を決定する。そして、制御部22は、決定された1回目の撮像タイミングとなったときに、ストロボ装置24aを制御してストロボ発光させるとともに、撮像部23を制御して、撮像させる。また、制御部22は、決定された2回目の撮像タイミングとなったときに、ストロボ装置24bを制御してストロボ発光させるとともに、撮像部23を制御して、撮像させる。これにより、インパクト直後のゴルフボールを、異なる時刻で撮像した2枚の画像が得られる。換言すれば、通信部21から供給されるヘッドスピードに基づいて、撮像部23が2回の撮像を行ったとき、それぞれの画像にゴルフボールが捉えられるように、制御部22によって撮像タイミングが決定される。制御部22は、2回の撮像により得られた2枚の画像を、ヘッド計測装置1で計測されたヘッドスピードとともに、通信部21を介して、データ処理装置3に出力する。
撮像部23は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)カメラやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサカメラにより構成され、制御部22から指示された撮像タイミングで撮像を行い、その結果得られた2枚の画像を制御部22に供給する。撮像部23の撮像により得られた2枚の画像は、データ処理装置3の演算部32が、インパクト直後のゴルフボールの運動状態(速度)を演算するために用いられる。
ストロボ装置24は、ストロボ発光可能な照明装置であり、制御部22から指示された撮像タイミングでストロボ発光し、ゴルフボールに光を照射する。ストロボ装置24aは、1回目の撮像用のストロボ装置24であり、ストロボ装置24bは、2回目の撮像用のストロボ装置24である。
データ処理装置3は、通信部31、演算部32、表示制御部33、表示部34、及び記憶部35により構成される。データ処理装置3は、例えば、パーソナルコンピュータ等で構成することができる。
通信部31は、ストロボカメラ2及び動画像カメラ4と所定のデータ形式によるデータの授受を行う。具体的には、通信部31は、ストロボカメラ2から供給される、ヘッドスピードと、インパクト直後に撮像された2枚の画像を受信して、演算部32へ供給するとともに、画像付き測定モードにおいてはさらに動画像カメラ4から供給される、プレーヤのスイング動作を撮影して得られた動画像データも取得して、表示制御部33へ供給する。また、通信部31は、表示制御部33から供給される制御コマンドを、動画像カメラ4に送信する。
演算部32は、ヘッド計測装置1で計測されて、ストロボカメラ2を介して供給されたヘッドスピードを表示制御部33に供給する。なお、ヘッドスピードは、通信部31から、直接、表示制御部33に供給するようにしてもよい。
また、演算部32は、ストロボカメラ2で撮像された、インパクト直後のゴルフボールが映る2枚の画像から、ゴルフボールの運動状態、具体的には、速度、単位時間当たりの回転数、および、回転方向のなかの少なくとも1つを算出し、表示制御部33に供給する。本実施の形態のインパクト測定モードでは、ゴルフボールの速度が少なくとも求められるものとする。
ゴルフボールの速度、並びに、単位時間当たりのゴルフボールの回転数および回転方向は、例えば、次のような方法で算出することができる。ゴルフボールには、その表面に、ゴルフボールメーカのメーカ名またはブランド名の文字やマーク(ロゴ)が付されていることが多い。演算部32は、ゴルフボールの表面に付されている文字やマークの一部を特徴点として検出する。そして、1回目の撮像により得られた第1の画像と、2回目の撮像により得られた第2の画像とで、対応する特徴点どうしの位置を比較することにより、ゴルフボールの移動距離、回転数および回転方向が算出される。ゴルフボールの移動距離を、第1の画像と第2の画像の撮像時間間隔で除算することで、ゴルフボールの速度が求められる。第1の画像と第2の画像の撮像時間間隔は、ストロボカメラ2から、2枚の画像とともに取得することができる。ゴルフボールの速度、並びに、単位時間当たりのゴルフボールの回転数および回転方向の詳細な算出方法については、例えば、本出願人の先願である特開2009-247642号公報に開示されている。
演算部32で求められたゴルフボールの速度と、ゴルフボールの回転数および回転方向は、ヘッド計測装置1による計測結果であるヘッドスピードとともに、表示制御部33に供給される。
表示制御部33は、インパクト測定モードでは、ゴルフクラブの速度とゴルフボールの速度の両方を表示部34に表示させる。
また、表示制御部33は、ゴルフクラブの速度とゴルフボールの速度の他に、ゴルフボールの速度(ボールスピード)[m/s]をゴルフクラブの速度(ヘッドスピード)[m/s]で除算して得られるミート率も表示部34に表示させるようにすることができる。さらに、表示制御部33は、ボールスピードを用いた所定の計算式で求められる標準的なゴルフボールの飛距離も併せて表示させるようにしてもよい。標準的なゴルフボールの飛距離は、例えば、(ボールスピード[m/s]×3.8)[yard]として計算することができる。
さらに、画像付き測定モードでは、表示制御部33は、通信部31を介して動画像カメラ4から取得したプレーヤのスイング動作の動画像に、演算部32で求められたゴルフクラブの速度とゴルフボールの速度を重畳させて、表示部34に表示させる。あるいは、表示制御部33は、演算部32で求められたゴルフボールの速度、回転数および回転方向から、ゴルフボールの弾道(飛球の軌跡)を計測し、表示部34に表示させてもよい。
プレーヤのスイング動作を撮影した所定期間の動画像のなかから、インパクト瞬間の画像を特定するには、例えば、次のようにすることができる。インパクトが検出された旨のタイミング信号(音声信号M)が、ヘッド計測装置1から、ストロボカメラ2を介して、データ処理装置3に供給される。このとき、ヘッド計測装置1の入出力部20は、タイミング信号をストロボカメラ2に出力すると同時に、内部カウンタによるカウント動作を開始する。データ処理装置3の表示制御部33は、ストロボカメラ2を介してタイミング信号を取得して、インパクトが検出されたことを認識するとともに、入出力部20のカウント値を読み込み、通信による遅れ量(入出力部20がタイミング信号を出力してから表示制御部33が認識するまでの時間差)を取得する。そして、表示制御部33は、タイミング信号を受信した時刻から遅れ量だけ遡った時刻に、動画像カメラ4で撮像された画像を、インパクト時の画像とする。これにより、動画像カメラ4で撮像されたスイング動作全体の動画像のなかからインパクト時の画像を正確に特定することができ、表示制御部33は、インパクト時の画像を中心として前後に所定枚数の撮像画像を、スイング動作全体の動画像として表示部34に表示させる。なお、ストロボカメラ2を介さずに、ヘッド計測装置1とデータ処理装置3を直接接続し、タイミング信号とカウント値を、ヘッド計測装置1から直接取得するようにしてもよい。
表示部34は、例えば、液晶ディスプレイ等により構成され、インパクト測定モードでは、ゴルフクラブの速度とゴルフボールの速度を表示する。また、画像付き測定モードでは、表示部34は、ゴルフクラブの速度とゴルフボールの速度の他に、プレーヤのスイング動作の動画像やゴルフボールの弾道も表示する。
なお、演算結果の速度が前回の演算結果と全く同一である場合には、前回の測定表示のままなのか、新たに測定された結果であるのかが分からない場合もあり得る。そこで、最新の測定結果を表示する場合には、最初の一定時間、測定結果を点滅表示させることで、測定結果の表示が更新されたことを表すようにしてもよい。
記憶部35は、計測結果のデータ等、記憶することが必要なデータを記憶する。なお、図1では、記憶部35へのデータまたは制御信号の授受を示す線の図示が省略されている。
動画像カメラ4は、動画像を撮像可能なビデオカメラまたはビデオスチルカメラ等で構成され、画像付き測定モードにおいて、データ処理装置3の制御にしたがい撮像し、その結果得られる動画像データをデータ処理装置3に供給する。動画像カメラ4からデータ処理装置3に供給される動画像データには、動画像を構成する各画像の撮影時刻がメタデータとして含まれている。なお、インパクト測定モードのみで使用する場合、動画像カメラ4は省略することができる。
次に、レーザ測定システムとしての構成について説明する。
レーザ測定システムは、データ処理装置3、センサユニット5、及び、高速ステレオカメラ6により構成される。
センサユニット5は、投光部41a及び41b、受光部42a及び42b、並びに出力部43を有する。投光部41aと41bは同一のユニットで構成されており、投光部41aと41bそれぞれを特に区別しない場合には、単に投光部41と称する。受光部42aと42bも同一のユニットで構成されており、受光部42a及び42bについても同様に、受光部42と称する。
投光部41は、半導体レーザなどによりレーザ光を射出する。受光部42は、対応する投光部41から射出されたレーザ光を受光するとともに、所定の物体が投光部41と受光部42の間を通過することによりレーザ光が遮られ、受光部42がレーザ光を受光できなくなった場合に、所定の物体を検出した検出信号を出力部43に供給する。受光部42aは、投光部41aからのレーザ光を受光し、遮光されたときに、第1の検出信号を出力部43に供給する。一方、受光部42bは、投光部41bからのレーザ光を受光し、遮光されたときに、第2の検出信号を出力部43に供給する。
出力部43は、受光部42a及び42bそれぞれから供給される検出信号(第1または第2の検出信号)を高速ステレオカメラ6に出力する。
本実施の形態において、レーザ光を遮光する所定の物体とは、図2及び図3を参照して後述するように、プレーヤがゴルフボールを打つためスイングしたときのクラブヘッド(ゴルフクラブのヘッド)である。従って、センサユニット5は、クラブヘッドを検出した旨の第1の検出信号と第2の検出信号を高速ステレオカメラ6に出力する。
高速ステレオカメラ6は、通信部51、制御部52、右撮像部53R、左撮像部53L、及び、ストロボ装置54により構成される。
通信部51は、センサユニット5から供給される検出信号を受信し、制御部52に供給する。また、通信部51は、制御部52から供給されるヘッドスピードの計測値と、右撮像部53Rおよび左撮像部53Lで撮像されて得られた撮像画像を取得し、データ処理装置3に供給する。
また、制御部52は、第1の検出信号と第2の検出信号が、センサユニット5から供給されたときの時間差から、ヘッドスピードを計測する。
さらに、制御部52は、計測したヘッドスピードに基づいて、第2の検出信号が取得された時刻から、撮像を開始するまでの時間T1(以下、ディレイ時間T1という。)を決定する。そして、第2の検出信号が取得された時刻からディレイ時間T1経過後、制御部52は、第1回目の撮像を行い、その後、T2時間の撮像間隔を空けて、4回の撮像を行うように、右撮像部53R、左撮像部53L、及びストロボ装置54を制御する。
即ち、プレーヤごとにヘッドスピードは異なり、ヘッドスピードによって検出信号が検出されてから、インパクトまでの時間も異なる。そこで、制御部52は、計測されたヘッドスピードに基づいてインパクトの瞬間(タイミング)を予測し、それに応じたディレイ時間を決定する。そして、制御部52は、一測定で、インパクトの瞬間に最も近い1回の撮像(5回目の撮像)と、その直前の4回の撮像の計5回の撮像を行うように制御する。
なお、本実施の形態においては、撮像間隔であるT2時間は固定(一定)の時間とするが、T2時間についても、ヘッドスピードの計測値に基づいて適宜変更するように制御してもよい。T2時間をヘッドスピードの計測値に基づいて適宜変更するようにした場合、計測ポイントの間隔等がヘッドスピードに関わらず一定となるので、解析結果の比較が容易になる。
右撮像部53Rと左撮像部53Lのそれぞれは、制御部52からの撮像命令に従い、撮像を行い、その結果得られる撮像画像を制御部52に供給する。本実施の形態では、右撮像部53Rと左撮像部53Lのそれぞれで計5回の撮像が行われるので、右撮像部53Rにより得られた右撮像画像と左撮像部53Lにより得られた左撮像画像を一組として、計5組の撮像画像が得られる。なお、右撮像部53Rと左撮像部53Lは、後述する図3に示されるように、横方向(水平方向)に所定の間隔をあけて並んで配置されている。
ストロボ装置54は、制御部52からの発光命令に従い、右撮像部53R及び左撮像部53Lが撮像を行うタイミングで、ストロボ発光を行う。
以上のように構成される高速ステレオカメラ6は、高速移動するクラブヘッドをインパクト直近で5回撮像するため、例えば、シャッタスピードが1/50000秒程度、フレームレートが500fps程度、または、一度の露光で5回以上のシャッタが切れる程度の高速撮像が可能な高速ステレオカメラである。
レーザ測定システムとしてのデータ処理装置3の演算部32は、高速ステレオカメラ6で計測されて供給されたヘッドスピードを表示制御部33に供給する。なお、上述したように、演算部32は、ヘッド計測装置1で計測されたヘッドスピードと、高速ステレオカメラ6で計測されたヘッドスピードの一方または両方を採用したり、両者の平均値等を最終的なヘッドスピードとして表示制御部33に供給することができる。
データ処理装置3の演算部32は、高速ステレオカメラ6で撮像された5組の撮像画像から、クラブヘッドの挙動(運動状態)を解析し、その解析結果を示した画像を、表示制御部33に供給する。演算部32が解析するクラブヘッドの挙動としては、具体的には、クラブヘッドの進入角α、ブロー角β、フェースアングルγ、及びダイナミックロフトδであるが、その詳細については後述する。
データ処理装置3の表示制御部33は、演算部32から供給された解析画像を表示部34に表示させる。
データ処理装置3の記憶部35は、演算部32で計算された結果など、記憶しておくことが必要なデータを記憶する。
[測定システムの配置例]
次に、図2及び図3を参照して、図1の測定システムを構成する各装置の配置と、ゴルフボール及びプレーヤ一の位置関係について説明する。
図2は、上面から見たときの、図1の測定システムの各装置と、ゴルフボール及びプレーヤ一との位置関係を示す図である。なお、図2は、プレーヤが右打ちである場合の例である。
図3は、右打ちのプレーヤ側から見た図1の測定システムの各装置の斜視図である。なお、図3では、データ処理装置3と動画像カメラ4の図示が省略されている。
図2に示されるように、プレーヤ(の足)72がゴルフボール71を正面にして位置したとき、プレーヤ72とゴルフボール71を結ぶ直線上の、ゴルフボール71より向こう側の離れた位置にヘッド計測装置1が配置され、さらに、ヘッド計測装置1よりも向こう側の離れた位置に、動画像カメラ4が配置されている。換言すれば、プレーヤ72、ゴルフボール71、ヘッド計測装置1、及び動画像カメラ4が、その順で略一直線上に配置されている。動画像カメラ4は、三脚73で固定されている。
ストロボカメラ2は、ヘッド計測装置1の横で、飛球方向側に配置されている。なお、ストロボカメラ2の設置位置は、ストロボカメラ2の撮像タイミングに応じて最適な位置に決定すればよい。例えば、インパクト瞬間とほぼ同時とみなし、ヘッド計測装置1の上に重ねて配置してもよい。
高速ステレオカメラ6は、ヘッド計測装置1の横で、飛球方向と反対側に配置されている。
図3に示されるように、ヘッド計測装置1、ストロボカメラ2、及びセンサユニット5のそれぞれは、ゴルフボール71が置かれた地面に置かれているのに対して、高速ステレオカメラ6は、ゴルフボール71と、ゴルフクラブ80のクラブヘッド81を上側から撮像するため、三脚79により、地面より少し高い位置に配置されている。
センサユニット5は、図3に示されるように、プレーヤ72がゴルフクラブ80をスイングしたときのクラブヘッド81の通過位置を挟んで、投光部41側のユニットと受光部42側のユニットが対向するように配置される。
本実施の形態では、座標系として、図3に示されるように、ゴルフボール71が置かれた地点を原点として、飛球方向をX軸、ゴルフボール71が置かれた地面に垂直な鉛直方向をY軸、X軸に垂直でゴルフボール71からヘッド計測装置1側の方向をZ軸とする3次元座標系が設定されている。
投光部41a及び受光部42aと、投光部41b及び受光部42bとは、X軸方向に距離Lだけ離れて配置されている。クラブヘッド81が図3中の位置Y1を通過するとき、投光部41aからのレーザ光が遮光され、第1の検出信号が出力される。また、クラブヘッド81が図3中の位置Y2を通過するとき、投光部41bからのレーザ光が遮光され、第2の検出信号が出力される。クラブヘッド81が位置Y1を通過してから位置Y2を通過するまでの時間と、既知の距離Lとを用いて、ヘッドスピードを計測することができる。
なお、センサユニット5のレーザセンサは、本実施の形態で採用されている透過型の他、反射型を採用してもよいし、ラインセンサを採用することも可能である。
図2に戻り、装置間の接続について説明すると、ヘッド計測装置1とストロボカメラ2は、USBケーブル74で接続されている。また、ストロボカメラ2とデータ処理装置3は、USBケーブル75で接続されている。データ処理装置3と動画像カメラ4はUSBケーブル76で、データ処理装置3と高速ステレオカメラ6はUSBケーブル77で接続されている。センサユニット5と高速ステレオカメラ6とは所定の信号ケーブル78で接続されている。なお、各装置間の接続方法は、例えば、RS-232C、LAN、Bluetooth(登録商標)、赤外線通信など、有線、無線を問わず、各種の接続方法を採用することができる。
本実施の形態では、ヘッド計測装置1、ストロボカメラ2、データ処理装置3、動画像カメラ4、センサユニット5、及び高速ステレオカメラ6を別々に設けたが、それらの全部または一部を一体として構成してもよい。例えば、ヘッド計測装置1とストロボカメラ2を一体としたり、データ処理装置3としてのパーソナルコンピュータが動画像カメラ4としてのカメラを有している場合などのように、データ処理装置3と動画像カメラ4を一体とすることも可能である。
[レーザ測定システムによる測定の説明]
次に、レーザ測定システムによるクラブヘッドの挙動の解析について説明する。
レーザ測定システムによるクラブヘッドの挙動の解析では、図4に示されるような登録用プレート82が用意される。登録用プレート82は、例えば、ガラス製の硬質プレートに、後述するマーカ91dないし91hがパターニングされたものとなっている。
プレーヤ72のスイング動作を撮像する前に、図4に示されるように、クラブヘッド81のフェース面81bに登録用プレート82が両面テープ(不図示)等で貼り付けられる。そして、登録用プレート82が貼り付けられた状態で、クラブヘッド81と登録用プレート82が、高速ステレオカメラ6により撮像される。
図5Aは、図4のクラブヘッド上面81aを正面としてY方向から見た上面図であり、図5Bは、図4の登録用プレート82を、その正面からから見た正面図である。
クラブヘッド上面81aには、3点のマーカ91aないし91cが付されている。マーカ91aないし91cは、簡易に着脱可能なシール等を貼り付けることで構成することができる。
クラブヘッド81のフェース面81bに貼り付けられる登録用プレート82にも、プレート中心と、そのプレート中心から対称に、プレート平面を構成する2軸方向それぞれに2点の、計5点のマーカ91dないし91hが形成されている。具体的には、登録用プレート82のプレート中心にはマーカ91hが形成され、マーカ91eおよび91dが、マーカ91hを基準にZ軸方向に対称に形成され、マーカ91fおよび91gが、マーカ91hを基準にY軸方向に対称に形成されている。クラブヘッド81のフェース面81bに対応する登録用プレート82上の計5点のマーカ91dないし91hが、本来計測したい計測点となる。
図5Aに示されるように、クラブヘッド上面81aのマーカ91aと91bとを結ぶ直線が、Z軸と略平行となるようにマーカ91aと91bが付されており、マーカ91aと91bとの中間点が、全てのマーカ91aないし91fの原点(マーク原点)とされる。
高速ステレオカメラ6の右撮像部53R及び左撮像部53Lは、プレーヤ72がスイングするクラブヘッド81を撮像する前に、登録用プレート82が貼り付けられたクラブヘッド81を撮像し、その結果得られた一組の撮像画像がデータ処理装置3の演算部32に供給される。
データ処理装置3の演算部32は、右撮像部53R及び左撮像部53Lで撮像された一組(2枚)の撮像画像から、三角測量の原理により、マーク原点を基準とするマーカ91aないし91fの3次元座標値を計算する。
上述したように、例えば、プレーヤ72によって、クラブヘッド上面81aのマーカ91aと91bとを結ぶ直線がZ軸と略平行となるようにマーカ91aと91bが貼り付けられるものとするが、Z軸と完全に平行とするのは困難である。演算部32は、マーク原点を基準として、マーカ91aと91bとを結ぶ直線がZ軸と平行(x=0)となり、かつ、マーカ91aないし91cの3点のY座標値がゼロとなるように、8点のマーカ91aないし91fを正規化する。具体的には、演算部32は、X軸の回転には以下の式(1)、Y軸の回転には式(2)、Z軸の回転には式(3)を用いて、X軸、Y軸、Z軸の順に、マーカ91aないし91cの座標値を回転させる。演算部32は、残りのマーカ91dないし91fの5点の座標値についても、マーカ91aないし91cの回転に合わせて回転させる。
式(1)ないし式(3)の右辺の[x,y,z]は変換前の座標値を表し、左辺の[x',y',z']は、変換後の座標値を表す。
データ処理装置3の演算部32は、正規化後の登録用プレート82のマーカ91dないし91fの座標値から、クラブヘッド上面81aのマーカ91aないし91cからみたフェース面81bの相対的な角度(以下、相対フェース角度という。)及びフェース中心位置を算出し、記憶部35に記憶させる。相対フェース角度は、水平方向については正規化後のマーカ91dおよび91eの座標値を結ぶ直線から求めることができ、垂直方向については正規化後のマーカ91fおよび91gの座標値を結ぶ直線から求めることができる。フェース中心位置は、正規化後のマーカ91hの座標値そのものとなる。
以上のように、プレーヤ72のスイング動作を撮像する前に、クラブヘッド81のフェース面81bに貼り付けた登録用プレート82を撮像することで、クラブヘッド上面81aのマーカ91aないし91cと、フェース面81bに対応する登録用プレート82上のマーカ91dないし91hとの相対位置関係が登録される。これにより、プレーヤ72のスイング動作の撮像時には、クラブヘッド上面81aの3点のマーカ91aないし91cの移動を捕捉することで、クラブヘッド81のフェース面81bの挙動を捕捉することができる。このように、登録用プレート82を用いることにより、ゴルフクラブ80を交換(変更)して計測する場合や、自分のゴルフクラブ80を計測する場合などに、ゴルフクラブ80のフェース面81bと、クラブヘッド上面81aの3点のマーカ91aないし91cとの相対位置関係を簡単に登録(記憶)することができる。
[クラブヘッドの挙動の計測項目]
図6及び図7を参照して、クラブヘッド81のフェース面81bの挙動を確認するために計算される項目について説明する。
データ処理装置3の演算部32は、高速ステレオカメラ6により得られる5組の撮像画像から、クラブヘッド81の進入角α、ブロー角β、フェースアングルγ、及びダイナミックロフトδを算出する。
図6Aは、クラブヘッド81の進入角αの計算方法を示している。
クラブヘッド81の進入角αは、5組の撮像画像の時間的に隣接する(前後の)2組の撮像画像から得られるクラブヘッド81のフェース中心位置のz座標値どうしを結ぶ直線と、X軸とがなす角度によって求められる。
図6Bは、クラブヘッド81のブロー角βの計算方法を示している。
クラブヘッド81のブロー角βは、5組の撮像画像の時間的に隣接する(前後の)2組の撮像画像から得られるクラブヘッド81のフェース中心位置のy座標値どうしを結ぶ直線と、X軸とがなす角度によって求められる。
進入角α及びブロー角βは、図7Aに示されるように、前後の2組の撮像画像から1個の結果が得られるため、5組の撮像画像から4個の結果が得られる。
図6Cは、クラブヘッド81のフェースアングルγの計算方法を示している。
クラブヘッド81のフェースアングルγは、5組の各撮像画像から得られるクラブヘッド81のフェース面81bのマーカ91dおよび91eを結ぶ直線がYZ平面となす角度によって求められる。
図6Dは、クラブヘッド81のダイナミックロフトδの計算方法を示している。
クラブヘッド81のダイナミックロフトδは、5組の各撮像画像から得られるクラブヘッド81のフェース面81bのマーカ91fおよび91gを結ぶ直線がYZ平面となす角度によって求められる。
フェースアングルγとダイナミックロフトδは、1組の撮像画像から1個の結果を得ることができるため、5組の撮像画像からは計5個の結果を得ることができるが、結果の表示数を進入角α及びブロー角βと合わせるため、データ処理装置3は、図7Bに示されるように、2回目から5回目までの4組の撮像画像から得られる4個の結果を表示する。
なお、進入角α、ブロー角β、フェースアングルγ、及びダイナミックロフトδは、それ以外の名称で呼ばれる場合もあるため、測定項目の名称によっては本発明の内容は限定されない。例えば、ダイナミックロフトはインパクトロフト、進入角はヘッド軌道などと呼ばれる場合もあるが、どのような名称であっても上記と同様の計算方法により算出されていれば、それは同一の測定項目である。
また、データ処理装置3の演算部32では、5組の各撮像画像から計算する項目として、上述した進入角α、ブロー角β、フェースアングルγ、及びダイナミックロフトδ以外の項目を追加することもできる。例えば、演算部32は、クラブヘッド81のフェース面81bにおける打点等も計算してもよい。
[計測結果表示画面例]
図8は、レーザ測定システムにより計測され、データ処理装置3の表示部34に解析結果として表示される計測結果表示画面の例を示している。
図8に示される計測結果表示画面100は、撮像画像表示部111、アングル表示部112、詳細計測値表示部113、インパクト計測値表示部114、及び、ヘッドスピード表示部115により構成される。
撮像画像表示部111には、高速ステレオカメラ6により撮像された5組の撮像画像が重畳処理され、1枚の画像として表示される。
アングル表示部112には、進入角αとブロー角βの計測値の基となるz座標値およびy座標値の履歴が折れ線グラフで表示される。なお、アングル表示部112には、フェースアングルγ、及びダイナミックロフトδの計測値の履歴を折れ線グラフで表示してもよいし、4個の計算項目の全てについて表示するようにしてもよい。
詳細計測値表示部113には、進入角α、ブロー角β、フェースアングルγ、及びダイナミックロフトδの各計算項目について、1回の測定で得られる5組の撮像画像から計算される4個の時系列データの詳細が表示される。詳細計測値表示部113には、データ処理装置3がオフされる(データ処理ソフトが終了される)まで、最新の計算結果を含めた全ての計算結果がリスト表示される。
インパクト計測値表示部114は、最新の測定(5組の撮像画像)についてインパクト時の進入角α、ブロー角β、フェースアングルγ、及びダイナミックロフトδを予測計算し、その計算結果を表示する。
即ち、レーザ測定システムでは、センサユニット5で検出された第1及び第2の検出信号から計測したヘッドスピードに基づいて、5回目の撮像が望ましくはインパクト時となるように、1回目(1組目)の撮像を開始するまでのディレイ時間T1を決定して撮像するが、インパクトのタイミングと完全に一致させるのは困難である。
しかし、一般に、プレーヤが計測結果として望むのは、自分のインパクト時の計測値である。そこで、レーザ測定システムのデータ処理装置3は、進入角α、ブロー角β、フェースアングルγ、及びダイナミックロフトδの各計算項目について、4個の時系列データからインパクト時の計測値を予測計算する。
図9は、一測定につき得られる5組の撮像画像から求めた進入角α、ブロー角β、フェースアングルγ、及びダイナミックロフトδの4個の時系列データを、複数のプレーヤについて計算した結果を示したグラフである。
図9Aは進入角αの時系列データを、図9Bはブロー角βの時系列データを、図9Cはフェースアングルγの時系列データを、図9Dはダイナミックロフトδの時系列データを、それぞれ示している。なお、図9では、あるプレーヤについては一測定につき4回の撮像として、4組の撮像画像から計算した3個の時系列データとなっているものもある。
図9に示されるように、5回(または4回)の撮像期間中の短時間では、進入角α、ブロー角β、フェースアングルγ、及びダイナミックロフトδの計測値は、いずれも一定の傾きで直線的に変化していることが分かる。
そこで、データ処理装置3の演算部32は、進入角α、ブロー角β、フェースアングルγ、及びダイナミックロフトδのそれぞれについて、4個(または3個)の時系列データを直線近似した近似式を求め、インパクト時、即ち、x座標値がゼロ(x=0)のときの計測値を求めることで、インパクト時の計測値を予測計算する。
図8のインパクト計測値表示部114には、以上のようにして算出されたインパクト時の進入角α、ブロー角β、フェースアングルγ、及びダイナミックロフトδの予測計算値が表示される。このように、インパクト時の進入角α、ブロー角β、フェースアングルγ、及びダイナミックロフトδを表示することができるので、インパクト時のデータを見たいというプレーヤ(ユーザ)の要望を満足させることができる。
インパクト計測値表示部114の下側のヘッドスピード表示部115には、センサユニット5で検出された第1及び第2の検出信号に基づいて高速ステレオカメラ6が計測したヘッドスピードが表示される。
[ヘッド挙動計測準備処理]
次に、図10のフローチャートを参照して、レーザ測定システムによるクラブヘッドの挙動計測のためのヘッド挙動計測準備処理について説明する。
この処理では、初めに、ステップS1において、高速ステレオカメラ6が、登録用プレート82がフェース面81bに貼り付けられたクラブヘッド81を撮像する。撮像命令は、例えば、ユーザの撮像指示に基づいて、データ処理装置3から供給され、撮像結果である撮像画像が、高速ステレオカメラ6からデータ処理装置3に供給される。
ステップS2において、データ処理装置3の演算部32は、図4等を参照して説明したように、高速ステレオカメラ6から供給された2枚の撮像画像(右撮像画像と左撮像画像)から、マーク原点を基準とする8点のマーカ91aないし91fの3次元座標値を計算し、さらに正規化する。
ステップS3において、演算部32は、正規化後の登録用プレート82のマーカ91dないし91fの座標値から、相対フェース角度、即ち、クラブヘッド上面81aのマーカ91aないし91cからみたフェース面81bの相対的な角度と、フェース中心位置を算出する。
ステップS4において、演算部32は、算出した相対フェース角度とフェース中心位置を、記憶部35に記憶して、処理を終了する。
[ヘッド挙動計測処理]
次に、図11のフローチャートを参照して、レーザ測定システムによるクラブヘッドの挙動を計測するヘッド挙動計測処理について説明する。この処理が実行される前には、図10のヘッド挙動計測準備処理が終了し、プレーヤがスイングに使用するゴルフクラブ80のクラブヘッド81の相対フェース角度とフェース中心位置がデータ処理装置3に記憶されていることが必要である。
初めに、ステップS21において、高速ステレオカメラ6の制御部52は、通信部51を介して、センサユニット5から第1及び第2の検出信号を受信したかを判定し、受信したと判定されるまで待機する。
図3を参照して説明したように、クラブヘッド81が、投光部41aからのレーザ光を遮光すると第1の検出信号が、投光部41bからのレーザ光を遮光すると第2の検出信号が、センサユニット5から高速ステレオカメラ6に供給される。
ステップS21で、第1及び第2の検出信号を受信したと判定された場合、処理はステップS22に進み、高速ステレオカメラ6の制御部52は、第1及び第2の検出信号から、クラブヘッド81のヘッドスピードを計測する。即ち、制御部52は、第1の検出信号と第2の検出信号が供給されたときの時間差から、ヘッドスピードを計測する。
ステップS23において、制御部52は、計測したヘッドスピードに基づいて、第2の検出信号を受信した時刻から、1回目の撮像を開始するまでのディレイ時間T1を決定する。
そして、ステップS24において、制御部52は、そのディレイ時間T1が経過したか、即ち、撮像タイミングとなったかを判定する。
ステップS24で撮像タイミングとなったと判定されるまで処理が待機され、ステップS24で、撮像タイミングとなったと判定された場合、処理がステップS25に進む。そして、ステップS25において、高速ステレオカメラ6が、T2時間間隔で所定回数(本実施の形態では5回)の撮像を行う。即ち、高速ステレオカメラ6の制御部52が、T2時間間隔で、右撮像部53Rと左撮像部53Lに撮像命令を出力するとともに、ストロボ装置54に発光命令を出力する動作を計5回行う。
ステップS26において、制御部52は、撮像により得られた5組の撮像画像を、ステップS21で計測されたヘッドスピードの計測結果とともに、データ処理装置3に転送する。
ステップS27において、データ処理装置3の演算部32は、高速ステレオカメラ6から供給された5組の撮像画像それぞれに映るクラブヘッド上面81aの3個のマーカ91aないし91cから、5組の撮像画像それぞれの撮像時刻におけるクラブヘッド81の相対フェース角度とフェース中心位置を算出する。
ステップS28において、演算部32は、5組の撮像画像それぞれから求めたクラブヘッド81の相対フェース角度とフェース中心位置に基づいて、2回目から5回目までの各撮像時刻における進入角α、ブロー角β、フェースアングルγ、及びダイナミックロフトδを計算する。
ステップS29において、演算部32は、インパクト時の進入角α、ブロー角β、フェースアングルγ、及びダイナミックロフトδを予測計算する。求めた進入角α、ブロー角β、フェースアングルγ、及びダイナミックロフトδとヘッドスピードの計算結果は、5組の撮像画像を重畳処理した重畳画像とともに、表示制御部33に供給される。
ステップS30において、表示制御部33は、図8の計測結果表示画面100を表示部34に表示させる。即ち、表示制御部33は、進入角α、ブロー角β、フェースアングルγ、ダイナミックロフトδ、及びヘッドスピードの計算結果を、重畳画像とともに表示部34に表示させる。
ヘッド挙動計測処理は、以上で終了する。
上述したレーザ測定システムによれば、初めに、ヘッド挙動計測準備処理が実行され、クラブヘッド上面81aに配置された3点のマーカ91aないし91cと、クラブヘッド81のフェースとの位置関係を表す、クラブヘッド81の相対フェース角度とフェース中心位置が記憶部35に記憶される。
次に、ゴルフクラブ80をスイングしたとき、インパクト付近で、所定回数(例えば、5回)の撮像が高速ステレオカメラ6により実行される。そして、予め記憶された3点のマーカ91aないし91cとクラブヘッド81のフェースとの位置関係を用いて、撮像により得られた5組の撮像画像に含まれる、クラブヘッド上面81aの3点のマーカ91aないし91cの位置から、プレーヤ72のスイング時のクラブヘッド81のフェースの挙動、即ち、進入角α、ブロー角β、フェースアングルγ、及びダイナミックロフトδが計測(算出)される。
クラブヘッド上面81aのマーカ91aないし91cは、簡易に着脱可能なシール等を貼り付けることで構成することができる。マーカ91aないし91cを貼り付ける箇所は、例えば、従来技術のように、座標系の軸上に厳密に沿うように貼り付ける必要はなく、3点のマーカ91aないし91cにより平面が構成されさえすればよい。
また、登録用プレート82は、両面テープ等でクラブヘッド81のフェース面81bに貼り付けるだけである。従って、クラブヘッド上面81aのマーカ91aないし91cとフェース面81bとの正確な位置関係を、簡単に計測、登録することができる。また、プレーヤ72のスイングを撮像するときには、登録用プレート82は取り外されるので、プレーヤ72のスイングに影響を与えるようなマーキングが存在しない。
従って、レーザ測定システムによれば、より簡単な構成で、クラブヘッドの挙動を正確に計測することができる。
[レーザ測定システムの変形例]
上述したレーザ測定システムでは、クラブヘッド上面81aに配置された3点のマーカ91aないし91cと、クラブヘッド81のフェースとの位置関係を登録するための撮像手段と、プレーヤ72のスイング動作時の複数枚の撮像画像を撮像する撮像手段は同一のもの(高速ステレオカメラ6)としたが、これらは異なるものとしてもよい。即ち、位置関係を登録するため、登録用プレート82が貼り付けられたクラブヘッド81を撮像する撮像手段は、高速ステレオカメラ6以外のステレオカメラであってもよい。
また、上述したレーザ測定システムの構成では、クラブヘッド上面81aに3点のマーカ91aないし91cを配置したが、クラブヘッド上面81aに配置するマーカの点数は4点以上でもよい。また、クラブヘッド81のフェース面81bに対応する登録用プレート82上のマーカは、プレート中心のマーカ91hと、その他の3点のマーカの計4点で構成してもよい。
さらに、上述した例では、ゴルフクラブ80がドライバーであって、3点のマーカ91aないし91cが、クラブヘッド81のクラウン部分であるクラブヘッド上面81aに配置される例について説明した。しかし、本発明は、アイアンやウェッジなどのクラブヘッド上面81aが比較的狭いゴルフクラブにも適用することができる。この場合、3点のマーカ91aないし91cが配置される場所としては、例えば、クラブヘッドの上面に2点、クラブヘッドのホーゼル部分に1点とすることができる。またあるいは、クラブヘッドの上面に1点、クラブヘッドのホーゼル部分に1点、スイートスポットから離れたフェースの周辺部に1点としてもよい。即ち、3点のマーカ91aないし91cは、相対フェース角度及びフェース中心位置を算出するための基準面を形成することができれば、クラブヘッドのどのような位置に配置されてもよい。
高速ステレオカメラ6は、2つの方向から撮像し、マーカ91aないし91fの3次元座標値を求めたが、3以上の方向から撮像し、その結果得られる多視点画像から、マーカ91aないし91fの3次元座標値を求めてもよい。
また、上述したレーザ測定システムでは、登録用プレート82が、ガラス製の硬質プレートで構成されるとしたが、登録用プレート82は、例えば、ゴムやシリコン等の軟らかい材質で構成され、クラブヘッド81のフェース面81bに密着するようなものでもよい。
さらには、登録用プレート82を用いずに、ゴルフクラブ80のフェース面81bと、クラブヘッド上面81aの3点のマーカ91aないし91cとの相対位置関係を求めるようにすることもできる。例えば、クラブヘッド81のフェース面81bのスコアラインと、クラブヘッド上面81aに配置されたマーカ91aないし91cとに基づき、相対位置関係を求めたり、フェース面81bに直接マーカを貼り付けて、その貼り付けられたマーカと、クラブヘッド上面81aに配置されたマーカ91aないし91cとに基づき、相対位置関係を求めるなどしてもよい。
上述した実施の形態では、レーザ測定システムが、データ処理装置3、センサユニット5、及び、高速ステレオカメラ6の3つの装置により構成されていたが、それらは一体とされ、1台の計測装置として構成することも可能である。
また、レーザ測定システムでは、ヘッド計測装置1およびストロボカメラ2とは独立した処理が行われるが、必要に応じて、ヘッド計測装置1の信号またはデータを利用してもよい。例えば、上述したレーザ測定システムでは、インパクトの瞬間を、センサユニット5からの検出信号に基づいて予測するが、ヘッド計測装置1では、インパクトの瞬間が、音声信号Mにより検出される。
そこで、高速ステレオカメラ6は、T2時間間隔で一定時間継続して撮像を行い、ヘッド計測装置1で音声信号Mにより検出されたインパクトの瞬間付近で高速ステレオカメラ6が撮像した複数組の撮像画像を、クラブヘッドの挙動計測用の撮像画像としてもよい。この場合、センサユニット5は省略することができる。
[ドップラセンサ11と測定範囲との関係]
次に、ドップラ測定システムによるゴルフボールの運動状態の解析について説明する。
初めに、図12を参照して、ヘッド計測装置1内の2個のドップラセンサ11と、その測定範囲との関係について説明する。図12においても、図2と同様、プレーヤが右打ちである場合の例とする。
ヘッド計測装置1内のマイクロホン14とゴルフボール71を結ぶ直線と、2個のドップラセンサ11aと11bを結ぶ直線は直交し、2個のドップラセンサ11aと11bを結ぶ直線上かつ2個のドップラセンサ11aと11bの中間にマイクロホン14が配置されている。従って、2個のドップラセンサ11aと11bは、ゴルフボール71とマイクロホン14を結ぶ直線に対して左右対称に配置されている。
本実施の形態において、ドップラセンサ11a及び11bそれぞれのマイクロ波の放射角度は、例えば、80度であるとする。ドップラセンサ11aは、図12に示すように、80度の扇形の測定範囲が、ゴルフボール71が置かれた位置から、ゴルフボール71の飛球方向と反対方向(飛球方向の後ろ側)を向くように配置されている。一方、ドップラセンサ11bは、80度の扇形の測定範囲が、ゴルフボール71が置かれた位置から、飛球方向と同方向を向くように配置されている。
このような位置関係においては、プレーヤが右打ちである場合、ゴルフボール71を打撃するまでのゴルフクラブは、ドップラセンサ11aの測定範囲内で検出される。反対に、プレーヤが左打ちである場合には、ゴルフボール71を打撃するまでのゴルフクラブは、ドップラセンサ11bの測定範囲内で検出される。従って、ドップラセンサ11aが右打ちのプレーヤ用のヘッドスピード検出センサであり、ドップラセンサ11bが左打ちのプレーヤ用のヘッドスピード検出センサとなる。
図12に示した例では、ゴルフボール71とヘッド計測装置1との距離が300mmに設定されているが、ゴルフボール71とヘッド計測装置1との距離としては300乃至600mm程度が適切である。
[インパクト測定モードによる測定処理]
図13のフローチャートを参照して、インパクト測定モードによる測定処理について説明する。なお、インパクト測定モードの動作設定は、この処理の開始前に既に行われているものとする。また、ヘッド計測装置1の切替部16では右打ち用の設定がなされており、ドップラセンサ11aは、ヘッド計測装置1の電源投入とともにマイクロ波の出力を開始している。
初めに、ステップS41において、制御部19は、ドップラセンサ11aが物体、即ちクラブヘッド81を検出したかを判定する。具体的には、コンパレータ12aから検出信号K1が供給されたかを判定することで、ドップラセンサ11aがクラブヘッド81を検出したか否かを判定し、クラブヘッド81を検出したと判定するまでステップS41の判定処理が繰り返される。
そして、ステップS41で、ドップラセンサ11aがクラブヘッド81を検出したと判定された場合、処理はステップS42に進み、制御部19は、1番目のLED18aを点灯させ、時間のカウントを開始する。
ステップS43において、制御部19は、ADC13aによってデジタル化されて供給されるドップラセンサ11aのドップラ信号SIG1のバッファメモリ15への保存(書き込み)を開始する。
ステップS44において、制御部19は、バッファメモリ15に、ヘッドスピードの計測に十分なデータ(ドップラ信号SIG1)が保存されたか否かを判定する。ヘッドスピードを正確に計測するためには、ある程度の期間のドップラ信号SIG1が必要である。ステップS44では、ヘッドスピードを正確に計測するために予め設定された所定期間の長さのドップラ信号SIG1がバッファメモリ15に蓄積されたか否かが判定され、蓄積されたと判定されるまで、ステップS44の処理が繰り返される。ただし、ステップS44の処理にはタイムアウトが設定されており、ステップS44でNOと判定される状態が長く続き、タイムアウトが発生した場合には、ステップS41の処理に戻るようになされている。
ステップS44で、ヘッドスピードの計測に十分なデータがバッファメモリ15に保存されたと判定された場合、処理はステップS45に進み、制御部19は、ヘッドスピードの計測を開始する。この処理以降、新たなドップラ信号SIG1がバッファメモリ15に供給される度に、ヘッドスピードも再計算(更新)される。
ステップS46において、制御部19は、ドップラセンサ11aがクラブヘッド81を検出してから所定の時間内にゴルフボール71の打撃音を検出したかを判定する。より具体的には、制御部19は、ステップS42で開始したカウントが所定のカウント数となるまでの間に、クラブヘッド81がゴルフボール71を打撃した音声信号Mがマイクロホン14から供給されたかを判定する。
ステップS46で、所定の時間内にゴルフボール71の打撃音を検出していないと判定された場合、処理はステップS47に進み、制御部19は、ドップラセンサ11aのドップラ信号のバッファメモリ15への保存を終了し、ステップS48において、点灯している1番目のLED18aを消灯させ、測定処理を終了する。
従って、図13の測定処理では、ドップラセンサ11aによりクラブヘッド81が検出されてから、所定の時間内にゴルフボール71の打撃音が検出されなかった場合、測定は行われない。
一方、ステップS46で、所定の時間内にゴルフボール71の打撃音を検出したと判定された場合、処理はステップS49に進み、制御部19は、ヘッドスピードの最新の計測結果を、入出力部20を介してストロボカメラ2に送信する。
そして、ステップS50において、制御部19は、ドップラセンサ11aからのドップラ信号のバッファメモリ15への保存を終了し、ステップS51において、2番目及び3番目のLED18b及び18cを点灯させる。
ステップS52において、ストロボカメラ2の制御部22は、ヘッド計測装置1で計測されたヘッドスピードを、通信部21を介して取得する。
ステップS53において、制御部22は、取得したヘッドスピードに基づいて、撮像部23が行う2回の撮像のタイミングを決定し、決定した撮像タイミングに基づき、撮像部23に撮像させる。制御部22から指示された撮像タイミングにより、ストロボ装置24はストロボ発光し、撮像部23は撮像する。
ステップS54において、制御部22は、2回の撮像により得られた2枚の画像を、ヘッド計測装置1で計測されたヘッドスピードとともに、通信部21を介して、データ処理装置3に転送する。
ステップS55において、データ処理装置3の演算部32は、ストロボカメラ2から受信した2枚の画像に基づいて、ボールスピードを算出する。算出されたボールスピードは、ヘッド計測装置1による計測結果であるヘッドスピードとともに、表示制御部33に供給される。
ステップS56において、表示制御部33は、演算部32から供給されたヘッドスピードとボールスピードを、表示部34に表示させる。
ステップS57において、ヘッド計測装置1の制御部19は、ヘッドスピードの出力から一定時間経過後であって、ヘッドスピードとボールスピードの表示から一定時間経過後に相当する所定の時刻に、1乃至3番目のLED18a乃至18cを消灯させ、処理を終了する。
以上のように、インパクト測定モードによる測定処理では、ヘッド計測装置1において、一定期間のドップラ信号に基づいて、ヘッドスピードが、インパクトの瞬間まで継続的に測定されるとともに、音声信号M(ゴルフボールの打撃音)により、インパクトの瞬間が検出される。そして、インパクトの直前に計測されたヘッドスピードが、ストロボカメラ2に供給される。
ストロボカメラ2では、ヘッド計測装置1で計測されたヘッドスピードに基づいて、インパクト直後のゴルフボール71を撮像する2回の撮像タイミングが決定されて、撮像される。そして、データ処理装置3において、撮像された2枚の画像に基づいて、ゴルフボール71のボールスピードが計算される。
即ち、ドップラ測定システムでは、従来のように、1個のドップラセンサにより取得したドップラ信号に基づいて、ヘッドスピードとボールスピードの両方を測定するのではなく、ヘッドスピードについてはドップラセンサ11の信号から測定し、ボールスピードについては、ゴルフボール71を撮像した2枚の画像から測定するようになされている。したがって、打撃物と被打撃物それぞれの運動状態である、クラブヘッド81とゴルフボール71の両方の速度をより正確に測定することができる。
インパクトの瞬間を検出する場合、単に音声信号のみを用いて打撃が行われたことを検出すると、クラブヘッド81によるゴルフボール71の打撃以外の、関係のない音に反応してしまうことがある。一方、ドップラ信号を解析することでインパクトの瞬間を検出することは、短時間で高精度で求める必要があるため高価なプロセッサが必要となり、費用などの点で現実的ではない。そこで、本実施の形態では、コンパレータ12aから物体を検出した旨の検出信号K1が供給された時点から、即ち、ドップラセンサ11aがクラブヘッド81を検出した時点から所定の時間内に、ゴルフボール71の打撃音を検出したか否かを判定することで、高価なプロセッサを用いず、単に音声信号のみを用いて検出する場合より正確にインパクトの瞬間を特定している。即ち、ドップラ測定システムによれば、より安価、かつ、高精度に、クラブヘッド81の速度とゴルフボール71の速度を求めることができる。
従来のクラブヘッドとゴルフボールの速度の測定では、プレーヤの一連のスイング動作の全てとゴルフボールが飛んでいる時間全部を格納するメモリ領域を確保し、記憶することが行われていた。これに対して、ドップラ測定システムでは、上述したようにインパクトの瞬間を正確に特定することができるので、速度の演算に最低限必要なメモリ容量だけメモリ領域を確保し、記憶させておけばよい。従って、バッファメモリ15として必要なメモリ領域を、クラブヘッド81の速度を正確に測定できる最小のサイズとすることができる。例えば、インパクト前の0.2秒間の測定データを記憶する場合には、16Kバイトのメモリ領域があればよい。
[ドップラ測定システムの変形例]
上述したドップラ測定システムでは、インパクトの瞬間を検出する検出手段として、インパクト時の音を検出するマイクロホンを採用したが、これに限らず、その他のものを採用することができる。例えば、インパクトの瞬間を検出する検出手段としてラインセンサカメラを採用し、ラインセンサカメラが所定位置に置かれているゴルフボールを撮像し、撮像された画像に変化があった場合、即ち、撮像された画像からゴルフボールが消えた場合を、インパクトの瞬間として検出することができる。また、インパクトの瞬間を検出する検出手段として、透過型または反射型のレーザセンサを採用し、ゴルフボールに向けてレーザ光を照射し、透過してくるレーザ光の有無、または、反射してくるレーザ光の有無により、インパクトの瞬間を検出してもよい。
また、上述したドップラ測定システムでは、ゴルフボールの運動状態を演算するための2枚の画像を、ストロボカメラ2内の1つの撮像部23で撮像するようにしたが、2枚の画像を異なるストロボカメラ2または撮像部23で撮像するようにしてもよい。即ち、ストロボカメラ2または撮像部23は2以上でもよく、2枚以上の画像を用いてゴルフボールの運動状態を演算するようにしてもよい。
図1の測定システムは、例えば、ゴルフクラブを販売するスポーツ店や、ゴルフのレッスンを行うゴルフレッスン場などで利用される。
しかしながら、ヘッド計測装置1は、携帯可能な小型の装置とすることが可能であるため、ストロボカメラ2(およびその先に接続されたデータ処理装置3)から切り離して、インパクト測定モードによるスピード測定のみを行う、ポータブル型の測定装置とすることも可能である。ポータブル型にした場合、例えば、ユーザ(プレーヤ)は、ゴルフ練習場などに持ち運んで使用することができる。ポータブル型のヘッド計測装置1とするには、バッテリと、計測結果のヘッドスピードを表示する7セグメントLED等をさらに設ければよい。
しかし、ヘッド計測装置1を、ストロボカメラ2等から切り離して使用する場合、ストロボカメラ2による撮像は行われないため、ボールスピードについては計測できないことになる。
そこで、ヘッド計測装置1単独による計測の場合、ヘッドスピードの計測に使用しない側のドップラセンサ11、コンパレータ12、及びADC13を、ボールスピードの計測に使用することができる。
例えば、右打ち用の動作設定では、ドップラセンサ11aからのドップラ信号に基づいてヘッドスピードの計測が行われるが、ドップラセンサ11bは未使用となる。図12を参照してわかるように、プレーヤが右打ちである場合、ドップラセンサ11bの測定範囲には、ゴルフクラブ80の打撃により飛球するゴルフボール71の軌道が含まれる。従って、ドップラセンサ11bを、ゴルフクラブ80のクラブヘッド81で打撃された後のゴルフボール71の速度(ボールスピード)を測定するためのセンサとして使用することができる。ゴルフボール71の速度の計測方法は、クラブヘッド81の速度と同様である。ただし、このような機能をヘッド計測装置1に備えさせる場合、バッファメモリ15には、ボールスピード計測用のメモリ領域も必要になる。
さらに、ヘッド計測装置1が、未使用のドップラセンサ11によるボールスピード計測機能を備えた場合には、ストロボカメラ2等と接続されている状態でも、未使用のドップラセンサ11によるボールスピード計測処理を実行し、ヘッドスピードとともにボールスピードをデータ処理装置3に提供するようにしてもよい。この場合、データ処理装置3は、例えば、2枚の画像から演算部32が算出したボールスピードと、ヘッド計測装置1で計測されたボールスピードの平均などを演算し、最終的なボールスピードとして表示させることができる。これにより、2個あるドップラセンサ11を有効利用し、かつ、ボールスピードの計測精度を向上させることができる。
あるいはまた、ヘッド計測装置1が、ボールスピード計測機能を備え、ヘッドスピードとともにボールスピードを演算して、データ処理装置3に送信してきた場合には、データ処理装置3の演算部32には、ボールスピード以外のゴルフボールの運動状態、例えば、単位時間当たりの回転数などを演算させるようにすることができる。これにより、ヘッド計測装置1のボールスピード計測機能を有効活用して、データ処理装置3を他の機能に使用することができ、各装置のリソースを十分に生かすことができる。
[コンピュータのハードウエア構成例]
上述した一連の処理は、ハードウエアにより実行することもできるし、ソフトウエアにより実行することもできる。一連の処理をソフトウエアにより実行する場合には、そのソフトウエアを構成するプログラムが、コンピュータにインストールされる。ここで、コンピュータには、専用のハードウエアに組み込まれているコンピュータや、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータなどが含まれる。
図14は、上述した一連の処理をプログラムにより実行するコンピュータ(パーソナルコンピュータ)のハードウエアの構成例を示すブロック図である。
コンピュータにおいて、CPU(Central Processing Unit)201,ROM(Read Only Memory)202,RAM(Random Access Memory)203は、バス204により相互に接続されている。
バス204には、さらに、入出力インタフェース205が接続されている。入出力インタフェース205には、入力部206、出力部207、記憶部208、通信部209、及びドライブ210が接続されている。
入力部206は、キーボード、マウス、マイクロホンなどよりなる。出力部207は、ディスプレイ、スピーカなどよりなる。記憶部208は、ハードディスクや不揮発性のメモリなどよりなる。通信部209は、ネットワークインタフェースなどよりなる。ドライブ210は、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリなどのリムーバブル記録媒体211を駆動する。
撮像部221は、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Mental Oxide Semiconductor)センサ等の撮像素子により構成される。撮像部221は、被写体を撮像し、撮像した被写体の画像データを、入出力インタフェース205を介してCPU201等に供給する。
以上のように構成されるコンピュータでは、CPU201が、例えば、記憶部208に記憶されているプログラムを、入出力インタフェース205及びバス204を介して、RAM203にロードして実行することにより、上述した一連の処理が行われる。
コンピュータ(CPU201)が実行するプログラムは、例えば、パッケージメディア等としてのリムーバブル記録媒体211に記録して提供することができる。また、プログラムは、ローカルエリアネットワーク、インターネット、デジタル衛星放送といった、有線または無線の伝送媒体を介して提供することができる。
コンピュータでは、プログラムは、リムーバブル記録媒体211をドライブ210に装着することにより、入出力インタフェース205を介して、記憶部208にインストールすることができる。また、プログラムは、有線または無線の伝送媒体を介して、通信部209で受信し、記憶部208にインストールすることができる。その他、プログラムは、ROM202や記憶部208に、あらかじめインストールしておくことができる。
なお、コンピュータが実行するプログラムは、本明細書で説明する順序に沿って時系列に処理が行われるプログラムであっても良いし、並列に、あるいは呼び出しが行われたとき等の必要なタイミングで処理が行われるプログラムであっても良い。
なお、本明細書において、システムとは、複数の装置により構成される装置全体を表すものである。
本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。