しかし、金型の開閉方向が、演奏者によって押される鍵の上面に垂直な方向(上下方向)である場合、鍵の外観及び触感を向上させるために、鍵の前面、後面及び側面の表面粗さを大きくすると、成形された鍵を金型から取り外し難くなる。
本発明は上記問題に対処するためになされたもので、その目的は、射出成型により一体的に模様を形成し、鍵の外観を良好にした電子楽器の鍵において、成形した鍵の成形型からの離型性を向上させることにある。なお、下記本発明の各構成要件の記載においては、本発明の理解を容易にするために、後述する実施形態の対応箇所の符号を括弧内に記載しているが、本発明の各構成要件は、実施形態の符号によって示された対応箇所の構成に限定解釈されるべきものではない。
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、上面(11a、21a)、側面(13a、13b、14、23、24)、前面(15a、15b、25a、25b)及び後面(12a、12b、22a)のうちの少なくとも前記上面及び前記側面に凹凸からなる装飾模様が形成された電子楽器の鍵(10、10A、20)において、前記鍵の少なくとも前記上面、前記側面、前記前面及び前記後面、並びに前記装飾模様が射出成形により一体的に形成された射出成形体であって、前記鍵の成形型からの離型方向が前記鍵の上下方向であり、かつ、前記側面の表面粗さが、前記上面の表面粗さよりも小さく設定されていることにある。これによれば、上面の表面粗さよりも、側面の表面粗さを小さくしたので、成形された鍵のかじり(鍵と成形型との間に発生する大きな摩擦又は引っかかり)を最小限に抑えることができ、鍵を成形型からスムーズに取り外すことができる。なお、鍵を成形型から離型するとき、鍵を斜めに移動させることもあるが、この場合も鍵を上下方向に移動させることに含まれる。また、視覚的及び触覚的に最も目立つ上面に、前記鍵が適用された鍵盤装置において、隣接する鍵が押鍵されたときにのみ認識される側面よりも彫の深い装飾模様を施すことができる。また、側面の表面粗さを小さくしたことにより、側面の抜き勾配を小さくして、上面に対する側面の傾斜角度を垂直に近づけることができるので、鍵の外観を良好にできる。さらに、前記鍵が適用された鍵盤装置において、鍵間の隙間が大きくなることを防止でき、これによって、鍵盤装置の外観を良好にできる。なお、本発明においては、鍵における演奏者によって押される面を上面、演奏者側の面を前面、上面と前面とに隣接する面を側面、演奏者から見て奥側に向いた面を後面とする。
また、本発明の他の特徴は、上面、側面、前面及び後面のうちの少なくとも前記上面及び前記前面に凹凸からなる装飾模様が形成された電子楽器の鍵において、前記鍵の少なくとも前記上面、前記側面、前記前面及び前記後面、並びに前記装飾模様が射出成形により一体的に形成された射出成形体であって、前記鍵の成形型からの離型方向が前記鍵の上下方向であり、かつ、前記前面の表面粗さが、前記上面の表面粗さよりも小さく設定されていることにある。これによれば、上面の表面粗さよりも、前面の表面粗さを小さくしたので、成形された鍵のかじり(鍵と成形型との間に発生する大きな摩擦又は引っかかり)を最小限に抑えることができ、鍵を成形型からスムーズに取り外すことができる。なお、鍵を成形型から離型するとき、鍵を斜めに移動させることもあるが、この場合も鍵を上下方向に移動させることに含まれる。また、視覚的及び触覚的に最も目立つ上面に、前記鍵が適用された鍵盤装置において、面積が小さくあまり目立たない前面よりも彫の深い装飾模様を施すことができる。また、前面の表面粗さを小さくしたことにより、前面の抜き勾配を小さくして、上面に対する前面の傾斜角度を垂直に近づけることができるので、鍵の外観を良好にできる。
また、本発明の他の特徴は、上面、側面、前面及び後面のうちの少なくとも前記側面及び前記前面に凹凸からなる装飾模様が形成された電子楽器の鍵において、前記鍵の少なくとも前記上面、前記側面、前記前面及び前記後面、並びに前記装飾模様が射出成形により一体的に形成された射出成形体であって、前記鍵の成形型からの離型方向が前記鍵の上下方向であり、かつ、前記側面の表面粗さが、前記前面の表面粗さよりも小さく設定されていることにある。前面は面積が小さく、視覚的及び触覚的に目立ち難いが、前記鍵が適用された鍵盤装置において、隣接する鍵が押鍵されたときにのみ認識される側面の方がより目立ち難い。そこで、前面の表面粗さよりも側面の表面粗さを小さくした。これによれば、成形された鍵のかじり(鍵と成形型との間に発生する大きな摩擦又は引っかかり)を最小限に抑えることができ、鍵を成形型からスムーズに取り外すことができる。なお、鍵を成形型から離型するとき、鍵を斜めに移動させることもあるが、この場合も鍵を上下方向に移動させることに含まれる。また、側面に比べれば視覚的及び触覚的に目立つ前面に彫の深い装飾模様を施すことができる。また、側面の表面粗さを小さくしたことにより、側面の抜き勾配を小さくして、上面に対する側面の傾斜角度を垂直に近づけることができるので、鍵の外観を良好にできる。さらに、前記鍵が適用された鍵盤装置において、鍵間の隙間が大きくなることを防止でき、これによって、鍵盤装置の外観を良好にできる。
また、本発明の他の特徴は、上面、側面、前面及び後面のうちの少なくとも前記上面及び前記後面に凹凸からなる装飾模様が形成された電子楽器の鍵において、前記鍵の少なくとも前記上面、前記側面、前記前面及び前記後面、並びに前記装飾模様が射出成形により一体的に形成された射出成形体であって、前記鍵の成形型からの離型方向が前記鍵の上下方向であり、かつ、前記後面の表面粗さが、前記上面の表面粗さよりも小さく設定されていることにある。これによれば、上面の表面粗さよりも、後面の表面粗さを小さくしたので、成形された鍵のかじり(鍵と成形型との間に発生する大きな摩擦又は引っかかり)を最小限に抑えることができ、鍵を成形型からスムーズに取り外すことができる。なお、鍵を成形型から離型するとき、鍵を斜めに移動させることもあるが、この場合も鍵を上下方向に移動させることに含まれる。また、視覚的及び触覚的に最も目立つ上面に、前記鍵が適用された鍵盤装置において、ほとんど認識されることのない後面よりも彫の深い装飾模様を施すことができる。また、後面の表面粗さを小さくしたことにより、後面の抜き勾配を小さくして、上面に対する後面の傾斜角度を垂直に近づけることができるので、鍵の外観を良好にできる。
また、本発明の他の特徴は、上面、側面、前面及び後面のうちの少なくとも前記側面又は前記前面に凹凸からなる装飾模様が形成された電子楽器の黒鍵において、前記黒鍵の少なくとも前記上面、前記側面、前記前面及び前記後面、並びに前記装飾模様が射出成形により一体的に形成された射出成形体であって、前記黒鍵の成形型からの離型方向が前記黒鍵の上下方向であり、かつ、前記側面及び前記前面のうちの一方又は両方が下部側部分と上部側部分とで構成され、下部側部分の表面粗さが上部側部分の表面粗さよりも小さく設定されており、前記下部側部分は、隣接する白鍵の押鍵状態においてのみ視認不可能な部位であり、前記上部側部分は、隣接する白鍵の押鍵状態及び非押鍵状態のいずれの状態においても視認可能な部位であることにある。前記鍵が適用された鍵盤装置において、側面は、隣接する鍵が押鍵されたときにのみ視覚的及び触覚的に認識されるが、このとき、上部に比べて下部の方が目立ち難い。また、白鍵及び黒鍵の前面の上部側部分の模様は、押鍵時及び非押鍵時のいずれの状態においても認識される。一方、白鍵の前面の下部側部分は、押鍵時において、鍵盤装置内部に入り込むため、前面の下部側部分の模様は目立ち難い。また、黒鍵の前面の下部側部分は、隣接する鍵が押鍵されたときにのみ認識される。そこで、側面及び前面のうちの一方、又は両方の下部側部分の表面粗さを、上部側部分の表面粗さよりもそれぞれ小さくした。これによれば、成形された鍵のかじり(鍵と成形型との間に発生する大きな摩擦又は引っかかり)を最小限に抑えることができ、鍵を成形型からスムーズに取り外すことができる。なお、鍵を成形型から離型するとき、鍵を斜めに移動させることもあるが、この場合も鍵を上下方向に移動させることに含まれる。また、側面の下部側部分に比べて上部側部分に彫の深い装飾模様を施すことができる。また、前面の下部側部分に比べて上部側部分に彫の深い装飾模様を施すことができる。また、側面の上部側部分の表面粗さよりも下部側部分の表面粗さを小さくすることにより、側面の下部側部分の抜き勾配を小さくして、上面に垂直に近づけることができるので、鍵の外観を良好にできる。さらに、前記鍵が適用された鍵盤装置において、鍵間の隙間が大きくなることを防止でき、これによって、鍵盤装置の外観を良好にできる。また、前面の上部側部分の表面粗さよりも下部側部分の表面粗さを小さくすることにより、前面の下部側部分の抜き勾配を小さくして、上面に垂直に近づけることができるので、鍵の外観を良好にできる。
以下、本発明の一実施形態に係る電子楽器の白鍵10及び黒鍵20について図1A及び図1B並びに図2A及び図2Bを用いて説明する。この白鍵10及び黒鍵20は、電子楽器の鍵盤装置を構成する部材であり、演奏者によって押鍵されて、演奏情報を入力するための部材である。以下の説明においては、白鍵10及び黒鍵20が鍵盤装置のフレームに組み付けられたとき、演奏者側から見て低音部側を左側とし、高音部側を右側とする。また、演奏者の手前側を前側とし、奥側を後側とする。図1A及び図1Bに示す白鍵10並びに図2A及び図2Bに示す黒鍵20は、硬質の合成樹脂による一体成型により、下方に開放された箱状に形成される。ただし、白鍵10及び黒鍵20は、下方に開放されていなくてもよい。すなわち、中実であってもよい。
白鍵10の後端部には、前部側よりも低くなった段部10aが形成されている。白鍵10は、この段部10aにて、鍵盤装置のフレームに揺動可能に支持される。また、白鍵10の左側後部側には、黒鍵20を配置するための切り欠き部10bが形成されている。なお、図1A及び図1Bに示す例においては、切り欠き部10bは、鍵の左側に設けられているが、白鍵10は、音名(C,D,E,F,G,A及びB)ごとに切り欠き部10bが設けられる位置が異なる。すなわち、切り欠き部10bが鍵の右側又は左右両側に設けられる鍵もある。鍵盤装置において黒鍵20に隣接しない白鍵10には、切り欠き部10bが設けられていない。また、白鍵10の前端部には、上端部の薄い部分が僅かに前方に突出した突出部10cが形成されている。この突出部10cは、外観を良好にするために設けられているものである。
白鍵10の上面部11は、第1上面部11a及び第2上面部11bから構成されている。第1上面部11a及び第2上面部11bは、それぞれ左右方向よりも前後方向の方が長い板状に形成されている。第1上面部11aの左側後部は、切り欠き部10bを形成するために切り欠かれている。第2上面部11bは、第1上面部11aの後側に位置し、第1上面部11aよりも低くなっている。すなわち、第2上面部11bが、段部10aの上面部に相当する。また、白鍵10の後面部12は、第1後面部12a、第2後面部12b及び第3後面部12cから構成されている。そして、第1上面部11aの後端と第2上面部11bの前端は、左右方向かつ上下方向に延設された板状の第1後面部12aによって連結されている。
また、白鍵10の左側面部13は、第1左側面部13a及び第2左側面部13bから構成されている。第1左側面部13a及び第2左側面部13bは、それぞれ上下方向よりも前後方向の方が長い板状に形成されている。第1左側面部13aは、切り欠き部10bより前方の部分の側面部であり、第2左側面部13bは、切り欠き部10bの側面部である。第1左側面部13aの後端と第2左側面部13bの前端は、上下方向かつ左右方向に延設された板状の第2後面部12bによって連結されている。すなわち、第2後面部12bが、切り欠き部10bの前面部に相当する。
また、白鍵10の右側面部14は、上下方向よりも前後方向の方が長い板状に形成されている。第2左側面部13b及び右側面部14の後部の上端部は、段部10aを形成するために切り欠かれている。そして、第2上面部11b、左側面部13及び右側面部14の後端は、左右方向かつ上下方向に延設された板状の第3後面部12cによって連結されている。また、第1左側面部13aと右側面部14の前端の上端部は僅かに前方に突出していて、突出部10cの側面部を構成している。また、白鍵10の前面部15は、第1前面部15a及び第2前面部15bからなる。第1上面部11aの前端並びに第1左側面部13a及び右側面部14の前端の上端部(すなわち、僅かに前方に突出した部分)は、左右方向かつ上下方向に延設された板状の第1前面部15aによって連結されている。また、第1左側面部13a及び右側面部14の前端の下部(すなわち、前方に突出した部分以外の部分)は、左右方向かつ上下方向に延設された板状の第2前面部15bによって連結されている。第1前面部15aの下端と第2前面部15bの上端は、左右方向かつ水平方向に延設された下面部16によって連結されている。
白鍵10の第1後面部12a、第2後面部12b、第3後面部12c、第1左側面部13a、第2左側面部13b、右側面部14、第1前面部15a及び第2前面部15bには、抜き勾配が設けられている。第1後面部12a、第2後面部12b、第3後面部12c、第1前面部15a及び第2前面部15bの抜き勾配は、それぞれ0°〜45°、望ましくは、0°〜5°、さらに望ましくは0°〜3°に設定されている。第1左側面部13a、第2左側面部13b及び右側面部14の抜き勾配は、それぞれ0°〜8°、望ましくは0°〜3°、さらに望ましくは0°〜1°に設定されている。
白鍵10の第1上面部11a、第1後面部12a、第2後面部12b、第1左側面部13a、第2左側面部13b、右側面部14及び前面部15の表面には凹凸により木目調の模様が形成されている。第1上面部11aの表面には、前後方向に延びる複数の線状かつ凸状の第1上面凸部31aがそれぞれ左右に間隔を保って配置されていて、凹凸のある柾目模様が形成されている。また、第1左側面部13a、第2左側面部13b及び右側面部14の表面には、前後方向に延びる線状かつ凸状の、複数の第1左側面凸部33a、第2左側面凸部33b及び右側面凸部34がそれぞれ上下に間隔を保って配置されていて、凹凸のある柾目模様が形成されている。また、第1後面部12a、第2後面部12b、第1前面部15a及び第2前面部15bの表面には、演奏者側から見て左側よりも右側が下方に位置するように傾斜して左右に延びる線状かつ凸状の、複数の第1後面凸部32a、第2後面凸部32b、第1前面凸部35a及び第2前面凸部35bが上下に間隔を保って配置されていて、凹凸のある年輪模様が形成されている。第2上面部11b、第3後面部12c及び下面部16は、演奏者に視覚的及び触覚的に認識されないので、模様が形成されず、平面状に形成されている。
端部が第1上面部11aの右側の縁部に到達している1つの第1上面凸部31aは、端部が右側面部14の上側の縁部に到達している右側面凸部34のうちの1つの右側面凸部34に、第1上面部11aと右側面部14とが交わる縁部にて繋がっている。また、端部が第1上面部11aの左側の縁部かつ第1左側面部13aの上側の縁部に到達している1つの第1上面凸部31aは、端部が第1左側面部13aの上側の縁部に到達している第1左側面凸部33aのうちの1つの第1左側面凸部33aに、第1上面部11aと第1左側面部13aが交わる縁部にて繋がっている。また、端部が第1上面部11aの左側の縁部かつ第2左側面部13bの上側の縁部に到達している1つの第1上面凸部31aは、端部が第2左側面部13bの上側の縁部に到達している第2左側面凸部33bのうちの1つの第2左側面凸部33bに、第1上面部11aと第2左側面部13bが交わる縁部にて繋がっている。
また、端部が第1上面部11aの前側に到達している1つの第1上面凸部31aは、端部が第1前面部15aの上側の縁部に到達している第1前面凸部35aのうちの1つの第1前面凸部35aに、第1上面部11aと第1前面部15aが交わる縁部にて繋がっている。また、端部が第1上面部11aの後側に到達している1つの第1上面凸部31aは、端部が第1後面部12aの上部の縁部に到達している第1後面凸部32aのうちの1つの第1後面凸部32aに、第1上面部11aと第2後面部12aが交わる縁部にて繋がっている。また、端部が第1上面部11aの後ろ側の縁部かつ第2後面部12bの上側の縁部に到達している1つの第1上面凸部31aは、端部が第2後面部12bの上部の縁部に到達している第2後面凸部32bのうちの1つの第2後面凸部32bに、第1上面部11aと第2後面部12bが交わる縁部にて繋がっている。
第1左側面凸部33a、第2左側面凸部33b及び右側面凸部34、第1後面凸部32a、第2後面凸部32b、第1前面凸部35a及び第2前面凸部35bについても同様に、互いに隣接する各面部に設けられた線状の凸部に繋がっている。なお、上記のように下面部16は鏡面状に形成されているので、第1前面凸部35aと第2前面凸部35bは、実際には繋がっていないが、第1前面部15aと第2前面部15bの前後方向のずれは僅かなので、第1前面凸部35aの下端部と第2前面凸部35bの上端部の左右方向の位置を合わせておけば、演奏者側から前面部15を見たときに、1つの模様として認識でき、違和感を生じさせないようにすることができる。
第1上面凸部31aの突出高さは、0.01mm〜1mm、望ましくは0.02mm〜0.5mm、さらに望ましくは0.05mm〜0.3mmに設定されている。第1前面凸部35a及び第2前面凸部35bの突出高さは、それぞれ0.01mm〜0.9mm、望ましくは0.02mm〜0.4mm、さらに望ましくは0.05mm〜0.2mmに設定されている。第1左側面凸部33a、第2左側面凸部33b及び右側面凸部34の突出高さは、それぞれ0.01mm〜0.8mm、望ましくは0.02mm〜0.3mm、さらに望ましくは0.05mm〜0.1mmに設定されている。第1後面凸部32a及び第2後面凸部32bの突出高さは、それぞれ0.01mm〜0.8mm、望ましくは0.02mm〜0.3mm、さらに望ましくは0.05mm〜0.1mmに設定されている。そして、第1上面凸部31aの間隔は、0.03mm〜22mm、望ましくは0.05mm〜12mm、さらに望ましくは0.08mm〜8mmに設定されている。また、第1前面凸部35a及び第2前面凸部35bの間隔は、それぞれ0.03mm〜22mm、望ましくは0.05mm〜12mm、さらに望ましくは0.08mm〜8mmに設定されている。第1左側面凸部33a、第2左側面凸部33b及び右側面凸部34の間隔は、それぞれ0.03mm〜22mm、望ましくは0.05mm〜12mm、さらに望ましくは0.08mm〜8mmに設定されている。第1後面凸部32a及び第2後面凸部32bの間隔は、それぞれ0.03mm〜22mm、望ましくは0.05mm〜12mm、さらに望ましくは0.08mm〜8mmに設定されている。第1上面部11aの表面の算術平均粗さRaは、0.5μm〜7μm、望ましくは0.5μm〜4μmに設定されている。第1左側面部13a、第2左側面部13b及び右側面部14の算術平均粗さRaは、0.03μm〜5.0μm、望ましくは0.03μm〜2.0μmに設定されている。また、第1前面部15a及び第2前面部15bの算術平均粗さRaは、0.05μm〜6.0μm、望ましくは0.05μm〜3.0μmに設定されている。第1後面部12a、第2後面部12bの算術平均粗さRaは、0.03μm〜5.0μm、望ましくは0.03μm〜2.0μmに設定されている。
黒鍵20も、白鍵10と同様に、板状の上面部21、後面部22、左側面部23、右側面部24及び前面部25から構成されている。また、黒鍵20の後端部には、前部側よりも低くなった支持部20aが形成されている。黒鍵20は、この支持部20aにて、鍵盤装置のフレームに揺動可能に支持される。なお、黒鍵20には、白鍵10の切り欠き部10bのような隣合う鍵を配置するための切り欠き部は設けられていないが、前端部の上部を斜めに切り欠いた切り欠き部20bが設けられている。黒鍵20の形状は、音名(C#,D#,F#,G#及びA#)によらず一定である。また、黒鍵20には、白鍵10の突出部10cのような突出部は設けられていない。上面部21は、白鍵10の上面部11と同様に、第1上面部21a及び第2上面部21bからなる。後面部22は、第1後面部12a及び第2後面部22bからなる。第2上面部21bが支持部20aの上面部である。第1上面部21aの後端と第2上面部21bの前端は、第1後面部22aによって連結されている。また、左側面部23及び右側面部24の後端は、第2後面部22bによって連結されている。また、第1上面部21aの前端は、左側面部23及び右側面部24の前端よりもやや後方に位置している。左側面部23及び右側面部24の前端部の上部は、切り欠き部20bを形成するために斜めに切り欠かれている。前面部25は、第1前面部25a及び第2前面部25bからなる。第1上面部21aの前端、左側面部23及び右側面部24の前端部の上部であって斜めに切り欠かれた部分は、第1前面部25aによって連結されている。そして、第1前面部25aの下端、左側面部23の前端及び右側面部24の前端は、第2前面部25bによって連結されている。
黒鍵20の第1後面部22a、第2後面部22b、左側面部23、右側面部24及び第2前面部25bには、抜き勾配が設けられている。第1後面部22a、第2後面部22b、及び第2前面部25bの抜き勾配は、それぞれ0°〜10°、望ましくは0°〜5°、さらに望ましくは0°〜3°に設定されている。左側面部23及び右側面部24の抜き勾配は、それぞれ0°〜8°、望ましくは0°〜3°、さらに望ましくは0°〜1°に設定されている。
黒鍵20の第1上面部21a、第1後面部22a、左側面部23、右側面部24、第1前面部25a及び第2前面部25bの表面には、白鍵10と同様の線状の凸部として、第1上面凸部41a、第1後面凸部42a、左側面凸部43、右側面凸部44、第1前面凸部45a及び第2前面凸部45bがそれぞれ設けられている。そして、各部に設けられた線状凸部は、互いに隣接する面部に設けられた線状の凸部に繋がっている。また、各線状凸部の突出高さ及び間隔は、白鍵10と同様に設定され、各部の算術平均粗さRaも白鍵10と同等となっている。なお、第2上面部21b及び第2後面部22bは、演奏者に視覚的及び触覚的に認識されないので、模様が形成されず、平面状に形成されている。
つぎに、白鍵10を一体成型する射出成型機について説明する。なお、黒鍵20を一体成型する射出成型機の構成は、白鍵10の射出成型機と同様であるので、説明を省略する。白鍵10を一体成形する射出成形機には、固定型と可動型からなる金型が備わっている。上記のように、白鍵10は下方に開放された箱状に形成される。そのため、白鍵10の上下方向が金型の型開閉方向となるように、固定型と可動型が設計されている。すなわち、固定型には、白鍵10の表面側を成形するための凹部が設けられていて、可動型には、白鍵10の内面側を成形するための凸部が設けられている。この固定型の凹部であって、白鍵10の上面部11、第1後面部12a、第2後面部12b、第1左側面部13a、第2左側面部13b、右側面部14、第1前面部15a及び第2前面部15bの表面を成形するための成形面には、第1上面凸部31a、第1後面凸部32a、第2後面凸部32b、第1左側面凸部33a、第2左側面凸部33b、右側面凸部34、第1前面凸部35a及び第2前面凸部35bを形成するための線状の凹部がそれぞれ設けられている。
上記のように構成した白鍵10及び黒鍵20においては、各面部の表面に線状の凸部を設け、隣り合う面部が交わる縁部でそれらの線状の凸部が繋がるようにしたので、視覚的及び触覚的に木製の鍵を模擬できる。
また、成形された白鍵10を固定型から取り外す際には、第1後面部12a、第2後面部12b、第3後面部12c、第1左側面部13a、第2左側面部13b、右側面部14及び前面部15に取り出し方向とは反対方向の摩擦力が働く。黒鍵20においても、第1後面部12a、第2後面部22b、左側面部23、右側面部24、及び第2前面部25bに取り出し方向とは反対方向の摩擦力が働く。しかし、上記のように、模様の認識し易さに応じて、算術平均粗Raを設定した。すなわち、白鍵10の第1後面部12a、第2後面部12b及び前面部15の算術平均粗さRaは小さく、第1左側面部13a、第2左側面部13b及び右側面部14の算術平均粗さRaは第1後面部12a、第2後面部12、第1前面部15a及び第2前面部15bの算術平均粗さRaよりもさらに小さい。黒鍵20においても、第1後面部22a、第2前面部25a及び第2前面部25bの算術平均粗さRaは小さく、左側面部23及び右側面部24の算術平均粗さRaは第1後面部12a、第2前面部25a及び第2前面部25bの算術平均粗さRaよりもさらに小さい。したがって、白鍵10及び黒鍵20の外観を良好にするとともに、射出成型において成形された白鍵10及び黒鍵20の離型性を向上させることができる。また、算術平均粗さRaを小さくした面部については、抜き勾配を小さくできる。すなわち、第1左側面部13a、第2左側面部13b、右側面部14、左側面部23、右側面部24、第1後面部12a、第2後面部12b、第1後面部22aなどを上面部11及び上面部21に対して垂直に近い切り立った形状とすることができ、白鍵10及び黒鍵20の外観を良好にできる。また、白鍵10の左側面部13及び右側面部14並びに黒鍵20の左側面部23及び右側面部24の算術平均粗さRaを小さくしたので、左側面部13及び右側面部14並びに左側面部23及び右側面部24の抜き勾配を小さくすることができ、白鍵10及び黒鍵20が適用された鍵盤装置において、鍵間の隙間を小さくすることができる。これにより、鍵盤装置の外観を良好にできる。
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
上記実施形態においては、白鍵10及び黒鍵20の表面に形成される模様は、木目調とした。しかし、この模様は木目調に限られず、幾何学模様、文字など、どんな模様であってもよい。例えば、図3A及び図3Bに示すように、白鍵において、上面及び前面にそれぞれ薄い板状の部材(例えば、板状に加工した象牙)を貼った白鍵を模擬した白鍵10Aとしてもよい。この白鍵10Aの外形は白鍵10と同様であるので、白鍵10と同じ符号を付して、外形の構成についての説明を省略する。第1上面部11aには、複数の線状の第1上面凸部61aが設けられている。これにより、白鍵の上面用の板状部材の表面に表れる模様を模擬している。また、第1後面部12a、第2後面部12bの上端部、第1左側面部13aの上端部、第2左側面部13bの上端部であって第1後面部12aと第2後面部12bの間の部分、右側面部14の上端部であって第1前面部15aと第1後面部12aの間の部分、及び第1前面部15aにも、線状の複数の第1後面凸部62a、第2後面凸部62b、第1左側面凸部63a1、第2左側面凸部63b、右側面凸部64a1、及び第1前面凸部65aがそれぞれ設けられている。これにより、第1上面部11aの外周に沿う領域であって、上下方向の幅が突出部10cの上下方向の幅と同じ幅の領域に模様が形成される。すなわち、白鍵の上面用の板状部材の端面に表れる模様を模擬している。
また、第2前面部15bにも、複数の線状の第2前面凸部65bが設けられている。これにより、白鍵の前面用の板状部材の表面に表れる模様を模擬している。さらに、第1左側面部13a及び右側面部14の前端部の下部(すなわち、前方に突出していない部分)において上下方向に延びる領域であって、前後方向の幅が突出部10cの上下方向の幅と同じ幅である領域にも、左側面凸部63a2及び右側面凸部64a2が設けられている。これにより、白鍵の前面用の板状部材の端面に表れる模様を模擬している。他の部分には、白鍵10と同様に木目調の模様が設けられている。互いに隣り合う面部に設けられていて、白鍵の上面用の板状部材の模様を模擬するための線状の凸部同士は、その隣り合う面部の縁部にて繋がっている。また、互いに隣り合う面部に設けられていて、白鍵の前面用の板状部材の模様を模擬するための線状の凸部同士は、その隣り合う面部の縁部にて繋がっている。また、白鍵の上面用の板状部材の模様を模擬するための線状の凸部、白鍵の前面用の板状部材の模様を模擬するための線状の凸部及び木目調の模様を形成する線状の凸部は互いに繋がらないようにしている。なお、この白鍵10Aの板状部材を模擬した模様及び木目模様は、射出成型により一体的に設けられる。
第1上面凸部61a、第1後面凸部62a及び第2後面凸部62bの突出高さ及び間隔が調整されて、第1上面部11a、第1前面部15a、第2前面部15b、第1後面部12a及び第2後面部12bの算術平均粗さRaが上記の白鍵10と同等に設定されている。また、第1前面凸部65a、第2前面凸部65bの突出高さ及び間隔が調整されて、第1前面部15aの算術平均粗さRaが0.05μm〜6.0μm、望ましくは0.05μm〜3.0μmに設定されている。第2前面部15bの算術平均粗さRaは、第1前面部15aの算術平均粗さRaよりもやや小さく、0.04μm〜6.0μm、望ましくは0.04μm〜3.0μmに設定されている。また、第1左側面凸部63a1、第1左側面凸部63a2、第2左側面凸部63b、右側面凸部64a1及び右側面凸部64a2の突出高さ及び間隔が調整されて、第1左側面部13a、第2左側面部13b及び右側面部14の上端部(すなわち、第1左側面凸部63a1、第2左側面凸部63b及び右側面凸部64a1が形成された部分)の算術平均粗さRaが、0.05μm〜6.0μm、望ましくは0.05μm〜3.0μmに設定されている。これにより、第1左側面部13a、第2左側面部13b及び右側面部14の下部(すなわち、第1左側面凸部33a、第1左側面凸部63a2、第2左側面凸部33b、右側面凸部34及び右側面凸部64a2が形成された部分)の算術平均粗さRaが、第1左側面部13a、第2左側面部13b及び右側面部14の上端部よりもやや小さく設定されている。
なお、各面部の抜き勾配を、白鍵10と同等に設定してもよいが、下部の表面粗さを上端部の表面粗さよりも小さくした左側面部13、右側面部14及び前面部15においては、下部の抜き勾配を上端部の抜き勾配よりも小さくしてもよい。すなわち、第1前面部15aの抜き勾配を0°〜45°、望ましくは0°〜5°、さらに望ましくは0°〜3°に設定してもよい。また、第2前面部15bの抜き勾配を、第1前面部15aよりもやや小さく、0°〜45°、望ましくは0°〜4°、さらに望ましくは0°〜2°に設定してもよい。また、第1左側面部13a、第2左側面部13b及び右側面部14の上端部の抜き勾配を0°〜10°、望ましくは0°〜5°、さらに望ましくは0°〜3°に設定してもよい。また、第1左側面部13a、第2左側面部13b及び右側面部14の下部の抜き勾配を上端部の抜き勾配よりも小さく、0°〜8°、望ましくは0°〜3°、さらに望ましくは0°〜1°に設定してもよい。
上記のように構成した白鍵10Aによれば、複数の部材で構成された白鍵を模擬することができる。また、左側面部13及び右側面部14の模様は。鍵盤装置において、隣の白鍵が押鍵されたときにのみ演奏者によって認識される。そのため、左側面部13及び右側面部14の上部の模様は、左側面部13及び右側面部14の下部の模様に比べてより目立つ。そこで、上部の模様を鮮明にし、下部の模様を上部の模様よりも曖昧にした。また、第1前面部15aの模様は、押鍵時及び非押鍵時のいずれの状態においても認識されるが、第2前面部15bの下部の模様は、押鍵時に鍵盤装置の内部に入り込んで、演奏者に認識されなくなる。そこで、第1前面部15aの模様を鮮明にし、第2前面部15bの模様を第1前面部15aに比べて曖昧にした。射出成型における白鍵10Aの離型性は、白鍵10の離型性に比べると若干低下するが、左側面部13、右側面部14及び前面部15のうち、大部分の面積を占める下部の表面粗さを上部の表面粗さに比べて小さくしたので、射出成形における離型性の低下を最小限に留めることができる。
また、上記実施形態の黒鍵20において、左側面部23及び右側面部24の下部(すなわち、第2前面部25bと第2後面部22bの間の部分)の抜き勾配を、左側面部23及び右側面部24の上部(すなわち、左側面部23及び右側面部24の上部であって第1前面部25aと第1後面部22aの間の部分であって、鍵盤装置に組み付けられたときに白鍵の上面より上方に突出する部分)の抜き勾配よりも小さくしてもよい。さらに、左側面凸部43及び右側面凸部44の突出高さ及び間隔を左側面部23及び右側面部24の上部と下部とで異なるように調整して、左側面部23及び右側面部24の下部の算術平均粗さRaが、左側面部23及び右側面部24の上部の算術平均粗さRaよりもやや小さくなるようにしてもよい。また、第2前面部25bの模様は、鍵盤装置において、隣り合う鍵が押鍵されたときにのみ認識される。そこで、第1前面凸部45a及び第2前面凸部45bの突出高さ及び間隔を調整して、第2前面部25bの算術表面粗さRaが、第1前面部25aの算術平均粗さRaよりも小さくなるように設定してもよい。これによれば、黒鍵20の離型性をさらに向上させることができる。
また、上記実施形態及びその変形例においては、各面部に線状の凸部を設けて、模様を形成するようにした。しかし、各面部に突起状の凸部、線状の凹部、段差などを設けることにより、模様を形成してもよい。また、各面部の交わる縁部にて、模様を構成する線部が繋がっていなくてもよい。なお、各面部において、凹凸によって2種類以上の模様を設けた場合、その模様の境界線として認識される線部も凹凸による模様に含まれる。
また、上記実施形態及びその変形例においては、各面部に設けられた線状の凸部の突出高さ及び間隔を調整して、各面部の算術平均粗さRaがそれぞれ所定の範囲になるようにした。しかし、各面部に設けられた線状の凸部の突出高さ及び間隔を調整して、各面部の最大高さRy、十点平均粗さRzなどがそれぞれ所定の範囲になるようにしてもよい。
また、上記実施形態及びその変形例の白鍵10,10Aの後端部には、段部10aが設けられているが、この段部10aを設けずに、白鍵10,10Aの上面は、前端から後端にかけて連続した平面状に形成されていてもよい。また、白鍵10,10Aの前端部には、突出部10cが設けられているが、この突出部10cを設けなくてもよい。