第1の発明は、被加熱物を加熱する加熱室と、
前記加熱室内にマイクロ波を供給するマイクロ波発生部と、
前記加熱室に前記被加熱物を載置する金属製の棒状部材で構成された焼き網と、を備えたマイクロ波加熱装置であり、
前記焼き網は、前記加熱室内の所定位置に固定される外枠と、前記外枠に固定された橋渡し材と、で構成されており、
前記外枠および前記橋渡し材は、前記加熱室内に生じる定在波の腹付近が前記焼き網において開口するように、前記定在波の腹付近以外に設けられている。
このように構成された第1の発明のマイクロ波加熱装置は、マイクロ波加熱モード時において、焼き網の橋渡し材に大きな電流が流れないため、異常な発熱が抑制されており、エネルギー損失の少ない効率の高い加熱装置となる。
第2の発明は、特に、第1の発明において、前記外枠および前記橋渡し材における少なくとも1つを前記定在波の節付近に設けている。このように構成された第2の発明は、節付近に設けられた外枠および/または橋渡し材には電流がほとんど流れないため、焼き網において異常に発熱することがなく、エネルギー損失の少ない高効率のマイクロ波加熱装置を提供することができる。
第3の発明は、特に、第1または第2の発明において、前記橋渡し材を前記加熱室の内壁より前記定在波の波長の3/8以上離した位置に設けている。このように構成された第3の発明のマイクロ波加熱装置は、定在波の腹の位置である加熱室の内壁から定在波の波長の1/4付近を確実に避けることができる。このため、焼き網における発熱を抑えて、エネルギー損失の少ない高効率のマイクロ波加熱装置を提供することができる。
第4の発明は、特に、第1乃至第3のいずれか1つの発明において、前記焼き網を前記加熱室の内部に挿入するためのレール部が前記加熱室の内部に設けられており、前記レール部と前記焼き網との間を絶縁構造としている。このように構成された第4の発明のマイクロ波加熱装置は、レール部と焼き網との間が絶縁されているため、電界が集中しにくく、異常な発熱が抑えられており、エネルギー損失の少ない高効率の加熱装置となる。
第5の発明は、特に、第1の発明の前記焼き網において、前記外枠に対して複数の前記橋渡し材が平行に固定され、隣り合う前記橋渡し材が1本の棒状部材で形成され、前記棒状部材の端部が前記外枠から前記加熱室の側面壁側へ突出しないように構成されている。このように構成された第5の発明のマイクロ波加熱装置は、加熱室内に棒状部材の端部が突出しないよう構成されているため、焼き網における電界が集中しにくい構成となり、異常な発熱がなくなり、エネルギー損失の少ない高効率の加熱装置となる。
第6の発明は、特に、第5の発明における前記橋渡し材が棒状部材を環状に形成して構成されている。このように構成された第6の発明のマイクロ波加熱装置は、前記橋渡し材における端部が無くなるため、焼き網における異常な発熱がなくなり、エネルギー損失の少ない高効率な加熱装置となる。
第7の発明は、特に、第6の発明における前記橋渡し材の環状が細長いトラック形状である。このように構成された第7の発明は、トラック形状(細長い環状)のように直線部を残すことにより、外枠に対する橋渡し材における橋渡し距離をできる限り短くして、製造コストを低減して、被加熱物を載置したときのたわみが少なく、エネルギー損失の少ない高効率のマイクロ波加熱装置を提供することができる。
第8の発明は、特に、第5の発明における前記橋渡し材が折り返し蛇行形状に形成されている。このように構成された第8の発明は、溶接箇所が低減され、溶接箇所における電界の集中による発熱を少なくなり、エネルギー損失の少ない高効率のマイクロ波加熱装置を提供することができる。
第9の発明は、特に、第5乃至第8のいずれか1つの発明における前記橋渡し材が前記外枠の内側に接するように固定されている。このように構成された第9の発明は、橋渡し材と外枠が交差することにより形成される隙間がなくなり、焼き網における隙間に電界が集中して発熱することが少なくなり、エネルギー損失の少ない高効率のマイクロ波加熱装置を提供することができる。
第10の発明は、特に、第6乃至第8のいずれか1つの発明における前記橋渡し材における円弧部分が前記外枠の外側に突出するよう配置されている。このように構成された第10の発明は、前記橋渡し材における円弧部分が突出するよう構成されており、前記橋渡し材の端部が突出しない構成であるため、焼き網における異常な発熱がなくなり、エネルギー損失の少ない高効率のマイクロ波加熱装置を提供することができる。
第11の発明は、特に、第1の発明における前記焼き網が、前記加熱室に対して点接触するよう構成されている。このように構成された第11の発明は、点接触部分以外の部位においては、電界の集中が生じにくい広い隙間を有する構成とすることができる。加工上、焼き網と加熱室との接触面の両方共を平行に、且つ直線的に接触するように形成することは非常に困難である。しかし、第11の発明においては、焼き網と加熱室とを点接触するよう構成して、焼き網と加熱室との間に僅かな隙間も生じないように構成されている。このように構成することにより、電界の集中が防止されて、異常な発熱が抑制され、エネルギー損失の少ない高効率のマイクロ波加熱装置となる。
第12の発明は、特に、第11の発明において、前記焼き網が、前記加熱室の背面壁と点接触するよう、前記外枠に突起部を設けている。前述のように、加工上、焼き網と加熱室の背面壁との接触面を線接触状態とした場合には、その接触面の両方共を、平行に、且つ直線的に形成することは非常に困難であり、狭い隙間が生じて、その隙間において電界が集中するおそれがある。しかし、第12の発明は、焼き網と加熱室の背面壁との接触面において、点接触するよう構成することにより、電界の集中が防止されており、異常な発熱を抑えて、エネルギー損失の少ない高効率のマイクロ波加熱装置を提供することができる。
第13の発明は、特に、第11の発明において、前記焼き網が、前記加熱室の背面壁と点接触するよう、前記背面壁に半球状の突起部を設けている。前述のように、加工上、焼き網と加熱室の背面壁との接触面を線接触状態とした場合、その接触面の両方共を、平行に、且つ直線的に形成することは非常に困難であり、狭い隙間が生じて、その隙間において電界が集中するおそれがある。第13の発明は、焼き網と加熱室の背面壁との接触面が、点接触するよう構成されているため、電界の集中が防止されて、異常な発熱が抑制され、エネルギー損失の少ない高効率のマイクロ波加熱装置を提供することができる。
第14の発明は、特に、第12の発明において、前記焼き網における前記外枠に形成された前記突起部が、棒状部材の一部をU字状に曲げることにより形成されている。このように構成された第14の発明においては、焼き網における棒状部材をU字状に曲げるだけで、点接触部となる突起部を形成することができるため、製造が容易であり、製造コストを低減することができる。また、突起部を溶接により焼き網に設けた場合においては、使用中に取れるおそれがあるが、第14の発明のマイクロ波加熱装置においては、突起部が焼き網と一体構成であるため、使用中に突起部が取れることがなく信頼性の高い加熱装置となる
第15の発明は、特に、第11乃至第14のいずれかの発明において、前記焼き網を前記加熱室の内部に挿入するためのレール部を前記加熱室の内部に設け、前記レール部と前記焼き網との間が点接触するよう構成されている。前述のように、加工上、レール部と焼き網との接触面が線接触するよう構成した場合、その接触面の両方共を、平行に、且つ直線的に形成することは非常に困難であり、狭い隙間が生じ、その隙間において電界が集中するおそれがある。しかし、第15の発明のマイクロ波加熱装置においては、レール部と焼き網との間が点接触するよう構成されているため、レール部と焼き網との間における電界の集中が防止されており、異常な発熱を抑制して、エネルギー損失の少ない高効率の加熱装置となる。
以下、本発明のマイクロ波加熱装置に係る好適な実施の形態について、添付の図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施の形態のマイクロ波加熱装置においては、加熱調理器としてオーブン機能付き電子レンジについて説明するが、この電子レンジは例示であり、本発明のマイクロ波加熱装置としてはこのような電子レンジに限定されるものではなく、誘電加熱を利用した各種加熱装置を含むものである。以下の実施の形態においては、加熱調理器の具体的な構成について説明するが、本発明は実施の形態の構成に限定されるものではなく、同様の技術的思想に基づく構成を含む。
(実施の形態1)
図1は、本発明に係る実施の形態1のマイクロ波加熱装置である加熱調理器としてオーブン機能付き電子レンジを示す正面断面図である。
実施の形態1の加熱調理器であるオーブン機能付き電子レンジは、その前面に被加熱物を出し入れするために開閉するドア(図示無し)と、ドアにより密閉して収納された被加熱物5をマイクロ波加熱する加熱室1と、を有している。
図1に示す実施の形態1の加熱調理器において、被加熱物5である食品などを収納して加熱する加熱室1は、鋼板の表面をホーロー塗装して構成されている。加熱室1の内部には、上ヒータ2と下ヒータ3が設けられている。上ヒータ2と下ヒータ3との間の加熱空間には、ステンレスの棒材を組み合わせて溶接して形成された焼き網4が加熱室1から出し入れ可能に設けられている。また、焼き網4を加熱室1内の上下の複数の位置に配置できるよう、複数のレール12,13が加熱室1の両側壁面に設けられている。オーブン加熱モードにおいては、加熱室1の内部に収納された焼き網4の上に被加熱物5である食品などが載せられて、上ヒータ2と下ヒータ3とにより挟むように加熱される構成である。このオーブン加熱モードにおいては、焼き網4と下ヒータ3との間に被加熱物5からの焼き汁などを受ける受け皿を設けても良い。
加熱室1の内壁面の角は、Rを付けて曲面で構成されており、加熱室1の底面は大きな円弧形状に形成されている(図1においては、底面の曲面構成の図示を省略している)。なお、実施の形態1における加熱室1の壁面は、ホーロー塗装を行った例で説明したが、他の耐熱性を有する塗装を行っても良い。
また、加熱室1の壁面材質としては、ステンレス、PCM鋼板を用いることができ、焼き網4としては、めっき処理の鋼材等を用いることができる。
実施の形態1の加熱調理器において、加熱室1の右側上方にはマイクロ波発生部としてのマグネトロン6が水平方向に出力するように設けられている。マグネトロン6において発生したマイクロ波は、導波管14を伝送して、導波管14に結合された回転アンテナ11から、加熱室1内に放射される。実施の形態1のマイクロ波加熱装置においては、マイクロ波加熱、および上ヒータ2と下ヒータ3による輻射熱や対流熱の少なくともいずれかの加熱動作を行って、被加熱物5である食品を加熱処理することができる構成となっている。実施の形態1において、マイクロ波発生部としては、マグネトロン6の他に、アンテナ11、および導波管14が含まれ、マイクロ波を発生させて、発生したマイクロ波を加熱室1へ供給する手段を含む。
上ヒータ2には、その表面に接触するように、上ヒータ温度検出部である上ヒータ熱電対7が設けられている。上ヒータ熱電対7は、マグネトロン6からのマイクロ波の影響を受けないように金属管で覆われており、上ヒータ2に関する高精度なヒータ温度検出を可能としている。
また、下ヒータ3には、その表面に接触するように、下ヒータ温度検出部である下ヒータ熱電対8が設けられている。加熱室1の壁面には、加熱室1内の温度検出手段であるサーミスタ9が固定されている。上ヒータ熱電対7、下ヒータ熱電対8およびサーミスタ9は、それぞれが制御部10に電気的に接続されている。制御部10は、上ヒータ熱電対7、下ヒータ熱電対8およびサーミスタ9からの各出力に基づき、上ヒータ2と下ヒータ3への通電を制御しており、実施の形態1の加熱調理器は、オーブン加熱モードにおける加熱量が加減制御できる構成を有している。
図1のマグネトロン6は、出力部が水平方向に導出しており、導波管14の端部に接合されている。導波管14は、マグネトロン6の出力部が接合された端部を含む鉛直部分と、水平方向に延びる水平部分とを有しており、L字形状の内部通路が形成されている。導波管14において、加熱室1の水平方向の中央付近には電波撹拌手段としての回転アンテナ11が設けられている。回転アンテナ11の軸部11Bは、モータ18の回転軸に機械的に接続されており、モータ18の駆動により回転アンテナ11の軸部11Bを介して軸部11Bの端部に設けられたアンテナ部11Aが回転するよう構成されている。また、導波管14には、給電口17が形成されており、給電口17を取り囲むように円錐形のドーム15が備えられている。回転アンテナ11の軸部11Bが導波管14の給電口17を貫通し、アンテナ部11Aがドーム15の内部に配置されている。
上記のように、回転アンテナ11はアンテナ部11Aと軸部11Bとにより構成されており、アンテナ部11Aは厚さ1mmの金属板により約φ62の略円板で形成されている。また、アンテナ部11Aは、円板の中心から約12mm偏心した位置に軸部11Bが固定されている。
軸部11Bにおけるモータ18側部分はフッ素樹脂で構成され、アンテナ部11A側部分は金属で構成されている。実施の形態1においては、軸部11Bのアンテナ部11A側である金属部分が、導波管14の内部に約11mm、ドーム15の給電口17を貫通して加熱室1側に約15mm突出して、その突出端部にアンテナ部11Aが設けられている。軸部11bと給電口17との隙間は5mm以上確保されている。
なお、実施の形態1の加熱調理器においては、マグネトロン6、回転アンテナ11、導波管14、ドーム15、および給電口17を、加熱室1の上側に設けた例で説明しているが、本発明はこのような構成に限定されるものではなく、例えば、加熱室1の底面側、又は側面側に設けることも可能であり、導波管14などの設置向きもあらゆる方向に設定することが可能である。
実施の形態1の加熱調理器において、ドーム15の下端部には回転アンテナ11に対して被加熱物5からの汚れなどが付着しないように、マイカ製のカバー16が設けられている。カバー16は、加熱室1に固定された絶縁体のフック19に脱着可能に構成されている。
実施の形態1の加熱調理器においては、上ヒータ2が直接マイクロ波の影響を受けないようにするため、ドーム15の下側開口部の直下は避けて配置される。
なお、実施の形態1の構成においては、カバー16として低損失誘電材料であるマイカを用いた例で説明したが、セラミックやガラスでも同様に構成することができる。
図2は、本発明に係る実施の形態1のマイクロ波加熱装置である加熱調理器における焼き網4を示す平面図である。図2において、下側が当該加熱調理器における使用者側(ドア側)であり、上側が背面側となる。また、図2には加熱室1内に発生した定在波SWの一例を等高線的に示しており、色の濃いハッチング領域が定在波の振幅が大きい領域(電界の強い領域:MA)を示している。
図2において、焼き網4は金属製のφ6の棒材で構成された外枠21と、金属製のφ3の棒材で構成された複数の橋渡し材20(20A,20B)とにより構成されている。図2に示すように、焼き網4は、外枠21における左右の両側辺部分(21B)に絶縁部材22が固定されている。また、外枠21における左右の両側辺部分(21B)を橋渡しするように、2本の橋渡し材20Aが外枠21の手前側と背面側の両側辺部分(21A)と平行に設けられている。さらに、2本の橋渡し材20Aに対して直交して橋渡しするように、後述する所定間隔を有して12本の橋渡し材20Bが溶接されて接合されている。
外枠21における左右の両側辺部分(21B)と、両端にある橋渡し材20Bのそれぞれとの間隔は、定在波SWの波長λの略3/8以上に設定されている。また、図2に示すように、12本の橋渡し材20Bは、3本ごとに広い間隔(第1の間隔:A)を有して配設されている。なお、3本間の狭い間隔を第2の間隔Bとする。実施の形態1の構成において、第1の間隔Aは最も強い電界の80%以上である定在波SWの振幅が大きくなる腹付近MAを挟むように配置されており、定在波SWの波長λの略1/4となるよう設定されている。また、橋渡し材20Bにおける狭い間隔である第2の間隔Bは、定在波SWの波長λの略1/8となるよう設定されている。
ここで、定在波とは、加熱室の内部において発生する波動であり、基本的にはアンテナからの放射波と、加熱室内壁面などからの反射波が重なり合うことにより生じる。定在波は、波形がほとんど進行せず、その場に止まって振動しているように見える波動である。したがって、加熱室の構成、アンテナの構成などにより、定在波の発生状況がある程度決定される。
なお、実施の形態1の加熱調理器の加熱室1の加熱空間においては、前述のように、定在波の腹付近MAを挟んだ領域と、その他の領域とで橋渡し材20Bの間隔(第1の間隔Aおよび第2の間隔B)が異なる構成である。しかし、本発明においては、加熱室1の内部に発生する定在波SWの腹付近MAを避けた領域に橋渡し材20Bを配置する構成であれば良く、その条件が満たされるのであれば、等間隔であっても同様の効果が得られる。
なお、定在波SWの波長は加熱室1の内部空間の形状によって変化するものであり、実施の形態1の構成における加熱室1の左右方向の定在波SWの波長は、約14cmであった。したがって、定在波の波長λの3/8は約5.3cmであり、1/4λは約3.5cmであり、1/8λは約1.8cmである。
また、加熱室1の内部で生じる定在波SWは、加熱室1の内面構成の他に、焼き網4に載置する被加熱物5である食品によっても変化するものである。しかし、焼き網4における外周領域においては、定在波SWの腹付近MAの発生位置が大きく変更することは少ない。
図3は、図2に示した焼き網4におけるIII−III線による断面模式図であり、加熱室1の内部に発生する定在波SWを模式的に示している。
図3に示すように、加熱室1内においては、アンテナから放射されたマイクロ波と加熱室1内で反射したマイクロ波などが重なり合って、波形が進行せずにその場で止まって振動するように見える定在波SWが生じる。したがって、加熱室1内においては、電界が重なり合って殆ど振動せず振幅が零となる節の位置と、振幅が大きく変位する腹の位置を持つ定在波SWが形成される。
図2および図3に示すように、実施の形態1の加熱調理器においては、焼き網4の橋渡し材20Bのうち4本が定在波SWの節の付近に配置されている。また、碍子で構成された絶縁部材22は、外枠21を挟み込んで固着されており、加熱室1に固定された複数のレール12(12A,12B)上を摺動可能に構成されている。したがって、絶縁部材22は、焼き網4の外枠21とレール12との間、および外枠21と加熱室1との間を電気的に絶縁している。
なお、図3に示した定在波SWでは、5つの腹と6つの節が形成された定在波SWを示したが、定在波SWの腹と節の数および間隔は加熱室などの各種条件により変化する。したがって、加熱調理器の仕様に応じて焼き網4の構成は適宜変更されるものである。
実施の形態1における絶縁部材22の材質としては、碍子を用いた例で説明したが、絶縁部材であればガラス、プラスチック等の材料を用いることができる。
なお、ここで言う定在波の波長λとは腹2つ、節2つ分を含む周期的な長さを表すものであり、腹が1つ、節が1つの場合の周期的な長さは1/2波長となる。
図4は、加熱室1内の焼き網4などの構成物を図2のIV−IV線により切断した要部断面図である。図4において、左側がドアを設けている前面側であり、右側が加熱室1の背面側である。
図4に示すように、焼き網4の外枠21は、下側のレール12(12A,12B)と上側のレール13により上下に挟まれるように配置されている。このように、焼き網4が上下のレール12,13により挟まれるように構成されているため、焼き網4が加熱室1の外に引き出される途中において傾斜することが防止されている。
次に、以上のように構成された実施の形態1の加熱調理器における動作、および作用について説明する。
実施の形態1の加熱調理器において、使用者によりマイクロ波加熱モードが選択されて、加熱動作始動のスイッチがON状態となると、マグネトロン6においてマイクロ波が形成されて、マグネトロン6からのマイクロ波が導波管14に伝送される。導波管14を伝送したマイクロ波は、回転アンテナ11を照射して、モータ18により回転する回転アンテナ11により加熱室1内に撹拌されながら供給される。
加熱室1内に供給されたマイクロ波は、被加熱物5、例えば食品を照射して、食品がマイクロ波を吸収して、当該食品はマイクロ波加熱される。
一方、実施の形態1の加熱調理器において、使用者によりオーブン加熱モードが選択されて、加熱動作始動のスイッチがON状態となると、上ヒータ2および下ヒータ3が通電されて発熱する。上ヒータ2および下ヒータ3が発熱することにより、加熱室1内に上ヒータ2および下ヒータ3からの輻射熱が食品に伝達されて、当該食品がオーブン加熱される。
前述のように、実施の形態1の加熱調理器においては、加熱室1内に配置され、被加熱物5を載置して加熱調理するための焼き網4の形状が、加熱室1の内部に生じる定在波SWを考慮して形成されている。具体的には、焼き網4は、加熱室1内に生じる定在波SWの腹付近が開口するように形成されており、焼き網4における外枠21および橋渡し材20が、加熱室1内に生じる定在波SWの腹付近MAを避けて、腹付近MA以外の領域に設けられている。この結果、実施の形態1の加熱調理器においては、マイクロ波加熱モード時に電界が強い領域に焼き網4の外枠20および橋渡し材20が配置されていないため、マイクロ波加熱モードにおいて焼き網4に異常な大きな電流が流れることがなく、焼き網4の発熱が大幅に抑制され、エネルギー損失の少ない高効率の加熱調理器を提供することができる。
また、実施の形態1の加熱調理器においては、加熱室1内に発生する定在波SWの節の近傍に橋渡し材20Bの多くを配置するよう構成されている。したがって、節の近傍に設けられた橋渡し材20Bには電流があまり流れないため、マイクロ波加熱モードにおいては、当該橋渡し材20Bにおける発熱が少なく、加熱調理器において全体として、高効率化を実現することができる。
実施の形態1の加熱調理器においては、橋渡し材20A,20Bを加熱室1の内壁面より定在波SWの波長λの3/8以上離すよう構成されている。このように構成することにより、加熱室1内において発生する定在波SWの腹の位置となる加熱室1の内壁面から定在波SWの波長λの1/4の領域には、橋渡し材20A,20Bが配置されないため、マイクロ波加熱モードにおいては、焼き網4における発熱を抑えて、高効率化が実現されている。
前述のように、実施の形態1の加熱調理器において、焼き網4は、外枠21と下側のレール12との間、および外枠21と加熱室1との間に絶縁部材22が設けられた絶縁構造を有する。もし焼き網4が絶縁されていない場合には、僅かな隙間において電界が集中して、異常な発熱が生じる。しかし、実施の形態1の加熱調理器においては、焼き網4が絶縁構造を有しているため、レール12と焼き網4との間や、加熱室4とレール12との間が確実に絶縁され、電界集中が生じにくく、発熱が抑制されて、高効率化を実現することができる構成である。
なお、実施の形態1の加熱調理器においては、加熱室1の側壁と焼き網4との間を絶縁構造の例で説明したが、加熱室1の背面壁と焼き網4との間を絶縁構造とすることにより、さらに焼き網4における発熱を抑制することができる構成となる。
以上のように、実施の形態1の加熱調理器において説明したように、本発明のマイクロ波加熱装置は、加熱室内に配置される網体などにおける異常な発熱を抑え、エネルギー損失の少ない高効率の加熱装置を提供することができる。
(実施の形態2)
前述の図13を用いて従来のマイクロ波加熱装置における焼き網102について説明したように、従来の焼き網102は、多数の金属製の棒状部材104を密に配置して構成されていた。したがって、図13に示したように、従来の焼き網102においては、多数の棒状部材104の突出端面104a,104bが加熱室内に露出した構成である。このため、マイクロ波加熱モード時において、電界が棒状部材104の突出端面104a,104bに集中して、発熱してしまい、大きなエネルギー損失が発生し、加熱調理器の加熱効率を悪化させていた。
なお、焼き網において突出端面が形成されないように、金属鋼板を打ち抜いて焼き網を構成することが考えられるが、このような構成においては、打ち抜いた孔におけるエッジ部分に電界が集中しやすくなる。このため、そのエッジ部分で発熱して、エネルギー損失となるという問題を有している。
本発明に係る実施の形態2のマイクロ波加熱装置は、前述の実施の形態1において説明したように、焼き網4が加熱室1の内部に生じる定在波SWを考慮して形成されていると共に、焼き網4における電界の集中を緩和して、さらにエネルギー損失の少ない加熱効率の高い加熱装置である。
以下、本発明に係る実施の形態2のマイクロ波加熱装置としての加熱調理器について、添付の図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施の形態2の加熱調理器においては、オーブン機能付き電子レンジについて説明するが、この電子レンジは例示であり、本発明のマイクロ波加熱装置としてはこのような電子レンジに限定されるものではなく、誘電加熱を利用した加熱装置を含むものである。
以下の実施の形態2の加熱調理器の説明においては、図1に示した実施の形態1の加熱調理器における構成と異なる点について説明し、実施の形態1の加熱調理器における構成要素と同じ機能、構成を有するものには同じ符号を付して、その詳細な説明は実施の形態1の説明を適用する。
実施の形態2のマイクロ波加熱装置である加熱調理器において、実施の形態1の構成と異なる点は、焼き網4の形状、構成であり、その他の構成は実施の形態1の加熱調理器と同じである。したがって、実施の形態2においては、焼き網4の形状、構成について説明する。
本発明に係る実施の形態2の加熱調理器において用いられる4種類の焼き網(4A,4B,4C,4D)を図5〜図8に平面図で示す。
図5に示す焼き網4Aは、略長方形形状の外枠21と、環状で細長くトラック形状に形成された複数の橋渡し材200Aと、を有して構成されている。図5に示すように、複数の橋渡し材200Aのそれぞれは、平行に配置されており、略長方形形状の外枠21における対向する長辺部分を橋渡しするように設けられている。図5に示す焼き網4Aは、橋渡し材200Aにおける縦長部分の直線部分が外枠21の外側まで延びて配置されており、橋渡し材200Aにおける両端側の円弧部分が外枠21と交差しないよう構成されている。
図5に示す焼き網4Aは、金属製のφ6の棒材で構成された外枠21と、金属製のφ3の棒材で構成された橋渡し材200Aとにより形成されている。外枠21における対向する長辺部分を橋渡しするように設けられた5つの橋渡し材200Aは、環状で細長いトラック形状(略トラック楕円形状)に形成されており、橋渡し材200Aの直線部分が外枠21より外側まで延びており、橋渡し材200Aの両端となる円弧部分が外枠21の外側に配置されている。
図6に示す焼き網4Bは、略長方形形状の外枠21と、環状で細長くトラック形状に形成された複数の橋渡し材200Bと、を有して構成されている。図6に示すように、複数の橋渡し材200Bのそれぞれは、平行に配置されており、略長方形形状の外枠21における対向する長辺部分に接合されている。図6に示す焼き網4Bは、橋渡し材200Bのそれぞれが外枠21に内接するよう構成されている。即ち、図6に示す焼き網4Bは、環状で細長いトラック形状の各橋渡し材200Bの両端部分である円弧部分の外周の一点で外枠21の内側に接するように結合されている。
図6に示す焼き網4Bは、金属製のφ6の棒材で構成された外枠21と、金属製のφ3の棒材で構成された橋渡し材200Bとにより形成されている。外枠21における対向する長辺部分を橋渡しするように設けられた5つの橋渡し材200Bは、環状で細長いトラック形状(略トラック楕円形状)に形成されており、外枠21の内側に橋渡し材200Bの円弧部分が接するように接合されている。
図7に示す焼き網4Cは、略長方形形状の外枠21と、折り返し蛇行状に形成された橋渡し材200Cと、を有して構成されている。橋渡し材200Cにおける直線部分が外枠21の外側まで延びており、橋渡し材200Cにおける両端部分である円弧部分が外枠21と交差しないよう構成されている。
図7に示す焼き網4Cは、金属製のφ6の棒材で構成された外枠21と、金属製のφ3の棒材で構成された橋渡し材200Cとにより形成されている。図7に示す焼き網4Cにおいては、外枠21に対して橋渡し材200Cが折り返し蛇行状に接合されており、橋渡し材200Cの直線部分が外枠21より外側まで延びており、橋渡し材200Cの円弧部分が外枠21の外側に配置されている。但し、折り返し蛇行状の橋渡し材200Cの両端部は、外枠21に接合されており、好ましくは外枠21の内側に接合されている。
図8に示す焼き網4Dは、略長方形形状の外枠21と、折り返し蛇行状に形成された橋渡し材200Dと、を有して構成されている。図8に示しように、橋渡し材200Dにおける円弧部分が外枠21と突合せで接合されており、橋渡し材200Dにおける円弧部分の外周が外枠21の内面に接するように接合されている。
図8に示す焼き網4Dは、金属製のφ6の棒材で構成された外枠21と、金属製のφ3の棒材で構成された橋渡し材200Dとにより形成されている。図8に示す焼き網4Dにおいては、外枠21の内側において橋渡し材200Dが折り返し蛇行状に設けられ、外枠21の内側に橋渡し材200Dの円弧部分が突合せで接合されている。また、折り返し蛇行状の橋渡し材200Cの両端部は、外枠21の内側に接合されている。
上記のように、実施の形態2の加熱調理器においては、焼き網4A〜4Dの橋渡し材200A〜200Dにおける棒状部材の間隔は、加熱室1内に生じる定在波λに基づいて、その波長λの略1/4以上の長さに設定されている。また、実施の形態2の構成においては、なお、焼き網4における棒状部材の数については加熱室1の大きさ、載置する被加熱物によって適宜変更される。
図9は、実施の形態2の加熱調理器において、その側面から見た要部断面図である。図9においては、図6に示した焼き網4Bを用いた場合を図示している。図9において、左側がドアを設けている前面側であり、右側が加熱室1の背面側である。
図9に示すように、焼き網4(4A〜4D)の外枠21は、下側のレール12と上側のレール13により上下に挟まれるように配置されている。焼き網4が加熱室1から外側に引き出される途中において傾くことが上側のレール13により防止されている。また、焼き網4の下側にはレール12と点接触する半球部23が片側2ヶ所、左右に4ヶ所に設けられている。
次に、以上のように構成された実施の形態2の加熱調理器における動作、および作用について説明する。
実施の形態2の加熱調理器において、使用者によりマイクロ波加熱モードが選択されて、加熱動作始動のスイッチがON状態となると、マグネトロン6においてマイクロ波が形成されて、マグネトロン6からのマイクロ波が導波管14に伝送される。導波管14を伝送したマイクロ波は、回転アンテナ11を照射して、モータ18により回転する回転アンテナ11により加熱室1内に撹拌されながら供給される。
加熱室1内に供給されたマイクロ波は、被加熱物5、例えば食品を照射して、食品がマイクロ波を吸収して、当該食品はマイクロ波加熱される。
一方、実施の形態2の加熱調理器において、使用者によりオーブン加熱モードが選択されて、加熱動作始動のスイッチがON状態となると、上ヒータ2および下ヒータ3が通電されて発熱する。上ヒータ2および下ヒータ3が発熱することにより、加熱室1内に上ヒータ2および下ヒータ3からの輻射熱が食品に伝達されて、当該食品がオーブン加熱される。
前述のように、マイクロ波加熱モード時において、焼き網における金属製の棒状部材の端面が鋭角な状態で露出している場合には、その部位に電界が集中して発熱し、大きなエネルギー損失となる。実施の形態2の加熱調理器においては、焼き網4が鋭角な端面が突出するような構成ではなく、細長い環状若しくは折り返し蛇行状の部材により焼き網4が構成されているため、焼き網4において電界が集中する部位が大幅に制限されている。この結果、実施の形態2の加熱調理器は、焼き網4における発熱が抑えられて、エネルギー損失の少ない高効率の加熱調理器となっている。
また、実施の形態2の構成において、図6および図8に示すように、橋渡し部200B,200Dの円弧部分が外枠21に接して構成されている場合、橋渡し材200B,200Dと外枠21が交差することにより形成される隙間はない。このため、図6および図8に示す構成を有する加熱調理器においては、電界の集中が緩和される構成となり、エネルギー損失がより少なくなり、加熱効率の高い加熱調理器となる。
また、実施の形態2の構成において、図8に示すように橋渡し材200Dが折り返し蛇行状に形成されており、外枠21の内側に対して橋渡し材200Dの円弧部分が突合せで接合されており、橋渡し材200Dの円弧部分の外周が外枠21の内周に接するように接合されている。このため、図8に示す構成を有する加熱調理器は、焼き網4の厚みを薄く構成することができると共に、焼き網4の両面が被加熱物5を載置することが可能な面で構成されており、段差も少ないため掃除が容易であるという効果を有する。
実施の形態2の構成において、図5および図7に示すように橋渡し部200A,200Cの直線部分を外枠21の外側まで延びた構成の場合、橋渡し部200A,200Cにおける円弧部分と外枠21との間の隙間が大きくなり、そのような隙間に汚れがたまった場合には掃除が容易となり、保守管理が容易な構成となる。
なお、実施の形態2の構成においては、橋渡し材200A〜200Dの長手方向を加熱室1の前後方向となるように配置したが、加熱室1の左右方向、加熱室1の斜め方向等のあらゆる方向に橋渡し材200A〜200Dの長手方向が配置されても同様の効果を得られる。
また、実施の形態2の構成においては、焼き網4の橋渡し材20における棒状部材の間隔を1/4λ以上に設定することにより、マイクロ波が焼き網4の下側に回り込み、被加熱物5が下側からのマイクロ波を吸収する構成となり、実施の形態2の加熱調理器は高効率化を実現することができる構成となる。
前述のように、実施の形態2の構成においては、焼き網4に半球部23を設けて下側のレール12上を摺動するように構成した。もし、半球部を設けない構成の場合には、外枠21とレール12が線接触状態となる。加工上、左右の外枠21とレール12とのそれぞれの接触面の全てを平行で、且つ完全な直線的な形状に形成することは非常に困難である。したがって、これらの接触面は、実際には曲がっているため、線接触状態とならず、わずかな隙間を有した接触状態となる。その結果、外枠21とレール12との接触面間において生じるわずかな隙間において電界集中が生じやすく、大きなエネルギー損失が生じる原因となる。
実施の形態2の構成においては、焼き網4に半球部23を設けることにより、焼き網4の半球部23が下側のレール12と片側2点で接触し、左右合わせて4点の位置で点接触している。このため、焼き網4の外枠21は、レール12に対して点接触している部分以外では大きな隙間を有して配置される。したがって、実施の形態2の構成においては、焼き網4とレール12との間の全体的な隙間が大きくなるため、焼き網4とレール12との間における電界集中が防止されており、高効率化を実現することができる。
なお、実施の形態2の構成においては、焼き網4に半球部23を片側2ヶ所、左右に4ヶ所設けた例で説明したが、本発明はこのような構成に限定されるものではなく、最低3ヶ所あれば焼き網4を支持することが可能であり、若しくは被加熱物5を載せたときの焼き網4のバランス向上のために半球部23の個数を増やしても同様の効果が得られる。
また、実施の形態2の構成においては、焼き網4に半球部23を設けた例で説明したが、このような半球部23の代わりに絶縁体を設けて電界の集中を防止する構成としても良い。この場合、絶縁体は、焼き網4における、下側のレール12との間の領域、および加熱室1の壁面との近接する領域に設けることにより、電界の集中を防止して加熱効率を高めることができる。
また、図9に示すように、実施の形態2の構成においては、上側のレール12(12A,12B)と、下側のレール13を互い違いに配置している。このように上側のレール12(12A,12B)と、下側のレール13を互い違いに配置することにより、レール同士間において生じる電界の集中を防止することができ高効率化を実現することができる。
さらに、実施の形態2の構成においては、加熱室1の壁面の角部分を曲面(R)で構成し、底面を大きな円弧形状とすることにより、加熱室1の壁面で反射したマイクロ波が被加熱物5の方向に向かい、被加熱物5が反射波により照射されやすい構成となり、より効率の高い加熱を行うことができる。
以上のように、実施の形態2の加熱調理器において説明したように、本発明のマイクロ波加熱装置は、加熱室内において焼き網の棒状部材の端面の露出が少ないため、電界の集中が緩和されており、焼き網における発熱が少なくなり、エネルギー損失の少ない高効率の加熱調理となる。
(実施の形態3)
前述の実施の形態2の加熱調理器の構成においては、焼き網4に半球部23を設けて、焼き網4が下側のレール12(12A,12B)と点接触するように構成した例で説明した。本発明に係る実施の形態3のマイクロ波加熱装置は、焼き網4に半球部を設けると共に、さらに焼き網4と加熱室1との間において生じる電界の集中を緩和する構成を有するものである。
前述の実施の形態2において説明したように、半球部23が設けられていない場合、焼き網4の外枠21と下側のレール12が線接触状態となるが、加工上、左右の外枠21とレール12の接触面の全てを平行に、且つ直線的な形状に形成することは非常に困難である。このため、外枠21とレール12との間は線接触状態とはならず、わずかな隙間を有した接触状態となる。その結果、接触面間において生じるわずかな隙間において電界集中が生じやすく、エネルギー損失が生じる。その結果、加熱調理器の加熱効率が悪化するという問題がある。
また、前述の実施の形態1において説明したように、外枠21とレール12との間において、放電が発生しないように、焼き網4とレール12とのの間に絶縁部材22(図3参照)を設ける構成は、好ましい対応である。しかし、絶縁部材22を設ける構成は、部品点数が多くなり、製造工程が増え、装置として高価になるという問題を有する。さらに、焼き網4の重量が重くなり、取り扱いが困難になるという問題も有していた。
本発明に係る実施の形態3のマイクロ波加熱装置は、上記の問題を解決するものであり、エネルギー損失が少なく高効率で有ると共に、取り扱いが容易な低コストの加熱装置を提供するものである。
実施の形態3のマイクロ波加熱装置である加熱調理器において、実施の形態1の構成と異なる点は、焼き網4の形状、構成であり、その他の構成は実施の形態1の加熱調理器と同じである。したがって、実施の形態3においては、焼き網4の形状、構成について説明する。
以下の実施の形態3の加熱調理器の説明においては、実施の形態1の加熱調理器における構成要素と同じ機能、構成を有するものには同じ符号を付して、その詳細な説明は実施の形態1の説明を適用する。
図10は、本発明に係る実施の形態3の加熱調理器における焼き網4Eを示す平面図である。
図10に示す焼き網4Eは金属製のφ6の棒材で構成された外枠21と、金属製のφ3の棒材で構成された橋渡し材20とにより形成されている。略長方形形状の外枠21における対向する長辺部分を橋渡しするように8本の橋渡し材20が設けられている。
また、外枠21においては、加熱室1の背面壁1A側に突出するように2つのU字状の突起部21Cが形成されている。2つの突起部21Cは、外枠21における加熱室1の背面壁1Aに対向する位置の左右の端部近傍に設けられており、外枠21を曲げ加工することにより形成されている。
上記のように構成された焼き網4Eが加熱室1の所定位置に装着されたとき(図10参照)、2つの突起部21Cが加熱室1の背面壁1Aにそれぞれが点接触状態となる。このとき、外枠21における背面壁1A側の部位と加熱室1の背面壁1Aとの間の隙間Lは、突起部21Cの部分を除いて約5mmに設定されている。
実施の形態3の加熱調理器においては、焼き網4Eの橋渡し材20における棒状部材の間隔は、加熱室1内に生じる定在波λに基づいて、その波長λの略1/4以上の長さに設定されている。また、実施の形態3の構成においては、なお、焼き網4における棒状部材の数については加熱室1の大きさ、載置する被加熱物によって適宜変更される。
図11は、実施の形態3の加熱調理器において、その側面から見た要部断面図である。図11において、左側がドアを設けている前面側であり、右側が加熱室1の背面側である。
図11において、焼き網4Eの外枠21は、下側のレール12と上側のレール13により上下に挟まれるように配置されている。焼き網4Eが加熱室1の外側に引き出される途中において傾くことが上側のレール13により防止されている。また、外枠21の下側にはレール12と点接触する半球部23を片側2ヶ所、左右に4ヶ所に設けられている。
図11に示すように、焼き網4が加熱室1の内部に挿入されて、突起部21Cが背面壁1Aに当接した装着状態において、外枠21における背面壁1A側の部位と加熱室1の背面壁1Aとの間には、隙間Lが形成される。実施の形態3の加熱調理器においては、隙間Lは約5mmに設定したが、少なくとも3mm以上有していれば電界の集中は防止される。
次に、以上のように構成された実施の形態3の加熱調理器における動作、および作用について説明する。
実施の形態3の加熱調理器において、使用者によりマイクロ波加熱モードが選択されて、加熱動作始動のスイッチがON状態となると、マグネトロン6においてマイクロ波が形成されて、マグネトロン6からのマイクロ波が導波管14に伝送される。導波管14を伝送したマイクロ波は、回転アンテナ11を照射して、モータ18により回転する回転アンテナ11により加熱室1内に撹拌されながら供給される。
加熱室1内に供給されたマイクロ波は、被加熱物5、例えば食品を照射して、食品がマイクロ波を吸収して、当該食品はマイクロ波加熱される。
一方、実施の形態3の加熱調理器において、使用者によりオーブン加熱モードが選択されて、加熱動作始動のスイッチがON状態となると、上ヒータ2および下ヒータ3が通電されて発熱する。上ヒータ2および下ヒータ3が発熱することにより、加熱室1内に上ヒータ2および下ヒータ3からの輻射熱が食品に伝達されて、当該食品はオーブン加熱される。
前述のように、実施の形態3の構成においては、焼き網4に半球部23を設けてレール12上を摺動するように構成した。もし、半球部を設けない構成の場合には、外枠21と下側のレール12とが線接触状態となる。しかしながら、加工上、左右の外枠21とレール12との接触面の全てを平行に、且つ直線的な形状に形成することは非常に困難である。したがって、これらの接触面は、実際には曲がっているため、線接触状態とならず、わずかな隙間を有した接触状態となる。その結果、外枠21とレール12との接触面間において生じるわずかな隙間において電界集中が生じやすく、エネルギー損失が生じる原因となる。
実施の形態3の構成においては、焼き網4に半球部23を設けることにより、焼き網4の半球部23が下側のレール12と片側2点で接触し、左右合わせて4点の位置で点接触している。このため、焼き網4の外枠21は、レール12に対して点接触している部分以外では大きな隙間を有して配置される。したがって、実施の形態3の構成においては、焼き網4とレール12との間の隙間が広く(5mm以上)形成されているため、焼き網4とレール12との間における電界集中を防止して、高効率化を実現することができる。
なお、実施の形態3の構成においては、焼き網4に半球部23を片側2ヶ所、左右に4ヶ所に設けた例で説明したが、本発明はこのような構成に限定されるものではなく、最低3ヶ所あれば焼き網4を支持することが可能であり、若しくは被加熱物5を載せたときの焼き網4のバランス向上のために半球部23の個数を増やしても同様の効果が得られる。
また、実施の形態3の構成においては、焼き網4とレール12とを点接触とすることにより、焼き網4とレール12との間の摩擦力が小さくなり、焼き網4を引き出しやすくなる効果を有する。
実施の形態3の構成においては、外枠21にU字状の突起部21Cを設けることにより、焼き網4は加熱室1の背面壁1Aに対して、突起部21Cにおいてのみ点接触している。このため、外枠21は、加熱室1の背面壁1Cに対して突起部21C以外の部位においては大きな隙間を有して配置される。したがって、実施の形態3の構成においては、焼き網4と加熱室1との間における電界集中を防止して、高効率化を実現することができる。
実施の形態3の構成において、外枠21に形成される突起部21Cは、外枠21をU字状に曲げるだけ形成されるため、製造が容易であり、製造コストを低減することができ、且つ突起部21Cが外枠21と一体構成であり、外枠21から外れるおそれがないため、信頼性の高い焼き網4を提供することができる。
また、実施の形態3の構成においては、U字状の突起部21Cを焼き網4に2ヶ所設けた例で説明したが、焼き網4を背面壁1Cに対して強く押し当てた時の変形防止のために、突起部21Cの個数を増やしても良い。なお、突起部21Cの形状は、電界の集中を緩和できる形状であれば良く、U字状の他に、半円状、三角状などの構成としても同様の効果が得られる。
実施の形態3の構成においては、突起部21Cを焼き網4に形成した例で説明したが、加熱室1の背面壁側に設けても良い。このように構成する場合には、加熱室1の背面壁側に半球状の突起を形成して、この突起に焼き網4の外枠21が点接触するよう構成すれば良い。このように加熱室1の背面壁側に突起を形成する場合には、加熱室1をプレス成型により製造する時に同時に形成することができるため、製造が容易であり、製造コストの大幅な低減を図ることができる。
また、実施の形態3の構成においては、半球部23を別部材で構成した例で説明したが、焼き網4の外枠21を下方に突出するようにU字形状に曲げ加工しても良い。この場合には半球部23を設けた場合と同様の効果を奏すると共に、さらに構成がシンプルとなり製造コストの低減を図ることが可能となる。
実施の形態3の構成においては、焼き網4の外枠21と加熱室1の背面壁1Aとの間の隙間、および外枠21と下側のレール12との間の隙間は点接触部分を除いて約5mmに設定した例で説明したが、これらの隙間は3mm以上あれば電界の集中は少なく、ほぼ同様の効果が得られる。
また、実施の形態3の構成においては、焼き網4の橋渡し材20における棒状部材の間隔を1/4λ以上に設定することにより、マイクロ波が焼き網4の下側に回り込み、被加熱部5が下側からマイクロ波を吸収する構成となり、実施の形態3の加熱調理器は高効率化を実現することができる構成となる。
また、図11に示すように、実施の形態3の構成においては、上側のレール12(12A,12B)と、下側のレール13を互い違いに配置している。このように上側のレール12A,12Bと、下側のレール13を互い違いに配置することにより、レール同士間において生じる電界の集中を防止することができ高効率化を実現することができる。
さらに、実施の形態3の構成においては、加熱室1の壁面の角部分を曲面(R)で構成し、底面を大きな円弧形状とすることにより、加熱室1の壁面で反射したマイクロ波が被加熱物5の方向に向かい、被加熱物5が反射波により照射されやすい構成となり、より効率の高い加熱を行うことができる。
以上のように、実施の形態3の加熱調理器において説明したように、本発明のマイクロ波加熱装置は、わずかな隙間において生じる電界の集中が防止されており、焼き網における異常な発熱を抑えて、エネルギー損失の少ない高効率の加熱装置となる。