図1〜図11を用いて、本実施形態のウェビング巻取装置について説明する。
図1には、本発明の実施形態に係るウェビング巻取装置10の全体構成の概略が背面断面図により示されている。
図1に示されるように、ウェビング巻取装置10は、フレーム12を備えている。フレーム12は略板状の背板14を備えており、この背板14がボルト等の図示しない締結手段によって車体に固定されることで、本ウェビング巻取装置10が車体に固定される構成となっている。背板14の幅方向両端からは一対の脚片16、18が互いに平行に延設されており、これらの脚片16、18間にダイカスト等によって製作されたスプール20が回転可能に配置されている。
スプール20は略円筒形状のスプール本体22と、このスプール本体22の両端部に略円盤形状にそれぞれ形成された一対のフランジ部24、26とを備えており、全体としては鼓形状をなしている。
スプール本体22のフランジ部24、26の間には、長尺帯状に形成されたウェビング28の基端部が固定されており、スプール20をその軸線周り一方(以下、この方向を「巻取方向」という)へ回転させると、ウェビング28がその基端側からスプール本体22の外周部に層状に巻き取られる。また、ウェビング28をその先端側から引っ張れば、スプール本体22の外周部に巻き取られたウェビング28が引き出され、これに伴い、ウェビング28を巻き取る際の回転方向とは反対にスプール20が回転する(以下、ウェビング28を引き出す際のスプール20の回転方向を「引出方向」という)。
また、スプール20は、フランジ部24側の端部から同軸的に突出した支軸部29を備えている。支軸部29は、脚片16に形成された円孔30を略同軸的に貫通してフレーム12の外部に突出している。脚片16側のフレーム12の外側には、ケース32が配置されている。ケース32は、スプール20の軸線方向に沿って脚片16と対向して配置されていると共に、脚片16に固定されている。
ウェビング巻取装置10は、逆転駆動力伝達手段を構成するケース32を備えている。具体的には、図2に示されるように、ケース32は、断面円形の第1収容部34及び第2収容部100、並びに断面略半円形の第3収容部102を有するケース本体38と、これらの第1収容部34、第2収容部100、第3収容部102を閉塞する薄厚平板状のカバー104(図5参照)とを備えている。なお、カバー104は、図示しないネジ等によってケース本体38に装着される構成である。
ケース本体38の第1収容部34の内部には、逆転駆動力伝達手段を構成する香箱42が収容されている。
香箱42は、脚片16とは反対側に向けて開口した軸線方向寸法が短い有底円筒状に形成されており、外周部には外歯44が形成されている。外歯44は、平歯車とされている。
また、香箱42の底壁において脚片16側の面には、円筒状の連結部46が同軸的に突設されている。この連結部46は脚片16の円孔30を貫通した支軸部29に同軸的かつ一体的に連結されている。
さらに、香箱42の底壁において脚片16とは反対側の面には、図示しない支軸が香箱42と同軸的に突設されている。この支軸48は、第1収容部34の中央部に突設された軸受部50に回転可能に支持されている。これにより、スプール20の支軸部29側は、香箱42を介してケース32に回転自在に軸支されている。
図3に示されるように、香箱42の内部には、渦巻きばね52が収容されている。渦巻きばね52は、その内端がケース本体38の軸受部50に係止されると共に、その外端が香箱42に係止されている。この渦巻きばね52は、香箱42を介してスプール20を巻取方向へ付勢している。
この渦巻きばね52の付勢力(に基づくウェビング28の巻取力)は、乗員が装着したウェビング28の弛みを解消する程度に、比較的弱く設定されている。換言すれば、渦巻きばね52の付勢力は、ウェビング28の装着状態で乗員非圧迫性に対応した強さとなるように設定され、スプール20から引き出されたウェビング28を摩擦力等に抗して最後まで巻き取る強さは要求されていない。
一方、図1に示されるように、スプール20は、フランジ部26側の端部から同軸的に突出した図示しない支軸部を備えている。この支軸部は、脚片18に形成された内歯のラチェット孔54を略同軸的に貫通してフレーム12の外部に突出しており、脚片18の外面に開口端を突き当てた状態で固定されロック機構56を構成する略カップ状のケース58によって回転自在に軸支されている。
ロック機構56は、通常はスプール20の巻取方向、引出方向の自由な回転を許容し、車両急減速時にスプール20の引出方向の回転を阻止するものである。本実施形態では、加速度センサ60がラチェットギヤ61の引出方向の回転を阻止すると、該ラチェットギヤ61とスプール20との相対回転によってロックプレート64がロックベース62から突出して脚片18におけるラチェット孔54の内歯に噛み合い、スプール20の引出方向の回転を阻止する構成とされている。なお、ロックベース62とスプール20との間にトーションバーを連結して、上記ロック後にトーションバーを捩りつつスプール20の引出方向の回転を許容してエネルギ吸収を果たす(フォースリミッタ機能を果たす)構成としても良い。
さらに、ウェビング巻取装置10は、モータ66を備えている。モータ66は、フレーム12の一対の脚片16、18間におけるスプール20の下方に配置されており、該フレーム12に対して固定的に保持されている(図示省略)。このモータ66の出力軸68は、背板14とは反対側に向けて突出しており、この出力軸68側には、ギヤハウジング70が設けられている。
ギヤハウジング70は、ねじ等の締結手段によりフレーム12に一体的に固定されており、モータ66の出力軸68の先端側がギヤハウジング70により回転自在に支持されている。
図2に示されるように、ギヤハウジング70の内部には、それぞれが外歯の平歯車とされた一対のギヤ72、74が互いに噛み合った状態で収容されている。ギヤ72は出力軸68に同軸的かつ着脱可能に一体的に連結されている。一方、ギヤ72よりもピッチ円が大きく及び歯数も多いギヤ74は、軸線方向が出力軸68と平行なウォームシャフト76に同軸的かつ着脱可能に一体的に連結されている。
図5に示されるように、ウォームシャフト76は、ギヤハウジング70から突出しており、その一端側は脚片16に一体的に形成された軸受78を貫通している。また、ウォームシャフト76の他端側には、軸受88が設けられている。この軸受88は略筒状とされていと共に、軸受88の内部には鋼球90が収容されている。鋼球90の外径寸法は軸受88の内径寸法よりも極僅かに小さく、他端がテーパ状とされたウォームシャフト76の端部に接触している。
鋼球90を介してウォームシャフト76とは反対側では、軸受88の内周部が雌ねじとされており、背板14側の開口端からアジャストスクリュー92が螺入している。アジャストスクリュー92は、その先端部で鋼球90を押圧することで鋼球90をウォームシャフト76の先端に圧接させている。これにより、ウォームシャフト76の軸線方向の変位が規制されている。
また、図4に示されるように、ウォームシャフト76の軸方向の中間部には、後述するウォームホイール96及び出力分岐ギヤ108のウォームホイール部112が噛み合うウォームギヤ84がウォームシャフト76と一体に設けられている。
一方、図2に示されるように、上述したウォームギヤ84の上方には、正転駆動力伝達手段を構成する第1のクラッチ94が設けられている。第1のクラッチ94は、リング状に形成されたウォームホイール96を備えている。ウォームホイール96は、脚片16とフランジ部24との間で、スプール20に対して同軸的でかつ相対回転可能に設けられており、その軸線方向両端は円盤状部材98により閉止されている。
また、第1のクラッチ94は、スプール側部材である図示しないアダプタを備えている。このアダプタは、スプール20におけるフランジ部24と支軸部29との間に同軸的かつ一体的に設けられると共に、ウォームホイール96の円盤状部材98を摺接可能に貫通してウォームホイール96とウォームギヤ84とを噛み合わせつつ回転可能に軸支している。
ウォームホイール96の内側には、図示しない伝達部材が収容されており、第1のクラッチ94は、ウォームホイール96の巻取方向(図2の矢印A方向)への回転によって前記伝達部材がウォームホイール96と前記アダプタとを回転伝達可能に結合するようになっている。一方、第1のクラッチ94は、ウォームホイール96の引出方向(図2の矢印B方向)への回転、またはウォームホイール96の停止(連結部材の負荷解消)によって、前記伝達部材による機械的結合が解除された状態に復帰する構成である。
以上の構成の第1のクラッチ94は、モータ66の出力軸68の回転力がギヤ72、74、ウォームシャフト76、及びウォームギヤ84を介してウォームホイール96に伝達される構成となっている。この場合、モータ66の出力軸68が正方向(図2の矢印C方向)へ回転すると、ウォームホイール96が巻取方向(図2の矢印A方向)へ回転され、モータ66の出力軸68が逆方向(図2の矢印D方向)へ回転するとウォームホイール96が引出方向(図2の矢印B方向)へ回転される構成である。
一方、ケース本体38の第3収容部102の内部には、逆転駆動力伝達手段を構成する出力分岐ギヤ108が収容されている。この出力分岐ギヤ108は、平歯車である歯車部110と、歯車部110の軸線方向一端側に同軸的かつ一体的に設けられ、外周部にウォームホイール歯が形成されたウォームホイール部112とを有している。歯車部110及びウォームホイール部112の軸心部には、円形の貫通孔が形成されており、第3収容部102の底壁中央部に突設された円柱状の支持棒114がこの貫通孔に挿入されることで、出力分岐ギヤ108は、支持棒114周りに回転可能にケース本体38に支持されている。
また、出力分岐ギヤ108のウォームホイール部112は、歯車部110よりも小径とされており、カバー104に形成された貫通孔106(図5参照)を貫通してケース32の外側に露出(突出)している。このウォームホイール部112は、正転駆動力伝達手段を構成するウォームギヤ84に噛合している。これにより、ウォームギヤ84(ウォームシャフト76)が回転すると、ウォームホイール96と出力分岐ギヤ108とが共に回転するようになっている。
また一方、ケース本体38の第2収容部100の内部には、逆転駆動力伝達手段を構成するクラッチとしての第2のクラッチ116が収容されている。
ここで、図6及び図7には、第2のクラッチ116の構成が分解斜視図にて示されている。また、図8には、第2のクラッチ116の構成が断面図にて示されている。この図に示されるように、第2のクラッチ116は、ベース118と、断接機構を構成するロータ128、クラッチギヤ136、クラッチスプリング140、及びレバー148と、を含んで構成されている。
ベース118は、円盤状に形成された本体部120と、本体部120の軸心部において本体部120の軸線方向一側へ向けて突設された円筒状の支軸部122と、支軸部122の周囲に同軸的に形成された断面略C字状の側壁部124と、を備えている。
また、ベース118は、本体部120の外周端から該本体部120の径方向外側に向けて延出するように形成された一対の延出部125を備えている。この延出部125は、互いに本体部120の周方向に沿って反対側(180度反対側)に配置されている。さらに、延出部125の先端部には、後述するウエイト170,172の方向に向けて突出する荷重制限部としての突起部125Aが形成されている。また、この突起部125Aの内周端は、拡開したウエイト170,172が当接する被当接部とされていると共に、本体部120と同心の略円弧状に形成されている。
以上説明したベース118は、第2収容部100の底壁中央部に突設された支持棒126が、支軸部122の筒内に挿入されることで、支持棒126周りに回転可能にケース本体38に支持されている。
支軸部122の軸線方向一端側(図6及び図7では右側)には、略有底円筒状に形成されたロータ128が同軸的に設けられている。このロータ128は、筒内にベース118の側壁部124が嵌り込んだ状態で、その周方向に対してはベース118に一体的に連結されている。ロータ128の底壁130の外周部には、平歯の外歯132が形成されており、この外歯132は、前述した出力分岐ギヤ108の歯車部110に噛合している。
ロータ128の側壁部134の径方向外側には、円筒状に形成されたクラッチギヤ136がロータ128に対して同軸的でかつ相対回転可能に設けられている。クラッチギヤ136の外周部には平歯の外歯138が形成されており、この外歯138は、前述した香箱42の外歯44に噛み合っている。また、クラッチギヤ136の内径寸法は、ロータ128の側壁部134の外径寸法よりも充分に大きく、クラッチギヤ136の内周面と側壁部134の外周面との間には環状の隙間が形成されている。この環状の隙間には、捩りコイルスプリングであるクラッチスプリング140が同軸的に配置されている。
クラッチスプリング140は、自然状態における内径寸法がロータ128の側壁部134の外径寸法と略同じ寸法に設定されると共に、自然状態における外径寸法がクラッチギヤ136の内径寸法よりも僅かに小さく設定されており、通常はクラッチギヤ136に対して相対回転可能とされている。
また、クラッチスプリング140の巻き方向一端部(図6及び図7では矢印I方向側の端部)には、径方向内側に向けて係止部142が延設されており、この係止部142は、ロータ128の側壁部134に形成された係止凹部144(図7参照)に嵌り込んで係止されている。
さらに、クラッチスプリング140の巻き方向他端部(図6及び図7では矢印J方向側の端部)には、径方向内側へ向けて移動部146が延設されている。この移動部146は、ロータ128の筒内(側壁部134の内側)に配置されたレバー148に対応している。
レバー148は、円筒状の軸受部150を備えている。軸受部150の筒内には、ベース118の支軸部122が貫通しており、これにより、レバー148は、支軸部122(ベース118)に対して軸線周りに相対回転可能に支持されている。また、軸受部150の外周部には、径方向に沿って突出する一対の連結部152及び連結部154が、互いに周方向に沿って反対側(180度反対側)に設けられている。
これら一対の連結部152、154には、それぞれベース118の本体部120側へ向けて突出する円柱状の連結突起156及び連結突起158が突設されている。これらの連結突起156、158は、それぞれベース118の本体部120に形成された一対の長孔160及び長孔162を貫通している。一対の長孔160、162は、互いに本体部120の周方向に沿って反対側(180度反対側)に形成されており、それぞれ本体部120の周方向に沿って湾曲している。このため、レバー148の連結突起156及び連結突起158は、本体部120の周方向に沿って各長孔160、162内を移動できるようになっており、レバー148は、各連結突起156、158が、各長孔160、162の湾曲方向一端部又は湾曲方向他端部に当接することで、ベース118に対する回転(回動)範囲を制限されるようになっている。なお、各連結突起156、158は、後述する一対のウエイト170及びウエイト172に対応している。
また、レバー148の一方の連結部152には、捩りコイルスプリングであるリターンスプリング164の一端部が係止されており、このリターンスプリング164の他端部は、ロータ128の側壁部134に形成された係止壁166に当接している。このリターンスプリング164は、レバー148を常にベース118の軸線周り一方(図6及び図7では矢印J方向)へ付勢しており、レバー148は、通常は一対の連結突起156、158が、本体部120の一対の長孔160、162の各湾曲方向一端部(図6及び図7では矢印J方向側の端部)に当接した状態に保持されている。
さらに、レバー148の他方の連結部154には、係止溝168が形成されており、前述したクラッチスプリング140の移動部146が嵌合係止されている。このため、図9(A)及び図9(B)に示されるように、レバー148がリターンスプリング164の弾性力に抗してベース118(ロータ128)に対して軸線周り他方(図9(A)及び図9(B)では矢印I方向)へ回動すると、クラッチスプリング140の移動部146が、クラッチスプリング140の巻き方向一方(図9(A)及び図9(B)では矢印I方向)へ移動され、クラッチスプリング140の外径寸法が拡大するようになっている。
しかも、このようにクラッチスプリング140の外径寸法が拡大すると、図10(A)及び図10(B)に示されるように、クラッチスプリング140は、自らの外周部をクラッチギヤ136の内周面に圧着させるようになっている。この状態では、クラッチスプリング140の外周部とクラッチギヤ136の内周面との間には所定の摩擦力が生じるため、クラッチスプリング140とクラッチギヤ136とは、この摩擦力によって一体的に連結されるようになっている。
一方、図6乃至図8に示されるように、ベース118の軸線方向他側(ロータ128とは反対側)には、それぞれ略半円形の板状に形成されたクラッチウエイトとしての一対のウエイト170及びウエイト172が配置されている。これら一対のウエイト170、172は、同じ重量に形成されており、互いに本体部120の周方向に沿って反対側(180度反対側)に設けられている。これら一対のウエイト170、172の各周方向一端側には、円形の軸受孔174、175が形成されている。これらの軸受孔174、175には、ベース118の本体部120に突設された円柱状の支軸176又は支軸178が回転自在に嵌合している。これにより、各ウエイト170、172は、それぞれ支軸176、178(軸受孔174、175)周りにベース118の径方向へ回動可能にベース118に支持されている。
また、一方のウエイト170は、前述したレバー148の連結突起158に係合する略U字状の係合爪180を備えており、他方のウエイト172は、同様にレバー148の連結突起156に係合する略U字状の係合爪182を備えている。これにより、一対のウエイト170及びウエイト172は、レバー148を介して同期(連動)するようになっており、通常は、図11(A)に示されるように、レバー148に作用するリターンスプリング164の付勢力によって、ベース118の径方向内側に保持されている。
さらに、図6乃至図8に示されるように、一対のウエイト170、172を介してベース118とは反対側には、円盤状のスペーサ184が配置されている。また、このスペーサ184の中心部には、ベース118の支持部122と連通された筒状の支軸部123の外周部に嵌合される筒状のボス部184Aが形成されている。このスペーサ184は、一対のウエイト170、172のベース118からの脱落を防止すると共に、一対のウエイト170及びウエイト172が、ケース本体38の第2収容部100の底壁に干渉することを防止している。なお、スペーサ184には、レバー148に設けられた各連結突起156、158と干渉することを防止するための逃げ溝184Bが形成されている。
ここで、この第2のクラッチ116では、ロータ128がその軸線周り一方(図6及び図7の矢印I方向)へ回転すると、ロータ128に一体的に連結されたベース118が、ロータ128と共にその軸線周り一方へ回転するようになっている。このため、ベース118に支持された一対のウエイト170及びウエイト172が、ベース118に追従してベース118の軸線周りに回転する。このとき、一対のウエイト170及びウエイト172には遠心力が作用し、ウエイト170には支軸176周りの回転トルクが作用すると共に、ウエイト172には支軸178周りの回転トルクが作用する。
したがって、これらの回転トルクの大きさが所定値以上の場合、すなわち、一対のウエイト170及びウエイト172の回転速度が所定値以上の場合には、一対のウエイト170及びウエイト172は、図11(B)に示されるように、レバー148に作用するリターンスプリング164の付勢力に抗してベース118の径方向外側へ支軸176又は支軸178周りに回動するようになっている。これにより、ウエイト170の係合爪180に連結突起158が係合しかつウエイト172の係合爪182に連結突起156が係合したレバー148は、ベース118に対して軸線周り他方(図9(A)及び図9(B)では矢印I方向)へ回動される構成である。
以上の構成の第2のクラッチ116では、モータ66の出力軸68の回転力がギヤ72、74、ウォームシャフト76、ウォームギヤ84、及び出力分岐ギヤ108を介してロータ128に伝達される構成となっている。この場合、モータ66の出力軸68が正方向(図2の矢印C方向)へ回転すると、ロータ128はベース118と共にその軸線周り他方(図2の矢印J方向)へ回転され、モータ66の出力軸68が逆方向(図2の矢印D方向)へ回転すると、ロータ128はベース118と共にその軸線周り一方(図2の矢印I方向)へ回転される構成である。
また、ウォームギヤ84、出力分岐ギヤ108のウォームホイール部112、出力分岐ギヤ108の歯車部110、ロータ128の外歯132、クラッチギヤ136の外歯138、及び香箱42の外歯44(逆転駆動力伝達手段)によるトータルの減速比は、ウォームギヤ84及びウォームホイール96(正転駆動力伝達手段)の減速比に比べて充分に低く設定されている。
一方、この第2のクラッチ116は、香箱42及び出力分岐ギヤ108と共に単一のケース32(ケース本体38及びカバー104)内に一体的に収容されて全体としてユニット化された構成となっている。そして、このケース32は、図示しないネジ等によってフレーム12の脚片16に着脱可能に取り付けられる構成となっている。しかも、ケース32のカバー104とフレーム12の脚片16との間における貫通孔106の周囲には、リング状のパッキン186が配設され、このパッキン186によってケース32の内部が密閉される構成である。
一方、図1に示されるように、本ウェビング巻取装置10では、制御装置300によってモータ66への給電制御が為されるようになっている。制御装置300は、ドライバ302とECU307とから構成されている。モータ66は、ドライバ302を介して車両に搭載されたバッテリー304に電気的に接続されており、バッテリー304からの電流がドライバ302を介して供給されるようになっている。ドライバ302は、ECU307に接続されており、このドライバ302を介したモータ66への給電の有無、供給電流の方向、及び大きさがECU307によって制御される構成である。
また、ECU307は、乗員のウェビング28装着有無に応じた信号を出力するバックルスイッチ306、及び車両と車両前方の障害物との距離に応じて信号を出力する前方監視装置308にそれぞれ接続されている。
バックルスイッチ306は、ウェビング28に設けられたタングプレートがバックル装置(何れも図示省略)に連結されているときにON信号をECU307に出力し、タングプレートのバックル装置への連結状態が解除されているときにOFF信号をECU307に出力するようになっている。すなわち、バックルスイッチ306は、乗員によるウェビング28の装着有無に対応したタングプレートとバックル装置との連結の有無に対応して上記ON信号及びOFF信号の何れか一方をECU307に出力する構成である。
前方監視装置308は、車両前端部近傍に設けられた赤外線センサ310を備えている。赤外線センサ310は赤外線を車両前方に発すると共に、車両の前方で走行若しくは停止している他の車両や障害物(以下、走行若しくは停止している他の車両も含めて便宜上「障害物」と称する)で反射した赤外線を受ける。
さらに、前方監視装置308は演算部312を備えている。演算部312は赤外線センサ310から赤外線が発せられてから、障害物で反射して赤外線センサ310に戻るまでに要する時間に基づき障害物までの距離を演算する。また、演算部312は、この演算結果に基づき障害物検出信号OsをECU307に対して出力する。この障害物検出信号Osは、障害物までの距離が所定値以上であればLowレベルとされ、障害物までの距離が所定値未満であればHighレベルとされる。
(本実施形態の作用並びに効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
上記構成のウェビング巻取装置10では、スプール20にウェビング28が層状に巻き取られた収納状態で、図示しないタングプレートを引っ張りつつウェビング28を引っ張ると、スプール20を巻取方向に付勢する渦巻きばね52の付勢力に抗してスプール20を引出方向へ回転させながらウェビング28が引き出される。
このように、ウェビング28が引き出された状態で、ウェビング28を座席に着座した乗員の身体の前方に掛け回しつつタングプレートをバックル装置に差し込み、バックル装置にタングプレートを保持させることで乗員の身体に対するウェビング28の装着状態となる。
このように、乗員がウェビング28を装着した状態では、該ウェビング28は渦巻きばね52の付勢力によって比較的弱く乗員を拘束している。また、この状態でECU307には、バックルスイッチ306からのON信号が入力されている。
一方、乗員が車両を停車してバックル装置からタングプレートを外すと、スプール20は渦巻きばね52の付勢力により巻取方向へ回転する。但し、この渦巻きばね52の付勢力は比較的弱く設定されているため、スプール20は、この渦巻きばね52の付勢力に対応した比較的弱い回転力で巻取方向へ回転する。
またこのとき、ECU307には、バックルスイッチ306からOFF信号が入力される。OFF信号が入力されたECU307は、モータ66への給電を開始させる制御信号をドライバ302に出力し、この制御信号が入力されたドライバ302は、モータ66の出力軸68を急激に逆方向へ回転させる。出力軸68の逆方向への急激な回転は、ギヤ72、74を介してウォームシャフト76に伝達され、ウォームギヤ84が急激に回転する。
ウォームギヤ84の急激な回転は、第1のクラッチ94のウォームホイール96に伝達され、ウォームホイール96を所定値以上の回転速度で引出方向へ回転させる。この場合、ウォームホイール96とアダプタ(スプール20)とは、伝達部材による機械的結合を解除された状態を維持され、したがって、ウォームホイール96とアダプタ(スプール20)とは相対的に空転する。
これに対し、ウォームギヤ84の急激な回転は、出力分岐ギヤ108を介して第2のクラッチ116のロータ128に伝達され、ロータ128がその軸線周り一方へ所定値以上の回転速度で回転される。このため、ロータ128に一体的に連結されたベース118が、その軸線周り一方へ所定値以上の回転速度で回転される。
図11(A)に示されるように、ベース118が、その軸線周り一方(矢印I方向)へ回転すると、このベース118の回転は、支軸176及び軸受孔174を介してウエイト170に伝達されると共に、支軸178及び軸受孔175を介してウエイト172に伝達される。その結果、ウエイト170及びウエイト172が、ベース118に追従して該ベース118の軸線周りに所定値以上の回転速度で回転される。これにより、ウエイト170及びウエイト172には、遠心力が作用し、ウエイト170及びウエイト172が拡開する。また、ウエイト170及びウエイト172は、レバー148に作用するリターンスプリング164の付勢力に抗してベース118の径方向外側へ支軸176、178周りに回動する。
このため、ウエイト170の係止爪180に連結突起158が係合しかつウエイト172の係止爪182に連結突起156が係合したレバー148が、ベース118に対して軸線周り他方(図9(A)及び図9(B)の矢印I方向)へ回動される。
レバー148が、ベース118に対して軸線周り他方へ回動されると、クラッチスプリング140の移動部146は、レバー148によってクラッチスプリング140の巻き方向一方(図9(A)及び図9(B)の矢印I方向)へ移動される。その結果、図10(A)及び(B)に示されるように、クラッチスプリング140の外径寸法が拡大し、クラッチスプリング140の外周部が、クラッチギヤ136の内周面に密着される。これにより、クラッチスプリング140の回転がクラッチギヤ136に伝達され、クラッチギヤ136がその軸線周り一方へ回転される。このクラッチギヤ136の外歯138には、香箱42の外歯44が噛み合っているため、香箱42が巻取方向へ回転され、ひいてはスプール20が巻取方向へ回転される。このスプール20の回転により、渦巻きばね52の付勢力不足が補われ、ウェビング28がスプール20に層状に巻き取られて収納される(所謂「巻取アシスト機構」)。
しかもこの場合、スプール20は低トルクで回転されるので、ウェビング28を安全にスプール20に巻き取って収納することができる。
ウェビング28がスプール20に最後まで巻き取られると、モータ66への給電が遮断され、モータ66の出力軸68の回転が停止される。このため、ロータ128の回転が停止され、ロータ128に一体的に連結されたベース118の回転が停止される。
ベース118の回転が停止されると、ウエイト170及びウエイト172は、レバー148に作用するクラッチスプリング140の弾性力及びリターンスプリング164の弾性力によってベース118の径方向内側へ回動される。このため、クラッチスプリング140は再び自然状態に戻り、その外周部がクラッチギヤ136の内周面から離間し、上述したクラッチスプリング140とクラッチギヤ136との連結が直ちに解除される。これにより、第2のクラッチ116によるスプール20とモータ66の出力軸68との連結が解除され、スプール20に巻き取られたウェビング28の再度の引き出しが可能となる。
一方、車両の走行状態では、前方監視装置308の赤外線センサ310での検出結果に基づき、演算部312が車両前方の障害物までの距離を演算している。例えば、車両前方に障害物が存在しない場合、若しくは、障害物が存在するものの障害物から車両までも距離が所定値以上であれば、演算部312からはLowレベルの信号が出力される。これに対し、車両から前方の障害物までの距離が所定値未満になると、演算部312からはHighレベルの信号が出力される。
演算部312からHighレベルの信号がECU307に入力されると、ECU307はドライバ302に対して所定の操作信号を出力する。この状態での操作信号が入力されたドライバ302は、モータ66への給電を開始して出力軸68を急激に正方向へ回転させる。これにより、ウェビング28がスプール20に巻き取られ、ウェビング28の僅かな緩み、所謂「スラック」が解消されて、ウェビング28による乗員身体に対する拘束力が向上する(所謂「プリテンショナ機構」)。
以上の如く、本実施形態に係るウェビング巻取装置10では、巻取アシスト機構とプリテンショナ機構に要求される互いに相反する性能を単一のモータ66により両立させることができる。
ところで、ウエイト170及びウエイト172が拡開すると、図11(B)に示されるように、ウエイト170及びウエイト172は、ベース118に設けられた突起部125Aに当接する。換言すると、ウエイト170及びウエイト172が突起部125Aに当接することによって、ウエイト170及びウエイト172からレバー148を介してクラッチスプリング164に入力される荷重が所定値以上とならないように制限されている。その結果、クラッチスプリング164とクラッチギヤ136との接触(係合)荷重を安定させることができる。
なお、本実施形態では、断接機構が、ロータ128、クラッチギヤ136、クラッチスプリング140、及びレバー148を含んで構成された例について説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、クラッチウエイトが拡開することによって、出力軸の回転をスプールに伝達することが可能となるように構成された他の断接機構を適用しても良い。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。