JP5868542B1 - 窒化物または酸窒化物を母体とする蛍光体の製造方法、蛍光体、発光素子、及び発光装置 - Google Patents

窒化物または酸窒化物を母体とする蛍光体の製造方法、蛍光体、発光素子、及び発光装置 Download PDF

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Abstract

【課題】緩和な条件下で、安定的かつ安価に窒化物蛍光体を製造する製造方法を提供する。【解決手段】窒化物または酸窒化物を母体とする蛍光体の製造方法は、N元素及び金属元素から構成される錯体を含む原料を混合する工程と、得られた原料混合物を焼成して窒化物または酸窒化物を得る工程とを含む。【選択図】図1

Description

本発明は、窒化物または酸窒化物を母体とする蛍光体の製造方法に関し、特に、安定的かつ安価に、窒化物または酸窒化物を母体とする蛍光体の製造方法に関する。
近年のLEDの普及を支えている要因として、様々な種類の発光波長の蛍光体が開発されたことが挙げられるが、特に、高輝度の赤色蛍光体の開発が進展したことが大きい。この高輝度の赤色蛍光体としては、主に、窒素原子を含有する窒化物または酸窒化物を母体とする蛍光体が利用されている。
このような窒化物または酸窒化物を母体とする蛍光体としては、例えば、CaAlSiN3:Eu蛍光体(CASN蛍光体)や、(Sr,Ca)AlSiN3:Eu蛍光体(SCASN蛍光体)が挙げられる(例えば、特許文献1参照)。この他にも、CaSi:Eu、CaSiN:Eu、SiAlON:Eu等が挙げられる。これらの窒化物または酸窒化物を母体とする蛍光体の原料としては、主に、窒化カルシウムや窒化ストロンチウム等の無機アルカリ土類金属窒化物が用いられている。
しかし、この原料となる無機アルカリ土類金属窒化物は、入手コストが高価である。また、例えば、上記の窒化ストロンチウムが分解しやすいことがよく知られているように、化学的に不安定であり、2000℃近傍を下回る低温条件では、所望とする化学反応が進行せず、所望の蛍光体が得られない。さらに、大気曝露させた場合も、所望とする化学反応が進行しない。
そのため、上記の窒化物蛍光体は、主に、大気曝露を回避できる密閉条件で製造されている。さらに、化学反応を進行させるために2000℃近い高温及び高圧下で製造されている。
例えば、上記特許文献1の記載によれば、従来の窒化物または酸窒化物を母体とする蛍光体として、組成式Eu0.008Ca0.992AlSiN3で示される化合物を得るために、窒化カルシウム粉末等の無機化合物の粉末を原料に用いて、粉末の秤量、混合、成形の各工程を全て、水分1ppm以下酸素1ppm以下の窒素雰囲気を保持するグローブボックス内という密閉状態下で操作を行い、1MPa下で1800℃という高温・高圧状態を2時間保持して合成を行うことが開示されている。
この他にも、例えば、従来の窒化物または酸窒化物を母体とする蛍光体として、SCASN蛍光体を得るために、前駆体(Ca,Sr,Eu)(Si0.5Al0.5)2を熱間等方圧加圧法(HIP)により焼結し、190MPa下で1900℃を保持して窒化反応を進行させて合成を行うことも開示されている(非特許文献1及び非特許文献2参照)。
このように、従来の窒化物または酸窒化物を母体とする蛍光体の製造方法において、2000℃近くもの高温及び高圧条件が必要とされる理由は、上記非特許文献2にも記載されているように、粉末状のSi及びAl原料に対する窒化反応において、窒化物層が表層に形成され、当該窒化物層により窒素の拡散が妨げられることによって、窒化反応が進行し難いものとなっていることが大きな要因と考えられている。
このようなことから、高輝度を呈する窒化物または酸窒化物を母体とする蛍光体を得るためには、現状では製造コストが相当に嵩むものとなっている。そのため、このような窒化物または酸窒化物を母体とする蛍光体の実用化に向けては、より緩和な反応条件で、且つ、安価に量産できる技術が求められているが、そのような技術は現在のところ見当たらない。
特開2006−8721号公報
Hiromu Watanabe and Naoto Kijima, Journal of Alloys and Compounds, vol.475, p.434-439, 2009 電気化学秋季大会予稿集、p.205, 2009
本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、緩和な条件下で、安定的かつ安価に窒化物または酸窒化物を母体とする蛍光体を製造する製造方法の提供を目的とする。
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、原料にN元素(窒素元素)及び金属元素から構成される錯体を用いることにより、上記課題を解決できる窒化物または酸窒化物を母体とする蛍光体が得られることを見出し、本発明を導き出した。
すなわち、本願に開示する窒化物または酸窒化物を母体とする蛍光体の製造方法は、N元素及び金属元素から構成される錯体を含む原料を混合する工程と、得られた原料混合物を焼成して窒化物または酸窒化物を得る工程と、を含むものである。
また、必要に応じて、本願に開示する蛍光体の製造方法は、前記錯体が、O元素(酸素元素)を含有するものである。また、必要に応じて、本願に開示する蛍光体の製造方法は、前記錯体が、O元素(酸素元素)及びH元素(水素元素)を含有するものである。
また、必要に応じて、本願に開示する蛍光体の製造方法は、前記錯体が、前記金属元素としてアルカリ土類金属元素の少なくとも1つを含むものである。前記金属元素は、アルカリ土類金属元素Mg、Sr、Ca、及びBaのうち少なくとも1つであることから、Mg、Sr、Ca、及びBaのうち2以上の元素が含まれる場合もあり、Mg、Sr、Ca、及びBaの全ての元素が含まれる場合もある。
また、必要に応じて、本願に開示する蛍光体の製造方法は、前記窒化物または酸窒化物が、組成式(Mg,Sr,Ba)XCa1-XAlSiN3(但し、0≦x≦1)、(Ca,Sr,Ba)2Si58、SiAlON、または(Ca,Sr,Ba)Si222のいずれかであるものである。ここで、(Ca,Sr,Ba)の表記は、Ca、Sr、及びBaの少なくとも1つが含まれることを示し、Ca、Sr、及びBaのうち2以上の元素が含まれる場合もあり、Ca、Sr、及びBaの全ての元素が含まれる場合もある。
本発明に係る窒化物蛍光体のXRD測定結果を示す。 本発明に係る窒化物蛍光体の発光特性を示す発光スペクトルチャートを示す。 本発明に係る窒化物蛍光体のXRD測定結果を示す。 本発明に係る窒化物蛍光体のXRD測定結果を示す。 比較例のXRD測定結果を示す。
本実施形態に係る窒化物または酸窒化物を母体とする蛍光体の製造方法は、N元素及び金属元素から構成される錯体を含む原料を混合する工程と、得られた原料混合物を焼成して窒化物または酸窒化物を得る工程とを含む。
前記N元素及び金属元素から構成される錯体としては、各種の有機金属キレート錯体を用いることができるが、O元素(酸素元素)を含有することが好ましい。O元素を含有することによって、原料が安定化され、大気中で原料を混合することが可能となる。
さらに、前記錯体としては、O元素及びH元素を含有することが好ましい。このことによって、前記錯体に、O元素及びH元素から構成される安定的な官能基(例えば、カルボキシ基)が含まれることとなり、電子バランス的にも錯体の安定性が高まり、さらに原料が安定化され、大気中で確実に原料を混合することができる。
このような錯体としては、特に限定されないが、取扱いの容易さ、及び化学的な安定性から、カルボキシ基を含むアミノカルボン酸系キレート剤から構成されることが好ましい。
このアミノカルボン酸系キレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、グリコールエーテルジアミン四酢酸(EGTA)、ジアミノプロパノール四酢酸、1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸、イミノニ酢酸(IDA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、ジヒドロキシエチルグリシン、ジエチレントリアミン五酢酸、エチレンジアミン二酢酸、エチレンジアミン二プロピオン酸、ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸、ヘキサメチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミンジ(o−ヒドロキシフェニル)酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、1,3−ジアミノプロパン四酢酸、1,2−ジアミノプロパン四酢酸、ニトリロ三プロピオン酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、エチレンジアミン二琥珀酸、1,3−ジアミノプロパン二琥珀酸、グルタミン酸−N,N−二酢酸、アスパラギン酸−N,N−二酢酸からなる群から選択される少なくとも1種を使用することができる。
このように、本実施形態で用いるアミノカルボン酸系キレート剤は、少なくとも1つのカルボキシ基が含まれていれば特に限定されるものではないが、入手のし易さ及び化学的安定性の点から、次の一般式(I−1)又は(I−2)で表されるものを用いることがより好ましい。

(上記式(I−1)中、nは2又は3の整数であり、上記式(I−2)中、mは1又は2の整数であり、Rは、エーテル結合を含んでいてもよく水酸基によって置換されていてもよい鎖状又は環状の炭素数1〜6のアルキル基である。)
上記一般式(I−1)で表されるアミノカルボン酸系キレート剤の具体例としては、次の化学式(I−1−1)で表されるイミノニ酢酸(IDA)、及び化学式(I−1−2)で表されるニトリロ三酢酸(NTA)を挙げることができる。
さらに、特にSCASNが合成され易いという点から、分子サイズがより大きい上記一般式(I−2)で表されるアミノカルボン酸系キレート剤を用いることがより好ましい。実際に、この一般式(I−2)で表されるアミノカルボン酸系キレート剤を用いることによって、従来のような2000℃近い高温高圧下ではなく、1500℃程度の低温状況下で確かにSCASNが合成されたことが確認されている(後述の実施例参照)。
この優れたメカニズムは詳細には解明されていないが、一般式(I−2)で表されるように、アミノカルボン酸系キレート剤の1分子中に窒素元素が複数存在することにより、SCASNを構成する窒素元素が供給され易くなると共に、複数のカルボキシ基によりストロンチウム元素が取り込まれ外部への拡散(気散)が抑制されてSCASNが合成され易い状況が形成されているものと推察される。
このようなアミノカルボン酸系キレート剤の一例としては、上記Rが鎖状のアルキル基である場合の一例として、以下の化学式(I−2−1)で表されるエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を用いることができる。
また、このようなアミノカルボン酸系キレート剤の一例として、上記Rが水酸基によって置換された鎖状のアルキル基である場合の一例として、以下の化学式(I−2−2)で表されるジアミノプロパノール四酢酸を用いることができる。
また、このようなアミノカルボン酸系キレート剤の一例として、上記Rがエーテル結合を含む鎖状のアルキル基である場合の一例として、以下の化学式(I−2−3)で表されるグリコールエーテルジアミン四酢酸(EGTA)を用いることができる。
また、このようなアミノカルボン酸系キレート剤の一例として、上記Rが環状のアルキル基である場合の一例として、以下の化学式(I−2−4)で表される1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸を用いることができる。
前記有機金属キレート錯体は、例えば、前記アミノカルボン酸系キレート剤としてエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を用いる場合の一例では、以下のように、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)と、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)前記金属元素由来の金属イオンM(1価〜4価)を含む錯体とから構成することができる。
また、例えば、前記有機金属キレート錯体は、以下のように、前記アミノカルボン酸系キレート剤であるイミノニ酢酸(IDA)と、前記金属元素由来の金属イオンM(1価〜4価)を含む錯体とから構成することができる。
前記錯体に含有される前記金属元素としては、特に限定されないが、有用な多種多様の蛍光体が合成できる点から、アルカリ土類金属元素の少なくとも1つであることが好ましく、例えば、カルシウム及びストロンチウムの少なくとも1つを選定することができる。
例えば、カルシウムイオンを含む有機金属キレート錯体は、上記のエチレンジアミン四酢酸(EDTA)と、炭酸カルシウムを原料にして公知の手法に従って合成することができる。この炭酸カルシウムの他にも、他のカルシウム含有化合物を使用することができ、例えば、カルシウムを含有する酸化物、ハロゲン化物、硝酸塩、硫酸塩、及び有機物を使用することができる。
前記有機金属キレート錯体を用いて、例えば、窒化物を母体とする組成式SrXCa1-XAlSiN3:Eu(但し、0≦x≦1)で表される蛍光体を得る場合には、一部がSrで置換されていてもよいCaを含有する前記有機金属キレート錯体と、Alの窒化物、酸化物、及び炭化物から選択されるアルミニウム原料と、Siの窒化物、酸化物、及び炭化物から選択されるケイ素原料と、Euの酸化物及び窒化物から選択されるユーロピウム原料とを混合して窒素含有雰囲気中で焼成する焼成工程を含むことで製造される。
前記アルミニウム原料としては、例えば、窒化アルミニウム(AlN)、酸化アルミニウム(Al)、及び炭化アルミニウム(Al)などから選ぶことができるが、取扱いの容易さから、窒化アルミニウム(AlN)を用いることが好ましい。
前記ケイ素原料としては、例えば、窒化ケイ素(Si)、一酸化ケイ素(SiO)、ニ酸化ケイ素(SiO)及び炭化ケイ素(SiC)などから選ぶことができるが、取扱いの容易さから、窒化ケイ素(Si)を用いることが好ましい。
前記ユーロピウム原料としては、例えば、窒化ユーロピウム(EuN)及び酸化ユーロピウム(Eu)などから選ぶことができるが、取扱いの容易さから、酸化ユーロピウム(Eu)を用いることが好ましい。
本発明の製造方法において、原料混合物の焼成は、窒素含有雰囲気下で、1800℃より低い温度で行うことが好ましく、より好ましくは、1500℃〜1700℃の温度範囲で行うことである。この窒素含有雰囲気としては、窒素ガスが混入されたガス雰囲気であれば特に限定されないが、好ましくは、水素を0.1〜10%含む窒素含有雰囲気下で行うことであり、またその温度範囲で保持する時間は0.5〜100時間であることが好ましい。また窒素含有雰囲気で焼成を行う前に、大気雰囲気下で600℃から1000℃で仮焼成を行ってもよい。
上記焼成により得られた生成物をボールミルにより粉砕し、洗浄、分級を行うことで、発光効率、色純度、温度消光特性、熱処理特性、表面電荷特性、蛍光寿命特性、及び経時劣化特性に優れた窒化物蛍光体を製造することができる。
本発明により得られる窒化物または酸窒化物を母体とする蛍光体は、単独で、または、従来から知られた既存の蛍光体と組み合わせることにより、諸特性の優れた蛍光体として使用することができる。また、このような蛍光体を用いて構成される発光素子として使用することができる。さらに、このような発光素子を面光源又は点光源として備え、各種の電源駆動装置と組み合わせて、照明装置、表示装置、及び光源装置などの各種の発光装置として使用することができる。
このように、本発明の製造方法によれば、原料として高価且つ不安定な無機アルカリ土類金属窒化物を必要としないという優れた効果を奏する。さらに、その結果として、大気曝露しても原料が分解されること無く、反応が充分に進行するという優れた効果も奏する。
さらに、上記の本発明の製造方法に従えば、2000℃近くの高温を必要とした従来の製造方法よりも低温で、且つ、大気曝露しても、CaAlSiN3:Eu蛍光体(CASN蛍光体)や、(Sr,Ca)AlSiN3:Eu蛍光体(SCASN蛍光体)等の優れた窒化物または酸窒化物を母体とする蛍光体が得られることが確認されている(後述の実施例参照)。
このように優れた効果を奏するメカニズムは詳細には解明されていないが、原料となる有機金属キレート錯体が、上記で例示したエチレンジアミン四酢酸(EDTA)のようなキレート剤と1〜4価の金属イオンMとが安定的に錯体形成されることによって、大気中でも安定性が維持され、さらに、反応溶媒に化学的に安定な水が使用されることにより、緩和な条件下でも反応が進行しやすくなり、その結果として、大気中でも原料が分解されることなく、従来よりも低温且つ安定的に反応が進行される状況が生み出されているものと推察される。
このメカニズムは、窒化物を得るための従来の炭素還元窒化法(有機物中の炭素元素が還元作用を示すことでCaなどの金属元素を窒化させる手法)とは全く異なるものと考えられ、EDTA錯体に含有されるN元素が、CASNなどの窒化物または酸窒化物を母体とする蛍光体合成の大きな要因となっていることが推察される(後述の比較例参照)。
本発明の特徴を更に明らかにするため、以下に実施例を示すが、本発明はこの実施例によって制限されるものではない。
(実施例1)
(1−1)Ca・EDTA錯体の合成
エチレンジアミン四酢酸EDTA(片山化学株式会社製、特級)0.02molを100mlの純水に加え、ホットプレートで加熱した。このときEDTAは完全に溶解せず、固体として残っていた。作成したEDTA水溶液に炭酸カルシウム(CaCO3)(高純度化学研究所製):0.02molを徐々に加えたところ、EDTA及びCaCO3が共に溶解し透明の液体になった。得られた溶液を乾燥機で蒸発させ、水を完全に除去し、固体のCa・EDTAのキレート錯体が得られた。
(1−2)CASNの合成
CASN(CaAlSiN3:Eu0.03)の組成になるように、上記で得たCa・EDTA錯体、窒化アルミニウム(AlN)(東洋アルミニウム株式会社製、品番:JC)0.2070グラム、窒化ケイ素(Si3N)(宇部興産株式会社製、品番:SN-E10)0.2340グラム、酸化ユーロピウム(Eu2O3)(高純度化学研究所製)0.0264グラムを電子天秤(メトラー・トレド株式会社製、品番:AB204-S)で評量し、乳鉢で30分混合を行った。得られた混合体をBNるつぼに入れて蓋をし、電気炉に入れた。1500℃〜1700℃の温度範囲内でN2雰囲気で4時間焼成を行った。得られた焼結体を乳鉢で解砕し、塩酸水溶液で洗浄を行い、乾燥機で乾燥させて、粉末を得た。
(1−3)XRD分析
得られた粉末をX線回折装置(株式会社島津製作所製、品番XRD6100)で分析を行った。なお、対照例として、上記Ca・EDTA錯体の代わりに炭酸カルシウム(CaCO3)を原料に用いて、上記と同じ手順で得られた粉末に対しても、X線回折結果を行った。得られた結果を図1に示す。
図1の結果から、Ca・EDTA錯体を原料として用いた場合ではCaAlSiN3:Eu(CASN)特有のピークが得られた。これに対して、対照例の炭酸カルシウム(CaCO3)を原料に用いた場合ではCASNのピークと一致するピークは得られなかった。
さらに、外観においても、Ca・EDTA錯体を原料に用いた生成物は、CASN特有のきれいな赤色を呈していた。これに対して、対照例の炭酸カルシウム(CaCO3)を用いた生成物では、赤色とは異なり、黄土色を呈していた。
これらの結果から高価で不安定な無機アルカリ土類金属窒化物を原料に用いることなく、従来よりも低温条件で、大気曝露しても、CASNが合成できることが確認された。
(実施例2)
(2−1)EDTAキレート錯体を用いたSCASNの合成
Sr0.2Ca0.8AlSiN3:Euの組成になるように、上記で得たCa・EDTA錯体と同じようにSrCO3(堺工業株式会社製、品番SW-K)0.02molとEDTA0.02molとを用いて合成したSr・EDTA錯体と窒化アルミニウム(AlN) 0.2070グラム、窒化ケイ素(Si3N) 0.2340グラム、酸化ユーロピウム(Eu2O3)を電子天秤で評量し、乳鉢で30分混合を行った。得られた混合体をBNるつぼに入れて蓋をし、電気炉に入れた。1500℃〜1700℃の温度範囲内でN2雰囲気で4時間焼成を行った。得られた焼結体を乳鉢で解砕し、塩酸水溶液で洗浄を行い、乾燥機で乾燥させて、粉末を得た。
(2−2)発光特性の測定
上記得られたCASN及びSCASNの各粉末に対して、分光光度計(日本分光株式会社製、品番:FP-6500)を用いて発光特性を測定した。測定結果を図2に示す。測定結果から、SCASNのピークは、CASNのピークよりも、短波長側にシフトしていることから、CaサイトにSrが確実に置換できていることが確認された。
以上の結果から、EDTA錯体を原料に用いることによって、CASN及びSCASNの窒化物蛍光体が得られることが確認できた。
(実施例3)
(3−1)イミノニ酢酸(IDA)キレート錯体を使用したCASNの合成
上記実施例1と同じ手順で、EDTAの代わりに、同じアミノカルボン酸キレート錯体であるイミノ二酢酸(IDA)(東京化成工業株式会社製)を用いてCASNを合成した。
(3−2)XRD分析
得られた粉末をX線回折装置(株式会社島津製作所製、品番XRD6100)で分析を行った。得られた結果を図3(a)に示す。測定結果から、EDTAを用いた場合と同じCASNのピークが得られた。このことから、EDTAの代わりに、イミノ二酢酸(IDA)を用いた場合であっても、CASNが合成できることが確認できた。
(実施例4)
(4−1)ニトリロ三酢酸(NTA)キレート錯体を使用したCASNの合成
上記実施例1と同じ手順で、EDTAの代わりに、同じアミノカルボン酸キレート錯体であるニトリロ三酢酸(NTA)(東京化成工業株式会社製)を用いてCASNを合成した。
(4−2)XRD分析
得られた粉末をX線回折装置(株式会社島津製作所製、品番XRD6100)で分析を行った。得られた結果を図3(b)に示す。測定結果から、EDTAを用いた場合と同じCASNのピークが得られた。このことから、EDTAの代わりに、ニトリロ三酢酸(NTA)を用いた場合であっても、CASNが合成できることが確認できた。
(実施例5)
(5−1)ジアミノプロパノール四酢酸キレート錯体を使用したCASNの合成
上記実施例1と同じ手順で、EDTAの代わりに、同じアミノカルボン酸キレート錯体であるジアミノプロパノール四酢酸(東京化成工業株式会社製)を用いてCASNを合成した。
(5−2)XRD分析
得られた粉末をX線回折装置(株式会社島津製作所製、品番XRD6100)で分析を行った。得られた結果を図4(a)に示す。測定結果から、EDTAを用いた場合と同じCASNのピークが得られた。このことから、EDTAの代わりに、ジアミノプロパノール四酢酸を用いた場合であっても、CASNが合成できることが確認できた。
(実施例6)
(6−1)グリコールエーテルジアミン四酢酸(EGTA)キレート錯体を使用したCASNの合成
上記実施例1と同じ手順で、EDTAの代わりに、同じアミノカルボン酸キレート錯体であるグリコールエーテルジアミン四酢酸(EGTA)(東京化成工業株式会社製)を用いてCASNを合成した。
(6−2)XRD分析
得られた粉末をX線回折装置(株式会社島津製作所製、品番XRD6100)で分析を行った。得られた結果を図4(b)に示す。測定結果から、EDTAを用いた場合と同じCASNのピークが得られた。このことから、EDTAの代わりに、グリコールエーテルジアミン四酢酸(EGTA)を用いた場合であっても、CASNが合成できることが確認できた。
(実施例7)
(7−1)シクロヘキサンジアミン四酢酸キレート錯体を使用したCASNの合成
上記実施例1と同じ手順で、EDTAの代わりに、同じアミノカルボン酸キレート錯体であるシクロヘキサンジアミン四酢酸(東京化成工業株式会社製)を用いてCASNを合成した。
(7−2)XRD分析
得られた粉末をX線回折装置(株式会社島津製作所製、品番XRD6100)で分析を行った。得られた結果を図4(c)に示す。測定結果から、EDTAを用いた場合と同じCASNのピークが得られた。このことから、EDTAの代わりに、シクロヘキサンジアミン四酢酸を用いた場合であっても、CASNが合成できることが確認できた。
(比較例1)
(a−1)錯体の代替に酢酸カルシウムを原料に使用した合成
上記実施例1と同手順で、錯体を酢酸カルシウムに代替して、合成反応を行った。
(a−2)XRD分析
得られた粉末をX線回折装置(株式会社島津製作所製、品番XRD6100)で分析を行った。得られた結果を図5に示す。測定結果から、CASNのピークとは全く一致しなかった。本発明に係る上記各実施例では、Ca・EDTAから窒化物であるCASNが合成できたが、酢酸カルシウム[Ca(CH3COO)2]からはCASNが合成できなかった。このことから、本発明に係る上記各実施例での合成反応は、有機物中のCが還元作用を示すことでCaを窒化させるという従来の炭素還元窒化法とは異なるものであることが考えられ、EDTA錯体に含有されるN元素がCASN合成の大きな要因となっていることが推察される。

Claims (6)

  1. 組成式SrXCa1-XAlSiN3(但し、0≦x≦1)で表される窒化物を母体とする蛍
    光体の製造方法であって、
    N元素及び金属元素から構成される錯体を含む原料を混合する工程と、
    得られた原料混合物を焼成して前記窒化物を得る工程と、
    を含むことを特徴とする
    窒化物を母体とする蛍光体の製造方法。
  2. 前記錯体が、O元素を含有することを特徴とする請求項1に記載の窒化物を母体とする蛍
    光体の製造方法。
  3. 前記錯体が、O元素及びH元素を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の窒化
    物を母体とする蛍光体の製造方法。
  4. 前記錯体が、前記金属元素としてアルカリ土類金属元素の少なくとも1つを含むことを特
    徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の窒化物を母体とする蛍光体の製造方法。
  5. 前記錯体が、少なくとも1つのカルボキシ基を含むことを特徴とする
    請求項1〜4のいずれかに記載の窒化物を母体とする蛍光体の製造方法。
  6. 前記錯体が、以下の一般式(I−1)又は(I−2)で表されるアミノカルボン酸系キレ
    ート剤から構成されることを特徴とする
    請求項1〜5のいずれかに記載の窒化物を母体とする蛍光体の製造方法。
    (上記式(I−1)中、nは2又は3の整数であり、上記式(I−2)中、mは1又は2
    の整数であり、Rは、エーテル結合を含んでいてもよく水酸基によって置換されていても
    よい鎖状又は環状の炭素数1〜6のアルキル基である。)
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